特許第6368575号(P6368575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368575
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】粉末セルロースの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B02C 17/14 20060101AFI20180723BHJP
   B02C 17/20 20060101ALI20180723BHJP
   B02C 17/00 20060101ALI20180723BHJP
   C08B 1/00 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   B02C17/14 A
   B02C17/20
   B02C17/00 D
   B02C17/00 C
   C08B1/00
【請求項の数】10
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-154186(P2014-154186)
(22)【出願日】2014年7月29日
(65)【公開番号】特開2016-30240(P2016-30240A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100171022
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 玉乃
(72)【発明者】
【氏名】和田 知也
(72)【発明者】
【氏名】植松 隆史
(72)【発明者】
【氏名】大崎 和友
(72)【発明者】
【氏名】野尻 尚材
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−233542(JP,A)
【文献】 特公昭46−015383(JP,B1)
【文献】 特許第150570(JP,C2)
【文献】 特開2013−139018(JP,A)
【文献】 特開2012−011331(JP,A)
【文献】 特開2000−171931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 17/14
B02C 17/00
B02C 17/20
B27L 11/00
B27L 11/06
B27L 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ状のセルロース含有原料を振動粉砕機を用いて粉砕する粉末セルロースの製造方法であって、
該振動粉砕機は、原料投入口及び排出口を備え、内部に円柱形の空間を有し、該円柱形の空間の中心軸が略水平になるように配置され、該中心軸に対し略垂直な面内方向に振動可能に保持された容器と、
該容器内部に、該中心軸方向に複数、振動可能に配置された円筒状媒体とを備え、
該複数の円筒状媒体は2種の円筒状媒体A及び円筒状媒体Bからなり、かつ、下記条件(1)〜(4)を満たし、
該振動粉砕機は原料投入口を該容器上部に備え、
該振動粉砕機の該容器内部に該セルロース含有原料を該原料投入口より導入し、該容器を振動させて粉砕し、得られた粉末セルロースを該排出口より排出する工程を有する、粉末セルロースの製造方法。
(1)円筒状媒体Aは、中心軸方向の長さが3mm以上、100mm以下であり、その中心軸が容器内部の前記円柱形の空間の中心軸と略平行になるように配置される(但し、円筒状媒体Bを除く)
(2)円筒状媒体Bは、中心軸方向の長さが70mm以上、110mm以下であり、その外周側面に開口面積25cm以上、250cm以下の開口部を少なくとも1つ有し、かつ該開口部を含む該外周側面の総面積に対する該開口面積の総和の比率が10%以上、50%以下である。
(3)円筒状媒体Bは、その中心軸が容器内部の前記円柱形の空間の中心軸と略平行になるように配置され、かつ少なくとも1つの円筒状媒体Bは、下記の式を満たす位置に配置される。
0≦d1≦0.3d
d1:容器の原料投入口中心から、円筒状媒体Bの開口部の中心までの、中心軸に平行な距離
d:容器の原料投入口中心から、該円柱形の空間の中心軸方向の端部までの、中心軸に平行な最長距離
(4)下記の式で計算される円筒状媒体間の平均間隙距離が0.1mm以上、30mm以下である。
平均間隙距離=(容器の中心軸方向の長さ−円筒状媒体の中心軸方向の長さの総和)/(円筒状媒体の数+1)
【請求項2】
円筒状媒体Bの開口部の数が1つ以上5つ以下である、請求項に記載の粉末セルロースの製造方法。
【請求項3】
円筒状媒体内部に、更に振動可能に配置された粉砕媒体を備える、請求項1又は2に記載の粉末セルロースの製造方法。
【請求項4】
粉砕媒体が、外径3mm以上、60mm以下の棒状媒体である、請求項に記載の粉末セルロースの製造方法。
【請求項5】
容器の内径と、該容器の内部に接する円筒状媒体の外径との差が、3mm以上、60mm以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の粉末セルロースの製造方法。
【請求項6】
円筒状媒体の外径に対する該円筒状媒体の厚みの比が、0.02以上、0.7以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の粉末セルロースの製造方法。
【請求項7】
チップ状のセルロース含有原料が、該セルロース含有原料から水を差し引いた残余の成分中のセルロース含有量が20質量%以上であり、下記計算式(1)で示されるセルロースI型結晶化指数が60%を超えるセルロース含有原料である、請求項1〜のいずれか1項に記載の粉末セルロースの製造方法。
セルロースI型結晶化指数(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
〔I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
【請求項8】
チップ状のセルロース含有原料を粉砕処理して得られる粉末セルロースの前記計算式(1)で示されるセルロースI型結晶化指数が50%以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の粉末セルロースの製造方法。
【請求項9】
原料投入口及び排出口を備え、内部に円柱形の空間を有し、該円柱形の空間の中心軸が略水平になるように配置され、該中心軸に対し略垂直な面内方向に振動可能に保持された容器と、該容器内部に、該中心軸方向に複数、振動可能に配置された円筒状媒体とを備え、該原料投入口を該容器上部に備え、
該複数の円筒状媒体は2種の円筒状媒体A及び円筒状媒体Bからなり、かつ、下記条件(1)〜(4)を満たす振動粉砕機。
(1)円筒状媒体Aは、中心軸方向の長さが3mm以上、100mm以下であり、その中心軸が容器内部の前記円柱形の空間の中心軸と略平行になるように配置される(但し、円筒状媒体Bを除く)
(2)円筒状媒体Bは、中心軸方向の長さが70mm以上、110mm以下であり、その外周側面に開口面積25cm以上、250cm以下の開口部を少なくとも1つ有し、かつ該開口部を含む該外周側面の総面積に対する該開口面積の総和の比率が10%以上、50%以下である。
(3)円筒状媒体Bは、その中心軸が容器内部の前記円柱形の空間の中心軸と略平行になるように配置され、かつ少なくとも1つの円筒状媒体Bは、下記の式を満たす位置に配置される。
0≦d1≦0.3d
d1:容器の原料投入口中心から、円筒状媒体Bの開口部の中心までの、中心軸に平行な距離
d:容器の原料投入口中心から、該円柱形の空間の中心軸方向の端部までの、中心軸に平行な最長距離
(4)下記の式で計算される円筒状媒体間の平均間隙距離が0.1mm以上、30mm以下である。
平均間隙距離=(容器の中心軸方向の長さ−円筒状媒体の中心軸方向の長さの総和)/(円筒状媒体の数+1)
【請求項10】
円筒状媒体Bの開口部が、該円筒状媒体Bの中心軸方向の端部より10mm以上内側に位置する、請求項に記載の振動粉砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末セルロースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物質を小粒径化して比表面積を増大させることにより、その物質の反応性が向上し、また、かさ密度等のハンドリング性に関与する性質が変化することは一般によく知られている。物質を小粒径化する方法において、最も基本的な単位プロセスの一つとして粉砕プロセスが挙げられ、古くは鉱物の粉砕や、炭酸カルシウム等の無機物の粉砕が行われており、その利用分野も非常に多岐にわたる。
また、結晶構造を有する物質は一般に反応性が乏しく、利用が困難であった。特定の粉砕プロセスでは、粉砕と同時に物質を非晶化することが可能となり、その反応性を著しく向上させることができる。その結果、化学反応によって非晶化物に各種の官能基を結合させ、その価値を飛躍的に高めることができる。
【0003】
近年では、環境問題への意識の高まりからバイオマス材料が注目されており、セルロース含有原料を粉砕して微粒化したセルロースや非晶化されたセルロースは、セルロースエーテル等のセルロース誘導体の原料や、化粧品、食品、バイオマス材料等の工業原料に用いられている。上記セルロース含有原料の粉砕に用いられる、様々な粉砕機も提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、短時間で原料を小粒径化し、生産性を向上させることを目的として、内部に円柱形の空間を有する容器と円筒状媒体、及び該円筒状媒体内側に粉砕媒体を備えた特定の振動粉砕機を用いる粉砕物の製造方法が開示されている。
特許文献2には、微粒化を行う粉砕機として、円筒容器内に、複数の凸部が形成され、中央に軸方向の穴部が形成された回転体を粉砕媒体として挿入し、円筒容器を公転させて木質系バイオマスを粉砕する装置が開示されている。
特許文献3には、微粒化を行う粉砕機として、円筒容器内に、突起のついた厚板円板を粉砕媒体として複数枚挿入し、円筒容器を上下振動させて木質系バイオマスを粉砕する装置が開示されている。
特許文献4には、高純度粉砕物を効率よく得ることを目的として、外円表面を滑らかに形成した円板リング型粉砕媒体とエンドプレートを装填する高純度粉砕物用の円板リング型粉砕媒体使用振動ミルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−139018号公報
【特許文献2】特開2009−233542号公報
【特許文献3】特開2008−93590号公報
【特許文献4】特開2012−11331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、リング形状の粉砕媒体を用いた粉砕機により、セルロース等の被粉砕物を微細に粉砕することが可能である。リング形状の粉砕媒体を用いた粉砕機では、該粉砕媒体と該粉砕媒体が収納される容器との間隙、及び該粉砕媒体同士の間隙に被粉砕物を導入して、該粉砕媒体と容器、及び該粉砕媒体同士の衝突を利用して該被粉砕物を粉砕する。しかしながら通常、上記間隙は狭いため、多量の被粉砕物を粉砕する場合や、被粉砕物の供給速度が速い場合には、粉砕機内が被粉砕物により閉塞するおそれがある。したがって多量の被粉砕物を迅速に粉砕処理する場合には、特許文献1〜4に記載の粉砕機を用いた粉砕方法よりも、より効率的な方法が求められている。
【0007】
本発明は、チップ状のセルロース含有原料から、粉末セルロースを効率よく製造することが可能な、生産性に優れた振動粉砕機及び粉末セルロースの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、原料投入口及び排出口を備え、内部に円柱形の空間を有し、該円柱形の空間の中心軸が略水平になるように配置され、該中心軸に対し略垂直な面内方向に振動可能に保持された容器と、該容器内部に、該中心軸方向に複数、振動可能に配置された所定の形状の2種の円筒状媒体を少なくとも備え、かつ、特定の条件を満たす振動粉砕機を用いることによって、前記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、次の〔1〕及び〔2〕を提供する。
〔1〕原料投入口及び排出口を備え、内部に円柱形の空間を有し、該円柱形の空間の中心軸が略水平になるように配置され、該中心軸に対し略垂直な面内方向に振動可能に保持された容器と、該容器内部に、該中心軸方向に複数、振動可能に配置された円筒状媒体とを備え、該複数の円筒状媒体は2種の円筒状媒体A及び円筒状媒体Bからなり、かつ、下記条件(1)〜(4)を満たす振動粉砕機。
(1)円筒状媒体Aは、中心軸方向の長さが3mm以上、100mm以下であり、その中心軸が容器内部の前記円柱形の空間の中心軸と略平行になるように配置される。
(2)円筒状媒体Bは、中心軸方向の長さが70mm以上、110mm以下であり、その外周側面に開口面積25cm2以上、250cm2以下の開口部を少なくとも1つ有し、かつ該開口部を含む該外周側面の総面積に対する該開口面積の総和の比率が10%以上、50%以下である。
(3)円筒状媒体Bは、その中心軸が容器内部の前記円柱形の空間の中心軸と略平行になるように配置され、かつ少なくとも1つの円筒状媒体Bは、下記の式を満たす位置に配置される。
0≦d1≦0.3d
d1:容器の原料投入口中心から、円筒状媒体Bの開口部の中心までの、中心軸に平行な距離
d:容器の原料投入口中心から、該円柱形の空間の中心軸方向の端部までの、中心軸に平行な最長距離
(4)下記の式で計算される円筒状媒体間の平均間隙距離が0.1mm以上、30mm以下である。
平均間隙距離=(容器の中心軸方向の長さ−円筒状媒体の中心軸方向の長さの総和)/(円筒状媒体の数+1)
〔2〕チップ状のセルロース含有原料を上記[1]の振動粉砕機を用いて粉砕する粉末セルロースの製造方法であって、該振動粉砕機の該容器内部に該セルロース含有原料を該原料投入口より導入し、該容器を振動させて粉砕し、得られた粉末セルロースを該排出口より排出する工程を有する、粉末セルロースの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の振動粉砕機、及び該振動粉砕機を用いた粉末セルロースの製造方法によれば、チップ状のセルロース含有原料を、閉塞することなく振動粉砕機内に導入できる。そのため、該原料の供給速度が速くても詰まりを起こすことなく、小粒径化された粉末セルロースを効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の振動粉砕機の一例を示す模式図である。
図2】円筒状媒体Aの一例を示す模式図である。
図3】円筒状媒体Bの一例を示す模式図である。
図4】本発明の実施形態の振動粉砕機において、さらに粉砕媒体として円柱状の棒状媒体を用いた一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[振動粉砕機]
本発明の振動粉砕機は、原料投入口及び排出口を備え、内部に円柱形の空間を有し、該円柱形の空間の中心軸が略水平になるように配置され、該中心軸に対し略垂直な面内方向に振動可能に保持された容器と、該容器内部に、該中心軸方向に複数、振動可能に配置された円筒状媒体とを備え、該複数の円筒状媒体は2種の円筒状媒体A及び円筒状媒体Bからなり、かつ、下記条件(1)〜(4)を満たすことを特徴とする。
(1)円筒状媒体Aは、中心軸方向の長さが3mm以上、100mm以下であり、その中心軸が容器内部の前記円柱形の空間の中心軸と略平行になるように配置される。
(2)円筒状媒体Bは、中心軸方向の長さが70mm以上、110mm以下であり、その外周側面に開口面積25cm2以上、250cm2以下の開口部を少なくとも1つ有し、かつ該開口部を含む該外周側面の総面積に対する該開口面積の総和の比率が10%以上、50%以下である。
(3)円筒状媒体Bは、その中心軸が容器内部の前記円柱形の空間の中心軸と略平行になるように配置され、かつ少なくとも1つの円筒状媒体Bは、下記の式を満たす位置に配置される。
0≦d1≦0.3d
d1:容器の原料投入口中心から、円筒状媒体Bの開口部の中心までの、中心軸に平行な距離
d:容器の原料投入口中心から、該円柱形の空間の中心軸方向の端部までの、中心軸に平行な最長距離
(4)下記の式で計算される円筒状媒体間の平均間隙距離が0.1mm以上、30mm以下である。
平均間隙距離=(容器の中心軸方向の長さ−円筒状媒体の中心軸方向の長さの総和)/(円筒状媒体の数+1)
【0012】
本発明の振動粉砕機について、図1〜4を用いて説明する。
本発明の振動粉砕機の実施形態の一例を図1に示す。図1(a)は、振動粉砕機の、略水平になるように配置された容器の中心軸方向の断面模式図であり、図1(b)は、振動粉砕機の、該中心軸に対し垂直な面内方向から見た模式図である。
図1に示す振動粉砕機100は、原料投入口11及び排出口12を備え、内部に円柱形の空間を有し、該円柱形の空間の中心軸が略水平になるように配置され、該円柱形の空間の中心軸に対し略垂直な面内方向に振動可能に保持された容器1と、該容器1内部に、該中心軸方向に複数、振動可能に配置された円筒状媒体とを備える。円筒状媒体は前記円柱形の空間の中心軸方向(以下、単に「軸方向」ともいう)に複数配置されている。なお図1においては、容器1の保持部は省略して図示されている。
ここで、複数の円筒状媒体は、2種の円筒状媒体、すなわち円筒状媒体A(図1及び図2の2A)及び円筒状媒体B(図1及び図3の2B)からなり、円筒状媒体2Bは、前記条件(2)で規定される開口部21を有する。図1(a)においては、円筒状媒体2Aを複数備え、円筒状媒体2Bを1つのみ備えた態様を示すが、本発明はこの態様に制限されない。なお本明細書の図面に関する記述において、円筒状媒体2A及び円筒状媒体2Bをまとめて「円筒状媒体2」という場合がある。
【0013】
図4に示すように、本発明の振動粉砕機100は、円筒状媒体2の内部(内側の空間)に、更に振動可能に配置された粉砕媒体3を備えていてもよい。本発明に用いられる粉砕媒体3としては、例えば棒状媒体や球状媒体が挙げられ、これらを併用してもよい。図4には粉砕媒体3として、円柱状の棒状媒体を複数備えた態様を示す。
図4においては、容器1内部に配置される円筒状媒体2、及び粉砕媒体3を表示するため、容器1の原料投入口11及び排出口12を含む一部及び容器1の保持部は省略して図示されている。
【0014】
本発明の振動粉砕機において、チップ状のセルロース含有原料を閉塞なく振動粉砕機内に導入でき、効率よく粉末セルロースを製造できる理由は定かではないが、次のように考えられる。
容器内部に円筒状媒体を備える本発明の振動粉砕機においては、該円筒状媒体が該容器内部で高速で回転しながら、円筒状媒体と容器との間隙及び円筒状媒体同士の間隙を被粉砕物(チップ状のセルロース含有原料)が通過することで粉砕される。ここで、被粉砕物を微細に粉砕するためには、円筒状媒体と容器との間隙及び円筒状媒体同士の間隙をある程度狭くする必要がある。一方、これらの間隙が狭すぎると容器内部における被粉砕物の流動性が悪化し、被粉砕物の閉塞や滞留の原因となり、被粉砕物の導入も不可能となる上に、粉末化も進行しなくなる。
被粉砕物であるチップ状のセルロース含有原料は、円筒状媒体と容器との間で跳ね返りながらこれらに沿って回転する。ここで本発明においては、円筒状媒体として、その外周側面に所定の開口部を有する円筒状媒体Bを用い、この円筒状媒体Bの開口部が容器の原料投入口近傍となるように所定の位置に配置される(条件(2)及び(3))。このため、セルロース含有原料が円筒状媒体Bの開口部から円筒状媒体内部に入り込み、セルロース含有原料の流動性が改善されて、容器内での該原料の閉塞が生じなくなるものと考えられる。
開口部を有する円筒状媒体Bは、開口部を有さないものと比較して容器との接触面積が小さくなる。しかしながら本発明においては、上記のようにセルロース含有原料の流動性がさらに改善されるため、円筒状媒体の振動及び回転により、円筒状媒体内部から外部へのセルロース含有原料の移動に際しても、短時間でより多くの間隙を通過することができる。
円筒状媒体Bは、開口部を設けるために、開口部を有さないものと比較して中心軸方向の長さを長くする必要があるので、容器内部に配置しうる個数が限られる。また開口部を設けた分、重量が軽くなるので、振動時に中心軸方向への振れが生じやすい。以上の点から、円筒状媒体Bを用いると円筒状媒体同士の接触面積も減少する。そこで本発明においては、円筒状媒体間の平均間隙距離を所定の範囲に設定する(条件(4))。平均間隙距離をある程度狭くすることにより、円筒状媒体の振動時の中心軸方向への振れを少なくし、かつ円筒状媒体間での接触回数を多くして、被粉砕物を微細に粉砕することができる。一方、平均間隙距離をある程度広くすることで被粉砕物の流動性悪化、閉塞、滞留を避けることができる。
したがって本発明においては、円筒状媒体Bを用いることで容器と円筒状媒体との接触面積、及び円筒状媒体同士の接触面積が減少するにもかかわらず、効率よく粉末セルロースを得ることができるものと考えられる。
【0015】
<容器>
本発明の振動粉砕機において、容器は、原料投入口及び排出口を備え、内部に円柱形の空間を有し、該円柱形の空間の静止状態の中心軸が略水平方向になるように配置され、該中心軸に対し略垂直な面内方向に振動可能な状態で保持されている。ここで、「円柱形の空間の中心軸」とは、該円柱の円形な2つの底面の重心を通る仮想の直線を意味し、「略水平方向」とは、水平面となす角度が−10〜10°である方向のことを指す(以下、「略水平方向」を単に「水平」ともいう)。容器の材質は特に限定されないが、例えば鉄、鋼鉄、ステンレススチール等の金属や合金を用いることができ、焼入れ等の処理が行われていてもよい。
容器の内部の空間の形状は、均一に粉砕を行う観点から、底面が正円や楕円等の略円形の円柱形であることが好ましい。
容器の大きさは特に限定されない。例えば、容器の内径は、50mm以上が好ましく、80mm以上がより好ましく、100mm以上が更に好ましく、1500mm以下が好ましく、1200mm以下がより好ましく、1000mm以下が更に好ましい。また、容器の内部の円柱形の空間の中心軸(以下、「容器の軸」ともいう。)方向の長さは、100mm以上が好ましく、120mm以上がより好ましく、150mm以上が更に好ましく、10000mm以下が好ましく、8000mm以下がより好ましく、6000mm以下が更に好ましい。本発明において容器の内径とは、容器の軸から容器内面までの最短距離の2倍を意味し、該円柱形の空間の底面が正円形である時は、該正円の直径に等しく、楕円形である時は、該楕円の短径に等しい。
【0016】
容器は、粉砕時には容器の軸に対し略垂直な面内方向に振動する。本発明における容器の振動とは、容器の軸の軌跡が直線を描く運動だけを指すものでなく、楕円、又は正円を描く運動を含む。
容器の振動数、振幅は特に限定されないが、振動数と振幅を増加させることで、容器、容器内部に配置された円筒状媒体、及び該円筒状媒体内部に配置された粉砕媒体に与えられる加速度を大きくすることができ、セルロース含有原料の粉砕速度を高めることができる。
よって、容器の振動数は、8Hz以上であることが好ましく、10Hz以上であることがより好ましく、12Hz以上であることが更に好ましい。容器の振幅は、粉砕速度の観点から、5mm以上であることが好ましく、6mm以上であることがより好ましく、7mm以上であることが更に好ましい。
一方、装置負荷の観点からは、容器の振動数は40Hz以下であることが好ましく、35Hz以下であることがより好ましく、30Hz以下であることが更に好ましい。また容器の振幅は25mm以下であることが好ましく、20mm以下であることがより好ましく、18mm以下であることが更に好ましく、15mm以下であることが更に好ましい。
容器の軸の軌跡が直線を描かない場合、容器の振動は複数の異なる長さの振幅を有するが、本発明において容器の振動の振幅とは、容器の振動の振幅の内、最も長い振幅を意味し、例えば容器の軸の軌跡が楕円を描く場合、該楕円の長径を意味する。
容器の振動機構は、振動モーター、偏心錘又は偏心加振装置等からなり、これらの機構は周知の機構と同様である。上記機構は、例えば、上述した特開2004−188833号公報の他、特開2008−93534号公報や特開2008−132469号公報等にも開示されている。
【0017】
容器内部へのチップ状のセルロース含有原料の導入は、粉砕処理を行いながら原料投入口から連続的に供給することにより行われる。図1(a)に示すように、原料投入口11は好ましくは容器上部、より好ましくは容器一端の上部に備え、排出口12は、好ましくは原料投入口11とは反対側の端の下部に備える。これにより、連続的な粉砕処理が可能となる。なお、通常、原料投入口が容器上部に備えられた場合には、原料投入口が容器の軸方向の側面部(容器の円柱形の空間の該円柱の底面部)に備えられた場合に比べ、セルロース含有原料が円筒状媒体内部に移動しにくく、該原料による閉塞が発生しやすい。これに対し、本発明は原料投入口が容器上部に備えられた場合にもセルロース含有原料による閉塞が生じず、効率よく粉末セルロースを製造できる点で有用である。
原料投入口及び排出口の断面形状には特に制限はないが、略円形であることが好ましい。原料投入口及び排出口の内径は、容器の内径以下であれば特に制限はない。本発明において原料投入口(又は排出口)の内径とは、原料投入口(又は排出口)の中心軸から、原料投入口(又は排出口)の内面までの最短距離の2倍を意味する。
原料投入口及び排出口は、容器に直接設けてもよく、他の部材を介して容器と連結していてもよい。図1(a)に示す振動粉砕機100においては、原料投入口11は容器一端の上部に直接設けられ、排出口12は、蓋部13を介して、容器1の原料投入口11とは反対側の端の下部に連結されている。
排出口12と容器1との接続部には、セルロース含有原料を容器1内に滞留させて粉砕を十分に行わせるために、排出口12近傍の容器1の内部に、容器1の円柱形の空間の該円柱の底面と平行になるよう堰を設けて排出量を制限してもよい。例えば図1(a)の振動粉砕機においては、蓋部13と容器1との境界面に堰を設けることができる。
【0018】
本発明の振動粉砕機は、同様の形状の容器を上下に2つ有していてもよい。この場合は、上段側の容器の排出口と下段側の容器の原料投入口は連結されており、上段側の原料投入口より導入されたチップ状のセルロース含有原料は、上段側の容器で粉砕された後、上段側の容器の排出口、下段側の容器の原料投入口を経由して下段側容器内に導入され、更に下段側の容器内で粉砕されて、下段側の容器の排出口から排出される。
本発明の振動粉砕機が上記態様である場合には、上段側及び下段側のうち少なくとも一方の容器及び該容器内部に配置された円筒状媒体が本発明の要件を満たしていればよい。本発明の振動粉砕機においては、少なくとも上段側の容器及び該容器内部に配置された円筒状媒体が本発明の要件を満たしていることが好ましい。
【0019】
容器の周囲には、冷却用のジャケットを付帯させ、粉砕時に冷却を行ってもよい。また、窒素パージ等を行うノズルを容器の原料投入口及び/又は排出口付近の容器上部に設けてもよい。
また、容器と円筒状媒体との衝突による容器内の損傷を防止するため、容器内にライニングとして筒状又は曲板状の鋼板を挿入してもよい。ライニングと円筒状媒体の衝突によりライニングが損傷した場合でも、ライニングは容易に交換することが可能であり、装置メンテナンスの観点からは好ましい。ライニングの厚みは特に限定されないが、耐久性の観点から、好ましくは1mm以上、より好ましくは3mm以上、更に好ましくは5mm以上である。また、好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下、更に好ましくは16mm以下である。
以上のような容器を備えた振動粉砕機としては、連続式振動ミル〔ユーラステクノ株式会社製「YAMT−50」等〕、振動ミル〔中央化工機株式会社製等〕、バイブロミル〔ユーラステクノ社製〕等が挙げられる。
【0020】
<円筒状媒体>
本発明の振動粉砕機において、円筒状媒体は、図1及び図4に示すように、容器の軸と各円筒状媒体の中心軸(以下「円筒状媒体の軸」ともいう)とを略平行にした状態で、容器内部に、該容器の軸方向に複数、振動可能に配置される。
円筒状媒体は、円形の底面を有する円柱の内部に、円柱形の空間を有しており、いわゆるドーナツ型の形状をしている。ここで、「円筒状媒体の軸」とは円筒状媒体の内部の円柱形の空間の2つの略円形の底面の中心を通る仮想の直線を意味する。「振動可能に配置」とは、容器を振動させた際に、円筒状媒体が、容器内で容器の軸に対して垂直な面方向、及び軸方向に振動可能な状態に配置されることをいう。
本発明の振動粉砕機は、容器を振動させることにより、円筒状媒体が容器内部で振動する。この円筒状媒体の振動により、容器と円筒状媒体との間隙及び円筒状媒体と円筒状媒体の間隙を通過するセルロース含有原料が粉砕される。さらに図4のように粉砕媒体を用いる場合には、円筒状媒体内部に振動可能に配置された複数の粉砕媒体による粉砕速度も向上する。したがって、チップ状のセルロース含有原料をより効率的に小粒径化することができる。セルロース含有原料中のセルロースが結晶性である場合には、粉砕と同時に該セルロースの低結晶化を行うことができる。
【0021】
ここで、本発明の振動粉砕機に備えられる複数の円筒状媒体は、以下に記載する2種の円筒状媒体A(図1の2A、図2)及び円筒状媒体B(図1の2B、図3)からなることを特徴とする。なお以下の記述において、円筒状媒体A及び円筒状媒体Bに共通する記載に関しては、これらをまとめて「円筒状媒体」ともいう。
【0022】
〔円筒状媒体A〕
円筒状媒体Aは、中心軸方向の長さが3mm以上、100mm以下であり、その中心軸が容器内部の前記円柱形の空間の中心軸と略平行になるように配置される(条件(1))。
図2は円筒状媒体Aの一例を示す模式図である。円筒状媒体Aの軸方向の長さ(図2におけるx)は、強度を確保する観点から、3mm以上であり、5mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましい。また、容器内部に設置する円筒状媒体の数を増やし、隣接する円筒状媒体間の間隙数を多くして、容器内部のセルロース含有原料の流動性を向上する観点から、円筒状媒体Aの軸方向の長さは、100mm以下であり、70mm以下が好ましく、50mm以下がより好ましい。
【0023】
円筒状媒体Aは、その外周側面に開口部を有さないことが好ましい。容器と円筒状媒体Aとの接触面積を増加させ、粉砕効率を向上させるためである。
【0024】
〔円筒状媒体B〕
円筒状媒体Bは、中心軸方向の長さが70mm以上、110mm以下であり、その外周側面に開口面積25cm2以上、250cm2以下の開口部を少なくとも1つ有し、かつ該開口部を含む該外周側面の総面積に対する該開口面積の総和の比率が10%以上、50%以下である(条件(2))。
図3は円筒状媒体Bの一例を示す模式図であり、図3(a)は円筒状媒体Bの斜視図、図3(b)は円筒状媒体Bの外周側面方向から見た平面図である。円筒状媒体Bの軸方向の長さ(図3(b)におけるy)は、円筒状媒体Bに開口部を設けつつ強度を確保する観点から、70mm以上であり、75mm以上が好ましく、80mm以上がより好ましい。また、円筒状媒体Bの重量が重すぎると、円筒状媒体Bの回転が妨げられる観点から、円筒状媒体Bの軸方向の長さは、110mm以下であり、100mm以下が好ましく、95mm以下がより好ましい。
【0025】
図3に示すように、円筒状媒体Bは、その外周側面に開口部21を少なくとも1つ有する。開口部21の1つあたりの開口面積は、25cm2以上であり、好ましくは30cm2以上、より好ましくは50cm2以上、更に好ましくは70cm2以上である。また該開口面積は、250cm2以下であり、好ましくは230cm2以下、より好ましくは200cm2以下である。該開口面積が25cm2未満であると円筒状媒体内部へのセルロース含有原料の導入効果が十分に発揮されず、原料の閉塞が生じる。また該開口面積が250cm2を超えると、円筒状媒体Bの強度が弱くなり、運転中に円筒状媒体Bの破損が生じる可能性がある。
【0026】
円筒状媒体Bにおける開口部は、円筒状媒体Bの該開口部を含む該外周側面の総面積に対する該開口面積の総和の比率(以下「開口面積比率」ともいう)が10%以上であり、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上である。また、当該比率は50%以下であり、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下である。円筒状媒体Bの開口面積比率が10%未満であると円筒状媒体内部へのセルロース含有原料の導入効果が十分に発揮されず、原料による閉塞が生じる。また開口面積比率が50%を超えると円筒状媒体Bの強度が弱くなり、運転中に円筒状媒体Bの破損が生じる可能性がある。
【0027】
円筒状媒体Bの開口部の数は1つ以上であればよく、円筒状媒体Bの強度を保つ観点から、好ましくは5つ以下、より好ましくは4つ以下である。
【0028】
円筒状媒体Bの開口部の形状は特に限定されず、正円状、楕円状等の略円形状、三角形、四角形、六角形等の多角形状などが挙げられる。開口部を2つ以上有する場合には、セルロース含有原料の均質な粉砕と、円筒状媒体Bの高い開口率及び強度を両立する観点から、該開口部は同一の形状及び大きさを有することが好ましい。
また、円筒状媒体Bの外周側面における開口部の配置も特に限定されないが、開口部を2つ以上有する場合には、セルロース含有原料の均質な粉砕と、円筒状媒体Bの高い開口率及び強度を両立する観点から、その外周側面に均等に配置されることが好ましい。
【0029】
円筒状媒体Bの開口部は、円筒状媒体Bの中心軸方向の端部より10mm以上内側に位置することが好ましく、15mm以上内側に位置することがより好ましい。図3(b)において、円筒状媒体Bの中心軸方向の端部とは図3(b)のzで示され、その端部zから開口部21までの最短距離z1が10mm以上であることが好ましいことを意味する。当該距離z1が10mm以上であると、開口部を有する円筒状媒体Bの加工時に熱による歪の発生が少なく、加工性が良好である。
【0030】
円筒状媒体Bは、その中心軸が容器内部の前記円柱形の空間の中心軸と略平行になるように配置され、かつ少なくとも1つの円筒状媒体Bは、下記の式を満たす位置に配置される(条件(3))。
0≦d1≦0.3d
d1:容器の原料投入口中心から、円筒状媒体Bの開口部の中心までの、中心軸に平行な距離
d:容器の原料投入口中心から、該円柱形の空間の中心軸方向の端部までの、中心軸に平行な最長距離
条件(3)について、図1(a)を用いて説明する。図1(a)において、円筒状媒体2Bの開口部21の中心を通りかつ軸方向に垂直な中心線を21B、容器の原料投入口中心を通る鉛直方向の中心線を11a、容器内部の円柱形の空間の中心軸方向の端部のうち、11aから遠い方の端部を通る鉛直方向の延長線を12aでそれぞれ示す。容器の原料投入口中心から、該端部までの、該中心軸に平行な最長距離dは、図1(a)の11a−12a間の距離に相当する。そして円筒状媒体2Bは、図1(a)の11a−21B間の距離d1が、0≦d1≦0.3dの位置となるように配置される。
なお、原料投入口の中心とは、原料投入口の原料の移動方向に対し垂直な断面の中心と、容器との接点を意味する。また円筒状媒体Bの開口部の中心とは、円筒状媒体Bに設けられた開口部の軸方向長さの最長距離の中点を意味する。
本発明の振動粉砕機においては、少なくとも1つの円筒状媒体Bが上記位置に配置されることで、原料投入口から導入されるセルロース含有原料が円筒状媒体Bの開口部から円筒状媒体内部に容易に導入することができる。このため、セルロース含有原料が容器内部で閉塞せず、効率よく粉末セルロースを製造できる。円筒状媒体Bの開口部の中心21Bが、原料投入口中心11aからの距離d1が0.3dを超える位置に配置されると、円筒状媒体内部へのセルロース含有原料の導入効果が十分に発揮されず、セルロース含有原料による閉塞が生じる。
上記観点から、少なくとも1つの円筒状媒体Bは、上記距離d1が、好ましくは0≦d1≦0.25d、より好ましくは0≦d1≦0.21dの位置となるように配置される。なかでも、セルロース含有原料の非晶化を促進する観点からは、d1は、好ましくは0.01≦d1≦0.25d、より好ましくは0.1≦d1≦0.25d、更に好ましくは0.1≦d1≦0.21dの位置となるように配置され、処理量を向上させる観点からは、好ましくは0≦d1≦0.2d、より好ましくは0≦d1≦0.1d、更に好ましくは0≦d1≦0.05dの位置となるように配置される。
【0031】
また、本発明の振動粉砕機では、下記の式で計算される円筒状媒体間の平均間隙距離が0.1mm以上、30mm以下である(条件(4))。
平均間隙距離=(容器の中心軸方向の長さ−円筒状媒体の中心軸方向の長さの総和)/(円筒状媒体の数+1)
上記平均間隙距離が30mmを超えると、円筒状媒体Bに軸方向への不安定な振動が生じるため、円筒状媒体Bの安定的な回転が妨げられ粉砕効率が低下する。また、上記平均間隙距離が0.1mm未満では、チップ状のセルロース含有原料が円筒状媒体の内部に円滑に供給されず、前述の容器の原料投入口付近でセルロース含有原料が閉塞する。したがって、連続的な粉砕処理が困難である。
上記観点から、上記平均間隙距離は5.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以下であることがより好ましい。また、該平均間隙距離は0.2mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましい。
円筒状媒体の数は、上記条件を満たすように決定すればよい。
【0032】
円筒状媒体の中心軸方向の長さの総和は、容器内部の円柱形の空間の中心軸方向の長さより短い限り、特に限定されないが、円筒状媒体と容器との接触面積を大きくして粉砕速度を高める観点から、容器内部の円柱形の空間の軸方向の長さに対する、円筒状媒体の中心軸方向の長さの総和の比(円筒状媒体の中心軸方向の長さの総和/容器内部の円柱形の空間の軸方向の長さ)は、0.80以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.90以上であることが更に好ましい。また、0.995以下であることが好ましく、0.99以下であることがより好ましく、0.98以下であることが更に好ましい。
【0033】
円筒状媒体の材質は特に限定されない。例えば鉄、アルミニウム、鋼鉄、ステンレススチール等の金属や合金、ジルコニア等のセラミクスを用いることができる。ステンレススチールや鋼鉄は焼入れ等の処理が行われていてもよい。
円筒状媒体の形状は、容器内部で円筒状媒体を振動させた際に、容器の振動による運動エネルギーを効率よく円筒状媒体に伝導して円筒状媒体の運動性を向上させる観点、及び、円筒状媒体内部に粉砕媒体が存在する場合には、その衝突エネルギーを大きくし、粉砕媒体同士及び円筒状媒体と粉砕媒体との衝突回数を増加させ被粉砕原料の粉砕速度を向上する観点から、円筒状媒体の内側空間の断面が正円状、楕円状等の略円形状、及び六角形以上の多角形状の筒型であることが好ましく、正円状の筒型がより好ましい。円筒状媒体の外側表面及び内側表面には突起があってもよいが、円筒状媒体の磨耗による粉砕効率の低下を防ぐ観点から、突起がないことが望ましい。
【0034】
容器の内径と、該容器の内部に接する円筒状媒体の外径との差(容器の内径−円筒状媒体の外径)は、3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましく、8mm以上であることが更に好ましく、10mm以上であることがより更に好ましい。また、該容器の内部に接する円筒状媒体の外径との差は、60mm以下であることが好ましく、55mm以下であることがより好ましく、50mm以下であることが更に好ましく、45mm以下であることがより更に好ましい。円筒状媒体の外径と容器の内径との差が上記範囲であると、セルロース含有原料の粉砕速度を高めることができる。容器内にライニングを挿入した場合には、容器の内径と、該容器の内部に接する円筒状媒体の外径との差から、更にライニングの厚みの2倍の長さを差し引いた値が上記範囲内であることが好ましい。
また、容器と円筒状媒体との接触頻度を高め、セルロース含有原料の粉砕速度を高める観点から、容器の内径に対する円筒状媒体の外径の比(円筒状媒体の外径/容器の内径)は0.50を超えることが好ましく、0.70以上がより好ましく、0.80以上が更に好ましい。また、容器内部における円筒状媒体の振動しやすさの観点から、容器の内径に対する円筒状媒体の外径の比は0.95以下が好ましく、0.90以下がより好ましい。
【0035】
本発明において、円筒状媒体の外径とは、円筒状媒体の軸から円筒状媒体の外側表面までの最長距離の2倍を意味し、例えば円筒状媒体の軸に垂直な断面の外周の形状が正円形である場合は、正円の直径を、楕円形である場合は、該楕円の長径を意味し、多角形である場合は、該多角形の重心から頂点までの距離の内、最長のものの2倍を意味する。
【0036】
円筒状媒体の強度の観点から、円筒状媒体の外径に対する該円筒状媒体の厚みの比(円筒状媒体の厚み/円筒状媒体の外径)は、0.02以上が好ましく、0.03以上がより好ましく、0.05以上が更に好ましい。
また、円筒状媒体の外径に対する該円筒状媒体の厚みの比は、円筒状媒体間での粉砕を促進し、セルロース含有原料の流動性を高める観点から、0.7以下が好ましく、0.6以下がより好ましく、0.5以下が更に好ましい。
特に粉砕媒体を用いる場合には、円筒状媒体内における粉砕媒体の充填量を増やし、粉砕媒体同士及び円筒状媒体と粉砕媒体との衝突回数を増加させ、被粉砕原料の粉砕速度を向上させることができる。
ここで「円筒状媒体の厚み」とは、円筒状媒体を形成する部材の厚みを意味し、円筒状媒体の軸方向の長さを意味しない。円筒状媒体の厚みが部位によって異なる場合は、円筒状媒体の厚みとは、最も厚い部位の厚みを意味する。
なお、複数の円筒状媒体Aの長さ、厚み、内径、外径、形状、材質は互いに同じであることが好ましい。円筒状媒体Bを複数用いる場合も同様である。
【0037】
<粉砕媒体>
本発明の振動粉砕機は、図2に示すように、円筒状媒体内部に、更に振動可能に配置された粉砕媒体を備えた態様でもよい。粉砕媒体の形状は、図4に示すような円柱状の棒状媒体でもよく、球状媒体でもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
本発明の振動粉砕機が同様の形状の容器を上下に2つ有している場合には、上段及び下段のいずれか一方の容器のみに粉砕媒体を備えた態様でもよく、上下段両方の容器に粉砕媒体を備えた態様でもよい。
粉砕媒体の材質は特に限定されない。例えば鉄、アルミニウム、鋼鉄、ステンレススチール等の金属や合金、ジルコニア等のセラミクスを用いることができる。鋼鉄は焼入れ等の処理が行われていてもよい。
【0038】
ここで、粉砕媒体の体積の積算値は、該粉砕媒体が接する円筒状媒体内側の空間容積の25%を超える値であることが好ましい。
すなわち、粉砕媒体は、円筒状媒体の内側に、該粉砕媒体の体積の積算値が、該粉砕媒体が接する円筒状媒体の内側の空間容積の25%を超える値となるように配置されることが好ましく、該粉砕媒体は複数配置されることが好ましい。粉砕媒体が複数である場合や、粉砕媒体の体積の積算値(容器内に存在する複数の粉砕媒体の体積の総和)が、円筒状媒体の内側の空間容積の25%を超える値である場合には、被粉砕原料の粉砕速度がより向上する。
なお、円筒状媒体の内側の空間容積とは、円筒状媒体の内側空間の、円筒状媒体の軸に垂直な断面の面積に、円筒状媒体の軸方向の長さを掛けた、円柱状の空間容積のことを指す。
【0039】
粉砕媒体同士及び円筒状媒体と粉砕媒体との衝突回数を増加させ粉砕速度を向上する観点から、粉砕媒体の体積の積算値は、該粉砕媒体が接する円筒状媒体の内側の空間容積の30%以上であることがより好ましく、40%以上であることが更に好ましい。また、セルロース含有原料を充填する空間を増やし、生産性を向上する観点から、粉砕媒体の体積の積算値は、該粉砕媒体が接する円筒状媒体の内側の空間容積の90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、70%以下であることが更に好ましい。
【0040】
棒状媒体の形状は、円筒状媒体との衝突による磨耗を抑制する観点から、円柱状又は四角形以上の多角形の角柱であることが好ましく、円柱状であることがより好ましく、断面が正円である円柱状であることが更に好ましい。
棒状媒体の外径は、衝突力を大きくし、セルロース含有原料の粉砕速度を向上する観点から、3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましく、7mm以上であることが更に好ましい。また、棒状媒体の数を増やし、衝突力及び粉砕媒体同士及び円筒状媒体と粉砕媒体との衝突回数を増加させて被粉砕原料の粉砕速度を高める観点から、上記外径は60mm以下であることが好ましく、50mm以下であることがより好ましく、45mm以下であることが更に好ましい。
ここで、棒状媒体の外径とは、棒の長さ方向に垂直な断面上にあって、該断面の重心を通り、断面の外周に両端を有する直線の長さをいい、断面の形状が正円である場合は、該正円の直径をいう。
【0041】
棒状媒体の長さは、容器内部の円柱形の空間の中心軸方向の長さより短い限り、特に限定されないが、円筒状媒体と粉砕媒体との接触面積を大きくして粉砕速度を高める観点から、容器内部の円柱形の空間の軸方向の長さに対する、棒状媒体の長さの比(棒状媒体の長さ/容器内部の円柱形の空間の軸方向の長さ)は、0.80以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.90以上であることが更に好ましい。また、0.995以下であることが好ましく、0.99以下であることがより好ましく、0.98以下であることが更に好ましい。
装置のメンテナンスを容易にするために、棒状媒体は、長さ方向に複数に分割されていてもよい。
【0042】
球状媒体の外径は、衝突力を大きくし、粉砕速度を向上する観点から、3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましく、7mm以上であることが更に好ましい。また、球状媒体の衝突力及び粉砕媒体同士及び円筒状媒体と粉砕媒体との衝突回数を増加させ、粉砕速度を向上する観点から、上記外径は60mm以下であることが好ましく、50mm以下であることがより好ましく、45mm以下であることが更に好ましい。球状媒体の外径とは、球の直径を意味する。
【0043】
粉砕媒体を用いる場合には、本発明の振動粉砕機は、粉砕媒体の外径に対する、該粉砕媒体が接する円筒状媒体の内径の比(粉砕媒体が接する円筒状媒体の内径/粉砕媒体の外径)が2.1以上であることが好ましい。
図2に示すように、複数設置された円筒状媒体の内部に、円筒状媒体の軸に垂直な面内に複数の粉砕媒体が存在するように配置することにより、粉砕媒体の衝突力及び粉砕媒体同士及び円筒状媒体と粉砕媒体との衝突回数を増加させ被粉砕原料の粉砕速度を向上することができる。この粉砕速度の観点から、粉砕媒体の外径に対する、該粉砕媒体が接する円筒状媒体の内径の比(粉砕媒体が接する円筒状媒体の内径/粉砕媒体の外径)は、2.2以上であることがより好ましく、2.5以上であることが更に好ましい。また、粉砕媒体の外径に対する、該粉砕媒体が接する円筒状媒体の内径の比は500以下であることが好ましく、350以下であることがより好ましく、100以下であることが更に好ましく、50以下であることがより更に好ましく、25以下であることがより更に好ましい。
本発明において円筒状媒体の内径とは、円筒状媒体の軸から、円筒状媒体の内面までの最短距離の2倍を意味する。
さらに、粉砕媒体を用いる場合には、容器を振動させた際に、粉砕媒体が円筒状媒体の内側から外側に出ると容器内部における円筒状媒体の振動を妨げる。よって容器内部の円柱形の空間の軸方向の長さと、円筒状媒体の軸方向の長さとの差が、棒状媒体の軸方向の長さ、又は球状媒体の直径よりも小さくなることが好ましい。
【0044】
[粉末セルロースの製造方法]
本発明の粉末セルロースの製造方法は、チップ状のセルロース含有原料を上述した本発明の振動粉砕機を用いて粉砕する粉末セルロースの製造方法であって、該振動粉砕機の容器内部にチップ状のセルロース含有原料を該原料投入口より導入し、該容器を振動させて粉砕し、得られた粉末セルロースを排出口より排出する工程を有することを特徴とする。
【0045】
<チップ状セルロース含有原料>
本発明に用いられるセルロース含有原料は、連続的に粉砕処理を行う観点から、チップ状のセルロース含有原料である。
粉砕対象であるセルロース含有原料としては、特に限定されるものではないが、例えば、各種木材チップ、各種樹木の剪定枝材、間伐材、枝木材、建築廃材、工場廃材などの木材類;木材から製造されたウッドパルプ、綿の種子の周囲の繊維から得られるコットンリンターパルプなどのパルプ類;段ボール、雑誌、上質紙などの紙類等が挙げられる。
粉砕対象のセルロース含有原料は、これらのうちの1種であっても、また、2種以上を混合したものであっても、どちらでもよい。粉砕対象のセルロース含有原料としては、これらのうちパルプ類や木材類が好ましく、パルプ類がより好ましい。
【0046】
本発明において、振動粉砕機により粉砕されるチップ状セルロース含有原料は、原料の種類と大きさにもよるが、後述する、裁断処理及び/又は乾燥処理を行ってもよい。
チップ状セルロース含有原料の形状は特に限定されず、立方体、直方体、粒状、及び棒状等であってよい。チップ状セルロース含有原料の大きさは、粉砕性向上の観点から、チップ表面のうちの任意の2点間の距離の最大値が10mm以下であることが好ましく、7mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることが更に好ましい。またチップ状への加工の観点から、チップ表面のうちの任意の2点間の距離の最小値が0.1mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましく、1mm以上であることが更に好ましい。
【0047】
本発明に用いられるセルロース含有原料は、該セルロース含有原料から水を差し引いた残余の成分中のセルロース含有量(α−セルロース含有量)が20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましく、70質量%以上がより更に好ましく、75質量%以上がより更に好ましい。α−セルロース含有量の上限は100質量%である。ここで、α−セルロース含有量は、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0048】
セルロース含有原料中のセルロースは、結晶部位及びアモルファス部位からなる。本発明において、セルロースI型結晶化指数とは、X線回折法による回折強度値からSegal法により算出したもので、下記計算式(1)により定義される。具体的なX線回折の測定条件については実施例で示す。
セルロースI型結晶化指数(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
〔I22.6は、X線回折におけるセルロースI型結晶の格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
ここで、セルロースI型とは、天然セルロースの結晶形のことであり、セルロースI型結晶化指数とは、セルロースの結晶領域量の全量に対するセルロースI型の割合を意味する。
本発明において被粉砕原料として用いられるセルロース含有原料中のセルロースのセルロースI型結晶化指数には特に限定はない。しかしながら、通常、セルロースの結晶化指数を低減するための粉砕処理においては、セルロース鎖の切断による重合度低下が伴う。この平均重合度が高い粉末セルロースを得る観点、及び原料コストの観点から、セルロース含有原料としては、結晶化指数を低減するための粉砕処理に、より曝されていないセルロース含有原料を用いることが好ましい。
よって、本発明において被粉砕原料として用いられるセルロース含有原料中のセルロースのI型結晶化指数は、60%を超えることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、75%以上であることが更に好ましい。
一方、結晶化指数が95%を超える極めて結晶化度の高いセルロース含有原料の入手が困難であることから、セルロース含有原料中のセルロースのI型結晶化指数は、90%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましい。
【0049】
(裁断処理)
本発明において、振動粉砕機により粉砕されるチップ状のセルロース含有原料は、シート状のセルロース含有原料を裁断処理することによっても得られる。シート状のセルロース含有原料を裁断処理する方法としては、セルロース含有原料の種類やシートのサイズにより適宜選択することができるが、例えば、シュレッダー、スリッターカッター及びロータリーカッターから選ばれる1種以上の裁断機を使用する方法が挙げられるが、シュレッダー又はスリッターカッターを使用することが好ましく、生産性の観点から、スリッターカッターを使用することがより好ましい。
スリッターカッターとは、シートの長手方向に沿った縦方向にロールカッターで縦切りして、細長い短冊状とし、次に、固定刃と回転刃でシートの幅方向に沿って短く横切りする裁断機であって、スリッターカッターを用いることにより、さいの目形状のセルロース含有原料を容易に得ることができる。スリッターカッターとしては、株式会社ホーライ製のシートペレタイザ、株式会社荻野精機製作所製のスーパーカッター等を好ましく使用でき、これらの装置を使用すると、シート状のセルロース含有原料を約1〜20mm角に裁断することができる。なお、シート状のセルロース含有原料のシートの厚さは、裁断機の性能にもよるが、裁断加工性の観点から0.1mm以上、3mm以下が好ましい。
【0050】
(乾燥処理)
裁断処理を行ったチップ状のセルロース含有原料は、振動粉砕機による粉砕処理前に乾燥処理することが好ましい。
一般に、市販のパルプ類は、5質量%を超える水分を含有しており、通常5〜30質量%程度の水分を含有している。したがって本発明では、粉砕効率を向上させる観点から、乾燥処理を行うことによって、セルロース含有原料の水分含量を9質量%以下に調整することが好ましく、4質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましく、2質量%以下が更により好ましく、1質量%以下が特に好ましい。この水分含量が9質量%以下であれば、粉砕効率は向上する。一方、この水分含量の下限は、粉末セルロースの生産性及び乾燥効率の観点から、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上である。
前記の水分含量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0051】
乾燥方法は、公知の乾燥手段を適宜選択すればよく、例えば、熱風受熱乾燥法、伝導受熱乾燥法、除湿空気乾燥法、冷風乾燥法、マイクロ波乾燥法、赤外線乾燥法、天日乾燥法、真空乾燥法、凍結乾燥法等が挙げられる。
前記の乾燥方法において、公知の乾燥機を適宜選択して使用することができ、例えば、「粉体工学概論」(社団法人日本粉体工業技術会編集 粉体工学情報センター1995年発行)176頁に記載の乾燥機等が挙げられる。
これらの乾燥方法及び乾燥機は単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。乾燥処理はバッチ処理、連続処理のいずれでも可能であるが、生産性の観点から連続処理が望ましい。
連続乾燥機は、伝熱効率の観点から伝導受熱型の横型攪拌乾燥機が好ましい。更に、微粉が発生しにくく、また、連続排出の安定性の観点から、二軸の横型攪拌乾燥機が好ましい。二軸の横型攪拌乾燥機としては、株式会社奈良機械製作所製の二軸パドルドライヤーを好ましく使用できる。
【0052】
乾燥処理における温度は、乾燥手段、乾燥時間等により一概には決定できないが、10℃以上が好ましく、25℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましく、250℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましく、150℃以下が更に好ましい。乾燥処理時間は0.01時間以上が好ましく、0.02時間以上がより好ましい。また、2時間以下が好ましく、1時間以下がより好ましい。必要に応じて減圧下で乾燥処理を行ってもよく、減圧下に乾燥処理を行う場合は、圧力は1kPa以上が好ましく、50kPa以上がより好ましく、120kPa以下が好ましく、105kPa以下がより好ましい。
【0053】
(粉砕処理)
裁断処理を行った後、必要に応じて乾燥処理を行ったチップ状のセルロース含有原料を、本発明の振動粉砕機によって粉砕する。本発明においてこれを「粉砕処理」と称する場合がある。
具体的には、被粉砕原料であるチップ状のセルロース含有原料を、本発明の振動粉砕機の容器内部に、原料投入口から導入し、該容器を振動させて粉砕し、得られた粉末セルロースを振動粉砕機の排出口から排出する。
粉砕処理時の容器の振動数、振幅、及びそれらの好ましい範囲は、前述の容器の項で述べたものと同様である。
【0054】
チップ状のセルロース含有原料の容器への供給速度によって、粉砕処理後の粉末セルロースの粒径や結晶化指数を調整することができる。容器の容積により好ましい供給速度は変わるが、結晶化指数を十分に低下させる観点から、容器の底面積に対する供給速度の比(供給速度/容器1の底面積)が40kg/(min・m2)以下であることが好ましく、30kg/(min・m2)以下であることがより好ましく、20kg/(min・m2)以下であることが更に好ましい。処理量を維持する観点から、前記容器の底面積に対する供給速度の比は0.5kg/(min・m2)以上であることが好ましく、1kg/(min・m2)以上であることがより好ましく、3kg/(min・m2)以上であることが更に好ましい。
【0055】
本発明の製造方法により製造される粉末セルロースは、メジアン径を1μm以上、200μm以下に低減したものであることが好ましい。求められるメジアン径は、使用するセルロース含有原料にもよるが、粉砕処理後の粉末セルロースのメジアン径が200μm以下になるとハンドリング性が向上すると共に、比表面積が増大し、種々の化学反応性等が向上する。該粉末セルロースのメジアン径は、実施例で示す測定方法により求めることができる。
【0056】
本発明の製造方法により製造される粉末セルロースは、好ましくは、含有されるセルロースの、前記計算式(1)から算出されるセルロースI型結晶化指数が50%以下である。
結晶化指数は、セルロースの物理的、化学的性質とも関係し、その値が大きいほど、セルロースの結晶性が高く、非結晶部分が少ないため、硬度、密度等は増すが、伸び、柔軟性、水や溶媒に対する溶解性、化学反応性は低下する。
セルロースのI型結晶化指数が50%以下であれば、セルロースの化学反応性は高い。この観点から、本発明の製造方法により製造される粉末セルロースのI型結晶化指数は、45%以下がより好ましく、40%以下が更に好ましく、35%以下がより更に好ましい。
【0057】
上述の実施形態に関し、本発明は粉末セルロースの製造方法、及び振動粉砕機を開示する。
<1>
チップ状のセルロース含有原料を振動粉砕機を用いて粉砕する粉末セルロースの製造方法であって、該振動粉砕機は、原料投入口及び排出口を備え、内部に円柱形の空間を有し、該円柱形の空間の中心軸が略水平になるように配置され、該中心軸に対し略垂直な面内方向に振動可能に保持された容器と、該容器内部に、該中心軸方向に複数、振動可能に配置された円筒状媒体とを備え、該複数の円筒状媒体は2種の円筒状媒体A及び円筒状媒体Bからなり、かつ、下記条件(1)〜(4)を満たし、該振動粉砕機の該容器内部に該セルロース含有原料を該原料投入口より導入し、該容器を振動させて粉砕し、得られた粉末セルロースを該排出口より排出する工程を有する、粉末セルロースの製造方法。
(1)円筒状媒体Aは、中心軸方向の長さが3mm以上、100mm以下であり、その中心軸が容器内部の前記円柱形の空間の中心軸と略平行になるように配置される。
(2)円筒状媒体Bは、中心軸方向の長さが70mm以上、110mm以下であり、その外周側面に開口面積25cm2以上、250cm2以下の開口部を少なくとも1つ有し、かつ該開口部を含む該外周側面の総面積に対する該開口面積の総和の比率が10%以上、50%以下である。
(3)円筒状媒体Bは、その中心軸が容器内部の前記円柱形の空間の中心軸と略平行になるように配置され、かつ少なくとも1つの円筒状媒体Bは、下記の式を満たす位置に配置される。
0≦d1≦0.3d
d1:容器の原料投入口中心から、円筒状媒体Bの開口部の中心までの、中心軸に平行な距離
d:容器の原料投入口中心から、該円柱形の空間の中心軸方向の端部までの、中心軸に平行な最長距離
(4)下記の式で計算される円筒状媒体間の平均間隙距離が0.1mm以上、30mm以下である。
平均間隙距離=(容器の中心軸方向の長さ−円筒状媒体の中心軸方向の長さの総和)/(円筒状媒体の数+1)
<2>
振動粉砕機が原料投入口を容器上部、好ましくは容器一端の上部に備える、上記<1>に記載の粉末セルロースの製造方法。
<3>
振動粉砕機が容器を上下に2つ有し、少なくとも上段側の容器及び該容器内部に配置された円筒状媒体が前記条件(1)〜(4)を満たしている、上記<1>又は<2>に記載の粉末セルロースの製造方法。
<4>
円筒状媒体Aの中心軸方向の長さが、好ましくは5mm以上、より好ましくは10mm以上であり、好ましくは70mm以下、より好ましくは50mm以下である、上記<1>〜<3>のいずれかに記載の粉末セルロースの製造方法。
<5>
円筒状媒体Bの中心軸方向の長さが、好ましくは75mm以上、より好ましくは80mm以上であり、好ましくは100mm以下、より好ましくは95mm以下である、上記<1>〜<4>のいずれかに記載の粉末セルロースの製造方法。
【0058】
<6>
円筒状媒体Bの開口部21の1つあたりの開口面積が、好ましくは30cm2以上、より好ましくは50cm2以上、更に好ましくは70cm2以上であり、好ましくは230cm2以下、より好ましくは200cm2以下である、上記<1>〜<5>のいずれかに記載の粉末セルロースの製造方法。
<7>
円筒状媒体Bの該開口部を含む該外周側面の総面積に対する該開口面積の総和の比率が、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上であり、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下である、上記<1>〜<6>のいずれかに記載の粉末セルロースの製造方法。
<8>
円筒状媒体Bの開口部の数が1つ以上5つ以下、好ましくは1つ以上4つ以下である、上記<1>〜<7>のいずれかに記載の粉末セルロースの製造方法。
<9>
少なくとも1つの円筒状媒体Bが、好ましくは0≦d1≦0.25d、より好ましくは0≦d1≦0.21dの位置となるように配置される、上記<1>〜<8>のいずれかに記載の粉末セルロースの製造方法。
<10>
少なくとも1つの円筒状媒体Bが、好ましくは0.01≦d1≦0.25d、より好ましくは0.1≦d1≦0.25d、更に好ましくは0.1≦d1≦0.21dの位置となるように配置される、上記<1>〜<8>のいずれかに記載の粉末セルロースの製造方法。
【0059】
<11>
少なくとも1つの円筒状媒体Bが、好ましくは0≦d1≦0.2d、より好ましくは0≦d1≦0.1d、更に好ましくは0≦d1≦0.05dの位置となるように配置される、上記<1>〜<8>のいずれかに記載の粉末セルロースの製造方法。
<12>
円筒状媒体間の平均間隙距離が、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上であり、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは1.0mm以下である、上記<1>〜<11>のいずれかに記載の粉末セルロースの製造方法。
<13>
容器内部の円柱形の空間の軸方向の長さに対する、円筒状媒体の中心軸方向の長さの総和の比(円筒状媒体の中心軸方向の長さの総和/容器内部の円柱形の空間の軸方向の長さ)が、好ましくは0.80以上、より好ましくは0.85以上、更に好ましくは0.90以上であり、好ましくは0.995以下、より好ましくは0.99以下、更に好ましくは0.98以下である、上記<1>〜<12>のいずれかに記載の粉末セルロースの製造方法。
<14>
容器の内径に対する円筒状媒体の外径の比(円筒状媒体の外径/容器の内径)が、好ましくは0.50を超え、より好ましくは0.70以上、更に好ましくは0.80以上であり、好ましくは0.95以下、より好ましくは0.90以下である、上記<1>〜<13>のいずれかに記載の粉末セルロースの製造方法。
<15>
円筒状媒体内部に、更に振動可能に配置された粉砕媒体を備える、上記<1>〜<14>のいずれかに記載の粉末セルロースの製造方法。
【0060】
<16>
粉砕媒体の外径に対する、該粉砕媒体が接する前記円筒状媒体の内径の比が2.1以上、好ましくは2.2以上、より好ましくは2.5以上であり、好ましくは500以下、より好ましくは350以下、更に好ましくは100以下、より更に好ましくは50以下、より更に好ましくは25以下である、上記<15>に記載の粉末セルロースの製造方法。
<17>
粉砕媒体の体積の積算値が、該粉砕媒体が接する前記円筒状媒体内側の空間容積の25%を超える値、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上であり、90%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である、上記<15>又は<16>に記載の粉末セルロースの製造方法。
<18>
粉砕媒体が、外径3mm以上、好ましくは5mm以上、より好ましくは7mm以上であり、60mm以下、好ましくは50mm以下、より好ましくは45mm以下の棒状媒体である、上記<15>〜<17>のいずれかに記載の粉末セルロースの製造方法。
<19>
容器内部の円柱形の空間の中心軸方向の長さに対する、棒状媒体の長さの比が、0.80以上、好ましくは0.85以上、より好ましくは0.90以上であり、0.995以下、好ましくは0.99以下、より好ましくは0.98以下である、上記<18>に記載の粉末セルロースの製造方法。
<20>
容器の内径と、該容器の内部に接する円筒状媒体の外径との差が、3mm以上、好ましくは5mm以上、より好ましくは8mm以上、更に好ましくは10mm以上であり、60mm以下、好ましくは55mm以下、より好ましくは50mm以下、更に好ましくは45mm以下である、上記<1>〜<19>のいずれかに記載の粉末セルロースの製造方法。
【0061】
<21>
円筒状媒体の外径に対する該円筒状媒体の厚みの比が、0.02以上、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上であり、0.7以下、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.5以下である、上記<1>〜<20>のいずれかに記載の粉末セルロースの製造方法。
<22>
チップ状のセルロース含有原料が、該セルロース含有原料から水を差し引いた残余の成分中のセルロース含有量が20質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは75質量%以上であり、下記計算式(1)で示されるセルロースI型結晶化指数が60%を超え、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上であるセルロース含有原料である、上記<1>〜<21>のいずれかに記載の粉末セルロースの製造方法。
セルロースI型結晶化指数(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
〔I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
<23>
チップ状のセルロース含有原料を粉砕処理して得られる粉末セルロースの前記計算式(1)で示されるセルロースI型結晶化指数が50%以下、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは35%以下である、上記<1>〜<22>のいずれかに記載の粉末セルロースの製造方法。
<24>
チップ状のセルロース含有原料の水分含量が、0.2質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上であり、9質量%以下、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、更により好ましくは1質量%以下である、上記<1>〜<23>のいずれかに記載の粉末セルロースの製造方法。
<25>
原料投入口及び排出口を備え、内部に円柱形の空間を有し、該円柱形の空間の中心軸が略水平になるように配置され、該中心軸に対し略垂直な面内方向に振動可能に保持された容器と、該容器内部に、該中心軸方向に複数、振動可能に配置された円筒状媒体とを備え、該複数の円筒状媒体は2種の円筒状媒体A及び円筒状媒体Bからなり、かつ、前記条件(1)〜(4)を満たす振動粉砕機。
【0062】
<26>
円筒状媒体Bの開口部が、該円筒状媒体Bの中心軸方向の端部より10mm以上、好ましくは15mm以上内側に位置する、上記<25>に記載の振動粉砕機。
【実施例】
【0063】
実施例で用いたチップ状のセルロース含有原料及び粉砕処理を行った粉末セルロースの水分含量、セルロースのI型結晶化指数、α−セルロース含有量、及び粉砕処理を行った粉末セルロースのメジアン径、見かけ比重(固め)の測定は以下に記載の方法で行った。
【0064】
(1)水分含量の測定
水分含量は、赤外線水分計〔株式会社島津製作所製「MOC−120H」〕を使用し、120℃にて測定を行い、30秒間の重量変化率が0.05%以下となる点を測定の終点とした。
【0065】
(2)結晶化指数の算出
セルロースのI型の結晶化指数は、チップ状のセルロース含有原料、又は粉末セルロースのX線回折強度を、X線回折装置〔株式会社リガク製「MiniFlexII」〕を用いて以下の条件で測定し、前記計算式(1)に基づいて算出した。
測定条件は、X線源:Cu/Kα−radiation,管電圧:30kV,管電流:15mA,測定範囲:回折角2θ=5〜35°、X線のスキャンスピードは40°/minで測定した。測定用サンプルは面積320mm2×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製した。
【0066】
(3)α−セルロース含有量の測定
チップ状のセルロース含有原料中のα−セルロース含有量は、日本木材学会編、木質科学実験マニュアル、(2000年、文永堂出版発行)の95−96頁に記載の方法に基づき、測定した。
初めに原料を10〜20g計量し、ソックスレー抽出器に入れ、エタノールと1,2−ジクロロエタンの体積比が1:2である混合溶剤を約150mL加えて6時間煮沸還流した。抽出後の試料を60℃の真空乾燥機で4時間乾燥させ、脱脂試料を得た。得られた脱脂試料2.5gを300mL三角フラスコにとり、蒸留水約150mL、及び亜塩素酸ナトリウム1.0g、及び酢酸0.2mLを加え、三角フラスコにゆるく蓋をして、70〜80℃の湯浴上で時々内容物を振りながら、1時間加熱した。その後、温度を保ったまま亜塩素酸ナトリウム1.0g、及び酢酸0.2mLを加え、70〜80℃の湯浴上で1時間加熱した。その後、亜塩素酸ナトリウム及び酢酸を加えて加熱する前記と同様の作業を2回繰り返した。白色の内容物を、1G−3ガラスフィルターで吸引ろ過し、冷水及びアセトンで洗浄後、105℃の乾燥機中で6時間真空乾燥し、デシケーター中で放冷した。放冷後、フィルター上の残渣をホロセルロース試料とした。該ホロセルロース量は、ろ過前後におけるフィルターの増加重量として求め、さらに以下の式で原料中のホロセルロース量B(質量%)を求めた。
B=フィルター増加重量/2.5g×100
前記ホロセルロース試料1.0gを300mLビーカーにとり、17.5%水酸化ナトリウム水溶液25mLを加え、ビーカーを時計皿で覆い、20℃の恒温槽中で3分間放置した後、5分間ガラス棒を使って試料を軽くつぶし、膨潤状態とした。ビーカーを時計皿で再度覆って20℃で放置し、試料に水酸化ナトリウム水溶液を加えてから30分後に、蒸留水25mLを加え、正確に1分間攪拌した。次いで、5分間放置した後、1G−3ガラスフィルターで吸引ろ過し、ろ液が中性になるまで20℃の水で手早く洗浄した。ろ取した内容物に、さらに10%酢酸40mLを注ぎ、吸引ろ過して液をできるだけ除去し、1Lの煮沸水で洗浄後、105℃の乾燥機中で6時間真空乾燥し、デシケーター中で放冷した。放冷後、フィルター上の残渣をα−セルロース試料とした。該α−セルロース量は、ろ過前後におけるフィルターの増加重量として求め、さらに以下の式でホロセルロース中のα−セルロース量C(質量%)を求めた。
C=フィルター増加重量/1.0g×100
次に、得られたα−セルロース試料を575℃、12時間で灰化した。灰化前及び灰化後の重量を秤量することにより、以下の式で灰分D(質量%)を求めた。
D=灰化後重量/灰化前重量×100
以上の結果から、灰分を差し引いた原料中のα−セルロース含有量E(質量%)を以下の式によって求めた。
E=B×C÷100×(1−D÷100)
【0067】
(4)メジアン径の測定
粉砕処理後の粉末セルロースのメジアン径は、レーザ回折散乱法粒度分布測定装置〔ベックマン・コールター株式会社製「LS13 320」〕を用いて測定した。測定条件は、測定時の分散媒体として純水を用い、体積基準のメジアン径を測定した。
【0068】
(5)見かけ比重(固め)の測定
見かけ比重(固め)の測定は、パウダーテスター〔ホソカワミクロン株式会社製〕を用いて測定した。規定の容器(容量100mL)の上部に付属のキャップを付け足して、容量が約200mLとなるようにした。スコップを用いて、チップ状のセルロース含有原料を静かに容器に投入し、容器内を原料で充満した。パウダーテスターのタッピング機能を利用して、タッピングを180秒間、180回行った。タッピング終了後、キャップを静かに外し、100mLの容器の上にある余分なサンプルをすりきり、100mLの容器中のサンプル重量を測定して見かけ比重(固め)を算出した。
【0069】
実施例1
〔裁断処理〕
セルロース含有原料であるシート状木材パルプ〔テンベック製「HV+」、800mm×600mm×1.0mm、結晶化指数80%、α−セルロース含有量96質量%、水分含量8.0質量%〕を、スリッターカッターであるシートペレタイザ〔株式会社ホーライ製「SG(E)−220」〕にかけ、約3mm×1.5mm×1.0mmの大きさの直方体に裁断した。
【0070】
〔乾燥処理〕
裁断処理により得られたチップ状のセルロース含有原料を、2軸横型攪拌乾燥機〔株式会社奈良機械製作所製、2軸パドルドライヤー「NPD−1.6W(1/2)」〕を用いて乾燥した。乾燥温度は140℃とし、あらかじめ前記原料を8kg仕込み、大気圧下において60分間バッチ処理で乾燥して、前記原料の水分含量を0.8質量%とした。その後、装置を2°傾け、連続処理にて前記原料を乾燥した。このとき前記原料の供給速度は18kg/hであった。連続処理で得られた乾燥した前記原料の水分含量も0.8質量%であった。得られた乾燥処理後の前記原料は、保管中の吸湿を防ぐため、粉砕処理の直前までアルミニウム製の袋で保管した。X線回折強度から算出した乾燥処理後の前記原料のセルロースのI型結晶化指数は81%であった。
【0071】
〔粉砕処理〕
上下に同じ形状の容器を2つ有している、連続式振動ミル〔ユーラステクノ株式会社製「YAMT−50」、容器内径210mm、容器内部の円柱形の空間の軸方向長さ820mm、容器容量28.4L〕の容器内部に、厚さ6mmのステンレス製のライニングを挿入し、この内部に円筒状媒体を配置し粉砕を行った。上段には、容器上部に備えられた原料投入口側から、外径182mm、内径152mm、軸方向長さ25.5mmのステンレス製の円筒状媒体Aを1個、外径182mm、内径152mm、軸方向長さ90mmであり、中心軸方向の両端部より15mmずつ内側に、軸方向長さ60mm×円周方向長さ80mmの四角形の開口部を、外周側面に均等に4つ備えた円筒状媒体Bを1個、外径182mm、内径152mm、軸方向長さ25.5mmのステンレス製の円筒状媒体Aを27個、それぞれ、円筒状媒体の軸方向が容器の軸方向と平行になる向きに配置した。円筒状媒体Bは、容器の原料投入口中心から容器内部の円柱形の空間の中心軸方向の端部までの、中心軸に平行な最長距離をdとした場合、容器の原料投入口中心から、円筒状媒体Bの開口部の中心までの、中心軸に平行な距離d1が0.00067dの位置に配置された。このとき、円筒状媒体Bの開口面積比率は37.3%であり、上段の円筒状媒体間の平均間隙距離は、0.53mmであった。
連続式振動ミルの下段にはすべて外径182mm、内径152mm、軸方向長さ25.5mmのステンレス製の円筒状媒体Aを31個、該円筒状媒体Aの軸方向が容器の軸方向と平行になる向きに配置した。
乾燥処理により得られたチップ状のセルロース含有原料(見かけ比重(固め)0.18g/mL)を供給速度8.3kg/(min・m2)で振動ミルの上段の原料投入口より容器内部に連続的に供給し、振幅8mm、振動数20Hzの条件で容器を振動させてチップ状のセルロース含有原料を粉砕し、下段の排出口から粉末状のセルロースを連続的に排出し、粉末セルロースを得た。結果を表1に示す。
【0072】
実施例2
実施例1において、円筒状媒体Bを、外径182mm、内径152mm、軸方向長さ90mmであり、中心軸方向の両端部より15mmずつ内側に、軸方向長さ60mm×円周方向長さ320mmの四角形の開口部を、外周側面に1つ備えた円筒状媒体Bとした以外は、実施例1と同様の方法で粉末セルロースの製造を行った。結果を表1に示す。
【0073】
実施例3〜4
円筒状媒体Bの配置を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で粉末セルロースの製造を行った。結果を表1に示す。
【0074】
実施例5
連続式振動ミルの上段、下段に配置した円筒状媒体の内部に、粉砕媒体として、外径30mm、長さ800mmのステンレス製の円柱状の棒状媒体(棒状媒体の長さ/容器内部の円柱形の空間の軸方向の長さ=0.976)をそれぞれ16本ずつ配置した(円筒状媒体内側の空間容積に対する棒状媒体の体積の積算値=62.3%)以外は、実施例1と同様の方法で粉末セルロースの製造を行った。結果を表1に示す。
【0075】
比較例1
連続式振動ミルの上段に配置した円筒状媒体を、外径182mm、内径152mm、軸方向長さ25.5mmのステンレス製の円筒状媒体Aを31個とした以外は、実施例1と同じ方法で粉末セルロースの製造を行った。結果を表1に示す。
【0076】
比較例2
実施例1において、円筒状媒体Bを、外径182mm、内径152mm、軸方向長さ90mmであり、中心軸方向の両端部より15mmずつ内側に、軸方向長さ60mm×円周方向長さ15mmの四角形の開口部を、外周側面に4つ備えた円筒状媒体Bとした以外は、実施例1と同じ方法で粉末セルロースの製造を行った。結果を表1に示す。
【0077】
比較例3
円筒状媒体Bの配置を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同じ方法で粉末セルロースの製造を行った。結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の振動粉砕機、及び該振動粉砕機を用いた粉末セルロースの製造方法によれば、チップ状のセルロース含有原料を、閉塞することなく振動粉砕機内に導入できる。そのため、チップ状のセルロース含有原料の供給速度が速くても詰まりを起こすことなく、小粒径化された粉末セルロースを効率よく製造することができる。したがって本発明の粉末セルロースの製造方法は生産性に優れ、工業的製法として有用である。
【符号の説明】
【0080】
1 容器
11 原料投入口
12 排出口
13 蓋部
2A 円筒状媒体A
2B 円筒状媒体B
21 円筒状媒体Bの開口部
21B 円筒状媒体Bの開口部の中心を通り、かつ軸方向に垂直な中心線
3 粉砕媒体(円柱状の棒状媒体)
100 振動粉砕機
図1
図2
図3
図4