特許第6368708号(P6368708)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6368708車両用立柱サッシュを備えたドアサッシュ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368708
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】車両用立柱サッシュを備えたドアサッシュ
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/04 20060101AFI20180723BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20180723BHJP
   B23K 26/322 20140101ALI20180723BHJP
【FI】
   B60J5/04 M
   B23K26/21 N
   B23K26/21 G
   B23K26/322
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-510124(P2015-510124)
(86)(22)【出願日】2014年4月3日
(86)【国際出願番号】JP2014059819
(87)【国際公開番号】WO2014163133
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2017年3月10日
(31)【優先権主張番号】特願2013-79607(P2013-79607)
(32)【優先日】2013年4月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083286
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】吉原 二郎
(72)【発明者】
【氏名】三橋 勲見
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−132232(JP,A)
【文献】 特開2011−068181(JP,A)
【文献】 特開2008−302788(JP,A)
【文献】 特開2010−012924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/04
B23K 26/21
B23K 26/322
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナー部材とアウター部材を有し、上記インナー部材とアウター部材には袋状部を構成する重畳部が形成された車両用ドアサッシュにおいて、
上記インナー部材とアウター部材の一方に、上記重畳部に連なる一枚板構造の折曲部が形成されていること、
上記インナー部材とアウター部材の他方は、その板厚端面の少なくとも一部が上記一枚板構造の折曲部に当接していること、及び
上記一枚板構造の折曲部と上記板厚端面とが、上記一枚板構造の折曲部の上記板厚端面とは反対側の面から上記当接部においてレーザ溶接され、該反対側の面に同レーザ溶接の溶接痕が残存していること、
を特徴とする車両用立柱サッシュを備えたドアサッシュ。
【請求項2】
請求の範囲第1項記載の車両用立柱サッシュを備えたドアサッシュにおいて、上記一枚板構造の折曲部は上記アウター部材に形成されていて、上記インナー部材とアウター部材の溶接箇所は、上記アウター部材の上記一枚板構造の折曲部のインナー部材側の面とインナー部材の板厚端面との接触部である車両用立柱サッシュを備えたドアサッシュ。
【請求項3】
請求の範囲第1項記載の車両用立柱サッシュを備えたドアサッシュにおいて、上記一枚板構造の折曲部は上記インナー部材に形成されていて、上記インナー部材とアウター部材の溶接箇所は、上記インナー部材の上記一枚板構造の折曲部のアウター部材側の面とアウター部材の板厚端面との接触部である車両用立柱サッシュを備えたドアサッシュ。
【請求項4】
請求の範囲第1項乃至第3項のいずれか1項記載の車両用立柱サッシュを備えたドアサッシュにおいて、上記インナー部材とアウター部材は、少なくともいずれか一方がメッキ鋼板からなる車両用立柱サッシュを備えたドアサッシュ。
【請求項5】
請求の範囲第1項乃至第4項のいずれか1記載の車両用立柱サッシュを備えたドアサッシュにおいて、上記一枚板構造の折曲部を有する側の部材には、上記一枚板構造の折曲部と上記重畳部との間において、上記インナー部材とアウター部材を非接触とする離間部が形成されていて、上記一枚板構造の折曲部は、上記離間部から上記一枚板構造の折曲部を有さない部材側に折曲されて連なる車両用立柱サッシュを備えたドアサッシュ。
【請求項6】
請求の範囲第1項乃至第5項のいずれか1項記載の車両用立柱サッシュを備えたドアサッシュにおいて、上記板厚端面には、上記一枚板構造の折曲部との当接部と非当接部が形成されている車両用立柱サッシュを備えたドアサッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の鋼板を溶接して構成する車両用立柱サッシュを備えたドアサッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアサッシュの立柱サッシュは一般に、車内側に位置する閉断面からなる袋状部と、車外側に位置する意匠部とを備え、複数の鋼材を結合してなっている。従来、この立柱サッシュの袋状部は、2枚の鋼板の重ね合わせ部をヘミング加工により結合していた(特許文献1)。また2枚の鋼板の重ね合わせ部を結合する別の方法として、溶接加工(スポット溶接、アーク溶接)が知られている。
【0003】
車両用ドアサッシュの立柱サッシュに使用される鋼材は従来一般に、メッキを施さない生鋼材(一般的に冷間圧延鋼板(SPCC材))が用いられてきたが、立柱サッシュのサビを防止するために、溶接結合される鋼板の少なくとも一方を、亜鉛メッキを施したメッキ鋼鈑から構成する試みがされている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−302788号公報
【特許文献2】特開2008−290129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、ヘミング加工は、2枚の鋼板の重ね合わせ部を結合する際、一方の鋼板を折返変形させるために大きな圧力を必要とするので、変形し易いという問題がある。一方、溶接加工はヘミング加工に比べて、鋼板が変形するおそれは少ない。しかし、鋼板のうち、メッキ鋼板は、スポット溶接すると、発生する亜鉛蒸気により、溶接電極が傷みやすい(耐久性が阻害される)という問題がある。一方、溶接棒を用いるアーク溶接では、溶接電極の耐久性が阻害されるおそれはないが、溶接時に発生する亜鉛蒸気により、爆飛が発生しやすいという問題がある。
【0006】
本発明は、複数の鋼板の重ね合わせ部を結合して袋状部を形成する際に、従来一般的に用いられていたヘミング加工を用いることなく、溶接によって袋状部を形成することができる車両用立柱サッシュを備えたドアサッシュを得ることを目的とする。
また、本発明は、溶接痕を容易に隠すことができる車両用立柱サッシュを備えたドアサッシュを得ることを目的とする。
さらに本発明は、複数のメッキ鋼板を溶接して立柱サッシュを構成する際、爆飛の問題が生じない車両用立柱サッシュを備えたドアサッシュを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、インナー部材とアウター部材を有し、上記インナー部材とアウター部材には袋状部を構成する重畳部が形成された車両用ドアサッシュにおいて、上記インナー部材とアウター部材の一方に、上記重畳部に連なる一枚板構造の折曲部が形成されていること、上記インナー部材とアウター部材の他方は、その板厚端面の少なくとも一部が上記一枚板構造の折曲部に当接していること、及び上記一枚板構造の折曲部と上記板厚端面とが、上記一枚板構造の折曲部の上記板厚端面とは反対側の面から上記当接部においてレーザ溶接され、該反対側の面に同レーザ溶接の溶接痕が残存していること、を特徴とする。
【0008】
インナー部材とアウター部材は、上記一枚板構造の折曲部と板厚端面とが上記当接部においてレーザ溶接されていて、上記一枚板構造の折曲部の上記板厚端面と反対側の面に同レーザ溶接の溶接痕が残存するので、同溶接痕をガラスラン等で容易に隠すことができる。
【0009】
本発明の車両用立柱サッシュを備えたドアサッシュにあっては、上記折曲部を上記アウター部材に形成し、上記インナー部材とアウター部材の溶接箇所を、上記アウター部材の上記折曲部のインナー部材側の面とインナー部材の板厚端面との接触部とすること、あるいは、上記折曲部を上記インナー部材に形成し、上記インナー部材とアウター部材の溶接箇所を、上記インナー部材の上記折曲部のアウター部材側の面とアウター部材の板厚端面との接触部とすることができる。
【0010】
上記インナー部材とアウター部材は、少なくともいずれか一方をメッキ鋼板から形成することができる。板厚端面には十分にメッキがされないため、板厚端面を溶接したときに爆飛が発生し難いので、板厚端面と折曲部の溶接性が向上し、強固で精度のよい溶接が可能になる。
【0011】
上記折曲部を有する側の部材には、上記折曲部と上記重畳部との間において、上記インナー部材とアウター部材を非接触とする離間部が形成されていて、上記折曲部は、上記離間部から上記折曲部を有さない部材側に折曲させて連ならせることができる。また上記板厚端面には、上記折曲部との当接部と非当接部を形成することができる。インナー部材とアウター部材の間には、離間部により、または当接部と非当接部の間に隙間が存在するので、爆飛の影響を受け難くなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、インナー部材とアウター部材を有し、上記インナー部材とアウター部材には袋状部を構成する重畳部が形成された車両用ドアサッシュにおいて、レーザ溶接する部分の形状を適切に設定してレーザ溶接するので、ヘミング加工を用いることなく、袋状部の形成が可能になる。また、溶接痕は一枚板構造の折曲部の板厚端面とは反対側の面に残存しているので、容易に隠すことができて外観に優れる車両用立柱サッシュ備えたドアサッシュを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明によるメッキ鋼板とメッキ鋼板のレーザ溶接による車両用立柱サッシュを備えたドアサッシュの一例を示す側面図である。
図2図1のII-II線に沿う、本発明による立柱サッシュの第1の実施形態を示す断面図である。
図3図2の第1の実施形態のレーザ溶接状態を示す断面図である。
図4】同立柱サッシュの第2の実施形態を示す断面図である。
図5】同立柱サッシュの第2の実施形態を示す、図4とは縦方向の異なる位置で切断した断面図である。
図6】同立柱サッシュの第3の実施形態を示す断面図である。
図7】同立柱サッシュの第4の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、車両ドア10を有する乗用車の側面形状を示している。車両ボディBのドア開口(ボディ開口)Aを開閉する車両ドア10は、ドア本体(インナパネルとアウタパネル)11の上部に窓開口12を形成するドアサッシュ(窓枠)13を備えている。
【0015】
ドアサッシュ13は、窓ガラスGの上縁を受け入れる側面視で曲折したアッパサッシュ14と、車両ボディBのセンターピラー16に沿い窓ガラスGの上下方向縁部を受け入れる立柱サッシュ20とを有している。立柱サッシュ20の上端部とアッパサッシュ14の端部とは周知手段で接続固定され、アッパサッシュ14と立柱サッシュ20の下方は、ドア本体11内に延びて該ドア本体11に固定される。本実施形態は、このドアサッシュ13の立柱サッシュ20に適用したものである。
【0016】
立柱サッシュ20は、図2に示すように、インナー部材(メイン立柱部材)21、アウター部材(サブ立柱部材)22及びウェザーストリップ保持部材23を備えている。このうち、インナー部材21とアウター部材22は亜鉛メッキ鋼板からなり、ウェザーストリップ保持部材23は生鋼板(冷間圧延鋼板(SPCC材))からなっている。ウェザーストリップ保持部材23は無くてもよく、ウェザーストリップをインナー部材21にクリップ止めしてもよい。インナー部材(亜鉛メッキ鋼板)21の板厚は、アウター部材(生鋼板)22の板厚より厚い。
【0017】
インナー部材21は、車両の車外側に位置する意匠部21aと、該意匠部21aから車内側に延びる折返部21bとを有し、折返部21bは、意匠部21aから斜めに車内側に延びる車内方向延長部21b1、車内方向延長部21b1の車内側端部から窓開口側に延びる前後方向部21b2、及び前後方向部21b2の窓開口側端部から車外側に延びる車外方向延長部21b3を有している。
【0018】
アウター部材22は、車両の車外側に位置する意匠部22aと、該意匠部22aから車内側に延びる折返部22bとを有し、折返部22bは、インナー部材21の車内方向延長部21b1に沿って斜めに車内側に延びる車内方向延長部22b1、車内方向延長部22b1の車内側端部から窓開口側に階段状に延びる閉断面(袋状部)形成部22b2、及び閉断面形成部22b2の窓開口側端部からインナー部材21の車外方向延長部21b3に沿って車外側に延びる車外方向延長部22b3を有している。インナー部材21の折返部21b(車内方向延長部21b1、前後方向部21b2及び車外方向延長部21b3)と、アウター部材22の折返部22b(閉断面形成部22b2)とで、閉断面形状の袋状部22cを形成している。意匠部22aの窓開口側の先端部は折返密着部22a1を構成している。
【0019】
インナー部材21の折返部21b(車内方向延長部21b1、前後方向部21b2及び車外方向延長部21b3)と、アウター部材22の折返部22b(車内方向延長部22b1、閉断面形成部22b2及び車外方向延長部22b3)とで、閉断面形状の袋状部22cを形成している。インナー部材21の車外方向延長部21b3の車外側の先端部とアウター部材22の車外方向延長部22b3の車外側の先端部は、袋状部22cを閉じるように重畳された重畳部(重畳板部)を構成している。アウター部材22の車内方向延長部22b1は、車内方向延長部22b1の上下方向に所定間隔で複数箇所に、窓開口側から車内方向に突出した、溶接用の座面22b11を備えている。車内方向延長部22b1及び座面22b11とインナー部材21の車内方向延長部21b1は、袋状部22cを閉じるように重畳された重畳部(重畳板部)を構成している。なお、車内方向延長部22b1に座面22b11を形成せずに、車内方向延長部22b1と21b1とを重畳させて板部を構成してもよい。車内方向延長部22b1と21b1とを直接重畳させた重畳部としてもよい。あるいは、溶接用の座面をインナー部材21の車内方向延長部22b1側に設けてもよい。
【0020】
なお、本実施形態の説明では立柱サッシュ20の袋状部22cを形成する2部材のうち、車内側に位置する部材(符号21を付した部材)をインナー部材、車外側に位置する部材(符号22を付した部材)をアウター部材22と称するが、袋状部22cを形成する2部材のうち、重畳部の外側に位置する部材(符号21を付した部材)をアウター部材、内側に位置する部材(符号22を付した部材)をインナー部材と称してもよい。
【0021】
ウェザーストリップ保持部材23は、ドア側ウェザーストリップDWSを保持するチャンネル材で、インナー部材21の車内方向延長部21b1、アウター部材22の車内方向延長部22b1と一緒に溶接結合(例えばスポット溶接)されている。ドア側ウェザーストリップDWS及び車両ボディBに支持されたボディ側ウェザーストリップBWSは周知のように、車両ドア10を閉じたとき、車両ボディBのセンターピラー16との間及びインナー部材21の車内方向延長部21b1との間で圧縮されて、雨水の車両ボディ内への浸入を防止する。
【0022】
アウター部材22の意匠部22aと折返部22bは、ガラスランGRを保持するガラスラン保持凹部を構成し、ガラスランGRは周知のように窓開口12を開閉する窓ガラスGを案内する。アウター部材22の車外方向延長部22b3の車外側の端部は、窓開口側に折曲された折曲部(折曲板部)22b4を構成しており、インナー部材21の車外方向延長部21b3の車外側板厚端面(板止まり)21b4は、この折曲部22b4の車内側の面に対向している。窓ガラスGが開閉駆動されると、ガラスランGRには車両幅方向の力が加わる。折曲部22b4は、この力を受け止め、ガラスランGRが破損するのを防ぎ、バタツキも防ぐ。
【0023】
インナー部材21の意匠部21aとアウター部材22の意匠部22aはほぼ面一となり、その外面に装飾部材であるガーニッシュが装着される。
【0024】
インナー部材21の車外方向延長部21b3及び車外側板厚端面21b4とアウター部材22の車外方向延長部22b3は、重畳された重畳部を構成し、この重畳部は、ガラスラン保持凹部の車内側の保持部を形成している。
【0025】
本実施形態は、このメッキ鋼板からなるインナー部材21の車外方向延長部21b3と、メッキ鋼板からなるアウター部材22の車外方向延長部22b3(折曲部22b4)をレーザ溶接により溶接結合する。
【0026】
レーザ溶接工程では、図3に示すように、メッキ鋼板からなるインナー部材21の車外方向延長部21b3とメッキ鋼板からなるアウター部材22の車外方向延長部22b3とを重畳し、車外方向延長部21b3の車外側板厚端面21b4を車外方向延長部22b3の折曲部22b4の車内側の面に当接させる。この状態において、レーザ溶接光を、車外側から、折曲部22b4の車外側の面22b6に照射する。すると、折曲部22b4の車内側の面22b5と車外側板厚端面21b4及び車外方向延長部21b3と22b3の接触部40が溶融して接合される。ウェザーストリップ保持部材23は、車内方向延長部21b1と座面22b11を溶接した後、アウター部材22の車内方向延長部22b1と溶接する。
【0027】
インナー部材21はメッキ鋼板からなるが、その車外側板厚端面21b4(いわゆる板止まり)には十分にメッキがされない(メッキの乗りが悪い)ため、車外側板厚端面21b4を溶接したときに爆飛が発生し難いので、車外側板厚端面21b4と折曲部22b4の溶接性が向上し、強固で精度のよい溶接が可能になる。この実施形態の溶接痕は、折曲部22b4の車外側に現れるので、ガラスランGWに隠される。
【0028】
レーザ溶接光の照射方向(角度)、照射位置は、図示の照射方向(角度)、照射位置に限定されない。折曲部22b4と車外側板厚端面21b4、車外方向延長部21b3と22b3が接触部40で溶融接合できる範囲で選択可能である。付加的に、車外方向延長部21b3の窓開口側の面からレーザ溶接光を照射してもよい。
【0029】
メッキ鋼板からなるインナー部材21の車内方向延長部21b1と、生鋼板からなるアウター部材22の座面22b11も、インナー部材21の車外方向延長部21b3と、アウター部材22の車外方向延長部22b3のレーザ光溶接工程により溶接できる。ウェザーストリップ保持部材23は、車内方向延長部21b1と座面22b11を溶接した後、アウター部材22の車内方向延長部22b1と溶接する。
【0030】
図4図5は、インナー部材21とアウター部材22の重畳部(重畳板部)の第2の実施形態を、縦(上下)方向の異なる位置で横断した断面図を示している。第2の実施形態では、アウター部材22の車外方向延長部22b3を一旦、車外方向延長部21b3から離間させた離間部22b7を形成し、その後、離間部22b7を窓開口側に折曲して車外方向延長部21b3の車外側板厚端面21b42と接触する折曲部(折曲板部)22b4が形成されている。離間部22b7と車外方向延長部21b3との間には隙間43が形成されている。インナー部材21の車外方向延長部21b3の端部に、縦方向に所定間隔で凹凸部を形成して、凸部を形成する車外側板厚端面21b42を折曲部22b4の車内側の面22b5に当接させ(図4)、凹部を形成する車外側板厚端面21b43と折曲部22b4の車内側の面22b5との間に隙間45を設けている(図5)。
【0031】
第2の実施形態では、レーザ溶接光を、折曲部22b4の車外側の面22b6から車内側の面22b5と車外側板厚端面21b42の接触部44に照射する。すると、折曲部22b4の車内側の面22b5と車外側板厚端面21b42の接触部44が溶融し、溶接結合される。
【0032】
第2の実施形態では、車外方向延長部21b3と車外方向延長部22b3の離間部22b7との間に隙間43があるので、車外側板厚端面21b42の全面が折曲部22b4の車内側の面22b5と接触し、車外側板厚端面21b42と車内側の面22b5との接触状態が良好に保たれる。さらに第2の実施形態は、車外側板厚端面21b43と折曲部22b4の車内側の面22b5との間に隙間43と外部とを連通する隙間45を有するので、レーザ溶接光による溶接の際に、接触部44で膨張、溶融した層がその隙間43、45に流れ込んで、折曲部22b4及び車外方向延長部21b3と22b3の変形が防止され、また溶接の際の膨張ガスがこれらの隙間43、45から外部に抜けるので爆飛の虞れが無い。第3の実施形態の溶接痕は、折曲部22b4の車外側に現れるので、ガラスランGWに隠される。
レーザ溶接光の照射方向(角度)、照射位置は、図示の照射方向(角度)、照射位置に限定されない。折曲部22b4と車外側板厚端面21b4が接触部44で溶融接合できる範囲で選択可能である。
【0033】
図6は、図4図5の実施形態において、付加的に、レーザ溶接光を、車外方向延長部21b3の窓開口側(アウター部材22とは反対側)の面に、窓開口側から照射する第3の実施形態を示している。その際、銅製の治具51を、車外方向延長部22b3のレーザ溶接光照射位置と対向する位置であって、アウター部材22の車外方向延長部22b3の車外方向延長部21b3とは反対側の面に当て付けている。このように治具51を車外方向延長部22b3に当接させた状態でレーザ溶接光を照射すると、車外方向延長部21b3と22b3の接触部42が溶融し、溶接結合される。治具51は、溶融の際に発生する熱を吸収する作用をし、爆飛する虞れを減らすことができる。
【0034】
以上の各実施形態は、インナー部材21とアウター部材22をともにメッキ鋼板から構成した上で、インナー部材21の車外方向延長部21b3とメッキ鋼板からなるアウター部材22の車外方向延長部22b3とを重畳して、折曲部22b4と車外側板厚端面21b4とをレーザ溶接するので、外観に優れる車両用立柱サッシュを得ることができる。本実施形態は、アウター部材22の折曲部22b4と、インナー部材21の車外方向延長部21b3の車外側板厚端面21b4とをレーザ溶接したので、ヘミング加工を用いることなく、ガラスラン保持凹部の車内側の保持部を形成することができる。
【0035】
以上の実施形態では折曲部22b4をアウター部材22に形成したが、図7の第4の実施形態では、インナー部材21の重畳部を形成する車外方向延長部21b3の車外側端部に、窓開口の外方向に折曲した折曲部21b4′を形成し、折曲部21b4′のアウター部材22側の車内側の面21b5′を、アウター部材22の重畳部を形成する車外方向延長部22b3の車外側板厚端面22b4′に当接させている。折曲部21b4′の車内側の面21b5′とは反対側の車外側の面21b6′からレーザ溶接光が照射され、折曲部21b4′の車内側の面21b5′と車外側板厚端面22b4′及び車外方向延長部21b3と22b3の接触部40′が溶融して接合されている。その他の構成は、図3の第1の実施形態と同一であり、同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0036】
なお、第2および第3の実施形態において、アウター部材22に形成した折曲部22b4及び離間部22b7と同様の曲折部及び離間部をインナー部材21に形成し、インナー部材21に形成した車外側の板厚端面21b41、21b42、21b43と同様の板厚端面をアウター部材22に形成し、インナー部材21とアウター部材22の間に隙間43、45と同様の隙間を形成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の車両用立柱サッシュは、車両用のドアに広く適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
B 車両ボディ
BWS ボディ側ウェザーストリップ
DWS ドア側ウェザーストリップ
GR ガラスラン
10 車両ドア
11 ドア本体
12 窓開口
13 ドアサッシュ(窓枠)
14 アッパサッシュ
16 センターピラー
20 立柱サッシュ
21 インナー部材
21a 意匠部
21b 折返部
21b1 車内方向延長部
21b2 前後方向部
21b3 車外方向延長部(車外側に向かう板部、重畳部)
21b4 21b41 21b42 21b43 車外側の板厚端面
21b4′ 折曲部
21b5′ 車内側の面
21b6′ 車外側の面
22 アウター部材
22a 意匠部
22b 折返部
22b1 車内方向延長部
22b2 閉断面(袋状部)形成部
22b3 車外方向延長部(車外側に向かう板部、重畳部)
22b4 折曲部
22b5 車内側の面
22b6 車外側の面
22b7 離間部
22b4′ 車外側の板厚端面
22c 袋状部
23 ウェザーストリップ保持部材
40 40′ 42 44 接触部
43 45 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7