特許第6368685号(P6368685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368685
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】減速装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/46 20060101AFI20180723BHJP
   F16C 35/02 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   F16H1/46
   F16C35/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-113154(P2015-113154)
(22)【出願日】2015年6月3日
(65)【公開番号】特開2016-223610(P2016-223610A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2017年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】特許業務法人広和特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100079441
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 和彦
(72)【発明者】
【氏名】工藤 圭史
(72)【発明者】
【氏名】篠原 毅
(72)【発明者】
【氏名】澁川 壮史
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−119641(JP,U)
【文献】 実開平04−071844(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/28−1/48
F16C 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌スプライン部が設けられた出力軸を有する回転源を収容した固定側ハウジングと、該固定側ハウジングに対して回転可能に設けられ前記回転源によって駆動される回転側ハウジングと、該回転側ハウジング内に収容され前記回転源の回転を減速する1段目の遊星歯車減速機構と、前記回転源と前記1段目の遊星歯車減速機構との間に配設され前記1段目の遊星歯車減速機構の回転を減速して前記回転側ハウジングを回転させる2段目の遊星歯車減速機構とからなり、
前記1段目の遊星歯車減速機構は、前記回転側ハウジング内を軸方向に延びて配置され軸方向の一側に前記出力軸の前記雌スプライン部にスプライン結合される雄スプライン部が設けられた回転軸と、該回転軸の軸方向の他側に設けられた第1の太陽歯車と、該第1の太陽歯車と前記回転側ハウジングの内周側に設けられた内歯車とに噛合し前記第1の太陽歯車の周囲を自転しつつ公転する複数の第1の遊星歯車と、該各第1の遊星歯車を回転可能に支持する第1のキャリアとにより構成し、
前記2段目の遊星歯車減速機構は、前記回転軸が挿通される貫通孔を有する円筒体からなり前記出力軸の前記雌スプライン部と前記第1の太陽歯車との間に配置されると共に前記第1のキャリアに連結された第2の太陽歯車と、該第2の太陽歯車と前記回転側ハウジングの内周側に設けられた内歯車とに噛合し前記第2の太陽歯車の周囲で自転することにより前記回転側ハウジングを回転させる複数の第2の遊星歯車と、前記固定側ハウジングに非回転状態に取付けられ前記各第2の遊星歯車を回転可能に支持する第2のキャリアとにより構成し
前記1段目の遊星歯車減速機構の前記回転軸は、軸方向の一側の前記雄スプライン部と、軸方向の他側の前記第1の太陽歯車との間で、前記雄スプライン部側が大径軸となり前記第1の太陽歯車側が小径軸となった段付軸として形成されてなる減速装置において
前記第1の太陽歯車と前記第2の太陽歯車との間には、2個の半割体からなり前記回転軸の前記小径軸の外周側に嵌合され前記第1の太陽歯車と前記第2の太陽歯車とが摺動可能に当接する摺動部材を設け、
前記第2の太陽歯車の貫通孔には、前記第1の太陽歯車に対面する位置に段部を設け、該段部よりも前記第1の太陽歯車側を大径な大径孔部として形成し、前記摺動部材は、前記第2の太陽歯車の前記大径孔部内に配置する構成とし
前記回転軸の小径軸の軸方向長さ寸法(L1)は、前記第1の遊星歯車の軸方向長さ寸法(L2)と、前記摺動部材の軸方向長さ寸法(L3)との合計長さ寸法よりも大きな値(L1>L2+L3)に構成し、
前記第2の太陽歯車の軸中心線から前記摺動部材の最外周までの長さ寸法A1は、前記第2の太陽歯車の軸中心線から前記第1の遊星歯車の歯先までの長さ寸法A2よりも大きな値(A1>A2)に構成し、
前記回転軸の小径軸の軸方向長さ寸法(L1)は、前記摺動部材の軸方向長さ寸法(L3)と、前記出力軸の前記雌スプライン部と前記回転軸の前記雄スプライン部とのスプライン結合部の軸方向長さ寸法(L4)との合計長さ寸法よりも大きな値(L1>L3+L4)に構成したことを特徴とする減速装置。
【請求項2】
前記摺動部材は、前記回転軸の小径軸を挟んで円筒状に組合され前記第2の太陽歯車の前記貫通孔内に挿通される第1の半割ブッシュと第2の半割ブッシュとにより構成し、
前記第1の半割ブッシュの内径側の半径寸法と、前記第2の半割ブッシュの内径側の半径寸法とは、前記小径軸の半径寸法よりも大きな値に形成しており
前記回転軸の前記小径軸と前記第1,第2の半割ブッシュの内周面との間には、径方向の隙間を設けている構成としてなる請求項1に記載の減速装置。
【請求項3】
前記第2の太陽歯車の貫通孔は、前記段部よりも前記雄スプライン部側を全長にわたって小径孔部として形成すると共に、前記第1の太陽歯車側を前記大径孔部として形成しており
前記第1,第2の半割ブッシュは、前記貫通孔の前記小径孔部内を軸方向に延びる半割筒部と、前記段部の位置から径方向外側に延びて前記段部および前記第1の太陽歯車の端面に当接する鍔部とにより構成し、
前記半割筒部の軸方向長さ寸法B1は、前記第2の太陽歯車の段部と前記第1の遊星歯車の軸方向一側の端面との間の長さ寸法B2よりも大きな値(B1>B2)に構成してなる請求項に記載の減速装置。
【請求項4】
前記第1,第2の半割ブッシュの鍔部は、前記第1の太陽歯車が当接する第1の太陽歯車当接面と、該第1の太陽歯車当接面の裏面側に位置し前記第2の太陽歯車の前記段部が当接する第2の太陽歯車当接面とを有し、
前記第1の太陽歯車当接面は、前記第1の太陽歯車との接触摩擦を増大させる凹凸面として形成してなる請求項に記載の減速装置。
【請求項5】
前記第1,第2の半割ブッシュの鍔部は、前記第1の太陽歯車が当接する第1の太陽歯車当接面と、該第1の太陽歯車当接面の裏面側に位置し前記第2の太陽歯車の前記段部が当接する第2の太陽歯車当接面とを有し、
前記第1,第2の半割ブッシュが組合されたときの組合せ面と前記第1の太陽歯車当接面とが交わる角隅部には、当該角隅部を切欠くことにより面取部を設けている構成としてなる請求項に記載の減速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル、油圧クレーンの走行装置等に好適に用いられる減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の装軌式車両の下部走行体は、左,右のサイドフレームを有するトラックフレームと、各サイドフレームの一端側に設けられる走行装置と、各サイドフレームの他端側に設けられる遊動輪と、走行装置に設けられた駆動輪(スプロケット)と遊動輪との間に巻回される履帯とにより大略構成されている。
【0003】
この場合、油圧ショベルの走行装置は、通常、回転源となる油圧モータと、該油圧モータの回転を減速して出力する減速装置とからなり、この減速装置は、雌スプライン部が設けられた出力軸を有する回転源を収容した固定側ハウジングと、該固定側ハウジングに対して回転可能に設けられ前記回転源によって駆動される回転側ハウジングと、該回転側ハウジング内に収容され前記回転源の回転を減速する1段目の遊星歯車減速機構と、前記回転源と前記1段目の遊星歯車減速機構との間に配設され前記1段目の遊星歯車減速機構の回転を減速して前記回転側ハウジングを回転させる2段目の遊星歯車減速機構とにより構成されている。
【0004】
そして、前記1段目の遊星歯車減速機構は、前記回転側ハウジング内を軸方向に延びて配置され軸方向の一側に前記出力軸の前記雌スプライン部にスプライン結合される雄スプライン部が設けられた回転軸と、該回転軸の軸方向の他側に設けられた第1の太陽歯車と、該第1の太陽歯車と前記回転側ハウジングの内周側に設けられた内歯車とに噛合し前記第1の太陽歯車の周囲を自転しつつ公転する複数の第1の遊星歯車と、該各第1の遊星歯車を回転可能に支持する第1のキャリアとにより構成されている。
【0005】
また、前記2段目の遊星歯車減速機構は、前記回転軸が挿通される貫通孔を有する円筒体からなり前記出力軸の前記雌スプライン部と前記第1の太陽歯車との間に配置されると共に前記第1のキャリアに連結された第2の太陽歯車と、該第2の太陽歯車と前記回転側ハウジングの内周側に設けられた内歯車とに噛合し前記第2の太陽歯車の周囲で自転することにより前記回転側ハウジングを回転させる複数の第2の遊星歯車と、前記固定側ハウジングに非回転状態に取付けられ前記各第2の遊星歯車を回転可能に支持する第2のキャリアとにより構成されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−009017号公報
【特許文献2】特開2009−68506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来技術では、第1の太陽歯車の端面を、回転側ハウジングを閉塞するカバーの内面に取付けた摺動体に当接させると共に、第1の太陽歯車と第2の太陽歯車との間に両者が摺動可能に当接する摺動部材を設ける構成としている。この場合、従来技術による摺動部材は、中心部が軸挿通孔となった環状体からなり、この摺動部材は、雄スプライン部が設けられた回転軸の軸方向の一側を軸挿通孔に挿通することにより、回転軸の軸方向の他側に設けられた第1の太陽歯車に当接する。従って、第1の太陽歯車が安定して摺動できる摺動部材を形成するためには、第1の太陽歯車の外径寸法と雄スプライン部の外径寸法との寸法差を大きく設定する必要があり、大きな減速比を得るために第1の太陽歯車の外径寸法を小さくするのが難しい。
【0008】
これに対し、回転軸のうち第1の太陽歯車の近傍部位に雄スプライン部よりも小径な小径軸部(くびれ部)を形成すると共に、環状体を分割した2個の半割状の摺動部材を形成し、各半割状の摺動部材によって回転軸の小径軸部を径方向から挟む方法が考えられる。この2分割した摺動部材を用いることにより、第1の太陽歯車の外径寸法を小さくした場合でも、第1の太陽歯車を摺動部材に安定して当接させることができ、大きな減速比を得ることができる。
【0009】
しかし、減速装置の作動時には、回転軸の回転によって第1,第2の太陽歯車が回転するため、半割状の摺動部材には遠心力が作用する。このため、カバーの内面に取付けた摺動体が摩耗し、回転軸が軸方向に移動した場合には、摺動部材が回転軸の軸中心から径方向に離脱してしまい、第1,第2の太陽歯車の円滑な回転が妨げられる虞れがある。
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、摺動部材を用いて第1,第2の太陽歯車を安定して回転させることができる減速装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するため、本発明は、雌スプライン部が設けられた出力軸を有する回転源を収容した固定側ハウジングと、該固定側ハウジングに対して回転可能に設けられ前記回転源によって駆動される回転側ハウジングと、該回転側ハウジング内に収容され前記回転源の回転を減速する1段目の遊星歯車減速機構と、前記回転源と前記1段目の遊星歯車減速機構との間に配設され前記1段目の遊星歯車減速機構の回転を減速して前記回転側ハウジングを回転させる2段目の遊星歯車減速機構とからなり、前記1段目の遊星歯車減速機構は、前記回転側ハウジング内を軸方向に延びて配置され軸方向の一側に前記出力軸の前記雌スプライン部にスプライン結合される雄スプライン部が設けられた回転軸と、該回転軸の軸方向の他側に設けられた第1の太陽歯車と、該第1の太陽歯車と前記回転側ハウジングの内周側に設けられた内歯車とに噛合し前記第1の太陽歯車の周囲を自転しつつ公転する複数の第1の遊星歯車と、該各第1の遊星歯車を回転可能に支持する第1のキャリアとにより構成し、前記2段目の遊星歯車減速機構は、前記回転軸が挿通される貫通孔を有する円筒体からなり前記出力軸の前記雌スプライン部と前記第1の太陽歯車との間に配置されると共に前記第1のキャリアに連結された第2の太陽歯車と、該第2の太陽歯車と前記回転側ハウジングの内周側に設けられた内歯車とに噛合し前記第2の太陽歯車の周囲で自転することにより前記回転側ハウジングを回転させる複数の第2の遊星歯車と、前記固定側ハウジングに非回転状態に取付けられ前記各第2の遊星歯車を回転可能に支持する第2のキャリアとにより構成し、前記1段目の遊星歯車減速機構の前記回転軸は、軸方向の一側の前記雄スプライン部と、軸方向の他側の前記第1の太陽歯車との間で、前記雄スプライン部側が大径軸となり前記第1の太陽歯車側が小径軸となった段付軸として形成されてなる減速装置に適用される。
【0012】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記第1の太陽歯車と前記第2の太陽歯車との間には、2個の半割体からなり前記回転軸の前記小径軸の外周側に嵌合され前記第1の太陽歯車と前記第2の太陽歯車とが摺動可能に当接する摺動部材を設け、前記第2の太陽歯車の貫通孔には、前記第1の太陽歯車に対面する位置に段部を設け、該段部よりも前記第1の太陽歯車側を大径な大径孔部として形成し、前記摺動部材は、前記第2の太陽歯車の前記大径孔部内に配置する構成とし、前記回転軸の小径軸の軸方向長さ寸法(L1)は、前記第1の遊星歯車の軸方向長さ寸法(L2)と、前記摺動部材の軸方向長さ寸法(L3)との合計長さ寸法よりも大きな値(L1>L2+L3)に構成し、前記第2の太陽歯車の軸中心線から前記摺動部材の最外周までの長さ寸法A1は、前記第2の太陽歯車の軸中心線から前記第1の遊星歯車の歯先までの長さ寸法A2よりも大きな値(A1>A2)に構成し、前記回転軸の小径軸の軸方向長さ寸法(L1)は、前記摺動部材の軸方向長さ寸法(L3)と、前記出力軸の前記雌スプライン部と前記回転軸の前記雄スプライン部とのスプライン結合部の軸方向長さ寸法(L4)との合計長さ寸法よりも大きな値(L1>L3+L4)に構成したことにある。
【0014】
請求項の発明は、前記摺動部材は、前記回転軸の小径軸を挟んで円筒状に組合され前記第2の太陽歯車の前記貫通孔内に挿通される第1の半割ブッシュと第2の半割ブッシュとにより構成し、前記第1の半割ブッシュの内径側の半径寸法と、前記第2の半割ブッシュの内径側の半径寸法とは、前記小径軸の半径寸法よりも大きな値に形成しており、前記回転軸の前記小径軸と前記第1,第2の半割ブッシュの内周面との間には、径方向の隙間を設けている構成としたことにある。
【0015】
請求項の発明は、前記第2の太陽歯車の貫通孔は、前記段部よりも前記雄スプライン部側を全長にわたって小径孔部として形成すると共に、前記第1の太陽歯車側を前記大径孔部として形成しており、前記第1,第2の半割ブッシュは、前記貫通孔の前記小径孔部内を軸方向に延びる半割筒部と、前記段部の位置から径方向外側に延びて前記段部および前記第1の太陽歯車の端面に当接する鍔部とにより構成し、前記半割筒部の軸方向長さ寸法B1は、前記第2の太陽歯車の段部と前記第1の遊星歯車の軸方向一側の端面との間の長さ寸法B2よりも大きな値(B1>B2)に構成したことにある。
【0016】
請求項の発明は、前記第1,第2の半割ブッシュの鍔部は、前記第1の太陽歯車が当接する第1の太陽歯車当接面と、該第1の太陽歯車当接面の裏面側に位置し前記第2の太陽歯車の前記段部が当接する第2の太陽歯車当接面とを有し、前記第1の太陽歯車当接面は、前記第1の太陽歯車との接触摩擦を増大させる凹凸面として形成したことにある。
【0017】
請求項の発明は、前記第1,第2の半割ブッシュの鍔部は、前記第1の太陽歯車が当接する第1の太陽歯車当接面と、該第1の太陽歯車当接面の裏面側に位置し前記第2の太陽歯車の前記段部が当接する第2の太陽歯車当接面とを有し、前記第1,第2の半割ブッシュが組合されたときの組合せ面と前記第1の太陽歯車当接面とが交わる角隅部には、当該角隅部を切欠くことにより面取部を設けている構成としたことにある。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、回転軸が第2の太陽歯車の貫通孔内で軸方向に移動したとしても、2個の半割体からなる摺動部材が回転軸から脱落するのを抑え、この摺動部材を第2の太陽歯車の大径孔内に保持することができる。この結果、第1,第2の太陽歯車を確実に摺動部材に当接させることができ、第1,第2の太陽歯車を長期に亘って円滑に回転させることができる。
【0019】
また、回転軸を第2の太陽歯車の貫通孔内でスライド移動させることにより、第1の太陽歯車と第1の遊星歯車との噛合を外すことができる。このとき、回転軸の小径軸に嵌合した摺動部材は、第1の遊星歯車に係合することにより、それ以上の軸方向への移動が規制される。従って、第1の太陽歯車と第1の遊星歯車との噛合を外したときに、摺動部材が不用意に回転軸から脱落するのを抑え、摺動部材を第1の太陽歯車と第2の太陽歯車との間で回転軸の小径軸に嵌合させておくことができる。これにより、1段目および2段目の遊星歯車減速機構を回転側ハウジングに組付けるときに、第2の太陽歯車と第2の遊星歯車とを噛合わせた後に、自由回転可能な第1の遊星歯車と内歯車とを噛合わせることができる。そして、最後に第1の太陽歯車と第1の遊星歯車とを噛合わせることができる。その結果、各歯の位相を同時に合わせる調整作業の必要がなくなるので、簡単に1段目および2段目の遊星歯車減速機構を回転側ハウジングに組付けることができる。
【0020】
しかも、回転軸を第2の太陽歯車の貫通孔内でスライド移動させることにより、第1の太陽歯車と第1の遊星歯車との噛合を外すと共に、雄スプライン部と出力軸の雌スプライン部との噛合を外すことができる。これにより、回転軸を単独で回転させることができ、第1の太陽歯車と第1の遊星歯車、回転軸の雄スプライン部と出力軸の雌スプライン部とが同時に噛合するように、回転軸に設けられた雄スプライン部および第1の太陽歯車の各歯の位相を細かく調整することができる。この結果、出力軸の雌スプライン部に対する雄スプライン部の噛合わせと、複数の第1の遊星歯車に対する第1の太陽歯車の噛合わせを容易に行うことができ、1段目および2段目の遊星歯車減速機構を回転側ハウジングに組付けるときの作業性を高めることができる。
【0021】
請求項の発明によれば、回転軸の小径軸と第1,第2の半割ブッシュの内周面との間には、径方向の隙間を設けているので、第1の半割ブッシュおよび第2の半割ブッシュと回転軸とは、非接触状態となっている。これにより、例えば減速装置の作動時に、回転軸の軸中心と第2の太陽歯車の軸中心とが心ずれを生じた場合でも、第2の太陽歯車の貫通孔内に挿通された第1,第2の半割ブッシュと第2の太陽歯車とが接触するのを抑えることができる。この結果、回転軸から第1,第2の半割ブッシュに大きな荷重が作用するのを抑制することができるので、第1,第2の半割ブッシュの寿命を向上することができる。
【0022】
請求項の発明によれば、第1,第2の半割ブッシュを半割筒部と鍔部とにより構成することにより、半割筒部が挿通される貫通孔の孔径を可及的に小さくした小径孔部とし、第2の太陽歯車の外周側から貫通孔までの厚みを大きく(厚く)することができる。これにより、第1のキャリアから第2の太陽歯車に大きなトルクが作用しても、第2の太陽歯車の捩じり強度を十分に確保することができ、第2の太陽歯車の耐久性を高めることができる。また、第1,第2の半割ブッシュは、鍔部により第1の太陽歯車との摺動面を十分に確保することができるので、安定して回転軸(第1の太陽歯車)を回転させることができる。
【0023】
しかも、第1の太陽歯車と第1の遊星歯車との噛合を外すために、回転軸を第2の太陽歯車の貫通孔内で軸方向に移動させたときに、第1,第2の半割ブッシュの鍔部は、半割筒部が第2の太陽歯車の小径孔部から抜出す前に、第1の遊星歯車の端面に係合する。この結果、第1の太陽歯車と第1の遊星歯車との噛合を外すときに、第1,第2の半割ブッシュが不用意に回転軸から脱落するのを未然に防ぐことができ、1段目および2段目の遊星歯車減速機構を回転側ハウジングに組付けるときの作業性を高めることができる。
【0024】
請求項の発明によれば、第1,第2の半割ブッシュは、第1の太陽歯車と第2の太陽歯車とが相対回転したときに、接触摩擦(摺動抵抗)が大きい第1の太陽歯車に連れまわされるので、第2の太陽歯車の段部と積極的に摺動することができる。これにより、第1,第2の半割ブッシュに対し、第1の太陽歯車のエッジが断続的に摺動するのを抑え、各半割ブッシュのうち第1の太陽歯車との摺動面の摩耗を低減することができるので、各半割ブッシュの寿命を向上することができる。
【0025】
請求項の発明によれば、第1の半割ブッシュと第2の半割ブッシュとが軸方向にずれて段差が生じたとしても、第1太陽歯車の歯の端面側の部分が面取部に滑らかに接触するので、この段差に第1の太陽歯車のエッジが引っ掛かるのを抑制することができる。これにより、第1,第2の半割ブッシュの寿命を向上することができると共に、回転軸(第1の太陽歯車)を安定して回転させることができるので、減速装置の安定性、信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の実施の形態による減速装置を備えた油圧ショベルを示す正面図である。
図2】下部走行体の走行装置を図1中の矢示II−II方向からみた断面図である。
図3図2中の回転軸、第1の太陽歯車、第2の太陽歯車、摺動部材等を示す要部拡大の断面図である。
図4】回転軸の小径軸、摺動部材、第1の遊星歯車等の寸法関係を示す断面図である。
図5】第1,第2の半割ブッシュ、第1の遊星歯車等の寸法関係を示す断面図である。
図6図4中の回転軸を軸方向に移動させ、第1の太陽歯車と第1の遊星歯車との噛合を外した状態を示す要部拡大の断面図である。
図7】摺動部材(第1の半割ブッシュ、第2の半割ブッシュ)を単体で示す斜視図である。
図8】第1のキャリアから回転軸、第1の太陽歯車、第1の遊星歯車、第2の太陽歯車を取外した状態を示す第1の組立体の分解断面図である。
図9図8に示す状態から第1のキャリアに第2の太陽歯車を組付けた状態を示す分解断面図である。
図10図9に示す状態から回転軸の小径軸に摺動部材を嵌合させ第2の太陽歯車の貫通孔内に回転軸を挿通した状態を示す分解断面図である。
図11図10に示す状態から第1のキャリアに第1の遊星歯車を組付けた状態を示す第1の組立体の断面図である。
図12】回転側ハウジングから1段目,2段目の遊星歯車減速機構を取外した分解図である。
図13】回転側ハウジング内に組付けた第2の遊星歯車に第2の太陽歯車を噛合わせると共に、第1の遊星歯車と内歯車とを噛合わせた状態を示す組付図である。
図14図13の状態から第2の太陽歯車を第2の遊星歯車に噛合わせ、第1の遊星歯車を内歯車に噛合わせた状態を示す組付図である。
図15】第1の太陽歯車と第1の遊星歯車、回転軸の雄スプライン部と出力軸の雌スプライン部とを噛合わせた状態を示す組付図である。
図16】大径軸を長くして小径軸を短くした回転軸を示す比較例である。
図17】本発明の第2の実施の形態による摺動部材(第1の半割ブッシュ、第2の半割ブッシュ)を単体で示す斜視図である。
図18】第2の実施の形態による摺動部材を取付けた回転軸を第2の太陽歯車の貫通孔に挿通した状態を示す断面図である。
図19】本発明の第3の実施の形態による摺動部材(第1の半割ブッシュ、第2の半割ブッシュ)を単体で示す斜視図である。
図20】第3の実施の形態による摺動部材を取付けた回転軸を第2の太陽歯車の貫通孔に挿通した状態を示す断面図である。
図21】変形例による摺動部材を取付けた回転軸を第2の太陽歯車の貫通孔に挿通した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る減速装置の実施の形態を、油圧ショベルの走行装置に適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0028】
図1ないし図15は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、1は建設機械の代表例である油圧ショベルを示し、該油圧ショベル1は、自走可能な装軌式(クローラ式)の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とにより大略構成されている。上部旋回体3の前部側には作業装置4が俯仰動可能に設けられ、この作業装置4を用いて掘削作業等を行うものである。
【0029】
ここで、下部走行体2は、前,後方向に伸長する左,右のサイドフレーム5A(左側のみ図示)を備えたトラックフレーム5と、各サイドフレーム5Aの長手方向の一側に設けられた遊動輪6と、各サイドフレーム5Aの長手方向の他側に設けられた駆動輪(スプロケット)7と、遊動輪6と駆動輪7との間に巻回された履帯8とを含んで構成されている。駆動輪7は、ボルト9によって後述の走行装置11を構成する減速装置18に固定されている。即ち、駆動輪7は、走行装置11を介して各サイドフレーム5Aに取付けられ、この走行装置11によって履帯8を周回駆動するものである。
【0030】
次に、走行装置11について説明する。
【0031】
11はサイドフレーム5Aと駆動輪7との間に設けられた走行装置で、この走行装置11は、後述する回転源としての油圧モータ12と、該油圧モータ12の回転を減速する後述の減速装置18とを含んで構成されている。そして、走行装置11は、油圧モータ12の回転を減速装置18によって減速することにより、駆動輪7を大きなトルクをもって回転させ、駆動輪7と遊動輪6との間に巻回された履帯8を周回駆動させるものである。
【0032】
12は回転源としての可変容量型の斜板式油圧モータ(以下、油圧モータ12という)で、この油圧モータ12は、後述する固定側ハウジング19に収容されている。油圧モータ12は、シリンダブロック13、複数のピストン14、斜板15、出力軸16等により大略構成されている。そして、油圧モータ12は、油圧ポンプ(図示せず)から圧油が供給されることにより、出力軸16を回転駆動するものである。
【0033】
出力軸16の一端側は、後述の固定側ハウジング19の蓋体19Cに回転可能に支持され、他端側は、後述の固定側ハウジング19の軸挿通孔19Fに設けられた軸受20によって回転可能に支持されている。また、出力軸16の他端側には、後述する回転軸25の雄スプライン部26がスプライン結合される雌スプライン部16Aが設けられている。
【0034】
17は後述する固定側ハウジング19の蓋体19C側に設けられたブレーキ装置で、該ブレーキ装置17は、シリンダブロック13と出力軸16とに制動力を与えるネガティブ型のブレーキ装置となっている。
【0035】
次に、走行装置11を構成する減速装置18について説明する。
【0036】
18は油圧モータ12の回転を減速する減速装置で、該減速装置18は、後述の固定側ハウジング19、回転側ハウジング21、1段目の遊星歯車減速機構24、2段目の遊星歯車減速機構32等により構成されている。
【0037】
19はサイドフレーム5Aに固定して設けられた固定側ハウジングで、この固定側ハウジング19内には、油圧モータ12、ブレーキ装置17が設けられている。固定側ハウジング19は、筒部19Aと底部19Bとによって有底筒状に形成され、筒部19Aの開口端側は蓋体19Cによって閉塞されている。筒部19Aの外周側には、環状の鍔部19Dが一体形成され、該鍔部19Dは、サイドフレーム5Aにボルト等を用いて固着される構成となっている。底部19Bの外周側には、後述する第2のキャリア37の雌スプライン部37B2とスプライン結合される雄スプライン部19Eが設けられている。また、底部19Bの中央部には、出力軸16が挿通される軸挿通孔19Fが設けられている。そして、軸挿通孔19Fと出力軸16との間には、出力軸16を回転可能に支持する軸受20が設けられている。
【0038】
21は固定側ハウジング19に対して回転可能に設けられた回転側ハウジングで、該回転側ハウジング21は、固定側ハウジング19に収容された油圧モータ12によって回転駆動されるものである。回転側ハウジング21は、筒部21Aと底部21Bとによって有底筒状に形成され、筒部21Aの開口端側は、蓋部21Cによって閉塞されている。
【0039】
筒部21Aの外周側には、環状の鍔部21Dが一体形成され、該鍔部21Dには、ボルト9を用いて駆動輪(スプロケット)7が固着されている。また、筒部21Aの内周側には、後述する第1の遊星歯車29および第2の遊星歯車36が噛合する内歯車21Eが設けられている。
【0040】
底部21Bの中央部には、固定側ハウジング19が挿通されるハウジング挿通孔21Fが設けられている。そして、ハウジング挿通孔21Fと固定側ハウジング19との間には、固定側ハウジング19を回転可能に支持する軸受22が設けられている。また、軸受22よりも鍔部19D側で、ハウジング挿通孔21Fと固定側ハウジング19との間には、回転側ハウジング21内に潤滑油を封止するメカニカルシール(フローティングシール)23が設けられている。さらに、蓋部21Cの内側面の中央部には、後述する回転軸25の軸方向の他側の端面28Bが摺動可能に当接する摺動体21Gが設けられている。
【0041】
24は回転側ハウジング21内の蓋部21C側に配設された1段目の遊星歯車減速機構で、該1段目の遊星歯車減速機構24は、油圧モータ12の回転を減速して後述する2段目の遊星歯車減速機構32に回転を伝達するものである。そして、1段目の遊星歯車減速機構24は、回転軸25、第1の太陽歯車28、第1の遊星歯車29、第1のキャリア30等により構成されている。
【0042】
25は回転側ハウジング21内を軸方向に延びて配置された回転軸で、該回転軸25は、軸方向の一側(基端側)に設けられ、出力軸16の雌スプライン部16Aにスプライン結合される雄スプライン部26と、該雄スプライン部26から軸方向に延びる軸部27と、回転軸25の軸方向の他側(先端側)に設けられた第1の太陽歯車28とにより構成されている。即ち、回転軸25は、油圧モータ12の出力軸16と同軸上に配設され、油圧モータ12の出力軸16と一体に回転するものである。
【0043】
回転軸25の軸部27は、雄スプライン部26側が大径軸27Aとなり、第1の太陽歯車28側が小径軸27Bとなった段付軸として形成されている。そして、雄スプライン部26の歯先外径寸法と大径軸27Aの外径寸法とは、後述する第2の太陽歯車33の貫通孔34の孔径よりも小さい値となっている。これにより、回転軸25の雄スプライン部26と軸部27とは、後述する第2の太陽歯車33の貫通孔34に挿通することができる構成となっている。
【0044】
ここで、図4に示すように、回転軸25の小径軸27Bの軸方向長さ寸法L1は、後述する第1の遊星歯車29の軸方向長さ寸法L2と、後述する摺動部材39(第1,第2の半割ブッシュ40,41)の軸方向長さ寸法L3との合計長さ寸法よりも大きな値(L1>L2+L3)となっている。これにより、1段目の遊星歯車減速機構24と後述する2段目の遊星歯車減速機構32とを回転側ハウジング21内に組付けるときに、第1の太陽歯車28と第1の遊星歯車29との噛合を外すことができる構成となっている(図14参照)。この場合、摺動部材39は、第2の太陽歯車33の貫通孔34から軸方向の他側に向けてスライド移動させることができる。従って、第1の太陽歯車28は、回転軸25の小径軸27Bの軸方向長さ寸法L1に、第1の遊星歯車29の端面29Aと摺動部材39の端面との間の軸方向長さ寸法を考慮しなくても、第1の遊星歯車29との噛合を外すことができる。
【0045】
さらに、出力軸16の雌スプライン部16Aと回転軸25の雄スプライン部26とのスプライン結合部26Aの軸方向の長さ寸法をL4とすると、回転軸25の小径軸27Bの軸方向長さ寸法L1は、摺動部材39(第1,第2の半割ブッシュ40,41)の軸方向長さ寸法L3と、スプライン結合部26Aの軸方向長さ寸法L4との合計長さ寸法よりも大きな値(L1>L3+L4)となっている。
【0046】
28は回転軸25の軸方向の他側に設けられた第1の太陽歯車で、該第1の太陽歯車28は、後述する第1のキャリア30内に位置して後述の第1の遊星歯車29に噛合している。第1の太陽歯車28の軸方向長さ寸法は、第1の遊星歯車29の軸方向長さ寸法よりも若干大きく形成され、第1の太陽歯車28の歯先外径寸法は、大径軸27Aの外径寸法よりも大きな値となっている。そして、第1の太陽歯車28の軸方向の一側の端面28Aは、後述する摺動部材39に摺動可能に当接し、軸方向の他側の端面28Bは、回転側ハウジング21の摺動体21Gに摺動可能に当接する構成となっている。
【0047】
29は第1の太陽歯車28と回転側ハウジング21の内周側に設けられた内歯車21Eとに噛合する複数の第1の遊星歯車を示している。該第1の遊星歯車29は、第1の太陽歯車28の周囲を自転しつつ公転するもので、例えば第1の太陽歯車28の周囲に3個設けられている(1個のみ図示)。各第1の遊星歯車29の歯先外径寸法は、その中心から第1の太陽歯車28の歯先外径までの寸法よりも大きく形成され、各第1の遊星歯車29の軸方向の一側の端面29Aのうち外径側(歯側)は、後述の摺動部材39の第1の太陽歯車当接面40B1,41B1と対面している。各第1の遊星歯車29は、軸方向の長さ寸法がL2となっており、この軸方向の長さ寸法L2の全長に亘って第1の太陽歯車28と噛合している。
【0048】
30は各第1の遊星歯車29を回転可能に支持する第1のキャリアで、該第1のキャリア30は、内歯車21Eの歯先円径よりも小径な円板状をなし、各第1の遊星歯車29を軸方向から挟む他側支持板30A、一側支持板30Bと、他側支持板30Aと一側支持板30B間を連結し周方向に均等な間隔をもって離間した複数の連結部30Cと、他側支持板30Aと一側支持板30Bとの間で各第1の遊星歯車29を回転可能に支持する歯車支持軸30Dとにより構成されている。そして、第1のキャリア30は、他側支持板30Aと、一側支持板30Bと、連結部30Cとが、例えば鋳造等により一体形成されている。
【0049】
軸方向の他側に位置する他側支持板30Aには、その中心部に回転軸25が挿通される回転軸挿通孔30A1が穿設され、該回転軸挿通孔30A1の周囲には、各連結部30C間に位置して例えば3個の他側支持軸挿嵌孔30A2(1個のみ図示)が穿設されている。軸方向の一側に位置する一側支持板30Bには、その中心部に後述する第2の太陽歯車33にスプライン結合される雌スプライン部30B1が形成されている。該雌スプライン部30B1の周囲には、他側支持板30Aの各他側支持軸挿嵌孔30A2に対応する位置に一側支持軸挿嵌孔30B2が穿設されている。
【0050】
歯車支持軸30Dは、軸方向の他側が他側支持軸挿嵌孔30A2に挿嵌され、一側が一側支持軸挿嵌孔30B2に挿嵌されることにより両持ち支持され、軸受31を介して各第1の遊星歯車29を回転可能に支持している。第1のキャリア30は、各歯車支持軸30Dによって各第1の遊星歯車29を回転可能に支持し、各第1の遊星歯車29が第1の太陽歯車28の周囲を公転することにより回転し、この回転を2段目の遊星歯車減速機構32に伝達するものである。
【0051】
32は油圧モータ12と1段目の遊星歯車減速機構24との間に配設された2段目の遊星歯車減速機構で、該2段目の遊星歯車減速機構32は、1段目の遊星歯車減速機構24の回転を減速して回転側ハウジング21を回転させるものである。そして、2段目の遊星歯車減速機構32は、第2の太陽歯車33、第2の遊星歯車36、第2のキャリア37等により構成されている。
【0052】
33は出力軸16の雌スプライン部16Aと第1の太陽歯車28との間に配置された第2の太陽歯車で、該第2の太陽歯車33は、回転軸25が挿通される貫通孔34を有する円筒体からなっている。第2の太陽歯車33の軸方向の他側は、第1のキャリア30の雌スプライン部30B1に連結され、軸方向の一側は、後述する第2の遊星歯車36に噛合している。
【0053】
第1の太陽歯車28側に位置する第2の太陽歯車33の軸方向他側の端面33Aは、第1のキャリア30内に位置して第1の遊星歯車29の端面29Aに対面している。そして、第2の太陽歯車33は、第2の太陽歯車33の外周側で端面33Aの近傍位置(端面33Aよりも一側位置)に設けられた止め輪35により、第1のキャリア30に対して軸方向に抜止めされている。
【0054】
第2の太陽歯車33の貫通孔34には、軸方向他側の端面33Aの近傍位置、即ち端面33Aよりも奥まって第1の太陽歯車28に対面する位置に段部34Aを設けている。これにより、第2の太陽歯車33の段部34Aと第1の太陽歯車28の端面28Aとは軸方向で対面している。そして、貫通孔34は、段部34Aよりも雄スプライン部26側を全長にわたって小径孔部34Bとして形成すると共に、第1の太陽歯車28側を大径な大径孔部34Cとして形成している。段部34Aには、後述する摺動部材39が配設される。小径孔部34Bの孔径は、回転軸25の雄スプライン部26と大径軸27Aの外径寸法よりも若干大きく形成されている。一方、大径孔部34Cの孔径は、第1の太陽歯車28の歯先外径寸法よりも大きく形成されている。これにより、第1の太陽歯車28の端面28A側は、大径孔部34C内に収容される構成となっている。
【0055】
また、回転側ハウジング21の筒部21A内には、各歯車を円滑に駆動するための潤滑油が回転軸25の軸線付近まで充填されている。即ち、貫通孔34と回転軸25の小径軸27Bとの間に形成される隙間S1の下側半分には、十分な量の潤滑油が満たされている。これにより、この隙間S1に溜まった潤滑油を後述する摺動部材39の周囲に流入させることができるので、摺動部材39の潤滑状態を良好に保つことができ、第1の太陽歯車28、第2の太陽歯車33、摺動部材39の耐久性を向上させることができる。
【0056】
36は第2の太陽歯車33と回転側ハウジング21の内周側に設けられた内歯車21Eとに噛合する複数の第2の遊星歯車を示している。該各第2の遊星歯車36は、第2の太陽歯車33の周囲で自転することにより回転側ハウジング21を回転させるもので、例えば第2の太陽歯車33の周囲に3個設けられている(1個のみ図示)。即ち、各第2の遊星歯車36は、1段目の遊星歯車減速機構24から第2の太陽歯車33に伝達された回転を減速することにより、大きなトルクをもって回転側ハウジング21を回転させるものである。
【0057】
37は固定側ハウジング19に非回転状態に取付けられ、各第2の遊星歯車36を回転可能に支持する第2のキャリアを示している。該第2のキャリア37は、内歯車21Eの歯先円径よりも僅かに小径な円板状をなし、各第2の遊星歯車36を軸方向から挟む他側支持板37A、一側支持板37Bと、他側支持板37Aと一側支持板37B間を連結し周方向に均等な間隔をもって離間した複数の連結部37Cと、他側支持板37Aと一側支持板37Bとの間で各第2の遊星歯車36を回転可能に支持する歯車支持軸37Dとにより構成されている。そして、第2のキャリア37は、他側支持板37Aと、一側支持板37Bと、連結部37Cとが、例えば鋳造等により一体形成されている。
【0058】
軸方向の他側に位置する他側支持板37Aには、その中心部に第2の太陽歯車33が挿通される太陽歯車挿通孔37A1が穿設され、該太陽歯車挿通孔37A1の周囲には、各連結部37C間に位置して例えば3個の他側支持軸挿嵌孔37A2(1個のみ図示)が穿設されている。軸方向の一側に位置する一側支持板37Bには、その中心部に回転軸25が挿通する回転軸挿通孔37B1と、固定側ハウジング19の雄スプライン部19Eにスプライン結合する雌スプライン部37B2とが形成されている。回転軸挿通孔37B1の周囲には、他側支持板37Aの各他側支持軸挿嵌孔37A2に対応する位置に一側支持軸挿嵌孔37B3が穿設されている。
【0059】
歯車支持軸37Dは、軸方向の他側が他側支持軸挿嵌孔37A2に挿嵌され、一側が一側支持軸挿嵌孔37B3に挿嵌されることにより両持ち支持され、軸受38を介して各第2の遊星歯車36を回転可能に支持している。第2のキャリア37は、雌スプライン部37B2を固定側ハウジング19の雄スプライン部19Eにスプライン結合しているので、非回転状態となっている。これにより、油圧モータ12の出力軸16の回転は、1段目の遊星歯車減速機構24で減速され、1段目の遊星歯車減速機構24から第2の太陽歯車33に伝達された後、第2の遊星歯車36によりさらに減速され、大きなトルクをもって回転側ハウジング21を回転させる構成となっている。
【0060】
39は第1の太陽歯車28と第2の太陽歯車33との間に設けられた摺動部材で、該摺動部材39は、例えば金属および樹脂等の材料により形成された同一形状を有する2個の半割体からなり、回転軸25の小径軸27Bの外周側に径方向から嵌合した状態で、第1の太陽歯車28と第2の太陽歯車33とが摺動可能に当接するものである。
【0061】
具体的には、摺動部材39は、図4ないし図7に示すように、回転軸25の小径軸27Bを挟んで円筒状に組合され第2の太陽歯車の貫通孔34内に挿通される第1の半割ブッシュ40と、該第1の半割ブッシュ40と同一形状を有する第2の半割ブッシュ41とにより構成されている。これにより、大径軸27Aと第1の太陽歯車28との間に位置する小径軸27Bに、第1の半割ブッシュ40と、第2の半割ブッシュ41とにより段付き円筒状に構成された摺動部材39を嵌合することができる構成となっている。
【0062】
第1の半割ブッシュ40は、貫通孔34の小径孔部34B内を軸方向に延びる半割筒部40Aと、第1の太陽歯車28の端面28と対面する貫通孔34の段部34Aの位置から径方向外側に延び、段部34Aおよび第1の太陽歯車28の端面28Aに当接する半円弧状の鍔部40Bとにより構成されている。鍔部40Bは、第1の太陽歯車28の端面28Aが当接する第1の太陽歯車当接面40B1と、該第1の太陽歯車当接面40B1の裏面側に位置し、第2の太陽歯車33の段部34Aが当接する第2の太陽歯車当接面40B2とを有している。ここで、図4に示すように、第1の半割ブッシュ40の軸方向長さ寸法は、L3となっている。
【0063】
一方、第2の半割ブッシュ41も、第1の半割ブッシュ40と同様に、貫通孔34の小径孔部34B内を軸方向に延びる半割筒部41Aと、第1の太陽歯車28の端面28と対面する貫通孔34の段部34Aの位置から径方向外側に延びる半円弧状の鍔部41Bとにより構成されている。鍔部41Bは、第1の太陽歯車28の端面28Aが当接する第1の太陽歯車当接面41B1と、第2の太陽歯車33の段部34Aが当接する第2の太陽歯車当接面41B2とを有している。第2の半割ブッシュ41の軸方向長さ寸法は、L3となっている。
【0064】
そして、第1,第2の半割ブッシュ40,41は、回転軸25の小径軸27Bを径方向から挟込むようにして当該小径軸27Bの外周側に嵌合する。この状態で、回転軸25を、雄スプライン部26側から第2の太陽歯車33の貫通孔34内に挿通することにより、第1,第2の半割ブッシュ40,41の半割筒部40A,41Aが、第2の太陽歯車33の小径孔部34Bに嵌合すると共に、第1,第2の半割ブッシュ40,41の鍔部40B,41Bが、第2の太陽歯車33の大径孔部34C内に配置され、第1,第2の半割ブッシュ40,41の鍔部40B,41Bが第2の太陽歯車33の段部34Aに係合する。この状態で、各鍔部40B,41Bの外周面40B3,41B3と第2の太陽歯車33の大径孔部34Cの内周面34C1との間には、環状の空隙34Dが形成される(図5参照)。
【0065】
これにより、回転軸25に設けられた第1の太陽歯車28の端面28Aと第2の太陽歯車33の段部34Aとは、第1,第2の半割ブッシュ40,41の鍔部40B,41Bに摺動可能に当接し、第1の太陽歯車28と回転軸25とは、第2の太陽歯車33によって軸方向に位置決めされる構成となっている。また、第1,第2の半割ブッシュ40,41の半割筒部40A,41Aは、第2の太陽歯車33の小径孔部34Bによって外周側から取囲まれ、鍔部40B,41Bは、第2の太陽歯車33の大径孔部34Cによって外周側から取囲まれている。これにより、減速装置18を搭載した油圧ショベル1の走行時に、第1,第2の半割ブッシュ40,41が遠心力によって回転軸25の中心から径方向へと離脱するのを、第2の太陽歯車33の貫通孔34によって抑える構成となっている。
【0066】
ここで、図5に示すように、第2の太陽歯車33の軸中心線O−Oから第1,第2の半割ブッシュ40,41の最外周となる鍔部40B,41Bの外周縁までの長さ寸法A1は、第2の太陽歯車33の軸中心線O−Oから第1の遊星歯車29の歯先29Bまでの長さ寸法A2よりも大きな値(A1>A2)に構成されている。
【0067】
また、第1,第2の半割ブッシュ40,41を構成する半割筒部40A,41Aの軸方向長さ寸法B1は、第2の太陽歯車33に設けられた貫通孔34の段部34Aと第1の遊星歯車29の軸方向一側の端面29Aとの間の長さ寸法B2よりも大きな値(B1>B2)に構成されている。
【0068】
従って、図6に示すように、回転軸25を軸方向に移動させて第1の遊星歯車29と第1の太陽歯車28との噛合を外したときに、第1,第2の半割ブッシュ40,41の鍔部40B,41Bが、第1の遊星歯車29の端面29Aに係合する。これにより、第1,第2の半割ブッシュ40,41が回転軸25の小径軸27Bから脱落するのを抑え、第1の太陽歯車28と第2の太陽歯車33との間で小径軸27Bに嵌合させておくことができる構成となっている。
【0069】
一方、第1の半割ブッシュ40を構成する半割筒部40A、および第2の半割ブッシュ41を構成する半割筒部41Aの内径側の半径寸法R1は、回転軸25の小径軸27Bの半径寸法R2よりも大きな値に形成されている。従って、回転軸25の小径軸27Bと第1の半割ブッシュ40の内周面40Cとの間、および回転軸25の小径軸27Bと第2の半割ブッシュ41の内周面41Cとの間には、それぞれ径方向の隙間S2が設けられている。これにより、第1,第2の半割ブッシュ40,41と回転軸25の小径軸27Bとは、非接触状態となり、回転軸25から第1,第2の半割ブッシュ40,41に対して大きな荷重が作用するのを抑えることができる構成となっている。
【0070】
さらに、第1,第2の半割ブッシュ40,41の半割筒部40A,41Aは、第2の太陽歯車33の貫通孔34の小径孔部34Bに隙間嵌めされ、各半割筒部40A,41Aの外周面と小径孔部34Bの内周面との間には、若干の隙間が設けられている。これにより、例えば製造公差等により、第1の太陽歯車28の端面28Aと第2の太陽歯車33の端面33Aとが相対的な傾きを生じたとしても、この傾きを、第1,第2の半割ブッシュ40,41の半割筒部40A,41Aと第2の太陽歯車33の小径孔部34Bの内周面との間に形成された隙間によって吸収することができる構成となっている。
【0071】
一方、第1の半割ブッシュ40の鍔部40Bのうち、第2の太陽歯車当接面40B2側には、略円形状をなす凹陥部40Dが周方向に間隔をもって2個設けられている。この凹陥部40Dは、鍔部40Bの外周面40B3と第2の太陽歯車当接面40B2との間を連通している。また、第2の半割ブッシュ41の鍔部41Bのうち、第2の太陽歯車当接面41B2側には、略円形状をなす凹陥部41Dが周方向に間隔をもって2個(1個のみ図示)設けられている。この凹陥部41Dは、鍔部41Bの外周面41B3と第2の太陽歯車当接面41B2との間を連通している。これにより、回転側ハウジング21内に充填された潤滑油は、各鍔部40B,41Bの外周面40B3,41B3と第2の太陽歯車33の大径孔部34Cの内周面34C1との間に形成された空隙34Dを通じて各凹陥部40D,41Dに導入され、各鍔部40B,41Bに設けられた第2の太陽歯車当接面40B2,41B2と第2の太陽歯車33の段部34Aとの摺動部分に供給される構成となっている。この場合、前記空隙34Dには、第1の太陽歯車28と各第1の遊星歯車29との噛合いによって噴出する潤滑油が導入されるので、各鍔部40B,41Bに設けられた第2の太陽歯車当接面40B2,41B2と第2の太陽歯車33の段部34Aとの摺動部分を効率良く潤滑することができる。
【0072】
本実施の形態による減速装置18は上述の如き構成を有するもので、油圧モータ12が作動して出力軸16が回転すると、この出力軸16の回転は、回転軸25を介して1段目の遊星歯車減速機構24を構成する第1の太陽歯車28に出力される。第1の太陽歯車28が回転すると、第1の遊星歯車29が第1の太陽歯車28の周囲を自転しつつ公転し、この第1の遊星歯車29の公転が第1のキャリア30に伝達される。
【0073】
第1のキャリア30の減速された回転は、2段目の遊星歯車減速機構32を構成する第2の太陽歯車33に伝達され、この第2の太陽歯車33に噛合する第2の遊星歯車36が、回転側ハウジング21の内歯車21Eに噛合しつつ自転する。ここで、第2の遊星歯車36を支持する第2のキャリア37は、固定側ハウジング19にスプライン結合されているので、第2の遊星歯車36の回転は、内歯車21Eを介して回転側ハウジング21に伝達される。
【0074】
このように、油圧モータ12の回転は、1段目の遊星歯車減速機構24、2段目の遊星歯車減速機構32によって2段減速された後、回転側ハウジング21に伝達される。これにより、駆動輪7を固定した回転側ハウジング21が大きなトルクをもって回転し、遊動輪6と駆動輪7とに巻回された履帯8が周回駆動されることにより、油圧ショベル1が走行する。
【0075】
この場合、回転軸25に設けられた第1の太陽歯車28と第2の太陽歯車33との間には、第1,第2の半割ブッシュ40,41の鍔部40B,41Bが設けられ、第1の太陽歯車28の軸方向一側の端面28Aは、各鍔部40B,41Bに当接し、軸方向他側の端面28Bは、回転側ハウジング21(蓋部21C)に設けられた摺動体21Gに当接している。これにより、第1の太陽歯車28と第2の太陽歯車33とは、第1,第2の半割ブッシュ40,41の鍔部40B,41Bを介して円滑に相対回転することができる。また、第1の太陽歯車28と回転軸25とを、第1,第2の半割ブッシュ40,41と回転側ハウジング21の摺動体21Gとの間で軸方向に位置決めすることができる。
【0076】
ここで、第1,第2の半割ブッシュ40,41の半割筒部40A,41Aは、第2の太陽歯車33の小径孔部34Bによって外周側から取囲まれ、鍔部40B,41Bは、第2の太陽歯車33の大径孔部34Cによって外周側から取囲まれている。これにより、例えば摺動体21Gが摩耗し、回転軸25が第2の太陽歯車33の貫通孔34内で軸方向に移動した状態で、回転軸25の回転によって第1,第2の半割ブッシュ40,41に遠心力が作用したとしても、これら第1,第2の半割ブッシュ40,41が、回転軸25の中心から径方向へと離脱するのを抑え、第2の太陽歯車33の小径孔部34B、大径孔部34C内に保持することができる。この結果、回転軸25の雄スプライン部26の外径寸法と第1の太陽歯車28の外径寸法との寸法差が小さい場合でも、第1,第2の太陽歯車28,33を、第1,第2の半割ブッシュ40,41の鍔部40B,41Bに安定して当接させることができ、第1,第2の太陽歯車28,33を長期に亘って円滑に回転させることができる。
【0077】
この場合、第1,第2の半割ブッシュ40,41を構成する半割筒部40A,41Aの内周面40C,41Cと、回転軸25の小径軸27Bの外周面との間には、径方向の隙間S2が設けられ、第1の半割ブッシュ40および第2の半割ブッシュ41と回転軸25とは、非接触状態となっている。この結果、減速装置18の作動時に、回転軸25の軸中心と第2の太陽歯車33の軸中心とが心ずれを生じた場合でも、第1,第2の半割ブッシュ40,41と第2の太陽歯車33とが接触するのを抑え、回転軸25から第1,第2の半割ブッシュ40,41に大きな荷重が作用するのを抑制することができるので、第1,第2の半割ブッシュ40,41の寿命を向上することができる。
【0078】
また、第1,第2の半割ブッシュ40,41を、第2の太陽歯車33の小径孔部34Bに挿通される半割筒部40A,41Aと、第2の太陽歯車33の段部34Aに係合する鍔部40B,41Bとにより構成している。これにより、半割筒部40A,41Aが挿通される小径孔部34Bの孔径を可及的に小さくすることができるので、第2の太陽歯車33の外周側から貫通孔34までの厚みを大きく(厚く)することができる。この結果、第1のキャリア30から第2の太陽歯車33に大きなトルクが作用しても、第2の太陽歯車33の捩じり強度を十分に確保することができ、第2の太陽歯車33の耐久性を高めることができる。
【0079】
また、第1,第2の半割ブッシュ40,41は、鍔部40B,41Bにより第1の太陽歯車28との摺動面を十分に確保することができる。これにより、第1の太陽歯車28は、第1,第2の半割ブッシュ40,41によって軸方向に位置決めされた状態で、鍔部40B,41Bに対して円滑に回転することができ、減速装置18の信頼性を高めることができる。
【0080】
さらに、第1,第2の半割ブッシュ40,41の半割筒部40A,41Aは、第2の太陽歯車33の貫通孔34の小径孔部34Bに隙間嵌めされ、各半割筒部40A,41Aの外周面と小径孔部34Bの内周面との間には、若干の隙間が設けられている。これにより、例えば製造公差等により、第1の太陽歯車28の端面28Aと第2の太陽歯車33の端面33Aとが相対的な傾きを生じたとしても、この傾きを、第1,第2の半割ブッシュ40,41の半割筒部40A,41Aと第2の太陽歯車33の小径孔部34Bの内周面との間に形成された隙間によって吸収することができる。この結果、第1,第2の半割ブッシュ40,41の鍔部40B,41Bが、第1の太陽歯車28との摺動によって偏摩耗するのを抑えることができ、第1,第2の半割ブッシュ40,41の寿命を向上することができる。
【0081】
ここで、本実施の形態による減速装置18は、回転側ハウジング21内に1段目、2段目の遊星歯車減速機構24,32を組付けるときの作業性を高めることができるもので、次に、1段目の遊星歯車減速機構24と2段目の遊星歯車減速機構32とを回転側ハウジング21に組付ける組付け手順について説明する。
【0082】
まず、図12に示すように、回転軸25、第1の遊星歯車29、第1のキャリア30、第2の太陽歯車33等からなる第1の組立体42と、第2の遊星歯車36、第2のキャリア37等からなる第2の組立体43とを別々に組立てた後、これら第1,第2の組立体42,43を、固定側ハウジング19、回転側ハウジング21に組込む。
【0083】
第1の組立体42を組立てる場合には、図8および図9に示すように、第1のキャリア30の雌スプライン部30B1に第2の太陽歯車33の軸方向他側をスプライン結合し、止め輪35により第2の太陽歯車33を軸方向に抜止めする。次に、回転軸25の小径軸27Bに対し、第1の半割ブッシュ40と第2の半割ブッシュ41とを径方向外側から嵌合させた状態で、回転軸25の雄スプライン部26側を、第1のキャリア30の回転軸挿通孔30A1、第2の太陽歯車33の貫通孔34に挿通する。これにより、第1,第2の半割ブッシュ40,41の半割筒部40A,41Aが、貫通孔34の小径孔部34Bに挿入(隙間嵌め)され、第1,第2の半割ブッシュ40,41の鍔部40B,41Bが、第2の太陽歯車33の段部34Aに係合する。
【0084】
次に、図10に示すように、内周側に軸受31を取付けた第1の遊星歯車29を、第1のキャリア30の他側支持板30Aと一側支持板30Bとの間に挿入して、歯車支持軸30Dを、他側支持板30Aの他側支持軸挿嵌孔30A2、軸受31、一側支持板30Bの一側支持軸挿嵌孔30B2に挿嵌し、固定ピン30D1により抜止めする。これにより、図11に示すように、第1の組立体42を組立てることができる。
【0085】
一方、第2の組立体43を組立てる場合には、図12に示すように、内周側に軸受38を取付けた第2の遊星歯車36を第2のキャリア37の他側支持板37Aと一側支持板37Bとの間に挿入して、歯車支持軸37Dを他側支持板37Aの他側支持軸挿嵌孔37A2、軸受38、一側支持板37Bの一側支持軸挿嵌孔37B3に挿嵌し、固定ピン(図示せず)により抜止めする。これにより、第2の組立体43を組立てることができる。
【0086】
このようにして組立てられた第1の組立体42と第2の組立体43とを、回転側ハウジング21に組付けるには、まず、図12に示すように、回転側ハウジング21の蓋部21Cを取外した状態で、第2の組立体43を回転側ハウジング21に組付ける。
【0087】
具体的には、第2の遊星歯車36を回転側ハウジング21の内歯車21Eに噛合した状態で、第2のキャリア37を回転側ハウジング21の筒部21A内に挿入する。そして、第2のキャリア37の雌スプライン部37B2を、固定側ハウジング19の雄スプライン部19Eにスプライン結合させ、第2のキャリア37を固定側ハウジング19の底部19Bに当接させる。これにより、第2のキャリア37は、第2の遊星歯車36を回転可能に支持しつつ、固定側ハウジング19に非回転状態で取付けられる。
【0088】
次に、第1の組立体42を回転側ハウジング21に組付ける場合には、図13に示すように、回転軸25を第2の太陽歯車33の貫通孔34内で軸方向の他側(出力軸16から離れる方向)に向けてスライド移動させる。この場合、摺動部材39は、軸方向の他側に向けてスライド移動させることができるので、回転軸25の小径軸27Bの軸方向長さ寸法L1は、第1の遊星歯車29の軸方向長さ寸法L2と、摺動部材39を構成する第1,第2の半割ブッシュ40,41の軸方向長さ寸法L3との合計長さ寸法よりも大きな値(L1>L2+L3)に設定されている(図4参照)。これにより、図13に示すように、第1の太陽歯車28と第1の遊星歯車29との噛合を外すことができる。
【0089】
一方、図5に示すように、第2の太陽歯車33の軸中心線O−Oから第1,第2の半割ブッシュ40,41の鍔部40B,41Bの外周縁(最外周)までの長さ寸法A1は、第2の太陽歯車33の軸中心線O−Oから第1の遊星歯車29の歯先29Bまでの長さ寸法A2よりも大きな値(A1>A2)に設定されている。また、第1,第2の半割ブッシュ40,41を構成する半割筒部40A,41Aの軸方向長さ寸法B1は、第2の太陽歯車33に設けられた貫通孔34の段部34Aと第1の遊星歯車29の軸方向一側の端面29Aとの間の長さ寸法B2よりも大きな値(B1>B2)に設定されている。
【0090】
これにより、図6に示すように、回転軸25を軸方向に移動させて第1の遊星歯車29と第1の太陽歯車28との噛合を外した場合でも、第1,第2の半割ブッシュ40,41の鍔部40B,41Bが、第1の遊星歯車29の端面29Aに引掛かることにより、第1,第2の半割ブッシュ40,41が回転軸25の小径軸27Bから脱落するのを抑えることができる。従って、第1,第2の半割ブッシュ40,41の半割筒部40A,41Aを、第2の太陽歯車33の小径孔部34B内に保持し、第1,第2の半割ブッシュ40,41を、第1の太陽歯車28と第2の太陽歯車33との間で小径軸27Bに嵌合させておくことができる。
【0091】
このようにして、第1の太陽歯車28と第1の遊星歯車29との噛合を外した状態で、図13に示すように、第2の太陽歯車33を第2のキャリア37の太陽歯車挿通孔37A1に挿通することにより、第2の太陽歯車33と複数(3個)の第2の遊星歯車36とをそれぞれ噛合させると共に、複数(3個)の第1の遊星歯車29を回転側ハウジング21の内歯車21Eにそれぞれ噛合させることができる。この場合、各第1の遊星歯車29は、第1の太陽歯車28と噛合していないので、自由に回転可能な状態となっており、簡単に内歯車21Eと噛合させることができる。
【0092】
次に、図14に示すように、第1の組立体42の第1のキャリア30、第1の遊星歯車29、第2の太陽歯車33を回転側ハウジング21の筒部21A内に収容する。この場合、回転軸25の小径軸27Bの軸方向長さ寸法L1は、第1,第2の半割ブッシュ40,41の軸方向長さ寸法L3と、出力軸16の雌スプライン部16Aと回転軸25の雄スプライン部26とのスプライン結合部26Aの軸方向長さ寸法L4との合計長さ寸法よりも大きな値(L1>L3+L4)に設定されている(図4参照)。
【0093】
これにより、第1の組立体42の第1のキャリア30、第1の遊星歯車29、第2の太陽歯車33を回転側ハウジング21の筒部21A内に収容したときに、第1の太陽歯車28と第1の遊星歯車29との噛合を外すと共に、回転軸25の雄スプライン部26と出力軸16の雌スプライン部16Aとの噛合を外すことができ、回転軸25を単独で回転させることができる。
【0094】
従って、回転軸25を回転させつつ出力軸16に向けてスライド移動させることにより、図15に示すように、雄スプライン部26を出力軸16の雌スプライン部16Aに噛合(スプライン結合)させると同時に、第1の太陽歯車28を複数の第1の遊星歯車29に噛合させることができる。このように、軽量な回転軸25を単独で回転させることにより、雄スプライン部26と出力軸16の雌スプライン部16A、第1の太陽歯車28と各第1の遊星歯車29が同時に噛合するように、回転軸25に設けられた雄スプライン部26および第1の太陽歯車28の各歯の位相を細かく調整することができる。この結果、出力軸16の雌スプライン部16Aに対する雄スプライン部26の噛合わせと、各第1の遊星歯車29に対する第1の太陽歯車28の噛合わせを容易に行うことができる。
【0095】
このようにして、出力軸16の雌スプライン部16Aと回転軸25の雄スプライン部26とをスプライン結合させると共に、第1の太陽歯車28を各第1の遊星歯車29にそれぞれ噛合させた状態で、回転側ハウジング21の筒部21Aに蓋部21Cをボルト等により固着する。これにより、1段目,2段目の遊星歯車減速機構24,32を回転側ハウジング21の筒部21A内に組込むことができ、減速装置18を組立てることができる。
【0096】
ここで、例えば図16に示す比較例のように、回転軸125の軸部127を構成する大径軸127Aの軸方向長さ寸法が長く、小径軸127Bの軸方向長さ寸法が短い場合には、回転軸125を出力軸116から離間する方向にスライド移動させようとすると、第1の半割ブッシュ140および第2の半割ブッシュ141に大径軸127Aが干渉してしまう。このため、回転軸125を、第1の太陽歯車128と第1の遊星歯車129との噛合が外れるまで移動させることができず、回転軸125の第1の太陽歯車128と第1の遊星歯車129とは常に噛合した状態を維持することになる。
【0097】
従って、この回転軸125を備えた第1の組立体を回転側ハウジング(図示せず)内に組付けるときには、第1の太陽歯車128と複数の第1の遊星歯車129とが噛合した状態で、第2の太陽歯車133と第2の遊星歯車136、出力軸116の雌スプライン部116Aと回転軸125の雄スプライン部126、各第1の遊星歯車129と回転側ハウジングの内歯車(図示せず)のそれぞれの歯を同時に噛合わせる必要があり、これら各歯の噛合いの調整作業に手間がかかるという問題がある。
【0098】
これに対し、本実施の形態では、回転軸25の小径軸27Bの軸方向長さ寸法L1を、第1の遊星歯車29の軸方向長さ寸法L2と、第1,第2の半割ブッシュ40,41の軸方向長さ寸法L3との合計長さ寸法よりも大きな値(L1>L2+L3)に設定している(図4参照)。
【0099】
これにより、回転軸25、第1の遊星歯車29、第1のキャリア30、第2の太陽歯車33等により構成された第1の組立体42を、第2の遊星歯車36、第2のキャリア37等からなる第2の組立体43を組付けた回転側ハウジング21内に組付けるときに、回転軸25を第2の太陽歯車33の貫通孔34内でスライド移動させて、第1の太陽歯車28と第1の遊星歯車29との噛合を外すことができる。この結果、複数(3個)の第1の遊星歯車29が回転可能な状態で、各第1の遊星歯車29を回転側ハウジング21の内歯車21Eにそれぞれ容易に噛合させると共に、第2の太陽歯車33と複数(3個)の第2の遊星歯車36とをそれぞれ容易に噛合させることができる。
【0100】
この場合、各第1の遊星歯車29と内歯車21Eの各歯、第2の太陽歯車33と各第2の遊星歯車36の各歯が同時に噛合うように調整する必要がないので、各第1の遊星歯車29を内歯車21Eに噛合させ、第2の太陽歯車33を各第2の遊星歯車36に噛合させるときの作業性を高めることができる。
【0101】
また、本実施の形態では、回転軸25の小径軸27Bの軸方向長さ寸法L1を、第1,第2の半割ブッシュ40,41の軸方向長さ寸法L3と、出力軸16の雌スプライン部16Aと回転軸25の雄スプライン部26とのスプライン結合部26Aの軸方向長さ寸法L4との合計長さ寸法よりも大きな値(L1>L3+L4)に設定している(図4参照)。
【0102】
これにより、図14に示すように、第1の組立体42の第1のキャリア30、第1の遊星歯車29、第2の太陽歯車33を回転側ハウジング21の筒部21A内に収容した状態で、第1の太陽歯車28と第1の遊星歯車29との噛合と、雄スプライン部26と出力軸16の雌スプライン部16Aとの噛合を外すことができ、回転軸25を単独で回転させることができる。この結果、回転軸25を回転させることにより、雄スプライン部26と出力軸16の雌スプライン部16A、第1の太陽歯車28と各第1の遊星歯車29が同時に噛合するように、雄スプライン部26および第1の太陽歯車28の各歯の位相を細かく調整し、雄スプライン部26を出力軸16の雌スプライン部16Aに噛合させると同時に、第1の太陽歯車28を各第1の遊星歯車29に噛合させることができる(図15参照)。
【0103】
しかも、本実施の形態では、第2の太陽歯車33の軸中心線O−Oから第1,第2の半割ブッシュ40,41の鍔部40B,41Bの外周縁(最外周)までの長さ寸法A1を、第2の太陽歯車33の軸中心線O−Oから第1の遊星歯車29の歯先29Bまでの長さ寸法A2よりも大きな値(A1>A2)に設定している。また、第1,第2の半割ブッシュ40,41を構成する半割筒部40A,41Aの軸方向長さ寸法B1を、第2の太陽歯車33に設けられた貫通孔34の段部34Aと第1の遊星歯車29の軸方向一側の端面29Aとの間の長さ寸法B2よりも大きな値(B1>B2)に設定している。
【0104】
これにより、回転軸25を軸方向に移動させて第1の遊星歯車29と第1の太陽歯車28との噛合を外した場合でも、第1,第2の半割ブッシュ40,41の鍔部40B,41Bは、半割筒部40A,41Aが第2の太陽歯車33の小径孔部34Bから抜出す前に、第1の遊星歯車29に係合する。従って、第1の太陽歯車28と第1の遊星歯車29との噛合を外すときに、第1,第2の半割ブッシュ40,41が不用意に回転軸25の小径軸27Bから脱落するのを防止することができる。この結果、第1,第2の半割ブッシュ40,41を、第1の太陽歯車28と第2の太陽歯車33との間で小径軸27Bに嵌合させておくことができるので、減速装置18を組立てるときの作業性を高めることができる。
【0105】
次に、図17および図18は本発明の第2の実施の形態を示し、第2の実施の形態の特徴は、摺動部材を構成する第1,第2の半割ブッシュの鍔部に凹凸面を設けたことにある。なお、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0106】
図中、51は第1の実施の形態による摺動部材39に代えて本実施の形態に用いられる摺動部材で、該摺動部材51は、第1の実施の形態による摺動部材39と同様に、同一形状をなす第1の半割ブッシュ52と第2の半割ブッシュ53とにより構成されている。
【0107】
第1の半割ブッシュ52は、第2の太陽歯車33の貫通孔34の小径孔部34B内を軸方向に延びる半割筒部52Aと、貫通孔34の段部34Aの位置から径方向外側に延びる半円弧状の鍔部52Bとにより構成されている。第1の半割ブッシュ52の内周面52Cと回転軸25の小径軸27Bとの間には、径方向の隙間S2が設けられ、半割筒部52Aの外周面と小径孔部34Bの内周面との間には僅かな隙間が設けられている。また、鍔部52Bは、第1の太陽歯車28の端面28Aが当接する第1の太陽歯車当接面52B1と、該第1の太陽歯車当接面52B1の裏面側に位置し、第2の太陽歯車33の段部34Aが当接する第2の太陽歯車当接面52B2とを有している。
【0108】
ここで、鍔部52Bの第1の太陽歯車当接面52B1には、第2の太陽歯車当接面52B2に向けて凹陥する溝状の凹部52Dが周方向に離間して複数個設けられている。即ち、第1の太陽歯車当接面52B1は、各凹部52Dにより凹凸面として形成され、第1の太陽歯車当接面52B1に第1の太陽歯車28の端面28Aが当接したときに、両者間の接触摩擦(摩擦抵抗)が増大する構成となっている。
【0109】
第2の半割ブッシュ53も、第1の半割ブッシュ52と同様に、半割筒部53Aと鍔部53Bとにより構成されている。第2の半割ブッシュ53の内周面53Cと回転軸25の小径軸27Bとの間には、径方向の隙間S2が設けられ、半割筒部53Aの外周面と小径孔部34Bの内周面との間には僅かな隙間が設けられている。また、鍔部53Bは、第1の太陽歯車28の端面28Aが当接する第1の太陽歯車当接面53B1と、第2の太陽歯車33の段部34Aが当接する第2の太陽歯車当接面53B2とを有している。
【0110】
鍔部53Bの第1の太陽歯車当接面53B1には、溝状の凹部53Dが周方向に離間して複数個設けられている。即ち、第1の太陽歯車当接面53B1は、各凹部53Dにより凹凸面として形成され、第1の太陽歯車当接面53B1に第1の太陽歯車28の端面28Aが当接したときに、両者間の接触摩擦(摩擦抵抗)が増大する構成となっている。
【0111】
第2の実施の形態による減速装置は上述の如き摺動部材51を有するもので、その基本的作動については、第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
【0112】
ここで、減速装置の作動時に第1の太陽歯車28が回転すると、第1,第2の半割ブッシュ52,53の鍔部52B,53Bは、第1の太陽歯車28と第2の太陽歯車33とに摺接する。この場合、鍔部52B,53Bの第1の太陽歯車当接面52B1,53B1は、第1の太陽歯車28の各歯の端部(エッジ)が間欠的に摺接することにより、早期に摩耗する虞がある。
【0113】
これに対し、本実施の形態では、第1,第2の半割ブッシュ52,53の鍔部52B,53Bのうち、第1の太陽歯車28が摺接する第1の太陽歯車当接面52B1,53B1に複数の凹部52D,53Dを設けている。これにより、第1,第2の半割ブッシュ52,53の第1の太陽歯車当接面52B1,53B1と、第1の太陽歯車28の端面28Aとの間の摩擦抵抗が増大し、第1,第2の半割ブッシュ52,53は、第1の太陽歯車28に連れまわされる。
【0114】
このため、第1,第2の半割ブッシュ52,53は、平坦面からなる第2の太陽歯車33の段部34Aに対して積極的に摺動し、第1の太陽歯車28との摺動が抑制される。この結果、第1,第2の半割ブッシュ52,53が第1の太陽歯車28の各歯のエッジによって早期に摩耗するのを抑えることができ、第1,第2の半割ブッシュ52,53の寿命を向上することができる。
【0115】
次に、図19および図20は本発明の第3の実施の形態を示し、第3の実施の形態の特徴は、摺動部材を構成する第1の半割ブッシュと第2の半割ブッシュとに面取部を設けたことにある。なお、第3の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0116】
図中、61は第1の実施の形態による摺動部材39に代えて本実施の形態に用いられる摺動部材で、該摺動部材61は、第1の実施の形態による摺動部材39と同様に、同一形状をなす第1の半割ブッシュ62と第2の半割ブッシュ63とにより構成されている。
【0117】
第1の半割ブッシュ62は、第2の太陽歯車33の貫通孔34の小径孔部34B内を軸方向に延びる半割筒部62Aと、貫通孔34の段部34Aの位置から径方向外側に延びる半円弧状の鍔部62Bとにより構成されている。第1の半割ブッシュ62の内周面62Cと回転軸25の小径軸27Bとの間には、径方向の隙間S2が設けられ、半割筒部62Aの外周面と小径孔部34Bの内周面との間には僅かな隙間が設けられている。また、鍔部62Bは、第1の太陽歯車28の端面28Aが当接する第1の太陽歯車当接面62B1と、該第1の太陽歯車当接面62B1の裏面側に位置し、第2の太陽歯車33の段部34Aが当接する第2の太陽歯車当接面62B2とを有している。
【0118】
ここで、第1の半割ブッシュ62の内周面62Cと外周面62Dとの間には、第2の半割ブッシュ63と組合されたときに当該第2の半割ブッシュ63と当接するL字状の組合せ面62Eが形成されている。組合せ面62Eは、第2の半割ブッシュ63の半割筒部63Aと当接する半割筒部当接部62E1と、第2の半割ブッシュ63の鍔部63Bと当接する鍔部当接部62E2とにより形成され、鍔部当接部62E2と第1の太陽歯車当接面62B1とが交わる角隅部には、当該角隅部を切欠くことにより面取部62Fが形成されている。
【0119】
第2の半割ブッシュ63も、第1の半割ブッシュ62と同様に、半割筒部63Aと鍔部63Bとにより構成されている。第2の半割ブッシュ63の内周面63Cと回転軸25の小径軸27Bとの間には、径方向の隙間S2が設けられ、半割筒部63Aの外周面と小径孔部34Bの内周面との間には僅かな隙間が設けられている。また、鍔部63Bは、第1の太陽歯車28の端面28Aが当接する第1の太陽歯車当接面63B1と、第2の太陽歯車33の段部34Aが当接する第2の太陽歯車当接面63B2とを有している。
【0120】
ここで、第2の半割ブッシュ63の内周面63Cと外周面63Dとの間には、L字状の組合せ面63Eが形成されている。組合せ面63Eは、第2の半割ブッシュ63の半割筒部63Aと当接する半割筒部当接部63E1と、第2の半割ブッシュ63の鍔部63Bと当接する鍔部当接部63E2とにより形成され、鍔部当接部63E2と第1の太陽歯車当接面63B1とが交わる角隅部には、当該角隅部を切欠くことにより面取部63Fが形成されている。
【0121】
第3の実施の形態による減速装置は上述の如き摺動部材61を有するもので、その基本的作動については、第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
【0122】
ここで、第1の半割ブッシュ62と第2の半割ブッシュ63とが軸方向にずれを生じることにより、第1,第2の半割ブッシュ62,63の鍔部62B,63Bの組合わせ部分に段差が生じた場合には、この段差に第1の太陽歯車28の各歯のエッジが引っ掛かる虞がある。
【0123】
これに対し、本実施の形態では、第1の半割ブッシュ62の組合せ面62Eと第1の太陽歯車当接面62B1とが交わる角隅部に面取部62Fを設けると共に、第2の半割ブッシュ63の組合せ面63Eと第1の太陽歯車当接面63B1とが交わる角隅部に面取部63Fを設ける構成としている。
【0124】
これにより、第1,第2の半割ブッシュ62,63が軸方向にずれ、鍔部62B,63B間に段差が生じたとしても、第1の太陽歯車28の各歯のエッジは、第1,第2の半割ブッシュ62,63の面取部62F,63Fに滑らかに接触する。これにより、第1太陽歯車28の各歯のエッジが、鍔部62B,63B間の段差に引っ掛かるのを抑制することができる。この結果、第1,第2の半割ブッシュ62,63の寿命を向上することができると共に、回転軸25(第1の太陽歯車28)を安定して回転させることができる。
【0125】
なお、上述した第1の実施の形態では、摺動部材39を構成する第1,第2の半割ブッシュ40,41を、半割筒部40A,41Aと、鍔部40B,41Bとにより断面L字状に形成した場合を例示している。
【0126】
しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図21に示す変形例のような摺動部材71を形成してもよい。即ち、摺動部材71は、鍔部をもたない厚肉な半円筒状をなす第1の半割ブッシュ72と、該第1の半割ブッシュ72と同一形状をなす第2の半割ブッシュ73とにより構成してもよい。この場合には、第1,第2の半割ブッシュ72,73は、回転軸25の小径軸27Bに径方向外側から嵌合した状態で、第2の太陽歯車33の大径孔部34Cに隙間嵌めすることができる。
【0127】
また、上述した第1の実施の形態では、第1の半割ブッシュ40と第2の半割ブッシュ41とを同一形状に形成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば第1,第2の半割ブッシュ40,41の半割筒部40A,41Aの軸方向の長さ寸法が異なっても良く、両者は必ずしも同一形状である必要はない。また、第1,第2の半割ブッシュ40,41の分割面は、必ずしも平面である必要はない。
【0128】
また、上述した第2の実施の形態では、第1,第2の半割ブッシュ52,53の第1の太陽歯車当接面52B1,53B1に凹部52D,53Dを形成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば第1の太陽歯車当接面に第1の太陽歯車の端面の歯溝部分に嵌合する凸部を設けてもよい。また、第1の太陽歯車当接面に表面粗さを粗くするシートを貼付したり、加工を施したりしてもよい。
【0129】
さらに、上述した各実施の形態では、減速装置18を油圧ショベル1の走行装置11に用いた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば油圧クレーン等の他の建設機械の走行装置や、ロープを巻取るウインチ装置等に広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0130】
11 走行装置
12 油圧モータ(回転源)
16 出力軸
16A 雌スプライン部
18 減速装置
19 固定側ハウジング
21 回転側ハウジング
21E 内歯車
24 1段目の遊星歯車減速機構
25 回転軸
26 雄スプライン部
26A スプライン結合部
27 軸部
27A 大径軸
27B 小径軸
28 第1の太陽歯車
28A 端面
29 第1の遊星歯車
29A 端面
29B 歯先
30 第1のキャリア
32 2段目の遊星歯車減速機構
33 第2の太陽歯車
33A 端面
34 貫通孔
34A 段部
34B 小径孔部
34C 大径孔部
36 第2の遊星歯車
37 第2のキャリア
39,51,61,71 摺動部材
40,52,62,72 第1の半割ブッシュ
40A,41A,52A,53A,62A,63A 半割筒部
40B,41B,52B,53B,62B,63B 鍔部
40B1,41B1,52B1,53B1,62B1,63B1 第1の太陽歯車当接面
40B2,41B2,52B2,53B2,62B2,63B2 第2の太陽歯車当接面
40C,41C,52C,53C,62C,63C 内周面
52D,53D 凹部
41,53,63,73 第2の半割ブッシュ
62E,63E 組合せ面
62F,63F 面取部
図1
図2
図3
図4
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