(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
発電プラントでは、蒸気発生器(例えば、原子力発電の原子炉や火力発電のボイラー)から発生した蒸気で蒸気タービンを駆動して発電し、蒸気タービンの排気を復水器にて冷却して凝縮させ、復水としている。復水器の冷却水として、一般に海水が用いられることが多い。
【0003】
この復水は、一般に復水ポンプ、復水昇圧ポンプ、及び給水ポンプによって段階的に昇圧されるとともに、復水ろ過装置にて不純物が除去され、復水脱塩装置にて脱塩処理され、給水加熱器にて昇温されて、蒸気発生器へ供給される。
【0004】
また、沸騰水型軽水炉の場合、蒸気発生器である原子炉への復水の供給とは別に、スピルオーバラインを介して制御棒駆動系へ復水を供給し、この復水を最終的に原子炉へ注水している。
【0005】
復水器での冷却は、一般に循環水系によって海水を汲み上げ、復水器内の細管へ海水を供給することにより、蒸気と海水との温度差による熱交換にて実施されている。
【0006】
このような海水により蒸気を冷却する発電プラントにおいて、復水器内の細管が損傷して復水器内に海水が漏えいした場合、発電プラントの運転を継続すると海水が発電プラント内に拡散し、プラント構成機器や配管等の腐食の原因となる。特に、沸騰水型軽水炉プラントの場合には、系統水の処理や、機器の点検と修理等、膨大な復旧作業が必要となる。このため、従来では、復水の水質(例えば導電率)が変化したことを運転員が発見したら、復水器内に海水が漏えいしたとして、運転員は、運転手順に従って手動操作にて海水が拡散するのを防止していた。
【0007】
しかし、運転員による手動操作では、大量の海水が漏えいすると操作が間に合わず、海水が発電プラント内に拡散する恐れがある。このような課題を解決する技術として、例えば特許文献1には、復水の水質に基づいて海水の漏えいを検知し、海水の漏えいを検知した場合には自動的に復水の供給を停止する発電プラント設備が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明では、発電プラントが原子力発電プラントであり、蒸気発生器が沸騰水型の原子炉である場合を例に挙げて説明する。ただし、本発明は、これ以外の発電プラント、例えば、発電プラントが原子力発電プラントであり蒸気発生器が加圧水型の蒸気発生器である場合や、発電プラントが火力発電プラントであり蒸気発生器がボイラーである場合にも適用できる。また、以下の説明に用いる図面において、同一の要素には同一の符号を付け、これらの要素の繰り返しの説明は省略する場合がある。
【実施例1】
【0017】
初めに、従来の発電プラントについて説明する。
【0018】
図1は、従来の発電プラントの構成の概要を示す模式図である。
図1に示すように、従来の発電プラントは、蒸気発生器である原子炉1、高圧蒸気タービン2、低圧蒸気タービン3、及び復水器4を備える。原子炉1で発生した蒸気は、初めに高圧蒸気タービン2、次に低圧蒸気タービン3を駆動する。低圧蒸気タービン3から排出された蒸気は、復水器4で冷却され、凝縮して復水となる。復水は、復水器4から原子炉1に供給される。
【0019】
発電プラントは、さらに、主蒸気隔離弁1a、循環水系17、復水器細管18、復水ポンプ6、復水昇圧ポンプ9、給水ポンプ11、給水加熱器10a、10b、復水ろ過装置7、復水脱塩装置8、制御棒駆動系14、スピルオーバライン13、スピルオーバ止め弁13a、タービンバイパス弁15、復水器アテンペレータスプレイ16、海水漏えい検出装置5a〜5e、及び復水器出口弁30を備える。
【0020】
主蒸気隔離弁1aは、原子炉1から蒸気を排出する配管に設けられ、点検などで高圧蒸気タービン2への蒸気の供給を行わない場合、原子炉1から高圧蒸気タービン2への蒸気の供給を遮断する。
【0021】
循環水系17と復水器細管18は、復水器4に蒸気を凝縮するための海水(冷却水)を供給するためのシステムである。循環水系17は、海水を汲み上げるポンプを備え、復水器4内に配置されている復水器細管18へ海水を供給し、海水を復水器4内に循環させる。
【0022】
復水ポンプ6、復水昇圧ポンプ9、及び給水ポンプ11は、復水器4内の復水を原子炉1へ供給するための機器である。復水ポンプ6は、復水器4から排出された復水を昇圧する。復水昇圧ポンプ9は、復水ポンプ6で昇圧された復水を更に昇圧する。給水ポンプ11は、復水昇圧ポンプ9で昇圧された復水を更に昇圧する。
【0023】
給水加熱器10a、10bは、原子炉1へ供給される復水を昇温するための機器である。
【0024】
復水ろ過装置7、及び復水脱塩装置8は、復水中の不純物を取除き、復水の水質を保持するための機器である。復水ろ過装置7は、粒子状の物質を復水からろ過する。復水脱塩装置8は、復水からイオン状の物質を除去し脱塩する。
【0025】
制御棒駆動系14、スピルオーバライン13、及びスピルオーバ止め弁13aは、原子炉1の制御棒を駆動させるためのシステムである。スピルオーバライン13は、復水器4から原子炉1に復水を供給する配管35(復水配管)から分岐する配管であり、この分岐点45は、復水器4から原子炉1への復水の流れにおいて、復水脱塩装置8の下流側に設けられる。スピルオーバライン13は、スピルオーバ止め弁13aが設けられ、制御棒駆動系14に復水を供給する。制御棒駆動系14に供給された復水は、原子炉1へ供給される。
【0026】
タービンバイパス弁15は、原子炉1から発生する主蒸気の圧力を制御するために、自動的に開閉して、主蒸気を復水器4に排出するための機器であり、原子炉1から復水器4に蒸気を排出する配管に設けられる。
【0027】
復水器アテンペレータスプレイ16は、復水が流れる配管16aと、配管16aに設けられた復水器アテンペレータスプレイ弁16bとを備え、タービンバイパス運転時(タービンバイパス弁15が開いたとき)に、原子炉1から復水器4に排出された高温の蒸気を冷却するための機器である。復水器アテンペレータスプレイ弁16bは、タービンバイパス弁15が開くと自動的に開く。復水器アテンペレータスプレイ弁16bが開くことにより、復水器アテンペレータスプレイ16は、復水ポンプ6で昇圧した復水を、タービンバイパス弁15を通って原子炉1から復水器4に流入した高温蒸気に噴霧して、この蒸気を冷却し、高温蒸気が復水器4から低圧蒸気タービン3へ逆流して低圧蒸気タービン3が損傷するのを防止する。復水器アテンペレータスプレイ16の復水が流れる配管16aは、復水器4から原子炉1に復水を供給する配管35(復水配管)に接続するが、この接続点40は、復水配管35の復水の流れにおいて、復水ろ過装置7及び復水脱塩装置8の下流側で、復水昇圧ポンプ9、及び給水ポンプ11の上流側に設けられる。このように、復水器アテンペレータスプレイ16には、不純物が取除かれ、水質が保持された復水が、接続点40から供給される。
【0028】
海水漏えい検出装置5a〜5eは、復水の水質を計測し、復水器4内に海水が漏えいしたことを検知する。海水漏えい検出装置5a〜5eは、復水の水質として例えば復水の導電率又は塩素濃度を計測することにより、復水器4内への海水の漏えいを検知する。計測した導電率又は塩素濃度が予め定めた基準値を超えた場合には、復水に海水が混入しており、復水器4内に海水が漏えいしたと判断する。
【0029】
図1に示した例では、海水漏えい検出装置5aは、復水器4の下部にあるホットウェルに設けられ、海水漏えい検出装置5bは、復水器4の出口に接続された配管に設けられ、海水漏えい検出装置5cは、復水ろ過装置7の入口に接続された配管に設けられ、海水漏えい検出装置5dは、復水脱塩装置8の入口に接続された配管に設けられ、海水漏えい検出装置5eは、復水脱塩装置8の出口に接続された配管に設けられる。なお、復水器4内に海水が漏えいしたと判断するための導電率又は塩素濃度の基準値は、復水脱塩装置8の上流側と下流側とで異なる。復水脱塩装置8により復水が脱塩され、復水脱塩装置8の上流側と下流側とで復水の導電率又は塩素濃度が異なるからである。
【0030】
復水器出口弁30は、復水器4の出口に接続された配管に設けられ、復水器4からの復水の流出を制御する。復水器出口弁30は、復水器アテンペレータスプレイ16の復水が流れる配管16aが、復水器4から原子炉1に復水を供給する配管35(復水配管)に接続する接続点40の上流側に設けられる。
【0031】
従来の発電プラントでは、海水漏えい検出装置5a〜5eが海水の漏えいを検知すると、発電プラント内への海水の拡散を防止するために、復水器出口弁30が閉止され、復水が原子炉1へ供給されるのが停止されて、原子炉1の水位が低下する。あわせて復水ポンプ6、復水昇圧ポンプ9、及び給水ポンプ11が停止し、スピルオーバ止め弁13aも閉止される。原子炉1の水位が低下して蒸気タービン2、3が停止する(タービンがトリップする)と、自動的にタービンバイパス弁15が開いて、タービンバイパス運転が行われる。このとき、復水器出口弁30が閉止されるので、復水器アテンペレータスプレイ16への復水の供給も停止される。このため、原子炉1からの高温蒸気が復水器4から低圧蒸気タービン3へ逆流して、低圧蒸気タービン3が損傷するおそれがある。
【0032】
本発明による発電プラントでは、復水器4内に海水が漏えいしたときに、低圧蒸気タービン3を損傷させることなく、発電プラント内への海水の拡散を防止することができる。以下、本発明の実施例による発電プラントを、図面を用いて説明する。以下の説明では、
図1を用いて説明した事項については、説明を省略する。
【0033】
図2を用いて、本発明の実施例1による発電プラントを説明する。
図2は、本実施例による発電プラントの構成の概要を示す模式図である。本実施例による発電プラントでは、2台の海水漏えい検出装置5d、5eを用いて、復水器4内に海水が漏えいしたことを検知する。上述したように、海水漏えい検出装置5dは、復水脱塩装置8の入口に接続された配管に設けられ、海水漏えい検出装置5eは、復水脱塩装置8の出口に接続された配管に設けられる。
【0034】
海水漏えい検出装置5d、5eの両方が復水器4内に海水が漏えいしたことを検知した場合には、海水漏えい検出装置5d、5eは、接続点40(復水器アテンペレータスプレイ16の復水が流れる配管16aが、復水器4から原子炉1に復水を供給する復水配管35に接続する位置)から原子炉1に復水を流すのを停止させるインターロックを動作させる(ただし、復水器4から接続点40には、復水が流れる)。
【0035】
すなわち、海水漏えい検出装置5d、5eは、復水昇圧ポンプ9に信号を送信し、復水昇圧ポンプ9を停止させることにより、接続点40から原子炉1への復水の供給を停止する。また、スピルオーバライン13に復水が流れるのを停止させ、制御棒駆動系14への復水の供給を停止させるために、海水漏えい検出装置5d、5eは、スピルオーバ止め弁13aに信号を送信し、スピルオーバ止め弁13aを閉止する。復水昇圧ポンプ9の下流にあるポンプ(例えば、給水ポンプ11)は、インターロックが動作して復水昇圧ポンプ9が停止すると、自動で停止する。このようなインターロックの動作により原子炉1への復水の供給が停止され、原子炉1の水位が低下して蒸気タービン2、3が停止する(タービンがトリップする)と、自動的にタービンバイパス弁15が開いて、タービンバイパス運転が行われる。
【0036】
インターロックが動作して復水昇圧ポンプ9が停止しスピルオーバ止め弁13aが閉止しても、接続点40よりも上流にある復水ポンプ6は動作している。すなわち、復水ポンプ6は稼働しているので、復水器4から復水器アテンペレータスプレイ16への復水の供給は可能である。また、タービンバイパス弁15が開くことにより、復水器アテンペレータスプレイ弁16bが自動的に開く。従って、タービンバイパス運転により復水器4へ高温蒸気が供給されても、復水器アテンペレータスプレイ16により高温蒸気を冷却することができ、復水器4から低圧蒸気タービン3への高温蒸気の逆流を防止することができるので、低圧蒸気タービン3を保護して損傷を防ぐことができる。
【0037】
このように、本実施例による発電プラントでは、海水漏えい検出装置5d、5eが復水器4内に海水が漏えいしたことを検知したら、復水器4から原子炉1への復水の流れにおいて、接続点40よりも下流にあるポンプ(例えば、復水昇圧ポンプ9と給水ポンプ11)が停止し、接続点40よりも下流にある弁(例えば、スピルオーバ止め弁13a)が閉止することにより、原子炉1への復水の供給を自動で停止し、発電プラント内への海水の拡散を防止することができる。一方、接続点40よりも上流にあるポンプ(例えば、復水ポンプ6)は動作したままなので、復水器アテンペレータスプレイ16へ復水を供給することができる。このため、本実施例による発電プラントでは、復水器4内に海水が漏えいしても、蒸気タービン(低圧蒸気タービン3)を損傷させることなく、発電プラント内への海水の拡散を防止することができる。
【0038】
なお、本実施例では、2台の海水漏えい検出装置5d、5eを用い、1台が復水脱塩装置8の入口側の配管に、もう1台が復水脱塩装置8の出口側の配管に設けられている。本発明による発電プラントは、海水漏えい検出装置を1台だけ用いることもできる。また、海水漏えい検出装置は、復水器4から原子炉1への復水の流路(復水配管35)であれば、どこに設置してもよい。すなわち、海水漏えい検出装置は、復水の水質を計測して復水器4内に海水が漏えいしたことを検知できれば、設置台数や設置位置は任意でよい。
【0039】
また、
図2では、スピルオーバライン13が復水配管35から分岐する分岐点45の位置は、復水器4から原子炉1への復水の流れにおいて、配管16aと復水配管35との接続点40の下流側に設けられている。しかし、分岐点45の位置は、復水器4から原子炉1への復水の流れにおいて、接続点40の上流側に設けてもよい。
【0040】
図6は、
図2に示した発電プラントにおいて、分岐点45の位置が、復水器4から原子炉1への復水の流れにおいて接続点40よりも上流側にある場合の、発電プラントの構成の概要を示す模式図である。分岐点45が接続点40の上流側に位置する場合でも、海水漏えい検出装置5d、5eは、復水器4内に海水が漏えいしたことを検知したら、スピルオーバ止め弁13aを閉止するので、スピルオーバライン13を通って分岐点45から原子炉1に復水を流すのを停止することができ、原子炉1への復水の供給を停止することができる。
【実施例2】
【0041】
図3は、本発明による発電プラントにおいて、復水器4内に海水が漏えいしたことを検知して、原子炉1への復水の流れを停止させるインターロックを動作させる機構を説明するブロック図である。
【0042】
発電プラントにおいて、蒸気発生器への給水を停止すると、タービンが停止し、発電が停止する。また、原子力発電プラントの場合には、蒸気発生器である原子炉1への給水を停止すると全給水の喪失に至ることがある。このため、復水器4内に海水が漏えいしたことをできるだけ正確に検知する必要がある。本実施例では、復水器4内への海水の漏えいを正確に検知するための構成について説明する。
【0043】
本実施例では、復水器4から原子炉1への復水の流れにおいて、復水脱塩装置8よりも上流側と下流側に、それぞれ3台以上の海水漏えい検出装置を設ける。そして、復水脱塩装置8の上流側で過半数の海水漏えい検出装置が復水器4内に海水が漏えいしたことを検知し、かつ復水脱塩装置8の下流側で過半数の海水漏えい検出装置が復水器4内に海水が漏えいしたことを検知した場合に、復水器4内に海水が漏えいしたことを検知したとして、原子炉1へ復水を流すのを停止させるインターロックを動作させる。復水脱塩装置8の上流側と下流側に海水漏えい検出装置を設けることで、復水脱塩装置8による脱塩処理の前後の復水の水質(導電率又は塩素濃度)を計測することができる。なお、実施例1でも述べたように、復水器4内に海水が漏えいしたと判断するための導電率又は塩素濃度の基準値は、復水脱塩装置8の上流側と下流側とで異なる。
【0044】
図3には、一例として、復水脱塩装置8よりも上流側に3台の海水漏えい検出装置19a〜19cが、復水脱塩装置8よりも下流側に3台の海水漏えい検出装置20a〜20cが設けられている場合を示している。復水脱塩装置8の上流側にある3台の海水漏えい検出装置19a〜19cのうち過半数(2台以上)が復水器4内に海水が漏えいしたことを検知したら、復水脱塩装置8の上流側の海水漏えい検出装置では復水器4内に海水が漏えいしたと判断したものとする。同様に、復水脱塩装置8の下流側にある3台の海水漏えい検出装置20a〜20cのうち過半数(2台以上)が復水器4内に海水が漏えいしたことを検知したら、復水脱塩装置8の下流側の海水漏えい検出装置では復水器4内に海水が漏えいしたと判断したものとする。そして、復水脱塩装置8の上流側と下流側の海水漏えい検出装置の両方で復水器4内に海水が漏えいしたと判断した場合に、復水器4内に海水が漏えいしたことを検知したとして、原子炉1へ復水を流すのを停止させるインターロックを動作させる。
【0045】
このようにしてインターロックを動作させることで、復水脱塩装置8の上流側と下流側にある海水漏えい検出装置19a〜19c、20a〜20cのうちいずれかが海水の漏えいを誤検知した場合でも、インターロックが誤動作せず、原子炉1への復水の供給が停止しない。従って、復水器4内への海水の漏えいを正確に検知し、海水の漏えいの誤検知やインターロックの誤動作を防止することができる。
【0046】
例えば、発電プラントの起動初期時では、給水系統内に滞留していた水質の悪い水が復水器4へ流れ込むことにより、過渡的に復水の導電率が上昇する場合がある。しかし、復水脱塩装置8の脱塩処理により復水の導電率が基準値以下になれば、復水脱塩装置8の下流側では海水の漏えいが検知されず、海水が漏えいしていないのにインターロックが動作するという誤動作を防止できる。
【0047】
海水漏えい検出装置19a〜19c、20a〜20cの設置位置は、任意である。例えば、復水脱塩装置8の上流側にある海水漏えい検出装置19a〜19cは、
図1に示した海水漏えい検出装置5a〜5dのいずれかの位置に設置することができ、復水脱塩装置8の下流側にある海水漏えい検出装置20a〜20cは、
図1に示した海水漏えい検出装置5eの位置に設置することができる。
【0048】
なお、復水脱塩装置8の下流側に設けられた海水漏えい検出装置20a〜20cは、復水脱塩装置8での脱塩処理後の復水の水質を検知する。このため、海水漏えい検出装置20a〜20cを復水脱塩装置8の下流側に設置することにより、復水脱塩装置8の脱塩処理能力を超えない、つまり原子炉1への復水の供給を停止しなくてよい小規模な海水の漏えいが起きた時に、インターロックが動作することを防止できる。
【実施例3】
【0049】
図4を用いて、本発明の実施例3による発電プラントを説明する。
図4は、本実施例による発電プラントの構成の概要を示す模式図である。本実施例による発電プラントは、実施例1による発電プラント(
図2)において、水を溜めるとともに復水器アテンペレータスプレイ16に接続する貯水槽25と、貯水槽25から復水器アテンペレータスプレイ16に水を供給するための貯水槽ポンプ26と、貯水槽25から復水器アテンペレータスプレイ16への水の供給を制御する調節弁27をさらに備える。貯水槽ポンプ26と調節弁27は、復水器アテンペレータスプレイ16に備えられて貯水槽25に接続する配管に設けられる。
【0050】
復水器アテンペレータスプレイ16に供給される水(復水器アテンペレータスプレイ16が噴霧する水)は、実施例1では復水器4からの復水を用いているが、本実施例では、復水ではなく貯水槽25からの水を用いる。貯水槽25に溜める水は、例えば純水とすることができる。また、貯水槽25として、発電プラントが備える補給水を溜めるタンクを用いることもできる。
【0051】
本実施例でも、実施例1と同様に、海水漏えい検出装置5dは、復水脱塩装置8の入口に接続された配管に設けられ、海水漏えい検出装置5eは、復水脱塩装置8の出口に接続された配管に設けられる。
【0052】
海水漏えい検出装置5d、5eの両方が復水器4内に海水が漏えいしたことを検知した場合には、海水漏えい検出装置5d、5eは、復水器4から原子炉1へ復水を流すのを停止させるインターロックを動作させる。
【0053】
すなわち、海水漏えい検出装置5d、5eは、復水ポンプ6に信号を送信し、復水ポンプ6を停止させることにより、復水器4から原子炉1及び制御棒駆動系14への復水の供給を停止する。復水ポンプ6の下流にあるポンプ(例えば、復水昇圧ポンプ9と給水ポンプ11)は、インターロックが動作して復水ポンプ6が停止すると、自動で停止する。このようなインターロックの動作により原子炉1への復水の供給が停止され、原子炉1の水位が低下して蒸気タービン2、3が停止する(タービンがトリップする)と、自動的にタービンバイパス弁15が開いて、タービンバイパス運転が行われる。
【0054】
さらに、タービンバイパス弁15が開くことにより、タービンバイパス弁15から調節弁27と貯水槽ポンプ26に信号が送信され、調節弁27を開いて貯水槽ポンプ26を動作させる。この結果、貯水槽25から復水器アテンペレータスプレイ16へ水が供給され、復水器アテンペレータスプレイ16は、復水器4に流入した高温蒸気に水を噴霧することができる。なお、貯水槽25から復水器アテンペレータスプレイ16への水の供給は、タービンバイパス運転が停止されたときに停止される。
【0055】
インターロックが動作して復水ポンプ6が停止しても、タービンバイパス弁15が開くことにより調節弁27を開いて貯水槽ポンプ26を動作させることで、貯水槽25から復水器アテンペレータスプレイ16に水が供給される。従って、タービンバイパス運転により復水器4へ高温蒸気が供給されても、復水器アテンペレータスプレイ16により高温蒸気を冷却することができ、復水器4から低圧蒸気タービン3への高温蒸気の逆流を防止することができるので、低圧蒸気タービン3を保護して損傷を防ぐことができる。
【0056】
このように、本実施例による発電プラントでは、海水漏えい検出装置5d、5eが復水器4内に海水が漏えいしたことを検知したら、復水器4から原子炉1への復水の流れにおいて、復水器4の下流にあるポンプ(例えば、復水ポンプ6と復水昇圧ポンプ9と給水ポンプ11)が停止することにより、復水器4から原子炉1への復水の供給を自動で停止し、発電プラント内への海水の拡散を防止することができる。一方、復水器アテンペレータスプレイ16へは、貯水槽25から水を供給することができる。このため、本実施例による発電プラントでは、復水器4内に海水が漏えいしても、蒸気タービン(低圧蒸気タービン3)を損傷させることなく、発電プラント内への海水の拡散を防止することができる。
【0057】
本実施例による発電プラントでは、実施例1で述べた効果が得られるうえ、復水器4内に海水が漏えいしたときに復水器4から復水が排出されないようにするために、発電プラント内への海水の拡散範囲を最小限にすることができるという効果が得られる。
【実施例4】
【0058】
図5を用いて、本発明の実施例4による発電プラントを説明する。
図5は、本実施例による発電プラントの構成の概要を示す模式図である。本実施例による発電プラントは、実施例1による発電プラント(
図2)と同様の構成を備えるが、海水漏えい検出装置5d、5eが復水器4内に海水が漏えいしたことを検知したときに制御する弁とポンプが異なる。
【0059】
本実施例でも、実施例1と同様に、海水漏えい検出装置5dは、復水脱塩装置8の入口に接続された配管に設けられ、海水漏えい検出装置5eは、復水脱塩装置8の出口に接続された配管に設けられる。
【0060】
海水漏えい検出装置5d、5eの両方が復水器4内に海水が漏えいしたことを検知した場合には、海水漏えい検出装置5d、5eは、復水器4から原子炉1へ復水を流すのを停止させるインターロックを動作させる。
【0061】
すなわち、海水漏えい検出装置5d、5eは、復水ポンプ6に信号を送信し、復水ポンプ6を停止させることにより、復水器4から原子炉1及び制御棒駆動系14への復水の供給を停止する。復水ポンプ6の下流にあるポンプ(例えば、復水昇圧ポンプ9と給水ポンプ11)は、インターロックが動作して復水ポンプ6が停止すると、自動で停止する。さらに、海水漏えい検出装置5d、5eは、主蒸気隔離弁1aに信号を送信し、主蒸気隔離弁1aを閉止する。このようなインターロックの動作により原子炉1への復水の供給が停止され、原子炉1の水位が低下して蒸気タービン2、3が停止する(タービンがトリップする)と、自動的にタービンバイパス弁15が開く。ただし、主蒸気隔離弁1aが閉止されているので、原子炉1から復水器4へは高温蒸気が供給されず、低圧蒸気タービン3の損傷を防ぐことができる。
【0062】
なお、高温蒸気によって原子炉1内の圧力が上昇するが、原子炉1が備える安全装置によって原子炉1内の圧力を低下させることができる。
【0063】
このように、本実施例による発電プラントでは、海水漏えい検出装置5d、5eが復水器4内に海水が漏えいしたことを検知したら、復水器4から原子炉1への復水の流れにおいて、復水器4の下流にあるポンプ(例えば、復水ポンプ6と復水昇圧ポンプ9と給水ポンプ11)が停止することにより、復水器4から原子炉1への復水の供給を自動で停止し、発電プラント内への海水の拡散を防止することができる。一方、主蒸気隔離弁1aを閉止することで、原子炉1から復水器4への蒸気の供給を停止する。このため、本実施例による発電プラントでは、復水器4内に海水が漏えいしても、蒸気タービン(低圧蒸気タービン3)を損傷させることなく、発電プラント内への海水の拡散を防止することができる。
【0064】
本実施例による発電プラントでは、実施例1で述べた効果が得られるうえ、復水器4内に海水が漏えいしたときに復水器4から復水が排出されないようにするために、発電プラント内への海水の拡散範囲を最小限にすることができるという効果が得られる。また、実施例3で述べたような貯水槽25、貯水槽ポンプ26、及び調節弁27が不要であるという効果もある。
【0065】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例を含む。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の実施例の構成を追加・削除・置換することが可能である。