特許第6368530号(P6368530)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6368530暗号化技術を用いた試験システム及び試験方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368530
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】暗号化技術を用いた試験システム及び試験方法
(51)【国際特許分類】
   G09C 1/00 20060101AFI20180723BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   G09C1/00 660D
   G05B23/02 301V
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-92821(P2014-92821)
(22)【出願日】2014年4月28日
(65)【公開番号】特開2015-210434(P2015-210434A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄住金テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(72)【発明者】
【氏名】安藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】松本 享介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼宮 弘行
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐
【審査官】 行田 悦資
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−226981(JP,A)
【文献】 特開2014−048125(JP,A)
【文献】 特開平10−269799(JP,A)
【文献】 特開2000−066914(JP,A)
【文献】 特開2003−006238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09C 1/00
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の試験用に策定された試験レシピを暗号化して保存すると共に、該試験レシピの読み出しに応じて復号化して該試験レシピを出力する試験レシピ保存手段と、
前記試験レシピ保存手段から取得した復号化された前記試験レシピに基づいて、前記対象物の試験を行う試験装置に動作指示を行う試験実行手段と、
動作中の前記試験装置でリアルタイムに得られる一次試験データから、予め設定された形式の試験実績データを作成し暗号化して保存する試験実績データ保存手段と、
前記試験レシピ保存手段に保存された前記試験レシピ及び前記試験実績データ保存手段に保存された前記試験実績データをそれぞれ復号化して出力するデータ復号化手段とを有し、
前記試験実績データ保存手段は、前記一次試験データを逐次暗号化して保存する一次試験データ保存部と、該一次試験データ保存部から前記一次試験データを順次復号化して読み出し前記試験実績データに変換しながら再度暗号化して保存する試験実績データ保存部とを有することを特徴とする暗号化技術を用いた試験システム。
【請求項2】
請求項記載の暗号化技術を用いた試験システムにおいて、前記一次試験データ保存部では、前記試験実績データ保存部に読み出された前記一次試験データが消去されることを特徴とする暗号化技術を用いた試験システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の暗号化技術を用いた試験システムにおいて、暗号化された前記試験レシピ及び暗号化された前記試験実績データは、第2のデータ復号化手段により復号化されて出力されることを特徴とする暗号化技術を用いた試験システム。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の暗号化技術を用いた試験システムにおいて、前記対象物の試験は、二次電池の充放電試験であることを特徴とする暗号化技術を用いた試験システム。
【請求項5】
対象物の試験を行う試験装置に動作指示を与える試験レシピを作成し、暗号化して保存する第1工程と、
保存された前記試験レシピを復号化し、復号化された該試験レシピに基づいて前記試験装置を動作させて試験を実行しながら、該試験装置でリアルタイムに得られる一次試験データから、予め設定された形式の試験実績データを作成し暗号化して保存する第2工程と、
暗号化された前記試験レシピ及び前記試験実績データをそれぞれ復号化して出力する第3工程とを有し、
前記第2工程では、前記一次試験データを逐次暗号化して保存し、保存された該一次試験データを順次復号化して読み出し前記試験実績データに変換しながら再度暗号化して保存することを特徴とする暗号化技術を用いた試験方法。
【請求項6】
請求項記載の暗号化技術を用いた試験方法において、前記試験実績データに変換された前記一次試験データを消去することを特徴とする暗号化技術を用いた試験方法。
【請求項7】
請求項5又は6記載の暗号化技術を用いた試験方法において、暗号化キーを取得して、暗号化された前記試験レシピ及び暗号化された前記試験実績データを任意に復号化して出力することを特徴とする暗号化技術を用いた試験方法。
【請求項8】
請求項のいずれか1項に記載の暗号化技術を用いた試験方法において、前記対象物の試験は、二次電池の充放電試験であることを特徴とする暗号化技術を用いた試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の試験を行うために策定された試験方法と得られた試験結果の機密保全性を向上させた暗号化技術を用いた試験システム及び試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、充放電試験装置を用いて二次電池の試験(充放電特性の確認)を行う場合、電池メーカーが作成する試験方法や、この試験方法で充放電試験装置を操作して得られた試験データは、試験中に自由に閲覧することができ、試験方法や試験結果の機密保全は一般に図られていないのが実情である。
一方、インターネット等の情報通信ネットワークを利用して、例えば、試験データの送受信を行う場合は、機密保全の観点から、試験データは暗号化して送受信されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−114294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電池メーカーが行う二次電池の充放電試験においては、充放電試験の一部を外部に委託する傾向にある。ここで、二次電池の充放電試験を行うために策定される試験方法や得られた試験データの中には、電池メーカーの開発要素が多数含まれる機密データが存在していることがあるため、電池メーカーでは機密データの漏洩防止策として、独自に試験作業基準を策定して対処している。
しかしながら、試験作業基準を設けるだけでは、試験方法や試験データに含まれる機密データの漏洩防止に限界があり、機密データの漏洩防止の確立は、二次電池の充放電試験を行う上での最重要課題の一つとなっている。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、対象物の試験を行うために策定された試験方法及び得られた試験結果の機密保全が可能な暗号化技術を用いた試験システム及び試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る暗号化技術を用いた試験システムは、対象物の試験用に策定された試験レシピ(試験方法)を暗号化して保存すると共に、該試験レシピの読み出しに応じて復号化して該試験レシピを出力する試験レシピ保存手段と、
前記試験レシピ保存手段から取得した復号化された前記試験レシピに基づいて、前記対象物の試験を行う試験装置に動作指示を行う試験実行手段と、
動作中の前記試験装置でリアルタイムに得られる一次試験データ(測定値)から、予め設定された形式の試験実績データ(対象物の試験判定に使用するデータ)を作成し暗号化して保存する試験実績データ保存手段と、
前記試験レシピ保存手段に保存された前記試験レシピ及び前記試験実績データ保存手段に保存された前記試験実績データをそれぞれ復号化して出力するデータ復号化手段とを有し、
前記試験実績データ保存手段は、前記一次試験データを逐次暗号化して保存する一次試験データ保存部と、該一次試験データ保存部から前記一次試験データを順次復号化して読み出し前記試験実績データに変換しながら再度暗号化して保存する試験実績データ保存部とを有している。
【0007】
【0008】
第1の発明に係る暗号化技術を用いた試験システムにおいて、前記一次試験データ保存部では、前記試験実績データ保存部に読み出された前記一次試験データは消去されることが好ましい。
【0009】
第1の発明に係る暗号化技術を用いた試験システムにおいて、暗号化された前記試験レシピ及び暗号化された前記試験実績データは、第2のデータ復号化手段により復号化されて出力されることが好ましい。
【0010】
第1の発明に係る暗号化技術を用いた試験システムにおいて、前記対象物の試験は、二次電池の充放電試験とすることができる。
【0011】
前記目的に沿う第2の発明に係る暗号化技術を用いた試験方法は、対象物の試験を行う試験装置に動作指示を与える試験レシピを作成し、暗号化して保存する第1工程と、
保存された前記試験レシピを復号化し、復号化された該試験レシピに基づいて前記試験装置を動作させて試験を実行しながら、該試験装置でリアルタイムに得られる一次試験データから、予め設定された形式の試験実績データを作成し暗号化して保存する第2工程と、
暗号化された前記試験レシピ及び前記試験実績データをそれぞれ復号化して出力する第3工程とを有し、
前記第2工程では、前記一次試験データを逐次暗号化して保存し、保存された該一次試験データを順次復号化して読み出し前記試験実績データに変換しながら再度暗号化して保存する。
【0012】
第2の発明に係る暗号化技術を用いた試験方法において、前記試験実績データに変換された前記一次試験データを消去することが好ましい。
【0013】
第2の発明に係る暗号化技術を用いた試験方法において、暗号化キーを取得して、暗号化された前記試験レシピ及び暗号化された前記試験実績データを任意に復号化して出力することができる。
【0014】
第2の発明に係る暗号化技術を用いた試験方法において、前記対象物の試験は、二次電池の充放電試験とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明に係る暗号化技術を用いた試験システム及び第2の発明に係る暗号化技術を用いた試験方法においては、試験レシピの暗号化及び試験実績データの暗号化が、試験を行う過程において自動で実行されるので、対象物の試験を行うために策定された試験方法及び得られた試験結果の機密保全を確実に図ることができると共に、暗号化作業の負担が発生しない。
【0016】
第1の発明に係る暗号化技術を用いた試験システムにおいて、試験実績データ保存手段が、一次試験データを逐次暗号化して保存する一次試験データ保存部と、一次試験データ保存部から一次試験データを順次復号化して読み出し試験実績データに変換しながら再度暗号化して保存する試験実績データ保存部とを有するので、及び第2の発明に係る暗号化技術を用いた試験方法において、第2工程で、一次試験データを逐次暗号化して保存し、保存された一次試験データを順次復号化して読み出し試験実績データに変換しながら再度暗号化して保存するので、試験中における一次試験データ及び試験実績データの機密保全が可能になる。
【0017】
第1の発明に係る暗号化技術を用いた試験システムにおいて、一次試験データ保存部で、試験実績データ保存部に読み出された一次試験データが消去される場合、第2の発明に係る暗号化技術を用いた試験方法において、試験実績データに変換された一次試験データを消去する場合、試験中における一次試験データの抜取りを防止することができると共に、機密データの管理負担を軽減することができる。
【0018】
第1の発明に係る暗号化技術を用いた試験システムにおいて、暗号化された試験レシピ及び暗号化された試験実績データが、第2のデータ復号化手段により復号化されて出力される場合、及び第2の発明に係る暗号化技術を用いた試験方法において、暗号化キーを取得して、暗号化された試験レシピ及び暗号化された試験実績データを任意に復号化して出力する場合、データの機密保全を確保して、試験レシピと試験実績データの閲覧の自由度を向上させることができる。
【0019】
第1の発明に係る暗号化技術を用いた試験システム及び第2の発明に係る暗号化技術を用いた試験方法において、対象物の試験が、二次電池の充放電試験である場合、二次電池の充放電試験を外部に委託しても、二次電池に関する機密データの漏洩を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施の形態に係る暗号化技術を用いた試験システムの説明図である。
図2】同暗号化技術を用いた試験システムの構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る暗号化技術を用いた試験方法の説明図である。
図4】同暗号化技術を用いた試験方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る暗号化技術を用いた試験システム(以下、単に試験システムという)10は、二次電池(対象物の一例)11の充放電試験(試験の一例)用に策定された試験レシピを暗号化して試験レシピファイルとして保存し、試験レシピファイルの読み出し要求に応じて復号化して試験レシピを出力する試験レシピ保存手段12と、試験レシピ保存手段12に対して試験レシピファイルの読み出しを行って取得した復号化された試験レシピに基づいて、二次電池11の充放電試験を行う充放電試験装置13(試験装置の一例)に動作指示を行う試験実行手段14とを有している。更に、試験システム10は、動作中の充放電試験装置13でリアルタイムに得られる一次試験データ(バイナリデータ)から、予め設定された形式の試験実績データを作成し暗号化してCSVデータファイルとして保存する試験実績データ保存手段15と、試験レシピ保存手段12に保存された試験レシピファイル及び試験実績データ保存手段15に保存されたCSVデータファイルをそれぞれ復号化して試験レシピ及び試験実績データとして出力するデータ復号化手段16とを有している。以下、詳細に説明する。
【0022】
ここで、二次電池11とは、電池エネルギーを消費しても、充電することにより再生可能な電池のことであって、具体的には、鉛電池、ニッケル−カドミウム蓄電池、ニッケル−水素蓄電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池等をいう。
また、二次電池11の充放電試験とは、二次電池11の充放電特性が要求性能を満たしているかを確認するために行う試験である。
更に、二次電池11の充放電試験用に策定された試験レシピ(充放電試験方法)とは、二次電池11の充放電特性を確認するために、例えば、定電流充電、定電圧充電、定電力充電、定電流放電、定電圧放電、定電力放電、充電休止、放電休止等のモード(基本動作)を複数組み合せて実行させる手法を規定した情報(データ)である。
そして、試験実績データとは、例えば、二次電池11の電池電圧、充放電電流、電池容量等の二次電池11の充放電特性判定に使用するデータである。
【0023】
図2に示すように、試験レシピ保存手段12は、二次電池11に実行させるモードの内容及び方法を規定する情報(データ)を順次受入れて複数のモードが時系列に並んだステップを構成するためのデータを作成する機能を備えたステップ条件設定部17と、複数のステップを選択させて時系列に並べてパターンを構成するためのデータを作成する機能を備えたパターン条件設定部18と、複数のパターンを選択させて時系列に並べて試験レシピを作成する機能を備えた試験条件設定部19と有している。また、試験レシピ保存手段12は、ステップ条件設定部17、パターン条件設定部18、及び試験条件設定部19とそれぞれ接続して、作成中又は作成完了のステップ情報、パターン情報、試験レシピ情報をそれぞれ表示するデータ表示部20とを有している。
【0024】
更に、試験レシピ保存手段12は、作成した試験レシピの暗号化が必要か否かを設定する機能を備えた暗号化判定部21と、暗号化判定部21で暗号化が必要と設定された際に暗号化キーを決めて、試験条件設定部19で作成した試験レシピを暗号化して出力する機能を備えた試験条件暗号化処理部22と、試験条件暗号化処理部22から出力された暗号化済み試験レシピを受入れ、又は暗号化判定部21で暗号化が不要と設定された際に試験条件設定部19で作成した試験レシピを受入れて試験レシピファイルとして保存する機能を備えたデータ記憶部23と、試験レシピファイルの読み出し要求を受付けて、データ記憶部23に保存されている暗号化済み試験レシピファイルは復号化して、暗号化されていない試験レシピファイルはそのままの状態で試験レシピとして出力する機能を備えた試験レシピ出力部24とを有している。
なお、ステップ条件設定部17、パターン条件設定部18、試験条件設定部19、暗号化判定部21、試験条件暗号化処理部22、データ記憶部23、及び試験レシピ出力部24は、上記の各機能を発現するプログラムを、例えば、パーソナルコンピュータに搭載することにより構成でき、データ表示部20には、パーソナルコンピュータPCに接続される表示器DPを使用することができる。
【0025】
図2に示すように、試験実行手段14は、二次電池11の充放電試験を実行するに当たり、試験レシピ保存手段12の試験レシピ出力部24に対して、試験レシピファイルの読み出し要求信号を出力する機能を備えた試験開始設定部25と、試験レシピ出力部24から取得した試験レシピに基づいて、充放電試験装置13に動作指示を行う機能を備えた試験制御部26とを有している。ここで、充放電試験装置13は、二次電池11と接続して、二次電池11の充電時に二次電池11に電力を供給し、二次電池11の放電時に二次電池11から電力を回収する機能を備えた電源部27と、試験実行手段14からの動作指示に基づいて電源部27を操作して二次電池11に対して充放電試験を行わせると共に、充放電試験中における二次電池11からの応答を示す一次試験データ(例えば、電圧値の時間変化及び電流値の時間変化)を求める電源制御部28とを有している。
なお、試験開始設定部25及び試験制御部26は、上記の各機能を発現するプログラムを、例えば、パーソナルコンピュータPCに搭載することにより構成でき、充放電試験装置13には、二次電池の充放電試験に従来から使用されているものを使用することができる。
【0026】
図2に示すように、試験実績データ保存手段15は、動作中の充放電試験装置13(電源制御部28)でリアルタイムに得られる一次試験データを逐次受入れ暗号化してバイナリデータファイルとして保存する機能を備えた一次試験データ保存部29と、一次試験データ保存部29から暗号化されたバイナリデータファイルを順次復号化して読み出し、一次試験データに予め設定された処理を施して設定された形式の試験実績データに変換しながら再度暗号化してCSVデータファイルとして保存する機能を備えた試験実績データ保存部30とを有している。更に、試験実績データ保存手段15は、バイナリデータファイルの一次試験データが試験実績データ保存部30に保存されたことを受けて、試験実績データ保存部30に読み出された内容の一次試験データを一次試験データ保存部29から消去する機能を備えた一次試験データ消去部31を有している。従って、バイナリデータファイルは、試験実績データ保存手段15に一時期のみ存在する一時ファイル(テンポラリファイル)である。
なお、一次試験データ保存部29、試験実績データ保存部30、及び一次試験データ消去部31は、上記の各機能を発現するプログラムを、例えば、パーソナルコンピュータPCに搭載することにより構成できる。
【0027】
図2に示すように、データ復号化手段16は、試験レシピ保存手段12に保存された試験レシピファイルと試験実績データ保存手段15の試験実績データ保存部30に保存されたCSVデータファイルをそれぞれ復号化して試験レシピと試験実績データとしてそれぞれ出力する機能を備えたデータ復号化処理部32と、復号化された試験実績データを表示する試験実績データ表示部33とを有している。なお、データ復号化処理部32は上記の機能を発現するプログラムを、例えば、パーソナルコンピュータPCに搭載することにより構成できる。また、試験実績データ表示部33には、パーソナルコンピュータPCに接続される表示器DPを使用することができる。
【0028】
ここで、データ復号化処理部32の機能を発現するプログラムを別のパーソナルコンピュータPC2に搭載することにより、試験システム10から独立した(例えば、試験システム10とは異なる複数の場所に)第2のデータ復号化手段を任意に構成することができる。これにより、暗号化された試験レシピ及び試験実績データは、暗号化キーの入力により、第2のデータ復号化手段によって復号化して、パーソナルコンピュータPC2に接続された表示器DP2で閲覧することができる。
【0029】
続いて、本発明の一実施の形態に係る暗号化技術を用いた試験システム10を用いた暗号化技術を用いた試験方法について説明する。
暗号化技術を用いた試験方法は、二次電池11の充放電試験を行う充放電試験装置13に動作指示を与える試験レシピを作成し、暗号化して試験レシピファイルとして保存する第1工程と、保存された試験レシピファイルを復号化して得られた試験レシピに基づいて充放電試験装置13を動作させて充放電試験を実行しながら、充放電試験装置13でリアルタイムに得られる一次試験データから、予め設定された形式の試験実績データを作成し暗号化してCSVデータファイルとして保存する第2工程と、暗号化された試験レシピファイル及びCSVデータファイルをそれぞれ復号化して試験レシピ及び試験実績データとして出力する第3工程とを有する。以下、順に説明する。
【0030】
図3に示すように、暗号化が必要と判定された場合、試験レシピ保存手段12において、暗号化キーを設定することにより、作成した試験レシピは保存時に自動で暗号化され、暗号化済み試験レシピファイルとして保存される。そして、試験実行手段14において暗号化キーを入力して、試験開始設定部25が試験レシピファイル読み出し要求を行うと、試験制御部26の読み込み時に試験レシピファイルは自動で復号化される。これにより、試験制御部26が取得した試験レシピに基づいて、充放電試験装置13の操作が可能になる。これにより、電池メーカーの開発要素が多数含まれる試験レシピに含まれる機密データを保護することができる。
なお、暗号化が不要と判定された場合、作成した試験レシピはそのまま試験レシピファイルとして保存され、試験開始設定部25が試験レシピファイル読み出し要求を行うと、試験レシピファイルはそのまま試験制御部26に読み込まれる。
【0031】
充放電試験装置13が充放電試験を開始すると、試験中における二次電池11からの応答を示す一次試験データが充放電試験装置13から出力され、試験実績データ保存手段15に入力される。このとき、試験実績データ保存手段15には、試験中の充放電試験装置13の電源制御部28からリアルタイムに得られる一次試験データが逐次入力され、自動で暗号化されバイナリデータファイルとして保存される。また、形成されたバイナリデータファイルは順次復号化され、一次試験データを試験実績データに変換する際に自動で暗号化されてCSVデータファイルとして保存される。そして、バイナリデータファイルの中で、CSVデータファイルに変換された一次試験データは消去される。これにより、充放電試験中の一次試験データの抜取りを防止することができると共に、電池メーカーの開発要素が多数含まれる試験実績データに含まれる機密データを保護することができる。
【0032】
図4に示すように、二次電池11の充放電試験が終了すると、データ復号化手段16において暗号化キーを入力することにより、試験レシピ保存手段12に保存された試験レシピファイルと試験実績データ保存手段15に保存されたCSVデータファイルがそれぞれ復号化されて試験レシピと試験実績データとして出力され、閲覧することができる。
なお、データ復号化処理部32の機能を発現するプログラムを別のパーソナルコンピュータPC2に搭載して第2のデータ復号化手段を構成しておくと、暗号化キーを取得し、暗号化済みの試験レシピファイル及びCSVデータファイルをパーソナルコンピュータPC2に入力することにより、復号化された試験レシピ及び試験実績データをパーソナルコンピュータPC2に接続された表示器DP2に出力(表示)することができる。これにより、データの機密保全を確保して、試験レシピと試験実績データの閲覧の自由度を更に向上させることができる。
【0033】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
【符号の説明】
【0034】
10:試験システム、11:二次電池、12:試験レシピ保存手段、13:充放電試験装置、14:試験実行手段、15:試験実績データ保存手段、16:データ復号化手段、17:ステップ条件設定部、18:パターン条件設定部、19:試験条件設定部、20:データ表示部、21:暗号化判定部、22:試験条件暗号化処理部、23:データ記憶部、24:試験レシピ出力部、25:試験開始設定部、26:試験制御部、27:電源部、28:電源制御部、29:一次試験データ保存部、30:試験実績データ保存部、31:一次試験データ消去部、32:データ復号化処理部、33:試験実績データ表示部
図1
図2
図3
図4