(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368628
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】移動式足場および該移動式足場を用いた点検補修方法
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20180723BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01D19/12
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-234020(P2014-234020)
(22)【出願日】2014年11月18日
(65)【公開番号】特開2016-98492(P2016-98492A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】505389695
【氏名又は名称】首都高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513220562
【氏名又は名称】首都高技術株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(74)【代理人】
【識別番号】100089015
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 剛博
(74)【代理人】
【識別番号】100144299
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100150223
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 修三
(72)【発明者】
【氏名】永田 佳文
(72)【発明者】
【氏名】坂本 豊
(72)【発明者】
【氏名】森 清
(72)【発明者】
【氏名】高津 惣太
(72)【発明者】
【氏名】阿部 健治
(72)【発明者】
【氏名】河村 康文
(72)【発明者】
【氏名】志賀 弘明
【審査官】
石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−173203(JP,A)
【文献】
実開平01−105142(JP,U)
【文献】
特開2014−084580(JP,A)
【文献】
特開2008−050811(JP,A)
【文献】
実開平05−022765(JP,U)
【文献】
特開2003−097046(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0175205(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00−24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の主桁の延びる方向と略直交する方向であって、かつ、前記橋梁の床版の面と略平行な方向に配置されて、直接または間接に前記主桁に取り付けられた支持材と、
前記支持材の上に前記橋梁の主桁の延びる方向に取り付けられた複数のレールと、
作業員を支持可能な足場パネルと、
を備え、
前記足場パネルの下面には、前記レールに支持されつつ前記レールに沿って移動可能な回動部材が備えられていて、前記足場パネルの下面は前記レールの上端および前記支持材の上端よりも上方に位置しており、さらに前記支持材は前記橋梁の主桁の間を架け渡しており、前記足場パネルの部位のうち、橋軸直角方向に離れた複数箇所の部位が前記レールの鉛直方向上方に位置していることを特徴とする移動式足場。
【請求項2】
前記足場パネルの部位のうち、少なくとも1箇所の部位が前記支持材の鉛直方向上方に位置していることを特徴とする請求項1に記載の移動式足場。
【請求項3】
前記複数のレールは3本以上のレールであることを特徴とする請求項1または2に記載の移動式足場。
【請求項4】
前記足場パネルの橋軸方向端部に、伸縮または折り畳みが可能な構造の手摺が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の移動式足場。
【請求項5】
前記レールは自身の長手方向に延びる中空部を有し、該中空部の中に前記回動部材は配置されており、前記回動部材は前記中空部の中から逸脱できない状態で前記中空部の中を移動することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の移動式足場。
【請求項6】
前記支持材および前記レールは、前記橋梁に常設されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の移動式足場。
【請求項7】
前記足場パネルはハニカム構造のアルミニウム製パネルであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の移動式足場。
【請求項8】
前記橋梁の橋軸直角方向の端部の主桁の外側に、前記支持材によって下方から支持された歩廊が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の移動式足場。
【請求項9】
前記足場パネルは、人力により前記レールに沿って移動可能なことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の移動式足場。
【請求項10】
前記足場パネルは、前記足場パネルの上の作業員がロープを手繰ることによって移動可能なことを特徴とする請求項9に記載の移動式足場。
【請求項11】
請求項10に記載の移動式足場の足場パネルに乗った作業員がロープを手繰ることによって、該足場パネルを所望の位置に移動させつつ、点検補修作業を行うことを特徴とする移動式足場を用いた点検補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式足場および該移動式足場を用いた点検補修方法に関し、詳細には、橋梁の点検補修に好適に用いることができる移動式足場および該移動式足場を用いた点検補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁を長期間安全に使用していくためには、定期的な点検と適切な補修に基づく維持管理が必要不可欠である。
【0003】
このため、多くの橋梁に点検通路が設けられている。また、橋梁の中には、橋梁の下面全面にわたって恒久足場が設けられているものもある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、点検通路は設置個所が一部に限られているため、たたき点検等の触診による点検を行う際の点検範囲が限定的となり、橋梁全体にわたって詳細な点検を実施することは困難である。
【0005】
橋梁の下面全面にわたって恒久足場が設けられている場合は、点検補修時の作業性や外観等の面で優れるが、全面設置となるため高価である。また、橋梁自体の重量が増加してしまうため、橋梁自体の耐震性等に与える影響が大きくなる。
【0006】
一方、点検通路や恒久足場といった恒久的な足場の他に、仮設の足場を設置する方法もある。
【0007】
しかしながら、橋梁の桁下が街路であるところに仮設足場を設置する場合には、橋梁の桁下の街路に交通規制をかける必要があり、多大な労力が必要になるとともに、道路利用者に負担をかけることになる。また、交通量の多い市街地であるほど、橋梁の桁下の街路に交通規制をかける許可を得ることが難しくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−264116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、従来の点検通路を用いた場合よりも点検範囲を広くすることができ、かつ、従来の恒久足場よりも軽量かつ経済的であり、さらに橋梁の桁下に街路がある場合であっても交通への影響が少ない橋梁用の移動式足場および該移動式足場を用いた点検補修方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の移動式足場および該移動式足場を用いた点検補修方法により、前記課題を解決したものである。
【0011】
即ち、本発明に係る移動式足場は、橋梁の主桁の延びる方向と略直交する方向であって、かつ、前記橋梁の床版の面と略平行な方向に配置されて、直接または間接に前記主桁に取り付けられた支持材と、前記支持材の上に前記橋梁の主桁の延びる方向に取り付けられた
複数のレールと、作業員を支持可能な足場パネルと、を備え、前記足場パネルの下面には、前記レールに支持されつつ前記レールに沿って移動可能な回動部材が備えられていて、前記足場パネルの下面は前記レールの上端および前記支持材の上端よりも上方に位置しており、さらに前記支持材は前記橋梁の主桁の間を架け渡して
おり、前記足場パネルの部位のうち、橋軸直角方向に離れた複数箇所の部位が前記レールの鉛直方向上方に位置していることを特徴とする移動式足場である。
【0012】
ここで、「直接または間接に前記主桁に取り付けられた支持材」には、前記主桁に直接接するように取り付けられた支持材だけでなく、前記主桁に他の部材を介して間接に取り付けられた支持材も含む。
【0013】
また、「前記足場パネルの下面には、前記レールに支持されつつ前記レールに沿って移動可能な回動部材が備えられて」いる場合には、前記足場パネルの下面に直接接するように回動部材が取り付けられている場合だけでなく、他の部材を介して前記足場パネルの下面に間接に回動部材が取り付けられている場合も含む。
【0014】
前記足場パネルの部位のうち、少なくとも1箇所の部位が前記支持材の鉛直方向上方に位置していることが好ましい。
前記複数のレールは3本以上のレールであることが好ましい。
前記足場パネルの橋軸方向端部に、伸縮または折り畳みが可能な構造の手摺が設けられていることが好ましい。
前記レールが自身の長手方向に延びる中空部を有し、該中空部の中に前記回動部材が配置されており、前記回動部材が前記中空部の中から逸脱できない状態で前記中空部の中を移動するように構成することが好ましい。
【0015】
前記支持材および前記レールは、前記橋梁に常設されていることが好ましい。
【0016】
前記足場パネルはハニカム構造のアルミニウム製パネルであることが好ましい。
【0017】
前記橋梁の橋軸直角方向の端部の主桁の外側に、前記支持材によって下方から支持された歩廊をさらに設けてもよい。
【0018】
前記足場パネルは、人力により前記レールに沿って移動可能なことが好ましく、前記足場パネルの上の作業員がロープを手繰ることによって移動可能なことが特に好ましい。
【0019】
本発明に係る移動式足場を用いた点検補修方法は、前記移動式足場の足場パネルに乗った作業員がロープを手繰ることによって、該足場パネルを所望の位置に移動させつつ、点検補修作業を行うことを特徴とする移動式足場を用いた点検補修方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、従来の点検通路を用いた場合よりも点検範囲を広くすることができ、かつ、従来の恒久足場よりも軽量かつ経済的であり、さらに橋梁の桁下が街路である場合であっても交通への影響が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る移動式足場を用いて作業員が作業を行っている状況を模式的に示す図
【
図2】本発明の実施形態に係る移動式足場を用いて作業員が作業を行っている状況を模式的に示す図
【
図3】本発明の実施形態に係る移動式足場を橋軸方向から見た図
【
図4】前記移動式足場の足場パネルを橋軸方向から見た図
【
図5】前記移動式足場のレールを橋軸方向から見た拡大図
【
図6】前記移動式足場の足場パネルを橋軸直角方向から見た図
【
図7】本実施形態に係る移動式足場の移動機構を上方から見た図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0023】
図1および
図2は、本発明の実施形態に係る移動式足場10を用いて作業員が作業を行っている状況を模式的に示す図である。
図3は、本発明の実施形態に係る移動式足場10を橋軸方向から見た図である。
【0024】
本実施形態に係る移動式足場10は、支持材12と、レール14と、足場パネル16と、キャスター18(回動部材)と、を備えてなり、さらに橋軸方向の端部には手摺20を備え、また、橋梁1の橋軸直角方向の端部に位置する主桁2の外側には歩廊22が設けられている。
【0025】
支持材12は溝形鋼であり、
図3に示すように、橋梁1の主桁2の延びる方向と略直交する方向であって、かつ、橋梁1の床版3の面と略平行な方向に所定の間隔で配置されていて、橋梁1の主桁2の間を架け渡しており、連結部材24を介して橋梁1の主桁2に取り付けられている。連結部材24は、形鋼とボルトおよびナットを有して構成されている。
【0026】
支持材12は、レール14、足場パネル16および足場パネル16の上に乗る作業員等の重量を支えることができる形状および材質のものであればよく、溝形鋼に限定されない。また、支持材12は形鋼でなくてもよく、例えば、鋼板を溶接で組み合わせてなる部材であってもよい。
【0027】
また、連結部材24は、支持材12、レール14、足場パネル16および足場パネル16の上に乗る作業員等の重量を支えることができる形状および材質のものであればよく、形鋼に限定されない。例えば、鋼材を溶接で組み合わせてなる部材であってもよい。
【0028】
レール14は支持材12の上に、橋梁1の主桁2の延びる方向に取り付けられている。
図4(足場パネル16を橋軸方向から見た図)および
図5(レール14を橋軸方向から見た拡大図)に示すように、レール14は四角柱状の中空の鋼材であり、自身の長手方向に延びる中空部14Aを有しており、かつ、中空部14Aの上部にはレール14の長手方向に延びる開口部14Bが形成されている。キャスター18は中空部14Aの中を移動するようになっており、キャスター18を足場パネル16に連結するキャスター連結用部材18Aは開口部14Bに沿って移動するようになっている。レール14の中空部14Aの中をキャスター18が移動するようになっているので、本実施形態に係る移動式足場10は、脱線しにくい構造になっている。
【0029】
レール14が支持材12に連結される箇所については、連結用鋼板15Aがレール14に溶接されているとともに、補強鋼板15Bによりレール14の連結箇所の補強がなされている。連結用鋼板15Aをボルト15Cにより支持材12に取り付けることで、レール14は支持材12に固定されている。
【0030】
なお、
図4および
図5では、レール14を一体的な部材として描いているが、複数の部材を組み合わせてレール14を構成するようにしてもよい。例えば、2つの溝形鋼を平行に、かつ、溝部を向い合せるように配置して、2つの溝形鋼の溝部により中空部14Aを形成して、レール14を構成してもよい。ただし、レール14の形成に用いる複数の部材は溶接等により連結させる必要がある。
【0031】
また、本実施形態に係る移動式足場10においては、
図1〜
図4に示すように、レール14は、足場パネル16の橋軸直角方向の両端部よりもやや内側の位置にそれぞれ配置されており、2本で1組になるように配置されているが、3本以上で1組になるように配置して、より安全性を高めるようにしてもよい。
【0032】
本実施形態に係る移動式足場10において、橋梁1に原則として常設しておくことが必要な部材は、支持材12、レール14、連結用鋼板15A、補強鋼板15Bおよび連結部材24のみである。ただし、支持材12、レール14、連結用鋼板15A、補強鋼板15Bおよび連結部材24についても、周辺環境条件等の点から常設しておくことが困難な場合は、常設にせずに点検補修作業の都度設置するようにしてもよい。
【0033】
足場パネル16は、作業員等がその上に乗って作業を行う板状のパネルであり、その上に乗る作業員等の重量を支えることができる形状および材質であることが必要であり、通常の足場板と比べて同等以上の剛性を有することが好ましい。また、足場パネル16の幅は、主桁2の間の幅と同程度であり、既設の点検通路から届かない場所についても触診による全面的な点検や簡易な補修工事ができるような幅を有している。ただし、足場パネル16は必要な位置まで移動させて使用するので、足場パネル16の占める面積は橋梁1の床版3の下面の面積に比べて極めて小さな面積である。
【0034】
また、後述するように、本実施形態に係る移動式足場10は極めて安全性の高い構造となっているので、例えば主桁2の高さが高く、足場パネル16に乗った作業員の手が床版3の下面に届かないような場合には、踏み台等を足場パネル16に持ち込み、その踏み台等を用いて作業を行ってもよい。
【0035】
足場パネル16は、作業員が手運搬できるよう、1枚当たりの重量を軽量化するように設計することが好ましい。この点で、足場パネル16は、分割構造(
図6および
図7参照)にして、橋軸方向を短辺、橋軸直角方向を長辺とする長方形とすることが好ましい。また、足場パネル16は軽量な材質とすることが好ましく、アルミニウム製とすることが好ましい。特にハニカム構造のアルミニウム製パネルとすることが好ましい。
【0036】
足場パネル16の下面には、レール14に支持されつつレール14に沿って移動可能なキャスター18(回動部材)が、キャスター連結用部材18Aを介して取り付けられている。
図5に示すように、キャスター連結用部材18AはH形に組み立てられた鋼材で、キャスター連結用部材18Aのウェブ部18A1がレール14の開口部14Bを貫通するように配置されており、キャスター連結用部材18Aの一方のフランジ部(レール14の中空部14Aの外に位置する上側のフランジ部18A2)が足場パネル16の下面に取り付けられ、他方のフランジ部(レール14の中空部14Aの中に位置する下側のフランジ部18A3)にキャスター18が取り付けられている。レール14の中空部14Aの中に位置するフランジ部18A3の幅は開口部14Bの幅よりも大きくなっており、フランジ部18A3は開口部14Bを通過できないようになっている。このため、レール14の中空部14Aの中に配置されているキャスター18は、中空部14Aの中から逸脱できず、
図4、
図5および
図6(足場パネル16を橋軸直角方向から見た図)に示すように、レール14の延びる方向から逸脱しないで移動できるようになっている。このため、本実施形態に係る移動式足場10は極めて脱線しにくい構造になっている。
【0037】
また、
図1〜
図6に示すように、足場パネル16の下面はレール14の上端よりも上方に位置している。このため、万一レール14からキャスター18(回動部材)が脱線するようなことがあっても、足場パネル16の下面がレール14上に載置されることになるため、足場パネル16が下方に落下することはほとんど考えられず、本実施形態に係る移動式足場10は、極めて安全性の高い構造となっている。
【0038】
また、
図1〜
図6に示すように、レール14の下方にはレール14と直交する支持材12がさらに所定の間隔で配置されており、足場パネル16の下面は支持材12の上端よりも上方に位置している。また、支持材12は橋梁1の主桁2の延びる方向と略直交する方向に延びていて橋梁1の主桁2の間を架け渡している。このため、万一レール14からキャスター18(回動部材)が脱線するようなことがあっても、レール14だけでなく支持材12も足場パネル16を下から支えて足場パネル16の落下を防ぐ働きをする。この点からも、本実施形態に係る移動式足場10は、極めて安全性の高い構造となっている。
【0039】
また、足場パネル16の橋軸方向端部には手摺20が備えられており、作業員の作業時の安全性を向上させている。なお、足場パネル16がレール14に沿って移動する途中に橋梁1の添加物等の障害物に遭遇する可能性があるため、これらの障害物を回避可能とするべく、手摺20は伸縮および折り畳みが可能な構造とすることが好ましい。
【0040】
橋梁1に常設する部材の重量を軽減する観点および使用材料を節約する観点から、足場パネル16は、点検補修時にのみレール14に取り付けて使用することを本実施形態に係る移動式足場10では原則とするが、周辺環境条件等の点から足場パネル16の再設置に困難を伴う場合には、レール14に常時取り付けておいてもよい。
【0041】
歩廊22は、橋梁1の橋軸直角方向の端部に位置する主桁2の外側に設けられており、支持材12によって下方から支持されており、橋梁1の橋軸直角方向の端部に位置する主桁2よりも外側の橋梁1の部位を点検補修する際に用いることができる。ただし、本実施形態に係る移動式足場10において、歩廊22は、橋梁1に原則として常設しておくことが必要な部材ではない。橋梁1に常設する必要性が高くない場合、歩廊22は設置しなくてもよい。
【0042】
次に、本実施形態に係る移動式足場10の移動機構について説明する。
図7は本実施形態に係る移動式足場10の移動機構50を上方から見た図である。
【0043】
移動機構50は、アイボルト52、62と、シャックル54、64と、滑車56、66と、シートストッパ58と、ロープ60とを有してなる。移動式足場10の足場パネル16の上に乗っている作業員は、移動機構50を用いて、手動により足場パネル16をレール14に沿って橋梁1の橋軸方向に移動させることができる。
【0044】
図7に示すように、足場パネル16の橋軸方向の両端部にアイボルト52が取り付けられており、このアイボルト52にシャックル54が取り付けられ、さらにこのシャックル54に滑車56が取り付けられている。また、足場パネル16の橋軸方向の両端部におけるこの取り付け位置と対向する、橋梁1の2つの横桁4の箇所にも、同様に、アイボルト62、シャックル64、滑車66が取り付けられている。
【0045】
そして、2つの横桁4にそれぞれ取り付けられた2つの滑車66の本体部にロープ60の両端部をそれぞれ取り付けるとともに、足場パネル16に取り付けられた滑車56の滑車部にロープ60を回動自在に取り付け、さらに、横桁4に取り付けられた滑車66の滑車部にロープ60を回動自在に取り付け、足場パネル16の上面に固定されたシートストッパ58にロープ60の中途を固定する。
図7に示すように、2つのシートストッパ58の間のロープ60は、たるんだ状態で足場パネル16の上に載置されることになる。
【0046】
移動式足場10の足場パネル16の上に乗っている作業員は、ロープ60を手繰ることによって作業の進捗に合わせて所望の位置まで足場パネル16を移動させることができる。所望の位置に移動終了後にシートストッパ58によりロープ60を固定することにより、足場パネル16の位置を固定することができる。
【0047】
このように、移動機構50はロープを用いた簡単な構成でありながら、足場パネル16の上に乗っている作業員の人力のみで足場パネル16を移動させることができ、経済性および点検補修時の作業性に優れる。
【0048】
なお、本実施形態においては、ロープを用いた移動機構50により、足場パネル16の上に乗っている作業員の人力のみで足場パネル16を移動させるようにしたが、足場パネル16を移動させる機構はこの機構に限定されない。例えば、足場パネル16に乗っていない作業員による人力で足場パネル16を移動させるような機構としてもよいし、ウィンチにより足場パネル16を移動させるような機構としてもよい。
【0049】
また、例えば、キャスター18(回動部材)を歯車とし、レール14を前記歯車の歯に合わせて歯切りされたラックにするとともに(ラック・アンド・ピニオンの構造)、前記歯車を電動で回動させることができるようにして、足場パネル16を電動で移動可能なようにしてもよい。
【0050】
ただし、経済性および点検補修時の作業性の両面から総合的に考えてみて、足場パネル16の上に乗っている作業員の人力のみで足場パネル16を移動させることができる移動機構50が最も優れると考えられる。
【0051】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る移動式足場10は、支持材12と、レール14と、足場パネル16と、キャスター18(回動部材)と、を備えてなる構造である。そして、足場パネル16の幅は、主桁2の間の幅と同程度であり、既設の点検通路から届かない場所についても触診による全面的な点検や簡易な補修工事ができるような幅を有している一方、足場パネル16は必要な位置まで移動させて使用するので、足場パネル16の占める面積は橋梁1の床版3の下面の面積に比べて極めて小さな面積である。
【0052】
このため、本発明の実施形態に係る移動式足場10を用いた場合、従来の点検通路を用いた場合よりも点検範囲を広くすることができる一方、本発明の実施形態に係る移動式足場10は、従来の全面恒久足場よりも軽量かつ経済的である。
【0053】
また、本発明の実施形態に係る移動式足場10において、橋梁1に原則として常設で添架しておく必要のある部材は支持材12、レール14、連結用鋼板15A、補強鋼板15Bおよび連結部材24のみであり、支持材12を主桁2に取り付ける連結部材24は主桁2に開けられた取合い孔を使用してボルトにて接合すればよいので、本発明の実施形態に係る移動式足場10は、供用中の既設の橋梁1に対しても容易に設置が可能である。
【0054】
また、従来の全面恒久足場と比較して常設で添架される部材数が少なく軽量となることから、本実施形態に係る移動式足場10は橋梁本体の耐荷条件が厳しく全面恒久足場の設置が難しい場合に対しても有効である。
【0055】
また、周辺状況により景観に配慮する必要が少ない場合であって、かつ、高架下及び高架道路上からのアクセスが困難な箇所に対して、本実施形態に係る移動式足場10は好適に適用可能である。具体的には、橋梁点検車の利用が難しい歩道設置橋梁等に本実施形態に係る移動式足場10は好適に適用可能である。
【0056】
また、点検補修を行う際に本実施形態に係る移動式足場10を用いれば、橋梁1の桁下が街路である場合であっても交通への影響が少ない。このため、桁下が街路である橋梁に対しても、本実施形態に係る移動式足場10は好適に適用可能である。
【0057】
また、本実施形態に係る移動式足場10において、足場パネル16の下面はレール14の上端よりも上方に位置している。このため、万一レール14からキャスター18(回動部材)が脱線するようなことがあっても、足場パネル16の下面がレール14上に載置されることになるため、足場パネル16が下方に落下することはほとんど考えられず、本実施形態に係る移動式足場10は、極めて安全性の高い構造となっている。
【0058】
また、本実施形態に係る移動式足場10において、レール14の下方にはレール14と直交する支持材12がさらに所定の間隔で配置されており、足場パネル16の下面は支持材12の上端よりも上方に位置している。また、支持材12は橋梁1の主桁2の延びる方向と略直交する方向に延びていて橋梁1の主桁2の間を架け渡している。このため、万一レール14からキャスター18(回動部材)が脱線するようなことがあっても、レール14だけでなく支持材12も足場パネル16を下から支えて足場パネル16の落下を防ぐ働きをする。この点からも、本実施形態に係る移動式足場10は、極めて安全性の高い構造となっている。
【0059】
また、本実施形態に係る移動式足場10において、レール14は四角柱状の中空の鋼材であり、自身の長手方向に延びる中空部14Aを有しており、かつ、中空部14Aの上部にはレール14の長手方向に延びる開口部14Bが形成されている。そして、キャスター18は中空部14Aの中を移動するようになっており、キャスター連結用部材18Aは開口部14Bに沿って移動するようになっている。キャスター連結用部材18Aのフランジ部18A3(レール14の中空部14Aの中に位置する下側のフランジ部)の幅は、開口部14Bの幅よりも大きくなっており、フランジ部18A3は開口部14Bを通過できないようになっている。このため、キャスター18は中空部14Aの中から逸脱できず、本実施形態に係る移動式足場10は極めて脱線しにくい構造になっている。この点からも、本実施形態に係る移動式足場10は、極めて安全性の高い構造となっている。
【符号の説明】
【0060】
1…橋梁
2…主桁
3…床版
4…横桁
10…移動式足場
12…支持材
14…レール
14A…中空部
14B…開口部
15A…連結用鋼板
15B…補強鋼板
15C…ボルト
16…足場パネル
18…キャスター(回動部材)
18A…キャスター連結用部材
20…手摺
22…歩廊
24…連結部材
50…移動機構
52、62…アイボルト
54、64…シャックル
56、66…滑車
58…シートストッパ
60…ロープ