特許第6368540号(P6368540)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368540
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】床構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/02 20060101AFI20180723BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20180723BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20180723BHJP
   E04B 5/43 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   E04B5/02 C
   E04B1/94 X
   E04B1/58 600A
   E04B1/94 P
   E04B5/43 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-103492(P2014-103492)
(22)【出願日】2014年5月19日
(65)【公開番号】特開2015-218504(P2015-218504A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】岡 日出夫
【審査官】 富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−013531(JP,A)
【文献】 実用新案登録第2580891(JP,Y2)
【文献】 特開2013−204261(JP,A)
【文献】 特開2013−011080(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0146173(US,A1)
【文献】 実公平7−32691(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B1/58、1/62−1/99
5/00−5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質梁と
記木質梁の上に配置されて該木質梁に固定された脱落防止金具板と、
前記脱落防止金具板に端部が支持された乾式床パネルと、
前記脱落防止金具板の下面と前記木質梁との間及び前記脱落防止金具板の上面、前記脱落防止金具板の上面及び前記脱落防止金具板の前記乾式床パネル下へ張り出した下面、又は前記脱落防止金具板の前記乾式床パネル下へ張り出した下面に配置された耐火手段と、
を有する床構造。
【請求項2】
前記木質梁は、荷重を支持する梁心部と、前記梁心部の下面と側面に配置された外層部とを備え、
前記梁心部を残して前記外層部の上部を切り取った切り欠き部に、前記梁心部の側面と平行な鉛直部と、該鉛直部から外側へ延びる水平部とを有する前記脱落防止金具板を装着して、前記水平部に前記乾式床パネルを支持させている請求項1に記載の床構造。
【請求項3】
前記脱落防止金具板は、前記木質梁の梁長方向へ沿って連続して設けられている請求項1又は2に記載の床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁上に床パネルを設置して床を形成する床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乾式床パネルの端部を梁上に設置して床を形成する床構造がある。例えば、特許文献1には、軽量気泡コンクリートによって形成され、梁上に設置される床版が開示されている。
【0003】
しかし、梁が木質の場合、火災時に梁の側面の表層が消失したときに、乾式床パネルの端部が支持される梁部分が小さくなり、床パネルが十分に支持されなくなることが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−265691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は係る事実を考慮し、火災時においても木質梁で床パネルを支持した状態を維持することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様の発明は、木質梁と、下面と上面、又は下面に耐火手段が配置され、前記木質梁の上に配置されて該木質梁に固定された脱落防止金具板と、前記脱落防止金具板に端部が支持された乾式床パネルと、を有する床構造である。
【0007】
第1態様の発明では、下面と上面、又は下面に耐火手段が配置され、木質梁の上に配置されてこの木質梁に固定された脱落防止金具板に、乾式床パネルの端部が支持されているので、火災時においても木質梁で乾式床パネルを支持した状態を維持することができる。
【0008】
第2態様の発明は、第1態様の床構造において、前記木質梁は、荷重を支持する梁心部と、前記梁心部の下面と側面に配置された外層部とを備え、前記梁心部を残して前記外層部の上部を切り取った切り欠き部に、前記梁心部の側面と平行な鉛直部と、該鉛直部から外側へ延びる水平部とを有する前記脱落防止金具板を装着して、前記水平部に前記乾式床パネルを支持させている。
【0009】
第2態様の発明では、乾式床パネルを低い位置に配置することができるので、乾式床パネル上に形成される階の階高を高くすることができる。
【0010】
第3態様の発明は、第1又は第2態様の床構造において、前記脱落防止金具板は、前記木質梁の梁長方向へ沿って連続して設けられている。
【0011】
第3態様の発明では、1つの脱落防止金具板で複数の乾式床パネルを支持することができるので、複数配置される乾式床パネルのそれぞれに対応させて脱落防止金具板を設けるよりも、脱落防止金具板の取り付けを合理的に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記構成としたので、火災時においても木質梁で床パネルを支持した状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る床構造を示す正面断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る脱落防止金具板を示す斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る床構造を示す平面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る床構造のバリエーションを示す正面断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る床構造を示す正面断面図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る床構造を示す正面断面図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る床構造のバリエーションを示す正面断面図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る床構造のバリエーションを示す正面断面図である。
図9】本発明の第1実施形態に係る床構造のバリエーションを示す正面断面図である。
図10】本発明の第1実施形態に係る床構造のバリエーションを示す平面図である。
図11】本発明の第1実施形態に係る床構造のバリエーションを示す平面図である。
図12】本発明の第1実施形態に係る床構造のバリエーションを示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の第1実施形態に係る床構造について説明する。
【0015】
図1の正面断面図に示すように、第1実施形態の床構造10は、木質梁としての木質の梁12と、耐火手段としての石膏ボード14、16と、鋼製の脱落防止金具板18と、乾式床パネルとしての床版20と、を有して構成されている。
【0016】
梁12は、荷重を支持する木製の梁心部22と、梁心部22を取り囲むように梁心部22の下面と側面に配置された外層部24とを備えている。外層部24は、梁心部22の外周を取り囲む燃え止まり層26と、燃え止まり層26の外周を取り囲む木製の燃え代層28とを有して構成されている。
【0017】
なお、外層部とは、梁において荷重を支持する芯の部分(構造設計上の荷重を負担する部分)の外周に設けられている層の部分を意味し、例えば、梁が同一種類の木材によって形成されている場合には、この梁において荷重を支持する芯の部分の外周に設けられ、火災時に消失してしまうことを想定している部分が外層部となる。
【0018】
梁心部22及び燃え代層28は、木材によって形成されていればよい。例えば、梁心部22及び燃え代層28は、米松、唐松、檜、杉、あすなろ等の一般の木造建築に用いられる木材(以下、「一般木材」とする)によって形成してもよいし、これらの一般木材を板状や角柱状等の製材に加工し、この製材を複数集成し製材同士を接着剤により接着して一体化した、所謂、集成材であってもよい。
【0019】
また、燃え止まり層26は、火炎及び熱の進入を抑えて燃え止まり効果を発揮できる層であればよい。例えば、燃え止まり層26は、難燃性を有する層や熱の吸収が可能な層であればよい。
【0020】
難燃性を有する層としては、木材に難燃薬剤を注入して不燃化処理した難燃薬剤注入層が挙げられる。熱の吸収が可能な層は、一般木材よりも熱容量が大きな材料、一般木材よりも断熱性が高い材料、又は一般木材よりも熱慣性が高い材料によって形成してもよいし、これらの材料と一般木材とを組み合わせて形成してもよい(図1には、一般木材よりも熱容量が大きな材料であるモルタルによって形成された板部材30と、一般木材によって形成された板状の製材32とを交互に配置して、燃え止まり層26を形成している例が示されている)。また、難燃性を有する層と、熱の吸収が可能な層とを組み合わせて(例えば、難燃性を有する層と、熱の吸収が可能な層とを交互に配置して)燃え止まり層26を形成してもよい。
【0021】
一般木材よりも熱容量が大きな材料としては、モルタル、石材、ガラス、繊維補強セメント、石膏等の無機質材料、各種の金属材料などが挙げられる。一般木材よりも断熱性が高い材料としては、けい酸カルシウム板、ロックウール、グラスウールなどが挙げられる。一般木材よりも熱慣性が高い材料としては、セランガンバツ、ジャラ、ボンゴシ等の木材が挙げられる。
【0022】
図1に示すように、床版20は、軽量気泡コンクリートによって形成された板状部材34の上下面に、鋼板36をそれぞれ一体に設けた既製部材であり、床版20の端部を外層部24の上に載置させて、梁12に支持されている。
【0023】
脱落防止金具板18は、梁12の梁心部22を残して外層部24(燃え止まり層26と燃え代層28)の上部を切り取ったように形成された切り欠き部38に装着されて、梁12の上に配置されている。切り欠き部38の深さは、床版20の厚さと略等しくなっている。
【0024】
脱落防止金具板18は、中央部40と、中央部40の両端から垂下して設けられ、梁心部22の側面と平行な鉛直部42と、鉛直部42の下端部から外側へ延びる水平部44とを有しており、中央部40をビス46により梁心部22に固定し、水平部44に床版20の端部を載置することにより脱落防止金具板18によって床版20を支持している。すなわち、梁12の幅方向Wの左右一端部から他端部に渡って外層部24及び梁心部22の上面の全てを覆うように、脱落防止金具板18が設けられている。
【0025】
脱落防止金具板18は、図2の斜視図に示すように、梁12の梁長方向Lへ沿って連続して設けられている。すなわち、梁12の梁長方向Lに対し、1つの脱落防止金具板18で複数の床版20を支持している。脱落防止金具板18には、床版20の幅と略等しいピッチ(例えば、600mm)で、三角形状の補剛プレート48が設けられている。
【0026】
図1に示すように、脱落防止金具板18の水平部44の下面と、中央部40の上面には、石膏ボード14、16が配置されている。すなわち、脱落防止金具板18の床版20及び梁心部22の何れかと接しない面に、石膏ボード14、16が設けられている。
【0027】
図1に示すように、床版20は、床版20の端部を梁12の切り欠き部38へ落とし込むようにして取り付けられ、図3の平面図に示すように、梁12を四辺とする矩形の枠52A、52B、52C内に嵌め込まれる収まりで配置されている。図3の例では、4つの柱50に囲まれた領域54に、左から右へ枠52A、52B、52Cが配置されている。
【0028】
次に、本発明の第1実施形態に係る床構造の作用と効果について説明する。
【0029】
第1実施形態の床構造10では、図1に示すように、梁12において、火災が発生したときに火炎が燃え代層28に着火し、燃え代層28が燃焼する。そして、燃焼した燃え代層28は炭化する。これにより、梁12の外部から梁心部22への熱伝達を炭化した燃え代層28が抑制し、燃え止まり層26が吸熱するので、火災時、又は火災時と火災終了後における梁心部22の温度上昇を抑制し、梁心部22を着火温度(例えば、260°C)未満に抑えて梁心部22を燃焼させずに燃え止まらせることができる。よって、火災時の所定時間の間、又は火災時と火災終了後において、梁心部22によって荷重を支持させることができる。
【0030】
また、第1実施形態の床構造10では、図1に示すように、梁12の上に配置されてこの梁12に固定された脱落防止金具板18の水平部44に、床版20の端部が支持されているので、火災時においても木質の梁12で床版20を支持した状態を維持することができ、火災時における床構造10の安全性を高めることができる。脱落防止金具板18は、水平部44の下面に石膏ボード14が配置され、中央部40の上面に石膏ボード16が配置されているので、石膏ボード14、16が耐火被覆として機能して脱落防止金具板18に耐火性を付与し、火災時において脱落防止金具板18の所定強度を保持することができる。
【0031】
さらに、第1実施形態の床構造10では、図3に示すように、枠52A、52B、52C内に床版20を嵌め込むようにして、梁12に床版20を収まり良く取り付けることができる。また、床版20の周囲を梁12で囲むことより、床版20の床面内方向への移動や変形が抑えられるので、床版20の床面内のせん断剛性を向上させることができる。
【0032】
また、切り欠き部38の深さを床版20の厚さと略等しくすることにより、床版20の上面と、梁12(梁心部22)の上面(厳密には、石膏ボード16の上面)のレベルを揃えて、梁12に床版20を収まり良く取り付けることができる。
【0033】
さらに、床版20の端部を梁12の切り欠き部38に落とし込むようにして床版20が配置されるので、梁12に対して床版20を低い位置に配置することができる。これにより、床版20上に形成される階の階高を高くすることができる。
【0034】
また、第1実施形態の床構造10では、床版20の端部を梁12の切り欠き部38に落とし込むようにして床版20を取り付けることによって建物の床を構築することができるので、コンクリート打設によって床スラブを形成する施工方法に比べて、高い生産性と安全性を発揮させることができる。
【0035】
さらに、第1実施形態の床構造10では、脱落防止金具板18が梁12の梁長方向Lへ沿って連続して設けられているので、1つの脱落防止金具板18で複数の床版20を支持することができる。これにより、複数配置される床版20のそれぞれに対応させて脱落防止金具板を設けるよりも、脱落防止金具板18の取り付けを合理的に行うことができる。
【0036】
また、第1実施形態の床構造10では、脱落防止金具板18の中央部40をビス46により梁12(梁心部22)に固定することによって、梁12と脱落防止金具板18の一体化を図ることができる。これにより、脱落防止金具板18が設けられた梁12に、合成梁としての構造特性を期待することができる。すなわち、脱落防止金具板18が梁12の補強材となり、梁12の強度や剛性を高めることができる。ビス46の数を増やしたり、接着剤を併用したりすれば、一体性を高めることができるので好ましい。
【0037】
さらに、第1実施形態の床構造10では、床版20を軽量気泡コンクリートによって形成することにより、この床版20の軽量化を図ることができる。これにより、梁12の構造断面を小さくでき、梁12のスリム化を図ることができる。
【0038】
また、第1実施形態の床構造10では、梁12に切り欠き38を設けることにより、梁12のボリュームを減らすことができる。これにより、梁12を構成する高価な木材料を節約することができる。
【0039】
以上、本発明の第1実施形態について説明した。
【0040】
なお、第1実施形態では、図1に示すように、外層部24(燃え止まり層26と燃え代層28)の上部に切り欠き部38を形成した例を示したが、切り欠き部38は、燃え代層28の上部のみや、梁心部22の上部の一部と外層部24の上部に形成してもよい。
【0041】
また、第1実施形態では、図1に示すように、梁12の幅方向Wの両端に切り欠き部38を形成した例を示したが、建物の外周部に配置される梁等においては、図4の正面断面図に示す床構造56のように、梁12の幅方向Wの一端に切り欠き部38を形成するようにしてもよい。床構造56では、中央部40の一端側のみに鉛直部42及び水平部44を有する鋼製の脱落防止金具板58がビス46によって梁12の梁心部22に固定され、左側の外層部24の上面から中央部40の上面へ渡って、脱落防止金具板58に耐火性を付与する耐火手段としての石膏ボード60が配置されている。
【0042】
次に、本発明の第2実施形態の構成と作用及び効果について説明する。本発明の第2実施形態の説明において、第1実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0043】
第2実施形態の床構造62では、図5の正面断面図に示すように、切り欠き部38の深さを床版20の厚さよりも浅くしている。また、脱落防止金具板18の中央部40上には、打設面が床版20の上面と略面一となるように、後打ちコンクリートVが打設されて硬化している。床構造62では、脱落防止金具板18の中央部40の上面に配置された硬化した後打ちコンクリートVと、脱落防止金具板18の水平部44の下面に配置された石膏ボード14が、脱落防止金具板18に耐火性を付与する耐火手段となる。
【0044】
このように、切り欠き部38の深さを変えることにより、梁12に対する床版20の上面の高さを調整することができる。また、後打ちコンクリートVにより、隣り合って配置された床版20同士が一体化され、床面内のせん断剛性を向上させることができる。
【0045】
次に、本発明の第3実施形態の構成と作用及び効果について説明する。本発明の第3実施形態の説明において、第1実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0046】
第3実施形態の床構造64では、図6の正面断面図に示すように、梁12に切り欠き部が形成されていない。また、梁12(梁心部22と外層部24)の上面を覆うように配置される中央部66と、中央部66の両端から垂下し梁12の側面に沿って設けられた鉛直部68と、鉛直部68の下端部から外側へ延びる水平部70とを有する脱落防止金具板72が用いられており、中央部66をビス46により梁心部22に固定し、水平部44に床版20の端部を支持させている。すなわち、梁12の幅方向Wの左右一端部から他端部に渡って外層部24及び梁心部22の上面の全てを覆うように、脱落防止金具板72が設けられている。
【0047】
床構造64では、脱落防止金具板72の中央部66の上面に配置された石膏ボード74、脱落防止金具板72の中央部66の下面に配置された石膏ボード76、及び脱落防止金具板72の水平部70下面に施されて配置された湿式の耐火被覆78が、脱落防止金具板72に耐火性を付与する耐火手段となる。
【0048】
以上、本発明の第3実施形態について説明した。
【0049】
なお、第3実施形態では、折り曲げられた形状の脱落防止金具板72を用いた例を示したが、図7の正面断面図に示す床構造80のように、中央部66と水平部70を一直線に繋げた平板状の脱落防止金具板82を用いてもよい。
【0050】
以上、本発明の第1〜第3実施形態について説明した。
【0051】
なお、第1〜第3実施形態では、図1に示すように、梁12を、梁心部22、燃え止まり層26、及び燃え代層28を有して構成した例を示したが、梁12は、梁心部22に相当する部分(構造設計上の荷重を負担する部分)を有する木質の部材であればよい。
【0052】
また、第1〜第3実施形態では、図1に示すように、床版20を、軽量気泡コンクリートによって形成された板状部材34の上下面に鋼板36をそれぞれ一体に設けた既製部材とした例を示したが、床版20は、乾式の板状床部材であればよい。木質の梁12は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の梁に比べて柔らかくて変形し易いので、床版20には、軽量気泡コンクリート等で形成した軽量の床部材を用いるのが好ましい。
【0053】
さらに、第1〜第3実施形態の図1、4、5、6、7で示した脱落防止金具板18、58、72、82は、梁12の梁長方向Lへ沿って連続して設けられ、梁12の梁長方向Lに対して1つの脱落防止金具板18、58、72、82で複数の床版20を支持するものであるが、脱落防止金具板は部分的に設けてもよい。例えば、1つの床版20の端部を1つ又は複数の脱落防止金具板で直接支持するようにしてもよい。
【0054】
また、第1〜第3の実施形態では、図1、4、5、6、7に示すように、耐火手段を石膏ボード14、16、60、74、76、後打ちコンクリートV、及び湿式の耐火被覆78とした例を示したが、耐火手段は、脱落防止金具板18、58、72、82に耐火性を付与できるものであればよい。例えば、けい酸カルシウム板や耐火塗料であってもよい。
【0055】
さらに、第1〜第3の実施形態では、図1、4、5、6、7に示すように、ビス46によって脱落防止金具板18、58、72、82を梁12に固定した例を示したが、脱落防止金具板18、58、72、82を梁12に確実に固定できれば、ラグスクリューや接着剤等の他の方法で、脱落防止金具板18、58、72、82を梁12に固定してもよい。
【0056】
また、第1〜第3の実施形態では、図1、4、5、6、7に示すように、脱落防止金具板18、58、72、82の水平部44、70に床版20の端部を載置した例を示したが、脱落防止金具板18、58、72、82の水平部44、70に床版20の端部を固定しなくてもよいし、ラグスクリューボルト等で脱落防止金具板18、58、72、82の水平部44、70に床版20の端部を固定してもよい。図8の正面断面図には、ラグスクリューボルト84で脱落防止金具板18の水平部44に床版20の端部を固定している床構造86の例が示されている。
【0057】
ラグスクリューボルト等で脱落防止金具板18、58、72、82の水平部44、70に床版20の端部を固定すれば、梁12に対する床版20の固定度や、床面内のせん断剛性を高めることができるので好ましい。
【0058】
さらに、図9〜11に示す床構造88、90、92にして、床面内のせん断剛性を高めるようにしてもよい。図9の正面断面図に示す床構造88では、脱落防止金具板18の鉛直部42の外面と床版20の端面との間に、後打ちモルタルMを充填して硬化させている。床構造88では、硬化した後打ちモルタルMによって、梁12に対する床版20の固定度を高めることができる。
【0059】
図10の平面図、及び図11の平面図に示す床構造90、92では、平鋼からなるブレース部材94を床版20上に設けている。図12の正面断面図に示すように、ブレース部材94の端部が、ビスや溶接等(不図示)によって、脱落防止金具板18の中央部40の上面にせん断力の伝達可能に接合されている。ブレース部材94の取り付け施工上や、床版20の下階からの美観上において、床版20の上面側にブレース部材94を配置するのが好ましい。
【0060】
以上、本発明の第1〜第3実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1〜第3実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
10、56、62、64、80、86、88、90、92 床構造
12 梁(木質梁)
14、16、60、74、76 石膏ボード(耐火手段)
18、58、72、82 脱落防止金具板
20 床版(乾式床パネル)
22 梁心部
24 外層部
38 切り欠き部
42 鉛直部
44 水平部
78 耐火被覆(耐火手段)
V 後打ちコンクリート(耐火手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12