(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
熱電対を備えた温度計測装置として、計測箇所に測温接点が設けられる熱電対の基準接点の温度を基準接点用のサーミスタにより検知する温度計測装置は従来から知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような温度計測装置では、次のようにして計測箇所の温度を計測するようになっている。
【0004】
図9は、計測箇所MSに測温接点MPが設けられた熱電対TCの基準接点RPを基準接点用のサーミスタTHにより検知する温度計測装置TMDの基本構成を示す概略構成図である。また、
図10は、熱電対TCの熱起電力特性を示すグラフである。
【0005】
図9に示すように、温度計測装置TMDは、熱電対TCとして2種類の金属導体MC1,MC2のそれぞれの一端を接合して閉回路を形成し、形成した閉回路において一端の接合部JN(測温接点MP)と他端の開放部OP,OP(基準接点RP)との間の温度差Td(
図10参照)により他端の開放部OP,OP間に熱起電力Vd(
図9および
図10参照)が生じる現象(ゼーベック効果)を利用する。
【0006】
すなわち、温度計測装置TMDは、熱電対TCの一端の接合部JNが測温接点MPとして計測箇所MSに設けられ、熱電対TCの他端の開放部OP,OP間に生じる熱起電力Vdを検出する。ここで、熱起電力Vdは、測温接点MPでの測温接点電圧Vm(
図10参照)と基準接点RPでの基準接点電圧Vr(
図10参照)との電位差とされている。そして、温度計測装置TMDは、熱電対TCの熱起電力特性(
図10参照)により、検出した熱起電力Vdに基づいて温度差Tdを求め、熱電対TCの他端の開放部OP,OPを基準接点RPとして基準接点用のサーミスタTHにより他端の開放部OP,OP(基準接点RP)の基準接点温度Trを検知し、検知した開放部OP,OP(基準接点RP)の基準接点温度Trに、求めた熱起電力Vdに基づく温度差Tdを加えることで、計測箇所MSにおける測温接点温度Tm=Tr+Td(
図10参照)を計測する。
【0007】
ところで、熱電対TCの基準接点RPを設置した設置位置とサーミスタTHにて検知する検知位置とは、通常は、完全には一致しておらず(若干ずれていて)、熱電対TCの基準接点RPを設置した設置位置とサーミスタTHにて検知する検知位置との間での温度ムラ(局所的なホットスポット)が発生する場合には(Tr≒Tr1)(
図9参照)、それだけ、計測箇所MSにおける測温接点温度Tmを誤って計測(Tm=Tr1+Td)する。例えば、基準接点RPの設置位置における基準接点温度Trに対してサーミスタTHにて検知する検知位置における基準接点温度Tr1が高くなっていると(Tr<Tr1)、それだけ、計測箇所MSにおける測温接点温度(Tm=Tr1+Td)を本来の温度(Tm=Tr+Td)よりも高く計測する。すなわち、基準接点RPの設置位置における基準接点温度TrとサーミスタTHの検知位置における基準接点温度Tr1との温度差が大きくなる程、計測箇所MSにおける測温接点温度Tmの計測誤差が大きくなる。
【0008】
この点に関し、特許文献1は、基準接点の温度補償を可能とするために、サーミスタの温度変化に伴う抵抗値変化を利用する構成を開示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1および
図2は、それぞれ、本発明の実施の形態に係るエンジン発電機100を正面側の斜め上方および背面側の斜め上方から視た斜視図である。
【0018】
本実施の形態では、ガスエンジン300をエンジン発電機100に適用した場合を例にとって説明する。エンジン発電機100は、この例では、コージェネレーションシステムに適用されている。コージェネレーションシステムとは、エンジン発電機100による発電によって電力消費機器(負荷)の需要電力を賄うとともに、この発電に伴って生じる廃熱を回収して利用(例えば給湯に利用)するシステムである。このため、エンジン発電機100には、廃熱を回収するための図示しない廃熱回収ユニット(補機ユニットと呼ばれる場合もある)が接続される。
【0019】
先ず、エンジン発電機100の全体構成を説明した後、エンジン発電機100の各構成要素について説明する。なお、エンジン発電機100の長手方向(幅方向)(
図1および
図2の左右方向)をX方向とし、長手方向Xにおいて一方側(
図1の例では右側、
図2の例では左側)をX1方向とし、他方側(
図1の例では左側、
図2の例では右側)をX2方向とする。エンジン発電機100の奥行き方向をY方向とし、奥行き方向Yにおいて一方側(
図1の例では手前側、
図2の例では奥側)をY1方向とし、他方側(
図1の例では奥側、
図2の例では手前側)をY2方向とする。また、エンジン発電機100の上下方向(高さ方向)をZ方向とする。長手方向X、奥行き方向Yおよび上下方向Zは、後述する
図3から
図8についても同様である。
【0020】
(エンジン発電機)
エンジン発電機100は、パッケージ内に収容される他、パッケージ内に収容されることなく設置(例えば屋内に設置)されることもある。
図1および
図2では、エンジン発電機100は、パッケージ内に収容される前の状態、或いは、パッケージ内に収容されることなく設置される状態を示している。
【0021】
エンジン発電機100は、共通台床(ベース)200、ガスエンジン300、発電機400、操作盤500、制御盤601および補機盤602,603(
図2参照)を備えている。エンジン発電機100は、共通台床200上に、ガスエンジン300、発電機400、操作盤500、制御盤601および補機盤602,603等の構成要素が載置されて固定されている。共通台床200は、複数の溝形鋼等が溶接されて構成されている。ガスエンジン300は、共通台床200上の長手方向Xにおいて中央位置から他方側X2に亘って配設されている。発電機400は、長手方向Xにおいてガスエンジン300の配設位置よりも一方側X1に配設されている。操作盤500および制御盤601は、奥行き方向Yにおいて発電機400の配設位置よりも一方側Y1(この例ではエンジン発電機100の正面側)に配設されている。また、補機盤602,603は、奥行き方向Yにおいて発電機400の配設位置よりも他方側Y2(この例ではエンジン発電機100の背面側)にそれぞれ配設されている。
【0022】
(発電機)
発電機400は、発電機本体401および発電機マウント402を備えている。発電機本体401は、発電機マウント402によって共通台床200上に弾性的に支持されている。また、発電機本体401は、図示しないステータの内部にロータ(図示省略)が回転自在に支持されて成り、該ロータに、ガスエンジン300のエンジン本体301から延びるクランクシャフト(図示省略)が連結されている。これにより、発電機400は、ガスエンジン300の運転に伴って、エンジン本体301におけるクランクシャフトの回転力を発電機本体401におけるロータが受けて発電を行うことができ、得られた電力を任意の電気系統に供給することができる。
【0023】
(ガスエンジン)
ガスエンジン300は、エンジン本体301およびエンジンマウント302を備えている。エンジン本体301は、エンジンマウント302によって共通台床200上に弾性的に支持されている。また、エンジン本体301は、シリンダブロック303、シリンダブロック303の上部に取り付けられたシリンダヘッド304、および、シリンダブロック303の下部に取り付けられたオイルパン305を備えている。ガスエンジン300としては、ガスを燃料にするものであれば、何れのものでもよく、それには限定されないが、天然ガス、プロパンガス、或いは、バイオガス等の燃料ガスを燃料とするガスエンジンを例示できる。
【0024】
エンジン本体301において、クランクシャフト(図示省略)は、長手方向Xにおいてシリンダブロック303から一方側X1に延びており、該クランクシャフトの一端(この例では一方側X1の端部)が、発電機400のロータ(図示省略)に連結されている。
【0025】
ガスエンジン300は、燃料供給系300a(
図1参照)、吸気系300b、排気系300c、エンジン冷却系300d、混合気冷却系300eおよび潤滑系300f(
図2参照)をさらに備えている。
【0026】
−燃料供給系−
燃料供給系300aは、廃熱回収ユニット(図示省略)に備えられた燃料ガス供給ユニット(図示省略)、および、燃料導入経路306(具体的には燃料導入配管)(
図1参照)を備えており、燃料ガス供給ユニットからの燃料ガスを燃料導入経路306により吸気系300bのミキサー(図示省略)に供給するようになっている。
【0027】
−吸気系−
吸気系300bは、エアクリーナ311(この例では並列に配設された2つのエアクリーナ311a,311b)、ミキサー、吸気経路(具体的には吸気配管)(図示省略)、過給機314(
図2参照)、インタークーラ315(
図1参照)、スロットル弁316(
図1参照)、および、吸気マニホールド(図示省略)を備えている。ここで、スロットル弁316は、開度が制御されることにより、混合気(混合ガス)の吸気マニホールドへの吸気量が調整されるようになっている。
【0028】
エアクリーナ311、ミキサーおよび過給機314は、長手方向Xにおいてシリンダヘッド304よりも一方側X1(この例では発電機400が配設されている側)に配設されている。インタークーラ315、スロットル弁316および吸気マニホールドは、奥行き方向Yにおいてシリンダヘッド304よりも一方側Y1に配設されている。
【0029】
−排気系−
排気系300cは、排気マニホールド321、排気経路322(
図2参照)および排気サイレンサ323を備えている。
【0030】
排気マニホールド321、排気経路322および排気サイレンサ323は、奥行き方向Yにおいてシリンダヘッド304よりも他方側Y2に配設されている。排気サイレンサ323は、長手方向Xにおいてシリンダヘッド304よりも一方側X1(この例では発電機400が配設されている側)に配設されている。
【0031】
排気系300cでは、エンジン本体301の各気筒における燃焼室において点火プラグの点火によって混合気が燃焼した排気ガスを外部に導く。これにより、ガスエンジン300は、クランクシャフトに回転力が生じ、発電機400を作動させるための出力を得ることができる。
【0032】
燃焼後の排気ガスは、排気マニホールド321、過給機314の排気タービン(図示省略)、および、排気サイレンサ323に到達する。排気サイレンサ323には、排気経路322を介して、廃熱回収ユニット(図示省略)に備えられた排気ガスボイラ(図示省略)が接続される。排気ガスボイラは、排気ガスの熱を回収し、熱を回収した排気ガスを大気に放出する。これにより、ガスエンジン300は、排気ガスボイラによって回収した熱を給湯用等の熱源として利用者に利用させることができるようになっている。
【0033】
−エンジン冷却系−
エンジン冷却系300dは、エンジン本体301のシリンダブロック303およびシリンダヘッド304の各ウォータジャケットに冷却水を流す構成とされている。
【0034】
エンジン冷却系300dは、冷却水導入経路331(具体的には冷却水導入配管)および冷却水導出経路332(具体的には冷却水導出配管)を備えている。冷却水導入経路331は、廃熱回収ユニットに備えられた冷却水供給経路(具体的には冷却水供給配管)(図示省略)に接続されている。また、冷却水導出経路332は、廃熱回収ユニットに備えられた冷却水回収経路(具体的には冷却水回収配管)(図示省略)に接続されている。つまり、エンジン冷却系300dは、冷却水供給経路から冷却水導入経路331に供給された冷却水を、シリンダブロック303のウォータジャケットおよびシリンダヘッド304のウォータジャケットに順に流してエンジン本体301を冷却した後、冷却水導出経路332を経て冷却水回収経路によって廃熱回収ユニットに戻す構成となっている。冷却水回収経路は、廃熱回収ユニットに備えられた熱回収熱交換器(図示省略)に接続されている。これにより、ガスエンジン300は、冷却水によってエンジン本体301から回収した熱を給湯用等の熱源として利用者に利用させることができるようになっている。
【0035】
−混合気冷却系−
混合気冷却系300eは、吸気系300bのインタークーラ315に冷却水を流すためのものである。
【0036】
混合気冷却系300eも、冷却水導入経路351(具体的には冷却水導入配管)(
図1参照)および冷却水導出経路352(具体的には冷却水導出配管)を備えている。冷却水導入経路351は、廃熱回収ユニットに備えられた冷却水供給経路(具体的には冷却水供給配管)(図示省略)に接続されている。また、冷却水導出経路352は、廃熱回収ユニットに備えられた冷却水回収経路(具体的には冷却水回収配管)(図示省略)に接続されている。つまり、混合気冷却系300eは、冷却水供給経路から冷却水導入経路351に供給された冷却水を、インタークーラ315に流して混合気を冷却した後、冷却水導出経路352を経て冷却水回収経路によって廃熱回収ユニットに戻す構成となっている。冷却水回収経路は、廃熱回収ユニットに備えられたクーラ放熱用熱交換器(図示省略)に接続されている。これにより、ガスエンジン300は、クーラ放熱用熱交換器での熱交換によってインタークーラ冷却用の冷却水を冷却することができるようになっている。
【0037】
−潤滑系−
潤滑系300fは、オイルパン305に貯留されている潤滑油をエンジン各部に供給し、これら各部の潤滑および冷却を行う。このため、潤滑系300fは、オイルポンプ361(
図2参照)、オイル吸引経路362(具体的はオイル吸引配管)(
図2参照)、オイル供給経路363(具体的にはオイル供給配管)(
図2参照)、オイルフィルタ(図示省略)、および、オイル回収経路364(具体的にはオイル回収管)(
図1参照)を備えている。
【0038】
オイルポンプ361は、電動式のものであって、オイルパン305に貯留されている潤滑油を、オイル吸引経路362を介して吸引し、吸引した潤滑油を、オイル供給経路363を経てエンジン各部に向けて圧送し、エンジン各部の潤滑および冷却を行った潤滑油を、オイル回収経路364を経てオイルパン305に流下し、オイルパン305に回収する。なお、オイルポンプ361は、クランクシャフトの回転力を受けて作動する機械式のものであってもよい。
【0039】
(操作盤)
操作盤500の前面(奥行き方向Yにおける一方側Y1に向く面)には、作業者が操作するための各種スイッチや、各種メータが設けられている。
【0040】
(制御盤)
制御系を構成する制御盤601には、エンジン発電機100の各構成要素の作動を制御するための制御装置700(後述する
図3、
図5から
図8参照)を含む各種電子機器(回路基板等)が収容されている。具体的には、制御装置700は、ガスエンジン300の運転制御、発電機400の運転制御、オイルポンプ361の制御等の各種制御動作を行うようになっている。
【0041】
(補機盤)
補機盤602,603は、各種ポンプ、各種ファン、各種電磁弁等の補機類を作動させるための遮断器、開閉器、接触器や、インバータ等の電気機器が収容されている。
【0042】
(温度計測装置)
次に、本実施の形態に係る温度計測装置800について
図3から
図8および
図10を参照しながら以下に説明する。
【0043】
図3は、本実施の実施形態に係る温度計測装置800の温度計測状態を示す概略ブロック図である。
図4は、
図3に示す温度計測装置800の基準接点RP部分を拡大して示す部分拡大図である。
【0044】
図3および
図4に示すように、温度計測装置800は、計測箇所MS(
図3参照)に測温接点MP(
図3参照)が設けられる熱電対810(
図1および
図3参照)の基準接点RPの温度を基準接点用のサーミスタ820により検知するものである。この例では、計測箇所MSは、エンジン本体301を冷却する冷却水の流れ方向W1(
図3参照)において冷却水導出経路332(
図1および
図3参照)の上流側の端部332a(
図1および
図3参照)、すなわちエンジン本体301(
図1から
図3参照)におけるウォータジャケットの出口部とされている。この場合、熱電対810は、エンジン冷却系300dを流れる冷却水の温度を検知する検知部(具体的にエンジン冷却水用水温センサー)として用いることができる。なお、熱電対810は、混合気冷却系300eを流れる冷却水の温度を検知する検知部(具体的には混合気冷却水用水温センサー)として用いてもよいし、潤滑系300fを流れる潤滑油の温度を検知する検知部(具体的には潤滑油用油温センサー)として用いてもよい。これにより、制御装置700は、温度計測装置800における熱電対810の測温によってエンジン本体301の温度を認識することができ、従って、エンジン本体301の温度状態を利用者に報知することができる。また、熱電対810は、冷却水の温度や潤滑油の温度を検知する検知部として用いるだけでなく、他の計測箇所の温度を検知する検知部として用いることができる。
【0045】
温度計測装置800は、熱電対810と、基準接点用のサーミスタ820と、制御装置700(
図3参照)を構成する制御基板710とを備えている。ここで、制御基板710は、筐体900(
図3参照)に収納されている。筐体900内には、制御基板710の他、インバータ910等の各種電気機器が収容されており、これらの電気機器を収容した筐体900が補機盤602(
図2参照)を構成している。
【0046】
熱電対810は、ゼーベック効果を利用するものであり、2種類の金属導体811,812(
図3参照)を有している。熱電対810は、この例では、Kタイプの熱電対とされている。ここで、熱電対のタイプは、熱電対の種類を示しており、日本工業規格(JIS)や国際電気標準会議(IEC:International Electrotechnical Commission)等で規格化されている。熱電対のタイプは、熱電対の種類に応じて「K」,「J」,「T」,「E」,「N」,「R」,「S」,「B」といった記号で表される。なお、Kタイプの熱電対は、プラス脚にニッケルおよびクロムを主成分とする合金(クロメル)を用い、マイナス脚にニッケルを主成分とする合金(アルメル)を用いた熱電対とされている。
【0047】
熱電対810は、2種類の金属導体811,812のそれぞれの一端が接合されており、他端が制御基板710に電気的に接続されている。すなわち、制御基板710には、熱電対810の閉回路が形成されている。これにより、制御装置700は、熱電対810にて検知した電位差により熱起電力を検出することができる。
【0048】
サーミスタ820は、制御基板710における基準接点RPの近傍位置(近接した位置)に設けられている。サーミスタ820は、制御基板710に電気的に接続されている。これにより、制御装置700は、サーミスタ820にて検知した電気抵抗値に基づいてサーミスタ820にて検知する検知位置(制御基板710における基準接点RPの近傍位置)の温度を検出することができる。
【0049】
制御装置700は、熱電対810において一端の接合部JN(
図3参照)(測温接点MP)と他端の開放部OP,OP(基準接点RP)との間の温度差Td(
図10参照)により他端の開放部OP,OP間に発生する熱起電力Vd(
図4および
図10参照)を検出する。
【0050】
詳しくは、温度計測装置800は、熱電対810の一端の接合部JNが測温接点MPとして計測箇所MS(この例では冷却水導出経路332の上流側の端部332a)に設けられ、他端の開放部OP,OP間に生じる熱起電力Vdを検出する。ここで、熱起電力Vdは、測温接点MPでの測温接点電圧Vm(
図10参照)と基準接点RPでの基準接点電圧Vr(
図10参照)との電位差とされている。
【0051】
そして、温度計測装置800は、熱電対TCの熱起電力特性(
図10参照)により、検出した熱起電力Vdに基づいて温度差Tdを求める。なお、熱電対810の熱起電力特性は、図示を省略した記憶部に予め記憶されている。温度計測装置800は、熱電対TCの他端の開放部OP,OPを基準接点RPとしてサーミスタ820により他端の開放部OP,OP(基準接点RP)の基準接点温度Tr(
図4および
図10参照)を検知し、検知した開放部OP,OP(基準接点RP)の基準接点温度Trに、求めた熱起電力Vdに基づく温度差Tdを加えることで、計測箇所MSにおける測温接点温度Tm=Tr+Td(
図3および
図10参照)を計測する。
【0052】
ところで、熱電対810が高価である点や、熱電対810の制御基板710への電気的な接続が困難である点を考慮して、本実施の形態では、筐体900内に収容された制御基板710と筐体900内に収容された端子台720(
図3参照)との間を、熱電対810の2種類の金属導体811,812とそれぞれ同等或いはほぼ同等の熱起電力特性を有する補償導線811a,812aにより電気的に接続している。また、補償導線811a,812aと制御基板710とを接続するコネクタ対CNについても、熱電対810の2種類の金属導体811,812とそれぞれ同等或いはほぼ同等の熱起電力特性を有するものを用いている。この例では、コネクタ対CNのうち、補償導線811a,812a側のコネクタCN1(
図4参照)は雌のコネクタとされ、制御基板710側のコネクタCN2(
図4参照)は雄のコネクタとされている。
【0053】
本実施の形態において、熱電対810の基準接点RPを設置した設置位置とサーミスタ820にて検知する検知位置とは、完全には一致しておらず(若干ずれていて)、熱電対810の基準接点RPを設置した設置位置とサーミスタ820にて検知する検知位置との間での温度ムラ(局所的なホットスポット)が発生する場合には(Tr≒Tr1)(
図4参照)、それだけ、計測箇所MSにおける測温接点温度Tmを誤って計測(Tm=Tr1+Td)する。例えば、基準接点RPの設置位置における基準接点温度Trに対してサーミスタ820にて検知する検知位置における基準接点温度Tr1が高くなっていると(Tr<Tr1)、それだけ、計測箇所MSにおける測温接点温度(Tm=Tr1+Td)を本来の温度(Tm=Tr+Td)よりも高く計測する。すなわち、基準接点RPの設置位置における基準接点温度TrとサーミスタTHの検知位置における基準接点温度Tr1との温度差が大きくなる程、計測箇所MSにおける測温接点温度Tmの計測誤差が大きくなる。
【0054】
(換気ファンについて)
この点、本実施の形態では、制御基板710の上方に制御基板710に向けて送風するように換気ファン730(
図3参照)が設けられている。詳しくは、換気ファン730は、制御基板710に近接または接触するように設けられている。
【0055】
図5は、
図3に示す筐体900内において、制御基板710の上方に制御基板710に向けて送風するように換気ファン730が設けられた状態を拡大して示す部分拡大図である。また、
図6から
図8は、制御基板710を収納する筐体900を示す図である。
図6は、筐体900の内部構成を示す正面図であり、
図7は、筐体900の正面図であり、
図8は、筐体900の右側面図である。なお、
図6において、筐体900内における補償導線811a,812aは図示を省略している。また、
図6から
図8において、筐体900には、熱電対810を含む各種接続配線が接続されていない状態を示している。
【0056】
図3および
図5から
図8に示すように、筐体900内において長手方向Xにおける一方側(この例では正面から視て右側)の上部に制御基板710が設けられている。
【0057】
なお、本実施の形態では、
図3および
図6に示すように、筐体900内において下部に端子台720が設けられており、長手方向Xにおける他方側(この例では正面から視て左側)の上部にインバータ910が設けられている。
図6に示すように、筐体900内には、電磁接触器920〜920、DCリアクトル930、電子式モータ監視リレー940、断線リレー950〜950、パワーリレー960〜960およびDC/DCコンバータ970等の電気機器が収容されている。電磁接触器920〜920、DCリアクトル930、電子式モータ監視リレー940および断線リレー950〜950は、インバータ910と端子台720との間に設けられている。パワーリレー960〜960およびDC/DCコンバータ970は、制御基板710と端子台720との間に設けられている。筐体900の正面900a(正面カバー)(
図7および
図8参照)の下部には、通気口901(
図7および
図8参照)が(この例では2つの通気口901〜901が長手方向Xに沿って)設けられており、筐体900の右側面900b(右側面カバー)(
図6から
図8参照)の上部には、通気口902(
図6から
図8参照)が(この例では1つの通気口902が奥行き方向Yの奥側に)設けられている。これにより、筐体900は、右側面900bにおける通気口902と正面900aにおける通気口901との間で空気が流通されるようになっている。また、
図8に示すように、制御基板710は、奥行き方向Yにおいて複数段に積層したものとされている。
【0058】
そして、制御基板710は、基板面710a(
図3から
図6および
図8参照)が鉛直または略鉛直になるように(この例では上下方向Zおよび長手方向Xの双方に沿うように)筐体900に設けられている。具体的には、換気ファン730は、制御基板710の上方において制御基板710の上側方(上端面)から制御基板710におけるサーミスタ820に向けて送風する。換気ファン730は、送風方向W2(
図3から
図8参照)がサーミスタ820に向くように(すなわち送風領域にサーミスタ820が含まれるように)筐体900に設けられている。換気ファン730は、制御基板710の出力系に電気的に接続されており、制御装置700からの指示信号により、少なくとも熱電対810が計測箇所MSにおける測温接点温度Tmを計測しているときに、回転駆動されるようになっている。
【0059】
本実施の形態では、制御基板710は、分割(具体的には2分割)されている。2分割された制御基板711,712(710)(
図3から
図8参照)は、互いに基板面710a,710a(
図3から
図6および
図8参照)が揃うまたは略揃うように上下方向Zに沿って並設されている。2分割された制御基板711,712のうち、下側の制御基板712に熱電対810の基準接点RPが電気的に接続されている。サーミスタ820(
図3から
図6参照)は、下側の制御基板712における基準接点RP(
図3から
図5参照)の近傍位置(近接した位置)に設けられている。上側の制御基板711の上方には、上側の制御基板711および下側の制御基板712に向けて送風するように換気ファン730(
図3、
図5から
図8参照)が設けられている。詳しくは、換気ファン730は、上側の制御基板711に近接または接触するように設けられている。具体的には、換気ファン730は、上側の制御基板711の上方において上側の制御基板711の上側方(上端面)から上側の制御基板711を介して下側の制御基板712におけるサーミスタ820に向けて送風する。
【0060】
(本実施の形態について)
本実施の形態では、制御基板710の上方に換気ファン730を設けるといった簡単な構成となっている。そして、制御基板710の上方に制御基板710に向けて送風するように設けられて駆動される換気ファン730により、制御基板710に設けられたサーミスタ820の周辺の空気を撹拌させることができ、ひいては、制御基板710の周囲温度(すなわち制御基板710に設けられた熱電対810の基準接点RPを設置した設置位置における基準接点温度Trおよび制御基板710に設けられたサーミスタ820にて検知する検知位置における基準接点温度Tr1)を均一化することができる。これにより、熱電対810の基準接点RPを設置した設置位置とサーミスタ820にて検知する検知位置との間での温度ムラ(例えば局所的なホットスポット)の発生を抑制することができ、従って、基準接点RPの設置位置における基準接点温度Trとサーミスタ820の検知位置における基準接点温度Tr1との温度差を小さくすることができる。
【0061】
また、本実施の形態では、制御基板710を分割して互いに基板面710a,710aが揃うまたは略揃うように上下に並べて設け、分割された制御基板711,712(710)のうち、熱電対810の基準接点RPが電気的に接続される下側の制御基板712にサーミスタ820を設け、上側の制御基板711の上方に上側の制御基板711および下側の制御基板712に向けて送風するように換気ファン730を設けて駆動することで、上側の制御基板711の上方に上側の制御基板711および下側の制御基板712に向けて送風するように設けられて駆動される換気ファン730により、下側の制御基板712に設けられたサーミスタ820の周辺の空気を撹拌させることができ、ひいては、下側の制御基板712の周囲温度(すなわち下側の制御基板712に設けられた熱電対810の基準接点RPを設置した設置位置における基準接点温度Trおよび下側の制御基板712に設けられたサーミスタ820にて検知する検知位置における基準接点温度Tr1)を均一化することができる。これにより、熱電対810の基準接点RPを設置した設置位置とサーミスタ820にて検知する検知位置との間での温度ムラ(例えば局所的なホットスポット)の発生を抑制することができ、従って、基準接点RPの設置位置における基準接点温度Tr1とサーミスタ820の検知位置における基準接点温度Tr1との温度差を小さくすることができる。この場合、換気ファン730は、上側の制御基板711を間にして下側の制御基板712を送風することから、換気ファン730の風量は、下側の制御基板712が換気ファン730から遠い程、および/または、筐体900内の制御基板710の設置スペースが大きい程、大きくすることができる。
【0062】
このように、本実施の形態によれば、サーミスタ820の温度変化に伴う抵抗値変化を予め把握することなく、従って簡単な構成でありながら、計測箇所MSにおける測温接点温度Tmの計測誤差を抑制することが可能となる。
【0063】
(その他の実施の形態)
本実施の形態では、制御基板710が上下に分割されて下側の制御基板712に熱電対810の基準接点RPが電気的に接続され、サーミスタ820が下側の制御基板712に設けられているが、それに代えて或いは加えて、上側の制御基板711に熱電対810の基準接点RPが電気的に接続され、サーミスタ820が上側の制御基板711に設けられていてもよい。この場合でも、換気ファン730は、上側の制御基板711の上方に上側の制御基板711および下側の制御基板712に向けて送風するように設けられて駆動されるので、基準接点RPが上側の制御基板711に電気的に接続される熱電対810の測温接点MPにおける測温接点温度Tmの計測誤差を効果的に抑制することができる。また、本実施の形態では、制御基板710は、上側の制御基板711と下側の制御基板712が上下に分割されているが、各制御基板711,712が一体(1枚)になっていてもよい。
【0064】
また、本実施の形態では、温度計測装置800をガスエンジン300に適用したが、それに限定されるものではなく、他のあらゆる物品に適用することができる。
【0065】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、かかる実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。