特許第6368701号(P6368701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6368701低減された眼刺激性を有するオーキシン系カルボン酸の水性除草剤濃縮物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368701
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】低減された眼刺激性を有するオーキシン系カルボン酸の水性除草剤濃縮物
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/00 20060101AFI20180723BHJP
   A01N 39/04 20060101ALI20180723BHJP
   A01N 43/40 20060101ALI20180723BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   A01N25/00 101
   A01N39/04 A
   A01N43/40 101E
   A01P13/00
【請求項の数】2
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-249355(P2015-249355)
(22)【出願日】2015年12月22日
(62)【分割の表示】特願2013-506217(P2013-506217)の分割
【原出願日】2011年4月19日
(65)【公開番号】特開2016-117733(P2016-117733A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2016年1月19日
【審判番号】不服2017-14752(P2017-14752/J1)
【審判請求日】2017年10月4日
(31)【優先権主張番号】61/325,939
(32)【優先日】2010年4月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501035309
【氏名又は名称】ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【弁理士】
【氏名又は名称】吉光 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】スタッジ,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ブレウェト,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】タンク,オルガー
(72)【発明者】
【氏名】リ,メイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,レイ
【合議体】
【審判長】 佐藤 健史
【審判官】 瀬良 聡機
【審判官】 齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭51−106728(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/106107(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N,A01P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーキシン系除草剤のアンモニウム塩の水溶性をモノ−、ジ−又はトリアルキルアミンから誘導されるオーキシン系カルボン酸のアンモニウム塩と比較して改善する方法であって、前記オーキシン系カルボン酸が、下記式:

(式中、Rは、置換ピリジニル、ピリミジニル又はキノリニル基であり、Xは、O又は単結合であり、R’は、H又はCH3であり、及びnは、0から3である)であらわされ、
前記オーキシン系除草剤のアンモニウム塩としてN,N,N−トリメチルエタノールアンモニウムカチオンを使用することを含む方法。
【請求項2】
前記オーキシン系カルボン酸が、トリクロピル、アミノピラリド、クロピラリド、フルロキシピル又はピクロラムである、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノ−、ジ−又はトリアルキルアミンから誘導されるオーキシン系カルボン
酸の一般に使用されるアンモニウム塩の水性除草剤濃縮物の眼刺激性を低減させるための
コリン塩の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
農薬及び植物成長改質用化学薬品の水性濃縮製剤は、世界中の農業、工業、レクリエー
ション及び住宅地域において広範に使用されている。そのような濃縮物の活性成分は、多
くの場合、カルボン酸、より詳細にはそれらの塩である。水性濃縮物は、噴霧又は他の手
段による散布の前に水で希釈することを意図した、本質的に水中の活性成分の比較的高濃
度の溶液である。典型的に、前記水性濃縮物は、散布前にそれ自体の体積の10から10
0倍の水で希釈される。
【0003】
多くの除草剤カルボン酸、例えば、フェノキシカルボン酸、例えば2,4−D、2,4
−DB、MCPA、MCPB、メコプロップ及びクロメプロップ、安息香酸、例えばジカ
ンバ及びクロランベン、ピコリン酸、例えばアミノピラリド、ピクロラム及びクロピラリ
ド、ピリジニルオキシ酢酸、例えばトリクロピル及びフルロキシピル、並びにキノリンカ
ルボン酸、例えばキンクロラック及びキンメラック、などは、酸形態では比較的水不溶性
である。従って、これらの除草剤は、多くの場合、水溶液塩の水性濃縮物として調合され
る。水性除草剤濃縮物の調製に使用されるこれらの除草剤カルボン酸の一般に使用されて
いる塩としては、例えば、アンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ジメチルアンモニ
ウム、トリエチルアンモニウム、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウ
ム、トリエタノールアンモニウム、トリイソプロパノールアンモニウムなどが挙げられ、
本明細書では、それらを総称してアンモニウム塩と呼ぶ。
【0004】
水性除草剤濃縮物を調製するために除草剤カルボン酸のアンモニウム塩を使用すること
の欠点は、そのような製剤を取り扱う任意の者の眼へと偶発的にはねた又は別様に注入さ
れた場合にそれらが刺激性であり得る点である。この性質は、たとえ活性成分それ自体が
そのような危険をもたらさなかった場合でも、特定の市場ではそれらの有用性を限定する
製品のラベルの制限することにつながり得る。
【0005】
コリンは、米国科学アカデミー(National Academy of Scie
nces)によって推奨されている食事摂取基準(Dietary Reference
Intakes)に基づき最適な健康に必要な哺乳動物のための必須栄養素である。コ
リンは、一般に、N,N,N−トリメチル−エタノールアンモニウムカチオンと対イオン
、例えばクロライド(コリンクロライド)、ヒドロキシド(コリンヒドロキシド)又
はタルトレート(コリンタルトレート)など、とを含有する様々な第四級アンモニウム塩
を指す。
【0006】
コリンヒドロキシドは、水中の2,4−Dと混合することができ、2,4−Dのコリン
塩を容易に形成し、この塩は、下記構造
【化1】

を有し、水溶性濃縮物を容易に形成する。国際公開第2008/106107号A1パン
フレットに開示されているように、この濃縮物は、水で希釈され、感受性のある植物に発
芽後に散布されたとき、良好な雑草防除をもたらす。
【0007】
商業的に使用されているカルボン酸除草剤塩と少なくとも同様に活性であり、高水溶性
であるが、眼への刺激が少なく、従って、それを取り扱い散布する者がより安全に使える
除草剤カルボン酸誘導体を有することが望ましい。
【0008】
除草剤オーキシン系カルボン酸のコリン塩の水性濃縮物が、そのような除草剤オーキシ
ン系カルボン酸の一般に使用されるアンモニウム塩より眼への刺激が少ないことを、驚く
べきことに、今般、発見した。これらのコリン塩は、商業的に使用されているカルボン酸
除草剤アンモニウム塩、例えばイソプロピルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリ
エチルアンモニウム、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエ
タノールアンモニウム、トリイソプロパノールアンモニウム塩などに酸当量ベースで匹敵
する除草剤活性を有するが、眼刺激は低減される。さらに、前記コリン塩は、水性濃縮物
として簡便に調合することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2008/106107号A1パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、モノ−、ジ又はトリアルキルアミンから誘導されるオーキシン系カルボン酸
の一般に使用されるアンモニウム塩の水性除草剤濃縮物の眼刺激性を低減する方法に関し
、この方法は、前記オーキシン系カルボン酸のアンモニウム塩としてN,N,N−トリメ
チルエタノールアンモニウムカチオンを使用することを含む。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のもう1つの態様は、1つ又はそれ以上の有機亜リン酸除草剤塩と、低減された
眼刺激性の水性除草剤濃縮混合物を生じさせる除草剤オーキシン系カルボン酸のコリン塩
との混合物に関する。
【0012】
本発明のもう1つの態様は、オーキシン系除草剤のアンモニウム塩の水溶性を改善する
方法に関し、この方法は、前記オーキシン系除草剤のアンモニウム塩としてN,N,N−
トリメチルエタノールアンモニウムカチオンを使用することを含む。
【0013】
除草剤オーキシン系カルボン酸は、インドール酢酸と同じ作用様式を有するカルボン酸
除草剤であり、並びに安息香酸除草剤、例えばクロランベン、ジカンバ、2,3,6−T
BA及びトリカンバ;ピリジンカルボン酸除草剤、例えばアミノピラリド、クロピラリド
及びピクロラム;ピリジニルオキシ酢酸除草剤、例えばトリクロピル及びフルロキシピル
;キノリンカルボン酸除草剤、例えばキンクロラック及びキンメラック;フェノキシ酢酸
除草剤、例えば4−CPA、2,4−D、3,4−D及びMCPA;フェノキシ酪酸除草
剤、例えば4−CPB、2,4−DB、3,4−DB及びMCPB;フェノキシプロピオ
ン酸除草剤、例えばクロプロップ、4−CPP、ジクロプロップ、3,4−DP、フェノ
プロップ、メコプロップ及びメコプロップ−P、を含むことを意図したものである。好ま
しい除草剤オーキシン系カルボン酸は、2,4−D、トリクロピル、アミノピラリド、ク
ロピラリド、フルロキシピル、ピクロラム及びジカンバである。
【0014】
コリンヒドロキシドは、式
【化2】

の化合物を指す。
除草剤オーキシン系カルボン酸のコリン塩は、次の一般式
【化3】

(式中、Rは、置換フェニル、ピリジニル、ピリミジニル又はキノリニル基であり、Xは
、O又は単結合であり、R’は、H又はCHであり、及びnは、0から3である)。
の化合物を指す。
【0015】
本発明は、除草剤オーキシン系カルボン酸のアンモニウム塩の一般に使用される水性濃
縮物と比較して低減された眼刺激性を有する、1つ又はそれ以上の除草剤オーキシン系カ
ルボン酸コリン塩から成る水性濃縮物に関する。前記コリン塩は、商業的に使用されてい
るカルボン酸除草剤アンモニウム塩に酸当量ベースで匹敵する除草剤活性を有するが、眼
刺激は低減される。さらに、前記コリン塩は、水性濃縮物として簡便に調合することがで
きる。
【0016】
本発明の化合物は、除草剤オーキシン系カルボン酸と、該除草剤オーキシン系カルボン
酸を完全に中和するために十分なコリンヒドロキシドとを反応させることによって簡便に
調製することができる。補助溶剤を場合により利用して、除草剤オーキシン系カルボン酸
を水中のコリンヒドロキシドと混合して、所望の水性濃縮物を生じさせる。
【0017】
本発明のもう1つの態様は、1つ又はそれ以上の有機亜リン酸除草剤塩と、低減された
眼刺激性の水性除草剤濃縮を生じさせる除草剤オーキシン系カルボン酸コリン塩との混合
物に関する。前記有機亜リン酸除草剤は、グルホシネート及びグリホサートを、例えばア
ンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウ
ム、トリメチルスルホニウム、ナトリウム、カリウムなどから選択されるそれらの一般に
使用されている塩形態で含み得る。これらの水性濃縮混合物は、除草剤オーキシン系カル
ボン酸アンモニウム塩を含有する混合物と比較して低減された眼刺激性を呈示する。
【0018】
本発明のもう1つの態様は、オーキシン系除草剤のアンモニウム塩の水溶性を改善する
方法に関し、この方法は、前記オーキシン系除草剤のアンモニウム塩としてN,N,N−
トリメチルエタノールアンモニウムカチオン(コリン)を使用することを含む。驚くべき
ことに、例えばトリクロピルコリン塩は、−10℃ほどもの低い温度ででさえ任意の公知
トリクロピル塩より有意に高い水溶性を有することが判明した。例えば、トリクロピルコ
リン塩の水溶性は、酸当量又は活性性成分ベースで、商業的に使用されているトリクロピ
ルトリエチルアンモニウム塩の水溶性より大きい。トリクロピルコリン塩のこの予想外の
高い水溶性は、より高濃度の製剤の製造を可能にする。高強度製剤は、様々な経済的及び
環境的理由のために望ましい。例えば、出荷及び取扱い費用を低減させるために並びに処
分すべき梱包材の量を低減させるために、高強度製剤を提供することは望ましい。
【0019】
本発明の水性濃縮物は、遺伝子操作によって又は突然変異及び選択によってそれらに対
して又は他の除草剤に対して耐性又は抵抗性にされた多くの作物において望ましくない植
生を防除するために一般に使用することができる。多くのグリホサート及びグルホシネー
ト耐性作物も、単独で又はこれらの化合物と併用で、処理することができる。そのような
作物(例えば、トウモロコシ、大豆及び綿)は、オーキシン系除草剤、例えば2,4−ジ
クロロフェノキシ酢酸、に対して耐性にされている。これらの活性成分を使用して、その
ような耐性作物又は他のオーキシン耐性作物を処理することができる。
【0020】
前記水性濃縮物を除草剤として直接利用することは可能であるが、少なくとも1つの農
業上許容されるアジュバント又は担体と共に除草有効量の前記水性濃縮物を含有する混合
物でそれらを使用することが好ましい。適するアジュバント又は担体は、価値のある作物
に対して、特に作物の存在下で選択的雑草防除のためにそれらの組成物を散布する際に用
いられる濃度で、植物毒性であってはならず、及び前記水性濃縮物又は他の組成物成分と
化学反応してはならない。そのような混合物は、雑草若しくはそれらの所在地への直接散
布用に設計される場合があり、又は散布前に追加の担体及びアジュバントで通常は希釈さ
れる濃縮物若しくは製剤である場合がある。
【0021】
1つ又はそれ以上の界面活性剤を本発明の水性濃縮物に添合することが通常は望ましい
。前記界面活性剤は、特性の点ではアニオン性、カチオン性又は非イオン性であり得、及
び乳化剤、湿潤剤、懸濁剤として又は他の目的に利用することができる。典型的な界面活
性剤としては、アルキル硫酸塩、例えばラウリル硫酸ジエタノールアンモニウム;アルキ
ルアリールスルホン酸塩、例えばドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム;アルキルフェ
ノール−アルキレンオキシド付加生成物、例えばノニルフェノール−C18エトキシレー
ト;アルコール−アルキレンオキシド付加生成物、例えばトリデシルアルコール−C16
エトキシレート;石鹸、例えばステアリン酸ナトリウム;アルキルナフタレンスルホン酸
塩、例えばジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム;スルホコハク酸塩のジアルキルエ
ステル、例えばジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム;ソルビトールエス
テル、例えばオレイン酸ソルビトール;第四級アミン、例えばラウリルトリメチルアンモ
ニウムアンモニウムクロライド;脂肪酸のポリエチレングリコールエステル、例えばステ
アリン酸ポリエチレングリコール;エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコ
ポリマー;並びにモノ及びジアルキルリン酸エステルの塩が挙げられる。
【0022】
農業用組成物に一般に使用される他のアジュバントとしては、相溶化剤、消泡剤、金属
イオン封鎖剤、中和剤及び緩衝液、腐食防止剤、染料、着臭剤、展着剤、浸透助剤、固着
剤、分散剤、増粘剤、凝固点降下剤、抗菌剤などが挙げられる。前記組成物は、他の相溶
性成分、例えば、他の除草剤、植物成長調節剤、殺真菌剤、殺虫剤なども含有することが
あり、並びに液体肥料として調合することができる。
【0023】
本発明の濃縮物中に、活性成分は、一般に5から90重量パーセント、好ましくは20
から80重量パーセントの濃度で存在する。そのような組成物は、典型的に、散布前に水
で希釈される。通常、雑草又は雑草の所在地に散布される希釈組成物は、一般に0.00
1から2重量パーセント活性成分を含有し、及び好ましくは0.01から1重量パーセン
トを含有する。
【0024】
本水性濃縮物を、水での希釈後、従来の地上又は空中噴霧機によって、灌漑水への添加
によって、及び当業者に公知の他の従来の手段によって散布することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の実施例は、本発明の様々な態様を例証するために提示するものであり、本クレー
ムへの制限と見なしてはならない。
【実施例1】
【0026】
水性濃縮物の調製:除草剤オーキシン系カルボン酸とコリンヒドロキシド(水中46重
量%)を室温で、水中等モル量で併せ、溶液が形成されるまで混合して、除草剤オーキシ
ン系カルボン酸のコリン塩の水性濃縮物を得る。当業者に周知であるように、追加の不活
性成分をそれらのサンプルに添加してもよい。
【実施例2】
【0027】
(1)化学物質の試験に関するOECDガイドライン、手順405(2002)(OECD
Guideline for the Testing of Chemicals, Procedure 405 (2002))、(2)米国EPA
健康影響試験ガイドライン、OPPTS 870.2400(1998)(U.S. EPA Health Effects Test Guid
elines, OPPTS 870.2400 (1998))、(3)JMAFF 12−Nouan−1847(2
000)及び(4)欧州共同体官報、毒性判定法、パートB.5(眼刺激)、指令200
4/73/ED、2004年4月29日(Official Journal of the European Communitie
s, Methods for the Determination of Toxicity, Part B.5 (Eye Irritation), Directi
ve 2004/73/ED, 29 April 2004)に明記されているガイドライン試験要件に従って、眼刺
激試験を行った。
【0028】
試験材料製剤をニュージーランドシロウサギ(1製剤につき3匹の動物)に投与して、
眼刺激を生じさせる可能性を判定した。前記材料を単回投与で各動物の一方の眼の結膜嚢
(conjuctival sac)に適用した。他方の眼は未処置のままであり、対照
としての役割を果たした。角膜、虹彩及び結膜の刺激を試験材料の適用の21日後に評価
した。得られた最大刺激スコアは、角膜混濁については4、虹彩炎については2及び結膜
炎については10である(これらの値は、評価した角膜の面積又は計算に用いた追加の要
因を考慮に入れていない)。
【0029】
適用21日後に最も感受性の高い動物の角膜、虹彩及び結膜に存在する刺激として結果
を報告する。次の9つの水性濃縮物を用いて試験を行った:(1)2,4−Dコリン塩(
456グラム 酸当量毎リットル(gae/L))、(2)2,4−Dコリン塩(538
.5gae/L)、(3)2,4−D DMA(ジメチルアンモニウム塩、456gae
/L)、(4)2,4−D DMA(683gae/L)、(5)2,4−D DMEA
(ジメチルエタノールアンモニウム、456gae/L)、(6)2,4−D IPA(
イソプロピルアンモニウム、456gae/L)、(7)2,4−D TIPA(トリイ
ソプロパノールアンモニウム、456gae/L)、(8)グリホサートDMA(ジメチ
ルアンモニウム、240gae/L)と混合した2,4−Dコリン(228gae/L)
及び(9)グリホサートDMA(240gae/L)と混合した2,4−D EMEA(
228gae/L)。表1に示すように、2,4−Dコリン(サンプル1及び2)、及び
グリホサートDMAと混合した2,4−Dコリン(サンプル8)は、他の2,4−Dアミ
ン製剤と比較して、適用21日後に存在する刺激の最少量を有した。グリホサートDMA
と混合した2,4−Dコリン(サンプル8)は、21日後に存在する刺激を有さず、単独
での2,4−Dコリンは、21日後に最少の結膜炎を有した又は結膜炎を有さなかった(
スコア1)。その他の2,4−Dアミン製剤は、21日後に1〜4の範囲の角膜混濁、0
〜2の範囲の虹彩炎及び1〜6の範囲の結膜炎を有した。
【表1】
【実施例3】
【0030】
水性濃縮物の調製:トリクロピル酸とコリンヒドロキシドを室温で、等モル量で水中で
反応させることにより、トリクロピルコリン塩を調製した。追加の不活性成分を添加して
、360g/L トリクロピル酸当量を含有する濃縮物をコリン塩の形態で調製した(サ
ンプル10)。サンプル10製剤中の不活性成分の組成及び量は、360g/L トリク
ロピル酸当量を含有するトリエチルアンモニウム塩の形態の市販のGarlon(登録商
標)3A除草剤(サンプル11)中の不活性成分の組成及び量と同一であった。
【実施例4】
【0031】
実施例2において説明したように、ガイドライン試験要件に従って眼刺激試験を行った
。実施例2において説明したように試験材料製剤をニュージーランドシロウサギ(1製剤
につき3匹の動物)に投与して、眼刺激を生じさせる可能性を判定した。
【0032】
適用14日後に最も感受性の高い動物の角膜、虹彩及び結膜に存在する刺激として結果
を報告する。次の2つの水性濃縮物を用いて試験を行った:トリクロピルコリン及びトリ
クロピルTEA(トリエチルアミン)。表2において実証されるように、トリクロピルコ
リン(サンプル10)を投与すると14日後に眼刺激は存在しなかったのに対し、トリク
ロピルTEA(サンプル11)を投与すると14日後に角膜混濁(スコア1)及び結膜炎
(スコア1)が存在した。
【表2】
【実施例5】
【0033】
98.7g トリクロピル酸工業用(純度98%)と100.0g コリンヒドロキシド
溶液(45%)を反応させることによって調製したトリクロピルコリン塩溶液は、結果と
して68.3%のトリクロピルコリン塩濃度(48.7%トリクロピル酸当量)となった
。この透明、均質溶液は、−10℃で14日間保管したときでさえ、結晶化を一切示さな
かった。20℃及び0℃での様々なトリクロピル塩の水溶性を表3に報告する。
【表3】
【実施例6】
【0034】
サンプル1(456gae/L 2,4−Dコリン塩)の低温安定性を、サンプル3(
456gae/L 2,4−D DMA塩)の低温安定性と比較した。サンプル3は、−
10℃の温度で固体であったのに対し、サンプル1は、−20℃ほどもの低い温度で均質
の透明な液体のままであった。これは低温での大きく改善された可溶性を示している。