特許第6368648号(P6368648)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6368648少なくとも1種のゼオライトNU−86を含む、水素化転化に使用可能な触媒の製造方法
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  • 特許6368648-少なくとも1種のゼオライトNU−86を含む、水素化転化に使用可能な触媒の製造方法 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368648
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】少なくとも1種のゼオライトNU−86を含む、水素化転化に使用可能な触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/78 20060101AFI20180723BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20180723BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20180723BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20180723BHJP
   B01J 37/20 20060101ALI20180723BHJP
   C10G 47/20 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   B01J29/78 M
   B01J37/04 102
   B01J37/02 101C
   B01J37/10
   B01J37/20
   C10G47/20
【請求項の数】14
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-548127(P2014-548127)
(86)(22)【出願日】2012年11月23日
(65)【公表番号】特表2015-502854(P2015-502854A)
(43)【公表日】2015年1月29日
(86)【国際出願番号】FR2012000482
(87)【国際公開番号】WO2013093226
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年10月21日
(31)【優先権主張番号】11/04023
(32)【優先日】2011年12月22日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】ボンデュエル オドレイ
(72)【発明者】
【氏名】ギィヨン エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ロイ−オーベルジュ マガリー
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−314037(JP,A)
【文献】 特開平11−315287(JP,A)
【文献】 特表2010−531224(JP,A)
【文献】 特表2009−523595(JP,A)
【文献】 特開平05−097429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
C01B 39/00
C10G 47/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記の連続工程を含む、炭化水素の水素化転化用触媒の製造方法:
a)0.2〜30重量%のゼオライトNU−86及び70〜99.8重量%の多孔質鉱物マトリクスを含む担体であって、該重量%が上記担体の全重量に対して表される担体を少なくとも調製する工程、
b)工程a)により調製した上記担体を、単独で又は混合物として使用される、VIII族金属及びVIB族金属により構成される群から選択される少なくとも1種の金属の少なくとも1種の前駆体を含む少なくとも1種の溶液に含浸する少なくとも1つの工程、
c)少なくとも1つの熟成工程、
d)その後の焼成工程なしで、150℃未満の温度で実施される少なくとも1つの乾燥工程。
【請求項2】
上記多孔質鉱物マトリクスが、遷移アルミナ、ドープされたアルミナ、シリカライト及びシリカ、アルミノケイ酸塩、非ゼオライト結晶性モレキュラーシーブ、シリカ−アルミナの単独又はそれらの混合物から選択される、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
上記多孔質鉱物マトリクスが、アルミナ及びシリカ−アルミナの単独又は混合物から選択される、請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
上記工程b)が、連続含浸により実施され、乾燥工程が、有利には上記含浸工程の間に適用される、請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
上記溶液が、ホウ素、リン及びケイ素から選択されるドーピング元素の少なくとも1種の前駆体、及び/又は少なくとも1種の有機化合物を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項6】
上記VIII族金属の前駆体及びVIB族金属の前駆体、ドーピング元素の前駆体、並びに有機化合物が、以下に対応する量で含浸溶液(単数又は複数)に導入される、請求項1〜5のいずれか1項記載の製造方法:
VIB族元素に対するVIII族元素のモル比が0.1〜0.8、
VIB族元素に対するドーピング元素のモル比が0〜1、
VIB族元素に対する有機化合物のモル比が0〜5。
【請求項7】
上記熟成工程が、湿潤した環境下、10〜80℃の温度で、工程b)の含浸した担体を放置することにより実施される、請求項1〜6のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項8】
上記乾燥工程が、その後の焼成工程なしで、130℃未満の温度で実施される、請求項1〜7のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項9】
中間焼成工程なしで、工程d)の後に硫化工程e)が適用される、請求項1〜7のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項10】
水素の存在下、200℃を超える温度、1MPaを超える圧力、0.1〜20h−1の空間速度で請求項1〜9のいずれか1項記載の製造方法により製造した触媒を用いて水素化分解工程が実施され、導入される水素の量が、水素の体積(リットル)/炭化水素の体積(リットル)の体積比が80〜5000L/Lになるようにされている、炭化水素供給原料の水素化転化方法。
【請求項11】
上記方法が、250〜480℃の温度、2〜25MPaの圧力、0.1〜6h−1の空間速度で実施され、導入される水素の量が、水素の体積(リットル)/炭化水素の体積(リットル)の体積比が100〜2000L/Lになるようにされている、請求項10記載の方法。
【請求項12】
上記炭化水素供給原料が、接触分解装置から得られる軽油、常圧留出液、真空留出液、潤滑油基油から芳香族化合物を抽出するための装置又は潤滑油基油の溶剤脱ろうから得られる供給原料、常圧残渣及び/又は真空残渣及び/又は脱アスファルト油の固定床又は沸騰床脱硫又は水素化転化工程由来の蒸留物、フィッシャートロプシュ法由来のパラフィン、脱アスファルト油、並びにバイオマスの水素化処理及び水素転化工程から得られる供給原料から選択され、それらが単独又は混合物で使用される、請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
上記方法が、供給原料を水素化精製し、得られた流出物をそのまま全て水素化分解することからなる一段階法で実施される、請求項10〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
上記方法が、供給原料を水素化精製する第1段階と、第1段階からの流出物中の転化生成物を未転化物から分離して後者を水素化分解する第2段階とからなる二段階法で実施される、請求項10〜12のいずれか1項記載の方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VIII族金属及びVIB族金属により構成される群から選択される、単独で又は混合物として使用される少なくとも1種の金属と、0.2〜30重量%のゼオライトNU−86及び70〜99.8重量%の多孔質鉱物マトリクスを含む担体であって、該重量%が上記担体の重量に対して表される担体とを含む触媒の製造方法に関する。また、本発明は、本発明の特定の製造方法により製造された触媒を使用する水素化転化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重質石油留分の水素化分解は非常に重要な精製工程であり、これにより、容易に上市できない過剰の重質原料から、精製業者が生産品を需要に適合させるのに必要なガソリン、ジェット燃料及び軽ガス等の軽質画分を製造することを可能にする。この工程は、広範囲にわたって文献に開示されている。
【0003】
水素化分解は、その柔軟性を3種の主要な成分、すなわち、使用される操作条件、使用される触媒のタイプ、及び炭化水素供給原料の水素化分解は1又は2段階で実施することができるという事実から導き出す方法である。
【0004】
水素化分解で使用される水素化分解触媒は全て、酸機能に水素化機能を併せて有する二機能性タイプのものである。酸機能は、ハロゲン化アルミナ(特に、塩素化又はフッ素化されたもの)、ホウ素酸化物及びアルミニウム酸化物の組み合わせ、多くの場合、非晶質シリカ−アルミナ、及び通常はアルミニック等のバインダーと組み合わせたゼオライト等の、表面積が通常150〜800m/gで変化する酸性担体により供給される。水素化機能は、周期表のVIB族の1種以上の金属により、又は担体に担持された、周期表のVIB族の少なくとも1種の金属と少なくとも1種のVIII族金属との組み合わせにより供給される。
【0005】
触媒の二機能性、すなわち酸及び水素化機能間の関係、力及び距離は、当業者に公知の重要なパラメータであり、これは触媒の活性及び選択性に影響を及ぼす。弱い酸機能及び強い水素化機能により低活性触媒が得られ、これは、通常は高温(390〜400℃以上)で、かつ供給原料の低い空間速度(触媒の単位体積あたり、かつ時間あたりの処理すべき供給原料の体積で表されるLHSVが、通常2以下である。)で作用するが、中間留分(ジェット燃料及び軽油)の選択性が非常に高い。逆に、強い酸機能及び弱い水素化機能により活性な触媒が得られるが、中間留分の選択性が低い。
【0006】
ゼオライトを含む触媒は触媒活性が良好であるが、中間留分(ジェット燃料及び軽油)に対する選択性が不十分である場合が多い。
【0007】
先行技術には、中間留分に対するゼオライト触媒の選択性を向上させるための多くの研究が含まれる。後者は、通常はゼオライト、多くの場合、ゼオライトYを含む担体に担持されている非常に変化しやすい組成(種々の金属)の水素化相から構成される。水素化相は硫化物の形態で活性である。
【0008】
特許文献1も、炭化水素供給原料の水素化分解法において、少なくとも1種のマトリクスと、少なくとも1種のゼオライトNU−86又はNU−87と、少なくとも1種の活性相とを含む触媒の使用を開示している。全てのケースで、上記触媒の製造は250〜600℃の温度での焼成工程で終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】フランス特許出願第2 775 293号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の1つの目的は、中間留分に対するゼオライト触媒の選択性を維持又は向上しながら、炭化水素供給原料の水素化転化法において使用される上記触媒の触媒活性を向上させることを可能にする、触媒の製造方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、少なくとも下記の連続工程を含む、触媒の製造方法に関する。
【0012】
a)0.2〜30重量%のゼオライトNU−86及び70〜99.8重量%の多孔質鉱物マトリクスを含む担体であって、該重量%が上記担体の全重量に対して表される担体を少なくとも調製する工程、
b)工程a)により調製した上記担体を、単独で又は混合物として使用されるVIII族金属及びVIB族金属により構成される群から選択される少なくとも1種の金属の少なくとも1種の前駆体を含む少なくとも1種の溶液に含浸する少なくとも1つの工程、
c)少なくとも1つの熟成工程、
d)その後の焼成工程なしで、150℃未満の温度で実施される少なくとも1つの乾燥工程。
【0013】
また、本発明は、水素の存在下、200℃を超える温度、1MPaを超える圧力、0.1〜20h−1の空間速度で上記本発明の製造方法により製造した触媒を用いて操作され、導入される水素の量が、水素の体積(リットル)/炭化水素の体積(リットル)の体積比が80〜5000L/Lになるようにされている、炭化水素供給原料の水素化転化分解方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図面はラマンシフトと強度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
工程a):
本発明の製造方法の工程a)により、0.2〜30重量%のゼオライトNU−86及び70〜99.8重量%の多孔質鉱物マトリクスを含む担体が調製される。ここで、該重量%は上記担体の全重量に対して表される。
【0016】
本発明の製造方法の工程a)で調製された上記担体は、好ましくは0.5〜25重量%、好ましくは1〜20重量%のゼオライトNU86、及び75〜99.5重量%、好ましくは80〜99重量%の多孔質鉱物マトリクスを含み、該重量%は上記担体の全重量に対して表される。
【0017】
H−NU−86で示され、未精製の合成ゼオライトNU−86の焼成及び/又はイオン交換により得られる水素型のゼオライトNU−86は、その成形方法と一緒に、欧州特許出願公開第0463768号A2に開示されている。上記ゼオライトNU−86は、欧州特許出願第463,768号にCasciらにより定義されたX線回折構造データにより特徴づけられる。
【0018】
ゼオライトNU−86は、通常、ナトリウム陽イオン、並びに二臭化オクタメトニウムもしくは二臭化ノナメトニウムである有機構造化剤(organic structure−forming agent)テンプレートの存在下で合成される。
【0019】
ゼオライトNU−86は、ケイ素と、アルミニウム、鉄、ガリウム、ホウ素、ゲルマニウムにより形成される群から選択される少なくとも1種のT原子とを含む。Tは好ましくはアルミニウムである。
【0020】
ゼオライトNU−86は、IZA(国際ゼオライト協会)の規則に従って定義された構造タイプを有していない。
【0021】
このゼオライトの構造タイプは、IZA(国際ゼオライト協会)の合成委員会によって、まだ公式に決められていない。しかし、J.L.Casci、P.A.Box及びM.D.Shannonによってゼオライトに関する第9回国際会議において発表した研究(「第9回国際ゼオライト会議(1992年モントリオール)議事録、R.Van Ballmoosら編、1993年バタワース社発行)によれば、その性質について以下のことがわかっている:
ゼオライトNU−86は三次元微細孔(microporous)系を有する;
この三次元微細孔系は、孔の開口が11個のT原子(Si、Al、Ga、Fe等の四面体原子)によって境界を定められている(delimited)真っ直ぐな経路、10及び12個のT原子による開口によって交互に境界を定められた真っ直ぐな経路、並びに10及び12個のT原子による開口によってやはり交互に境界を定められた正弦曲線の経路から構成されている。
【0022】
10、11又は12個の4面体原子(T)による孔の開口という用語は、10、11又は12個の酸素原子によって構成された孔を意味する。
【0023】
本発明の触媒中に含まれるゼオライトNU−86は、少なくとも部分的に、好ましくはほぼ全部が酸形態、すなわち水素型(H)であり、ナトリウム含有量は、好ましくは、Na/T原子比が10%未満であり、好ましくは5%未満であり、更に好ましくは1%未満であるようにされている。
【0024】
本発明で使用されるゼオライトNU−86は、そのSi/Tモル比が150未満であり、好ましくは100未満であり、好ましくは50未満であり、より好ましくは35未満であり、更に好ましくは20未満であり、更に好ましくは15未満である。
【0025】
Si/Al比は、それに続く修飾処理なしで、合成の際に得ることができる。例えば、水蒸気処理、すなわち蒸気及び/又は酸処理下での熱処理等の、当業者に公知の脱アルミニウム法によっても得ることができる。欧州特許出願第0,939,673号には、ゼオライトNU−86の脱アルミニウム化を実施する方法が開示されている。
【0026】
好ましくは、本発明で使用されるNU−86は、本発明の触媒の担体内に形成される前に脱アルミニウム工程を受けない。
【0027】
本発明により製造された触媒の担体組成に含まれる多孔質鉱物マトリクスは、有利なことに少なくともアルミニウム及び/又は少なくともケイ素を含む。
【0028】
好ましくは、上記マトリクスは、少なくとも1種の酸化アルミニウム、又は少なくとも1種の酸化ケイ素を含む。上記マトリクスは、有利なことに酸性であっても、酸性でなくてもよい。上記マトリクスは有利なことにメソ構造であっても、メソ構造でなくてもよい。
【0029】
上記多孔質鉱物マトリクスは、有利には、遷移アルミナ、ドープされたアルミナ(好ましくはリン、ホウ素及び/又はフッ素を有する)、シリカライト及びシリカ、アルミノケイ酸塩から選択され、好ましくは非晶質又は不十分に結晶化した非ゼオライト結晶性モレキュラーシーブ、例えば、遷移金属のシリコアルミノホスフェート、アルミノホスフェート、フェロシリケート、チタンシリコアルミネート、ボロシリケート、クロモシリケート、及びアルミノホスフェートの単独又は混合物から選択される。
【0030】
上記多孔質鉱物マトリクスが、遷移アルミナ、シリカライト及びシリカ、例えばメソ多孔質シリカから選択される場合、上記マトリクスは酸性でない。遷移アルミナは、例えば、α−アルミナ、δ−アルミナ、γ−アルミナ、又はこれらの異なる相のアルミナの混合物を意味する。
【0031】
上記多孔質鉱物マトリクスが、アルミノシリケート、好ましくは非晶質又は不十分に結晶化した非ゼオライト結晶性モレキュラーシーブ 例えば、遷移金属のシリコアルミノホスフェート、アルミノホスフェート、フェロシリケート、チタンシリコアルミネート、ボロシリケート、クロモシリケート、及びアルミノホスフェート、ドープされたアルミナ(好ましくはリン、ホウ素及び/又はフッ素を有する)から選択される場合、上記マトリクスは酸性である。当業者に公知のあらゆるシリカ−アルミナ、又は当業者に公知のあらゆるアルミノシリケートは、本発明に適している。
【0032】
酸性多孔質鉱物マトリクスは、有利には、上記少なくとも1種の酸化物化合物に加え、複八面体2:1フィロシリケート、又は三八面体3:1フィロシリケート型、例えば、カオリン、アンチゴライト、クリソタイル、モンモリロナイト、バイデライト、バーミキュライト、タルク、ヘクトライト、サポナイト、ラポナイトなどの少なくとも1種の合成又は天然の簡単なクレーを含んでいてもよい。上記クレーは脱アルミ化されていてもよい。
【0033】
上記多孔質鉱物マトリクスは、その陽イオン性不純物の含有量が、好ましくは0.1重量%未満であり、好ましくは0.05重量%未満であり、更に好ましくは0.025重量%未満である。陽イオン性不純物の含有量は、アルカリ性物質の全含有量を意味する。上記マトリクスは、その陰イオン性不純物の含有量が、好ましくは1重量%未満であり、好ましくは0.5重量%未満であり、更に好ましくは0.1重量%未満である。
【0034】
上記多孔質鉱物マトリクスが少なくともケイ素を含む場合、上記多孔質鉱物マトリクス中のSiOの重量による含有量は、有利には1〜99重量%であり、好ましくは5〜95重量%であり、好ましくは10〜90重量%であり、更に好ましくは10〜50重量%であり、更に好ましくは20〜50重量%である。
【0035】
好ましくは、上記多孔質鉱物マトリクスは、単独又は混合物としてのアルミナ、及びシリカ−アルミナから選択される。
【0036】
本発明の製造方法による触媒の担体の製造工程a)は、有利には当業者に公知の任意の方法で実施される。
【0037】
本発明で使用されるゼオライトNU−86は、有利には、安定化させるため、又はメソ多孔性を形成するための処理を行ってもよい。ゼオライトNU−86は、有利には、当業者に公知の少なくとも1つの脱アルミ化法、例えば、水熱処理又は酸エッチングによって修飾される。好ましくは、ゼオライトNU−86は、有利には以下の3つのタイプの工程:水熱処理、イオン交換及びエッチングの組み合わせにより修飾される。上記工程は当業者に公知である。また、上記ゼオライトNU−86は、有利には、塩基性溶液を用いた、脱ケイ酸と呼ばれる処理を受けてもよい。我々は、これに限定されることなく、脱アルミ化処理と組み合わせる場合でも組み合わせない場合でも、NaOH又はNaCOでの処理を具体的に挙げることができる。
【0038】
担体で使用され、必要に応じて修飾されるゼオライトNU−86は、例えば、粉体、微細に砕かれた粉体、懸濁液、脱凝集処理を行った懸濁液の形態であってもよいが、これに限定されない。したがって、例えば、ゼオライトは、有利には、担体用の所定の最終ゼオライト含有量に調整された濃度で懸濁液(酸性化されているか、又はされていない)に投入することができる。次いで、この懸濁液(通常、スラリーと呼ばれる)は、有利には、マトリクス前駆体と混合される。
【0039】
場合により修飾されたゼオライトNU−86は、有利には、ゲル、ペースト又は酸化物の懸濁液と混合される。混合は、上記担体中のゼオライトNU−86と多孔質鉱物マトリクスとの割合が上記で定義した割合になるように実施される。次いで、このようにして得られた混合物を成形する。上記担体の成形は、有利には、押し出し成形、ペレット化、滴下凝集法(油滴)、回転板造粒、又は当業者に周知の他の任意の方法によって実施することができる。
【0040】
本発明の製造方法の工程a)の好ましい実施態様は、ゼオライトNU−86の粉末を湿潤ゲル中で数10分間混合した後、得られたペーストを金型に通し、0.4〜4mmの直径の押出し成形品を成形することからなる。
【0041】
単独で又は混合物として使用される、周期表のVIB族及びVIII族金属により構成される群から選択される、少なくとも1種の水素化−脱水素化金属は、場合により、担体の製造の工程a)の際に、好ましくは上記混合中に導入してもよい。
【0042】
更に、成形を容易にし、担体の最終的な機械的性質を向上させるため、有利には上記混合の際に添加剤を加えることができる。添加剤の例としては、我々は、特にセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、トールオイル、キサンタンガム、界面活性剤、ポリアクリルアミド等の凝集剤、カーボンブラック、澱粉、ステアリン酸、ポリアクリルアルコール、ポリビニルアルコール、バイオポリマー、グルコース、ポリエチレングルコース等を挙げることができる。
【0043】
本発明の担体の特徴的な多孔性の制御は担体粒子の成形工程の際に一部が達成される。
【0044】
次いで、成形された担体は、有利には1つ以上の熱処理に供される。
【0045】
上記のように成形された担体は、有利には乾燥工程を受ける。上記乾燥工程は、当業者に公知の任意の方法で実施される。好ましくは、乾燥は、気流下に実施される。また、上記乾燥は、有利には、酸化、還元又は不活性ガスのいずれかの流れの下で実施することができる。乾燥は、有利には減圧下で実施される。好ましくは、乾燥は、有利には、50〜180℃、好ましくは60〜150℃、非常に好ましくは80〜130℃で実施される。
【0046】
任意に乾燥された上記担体は、その後、好ましくは焼成工程を受ける。
【0047】
上記焼成工程は、有利には、200℃を超え、1100℃以下の温度で、酸素分子の存在下、例えば空気を流しながら実施する。上記焼成工程は、有利には通過床、押流され床(swept bed)又は静止雰囲気において実施することができる。例えば、使用される炉は回転炉であってもよく、放射状流層を有する縦型炉であってもよい。好ましくは、上記焼成工程は、200℃で1時間以上、及び1100℃で1時間未満で実施される。焼成は、有利には蒸気の存在下、及び/又は酸若しくは塩基性蒸気中で実施するができる。例えば、焼成は、アンモニア分圧の下に実施することができる。
【0048】
担体の特性を向上させるために焼成後処理を必要に応じて実施することができる。
【0049】
したがって、上記担体を、密閉環境下、又は蒸気流の下、水熱処理に供してもよい。「密閉環境下における水熱処理」とは、室温より高い温度における、水の存在下でのオートクレーブ中での処理を意味する。
【0050】
上記水熱処理が密閉環境下で実施される場合、上記多孔質鉱物マトリクス及びゼオライトNU−86を含む上記成形された担体を、種々の方法で処理してもよい。したがって、有利には、上記担体をオートクレーブに移す前に、酸に含浸し、オートクレーブを気相又は液相のいずれかで実施してもよく、このオートクレーブの気相又は液相は酸性であっても酸性でなくてもよい。オートクレーブ前の含浸は酸性であっても酸性でなくてもよい。オートクレーブ前の含浸は、乾燥状態で実施してもよく、酸性水溶液中に上記担体を含浸させて実施してもよい。好ましくは、含浸は乾燥状態で実施される。
【0051】
オートクレーブは、好ましくは欧州特許出願公開第0 387 109号に規定されているような、回転バスケット式オートクレーブである。
【0052】
オートクレーブ中の温度は、有利には、100〜250℃であり、時間は、30分〜3時間である。
【0053】
工程b):
本発明の製造方法の工程b)により、工程a)で調製した上記担体を、単独で又は混合物として使用されるVIII族金属及びVIB族金属により構成される群から選択される少なくとも1種の金属の少なくとも1種の前駆体を含む少なくとも1種の溶液に含浸する少なくとも1つの工程が実施される。
【0054】
好ましくは、上記担体b)は、単独で又は混合物として使用される、VIII族金属及びVIB族金属により構成される群から選択される少なくとも1種の金属の一部又は全ての前駆体を含む少なくとも1種の溶液の1つの含浸工程、又は連続的含浸により実施される。
【0055】
上記工程b)は、減圧下で実施してもよい。
【0056】
本発明の製造方法の含浸工程b)が連続的含浸により実施される場合、有利には、上記含浸工程の間に、少なくとも1つの乾燥工程d)が適用される。
【0057】
種々の含浸工程又は連続的含浸工程で使用される溶液は、ホウ素、リン及びケイ素から選択されるドーピング元素の少なくとも1種の前駆体、及び/又は少なくとも1種の有機化合物を含んでいてもよい。
【0058】
また、ホウ素、リン及びケイ素から選択されるドーピング元素の前駆体、並びに有機化合物は、有利には、単独で又は混合物として使用されるVIII族金属及びVIB族金属により構成される群から選択される少なくとも1種の金属の前駆体を含まない含浸溶液に加えることができる。
【0059】
上記有機添加剤は、有利には、金属前駆体の含浸前に金属前駆体と一緒に共含浸、又は金属前駆体の含浸後の後含浸により含浸することにより導入することができる。
【0060】
水素化機能を促進する成分として使用される有機化合物は、好ましくは、キレート剤、非キレート剤、還元剤、及び当業者に公知の添加剤から選択される。上記有機化合物は、有利には、エーテル化されていてもよいモノ−、ジ−又はポリオール類、カルボン酸、糖類、非環状単糖類、二糖類又は多糖類、例えば、グルコース、フルクトース、マルトース、ラクトース、若しくはスクロース、エステル類、エーテル類、クラウンエーテル類、シクロデキストリン、及び硫黄若しくは窒素を含む化合物、例えば、ニトリロ酢酸、エチレンジアミン四酢酸、又はジエチレントリアミンの単独若しくは混合物から選択される。
【0061】
VIII族金属及びVIB族金属の前駆体、ドーピング元素の前駆体、及び有機化合物は、有利には、最終的な触媒におけるVIII、VIB族元素、ドーピング元素、及び有機添加剤の量が以下に定義するようになるような量で、含浸溶液(単数又は複数)に導入される。
【0062】
好ましくは、VIII族金属及びVIB族金属の上記前駆体、ドーピング元素の前駆体、並びに有機化合物は、有利には、以下に対応する量で、含浸溶液(単数又は複数)に導入される:
VIB族元素に対するVIII族元素のモル比が0.1〜0.8、好ましくは0.15〜0.5、
VIB族元素に対するドーピング元素のモル比が0〜1、好ましくは0.08〜0.5、
VIB族元素に対する有機化合物のモル比が0〜5、好ましくは0.2〜3。
【0063】
好ましくは、上記含浸工程(単数又は複数)は、当業者に周知である、公知の「乾式」含浸法によって実施される。
【0064】
使用することのできるVIII族元素の前駆体は当業者に周知である。VIII族の卑金属の前駆体は、有利には、酸化物、水酸化物、ヒドロキシ炭酸塩、炭酸塩及び硝酸塩から選択される。ヒドロキシ炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、硝酸コバルト、炭酸ニッケル又は水酸化ニッケル、炭酸コバルト又は水酸化コバルトが好ましく使用される。
【0065】
VIII族の貴金属(2種以上の場合を含む)の前駆体は、有利には、塩化物等のハロゲン化物、硝酸塩、塩化白金酸等の酸、ルテニウム赤等の酸塩化物から選択される。
【0066】
VIB族元素の前駆体は当業者に周知である。例えば、モリブデンの供給源のうちで、酸化物及び水酸化物、モリブデン酸及びその塩、具体的には、モリブデン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、リンモリブデン酸(HPMo1240)及びその塩、並びに場合によってはケイモリブデン酸(HSiMo1240)及びその塩を使用することが可能である。モリブデンの供給源は、例えば、ケギン、ラクナ(lacunar)、置換ケギン、ドーソン,アンダーソン、ストランドベルク型の任意のポリオキソメタレートであってもよい。当業者に公知のストランドベルク(PMo236−)、ケギン(PMo12403−)、ラクナ・ケギン、又は置換ケギン型の三酸化モリブデン及びヘテロポリアニオンが、好ましく使用される。
【0067】
例えば、タングステンの前駆体のうちで、酸化物及び水酸化物、タングステン酸及びその塩、具体的にはタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、リンタングステン酸(HPW1240)及びその塩、並びに場合によってはタングストケイ酸(HSiW1240)及びその塩を使用することが可能である。タングステンの供給源は、例えば、ケギン、ラクナ・ケギン、置換ケギン、又はドーソン型のポリオキシメタレートであってもよい。当業者に公知のメタタングステン酸アンモニウム、又はケギン、ラクナ・ケギン若しくは置換ケギン型のヘテロポリアニオン等のアンモニウム酸化物及び塩が好ましく使用される。
【0068】
リンの前駆体は、有利にはオルトリン酸HPO、対応する塩及びエステル又はリン酸アンモニウムであってもよい。また、リンは、有利には、VIB族元素と同時に、ケギン、ラクナ・ケギン、置換ケギン型、又はストランドベルク型のヘテロポリアニオンの形態で、例えば、リンモリブデン酸及びその塩、リンタングステン酸及びその塩の形態で上記マトリクスの合成の際に導入することができる。リンが、上記マトリクスの合成の際に導入されず、含浸後に導入される場合、リンは、リン酸、並びにアンモニア、第一級及び第二級アミン、環状アミン、ピリジンファミリーの化合物、キノリン、及びピロールファミリーの化合物等の窒素を含む塩基性有機化合物の混合物の形態で導入してもよい。
【0069】
使用することができる多数のケイ素前駆体が存在する。したがって、オルトケイ酸エチルSi(OEt)、シロキサン、ポリシロキサン、ケイフッ化アンモニウム(NHSiF又はフッ化ケイ素酸ナトリウムNaSiF等のハロゲン化物のケイ酸塩を使用することが可能である。ケイモリブデン酸及びその塩、タングストケイ酸及びその塩も有利に使用することができる。例えば、ケイ素は、ケイ酸エチルの水/アルコール混合物溶液の含浸によって加えてもよい。例えば、ケイ素は、シリーコンタイプのケイ素化合物の水中懸濁液の含浸によって加えてもよい。
【0070】
ホウ素の前駆体は、有利にはホウ酸であり、好ましくはオルトホウ酸HBO、二ホウ酸アンモニウム又は五ホウ酸アンモニウム、酸化ホウ素、ホウ素エステルである。ホウ素は、VIB族元素と同時に、ケギン、ラクナ・ケギン、置換ケギン型のヘテロポリアニオンの形態で、例えばボロモリブデン酸及びその塩、又はボロタングステン酸及びその塩の形態で、上記マトリクスの合成の際に導入することができる。ホウ素が、上記マトリクスの合成の際に導入されず、含浸後に導入される場合、有利には、例えば、水/アルコール混合物又は水/エタノールアミン混合物中にホウ酸を含む溶液により導入される。また、ホウ素は、有利にはホウ酸、過酸化水素及びアンモニア、第一級及び第二級アミン、環状アミン、ピリジンファミリーの化合物、キノリン及びピロールファミリーの化合物等の窒素を含む塩基性化合物の混合物の形態で導入してもよい。
【0071】
工程c):
本発明の製造方法の工程c)によれば、工程b)由来の含浸担体の少なくとも1つの熟成工程が実施される。
【0072】
上記熟成工程は、有利には10〜80℃の温度で湿った環境下に工程b)由来の含浸担体を放置することにより実施される。
【0073】
上記熟成工程は、有利には15分〜48時間、実施される。
【0074】
工程d):
本発明の製造方法の工程d)によれば、その後の焼成工程なしで、工程c)の最後に得られた含浸し成熟した担体について、150℃未満の温度で少なくとも1つの乾燥工程が実施される。
【0075】
好ましくは、上記乾燥工程は、その後の焼成工程なしで、140℃未満、好ましくは145℃未満、非常に好ましくは130℃未満、更に好ましくは100〜145℃、更に好ましくは100〜130℃の温度で実施される。
【0076】
本発明の製造方法の含浸工程b)が、連続的含浸により実施される場合、少なくとも1つの乾燥工程d)は、有利には、前記含浸工程の間に適用される。
【0077】
乾燥により、担体上に担持された酸化物前駆体を著しく変化することなく、含浸溶媒を除去することが可能になる。溶媒の大部分を除去するための効果的な乾燥は、通常は100〜150℃、好ましくは100〜130℃の温度で実施される。担体上に担持された酸化物前駆体が変性するので、乾燥温度は150℃を超えてはならない。
【0078】
工程d)の終わりに、その後の焼成工程に供することなく、乾燥触媒が得られる。
【0079】
「焼成工程」とは、担体上に存在してもよいあらゆる有機分子の部分的又は完全な分解を起こす熱処理工程を意味し、担体上に担持された酸化物前駆体は部分的又は完全に変性している。焼成工程は、通常は150℃超、好ましくは250〜600℃の温度で実施される。
【0080】
次いで、本発明の終わりに得られる触媒は、有利には、種々の形状及び大きさの粒子の形態で成形される。触媒は、一般的には、円筒状又は多葉性の押出し成形品の形態、例えば二葉性、三葉性、多葉性の直線状又はねじれた形状の形態で使用されるが、破砕粉末、錠剤、環状、ビーズ、又は輪状の形態に製造し、使用してもよい。触媒は、BET法(Brunauer,Emmett,Teller,J.Am.Chem.Soc.,Vol.60,309−316(1938))による窒素吸着により測定した比表面積は50〜600m/gであり、水銀ポロシメータにより測定した細孔容積は0.2〜1.5cm/gであり、細孔の大きさの分布は単峰性、二峰性又は多峰性であってもよい。
【0081】
好ましくは、本発明の方法の終わりに得られる触媒は、球形又は押出成形品の形態である。しかし、触媒は、0.5〜5mm、更に特定的には0.7〜2.5mmの直径を有する押出物の形態であることが有利である。形状は、円筒形(中空でも中実でもよい)、ねじれた円筒形、多葉(例えば、2、3、4又は5葉)又は環状である。三葉形状が好ましく使用されるが、任意の他の形状を使用してもよい。
【0082】
このようにして得られた、酸化物の形態の触媒は、少なくとも部分的に金属又は硫化物の形態にしてもよい。
【0083】
好ましくは、使用前に、本発明の方法の終わりに得られた上記触媒は、その活性種を形成するために硫化物触媒に変換される。
【0084】
硫化工程e)は、有利には上記乾燥工程d)の後、中間の焼成工程なしで、本発明の方法の工程d)の終わりに得られた上記乾燥触媒について適用される。
【0085】
上記乾燥触媒は、有利には、現場又は現場外で硫化される。硫化剤は、ガス状HS、又は触媒を硫化する目的で炭化水素供給原料を活性化するために使用される、他の任意の硫黄含有化合物である。上記硫黄含有化合物は、有利には、ジメチルジスルフィド(DMDS)等のアルキルジスルフィド、ジメチルスルフィド等のアルキルスルフィド、n−ブチルメルカプタン、tert−ノニルポリスルフィドタイプのポリスルフィド、例えば、ARKEMAにより市販されているTPS−37又はTPS−54、得られる触媒の良好な硫化を可能にする、当業者に公知のあらゆる他の化合物から選択される。好ましくは、触媒は、硫化剤及び炭化水素供給原料の存在下、現場で硫化される。非常に好ましくは、触媒は、ジメチルスルフィドが添加された炭化水素供給原料の存在下、現場で硫化される。
【0086】
当業者に周知の従来の硫化法は、150〜800℃、好ましくは250〜600℃の温度で、通常は通過床反応域で、硫化水素(純粋なもの、又は例えば水素/硫化水素混合物の流れの下で)の存在下に触媒を加熱することからなる。
【0087】
また、本発明は、本発明の製造方法により得られた触媒に関する。
【0088】
本発明の製造方法により得られる触媒は、単独で又は混合物として使用される、周期表のVIB族及びVIII族金属により構成される群から選択される少なくとも1種の水素化−脱水素化金属と、0.2〜30重量%、好ましくは0.5〜25重量%、更に好ましくは1〜20重量%のゼオライトNU−86、及び70〜99.8重量%、好ましくは75〜99.5重量%、更に好ましくは80〜99重量%の多孔質鉱物マトリクスを含む担体とを含み、該重量%は上記担体の全重量に対して表される。
【0089】
VIB族金属及びVIII族金属は、少なくとも一部は金属及び/又は酸化物及び/又は硫化物の形態で存在してもよい。
【0090】
VIII族金属は、有利には、貴金属又は卑金属、好ましくは鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金を単独で又は混合物として選択され、好ましくは上記VIII族金属は、単独で又は混合物として使用されるニッケル、コバルト及び鉄、白金及びパラジウムから選択される。
【0091】
VIII族の卑金属は、好ましくは、単独で又は混合物として使用されるニッケル、コバルト及び鉄から選択される。
【0092】
VIII族の貴金属は、好ましくは、単独で又は混合物として使用される白金及びパラジウムから選択される。
【0093】
VIB族金属は、好ましくは、単独で又は混合物として使用されるタングステン及びモリブデンから選択される。
【0094】
有利には、以下の金属の組み合わせ;ニッケル−モリブデン、コバルト−モリブデン、ニッケル−タングステン、コバルト−タングステンが用いられ、また、好ましい組み合わせは、ニッケル−モリブデン、コバルト−モリブデン、コバルト−タングステン、ニッケル−タングステンであり、更に有利には、ニッケル−モリブデン及びニッケル−タングステンである。
【0095】
好ましくは、上記触媒は、少なくとも1種のVIB族の水素化−脱水素化金属を、少なくとも1種のVIII族の卑金属と組み合わせて含む。
【0096】
上記触媒が、少なくとも1種のVIB族の金属を、少なくとも1種のVIII族の卑金属と組み合わせて含む場合、VIB族金属の含有量は、酸化物当量で、有利には上記触媒の全乾燥重量に対して5〜40重量%であり、好ましくは10〜35重量%であり、更に好ましくは15〜30重量%であり、VIII族の卑金属の含有量は、酸化物当量で、有利には上記触媒の全乾燥重量に対して0.5〜10重量%であり、好ましくは1〜8重量%であり、更に好ましくは1.5〜6重量%である。
【0097】
上記触媒が、少なくとも1種のVIII族の貴金属を含む場合、VIII族の貴金属の含有量は、酸化物当量で、有利には上記触媒の全乾燥重量に対して0.05〜5重量%であり、好ましくは0.1〜2重量%であり、更に好ましくは0.1〜1重量%である。
【0098】
また、本発明の触媒は、好ましくはドーピング元素及び有機化合物から選択される活性相のプロモータを含んでいてもよい。上記物質は、本発明の触媒の製造における種々の工程で加えることができる。
【0099】
本発明の触媒は、ホウ素、ケイ素及びリンから選択される少なくとも1種のドーピング元素を単独で又は混合物として含んでいてもよい。「ドーピング元素」とは、それ自体触媒特性を有しないが、触媒の触媒活性を増大させる、添加される元素を意味する。
【0100】
上記触媒は、上記触媒の全乾燥重量に対して、酸化物の0〜10%、好ましくは0.5〜8%、更に好ましくは0.5〜6重量%のドーピング元素を含んでいてもよい。ドーピング元素、ケイ素の含有量は、ゼオライト又はマトリクス中の全ケイ素含有量に含まれていない。
【0101】
ホウ素、ケイ素及び/又はリンは多孔質鉱物マトリクス中若しくはゼオライトNU−86中にあってもよく、又は好ましくは触媒上に担持された後、主に上記多孔質鉱物マトリクス上に局在化させてもよい。
【0102】
本発明の触媒は、少なくとも1種の有機添加剤を含んでいてもよい。「有機添加剤」とは、それ自体はなんら触媒特性を有しないが、触媒の触媒活性を向上させる有機分子を意味する。
【0103】
水素化機能を促進する成分として使用される有機化合物は、好ましくは、キレート剤、非キレート剤、還元剤、及び当業者に公知の添加剤から選択される。上記有機化合物は、有利には、エーテル化されていてもよいモノ−’ジ−又はポリオール類、カルボン酸、糖類、非環状単糖類、二糖類又は多糖類、例えば、グルコース、フルクトース、マルトース、ラクトース、若しくはスクロース、エステル類、エーテル類、クラウンエーテル類、シクロデキストリン、及び硫黄若しくは窒素を含む化合物、例えば、ニトリロ酢酸、エチレンジアミン四酢酸、又はジエチレントリアミンの単独若しくは混合物から選択される。
【0104】
上記触媒は、上記触媒の全重量に対して、0〜30%、好ましくは5〜30%、更に好ましくは10〜30重量%の有機添加剤を含んでいてもよい。
【0105】
水素化転化方法
また、本発明は、水素の存在下、200℃を超える温度、1MPaを超える圧力、0.1〜20h−1の空間速度で、上記本発明の製造方法により製造した触媒を用いて水素化分解工程が実施され、導入される水素の量が、水素の体積(リットル)/炭化水素の体積(リットル)の体積比が80〜5000L/Lになるようにされている、炭化水素供給原料の水素化転化方法、好ましくは水素化分解方法に関する。
【0106】
好ましくは、本発明の水素化分解法は、250〜480℃、好ましくは320〜450℃、更に好ましくは330〜435℃の温度で、2〜25MPa、好ましくは3〜20MPaの圧力で、0.1〜6h−1、好ましくは0.2〜3h−1の空間速度で実施され、導入される水素の量が、水素の体積(リットル)/炭化水素の体積(リットル)の体積比が100〜2000L/Lである。
【0107】
本発明の方法で使用される操作条件により、340℃未満、好ましくは370℃未満の沸点を有する生成物への通過あたりの転化度が、一般的には15重量%超、更に好ましくは20〜95重量%になるのを達成することが可能である。
【0108】
非常に多様な原料を本発明の方法により処理することができる。それらは、有利には少なくとも20体積%、好ましくは80体積%の340℃超の沸点を有する化合物を含む。
【0109】
本発明の方法に使用される炭化水素供給原料は、有利にはLCO(light Cycle Oil=接触分解装置から得られる軽油)、常圧留出液、真空留出液、例えば、原油の直接蒸留又は転化装置、例えば、FCC、コークス工場又はビスブレーキング装置からのガスオイル、潤滑基油から芳香族化合物を抽出するための装置又は潤滑油基油の溶媒脱ろうから得られる供給原料、常圧残渣及び/又は真空残渣及び/又は脱硫油の固定床又は沸騰(ebullatng)床法からの留出液、フィッシャートロプシュ法から得られるパラフィン、脱アスファルト油、並びにバイオマスの水素化処理及び水素化転化法から得られる供給原料から選択され、単独で又は混合物として使用される。上記リストは限定的ではない。上記供給原料は、好ましくは、340℃超、好ましくは370℃超の沸点T5を有し、すなわち、供給原料中に存在する化合物の95%は、340℃超、好ましくは370℃超の沸点を有する。
【0110】
本発明の方法において処理される供給原料の窒素含量は、有利には、500重量ppm超、好ましくは500〜10000重量ppm、更に好ましくは700〜4000重量ppm、更に好ましくは1000〜4000重量ppmである。本発明の方法において処理される供給原料の硫黄含量は、有利には0.01〜5重量%、好ましくは0.2〜4重量%、更に好ましくは0.5〜3重量%である。
【0111】
供給原料は金属を含んでいてもよい。本発明の方法において処理される供給原料中のニッケル及びバナジウムの累積含量は、好ましくは1重量ppm未満である。
【0112】
供給原料はアスファルテンを含んでいてもよい。アスファルテンの含量は、通常3000重量ppm未満、好ましくは1000重量ppm未満、更に好ましくは200重量ppm未満である。
【0113】
有利には、上記炭化水素供給原料は、金属、特にニッケル及びバナジウムを含んでいてもよい。本発明の水素化分解法により処理される、上記炭化水素供給原料中のニッケル及びバナジウムの累積含有量は、好ましくは1重量ppm未満である。上記炭化水素供給原料のアスファルテン含有量は、通常は3000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、更に好ましくは200ppm未満である。
【0114】
供給原料の注入前に、上記触媒が卑金属を含む場合、本発明の方法において使用される触媒を転化のための硫化処理に供し、少なくとも部分的に金属種が硫化物に転化し、処理されるべき供給原料と接触させる。硫化によるこの活性化処理は当業者に周知であり、文献に既に開示されたあらゆる方法によって、現場で、すなわち反応器中で、又は現場外のいずれかで実施することができる。
【0115】
保護床(Guard beds)
供給原料が樹脂及び/又はアスファルテン等の化合物を含む場合、供給原料を、有利には、あらかじめ水素化分解又は水素化処理触媒とは異なる触媒又は吸着剤の床上を通過させる。本発明で使用される保護触媒又は保護床は、球形又は押出成形品の形態である。しかし、触媒は、0.5〜5mm、更に特定的には0.7〜2.5mmの直径を有する押出成形品の形態であることが有利である。形状は、円筒形(中空でも中実でもよい)、ねじれた円筒形、多葉(例えば、2、3、4又は5葉)又は環状である。円筒形が好ましく使用されるが、任意の他の形状を使用してもよい。
【0116】
供給原料中の不純物及び/又は毒物の存在を修正するために、保護触媒は、他の好ましい実施態様において、それらの空隙率を高めるために、より特定的な幾何学形状を有してもよい。これらの触媒の空隙率は、0.2〜0.75である。それらの外径は、1〜35mmの間で変動してもよい。可能な特定形状のうち、このリストは限定的ではないが、中空円筒形、中空リング、ラシヒリング、鋸歯状中空円筒形、波状中空円筒形、ペンタリング(pentaring)車輪形、複数の孔を備えた円筒形等を挙げることができる。
【0117】
これらの保護触媒又は保護床は、活性相により含浸してもよく、含浸しなくてもよい。好ましくは、触媒は、水素化−脱水素化相に含浸する。特に好ましくは、相CoMo又はNiMoが使用される。
【0118】
これらの保護触媒又は保護床は、マクロ多孔性を示し得る。保護床は、Norton−Saint−Gobainにより市販されているもの、例えば、Macro Trap(登録商標)保護床であってもよい。保護床は、AxensによりACTファミリーで市販されているもの:ACT077、ACT645、ACT961又はHMC841、HMC845、HMC868又はHMC945であってもよい。これらの触媒を、変動可能な高さを備えた少なくとも2つの異なる床の上に置くことは特に有利である。最も高い空隙率を有する触媒は、好ましくは、触媒反応器の入口にある第1の触媒床(単数又は複数)において使用される。これらの触媒のために少なくとも2つの異なる反応器を使用することも有利である。
【0119】
実施態様
上記製造方法により製造された触媒を使用する本発明の水素転化法、好ましくは水素化分解法は、穏やかな水素化分解から高圧水素化分解までの圧力及び転化範囲をカバーする。穏やかな水素化分解とは、通常は40%未満の中程度の転化率をもたらし、通常は2MPa〜6MPaの低圧で操作する水素化分解を意味する。
【0120】
本発明の水素化分解法は、少なくとも1種の本発明の水素化分解触媒の存在下に実施される。本発明の水素化分解法は、有利には、上記工程程が実施される圧力とは無関係に1又は2つの工程で実施される。水素化分解法は、1以上の反応器を備えた1以上の反応装置内で、本発明により得られた1種以上の水素化分解触媒の存在下に実施される。
【0121】
本発明の水素化分解法は、有利には、公知の一段階水素化分解スキームにおいて、1つ又は複数の固定床触媒床中、1以上の反応器中、未転化画分の液体リサイクルを伴い、又は伴わないで上記触媒を単独で使用することができ、場合によっては、本発明の製造方法により製造された触媒、及び本発明の水素化転化法で使用される触媒の上流に位置する従来の水素化処理触媒と組み合わせて使用することができる。
【0122】
本発明の水素化分解法は、有利には、公知の一段階水素化分解スキームにおいて、1つ又は複数の沸騰床反応器中、未転化画分の液体リサイクルを伴い、又は伴わないで上記触媒を単独で使用することができ、場合によっては、本発明の方法で使用される触媒の上流の固定床又は沸騰床反応器内に位置する従来の水素化処理触媒と組み合わせて使用することができる。
【0123】
沸騰床は、安定な触媒活性を維持するために、使用済み触媒を取り出し、新鮮な触媒を毎日追加して操作する。
【0124】
本発明の製造方法により製造された触媒は、有利には、第1の水素化処理反応域において、転化予備処理で、単独で、又は本発明の上記触媒の上流に位置する別の従来の水素化精製触媒との組み合わせで、1以上の触媒床において、1以上の固定床又は沸騰床反応器において使用してもよい。
【0125】
公知の一段階法
本発明の水素化分解法は、有利には、公知の一段階法において使用される。
【0126】
公知の一段階水素化分解は、最初に、かつ通常は、徹底した水素化精製を含み、この水素化精製の目的は、供給原料の徹底した水素化脱窒及び脱硫を行った後に、このものを、本来の水素化分解触媒に送ることにあり、特に、この水素化分解触媒がゼオライトを含む場合である。この徹底的な供給原料の水素化精製は、供給原料のより軽質な画分への限られた転化のみをもたらし、これは、依然として不十分であり、したがって、上記のより活性な水素化分解触媒により完了する必要がある。しかし、2つのタイプの触媒の間で分離されないことに留意すべきである。反応器を出る流出物の全てが、本来の上記水素化分解触媒上に注入され、形成された生成物の分離は後にのみ実施される。「ワンススルー(Once Through)」とも呼ばれるこのバージョンの水素化分解は、供給原料の更に徹底的な転化のために未転化部分の反応器へのリサイクル処理を伴う変形を含む。
【0127】
したがって、本発明の製造方法により製造された触媒は、有利には、公知の一段階の水素化分解法において、水素化精製域の下流に位置する水素化分解域で、この2つの域間になんら中間分離を使用することなく使用される。
【0128】
好ましくは、第1の水素化精製反応域において、単独で又は本発明の製造方法により製造された触媒の上流に位置する別の従来の水素化精製触媒との組み合わせで用いられる水素化精製触媒は、場合によってはリン、ホウ素及びケイ素から選択されるドーピング元素を含む触媒であり、この触媒は、アルミナ又はシリカ−アルミナ担体上で、第VIII族卑金属元素をベースとし、場合によっては、第VIB族元素と組み合わされ、更に好ましくは、上記触媒は、ニッケル及びタングステンを含む。
【0129】
また、本発明の製造方法により製造された触媒は、有利には、第1の水素化精製反応域において、転化前処理で、単独で又は本発明触媒の上流に位置する別の従来の水素化精製触媒との組み合わせで、1以上の触媒床において、1以上の反応器で使用してもよい。
【0130】
公知の中間分離を伴う一段階固定床法
本発明の水素化分解法は、有利には、公知の中間分離を伴う一段階固定床法で実施することができる。
【0131】
上記方法は、有利には、水素化精製域、例えば、ホットフラッシュによるアンモニアの一部除去のための域、及び本発明の水素化分解触媒を含む域を含む。中間留分及び場合によってはオイルベースの製造のためのこの一段階の炭化水素供給原料の水素化分解法は、有利には、少なくとも1つの第1水素化精製反応域と、少なくとも1つの第2の反応域とを含み、第1の反応域からの流出物の少なくとも一部の水素化分解が行われる。また、この方法は、有利には、第1の域を出た流出物からのアンモニアの不完全な分離を含む。この分離は、有利には、中間ホットフラッシュ工程により実施される。第2の反応域で行われる水素化分解は、有利には、供給原料中に存在する量より少ない量、好ましくは窒素の重量で1500重量ppm未満、更に好ましくは1000重量ppm未満、更に好ましくは800重量ppm未満のアンモニアの存在下で実施される。
【0132】
したがって、本発明の触媒は、有利には、中間分離を伴う一段階固定床水素化分解法において、水素化精製域の下流に位置する水素化分解域で使用され、アンモニアの一部除去のための中間分離は、この2つの域の間に適用される。
【0133】
好ましくは、単独で、又は本発明の触媒の上流に位置する別の従来の水素化精製触媒との組み合わせで、第1の水素化精製反応域において用いられる水素化精製触媒は、場合によってはリン、ホウ素及びケイ素から選択されるドーピング元素を含む触媒であり、上記触媒は、アルミナ又はシリカ−アルミナ担体上で、第VIB族元素と組み合わせてもよい第VIII族卑金属元素をベースとし、更に好ましくは、上記触媒は、ニッケル及びタングステンを含む。
【0134】
また、本発明製造方法により製造された触媒は、有利には、第1の水素化精製反応域において、転化前処理で、単独で又は本発明に記載された触媒の上流に位置する別の従来の水素化精製触媒との組み合わせで、1以上の触媒床において、1以上の反応器で使用してもよい。
【0135】
公知の二段階法
本発明の水素化転化法、好ましくは水素化分解法は、有利には、公知の二段階方法において使用される。
【0136】
二段階水素化分解は、第1段階を含み、この第1段階は、「一段階」法と同様、供給原料の水素化精製を実施するという目的を有しているが、供給原料の転化:一般的には40〜60%程度を達成するという目的をも有している。次いで、第1段階からの流出物は、ほとんどの場合、中間分離と呼ばれる分離(蒸留)を経るが、これは、転化生成物を未転化画分から分離するという目的を有している。二段階水素化分解法の第2段階では、第1段階の間に転化されなかった供給原料の部分のみが処理される。この分離により、二段階水素化分解法は一段階法よりも中間留分(灯油+ディーゼル)に対してより選択的になり得る。実際に、転化生成物の中間分離により、第2段階における水素化分解触媒によるそれらのナフサ及びガスへの「過剰分解」が回避される。さらに、第2段階で処理された供給原料の未転化画分は、通常、非常に低いNH並びに窒素含有有機化合物の含量は、通常、20重量ppm未満、更には10重量ppm未満を有することに留意すべきである。
【0137】
公知の一段階法の場合に、開示された固定床又は沸騰床触媒の構成は、有利には、公知の二段階スキームの第1段階において使用することができるが、本発明による触媒は、単独で、又は従来の水素化精製触媒との組み合わせで使用される。
【0138】
したがって、本発明の製造方法により製造された触媒は、有利には、公知の二段階水素化分解法において、第1段階の水素化精製の下流に位置する第2の水素化分解段階で用いられ、中間分離は、この2つの帯域の間で使用される。
【0139】
公知の一段階法及び二段階水素化分解の第1の水素化精製段階において、有利に使用することができる従来の水素化精製触媒は、リン、ホウ素及びケイ素から選択されるドーピング元素を含んでいてもよい触媒であり、上記触媒は、アルミナ又はシリカ−アルミナ担体上で、場合によっては第VIB族元素との組み合わせで第VIII族卑金属元素をベースとし、更に好ましくは、上記触媒は、ニッケル及びタングステンを含む。
【0140】
本発明の水素化分解法の第一の実施態様によれば、水素化分解法で得られた水素化分解工程に位置する水素化分解触媒は、1以上の固定床又は沸騰床触媒床で、1以上の反応器中で公知の「一段階」水素化分解スキームで、未転化画分の液体リサイクルを伴い、又は伴わないで上記触媒は有利には、単独で又は連続的に使用され、場合によっては、上記水素化分解触媒(単独又は複数)の上流に位置する水素化精製触媒と組み合わせて使用することができる。沸騰床は、安定な触媒活性を維持するために、使用済み触媒を取り出し、新鮮な触媒を毎日追加して操作する。
【0141】
本発明の水素化分解法の第二の実施態様によれば、本発明の水素化分解法の水素化分解触媒は、有利には、公知の「二段階」水素化分解スキームの1及び/又は他の段階で、1又は複数の触媒床中、単独で、又は連続的に使用される。「二段階」スキームは、2つの反応域間で流出液の中間分離を伴うスキームである。このスキームは、第1の反応域又は第2の反応域からの未転化画分の液体リサイクルを伴い、又は伴わないで実施することができる。第1の反応域は、固定床又は沸騰床として作動する。本発明により得られた水素化分解触媒(単数又は複数)が第1の反応域中に配置されている特定のケースでは、水素化分解触媒は、好ましくは上記触媒の上流に位置する水素化精製触媒とともに使用すべきである。
【実施例】
【0142】
以下の実施例は本発明を説明するが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0143】
実施例1:ゼオライトNU−86及びアルミナ型の多孔質マトリクスを含む担体S1の調製
使用した原料の1つは、欧州特許出願公開第0 463768号A2の実施例2に従って調製し、Si/Alの全体原子比が11であり、Na/Al原子比が0.25のゼオライトNU−86である。
【0144】
合成し未精製のゼオライトNU−86を、まず乾燥空気流の下、550℃で9時間、公知の乾式焼成を行う。次いで、得られた固体を、各イオン交換について4時間、10NのNHNO溶液中、約100℃で4回イオン交換を行う。このようにして得られた固体をNH−NU−86/1と命名し、これはSi/Al比が11であり、Na/Al比が0.0012である。他の物理化学的特徴を表1に示す。
【0145】
【表1】
【0146】
ゼオライトNU−86の結晶子は、0.4μm〜2μmの大きさの範囲の結晶形態である。
【0147】
次に、23重量%のゼオライトNU−86を、超微細平面状のベーマイト又はアルミナゲルから構成される77重量%のマトリクスと混合する。この混合液に、66重量%の硝酸を含む水溶液を加える(乾燥ゲル1gに対し、7重量%の酸)。この混合物を15分間混合する。次いで、混合したペーストを直径が2mmの三葉のオリフィスを有する金型に通して押出し成形する。次いで、押し出し成形品を、空気中、500℃で2時間焼成する。この押し出し成形品は、担体S1の構成要素となる。
【0148】
実施例2:ゼオライトNU−86及びシリカ−アルミナ型の多孔質マトリクスを含む担体S2の調製
30%のSiO2及び70%のAl23の組成物の共沈殿によりシリカ−アルミナの粉体を調製した。次いで、このシリカ−アルミナ及び実施例1のゼオライトNU−86を含む水素化分解触媒担体を製造した。このために、実施例1のゼオライトNU−85(7.6重量%)を、上記で調製したシリカ−アルミナからなるマトリクス(92.4重量%)と混合する。次いで、この粉体混合物を、66%の硝酸を含む水溶液と混合し(乾燥ゲル1gに対し、7重量%の酸)、その後15分間混合する。上記混合後、得られれたペーストを、直径が2mmの三葉のオリフィスを有する金型に通して押出す。次いで、押出し成形品を、120℃で一晩乾燥した後、空気中、550℃で2時間焼成する。押出し成形品を、最終的に蒸気の下、750℃で2時間処理する。この押出し成形品は、担体S2の構成要素となる。
【0149】
実施例3:担体S2表面へのNiMoP組成の触媒C1の調製(本発明に合致する)
ゼオライトNU−86及びシリカ−アルミナマトリクスを含む担体S2の押出し成形品を、予め還流装置を用いてNi(OH)、MoO及びHPOを溶解しておいた水溶液を用いて含浸乾燥する。押出し成形品を、空気中、120℃で一晩乾燥し、その後の焼成を実施しない。触媒C1のNiMoPの組成は、触媒の乾燥重量に対し、Ni(NiOの形態で表す)、Mo(MoOの形態で表す)及びP(Pの形態で表す)について、それぞれ2.2、20、4.2重量%である。割合は以下の通りである:Ni/Mo=0.21、及びP/Mo=0.42。
【0150】
実施例4:担体S2表面へのNiMoP組成の触媒C2の調製(本発明に合致しない)
触媒C2は、450℃で焼成した触媒C1に相当する。
【0151】
実施例5:担体S1表面へのNiMoP組成の触媒C3の調製(本発明に合致する)
ゼオライトNU−86及びアルミナを含む担体押出し成形品を、予め還流装置を用いてNi(OH)、MoO及びHPOを溶解しておいた水溶液を用いて乾式含浸する。押出し成形品を、空気中、120℃で一晩乾燥し、その後の焼成を実施しない。触媒C3のNiMoPの組成は、触媒の乾燥重量に対し、Ni(NiOの形態で表す)、Mo(MoOの形態で表す)及びP(Pの形態で表す)について、それぞれ2.6、23.2、4.7重量%である。割合は以下の通りである:Ni/Mo=0.22、及びP/Mo=0.41。
【0152】
実施例6:担体S1表面へのNiMoP組成の触媒C4の調製(本発明に合致しない)
触媒C4は、450℃で焼成した触媒C3に相当する。
【0153】
実施例7:真空蒸留液の高圧水素化分解における、触媒C1及びC2の評価
調製を実施例3及び4で説明した触媒C1及びC2を、表2に示す主な特徴を有する、部分的に水素化処理した真空蒸留液の水素化分解のために使用する。
【0154】
【表2】
【0155】
上部から下部に液体が循環する流体(下降流)を含む、1つの通過固定床反応器を備えた試験的な設備を使用し、触媒C1及びC2を本発明の方法に従って使用した。
【0156】
水素化分解試験の前に、2重量%のDMDS(ジメチルジスルフィド)を加えた直接蒸溜法による軽油を用い、14MPa、350℃で、触媒を硫化する。
硫化後、以下の条件で触媒試験を実施した。
【0157】
全圧:14MPa
水素の流速:注入した供給原料1リットルあたり気体の水素1000リットル
空間速度(LHSV)は0.66h−1である。
【0158】
適用される温度は、80%の粗転換率が得られる温度である。
【0159】
試験の間に、未精製の水素化処理していない供給原料の事前の水素処理により発生したHS及びNHの分圧を維持するために、DMDS及びアニリンを供給原料に加える。
【0160】
触媒性能は、370+カット(沸点が370℃超の分子)から370−カット(沸点が370℃未満の分子)への粗転換率、及び中間留分(150〜370℃カット)の粗選択率で表される。転換率及び選択率は、シミュレーションした蒸留の結果及びガスクロマトグラフィーによるガスの分析を基準にして表される。
【0161】
CB370℃で示される370℃未満の沸点を有する生成物に対する粗転換率は、流出液CB370℃=370℃流出液の%の中で沸点が370℃未満の分子の重量パーセントに等しいと考えられる。
【0162】
中間留分の粗選択率(沸点が150〜370℃のカット)はSB MDと表され、以下で表される。
【0163】
SB MD=[(150〜370流出液の画分)]/[(370℃流出液の%)]
得られた触媒の性能を以下の表3に示す。
【0164】
【表3】
【0165】
120℃で水素化機能の酸化物相前駆体を乾燥することにより、中間留分に対する同一の選択性を維持しながら酸化物相を450℃で焼成した触媒C2(本発明に合致しない)よりも活性の高い触媒C1(本発明により製造)を生成することが可能になることが、結果により示された。
【0166】
実施例8:真空蒸留液の高圧水素化分解における、触媒C3及びC4の評価
調製を実施例5及び6で説明した触媒C3及びC4を、表4に示す主な特徴を有する、水素化処理した真空蒸留液の水素化分解のために使用する。
【0167】
【表4】
【0168】
上部から下部に液体が循環する流体(下降流)を含む、1つの通過固定床反応器を備えた試験的な設備を使用し、触媒C3及びC4を本発明の方法に従って使用した。
【0169】
水素化分解試験の前に、2重量%のDMDS(ジメチルジスルフィド)を加えた直接蒸溜法による軽油を用い、14MPa、350℃で、触媒を硫化する。
硫化後、以下の条件で触媒試験を実施した。
【0170】
全圧:14MPa
水素の流速:注入した供給原料1リットルあたり気体の水素1000リットル
空間速度(LHSV)は1h−1である。
【0171】
適用される温度は、70%の粗転換率が得られる温度である。
【0172】
試験の間に、未精製の水素処理していない供給原料の事前の水素処理により発生したHS及びNHの分圧を維持するために、DMDS及びアニリンを供給原料に加える。
【0173】
触媒性能は、370+カット(沸点が370℃超の分子)から370−カット(沸点が370℃未満の分子)への粗転換率、及び中間留分(MD、150〜370℃カット)の収率で表される。MDの転換率及び収率は、シミュレーションした蒸留の結果及びガスクロマトグラフィーによるガスの分析を基準にして表される。
【0174】
CB370℃と表される370℃未満の沸点を有する生成物に対する粗転換率は、流出液CB370℃=370℃流出液の%の中で沸点が370℃未満の分子の重量パーセントに等しいと考えられる。
【0175】
中間留分の収率(沸点が150〜370℃のカット)は以下で表される。
【0176】
MDの収率=流出液中、沸点が150℃〜370℃である分子の%
得られた触媒の性能を以下の表5に示す。
【0177】
【表5】
【0178】
120℃で水素化機能の酸化物相前駆体を乾燥することにより、中間留分に対する同一の選択性を維持しながら酸化物相を450℃で焼成した触媒C4(本発明に合致しない)よりも活性の高い触媒C3(本発明の製造方法により製造)を生成することが可能になることが、結果により示された。
図1