特許第6368691号(P6368691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6368691インクジェットヘッド及びインクジェットプリンタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368691
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】インクジェットヘッド及びインクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20180723BHJP
   B41J 2/045 20060101ALI20180723BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20180723BHJP
   B41J 2/205 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   B41J2/01 403
   B41J2/045
   B41J2/14 303
   B41J2/205
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-135247(P2015-135247)
(22)【出願日】2015年7月6日
(65)【公開番号】特開2017-13461(P2017-13461A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】日吉 光幸
(72)【発明者】
【氏名】仁田 昇
【審査官】 村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−086712(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/051073(WO,A1)
【文献】 特開2005−305912(JP,A)
【文献】 特開2013−107303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 〜 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが充填される圧力室と、
前記圧力室に連通するノズルと、
前記圧力室内の容積を変化させて当該圧力室に連通する前記ノズルからインクドロップを吐出させるアクチュエータと、
インクドロップの吐出時には、前記圧力室内の容積を拡張させる拡張パルスと収縮させる収縮パルスとを含む駆動信号を出力し、インクを微振動させるプリカーサ微振動時には、前記ノズルからインクドロップが吐出しない程度に前記圧力室の容積を変化させるプリカーサ信号を出力する駆動回路と、
を具備し、
前記駆動回路は、前記駆動信号により前記アクチュエータに生じる電界よりも、前記プリカーサ信号により前記アクチュエータに生じる電界の方が小さくなるように、3つの隣り合うノズルに対して前記拡張パルス又は前記収縮パルスと同電位の電圧を印加し、続いて前記3つの隣り合うノズルのうち中央のノズルに印加される電圧を先にグラウンド電位に戻し、その後、遅れて両隣のノズルに印加される電圧をグラウンド電位に戻すようにして、前記プリカーサ信号を出力するインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記駆動回路は、前記駆動信号により前記アクチュエータに生じる電界に対して、前記プリカーサ信号により前記アクチュエータに生じる電界が半分となるように前記プリカーサ信号を出力する、請求項1記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記駆動回路は、階調印刷の最大ドロップ数をNとしたとき、n(n<N)ドロップを吐出させる駆動信号の後に、(N−n)回のプリカーサ微振動を実行させるプリカーサ信号を出力する、請求項1または2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記駆動回路は、前記インクドロップを吐出させないときには、前記最大ドロップ数N回のプリカーサ微振動を実行させるプリカーサ信号を出力する、請求項3に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか1に記載のインクジェットヘッドと、
インクタンク内のインクを前記インクジェットヘッドに供給するポンプと、
を具備するインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インクジェットヘッド及びこのヘッドを用いたインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドは、インクが充填される圧力室と、圧力室に設けられたアクチュエータと、圧力室に連通するノズルとを備える。そしてインクジェットヘッドは、アクチュエータに駆動信号が印加されると、このアクチュエータの作用により圧力室が振動し、圧力室内部の容積が変化して、この圧力室に連通するノズルからインクドロップが吐出される。
【0003】
この種のインクジェットヘッドにおいて、インクドロップを吐出させないノズルは、インクのメニスカスが変化しないため、間欠吐出性能が劣化するという問題がある。そこで間欠吐出性能を向上させるために、インクジェットヘッドにプリカーサ微振動を実行させる技術が知られている。プリカーサ微振動は、インクがノズルから吐出しない程度にインクのメニスカスを前もって振動させる技術である。
【0004】
この技術を実現させるために、インクジェットヘッドの駆動回路は、アクチュエータにプリカーサ微振動のためのパルス信号、いわゆるプリカーサ信号を印加する。従来のインクジェットヘッドにおいては、駆動信号と同電位のプリカーサ信号がアクチュエータに生じていた。このため、駆動信号の印加時間、すなわちインクドロップの吐出に係る時間だけでなく、プリカーサ信号の印加時間、すなわちインクドロップの吐出に係らない時間においても、アクチュエータに対して同電位の電界が生じるため、余分な電力が消費されている懸念があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008‐126535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、プリカーサ微振動のときの消費電力を削減できるインクジェットヘッド及びこのヘッドを用いたインクジェットプリンタを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態において、インクジェットヘッドは、インクが充填される圧力室と、圧力室に連通するノズルと、圧力室内の容積を変化させて当該圧力室に連通するノズルからインクドロップを吐出させるアクチュエータと、駆動回路と、を備える。駆動回路は、インクドロップの吐出時には、圧力室内の容積を拡張させる拡張パルスと収縮させる収縮パルスとを含む駆動信号を出力し、インクを微振動させるプリカーサ微振動時には、ノズルからインクドロップが吐出しない程度に圧力室の容積を変化させるプリカーサ信号を出力する。そして、駆動回路は、駆動信号によりアクチュエータに生じる電界よりも、プリカーサ信号によりアクチュエータに生じる電界の方が小さくなるように、3つの隣り合うノズルに対して前記拡張パルス又は前記収縮パルスと同電位の電圧を印加し、続いて前記3つの隣り合うノズルのうち中央のノズルに印加される電圧を先にグラウンド電位に戻し、その後、遅れて両隣のノズルに印加される電圧をグラウンド電位に戻すようにして、プリカーサ信号を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】インクジェットヘッドの一部を分解して示す斜視図。
図2】インクジェットヘッドの前方部における縦断面図。
図3】インクジェットヘッドの前方部における横断面図。
図4】インクジェットヘッドの動作原理を説明するための図。
図5】インクジェットプリンタのハードウェア構成を示すブロック図。
図6】インクジェットプリンタにおけるヘッド駆動回路の具体的構成を示すブロック図。
図7】ヘッド駆動回路に含まれるバッファ回路とスイッチ回路との概略回路図。
図8】従来の駆動信号及びプリカーサ信号とアクチュエータに生じる電界との関係を示す波形図。
図9】本実施形態の駆動信号及びプリカーサ信号とアクチュエータに生じる電界との関係を示す波形図。
図10】最大ドロップを7ドロップとする階調印刷において、5ドロップを吐出させたときにアクチュエータに生じる電界と吐出チャネルにおける圧力室の圧力とを示すグラフ。
図11】最大ドロップを7ドロップとする階調印刷において、2ドロップを吐出させたときにアクチュエータに生じる電界と吐出チャネルにおける圧力室の圧力とを示すグラフ。
図12】最大ドロップを7ドロップとする階調印刷において、1ドロップも吐出しないときにアクチュエータに生じる電界と吐出チャネルにおける圧力室の圧力とを示すグラフ。
図13】駆動電流の測定回路を示す概略図。
図14】従来のプリカーサ信号がインクジェットヘッドに印加されたときの駆動電流を示す波形図。
図15】本実施形態のプリカーサ信号がインクジェットヘッドに印加されたときの駆動電流を示す波形図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係るインクジェットヘッド及びこのヘッドを用いたインクジェットプリンタについて、図面を用いて説明する。因みにこの実施形態では、インクジェットヘッドとしてシェアモードタイプのインクジェットヘッド100(図1を参照)を例示する。
【0010】
はじめに、インクジェットヘッド100(以下、ヘッド100と略称する)の構成について、図1乃至図3を用いて説明する。図1は、ヘッド100の一部を分解して示す斜視図、図2は、ヘッド100の前方部における縦断面図、図3は、ヘッド100の前方部における横断面図である。
【0011】
ヘッド100は、ベース基板9を有する。ヘッド100は、ベース基板9の前方側の上面に第1の圧電部材1を接合し、この第1の圧電部材1の上に第2の圧電部材2を接合する。接合された第1の圧電部材1と第2の圧電部材2とは、図2の矢印で示すように、板厚方向に沿って互いに相反する方向に分極する。
【0012】
ベース基板9は、誘電率が小さく、かつ圧電部材1,2との熱膨張率の差が小さい材料を用いて形成する。ベース基板9の材料としては、例えばアルミナ(Al203)、窒化珪素(Si3N4)、炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等がよい。一方、圧電部材1,2の材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)等が用いられる。
【0013】
ヘッド100は、接合された圧電部材1,2の先端側から後端側に向けて、多数の長尺な溝3を設ける。各溝3は、間隔が一定でありかつ平行である。各溝3は、先端が開口し、後端が上方に傾斜する。
【0014】
ヘッド100は、各溝3の側壁及び底面に電極4を設ける。電極4は、ニッケル(Ni)と金(Au)との二層構造となっている。電極4は、例えばメッキ法によって各溝3内に均一に成膜される。電極4の形成方法は、メッキ法に限定されない。他に、スパッタ法や蒸着法等を用いることもできる。
【0015】
ヘッド100は、各溝3の後端から第2の圧電部材2の後部上面に向けて引出し電極10を設ける。引出し電極10は、前記電極4から延出する。
【0016】
ヘッド100は、天板6とオリフィスプレート7とを備える。天板6は、各溝3の上部を塞ぐ。オリフィスプレート7は、各溝3の先端を塞ぐ。ヘッド100は、天板6とオリフィスプレート7とで囲まれた各溝3によって、複数の圧力室15を形成する。圧力室15は、例えば深さが300μmで幅が80μmの形状を有し、169μmのピッチで平行に配列される。このような圧力室15は、インク室とも称される。
【0017】
天板6は、その内側後方に共通インク室5を備える。オリフィスプレート7は、各溝3と対向する位置にノズル8を穿設する。ノズル8は、対向する溝3つまりは圧力室15と連通する。ノズル8は、圧力室15側から反対側のインク吐出側に向けて先細りの形状をなす。ノズル8は、隣り合う3つの圧力室15に対応したものを1セットとし、溝3の高さ方向(図2の紙面の上下方向)に一定の間隔でずれて形成される。
【0018】
ヘッド100は、ベース基板9の後方側の上面に、導電パターン13が形成されたプリント基板11を接合する。そしてヘッド100は、このプリント基板11に、後述するヘッド駆動回路101を実装したドライブIC12を搭載する。ドライブIC12は、導電パターン13に接続する。導電パターン13は、各引出し電極10とワイヤボンディングにより導線14で結合する。
【0019】
ヘッド100が有する圧力室15、電極4及びノズル8の組をチャネルと称する。すなわちヘッド100は、溝3の数Nだけチャネルch.1,ch.2,…,ch.Nを有する。
【0020】
次に、上記の如く構成されたヘッド100の動作原理について、図4を用いて説明する。
図4の(a)は、中央の圧力室15bと、この圧力室15bに隣接する両隣の圧力室15a,15cとの各壁面にそれぞれ配設された電極4の電位がいずれもグラウンド電位GNDである状態を示している。この状態では、圧力室15aと圧力室15bとで挟まれた隔壁16a及び圧力室15bと圧力室15cとで挟まれた隔壁16bは、いずれも何ら歪み作用を受けない。
【0021】
図4の(b)は、中央の圧力室15bの電極4に負極性の電圧−Vが印加され、両隣の圧力室15a,15cの電極4に正極性の電圧+Vが印加された状態を示している。この状態では、各隔壁16a,16bに対して、圧電部材1,2の分極方向と直交する方向に電圧Vの2倍の電界が作用する。この作用により、各隔壁16a,16bは、圧力室15bの容積を拡張するようにそれぞれ外側に変形する。
【0022】
図4の(c)は、中央の圧力室15bの電極4に正極性の電圧+Vが印加され、両隣の圧力室15a,15cの電極4に負極性の電圧−Vが印加された状態を示している。この状態では、各隔壁16a,16bに対して、図4(b)のときとは逆の方向に電圧Vの2倍の電界が作用する。この作用により、各隔壁16a,16bは、圧力室15bの容積を収縮するようにそれぞれ内側に変形する。
【0023】
圧力室15bの容積が拡張または収縮された場合、圧力室15b内に圧力振動が発生する。この圧力振動により、圧力室15b内の圧力が高まり、圧力室15bに連通するノズル8からインクドロップが吐出される。
【0024】
このように、各圧力室15a,15b,15cを隔てる隔壁16a,16bは、当該隔壁16a,16bを壁面とする圧力室15bの内部に圧力振動を与えるためのアクチュエータとなる。つまり各圧力室15は、それぞれ隣接する圧力室15とアクチュエータを共有する。このため、ヘッド駆動回路101は、各圧力室15を個別に駆動することができない。ヘッド駆動回路101は、各圧力室15をn(nは2以上の整数)個おきに(n+1)個のグループに分割して駆動する。本実施形態では、ヘッド駆動回路101が、各圧力室15を2つおきに3つの組に分けて分割駆動する、いわゆる3分割駆動の場合を例示する。なお、3分割駆動はあくまでも一例であり、4分割駆動または5分割駆動などであってもよい。
【0025】
次に、インクジェットプリンタ200(以下、プリンタ200と略称する)の構成について、図5図7を用いて説明する。図5は、プリンタ200のハードウェア構成を示すブロック図、図6は、ヘッド駆動回路101の具体的構成を示すブロック図、図7は、ヘッド駆動回路101に含まれるバッファ回路1013とスイッチ回路1014との概略回路図である。プリンタ200は、オフィス用プリンタ、バーコードプリンタ、POS用プリンタ、産業用プリンタ等に適用されるものである。
【0026】
プリンタ200は、CPU(Central Processing Unit)201、ROM(Read Only Memory)202、RAM(Random Access Memory)203、操作パネル204、通信インターフェース205、搬送モータ206、モータ駆動回路207、ポンプ208、ポンプ駆動回路209及びヘッド100を備える。またプリンタ200は、アドレスバス,データバスなどのバスライン211を含む。そしてプリンタ200は、このバスライン211に、CPU201、ROM202、RAM203、操作パネル204、通信インターフェース205、モータ駆動回路207、ポンプ駆動回路209及びヘッド100の駆動回路101をそれぞれ直接あるいは入出力回路を介して接続する。
【0027】
CPU201は、コンピュータの中枢部分に相当する。CPU201は、オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムに従って、プリンタ200としての各種の機能を実現するべく各部を制御する。
【0028】
ROM202は、上記コンピュータの主記憶部分に相当する。ROM202は、上記のオペレーティングシステムやアプリケーションプログラムを記憶する。ROM202は、CPU201が各部を制御するための処理を実行する上で必要なデータを記憶する場合もある。
【0029】
RAM203は、上記コンピュータの主記憶部分に相当する。RAM203は、CPU201が処理を実行する上で必要なデータを記憶する。またRAM203は、CPU201によって情報が適宜書き換えられるワークエリアとしても利用される。ワークエリアは、印刷データが展開される画像メモリを含む。
【0030】
操作パネル204は、操作部と表示部とを有する。操作部は、電源キー、用紙フィードキー、エラー解除キー等のファンクションキーを配置したものである。表示部は、プリンタ200の種々の状態を表示可能なものである。
【0031】
通信インターフェース205は、LAN(Local Area Network)等のネットワークを介して接続されるクライアント端末から印刷データを受信する。通信インターフェース205は、例えばプリンタ200にエラーが発生したとき、エラーを通知する信号をクライアント端末に送信する。
【0032】
モータ駆動回路207は、搬送モータ206の駆動を制御する。搬送モータ206は、印刷用紙などの記録媒体を搬送する搬送機構の駆動源として機能する。搬送モータ206が駆動すると、搬送機構が記録媒体の搬送を開始する。搬送機構は、記録媒体をヘッド100による印刷位置まで搬送する。搬送機構は、印刷を終えた記録媒体を図示しない排出口からプリンタ200の外部に排出する。
【0033】
ポンプ駆動回路209は、ポンプ208の駆動を制御する。ポンプ208が駆動すると、図示しないインクタンク内のインクがヘッド100に供給される。
【0034】
ヘッド駆動回路101は、印刷データに基づきヘッド100のチャネル群102を駆動する。ヘッド駆動回路101は、図6に示すように、パターンジェネレータ1011、ロジック回路1012、バッファ回路1013及びスイッチ回路1014を含む。
【0035】
パターンジェネレータ1011は、吐出当該波形、吐出両隣波形、非吐出当該波形、非吐出両隣波形等の波形パターンを生成する。パターンジェネレータ1011で生成された波形パターンのデータは、ロジック回路1012に供給される。
【0036】
ロジック回路1012は、画像メモリから1ラインずつ読み出される印刷データの入力を受け付ける。印刷データが入力されると、ロジック回路1012は、ヘッド100の隣り合う3つのチャネルch.(i-1),ch.i,ch.(i+1)を1セットとし、その中央のチャネルch.iがインクを吐出する吐出チャネルなのか、インクを吐出しない非吐出チャネルなのかを決定する。そして、チャネルch.iが吐出チャネルの場合、ロジック回路1012は、このチャネルch.iに対して吐出当該波形のパターンデータを出力し、かつ、その両隣のチャネルch.(i-1),ch.(i+1)に対して吐出両隣波形のパターンデータを出力する。チャネルch.iが非吐出チャネルの場合、ロジック回路1012は、このチャネルch.iに対して非吐出当該波形のパターンデータを出力し、かつ、その両隣のチャネルch.(i-1),ch.(i+1)に対して非吐出両隣波形のパターンデータを出力する。ロジック回路1012から出力される各パターンデータは、バッファ回路1013に与えられる。
【0037】
バッファ回路1013は、正電圧Vccの電源と負電圧−Vの電源とを接続する。またバッファ回路1013は、図7に示すように、ヘッド100のチャネルch.1,ch.2,…,ch.N毎にプリバッファPB1,PB2,…,PBNを備える。なお、図7では、隣り合う3つのチャネルch.(i-1),ch.i,ch.(i+1)にそれぞれ対応したプリバッファPB(i-1),PBi,PB(i+1)を示す。
【0038】
各プリバッファPB1,PB2,…,PBNは、それぞれ第1〜第3の3つのバッファB1,B2,B3を有する。各バッファB1,B2,B3は、それぞれ正電圧Vccの電源と負電圧−Vの電源とに接続される。
【0039】
各プリバッファPB1,PB2,…,PBNにおいて、第1〜第3のバッファB1,B2,B3の出力は、ロジック回路1012から供給される信号のレベルに応じて変化する。ロジック回路1012からは、対応するチャネルch.k(1≦k≦N)が吐出チャネルなのか、非吐出チャネルなのか、吐出チャネルまたは非吐出チャネルに隣接するチャネルなのかによってそれぞれ異なるレベルの信号が供給される。ハイレベル信号が供給された第1〜第3のバッファB1,B2,B3は、正電圧Vccレベルの信号を出力する。ローレベル信号が供給された第1〜第3のバッファB1,B2,B3は、負電圧−Vレベルの信号を出力する。
【0040】
各プリバッファPB1,PB2,…,PBNの出力、すなわち第1〜第3のバッファB1,B2,B3の出力信号は、スイッチ回路1014に与えられる。
【0041】
スイッチ回路1014は、正電圧Vccの電源と、正電圧+Vの電源と、負電圧−Vの電源とグラウンド電位GNDとを接続する。正電圧Vccは正電圧+Vよりも高い。その代表的な値としては、正電圧Vccが24ボルトであり、正電圧+Vが15ボルトである。この場合、負電圧−Vは−15ボルトである。
【0042】
スイッチ回路1014は、図7に示すように、ヘッド100のチャネルch.1,ch.2,…,ch.N毎にドライバDR1,DR2,…,DRNを有する。なお、図7では、隣り合う3つのチャネルch.(i-1),ch.i,ch.(i+1)にそれぞれ対応したドライバDR (i-1),DRi,DR(i+1)を示す。
【0043】
各ドライバDR1,DR2,…,DRNは、それぞれPMOSタイプの電界効果トランジスタT1(以下、第1トランジスタT1と称する)と、NMOSタイプの2つの電界効果トランジスタT2,T3(以下、第2トランジスタT2,第3トランジスタT3と称する)とを含む。各ドライバDR1,DR2,…,DRNは、それぞれ正電圧+Vの電源とグラウンド電位GNDとの間に、第1トランジスタT1と第2トランジスタT2との直列回路を接続し、さらにこの第1トランジスタT1と第2トランジスタT2との接続点と負電圧−Vの電源との間に、第3トランジスタT3を接続する。また各ドライバDR1,DR2,…,DRNは、それぞれ第1トランジスタT1のバックゲートを正電圧Vccの電源に接続し、第2トランジスタ及び第3トランジスタのバックゲートをそれぞれ負電圧−Vの電源に接続する。さらに各ドライバDR1,DR2,…,DRNは、それぞれ対応するプリバッファPB1,PB2,…,PBNの第1のバッファB1を第2トランジスタT2のゲートに接続し、第2のバッファB2を第1トランジスタT1のゲートに接続し、第3のバッファB3を第3トランジスタT3のゲートに接続する。そして各ドライバDR1,DR2,…,DRNは、それぞれ第1トランジスタT1と第2トランジスタT2との接続点の電位を、対応するチャネルch.1,ch.2,…,ch.Nの電極4に印加する。
【0044】
したがって、第1トランジスタT1は、第2のバッファB2から正電圧Vccレベルの信号が入力されるとオフし、負電圧−Vレベルの信号が入力されるとオンする。第2トランジスタT2は、第1のバッファB1から正電圧Vccレベルの信号が入力されるとオンし、負電圧−Vレベルの信号が入力されるとオフする。第3トランジスタT3は、第3のバッファB3から正電圧Vccレベルの信号が入力されるとオンし、負電圧−Vレベルの信号が入力されるとオフする。
【0045】
このような構成のドライバDR1,DR2,…,DRNは、第1トランジスタT1がオンし、第2トランジスタT2と第3トランジスタT3とがオフすると、対応するチャネルch.1,ch.2,…,ch.Nの電極4に正電圧+Vを印加する。ドライバDR1,DR2,…,DRNは、第1トランジスタT1と第3トランジスタT3とが同時にオフし、第2トランジスタT2がオンすると、対応するチャネルch.1,ch.2,…,ch.Nの電極4の電位をグラウンドGNDレベルとする。ドライバDR1,DR2,…,DRNは、第1トランジスタT1と第2トランジスタT2とが同時にオフし、第3トランジスタT3がオンすると、対応するチャネルch.1,ch.2,…,ch.Nの電極4に負電圧−Vを印加する。
【0046】
次に、ヘッド駆動回路101からチャネル群102に供給される駆動信号及びプリカーサ信号とアクチュエータに生じる電界との関係について説明する。始めに、従来のパルス信号と電界との関係について、図8を用いて説明する。
【0047】
図8は、3つの隣り合うチャネルch.a、ch.b、ch.cのうち、中央のチャネルch.bからインクドロップを1ドロップ吐出し、その後、この中央のチャネルch.bにおいてプリカーサ微振動を生じさせる場合である。
【0048】
パルス波形P1は、チャネルch.aに供給される駆動信号及びプリカーサ信号を示している。パルス波形P2は、チャネルch.bに供給される駆動信号及びプリカーサ信号を示している。パルス波形P3は、チャネルch.cに供給される駆動信号及びプリカーサ信号を示している。すなわち、パルス波形P2は、パターンジェネレータ1011で生成される第1の吐出当該波形のパターンデータに従った信号である。パルス波形P1及びP3は、パターンジェネレータ1011で生成される第1の吐出両隣波形のパターンデータに従った信号である。
【0049】
パルス波形P4は、チャネルch.bの一方の隔壁16aである第1のアクチュエータに生じる電界の変動波形を示している。パルス波形P5は、チャネルch.bの他方の隔壁16bである第2のアクチュエータに生じる電界の変動波形を示している。すなわち、第2のアクチュエータに生じる電界の向きは、第1のアクチュエータに生じる電界の向きと正負が反転する。
【0050】
図8において、期間W1は、インクドロップを1ドロップ吐出するのに必要な期間である。期間W1において、ヘッド駆動回路101は先ず、第1の時間t1だけ、パルス波形P1,P2,P3で示される駆動信号を出力する。これらの駆動信号により、中央のチャネルch.bに負電圧−Vが印加され、その両隣のチャネルch.a,ch.bに正電圧+Vが印加される。その結果、パルス波形P4,P5に示すように、第1のアクチュエータには電界“E”が生じ、第2のアクチュエータには電界“−E”が生じる。このような電界変動により、図4の(b)に示すように、チャネルch.bに対応した圧力室15bが拡張して、圧力室15bにインクが供給される。ここに、第1の時間t1に出力されるパルス波形P1,P2,P3で示される駆動信号を拡張パルスと称する。
【0051】
続いてヘッド駆動回路101は、第2の時間t2だけ、パルス波形P1,P2,P3で示される駆動信号を出力する。これらの駆動信号により、各チャネルch.a,ch.b ch.cに印加される電圧がグラウンド電位GNDに戻る。その結果、パルス波形P4,P5に示すように、第1及び第2のアクチュエータの電界は、いずれも“0”となる。このような電界変動により、図4の(a)に示すように、チャネルch.bに対応した圧力室15bの容積が定常状態に戻る。このときの容積変動により、圧力室15bの圧力が高まって、圧力室15bに連通したノズル8からインクドロップが吐出される。
【0052】
続いてヘッド駆動回路101は、第3の時間t3だけ、パルス波形P1,P2,P3で示される駆動信号を出力する。これらの駆動信号により、中央のチャネルch.bに正電圧+Vが印加され、両隣のチャネルch.a,ch.cに負電圧−Vが印加される。その結果、パルス波形P4,P5に示すように、第1のアクチュエータには電界“−E”が生じ、第2のアクチュエータには電界“E”が生じる。このような電界変動により、図4の(c)に示すように、チャネルch.bに対応した圧力室15bが収縮する。このときの容積変動により、圧力室15bにおけるインク吐出後の圧力振動が抑制される。ここに、第3の時間t3に出力されるパルス波形P1,P2,P3で示される駆動信号を収縮パルスと称する。
【0053】
その後、ヘッド駆動回路101は、第4の時間t4だけ、パルス波形P1,P2,P3で示される駆動信号を出力する。これらの駆動信号により、各チャネルch.a,ch.b ch.cに印加される電圧がグラウンド電位GNDに戻る。その結果、パルス波形P4,P5に示すように、第1及び第2のアクチュエータの電界は、いずれも“0”となる。このような電界変動により、図4の(a)に示すように、チャネルch.bに対応した圧力室15bの容積が定常状態に戻る。
【0054】
図8において、期間W2は、プリカーサ微振動を生じさせるのに必要な期間である。期間W2において、ヘッド駆動回路101は先ず、第1の時間t1と等しい第5の時間t5だけ、パルス波形P1,P2,P3で示される駆動信号を出力する。これらの駆動信号により、各チャネルch.a,ch.b ch.cに対して負電圧−Vが印加される。その結果、パルス波形P4,P5に示すように、第1及び第2のアクチュエータの電界は、“0”を維持する。
【0055】
続いてヘッド駆動回路101は、第2の時間t2と等しい第6の時間t6だけ、パルス波形P1,P2,P3で示される駆動信号を出力する。これらの駆動信号により、各チャネルch.a,ch.b ch.cに印加される電圧がグラウンド電位GNDに戻る。その結果、パルス波形P4,P5に示すように、第1及び第2のアクチュエータの電界は、“0”を維持する。
【0056】
続いてヘッド駆動回路101は、第3の時間t3と等しい第7の時間t7だけ、パルス波形P1,P2,P3で示される駆動信号を出力する。これらの駆動信号により、先ず、各チャネルch.a,ch.b ch.cに対して負電圧−Vが印加される。続いて、中央のチャネルch.bだけ正電圧+Vが印加される。その結果、パルス波形P4,P5に示すように、中央のチャネルch.bだけ正電圧+Vが印加されるタイミングで、第1のアクチュエータには電界“−E”が生じ、第2のアクチュエータには電界“E”が生じる。このような電界変動により、チャネルch.bに対応した圧力室15bに微振動が生じる。この微振動により、圧力室15bに連通するノズル8では、インクが吐出しない程度にインクのメニスカスが振動する。
【0057】
このように従来は、インク吐出時とプリカーサ微振動時とでは、アクチュエータに同電位の電界Eが生じていた。
【0058】
次に、本実施形態の駆動信号及びプリカーサ信号とアクチュエータに生じる電界との関係について、図9を用いて説明する。図9は、図8と同様に、3つの隣り合うチャネルch.a、ch.b、ch.cのうち、中央のチャネルch.bからインクドロップを1ドロップ吐出し、その後、この中央のチャネルch.bにおいてプリカーサ微振動を生じさせる場合である。なお、図9において、図8と共通する部分には同一の符号を付してある。このため、共通する部分の説明は省略する。
【0059】
図8図9とを比較すれば分かるように、本実施形態は、第7の時間t7において、チャネルch.bに供給されるパルス信号(パルス波形P2)が従来と異なる。チャネルch.bの両隣りに位置するチャネルch.a、ch.cに供給されるパルス信号(パルス波形P1,P3)は、従来と変わらない。すなわち、第7の時間t7においては、先ず、各チャネルch.a,ch.b ch.cに対して負電圧−Vが印加される。続いて、中央のチャネルch.bに印加される電圧だけがグラウンド電位GNDに戻る。その結果、パルス波形P4,P5に示すように、中央のチャネルch.bに印加される電圧だけグラウンド電位GNDに戻るタイミングで、チャネルch.bの一方の隔壁16aである第1のアクチュエータには電界“−E/2”が生じ、他方の隔壁16bである第2のアクチュエータには電界“E/2”が生じる。このような電界変動により、チャネルch.bに対応した圧力室15bに微振動が生じる。この微振動により、圧力室15bに連通するノズル8では、インクが吐出しない程度にインクのメニスカスが振動する。
【0060】
このように本実施形態においては、プリカーサ微振動時にアクチュエータに生じる電界は、インク吐出時に印加される電界の1/2となる。
【0061】
図10は、最大ドロップ数を7ドロップとする階調印刷において、5ドロップを吐出させたときにアクチュエータに生じる電界と吐出チャネルにおける圧力室の圧力とを示すグラフである。この例では、最大ドロップのうち5ドロップがインクドロップを吐出する駆動波形となり、残りの2ドロップがプリカーサ微振動のための波形となる。
【0062】
図11は、最大ドロップ数を7ドロップとする階調印刷において、2ドロップを吐出させたときにアクチュエータに生じる電界と吐出チャネルにおける圧力室の圧力とを示すグラフである。この例では、最大ドロップのうち2ドロップがインクドロップを吐出する駆動波形となり、残りの5ドロップがプリカーサ微振動のための波形となる。
【0063】
図12は、最大ドロップ数を7ドロップとする階調印刷において、1ドロップも吐出しないときにアクチュエータに生じる電界と吐出チャネルにおける圧力室の圧力とを示すグラフである。この例では、最大ドロップである7ドロップの全てがプリカーサ微振動のための波形となる。
【0064】
図10図12に示すように、最大ドロップを7ドロップとする階調印刷においても、プリカーサ微振動時にアクチュエータに生じる電界は、インク吐出時に印加される電界の1/2となる。電界が1/2となった場合、従来と比較して圧力室の圧力は小さくなる。しかし、インクがノズル8から吐出しない程度にインクのメニスカスを前もって振動させることができるので、プリカーサ微振動の機能は十分に果たされる。
【0065】
そこで次に、プリカーサ微振動によってアクチュエータに生じる電界を従来の1/2とした場合の駆動電流について考察する。
図13は、駆動電流の測定回路を示す。前述したように、ヘッド100は、ヘッド駆動回路101とチャネル群102とからなる。このようなヘッド100に使用する電源は、論理回路用の電源VDDと、アナログ回路用の電源Vccと、ヘッド駆動用の電源+V,−V,GNDとなる。
【0066】
測定回路は、正電源+Vの供給端子とグラウンド電位GNDの端子との間に第1のバイパスコンデンサC1を配置する。また測定回路は、負電源−Vの供給端子とグラウンド電位GNDの端子との間に第2のバイパスコンデンサC2を配置する。第1及び第2のバイパスコンデンサC1,C2は、アクチュエータの急速充電用として機能する。
【0067】
測定回路は、外部からワイヤーハーネス等で供給される電源ラインの電流を測定する。具体的には、正電源+Vからヘッド駆動回路101の端子Vに流れ込む電流IVPと、ヘッド駆動回路101の端子−Vから負電源−Vに流れ込む電流IVNとを測定する。
【0068】
図14は、従来例である。すなわち図14は、プリカーサ微振動時にアクチュエータに生じる電界をEとしたときの駆動電流IVPと駆動電流IVNとを示す。測定条件として、正電源を+12V、負電源を−12Vとし、駆動ノズル数を200本とする。図14の例の場合、時間Tにおける正側の駆動電流IVPの平均電流値は135mAとなり、負側の駆動電流IVNの平均電流値は185mAとなる。
【0069】
図15は、本実施形態である。すなわち図15は、プリカーサ微振動時にアクチュエータに生じる電界をE/2としたときの駆動電流IVPと駆動電流IVNとを示す。測定条件は、従来例のときと変わらない。図15の例の場合、時間Tにおける正側の駆動電流IVPの平均電流値は0mAとなり、負側の駆動電流IVNの平均電流値は133mAとなる。
【0070】
このように、プリカーサ微振動時にアクチュエータに生じる電界をE/2とすることで、駆動電流IVP,IVNを削減することができる。この作用は、特に、インクを吐出させない部分を多く含む画像を印刷する場合、消費電力低減に関して効果的である。
【0071】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。
例えば前記実施形態では、プリカーサ微振動時にアクチュエータに生じる電界をインク吐出時にアクチュエータに生じる電界の1/2としたが、電界の大きさは1/2に限定されるものではない。プリカーサ微振動時にアクチュエータに生じる電界が、インク吐出時にアクチュエータに生じる電界よりも小さければ、消費電力削減の効果を奏し得るので、適用可能である。
【0072】
また、前記実施形態は、隣接する圧力室とアクチュエータを共有するシェアモードタイプのヘッド100について例示したが、インクジェットヘッドのタイプはこれに限定されるものではない。例えば、隣接する圧力室とアクチュエータを共有しないタイプのインクジェットヘッドについても、プリカーサ微振動時にアクチュエータに生じる電界を、インク吐出時にアクチュエータに生じる電界よりも小さくすることで、消費電力削減の効果を奏し得るので、適用可能である。
【0073】
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
8…ノズル、15…圧力室、100…インクジェットヘッド、101…ヘッド駆動回路、200…インクジェットプリンタ、201…CPU、206…搬送モータ、208…ポンプ、1011…パターンジェネレータ、1012…ロジック回路、1013……バッファ回路、1014…スイッチ回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15