(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[歯磨剤用顆粒の製造方法]
本発明の歯磨剤用顆粒の製造方法は、下記工程(1)及び(2)を有する歯磨剤用顆粒の製造方法である。
工程(1):見掛けの平均粒子径が3.0μm以上、5.9μm以下のゼオライト、結合剤成分、及び水を含む水スラリーを作製する工程。
工程(2):前記工程(1)で得られた水スラリーを噴霧乾燥する工程。
【0010】
本発明の歯磨剤用顆粒の製造方法によれば、見掛けの平均粒子径が特定の範囲にあるゼオライトを用いることにより、従来の製造方法に比べて効率的に歯磨剤用顆粒を製造することができるが、その理由は以下のとおりである。
すなわち、本発明者らは、製造効率を改善すべく検討を行う過程で、ゼオライトの見掛けの平均粒子径と水スラリーの粘度との関係に着目したところ、これらの間に特異な関係が存在することを知見した。具体的には、従来用いられていたゼオライトの水スラリーと、それよりも見掛けの平均粒子径が小さいゼオライトの水スラリーとは、一般的に用いられるB型粘度計等で測定した粘度がほぼ同じ値を示すのに対し、水スラリーを噴霧する際のノズル先端での粘度は、見掛けの平均粒子径が小さいゼオライトの水スラリーの方が極端に低い値を示すことを知見した。一般的に、水スラリーの粘度は、水スラリー中の固形分の体積分率の増加に伴って増加することが技術常識として知られている(例えば、北原文雄監修、1992年発刊、株式会社テクノシステムズ、分散・凝集の応用技術の第165頁、
図7.10)。したがって、この技術常識に基づけば、見掛けの平均粒子径が小さいゼオライトの水スラリーの方が、固形分の体積分率が増加するため粘度が増加するはずである。しかしながら、発明者らが検討を行ったところ、ゼオライトの水スラリーに関してはこれまでの技術常識に反して、見掛けの平均粒子径が小さい方が、水スラリーを噴霧する際のノズル先端での粘度が低下した。
【0011】
そこで、本発明者らは、この特異な性質を利用して効率的に歯磨剤用顆粒を製造することができないか更に検討を重ねたところ、見掛けの平均粒子径が3.0μm以上、5.9μm以下のゼオライトを用いることにより、粘度の極端な増加を抑えつつ水スラリー中のゼオライト及び結合剤成分の固形分量を増加させることができ、これを噴霧乾燥することにより、結果として単位時間当たりの歯磨剤用顆粒の製造量を増加できることを見出し、本発明を完成させた。
以下、本発明の内容について具体的に説明する。なお、本発明における「見掛けの平均粒子径」とは、実施例に記載の方法により測定することができるゼオライトの平均粒子径であって、原料ゼオライト中に含まれる凝集状態の粒子径、及び一次粒子の粒子径を考慮した値を指す。
また、本発明では「水スラリーを噴霧する際のノズル先端での粘度」を評価する方法として「高せん断場における粘度」を用いる。「高せん断場における粘度」は、実施例に記載の方法により測定することができる粘度であり、本明細書においては、「水スラリーを噴霧する際のノズル先端での粘度」と「高せん断場における粘度」とを同じ意味で用いる。
【0012】
<ゼオライト>
本発明に用いられるゼオライトは、見掛けの平均粒子径が3.0μm以上、5.9μm以下のものである。見掛けの平均粒子径が3.0μm以上、5.9μm以下であると、高せん断場における水スラリーの粘度を低下させることができ、これにより水スラリー中のゼオライト等の固形分濃度を増加させることができるため、結果として歯磨剤用顆粒の製造効率が向上する。しかし、見掛けの平均粒子径が前記範囲外であると、水スラリー中のゼオライト等の固形分濃度を増加させた場合に水スラリーの粘度が極端に高くなってしまい、好適な粒径を有する歯磨剤用顆粒の生産が困難となる。特に、見掛けの平均粒子径が3.0μm未満であると、水スラリーの粘度が極端に増加してしまい、水スラリーの調製ができず、噴霧も行えなくなる。
水スラリーの高せん断場における粘度を、噴霧に適した範囲に調整し、効率的に歯磨剤用顆粒を製造する観点から、ゼオライトの見掛けの平均粒子径は、3.0μm以上、好ましくは3.5μm以上、より好ましくは4.0μm以上、更に好ましくは4.5μm以上、より更に好ましくは5.0μm以上であり、そして、5.9μm以下、好ましくは5.6μm以下、より好ましくは5.5μm以下である。
【0013】
本発明においては、前述のとおり、見掛けの平均粒子径が3.0μm以上、5.9μm以下のゼオライトを用いるが、このようなゼオライトは、例えば、ゼオライトを製造する際の合成条件や解砕条件等を制御することにより、又は市販のゼオライトをハンマー式、ナイフ式、ピン式の公知の粉砕機等で粉砕することにより製造することができる。
なお、合成条件、粉砕機の選定、及び粉砕条件等は、目的とする見掛けの平均粒子径を有するゼオライトが得られるように適宜設定すればよい。
【0014】
ゼオライトとしては、天然のものは夾雑物を含み均質性に欠けるので、合成のもの、すなわち合成ゼオライトが好ましい。合成ゼオライトとしては、A型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、L型ゼオライト、ペンタシル型ゼオライトが挙げられ、歯垢除去効果、歯石予防効果の観点から、好ましくはA型ゼオライトであり、より好ましくは4A型ゼオライトである。
【0015】
ゼオライトの平均一次粒子径は、粒子径が小さい程、歯の表面に強く吸着した着色ペリクルを除くのに十分な研摩力を生じさせて、歯を白くし、顆粒の崩壊後は、研摩力が減少し、長時間の歯磨き操作でも歯を傷つけない(低為害性)という特徴を付与することができる。また、ゼオライトの平均一次粒子径が小さければイオン交換能が高まり、歯垢除去効果、歯石予防効果がさらに高まるという利点がある。
したがって、上記の観点からゼオライトの平均一次粒子径は、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは4.5μm以下、更に好ましくは4.0μm以下、より更に好ましくは3.6μm以下であり、そして、好ましくは2.0μm以上、より好ましくは3.0μm以上である。
すなわち、本発明においては、前記ゼオライトの見掛けの平均粒子径が3.0μm以上、5.9μm以下であり、かつ前記ゼオライトの平均一次粒子径が2.0μm以上、5.0μm以下であることが好ましい。
なお、本明細書におけるゼオライトの平均一次粒子径は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0016】
<結合剤成分>
本発明においては、ゼオライトの粒子同士を結合させると共に、歯磨剤用顆粒に適度な崩壊強度を付与することを目的として、結合剤成分を用いる。結合剤成分としては、珪酸ナトリウム、水不溶性無機結合剤、水不溶性有機結合剤等が挙げられる。
【0017】
〔珪酸ナトリウム〕
本発明においては、歯磨剤用顆粒に適度な崩壊強度を付与する観点から、珪酸ナトリウムを用いることが好ましい。この珪酸ナトリウムは、工程(2)の顆粒乾燥時に、顆粒の崩壊強度を適度に高める機能を有する。珪酸ナトリウムの種類と、その量を調整することにより、顆粒の崩壊強度を適宜調整することができる。
珪酸ナトリウムとしては、メタ珪酸ナトリウム(Na
2SiO
3)、オルト珪酸ナトリウム(Na
4SiO
4)、二珪酸ナトリウム(Na
2Si
2O
5)、四珪酸ナトリウム(Na
2Si
4O
9)及びそれらの水和物が挙げられる。
珪酸ナトリウムは、一般にNa
2O・nSiO
2・mH
2Oの分子式で表される。係数n(Na
2Oに対するSiO
2の分子比)はモル比と呼ばれ、下記式(1)で表すことができる。
モル比=質量比(SiO
2質量%/Na
2O質量%)×(Na
2Oの分子量/SiO
2の分子量) (1)
珪酸ナトリウムの物性は前記モル比によって異なるが、医薬部外品原料規格への適合性、及び得られる顆粒のpHの観点から、前記モル比は、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.4以上、更に好ましくは2.8以上であり、そして、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、更に好ましくは3.3以下である。
【0018】
珪酸ナトリウム水溶液を用いる場合は、前記分子式におけるSiO
2含有量は、歯磨剤用顆粒に適度な崩壊強度を付与する観点から、好ましくは28.0質量%以上であり、そして、好ましくは38.0質量%以下、より好ましくは36.0質量%以下、更に好ましくは30.0質量%以下であり、Na
2O含有量は、好ましくは9.0質量%以上であり、そして、好ましくは19.0質量%以下、より好ましくは15.0質量%以下、更に好ましくは10.0質量%以下であり、15℃でのボーメ度は、好ましくは40以上であり、そして、好ましくは57以下、より好ましくは53以下である。
上記の観点から、SiO
2が28.0質量%以上、38.0質量%以下、Na
2Oが9.0質量%以上、19.0質量%以下、15℃でのボーメ度が40以上のものが好ましく、SiO
2が28.0質量%以上、36.0質量%以下、Na
2Oが9.0質量%以上、15.0質量%以下、15℃でのボーメ度が40以上、57以下のものがより好ましく、SiO
2が28.0質量%以上、30.0質量%以下、Na
2Oが9.0質量%以上、10.0質量%以下、15℃でのボーメ度が40以上、53以下のものが更に好ましい。すなわち、JIS K1408記載の珪酸ソーダ1号、2号、3号の水ガラスが好適に使用することができる。
なお、ボーメ度は、JIS Z8804(1960年9月1日制定、1994年3月1日最終改正)の記載に従って、測定することができる。
【0019】
〔珪酸ナトリウム以外の結合剤成分〕
本発明においては、珪酸ナトリウム以外の結合剤成分として、水不溶性無機結合剤や、水不溶性有機結合剤等を用いることができる。
水不溶性無機結合剤としては、水酸基を有するケイ素系化合物、アルミニウム系化合物、カルシウム系化合物、マグネシウム系化合物等を用いることができる。その具体例としては、二酸化ケイ素の分散体であるコロイダルシリカ、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ベントナイト、モンモリロナイト、カオリン、水酸化アルミニウムゲル、アルミナゾル、合成ヒドロタルサイト、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0020】
水不溶性有機結合剤としては、水不溶性かつ溶剤可溶性であるか、又は多価金属により水不溶性となる油脂や高分子、又は一般に接着剤に用いられる熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等の樹脂を用いることができる。
水不溶性有機結合剤として使用できる油脂としては、ワックス、パラフィン、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸、及びそれらの塩等が挙げられる。
水不溶性有機結合剤として使用できる高分子や樹脂としては、(i)キサンタンガム、デキストリン、ゼラチン等の多糖類、及びそれらの誘導体、(ii)ゴム系ラテックス等、(iii)アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ヒドロキシメタクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、マレイン酸エステル、メチルビニルエーテル、α−オレフィン等の単独重合体、及びそれらの共重合体等が挙げられる。
【0021】
<他の配合成分>
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲内で、ゼオライト及び前記結合剤成分以外の他の水不溶性粉末、例えば、研磨性粉体、水不溶性繊維、薬用成分、着色剤を用いることができる。
他の研磨性粉体としては、歯の研磨剤として一般に用いられるもの、例えば、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、シリカ、水酸化アルミニウム、リン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、複合アルミノケイ酸塩等が挙げられる。
水不溶性繊維としては、例えばセルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン等が挙げられ、これらの中では、顆粒の歯垢除去性の点からセルロースが特に好ましい。
【0022】
薬用成分としては、虫歯予防剤、抗微生物剤、酵素、抗炎症剤等が挙げられ、具体的には、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化錫、モノフルオロリン酸ナトリウム等の虫歯予防剤、ビタミンE、ビタミンC、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、塩化ナトリウム等の抗炎症剤;乳酸アルミニウム、アズレン、グリチルレチン酸、β−グリチルレチン酸、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、塩化リゾチーム、イプシロンアミノカプロン酸、銅クロロフィリンナトリウム、グルコン酸銅、酢酸dl−トコフェロール、硝酸カリウム等の知覚過敏予防剤;トリポリリン酸ナトリウム、エタンヒドロキシジホスフォネート等の歯石予防剤;亜鉛化合物等の歯垢形成抑制剤、ジヒドコレステロール、クロルヘキシジン、エピジヒドコレステロール、イソプロピルメチルフェノール、トリクロロカルバニリド、ハロカルバン、ヒノキチオール、アラントイン、トラネキサム酸、プロポリス、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、トリクロサン等の殺菌剤、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等のタバコヤニ除去剤等が挙げられる。
【0023】
着色剤としては、酸化チタン、群青等が挙げられ、これらの着色剤を添加することにより審美的効果を付加することができる。
上記の他の配合成分は、単独で又は2種以上を組み合せて使用することができる。
【0024】
<本発明における工程(1)及び工程(2)>
本発明の歯磨剤用顆粒の製造方法は、下記工程(1)及び(2)を有する製造方法である。
工程(1):見掛けの平均粒子径が3.0μm以上、5.9μm以下のゼオライト、結合剤成分、及び水を含む水スラリーを作製する工程。
工程(2):前記工程(1)で得られた水スラリーを噴霧乾燥する工程。
【0025】
〔工程(1)〕
工程(1)は、見掛けの平均粒子径が3.0μm以上、5.9μm以下のゼオライト、結合剤成分、及び水を含む水スラリーを作製する工程である。
結合剤成分を水溶液の状態、又は分散液の状態で用いる場合、水が含まれているため、更に水を添加する必要がないことがあるが、通常は、水スラリーの粘度を調整する観点から、別途、水を添加することが好ましい。
水スラリー中における固形分濃度は、生産性と所望の顆粒強度を得る観点から、結合剤成分の水溶液又は分散液の水も含めて、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、水スラリーの粘度が極端に高くなることを防ぐ観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下になるように調整する。
【0026】
前記水スラリー中の前記ゼオライトの固形分量は、生産性の観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上、より更に好ましくは50質量%以上であり、そして、水スラリーの粘度が極端に高くなることを防ぐ観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下、より更に好ましくは60質量%以下である。
【0027】
前記水スラリー中の前記結合剤成分の固形分量は、歯磨剤用顆粒中におけるゼオライト同士の結合を強固にする観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上であり、そして、好適な崩壊強度を得る観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは5.0質量%以下、より更に好ましくは3.0質量%以下である。
【0028】
前記水スラリーの高せん断場における粘度は、生産性の観点から、好ましくは10mPa・s以上、より好ましくは20mPa・s以上、更に好ましくは30mPa・s以上、より更に好ましくは40mPa・s以上、より更に好ましくは50mPa・s以上、より更に好ましくは60mPa・s以上である。そして、原料供給や噴霧のし易さ等のハンドリング性の観点から、好ましくは100mPa・s以下、より好ましくは90mPa・s以下、更に好ましくは85mPa・s以下、より更に好ましくは80mPa・s以下である。
なお、本明細書における高せん断場における粘度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0029】
工程(1)における水スラリーの作製は、各成分を混合することによって行うことができる。各成分の混合は、公知の方法で行うことができるが、例えば、バッチ式、連続式、セミバッチ式のいずれであってもよい。その際、混合温度は、通常の室温程度であればよく、好ましくは5℃以上、45℃以下である。混合時間は固形分濃度がある程度均一になる時間であれば特に制限はないが、通常、好ましくは10分以上、より好ましくは20分以上、更に好ましくは30分以上であり、そして、好ましくは300分以下、より好ましくは180分以下、更に好ましくは130分以下である。
【0030】
〔工程(2)〕
工程(2)は、前記工程(1)で得られた水スラリーを噴霧乾燥する工程である。
本発明に用いることができる噴霧乾燥法としては、並流式噴霧乾燥塔、混合流式噴霧乾燥塔、及び向流式噴霧乾燥塔を用いる方法が挙げられ、破裂顆粒がなく中実顆粒を効率よく得る観点から混合流式噴霧乾燥塔が好適に使用できる。
【0031】
混合流式噴霧乾燥塔では、乾燥塔中部から上向きに水スラリーを噴霧して微粒化し、乾燥塔上部から熱風を供給し、噴霧初期には両者と向流接触させ、液滴が重力により下降し始めてから両者を並流接触させ、乾燥塔底部から乾燥した顆粒を取り出す装置である。乾燥塔内の熱風温度は、熱効率の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは160℃以上であり、そして、顆粒の嵩密度を高める観点から、好ましくは300℃以下、より好ましくは250℃以下、更に好ましくは230℃以下である。
噴霧乾燥により得られる顆粒の物性は、水スラリー組成や固形分濃度、噴霧乾燥条件等を調整することにより制御することができる。
また、噴霧乾燥に際し水スラリーの微粒化機構として、回転式アトマイザー、一流体ノズル、二流体ノズルに代表される複数流体ノズルを使用することができる。得られる顆粒の粒子形状や粒度分布の観点から、一流体ノズルを用いることが好ましい。
【0032】
工程(2)における水スラリーの噴霧圧力は、所望の顆粒を得る観点及び生産性の観点から、好ましくは1.2MPa以上、より好ましくは1.5MPa以上、更に好ましくは1.6MPa以上であり、好ましくは2.8MPa以下、より好ましくは2.6MPa以下、更に好ましくは2.5MPa以下である。
また、工程(2)におけるスラリーの流量は、用いる製造装置の大きさ等にもよるが、所望の顆粒を得る観点及び生産性の観点から、好ましくは85kg/hr以上、より好ましくは90kg/hr以上、更に好ましくは95kg/hr以上であり、好ましくは130kg/hr以下、より好ましくは125kg/hr以下、更に好ましくは120kg/hr以下である。
【0033】
[歯磨剤用顆粒]
本発明の製造方法により製造された歯磨剤用顆粒中のゼオライトの含有量は、好ましくは55質量%以上、99質量%以下であり、崩壊性、顆粒崩壊後の研磨力及び歯への損傷を防ぐ観点から、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは85質量%以上、より更に好ましくは92質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。
【0034】
歯磨剤用顆粒中の結合剤成分の含有量は、顆粒の崩壊強度、歯磨剤中での顆粒の安定性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは8質量%以下、より更に好ましくは6質量%以下である。
【0035】
歯磨剤用顆粒中のゼオライトに対する結合剤成分の質量比[結合剤成分/ゼオライト]は、顆粒の崩壊強度、及び歯磨剤中での顆粒の安定性を向上させる観点から、好ましくは0.01以上であり、そして、好ましくは0.82以下である。
通常、顆粒の崩壊強度、歯磨剤中での安定性を高めるためには結合剤成分の配合量を増加させる必要があるが、結合剤成分として珪酸ナトリウムを用いた場合は、ゼオライトに対する珪酸ナトリウムの質量比[珪酸ナトリウム/ゼオライト]を特定の範囲に設定することで、顆粒の崩壊強度、歯磨剤中での安定性を向上させることができる。その理由は定かではないが、水溶性成分である珪酸ナトリウムの配合量を、ゼオライトに対して特定の範囲以下にすることで、歯磨剤のような多水分組成物中での顆粒の強度が向上し、安定性が向上したためであると考えられる。
このような観点から、ゼオライトに対する珪酸ナトリウムの質量比[珪酸ナトリウム/ゼオライト]は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、より更に好ましくは0.03以上であり、そして、好ましくは0.20以下、より好ましくは0.15以下、更に好ましくは0.12以下、より更に好ましくは0.10以下、より更に好ましくは0.08以下である。
【0036】
任意成分である水不溶性繊維、薬用成分、着色剤の含有量は、崩壊感触が低下することを防止する観点から、ゼオライト及び結合剤成分の合計量100質量部に対して、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下であり、配合しないことがより更に好ましい。すなわち、本発明の歯磨剤用顆粒中、ゼオライト及び結合剤成分の合計量が、好ましくは97質量%以上、より好ましくは98質量%以上であり、実質的に100質量%であることがより更により好ましい。
【0037】
[歯磨剤用顆粒の特性]
本発明の歯磨剤用顆粒の崩壊強度は、歯磨剤に配合して使用したときに、口の中で顆粒を触知でき、歯垢除去効果を認識できるにもかかわらず、異物感をほとんど感じることなく、また歯のエナメル質を傷つけることなく研磨力を発揮させる観点、及び生産性の観点から、好ましくは3g/個以上(顆粒1個あたり3g以上の荷重で崩壊)、より好ましくは5.5g/個以上であり、そして、好ましくは10g/個以下、より好ましくは8g/個以下、更に好ましくは7g/個以下である。
【0038】
歯磨剤用顆粒の湿式崩壊強度は、歯磨剤に配合して使用したときに、口の中で顆粒を触知でき、歯垢除去効果を認識できるにもかかわらず、異物感をほとんど感じることなく、また歯のエナメル質を傷つけることなく研磨力を発揮させる観点から、好ましくは27%以上、より好ましくは30%であり、そして、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、より好ましくは50%、更に好ましくは40%以下である。
なお、崩壊強度、湿式崩壊強度は、実施例に記載の方法により測定される。
【0039】
本発明の歯磨剤用顆粒の平均粒子径は、十分な研磨力を有し、顆粒崩壊後は、研磨力が低下して長時間の歯磨き操作でも歯を傷つけないようにする観点から、好ましくは150μm以上、より好ましくは160μm以上、更に好ましくは175μm以上、より更に好ましくは180μm以上であり、そして、好ましくは500μm以下、より好ましくは350μm以下、更に好ましくは250μm以下、より更に好ましくは200μm以下である。なお、歯磨剤用顆粒の平均粒子径は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0040】
[歯磨剤]
本発明の歯磨剤は、前記本発明の歯磨剤用顆粒の製造方法により製造された歯磨剤用顆粒を含有するものである。本発明の製造方法により得られた歯磨剤用顆粒は、歯磨剤中に好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。歯磨剤中の前記歯磨剤用顆粒の含有量が前記範囲内であると、口腔内で顆粒の触知ができて、みぞれ状の感触(シャリシャリ感)を与えるが、徐々に崩壊していき、清掃効果感を認知できるという特徴を有し、また優れた歯垢除去効果を奏する。
【0041】
歯磨剤の調製は常法により行うことができる。この際、歯磨剤に通常使用される他の成分、例えば、粘結剤、湿潤剤、甘味剤、界面活性剤、防腐剤、香料、薬用成分、着色剤、その他一般に使用されている、炭酸カルシウム等の歯磨剤用研磨剤、賦形剤等を配合することができる。
粘結剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、増粘性シリカ、モンモリロナイト、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、グアガム、ペクチン等が挙げられる。
湿潤剤としては、ソルビット、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシキリット、マルチット、ラクチット、エリスリトール等が挙げられ、甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、タイマチン(ソーマチン)、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル等が挙げられる。
【0042】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、アシルグルタミン酸ナトリウムやアシルサルコシン酸ナトリウム等のアシルアミノ酸の塩、ラウリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸の塩類、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等が挙げられる。
防腐剤としては、パラベン、p−オキシ安息香酸メチル、p−オキシ安息香酸エチル、p−オキシ安息香酸プロピル、p−オキシ安息香酸ブチル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
香料としては、メントール及びメントールを含む天然物;バジル、カンファー、キャラウェイ、カルダモン、コリアンダー、ゼラニウム、ジンジャー、ローレル、ラベンダー、メース、ナツメグ、ペッパー、ローズ、ローズマリー、タイム、イランイラン、ジャスミン、バニラ、ヒソップ、ラバンジン、オリス、キャロットシード、ダバナ、エレミ、オスマンタスの精油及び抽出物;ボルネオール及びその誘導体;ヘリオトロピン;α−、β−、γ−、δ−イオノン及びこれらの誘導体;チモール、バニリン、エチルバニリン、マルトール並びにエチルマルトール等が挙げられる。
薬用成分及び着色剤としては、前記のものが挙げられる。
上記成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【実施例】
【0043】
以下の実施例及び比較例において、「%」は特記しない限り「質量%」である。なお、各物性値の測定は、以下の方法により行った。
(1)ゼオライトの見掛けの平均粒子径
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA―950(株式会社堀場製作所製)を用い、下記条件でゼオライトの見掛けの平均粒子径を測定した。
<条件>
分散媒 :イオン交換水
循環速度:4
循環強度:4
屈折率 :1.600−0.000
超音波 :なし
データ互換ファイル:TOTAL OUT
約1分間循環後、測定。
【0044】
(2)ゼオライトの平均一次粒子径
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA―950(株式会社堀場製作所製)を用い、下記条件でゼオライトの平均一次粒子径を測定した。
<条件>
分散媒 :イオン交換水
循環速度:4
循環強度:4
屈折率 :1.600−0.000
超音波強度:7
超音波処理時間:10分
データ互換ファイル:TOTAL IN
【0045】
(3)結合剤成分の水溶液中、又は分散液中の結合剤成分の固形分
直径11.5cmのアルミ製の容器上に試料2.5gをスポイトを用いて滴下した。この時、1滴の液滴の直径が5〜10mm程度になるように(液滴同士が極力重ならないように)滴下散布した。その後、赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所製、FD240)を用いて下記条件により測定を行い揮発自由水分を除くことにより、結合剤成分を含む水溶液中の固形分を算出した。
<条件>
測定モード:湿量基準水分測定モード
温度 :105℃
設定をAutoとし、測定値の変化量が30秒間で0.05%以内になったときを最終測定値とみなして測定を終了した。
【0046】
(4)ゼオライトの固形分
直径11.5cmのアルミ製の容器上にゼオライト2gを均一に散布し、その後、前記(3)と同じ条件で測定した。
【0047】
(5)高せん断場における粘度
レオメータMCR−300(アントンパールジャパン株式会社製)を用い、下記条件で測定を行い、高せん断場における粘度(付与せん断速度が1,000s
−1であるときの粘度)を測定した。
<測定条件>
測定温度 :35℃
使用コーン :CP50
付与せん断速度 :0.01〜1,000s
−1
測定点数 :15
せん断速度増減率:log
保持時間 :10秒
<測定方法>
35℃に温度調節した測定プレート上に試料1〜2ccを円形状に散布した。測定コーンを所定の位置まで降下させ、測定準備を行った。構造粘性の影響、及び試料サンプリング時のせん断履歴の影響を考慮し、まず、試料に0.01s
−1〜1,000s
−1のせん断を付与した。このとき、0.01s
−1〜1,000s
−1間を15点、対数乗に均等になるようにせん断速度を増加させ(例えば、0.01s
−1、0.017s
−1、0.050s
−1.0.12s
−1、0.27s
−1、0.60s
−1、…、193s
−1、439s
−1、1,000s
−1)、各せん断速度下で10秒間保持させた。続いて、1,000s
−1〜0.01s
−1とせん断速度を減少させる方向に前記と逆の操作を行った。最後に本測定として、再度0.01s
−1〜1,000s
−1とせん断速度を増加させる方向に操作し、本操作時の1,000s
−1において測定した値を高せん断場における粘度とした。
【0048】
(6)顆粒の平均粒子径
JISZ8801−1(2000年5月20日制定、2006年11月20日最終改正)規定の2000、1400、1000、710、500、355、250、180、125、90、63、45μmの篩を用いて受け皿上に目開きの小さな篩から順に積み重ね、最上部の2000μmの篩の上から100gの顆粒を添加し、蓋をしてロータップ型ふるい振とう機(HEIKO製作所製、タッピング156回/分、ローリング:290回/分)に取り付け、5分間振動させたあと、それぞれの篩及び受け皿上に残留した当該顆粒の重量を測定し、各篩上の当該顆粒の重量割合(%)を算出する。受け皿から順に目開きの小さな篩上の当該顆粒の重量割合を積算していき、合計が50%となる粒径を平均粒子径とする。
【0049】
(7)顆粒の崩壊強度
微小圧縮試験機MCTW−500(株式会社島津製作所製)を用いて平均粒子径付近の乾燥状態の顆粒を10個測定し、数平均値で表した。
【0050】
(8)顆粒の湿式崩壊強度
まず、JISZ8801−1規定の500、355、250、180、150、125、90、63、45μmの篩を用いて受け皿上に目開きの小さな篩から順に積み重ね、最上部の2000μmの篩の上から100gの顆粒を添加し、蓋をしてロータップ型ふるい振とう機(HEIKO製作所製、タッピング156回/分、ローリング:290回/分)に取り付け、5分間振動させた後、180μmの篩を通過し150μmの篩上に残留した顆粒を回収し、サンプルとした。次に、スクリュー管No.6(株式会社マルエム製)に、ステンレス球(直径4mm)を15g、顆粒サンプルを3g、イオン交換水を30mL投入し、1度逆さにした。その後、30分間静置し、錠剤摩損試験機(萱垣医理科工業株式会社製)にて、75r/minで2分30秒間回転させた。
得られた顆粒サンプルを150μmの篩で濾過し、105℃、30分間乾燥した後、デシケーターで常温に冷まし、150μmの篩をミクロ型電磁振動機M−2(筒井理化学器械株式会社製)にて振動強度5.5、1分間振盪させ、その後秤量した。以下の計算式にて算出した値を湿式崩壊強度とした。
湿式崩壊強度(%)=150μm篩に残留する顆粒重量÷初期サンプル重量×100
【0051】
[ゼオライトの見掛けの平均粒子径の調整]
下記調整例1〜6にしたがってゼオライトの見掛けの平均粒子径を調整した。なお、用いたゼオライト及び粉砕機は以下のとおりである。
<ゼオライト>
・ゼオライトA0:ゼオビルダー株式会社製、ゼオライト(パウダー)、固形分92.6%
・ゼオライトB0:PQ Corporation製、VALFOR100、固形分94.3%
・ゼオライトC0:水澤化学工業株式会社製、TSCゼオライト、固形分94.7%
・ゼオライトD0:PQ Corporation製、Zeocros E-110、固形分91.9%
【0052】
<粉砕機>
・粉砕器M1:アトマイザー、不二パウダル株式会社製、FIIW−7.5
・粉砕器M2:パワーミル、株式会社ダルトン製、P−02S
・粉砕器M3:サンプルミル、不二パウダル株式会社製、FIIW−1
・粉砕器M4:ファインインパクトミル、ホソカワミクロン株式会社製、160 UPZ
【0053】
調整例1〜6
表1に記載のゼオライト及び粉砕機を用い、表1の条件にしたがってゼオライトA0及びC0の粉砕を行い、調整例1〜6のゼオライトA1〜A5,及びC1を得た。各ゼオライトの見掛けの平均粒子径及び平均一次粒子径を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
[歯磨剤用顆粒の製造]
・実施例1〜2、比較例1〜4
実施例1
表2に示す配合割合にしたがって、イオン交換水、珪酸ナトリウム水溶液(富士化学株式会社製、3号珪酸ソーダ、固形分54.3%)の順で750L配合槽に投入した。内容物を10インチのタービン翼で撹拌しながら、更にゼオライトA1を投入した。その後、8.5m/sの周速で2時間混合することにより、固形分が55.0%である582kgの水スラリーを得た。この水スラリーの高せん断場での粘度は46.1mPa・sであった。
得られた水スラリーをダイアフラムポンプで混合流式噴霧乾燥塔に輸送し、送風温度170℃、噴霧圧力1.8MPaで噴霧乾燥することにより顆粒を得た。製造時のスラリー流量は106.8kg/hr、顆粒製造能力は61.4kg/hrであり、5時間の噴霧中、噴霧状態は極めて安定しており、顆粒収率は100%であった。
実施例1で得られた顆粒の平均粒子径、崩壊強度、湿式崩壊強度の値を表3に示す。
なお、噴霧ノズルにはスプレーイングシステムスジャパン株式会社製のY89385−TN−SSTC7.5を用いた。
【0056】
実施例2
表2に示す配合割合にしたがって実施例1と同様に552kgの水スラリーを調製した。また、噴霧乾燥条件を表3に記載のとおりとしたこと以外は、実施例1と同様に実施例2の顆粒を得た。4時間の噴霧中、噴霧状態は極めて安定しており、顆粒収率は98%であった。
【0057】
比較例1
表2に示す配合割合にしたがって実施例1と同様に641kgの水スラリーを調製した。また、噴霧乾燥条件を表3に記載のとおりとしたこと以外は、実施例1と同様に比較例1の顆粒を得た。6時間の噴霧中、噴霧状態は安定しており、顆粒収率は100%であった。
ただし、実施例1、2と比較して、顆粒製造能力が低く、また得られた顆粒の湿式崩壊強度が低かった。
【0058】
比較例2
表2に示す配合割合にしたがって実施例1と同様に616kgの水スラリーを調製した。また、噴霧乾燥条件を表3に記載のとおりとしたこと以外は、実施例1と同様に比較例2の顆粒を得た。比較例2の水スラリーの高せん断場での粘度は136.2mPa・sであり、噴霧開始30分で噴霧状態が極めて不安定となり、ポンプに閉塞が発生し、その後も安定生産ができなかった。
【0059】
比較例3
表2に示す配合割合にしたがって、イオン交換水、珪酸ナトリウム水溶液の順で200L配合槽に投入し、ディスパー翼(アシザワ・ニロアトマイザー株式会社製、HS−P3)で撹拌しながら、更にゼオライトB0を投入した。その後、6.3m/sの周速で2時間混合することにより、固形分が50.8%である180kgの水スラリーを得た。この時の高せん断場での粘度は194.1mPa・sであった。
得られた水スラリーについて、送風温度230℃の条件下で噴霧乾燥を試みたが、装置上限の3.5MPaの噴霧圧力で噴霧を行っても、ノズル先端から直線状に水スラリーが吹き出し、良好な噴霧状態にならなかった。
【0060】
比較例4
表2に示す配合割合にしたがって比較例3と同様に180kgの水スラリーを調製した。この時、高せん断場での粘度は140.2mPa・sであった。
得られた水スラリーを、送風温度230℃の条件下で噴霧乾燥を試みたが、装置上限付近の3.3MPaの高い噴霧圧力を付与しなければ正常に噴霧することができず、収率は87%と低い値を示した。
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
・実施例3〜4、比較例5
実施例1,2で得られた歯磨剤用顆粒の歯垢除去効果、及び顆粒感を評価するために、実施例1,2及び比較例1の歯磨剤用顆粒を表4の組成にしたがって歯磨剤に配合し、下記の評価方法で評価した。
<歯垢除去効果の評価方法>
歯間モデル(直径4mmのパスツールピペットを5本並べ接着固定)の溝に赤い口紅(オーブ:RD305)を塗り込んだ。その後、余分な口紅をハブラシ(花王株式会社製、毛先が球、ふつう)と食器用洗剤を用いて赤色が出なくなるまでブラッシング洗浄した。同様に、歯間モデルの溝に赤い口紅を塗り込んだ後、実施例及び比較例の各種歯磨剤をこの歯間モデルの上に1g取り、口紅がハブラシに付着しなくなるまで刷掃を行った。歯間モデルに残った口紅をエタノール90mLで10分間超音波洗浄し、抽出液を540nmにて吸光度測定(Abs)した。なお、上記食器用洗浄剤で刷掃後の歯間モデルについての吸光度測定値を、標準の吸光度測定値とし、以下の計算式から歯垢除去率を算出した。
歯垢除去率(%)=(標準の吸光度測定値−歯磨剤で刷掃後の吸光度測定値)/標準の吸光度測定値×100(%)
結果を表4に示す。
実施例3,4と比較例5とを比較すると、実施例で得られた顆粒を配合した歯磨剤は、比較例で得られた歯磨剤よりも歯垢除去率が向上していることがわかる。
【0064】
【表4】
【0065】
<顆粒感の評価方法>
パネラー10名に対し、実施例及び比較例の歯磨剤をそれぞれ一定量使用してブラッシングを行い顆粒感を評価した。
その結果、実施例で得られた顆粒を配合した歯磨剤(実施例3〜4)は、比較例1で得られた顆粒を配合した歯磨剤(比較例5)と比較し、顆粒の口腔内の触知度及び感触に優れ、また歯の清掃効果にも優れるとの評価を得た。
【0066】
見掛けの平均粒子径の小さいゼオライトを用いることにより、高せん断場での粘度が低下し、水スラリー中の固形分濃度を増加させても噴霧に好適な粘度が得られ、顆粒の製造能力が増加した。更に、スラリー固形分を増加させて得られた歯磨剤用顆粒を用いることにより、歯垢除去力が向上し、顆粒感に優れた歯磨剤が得られた。
【0067】
[歯磨剤用顆粒の製造用スラリーの調製]
・参考例1〜9
参考例1
表5に示す配合割合にしたがって、イオン交換水、珪酸ナトリウム水溶液(富士化学株式会社製、3号珪酸ソーダ、固形分:54.3%)の順で2L配合槽に投入した。内容物をロボミックス(特殊機化工業株式会社製)に装着した直径30mmのディスパー翼で撹拌しながらゼオライトA2を投入した。その後、6.8m/sの周速で2時間混合し、固形分が50.0%である1.0kgの水スラリーを得た。この水スラリーの高せん断場での粘度は36.3mPa・sであった。
【0068】
参考例2〜9
表5に示す配合割合にしたがって、参考例1と同様に参考例2〜9の水スラリーを作製した。
【0069】
【表5】
【0070】
参考例の結果より、種々のゼオライトを用いた場合でも本発明の効果が発現することがわかる。また、例えば参考例1,3のように同一の組成では、ゼオライトの見掛けの平均粒子径が小さい程、高せん断場での粘度が低下した。一方、参考例9のように見掛けの平均粒子径が極めて小さいゼオライトを用いた場合は、系内が顕著に粘調な液になり水スラリーを調製することができなかった。