特許第6368514号(P6368514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヨルグ ボイトラーの特許一覧

<>
  • 特許6368514-対話式速度制御機構 図000002
  • 特許6368514-対話式速度制御機構 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368514
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】対話式速度制御機構
(51)【国際特許分類】
   A63G 21/04 20060101AFI20180723BHJP
   A63G 7/00 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   A63G21/04
   A63G7/00
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-61885(P2014-61885)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-210170(P2014-210170A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2017年1月13日
(31)【優先権主張番号】13163907.2
(32)【優先日】2013年4月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513155345
【氏名又は名称】ヨルグ ボイトラー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨルグ ボイトラー
【審査官】 槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−529721(JP,A)
【文献】 特許第3324757(JP,B2)
【文献】 特表2012−514446(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/079326(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63G 7/00
A63G 21/04
B61L 23/00−23/34
B60L 15/00−15/40
B61L 27/00−27/04
B60L 3/00− 3/08
B61L 3/00− 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に娯楽を目的とした有軌道車両(3)において、
少なくとも1つの乗客受容部(31)と、
駆動および/または制動力を生成する装置(33)と、
前記駆動および/または制動力を周回路に伝達する装置と、
前記乗客受容部(31)に収容された前記車両(3)の少なくとも1人の乗客が前記車両の速度および/または加速を制御するための少なくとも1つの作動装置(35、350)と、
を備え、
前記駆動および/または制動力を伝達する装置は、前記周回路上に定常的に配置された適合可能な第二の係合要素(20)と噛み合い係合する第一の係合要素(34)と、所定の境界条件、および/または前記車両(3)による前記周回路(2)の占有状態、および/または前記車両(3)および/または前記周回路(2)上の他の車両(3)の速度と位置に応じて、前記駆動および/または制動力を発生する装置(33)に、前記少なくとも1つの作動装置(35、350)を通じて行われる制御から独立した、またはそれに依存した制御信号を供給する制御ユニット(4)と、を有し、前記制御信号は、前記少なくとも1つの作動装置(35、350)を介した制御を少なくとも間欠的に制限し、および/または前記少なくとも1つの作動装置(35、350)を介した制御を少なくとも間欠的に遮断し、および/または前記少なくとも1つの作動装置(35、350)を介した制御に少なくとも間欠的に重畳されることを特徴とする有軌道車両(3)。
【請求項2】
請求項1に記載の車両(3)において、
制御を行う前記作動装置は少なくとも1つのアクチュエータ(35、350)を含み、これは加速、速度維持および/または減速の目的のために操作できることを特徴とする車両(3)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両(3)において、
制御を行う前記作動装置は、前記車両(3)を加速する目的のために操作できる少なくとも1つのレバー(350)および/またはペダルを有することを特徴とする車両(3)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両(3)において、
制御を行う前記作動装置は、追加の加速および/または追加の遅延を発生させる目的のために使用できる少なくとも1つのブースタ作動装置(350)を含むことを特徴とする車両(3)。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両(3)において、
制御を行う前記作動装置は、少なくとも1つの舵、ペダルおよび/または回転クランクを含むことを特徴とする車両(3)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両(3)において、
前記車両(3)が、ゲームを行う目的のために操作できる少なくとも1つの表示要素および/またはアクチュエータを有し、その操作に応じて、結果が表示され、および/または前記車両(3)の乗車性能が影響を受けることを特徴とする車両(3)。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両(3)において、
前記車両(3)が、乗車プロファイルを保存するメモリを備える制御機構を有することを特徴とする車両(3)。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両(3)において、
前記車両(3)が、乗車中に表示される光および/または音響信号を選択し、調整するコンピュータユニットを有することを特徴とする車両(3)。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の車両(3)において、
前記車両(3)が、前記第一の係合要素(34)に作用することのできるブレーキを有し、ブレーキが特に前記第一の係合要素(34)に作用するインダクションブレーキ、摩擦ブレーキ、モータブレーキまたは過電流ブレーキとして構成されることを特徴とする車両(3)。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の車両(3)において、
前記車両(3)が、対応する人数の乗客のための限定された数の乗客受容部(31)、特に最大8つの乗客受容部(31)、好ましくは最大4つの乗客受容部(31)、特に最大2つの乗客受容部(31)を有することを特徴とする車両()。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の車両(3)と、前記車両(3)がそれに沿って移動可能に配置される案内装置(2a、2b)を備える周回路(2)と、を含み、前記周回路(2)が第二の係合要素(20)を有し、それに前記第一の係合要素(34)が噛み合いロッキングの状態で係合する輸送システム(1)。
【請求項12】
輸送システム(1)において、
客受容部(31)と、駆動および/または制動力を生成する装置(33)と、前記駆動および/または制動力を周回路に伝達する装置と、車両の前記乗客受容部(31)に収容された乗客が車両の速度および/または加速度を制御するための少なくとも1つの作動装置(35、350)と、を有する車両(3)であって、前記駆動および/または制動力を伝達する装置が前記周回路上に定常的に配置された適合可能な第二の係合要素(20)と噛み合い係合する第一の係合要素(34)を有するような車両(3)と、前記車両(3)がそれに沿って移動可能に配置される案内装置(2a、2b)を備える周回路(2)であって、前記第一の係合要素(34)が噛み合い係合する第二の係合要素(20)を有する周回路(2)と、所定の境界条件、および/または前記車両(3)による前記周回路(2)の占有状態、および/または前記車両および/または前記周回路(2)上の他の車両(3)の速度と位置に応じて、前記駆動および/または制動力を発生する装置(33)に、前記少なくとも1つの作動装置(35、350)を通じて行われる制御から独立した、またはそれに依存した制御信号を供給する制御ユニット(4)と、を含み、前記制御信号は、前記少なくとも1つの作動装置(35、350)を介した制御を少なくとも間欠的に制限し、および/または前記少なくとも1つの作動装置(35、350)を介した制御を少なくとも間欠的に遮断し、および/または前記少なくとも1つの作動装置(35、350)を介した制御に少なくとも間欠的に重畳される輸送システム(1)。
【請求項13】
請求項11または12に記載の輸送システム(1)において、
前記第二の係合要素(20)が前記周回路(2)に沿って定常的に配置されており、前記周回路(2)に沿った少なくとも一部に延びることを特徴とする輸送システム(1)。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか1項に記載の輸送システム(1)において、
前記第二の係合要素(20)が、前記第一の係合要素(34)と適合可能な相手歯車装置(202)を有することを特徴とする輸送システム(1)。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか1項に記載の輸送システム(1)において、
前記制御ユニット(4)が、中央集中制御機構および/または、前記中央集中制御機構の作業の少なくともいくつかを引き受ける、車両に搭載された分散制御機構として構成されることを特徴とする輸送システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、特に娯楽を目的とした有軌道車両に関し、乗客受容部と、駆動および/または制動力を生成する装置と、駆動および/または制動力を周回路に伝送する装置と、車両の乗客受容部の中に収容された乗客が車両の速度および/または加速を制御するための作動装置と、を含む。これに加えて、本願は、このような車両と、車両がそれに沿って移動可能に配置される案内装置を備える周回路と、を含む輸送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
娯楽を目的とした遊園地用乗物は様々な形で知られている。遊園地のジェットコースターを考えれば、乗客にとってどれだけ魅力的で楽しいかが重要な考慮事項である。そのため、乗客に特別で新鮮な乗物のスリルを与える新しいアイディアを取り入れようとする試みが常になされている。
【0003】
さらに、乗客が車両を対話式に制御することによって乗物の操作に直接介入させることも可能である。それゆえ、国際出願公開第2006/079326号では、車両の乗客を通じた対話式の速度制御機構を備えるジェットコースターが開示されている。
【0004】
しかしながら、それによってその乗物の魅力が増す幅は、対話式の速度制御機構を備える従来のジェットコースターでは限定的であり、これは、大きな安全車間距離を確保しなければならないか、最高速度を大きく制限しなければならないからである。これに加えて、比較的長い加速区間と制動距離が必要となる。その結果、この乗物の有用性は低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/224098号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/026484号明細書
【特許文献3】英国特許第1315047号明細書
【特許文献4】独国特許第367410号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のことから、本発明の目的は、乗物の有用性を向上させることのできる新しい動作モードと周回路概念をサポートする車両と輸送システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、請求項1に記載の車両と、請求項11または12に記載の輸送システムにより実現される。有利な特徴と好ましい実施形態は、従属請求項から明らかとなるであろう。
【0008】
特に娯楽を目的とした本発明の有軌道車両は、少なくとも1つの乗客受容部と、駆動および/または制動力を生成する装置と、駆動および/または制動力を周回路に伝送する装置と、車両の乗客受容部に収容された乗客が車両の速度および/または加速を制御するための少なくとも1つの作動装置と、を含む。駆動/加速および/または制動力を伝達する装置は、第一の係合要素を有し、これは周回路上に定常的に配置された適合可能な第二の係合要素と噛み合い係合(噛み合い嵌合)する。また、制御ユニットが設けられ、これは、デフォルト境界条件、および/または車両による周回路占有状態、および/またはその車両および/またはその周回路上の他の車両の速度と位置に応じて、駆動および/または制動力を発生する装置に、少なくとも1つの作動装置を通じて行われる制御から独立した、またはそれに依存した制御信号を供給し、前記制御信号は、少なくとも1つの作動装置を介した制御を少なくとも間欠的に制限し、および/または少なくとも1つの作動装置を介した制御を少なくとも間欠的に遮断し、および/または少なくとも1つの作動装置を介した制御に少なくとも間欠的に重畳される。
【0009】
本発明を利用することにより、乗物とゲームの、乗客が車両を対話式に制御できるような数多くの新しい状況を実現することが可能となる。確動(嵌合)駆動機構によって、高加速もまた、高加速から低加速までの広い範囲で可能であるが、これに対して、従来の対話式制御による車両の場合、駆動/制動力の通常の摩擦伝達のために、加速ははるかに限定された範囲でしか行われない。本発明によれば、異なる車両のドライバ間を含め、加速と制動の範囲が限定されていることから過去においては話題にもならなかったような乗物の状況を初めて作ることができる。大きな正加速度と同時に、噛み合いロッキングははるかに高い制動加速度にも耐えられる。その結果、制動距離が短縮され、車両間の安全距離も短縮可能であり、それによって、チェイス等、より多くの対話型ゲームの選択肢が可能となる。安全距離の短縮によって、周回路上でより多くの車両を同時に操作できるようになり、この事実は、一方で、ある乗物の状態に複数の参加者が関与するためにエキサイト感が高まり、他方で、搬送容量を増大できる。噛み合い係合および/または歯車装置は、短い周回路での有効で強力な加速および/または制動に使用できる。
【0010】
これに加えて、確動駆動機構により、車両の高精度の(歯のような)位置決めと制御が可能となる。安全距離は、たとえば中央集中制御機構によってモニタされるが、(同じ速度を保ちながら)短縮でき、これは、従来の駆動および伝達システムの場合に必要なファジバッファを排除できるからである。その代わりに(またはそれに加えて)、安全距離を長くすること、および/またはこれらを従来の乗物に必要な程度まで長くすることを必要とせずに、より高い速度を実現できる。このようにして、本発明の輸送システムの搬送容量が増大する。
【0011】
駆動および制動中のいずれにおいても(「制御された制動」)、噛み合い係合により、駆動輪の滑りを通じた損失が発生しなくなる。さらに、損失が低いことは、本発明の車両の、および/または本発明の輸送システムの動作のエネルギー効率が、従来のような摩擦動力供給型の車両または輸送システムの場合より改善されることにつながる。
【0012】
制御機構は車両に、また別の、より高レベルの制御信号を供給することができ、これらは作動装置を通じて行われる制御から独立しているか、またはそれに依存しており、前記信号の一例はスタート信号である(すなわち、乗客が作動装置を操作していない時であっても、車両はどの場合でもスタートさせられることを意味する)。しかしながら、作動装置を介して生成される制御信号より優先される、中央集中/分散制御機構の制御信号があり得る。言い換えれば、所定の境界内で、乗客が影響を与えることのできない、または限定的な範囲までしか影響を与えられない中央集中/分散制御機構が、作動装置を通じて行われる制御を管理し、すなわち中央集中/分散制御機構の制御信号が、作動装置を介して行われる制御より先に順位付けされる。車両の乗客は、中央集中/分散制御機構の制御信号を作動装置の操作によって支配できない。すなわち、所定の状況では乗客が制御機構の出力に影響を与えることもできるが、所定の程度までに限定される。たとえば、ステーションの出口および/またはステーションの入口での自動スタートおよび/またはストップ命令を中央集中/分散制御機構が生成でき、それによって車両は自動的に所定の程度まで加速または減速する。また、周回路の一部または全体に関する乗物曲線が記憶された中央集中/分散制御機構を提供することもでき、前記乗物曲線は、駆動および/または制動力を伝達する装置によって実現される速度、加速(正/負)等を特定するものであるが、その場合、乗客が個々の操作を行わないこと、および/またはこの操作が許容可能なデフォルトの範囲外であることが条件となる。これに加えて、制御機構は、(おそらくは、その車両および/または周回路上に配置されたその他の車両の位置に応じてさえ)周回路上の最大および最小許容速度と加速度に適合する目的でも使用できる。言い換えれば、乗客は車両の速度/加速/減速に、ある範囲でのみ影響を与えることができる。おそらくはシステムの位置および/または状態(他の、複数の、またはすべての車の位置/速度/状態の概略)に応じて、最大および最小の速度/加速度間の一定の数値または範囲を指定することができ、必然的に周回路上の特定の部分に適用されるようにするか、または特定の状況では個々の操作に重畳させることができる。中央集中/分散制御機構はそれゆえ、多かれ少なかれ複雑にすることができ、システムの状態に応じた範囲で、絶対的に作用するか、車両の乗客による操作に重畳させることができる。
【0013】
各車両は、基本的に1人または複数の乗客を収容するように設計できる。好ましくは、1つまたは複数の乗客受容部が提供されるが、その上限の数を限定するべきである。さらに、作動装置、すなわちアクチュエータを1車両あたり1人の、複数の、または全員の乗客用に設置できる。特に1車両あたり、または1作動ユニットあたりの人数ができるだけ少ない対話的車両が魅力的である。1つの車両に複数の作動ユニットが取り付けられた場合、たとえば制御機構を通じて、または作動ユニット間の機械的または電気的接続を通じて、作動ユニットを共有的に、または別々に操作することにより、その車両のための共通の均一な駆動命令を生成できる。作動ユニットはこのように協働し、命令の組み合わせを通じて、制御信号が生成され、これがその車両の指定された加速度/速度を生成する。
【0014】
車両は、様々な設計にすることができる。それゆえ、本発明による作動ユニット付車両を、作動ユニットの有無を問わない1つまたは複数の他の車両に連結できる。
【0015】
制御を行うための少なくとも1つの作動装置は好ましくは、加速、速度維持および/または減速の目的のために操作できる。
【0016】
制御を行うための少なくとも1つの作動装置は、少なくとも1つのレバーおよび/またはペダルを有することができ、これは車両を加速させる目的で操作できる。対話式制御の目的のために考えられる特定の操作要素またはアクチュエータは、周回路への噛み合いロッキング式の動力伝達機能を備える車両に使用されなければ意味がなく、この場合、噛み合いロッキングの特性が車両の対話式の制御/作動/動作に関連して利用される。それゆえ、舵、自転車のペダル、手動回転クランク等の特別なオペレータ用制御手段を設けることができ、その巧みな操作によって、車両の速度、加速の強さ、加速曲線および/または位置決めを制御できる。
【0017】
制御を行うための少なくとも1つの作動装置は、少なくとも1つのブースタ作動装置を含むことができ、これは必要に応じて追加で加速または減速を行うために操作でき、追加の加速および/または減速は一般に、レバーおよび/またはペダルの操作によって行われる加速/減速または、中央集中/分散制御機構によって行われる加速/減速に加えて行われる。ブースタ作動装置は、制御を行うための作動装置を操作しない時、または中央集中/分散制御機構を通じた制御が行われていない時だけでなく、制御を行うための作動装置の操作中または中央集中/分散制御機構を通じた制御中にも作動させることができる。これは、異なる操作/制御によって行われる加速/減速を重畳できることを意味する。ブースタボタンによって、さらに追加した高加速および/または減速が可能となる。ブースタボタンにより生成されることになる高加速(正または負)を最初に可能にするのは、摩擦駆動ではなく、確動駆動機構である。
【0018】
制御を行うための作動装置は、特に、少なくとも1つの舵、ペダルおよび/または回転クランクとすることができる。
【0019】
車両はまた、ゲームを行う目的で操作可能な少なくとも1つの表示要素および/またはアクチュエータを有することができ、操作に応じて、結果を表示し、および/または車両の乗車性能に作用を及ぼす。表示手段は、たとえば光および/または音響表示手段とすることができ、乗客はアクチュエータの助けにより、追加のゲーム要素やゲーム状況を知り、実行できる。たとえば、正しいタイミング、たとえば周回路外または表示手段上の信号が点灯した時にボタン(アクチュエータ)を押すと、ゲームポイントが収集され、表示されるようにすることができる。対応するカラーボタンをできるだけ早く操作することによって、乗客はポイントを獲得しおよび/または追加で速度/加速に作用を及ぼすことができる。たとえば、操作が不正確であると、車両は激しく振動し、またはブレーキがかかる。さらに、アクチュエータを正しく操作した場合には、「報酬」として、追加の速度/加速を可能にし、または車両を移動/加速するための(仮想的な)エネルギー貯蔵を与えることも考えられる。
【0020】
複数の乗客が1つの車両に収容される場合、対応するアクチュエータの数が人数より少ないため、乗車中に起こっている事柄に対話的に作用できない乗客は、表示手段および/またはアクチュエータによって乗車中にゲームをすることができ、これを使って、たとえばポイントを獲得し、利用した効果に対し、たとえば高得点者リストでの高い順位や獲得ポイント数に合わせた測定乗車時間の延長/短縮等の報酬を受けることができる。
【0021】
好ましくは、車両は、乗車プロファイルを保存するメモリを備えた制御装置を有することができる。乗車プロファイルは実質的に、加速および制動曲線に対応し、これは、自動制御および/または操作要素(ブースタアクチュエータを含む)を通じた制御から、乗客が乗車前に選択し、および/または個別に設定できる。乗車プロファイルは、その後の乗車中に利用される。このような選択肢の魅力は主として、噛み合い係合によって可能となる広い範囲の加速可能性と速度にある。これに加えて、光および音響信号、表示、設計を乗客が乗車前に個別に調整できる。
【0022】
第一の係合要素は、少なくとも1つの歯車であってもよい。この歯車は好ましくは、複数の歯を有することができ、これはプラスチックで作製され、および/または干渉要素としてプラスチックで被覆される。第一の係合要素は好ましくは、第二の係合要素の回転可能部材を回転させるための複数の回転可能部材を有する。本発明の特に好ましい実施形態において、回転可能部材の耐摩耗性を相手歯車より低くする。その結果、動作中の摩耗の大部分がこれらの部材で発生する。駆動輪の歯車装置の構成によって、歯車装置は「消耗部品」となり、その一方で、周回路に沿って配置される相手歯車装置は事実上、摩耗を発生させずに使用できる。摩耗部品の接触面の材料は、嵌合接触面のそれより柔らかい。このようにして、どの歯車がどのタイプの摩耗を受けるかを制御することが可能である。回転可能部材の各々が少なくとも1つの減衰部材を有することができ、これは相互に向かって移動可能に配置された回転可能部材の構成要素間に配置される。これは、衝撃等を和らげる役割を果たすだけでなく、相手歯車装置のローラのロールオフをできるだけ正確にする。サスペンションはまた、接触面でのシリンダの向きを柔軟に調整できるため、常に線接触が達成される。これによって今度は歯車装置の動作特性が改善され、それゆえ、ピッチと歯のアラインメントの誤差およびアクスルの間隔とアクスルの傾きの誤差を許容できる。好ましくは、相互に向かって移動可能なこれらの構成要素は、(作用線から見て、)相互に向かって移動可能な構成要素間の減衰部材の介在により直接分離できる。
【0023】
車両は特にブレーキを有することができる。これは、第一の係合要素に作用することができ、ブレーキは特にインダクションブレーキ、過電流ブレーキ、摩擦ブレーキ(たとえば、係合要素のシャフトに取り付けられたディスクブレーキによる)、またはモータブレーキ(制御機構を介して調整されるモータ速度の低下を通じたものか、回生ブレーキによるもの)として構成可能である。これらの実施形態の制動動作は、走っている車両を介して直接的にではなく、歯車を介して間接的に達成される。それゆえ、制動動作は湿度等の外的条件とは独立している。
【0024】
車両特に、対応する人数の乗客数のための限定された数の乗客受容部、特に最大8つの乗客受容部、好ましくは最大6つの乗客受容部、好ましくは最大4つの乗客受容部、特に最大2つの乗客受容部を有する。
【0025】
作動ユニット(複数の場合もある)は好ましくは、1つまたは複数のアクチュエータ、特に1人の乗客につき1つのアクチュエータを有する。
【0026】
本発明の輸送システムは、前述の車両と、それに沿って車両が移動可能に配置される案内装置を備える周回路と、を含み、周回路は第二の係合要素を有し、それに第一の係合要素が噛み合いロッキングの状態で係合する。
【0027】
本発明による別の輸送システムは、乗客受容部と、駆動および/または制動力を生成する装置と、駆動および/または制動力を周回路に伝達する装置と、車両の乗客受容部に収容された乗客が車両の速度および/または加速度を制御するための少なくとも1つの作動装置と、を有する車両であって、駆動および/または制動力を伝達する装置が周回路上に定常的に配置された適合可能な第二の係合要素と噛み合い係合する第一の係合要素を有するような車両と、車両がそれに沿って移動可能に配置される案内装置を備える周回路であって、第一の係合要素が噛み合い係合する第二の係合要素を有する周回路と、所定の境界条件、および/または車両による周回路の占有状態、および/またはその車両および/またはその周回路上の他の車両の速度と位置に応じて、駆動および/または制動力を発生する装置に、少なくとも1つの作動装置を通じて行われる制御から独立した、またはそれに依存した制御信号を供給する制御ユニットと、を含み、前記制御信号は、少なくとも1つの作動装置を介した制御を少なくとも間欠的に制限し、および/または少なくとも1つの作動装置を介した制御を少なくとも間欠的に遮断し、および/または少なくとも1つの作動装置を介した制御に少なくとも間欠的に重畳される。
【0028】
確動(嵌合)駆動機構により、車両の高精度の(歯のような)位置決めと制御が可能となる。安全距離の短縮を通じて、従来の乗物より高い加速度/速度を実現できるだけでなく、本発明の輸送システムの搬送容量も増大される。
【0029】
本発明輸送システムはさらに、車両の精密な制御可能性を必要とする他の種類のゲームが可能になる。従来の乗物と比較して、ジェットコースターの設計の様々な可能性が発生する。それゆえ、勝つことが、車両を最も正確に制御すること、たとえば特定の最高速度を維持すること、ピンポイントの正確さでブレーキをかけて障害物を避けること等によって勝者が決まるようなゲームが考えられる。また、最高のラップタイムの実現を目的とするレースは、噛み合い係合により可能となる変化に富んだ乗車体験がなければ、すぐにやり尽くしてしまう。しかし、周回路の設計もまた、より変化したものにすることが可能であり、これは、所定の速度を実現させ、同程度の楽しさを持たせようとした場合に、制動距離と加速区間を短縮しなければならないからである。周回路はさらに、確動駆動および/または確動遅延装置(ブレーキ等)によって、より変化に富んだものとすることができるが、これは確動駆動/ブレーキを備える車両を急峻な勾配(ほとんど垂直)でも駆動できるからである。
【0030】
第二の係合要素は、特に歯付きラックとして構成できる。
【0031】
第二の係合要素は特に、周回路に沿って定常的に配置され、周回路に沿って少なくとも一部に延びる。
【0032】
第二の係合要素は好ましくは、第一の係合要素に適合する相手歯車装置を有する。
【0033】
制御機構は好ましくは、中央集中制御気候および/または、車両に搭載され、中央集中制御機構の作業の少なくとも一部を引き受ける分散制御機構として構成できる。したがって、たとえば車両のモータまたはブレーキ制御部の形の下位ユニットと協働する厳密な中央集中型制御機構、中央集中制御と分散制御からなるハイブリッド型、または厳密な分散型制御機構が可能である。相互に連通する分散制御機構がある場合、制御機構のうちの1つをより高レベルの作業を行う「マスター」制御機構とすることができ、残りの制御機構を「スレーブ」制御機構御部とすることができる。
【0034】
上記の特徴のすべてについて、個別にも、相互に組み合わせても、権利の保護を求めるものである。
【0035】
本発明のその他の利点と特徴は、図面に関する好ましい実施形態の説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明による乗客用有軌道輸送システムの一部の斜視図である。
図2】本発明による確動駆動部の一部の透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
後述の実施形態は、有軌道乗客輸送システムに関する。しかしながら、この輸送システムは、それが適した他のどのような用途にも使用できる。これは遊園地の乗物、すなわち娯楽の目的に特に有益である
【0038】
図1は、本発明による乗客輸送システム1のある実施形態を示す。輸送システム1は、周回路/軌道2を含み、これは周回路2に沿ってツイントラック式車両3を案内するための平行な2本のレール2aと2bを有する。そのほか、周回路は第二の係合要素20を有し、これたとえば歯付きラックの形態であり、レール2a、2b間の中央に配置される。この係合要素は、特に周回路2に沿った部分、好ましくは周回路2の全体に沿って延びる。
【0039】
これに加えて、輸送システム1は、周回路上に配置された1つまたは複数の車両3を含み、これらはレール2a、2bの上で周回路2に沿って移動可能である。図1に示される例示的な車両3は、少なくとも1人の乗客を収容する乗客受容部31を備えるシャーシ30を含む。
【0040】
車両3はさらに、4つの走行輪32a、32b、32c(4つ目の車輪は見えていない)を有する。走行輪32a、32b、32cの各々は、第一の走行輪32aに代表されるように、実質的に、レール2aおよび/または2bの上に載る主走行輪320aと、車両3が周回路2から浮き上がらないようにするためにレール2aおよび/または2bの下側と係合する副走行輪321からなる。
【0041】
周回路2の上に配置された車両3の各々には、駆動機構33、たとえば電気モータが設けられている。駆動機構33は、それによって生成された駆動力を第一の係合要素34、たとえば歯車に伝達する。これは周回路2に沿って定常的に配置される第二の係合要素20と係合する。その結果、駆動力は第一の係合要素34から第二の係合要素20に噛み合いにより確実に伝達される。車両3はそれゆえ、第一の係合要素34を介して駆動または制動可能で、それによって車両3を、(正または負)加速させ、または速度を維持できる。
【0042】
本発明によれば、車両3はレバーの形態のアクチュエータ35を有し、これにより、車両の乗客はこれを操作することによって、駆動機構33、ひいては車両3の運動を制御できる。それゆえ、車両の乗客が車両3の乗車性能に影響を与え、またはこれを決定できるようにする、対話式の制御機構が実現する。レバーの代わりに、またはそれに加えて、足で操作するペダルを、たとえばアクセルペダルの形態で提供することができる。
【0043】
したがって、本発明の輸送システム1において、車両3は、駆動機構33と、周回路2の上に定常的に配置された相手歯車装置20と係合する歯車34を含み、それによって噛み合いによる確実な動力伝達が行われる。
【0044】
さらに、追加のアクチュエータ350を提供でき、車両の乗客はこれを操作して乗車性能に影響を与えることができる。図の実施形態では、追加のアクチュエータ350はブースタボタンである。これを押すと、モータ33が間欠的に追加の駆動力を生成し、それによって車両3の追加の加速が可能となる。
【0045】
これに加えて、制動を目的としたアクチュエータ(図示せず)を設けることができ、これはたとえば車両3の速度を落とすためのブレーキペダルの形である。ブレーキは、1つまたは複数の走行輪に、または好ましくは、第一の係合要素に効かせることができる。ブレーキはまた、それがたとえば過電流ブレーキとして、または乗物のタイヤを取り囲むシューブレーキとして構成されていれば、周回路に直接効かせることもできる。
【0046】
車両の乗客による車両3の(対話式の)速度制御と確動駆動機構33、34とを組み合わせることによって、新しい運動の特徴が可能となる。特に、従来の摩擦駆動と反対に、より大きな加速(正および負)を実現できる。その上に、周回路2に沿った車両3のより正確な位置検出と制御が可能となる。
【0047】
好ましくは、輸送システム1は、車両の外の、周回路2に、またはその近傍に配置された中央集中制御機構4を有することができ、これは周回路2に沿って配置された複数の車両3の配置と速度に応じた個々の車両間の最低距離を確保する等の制御機能を担う。確動駆動機構33、34を通じて、制動および加速距離をより正確に計算し、維持することができる。さらに、より高い加速力(正および負)を周回路2から車両3に伝えることができる。その結果、最低距離を、他の駆動機構を有する輸送システムより短縮でき、輸送システム1の利用能力が増大する。
【0048】
中央集中制御機構4の代わりに、または中央集中制御機構4に加えて、分散制御機構、すなわち車両3に取り付けられる制御機構を設けることができ、これは中央集中制御機構4の下位の作業の全部またはいくつかを引き受ける。
【0049】
最低距離が守られていない場合、中央集中制御機能4は、信号40、40’を車両3に送信することによって、(間欠的に)駆動機構33の制御に影響を与えることができ、その中ではたとえば、特定の車両3の最大速度を指定するか、これを減速させる。信号伝送は、図1に示されるように、無線でも、または周回路2に沿って延びるワイヤ(図示せず)によっても行うことができる。
【0050】
図2は、確動駆動機構33の詳細および/または駆動機構33から周回路2への噛み合いによる確実な力の伝達の部分的概略図である。これは、本発明のある例示的実施形態である。
【0051】
周回路2は、レール2a、2bと、レール間の中央に配置された第二の係合要素20を含む。係合要素20は平行に配置された2つのブラケット201a、201bを含み、それらの間に歯車装置(歯のいくつかが参照番号202で示されている)が配置される。歯車装置202は実質的に、周回路2に沿って等間隔で配置された歯と、それらの間の凹部からなる。歯車装置202は、車両3の歯車34の歯車装置と適合するように構成される。
【0052】
確動駆動および伝達システムは、駆動機構33を含む。駆動機構によって生成された力は、適当な伝送機構36によって歯車34に伝達され、ここから周回路2の定常的な相手歯車装置202に伝えられる。歯車34は、半径方向に突出した、円周方向に等間隔の歯と凹部を有する。歯はプラスチックで作製するか、プラスチックで被覆して、周回路2の相手歯車202の摩耗を減らすことができる。歯車34は、必要に応じて、交換し、またはその歯車装置を修理できる。
【0053】
駆動機構は、車両3の1人の(または複数の)乗客によって、アクチュエータ35、350を介して対話式に制御される。アクチュエータ35、350は好ましくは、駆動制御機構330を介して駆動機構33に作用する。中央集中制御機構(図示せず)は、信号40’を通じて、駆動機構33(またはその御部機構330)とデータを交換し、必要であれば、駆動機構33の制御を行うか、それに影響を与えることができる。中央集中制御機構4の代わりに、または中央集中制御機構4に加えて、分散制御機構、すなわち車両3に取り付けられた制御機構が提供され、これが中央集中制御機構4の下位作業の全部または一部を引き受ける場合、信号40’は、異なる車両3の分散制御機構間、および/またはそれと中央集中制御機構の間で交換し、および/または伝達することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 乗客輸送システム、2 周回路/軌道、3 ツイントラック式車両、4 中央集中制御機構、20 相手歯車装置/第二の係合要素、33 駆動機構/モータ、34 係合要素/歯車、36 伝達機構、40 信号、202 歯車装置、330 駆動制御機構、350 アクチュエータ。
図1
図2