(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MEMSなどの積層構造物は、内部に空洞や隙間が多く存在しており、特に隣り合う構造物との隙間が狭い部分に異物が存在すると、微細な可動部の動作を阻害することとなり、所望の性能を発揮できないおそれがある。
【0005】
しかし特許文献2の技術では、透過方式の照明を用いて、貼合せされた基板内部の特定レイヤーに焦点を合わせ、異物検査を行っているが、パッケージングされた基板の表面や裏面に異物やコンタミなどが付いていると、後で除去できるものであっても、異物などがあると判定してしまう。
【0006】
そこで本発明は、貼合せ基板ならびに表面がコーティングまたは封止された複層基板について、当該複層基板のオモテ面またはウラ面に異物やコンタミなどが付いていたしてもこれらは検出せず、当該複層基板の内部に特化して検査ができる装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一観点に係る態様は、
複層基板の内部を検査する基板検査装置であって、
前記複層基板に設定された検査対象領域を撮像する撮像部と、
前記検査対象領域に向けて前記撮像部側から赤外光または可視光を照射する反射照明部と、
前記反射照明部から赤外光または可視光のいずれを照射するか切り替える反射照明切替部と、
前記検査対象領域に向けて前記撮像部と対向する側から赤外光を照射する透過照明部と、
前記反射照明部および/または前記透過照明部の双方を使用するか又はいずれか一方を使用するかを切り替える照明方向切替部と、
前記撮像部で撮像した画像に基づいて前記検査対象領域内に存在する異物を検出する異物検出部と、
赤外光を照射して撮像した画像に基づく異物検出結果から可視光を照射して撮像した画像に基づく異物検出結果の差分処理を行う差分処理部とを備え
、
前記赤外光を照射して撮像した画像に基づく異物検出結果が、前記反射照明部から照射された赤外光によるものであり、
前記可視光を照射して撮像した画像に基づく異物検出結果が、前記反射照明部から照射された可視光によるものである
ことを特徴とする、基板検査装置である。
【0008】
また、本発明の他の一観点に係る態様は、
複層基板の内部を検査する基板検査方法であって、
前記複層基板に設定された検査対象領域に向けて赤外光を照射し、当該検査対象領域から反射した光を撮像する、赤外反射光による撮像ステップと、
前記検査対象領域に向けて前記複層基板の第1主面側から可視光を照射し、当該検査対象領域から反射した光を撮像する、可視反射光による第1主面撮像ステップと、
前記複層基板を表裏反転させるステップと、
前記検査対象領域に向けて前記複層基板の第2主面側から可視光を照射し、当該検査対象領域から反射した光を撮像する、可視反射光による第2主面撮像ステップと、
前記赤外反射光による撮像ステップで取得した画像に基づく検査結果から、可視反射光による第1主面撮像ステップで取得した画像に基づく検査結果および可視反射光による第2主面撮像ステップで取得した画像に基づく検査結果を差分処理するステップとを有する、基板検査方法である。
【0009】
また、本発明の他の一観点に係る態様は、
複層基板の内部を検査する基板検査方法であって、
前記複層基板に設定された検査対象領域に向けて赤外光を照射し、当該検査対象領域を通過した光を撮像する、赤外透過光による撮像ステップと、
前記検査対象領域に向けて前記複層基板の第1主面側から可視光を照射し、当該検査対象領域から反射した光を撮像する、可視反射光による第1主面撮像ステップと、
前記複層基板を表裏反転させるステップと、
前記検査対象領域に向けて前記複層基板の第2主面側から可視光を照射し、当該検査対象領域から反射した光を撮像する、可視反射光による第2主面撮像ステップと、
前記赤外透過光による撮像ステップで取得した画像に基づく検査結果から、可視反射光による第1主面撮像ステップで取得した画像に基づく検査結果および可視反射光による第2主面撮像ステップで取得した画像に基づく検査結果を差分処理するステップとを有する、基板検査方法である。
【0010】
また、本発明の他の一観点に係る態様は、
複層基板の内部を検査する基板検査方法であって、
前記複層基板に設定された検査対象領域に向けて赤外光を照射し、当該検査対象領域から反射した光および当該検査対象領域を通過した光を撮像する、赤外反射光および赤外透過光による撮像ステップと、
前記検査対象領域に向けて前記複層基板の第1主面側から可視光を照射し、当該検査対象領域から反射した光を撮像する、可視反射光による第1主面撮像ステップと、
前記複層基板を表裏反転させるステップと、
前記検査対象領域に向けて前記複層基板の第2主面側から可視光を照射し、当該検査対象領域から反射した光を撮像する、可視反射光による第2主面撮像ステップと、
前記赤外透過光および赤外反射光による撮像ステップで取得した画像に基づく検査結果から、可視反射光による第1主面撮像ステップで取得した画像に基づく検査結果および可視反射光による第2主面撮像ステップで取得した画像に基づく検査結果を差分処理するステップとを有する、基板検査方法である。
【発明の効果】
【0011】
複層基板について、当該複層基板のオモテ面またはウラ面に異物やコンタミなどが付いていたしてもこれらは検出せず、当該複層基板の内部に特化して検査ができる装置および方法を提供することを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態について、図を用いながら説明する。各図において直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、XY平面を水平面、Z方向を鉛直方向とする。特にZ方向は矢印の方向を上とし、その逆方向を下と表現する。
【0014】
検査対象物として複層基板の内部に櫛歯状の微小な片持ち梁が形成されたもの(以下、単に「複層基板W」と呼ぶ)を例示する。この複層基板Wは、シリコンウエハーの表面を加工することにより内部の構造物を成形した後、その上面側からガラスやシリコンからなる基板でキャップ封止しており、いわゆる中空構造をしている。なお、複層基板Wの一方の面を、第1主面(または、単に「オモテ面」)S1と呼ぶ。また、この面と表裏の関係にある他方の面を、第2主面(または、単に「ウラ面」)S2と呼ぶ。
【0015】
図1は、検査対象となる複層基板の一例を示す概略図であり、
図1(a)には断面図が示されており、
図1(b)には平面図が示されている。そして、
図1(a)(b)には、内部構造物Gを有する複層基板Wと、その内部に存在する異物(つまり、検出すべき異物)X1〜X3と、複層基板Wのオモテ面S1またはウラ面S2に付着した異物(つまり、検出したくない異物)Y1,Y2が、それぞれ示されている。また、複層基板Wの内、検査対象領域Rが破線で示されている。
【0016】
図2は、本発明を具現化する形態の一例を示す概念図であり、検査対象領域の画像を取得するために用いる機器の概略図と、取得した画像に基づく検査に必要な構成のブロック図が複合的に記載されている。
【0017】
本発明を具現化する基板検査装置1は、複層基板Wの内部に潜む異物を検出したり、内部構造物が所定の寸法や形状で形成されているかを検査したり、積層界面に気泡が混入していないか等を検査したりするものである。基板検査装置1は、基板保持部2と、撮像部3と、照明部4と、検査部5とを備えている。
【0018】
基板保持部2は、検査対象となる複層基板Wを載置し、所定の姿勢で保持し、必要に応じて移動/回転させたり静止させたりするものである。具体的には、基板保持部2は、基板ホルダ20と、X軸スライダー21と、Y軸スライダー22と、回転機構23とを備えて構成されている。
【0019】
基板ホルダ20は、検査対象となる複層基板WをXY方向と平行な状態で、複層基板Wの検査対象領域Rよりも外側の外縁部分を下面又は側面から保持するものである。具体的には、基板ホルダ20は、複層基板Wの検査対象領域Rよりも広い開口部20hが設けられたリング状の枠体にて構成されており、複層基板Wの外縁部分と接する部分には、溝や細孔が形成されている。そして当該溝や細孔は、開閉バルブを経由して、真空源や圧空源に接続されている。或いは、基板ホルダ20は、上述の溝や細孔に代えて、クランプ機構などの複層基板Wの外縁部分の複数箇所を外側から内側に向けて挟み込む機構を備えた構成としても良い。
【0020】
X軸スライダー21は、装置フレーム1f上に取り付けられており、Y軸スライダー22をX方向に任意の速度で移動させ、任意の位置で静止させるものである。具体的には、X軸スライダーは、X方向に延びる1対のレールと、そのレール上を移動するスライダー部と、スライダー部を移動/静止させるスライダー駆動部とで構成されている。スライダー駆動部は、外部機器からの信号制御により回転/静止するサーボモータやパルスモータとボールネジ機構を組み合わせたものや、リニアモータ機構などで構成することができる。
【0021】
Y軸スライダー22は、回転機構23をY方向に任意の速度で移動させ、任意の位置で静止させるものである。具体的には、Y軸スライダーは、Y方向に延びる1対のレールと、そのレール上を移動するスライダー部と、スライダー部を移動/静止させるスライダー駆動部とで構成されている。スライダー駆動部は、外部機器からの信号制御により回転/静止するサーボモータやパルスモータとボールネジ機構を組み合わせたものや、リニアモータ機構などで構成することができる。
【0022】
回転機構23は、基板ホルダ20をZ軸を回転中心とするθ方向に任意の速度で回転させ、任意の角度で静止させるものである。具体的には、回転機構23は、ダイレクトドライブモータなどの、外部機器からの信号制御により任意の角度に回転/静止させるものが例示できる。回転機構23の回転する側の部材の上には、連結部材24を介して基板ホルダ20が取り付けられている。
【0023】
この様な構成をしているため、基板保持部2は、検査対象となる複層基板Wを載置し、所定の姿勢で保持したまま、必要に応じて複層基板WをXYθ方向にそれぞれ独立させて又は複合的に、所定の速度・角度で移動させ、任意の位置・角度で静止させることができる。
【0024】
撮像部3は、検査対象となる複層基板Wに設定された検査対象領域Rを、上方から撮像するものである。
【0025】
具体的には、撮像部3は、鏡筒30と、ハーフミラー31と、対物レンズ34a,34bと、撮像カメラ35とを含んで構成されている。
【0026】
鏡筒30は、ハーフミラー31、対物レンズ34a,34b、撮像カメラ35、後述する照明手段などを所定の間隔で固定すると共に、外部からの不必要な光を遮断するものであり、中空の筐体である。
【0027】
ハーフミラー31は、後述する同軸落斜照明31から照射された光を反射させて複層基板Wに向けて照射するとともに、検査対象領域Rから反射した光や複層基板Wの下面から検査対象領域R通過した光(つまり、検査対象領域Rから上方に放出される光32)を通過させるものである。
【0028】
対物レンズ34a,34bは、複層基板WのXY平面にある像を撮像カメラ35に投影・結像させるものである。対物レンズ34a,34bは投影倍率が異なり、レボルバー機構により適宜切り替えが可能である。
【0029】
撮像カメラ35は、例えばCCDやCMOSなどのエリアセンサーやラインセンサーなどを受光素子36として備え、検査対象領域Rから上方に放出される光32を撮像し、撮像した画像に対応した映像信号やデータを外部機器へ出力するものである。
【0030】
照明部4は、複層基板Wに設定された検査対象領域Rに向けて照明光をを照射するものである。具体的には、照射部4は、反射照明部、透過照明部43、照明方向切替部46とを備えて構成されている。ここでは、本発明に係る反射照明部の一類型として、同軸落斜照明部41を備えた構成を例示して説明をする。
【0031】
同軸落斜照明部41は、撮像カメラ35側(つまり、複層基板Wの上方)の光軸方向から検査対象領域Rに向けて照明光41Lを照射するものである。同軸落斜照明部41は、光源部41a、シャッタ部41b、フィルタ部41c、フィルタ切替部41d、ファイバ部41fを備えて構成されている。
【0032】
光源部41aは、可視光および赤外光を含む光エネルギーを外部に放出するものである。具体的には、光源部41aには、ハロゲンランプやメタルハライドランプ、キセノンランプなどの白熱電球と、必要に応じて楕円ミラーと呼ばれる反射手段が備えられている。
【0033】
シャッタ部41bは、光源部41aから放出された光を外部に放出する(つまり、開状態)か、遮断する(つまり、閉状態)かを切り替えるものである。具体的には、シャッタ部41bは、光源部41aから放出された光を反射又は吸収して遮蔽する遮蔽板と、遮蔽板を回転移動又は直線移動させるアクチュエータ(例えば、ソレノイド)とを備えて構成されている。なお、シャッタ部41bは、
図2中において実線で示す状態が「開状態」であり、破線で示す状態が「閉状態」である。
【0034】
フィルタ部41cは、光源部41aから放出された光のうち、赤外光又は可視光を選択的に透過させるものである。具体的には、フィルタ部41cには、可視光を減衰または反射させて赤外光を通過させる赤外光透過フィルタと、赤外光を減衰または反射させて可視光を通過させる可視光透過フィルタが備えられている。
【0035】
フィルタ切替部41dは、フィルタ部41cの赤外光透過フィルタと可視光透過フィルタのいずれを用いるかを選択的に切り替えるものであり、本発明に係る反射照明切替部を構成する。具体的には、フィルタ切替部41dは、赤外光透過フィルタと可視光透過フィルタが組み込まれたホルダを回転させたり往復動作させることで、光源部41aから放出された光のうち、照明光41Lとして赤外光を通過させるか又は可視光を通過させるかを選択的に切り替える。この切替動作は、外部機器からの信号制御により自動的に行っても良いし、作業者により手動で行っても良い。
【0036】
ファイバ部41fは、フィルタ部41cを通過させた光を鏡筒30に導くものである。具体的には、ファイバ部41fとして、細長いガラス材又はプラスチック樹脂などを多数束ねたもの(いわゆる、ライトガイド)が例示できる。
【0037】
透過照明部43は、複層基板Wを挟んで撮像カメラ35と対向する側(つまり、複層基板の下方)から検査対象領域Rに向けて照明光43Lを照射するものである。透過照明部43は、光源部43a、シャッタ部43b、フィルタ部43c、フィルタ切替部43d、ファイバ部43f、反射ミラー43eを備えて構成されている。
【0038】
光源部43a、シャッタ部43b,フィルタ部43c,フィルタ切替部43d,ファイバ部43fは、それぞれ上述の、光源部41a,シャッタ部43b,フィルタ部41c,フィルタ切替部41d,ファイバ部41fと同様の構成とすることができる。
【0039】
反射ミラー43eは、ファイバ部43fにて導かれた光を反射し、検査対象領域Rに向けて照明光43Lを照射するものである。具体的には、反射ミラー43eは、載置テーブル20の開口部20hの下方に、撮像部3の対物レンズ34aと対向して配置されている。さらに、反射ミラー43eは、載置テーブル20と回転機構23との間に配置されており、X軸スライダー21,Y軸スライダー22,回転機構23が移動しても、連結部材24と干渉することなく、載置テーブル20の開口部20hから上方に向けて照明光43Lを照射するよう配置されている。
【0040】
照明方向切替部46は、撮像部3の撮像カメラ35で撮像を行う際に、同軸落斜照明部41による上方からの照明光41Lのみを用いるか、透過照明部43による下方からの照明光43Lのみを用いるか、或いは双方を用いるかを切り替えるものである。具体的には、照明方向切替部46は、同軸落斜照明部41,透過照明部43のシャッター部41b,43bのアクチュエータ(例えば、ソレノイド)と接続されており、制御信号を出力することによりアクチュエータをON/OFF駆動させるものである。より具体的には、照明方向切替部46は、パソコンやシーケンサなどの制御信号出力部により構成され、所定の電圧・電流を出力し、アクチュエータに印可させることで、遮蔽板が開状態または閉状態に切り替えるように構成されている。
【0041】
この様な構成をしているため、基板検査装置1は、同軸落斜照明部41のフィルタ部41cとフィルタ切替部41d、透過照明部43のフィルタ部43cとフィルタ切替部43d、照明方向切替部46とシャッタ部41b、43bの切り替えることにより、次のようなモードやその他のモードに切り替えて撮像を行うことができる。
【0042】
1)上方から赤外光(つまり、赤外反射光)のみを照射
2)下方から赤外光(つまり、赤外透過光)のみを照射
3)上方から赤外光(つまり、赤外反射光)と、下方から赤外光(つまり、赤外透過光)を照射
4)上方から可視光(つまり、可視反射光)のみを照射
【0043】
検査部5は、撮像カメラ35で撮像された画像に対して所定の検査を行うものである。検査項目としては、異物や気泡の有無確認、検出した異物や気泡の個数カウントや大きさ測定、内部構造物のパターン形状の確認や寸法計測などが例示できる。
【0044】
検査部5は、異物検出部51と、差分処理部52とを備えて構成されている。
異物検出部51は、撮像部3で撮像した画像に基づいて検査対象領域R内に存在する異物を検出するものである。差分処理部52は、赤外光を照射して撮像した画像に基づく異物検出結果から可視光を照射して撮像した画像に基づく異物検出結果の差分処理を行うものである。検査部5ならびに異物検出部51、差分処理部52は、画像処理装置(ハードウェア)と、画像処理プログラム(ソフトウェア)により構成されている。
【0045】
より具体的には、検査部5は、第1検査結果記録部と、第2検査結果記録部と、第3検査結果記録部とを備えた構成としても良い。第1検査結果記録部は、第1の検査モードにて撮像した画像に基づく検査結果を記録しておくものである。同様に、第2検査結果記録部と、第3検査結果記録部は、それぞれ、第2,第3の検査モードにて撮像した画像に基づく検査結果を記録しておくものである。そして、これら第1〜第3検査結果記録部は、検査部5を構成する画像処理装置のメモリー部にて構成することができる。そして、差分処理部52は、第1〜第3検査結果記録部に記録された各検査結果に対して差分処理を行う。
【0046】
下記の照明光照射モードに切り替えて撮像および検査を行う。
【0047】
1)第1の検査モード・・・赤外光による複層基板Wの検査
さらにこのモードは、下記のいずれかを選択する。
【0048】
1−1)上方から赤外光(つまり、赤外反射光)のみを照射
1−2)下方から赤外光(つまり、赤外透過光)のみを照射
1−3)上方から赤外光(つまり、赤外反射光)と、下方から赤外光(つまり、赤外透過光)の双方を照射
2)第2の検査モード・・・可視光による複層基板Wのオモテ面S1側の検査
3)第3の検査モード・・・可視光による複層基板Wのウラ面S2側の検査
【0050】
図3は、本発明を適用して複層基板を撮像および検査する一例を示すフロー図である。
まず、載置テーブル20に、複層基板Wをオモテ面S1側が上になる様に載置する(ステップs101)。
そして、複層基板Wオモテ面S1側から検査対象領域Rに向けて赤外反射光を照射し、撮像・検査を行う(ステップs102)。ここでは検査結果Aと呼ぶ。
次に、複層基板Wオモテ面S1側から検査対象領域Rに向けて可視反射光を照射し、撮像・検査を行う(ステップs103)。ここでは検査結果Bと呼ぶ。
次に、複層基板Wを反転させ、ウラ面S2側が上になる様に載置する(ステップs104)。
次に、複層基板Wウラ面S2側から検査対象領域Rに向けて可視反射光を照射し、撮像・検査を行う(ステップs105)。ここでは検査結果Cと呼ぶ。
そして、検査部5は、検査結果Aから検査結果B,検査結果Cの差分を演算処理し、検査結果Dを取得する(ステップs107)。
また、検査部5は、必要に応じて検査結果Dを出力する(ステップs108)。この出力の形態としては、画像処理装置のメモリー部に検査結果Dを記憶させたり、基板検査装置の情報表示器に表示させたり、外部機器へデータ送信さたり、単に警報やブザーを鳴らしたりする形態が例示できる。
【0051】
図4は、本発明を適用して検査する複層基板を撮像および検査した様子の一例を示す平面図である。
図4(a)には、複層基板Wの検査対象領域Rを第1の照明光照射モードにて撮像した画像が示されており、具体的には、複層基板Wのオモテ面S1を上にして配置し、上方から赤外光(つまり、赤外反射光)のみを照射して撮像した画像である。この第1の照明光照射モードでは、撮像部3において、複層基板Wおよび内部構造物、空洞部に対して赤外光がの一部が透過し、一部が反射するため、撮像画像としては明画像として撮像される。一方、複層基板Wの内部に存在する異物X1〜X3と、複層基板Wのオモテ面S1またはウラ面S2に付着した異物Y1,Y2は、赤外光が異物の表面で散乱するため、撮像画像としては暗画像として撮像される。
【0052】
図4(b)には、複層基板Wの検査対象領域Rを第2の照明光照射モードにて撮像した画像が示されており、具体的には、複層基板Wのオモテ面S1を上にして配置し、上方から可視光のみを照射して撮像した画像である。この第2の照明光照射モードでは、撮像部3において、複層基板Wのオモテ面S1に対して可視光が反射するため明画像として撮像され、複層基板Wのオモテ面S1に付着した異物Y1の表面で可視光が散乱するため暗画像として撮像される。
【0053】
図4(c)には、複層基板Wの検査対象領域Rを第3の照明光照射モードにて撮像した画像が示されており、具体的には、複層基板Wのウラ面S2を上にして配置し、上方から可視光のみを照射して撮像した画像である。この第3の照明光照射モードでは、撮像部3において、複層基板Wのウラ面S2に対して可視光が反射するため明画像として撮像され、複層基板Wのウラ面S2に付着した異物Y2の表面で可視光が散乱するため暗画像として撮像される。なお、上述の
図4(a)(b)と方向を一致させるため、X方向またはY方向に画像を反転させた状態を示している。
【0054】
図4(d)には、複層基板Wの検査対象領域Rを第1の照明光照射モードにて撮像した画像に基づく検査結果が示されており、検出した異物X1〜X3,Y1,Y2が示されている。
図4(e)には、複層基板Wの検査対象領域Rを第2の照明光照射モードにて撮像した画像に基づく検査結果が示されており、検出した異物Y1が示されている。
図4(f)には、複層基板Wの検査対象領域Rを第3の照明光照射モードにて撮像した画像に基づく検査結果が示されており、検出した異物Y2が示されている。
図4(g)には、複層基板Wについて、検査結果差分処理部で差分処理された結果(つまり、検査結果)が示されており、検出すべき異物X1〜X3のみが示されている。
【0055】
この様な構成をしているため、本発明に係る基板検査装置1は、複層基板Wの表面に付着した異物Y1,Y2は検出せず、複層基板Wの内部に存在する異物X1〜X3のみを検出することができる。
【0056】
[変形例1]
なお、上述では、第1の照明光照射モードとして、上方からの赤外光(つまり、赤外反射光)のみを照射する形態について説明した。しかし、この形態に限定されず、第1の照明光照射モードとして、下方からの赤外光(つまり、赤外透過光)のみを照射する形態であっても良い。具体的には、上述のステップs102に代えて、複層基板Wオモテ面S1側から検査対象領域Rに向けて赤外透過光を照射し、撮像・検査を行う(ステップs112)。
【0057】
図5は、本発明を適用して検査する複層基板を撮像および検査した様子の別の一例を示す平面図である。
図5には、複層基板Wの検査対象領域Rを赤外透過光により撮像した画像が示されている。この場合、撮像部3では、複層基板Wおよび内部構造物、空洞部を通過した光が明画像として撮像され、複層基板Wの内部に存在する異物X1〜X3と、複層基板Wのオモテ面S1またはウラ面S2に付着した異物Y1,Y2とで、赤外光が吸収または散乱して暗画像として撮像される。しかし、この場合でも所定の画像処理を行い、検査部5における検査結果としては、
図4(d)に示すような結果を得ることができ、差分処理後の結果も、
図4(g)に示すような結果を得ることができる。
【0058】
[変形例2]
また、上述のような形態以外にも、第1の照明光照射モードとして、上述の赤外反射光と赤外透過光を共に照射する形態であっても良い。具体的には、上述のステップs102に代えて、複層基板Wオモテ面S1側から検査対象領域Rに向けて赤外反射光および赤外透過光を照射し、撮像・検査を行う(ステップs122)。
【0059】
図6は、本発明を適用して検査する複層基板を撮像および検査した様子のさらに別の一例を示す平面図である。
図6には、複層基板Wの検査対象領域Rを、赤外反射光と赤外透過光の双方を照射して撮像した画像が示されている。この場合、撮像部3では、複層基板Wおよび内部構造物、空洞部を通過した赤外透過光が明画像として撮像されると共に、複層基板Wの内部に存在する異物X1〜X3と、複層基板Wのオモテ面S1またはウラ面S2に付着した異物Y1,Y2の上面で反射した赤外光が明画像として撮像される。一方、異物X1〜X3,Y1,Y2の側面部は、赤外反射光が反射または散乱すると共に、赤外透過光が吸収または散乱するため、撮像部3において、これら異物の輪郭部が暗画像として撮像される。しかし、この場合でも所定の画像処理を行い、検査部5における検査結果としては、
図4(d)に示すような結果を得ることができ、差分処理後の結果も、
図4(g)に示すような結果を得ることができる。
【0060】
なお、第1の照明光照射モードとして、いずれの形態を選択するかは、検査対象となる複層基板の材質や内部構造物のパターンや寸法、検出対象となる異物の大きさなどに応じて適宜決定すれば良い。
【0061】
[変形例3]
なお、上述の基板検査装置1は、第1の照明光照射モードを、3種類のうち1つを選択する構成を示した。しかし、本発明を適用する上では、3種類のいずれかを備えた装置構成としても良い。例えば、赤外反射光のみを用いる場合であれば、照明部4に透過照明部42を備えない構成とすることができる。一方、赤外透過光のみを用いる構成であれば、照明部4の反射照明部41の光源は、可視光のみを照射するもので構成することができる。
【0062】
[変形例4]
上述では、第1の検査モードで、複層基板Wオモテ面S1側を撮像部4側に向けた状態で撮像・検査を行い、検査結果Aを取得し、可視光での検査結果B,Cとの差分処理をして、検査結果Dを取得・出力する形態について説明した。
【0063】
しかし、赤外反射光および/または赤外透過光を用いた検査は、赤外光が複層基板Wの表面及び内部構造物を透過するとはいえ、表面反射による光の減衰を伴うため、複層基板Wの材質や厚みによっては、基板内部に潜む異物の検出が難しい場合がある。この様な場合は、複層基板Wオモテ面S1側を撮像部4側に向けた状態で撮像・検査を行うのみならず、複層基板Wを反転させた後、複層基板Wウラ面S2側を撮像部4側に向けた状態で撮像・検査を追加して行うことが好ましい。
【0064】
図7は、本発明を適用して複層基板を撮像および検査する他の一例を示すフロー図である。
図7には、
図3を用いて説明したステップs101〜s105(場合により、ステップs102に代えてステップs112,s122を実施)は、同様であるが、その後は、以下に示すステップs106(又はステップs116,s126)、s109、s110を行うフローが示されている。
【0065】
このフローでは、反転して載置した複層基板Wのウラ面S2側から検査対象領域Rに向けて赤外反射光を照射し、撮像・検査を行う(ステップs106)。或いは、赤外透過光を照射し、撮像・検査を行う(ステップs116)或いは、赤外反射光と赤外透過光を併用して照射し、撮像・検査を行う(ステップs126)。ここでは、これらのいずれかステップで取得した結果を、検査結果A2と呼ぶ。
【0066】
そして、検査部5は、検査結果Aに検査結果A2を加算し、そこから検査結果B,検査結果Cの差分を求める演算処理を行い、検査結果D2を取得する(ステップs109)。
また、検査部5は、必要に応じて検査結果D2を出力する(ステップs110)。
【0067】
[その他、種々の変形例]
なお、上述では、複層基板Wを人手で反転する場合の装置構成及び検査手順を示した。しかし、複層基板Wを自動で反転させて連続的に検査したい場合は、基板反転ロボット等を備えた構成としても良い。
【0068】
なお、上述では、撮像部2は、反射照明部側に1つ備えた構成を示したが、透過照明部43側にも備えた構成としても良い。そうすることで、複層基板Wのウラ面を撮像する際に基板反転させる動作を省略することができ、検査にかかる時間を短くすることができる。
【0069】
なお、上述では、検査対象領域Rを撮像部3にて一括撮像する形態を例示したが、検査対象領域Rを複数の分割領域に区分し、それぞれの分割領域を逐次撮像する形態であっても良い。この場合、基板検査装置は、複層基板Wと撮像カメラ35とを相対移動させ、いわゆるステップ・アンド・リピート方式でそれぞれの分割領域を撮像する構成とする。
【0070】
或いは、複層基板Wと撮像カメラ35とを連続的に相対移動させながら、照明光をストロボ発光させ、所定の送りピッチ毎に撮像を行う構成としても良い。このとき、ストロボ照明の発光時間は極めて短いため、移動中に撮像された画像であっても、静止画のような状態で撮像される。
【0071】
そして、分割撮像により画像を取得した場合、検査及び差分処理は、それぞれの分割領域毎に行っても良いし、撮像した画像を1つ又はいくつかの画像に合成した後の合成画像に対して行っても良い。
【0072】
なお、上述では、照明用の光源部41a,43aとして白熱電球を備え、フィルタ部41c,43c及びフィルタ切替部41d、4dにて通過させる光を切り替える構成を例示した。しかし、この様な構成に限定されず、照明用の光源として、例えば、白色LEDや蛍光灯などの可視光領域の光を発するものと、赤外LEDなどの赤外光領域の光を発するものを備えた構成としても良い。この場合、これらの光をON/OFF切り替える構成とし、フィルタ部やフィルタ切替部を省いた構成としても良い。
【0073】
また、検査対象となる基板の材料がシリコンなどの赤外光を透過させ、可視光を吸収する特性を持つ場合、透過照明部43のフィルタ部43cとフィルタ切替部43dを省き、可視光を含む赤外光を下方からの照明光43Lとして、検査対象領域Rに向けて照射する構成としても良い。この場合、異物が無いところは、赤外光が通過するため明画像として撮像され、異物X1〜X3,Y1,Y2のあるところは暗画像として撮像される。
【0074】
なお、上述では、本発明を具現化する形態として、上述では反射照明部の一類型として同軸落斜照明部41を備えた構成を例示した。しかし、反射照明部は、このような形態に限定されず、破線で示す斜光照明部45を備えた構成であっても良い。斜光照明部45としては、破線で図示したような一方向から照明光を照射するものや、対物レンズの周りを囲む様に発光部が備えられたリング照明やドーム照明などが例示できる。
【0075】
なお、上述では、複層基板Wの内部に潜む異物X1〜X3を検出する場合の検査形態について例示した。しかし、本発明を適用する上では、この形態に限らず、複層基板Wの内部構造物が所定の寸法および形状で形成されているかの検査(いわゆるパターン検査)をしたり、積層界面に気泡が混入していないか等を検査したりする形態にも適用可能である。