(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、変形されたフレキシブル配線板には反発力が生じ、変形前の状態に戻ろうとするため、様々な不具合が生じる可能性がある。例えば、この不具合の一つとして、電子機器内では複数のフレキシブル配線板が繋ぎ合わされているが、フレキシブル配線板が変形前の状態に戻ろうとすることにより、この繋ぎ合わされている部位において、接続不具合が発生する可能性がある。特に、上記電子機器の薄型化の要求のために、この繋ぎ合わされている部位も薄く形成されている場合には、上述したような接続不具合が発生し易い。
【0005】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、フレキシブル配線板を折り曲げる等して変形された状態で形状保持可能にすることができる形状保持フィルム、及びこの形状保持フィルムを備えた形状保持型フレキシブル配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る形状保持フィルムは、塑性変形可能
で、厚みが1μm以上であり、かつ12μm以下である金属層と、金属層の一方面側に形成され、フレキシブル配線板に接着される接着剤層と、を備えた形状保持フィルムである。
【0007】
携帯電話等の電子機器内において、フレキシブル配線板は、折り曲げられる等して変形して配置される場合がある。上記構成によれば、フレキシブル配線板には、形状保持フィルムが接着剤層によって接着可能であるため、変形された場合に、塑性変形可能な金属層によって変形前の状態に戻ることが効果的に防止される。このため、形状保持フィルムによって、フレキシブル配線板を変形した状態で形状保持をすることができる。これによって、変形されたフレキシブル配線板において反発力が生じることを防止することができる。このため、形状保持フィルム及びフレキシブル配線板からなる形状保持型フレキシブル配線板同士の繋ぎ目部位において接続不具合が生じることが好適に防止される。
ここで、金属層の厚みが1μm以上であることは形状保持機能を発揮するために好ましく、金属層の厚みが12μm以下であることは折り曲げる作業性の観点から好ましい。金属層の厚みが12μmより厚いと、形状保持フィルムを張り付けた状態のフレキシブル配線板が厚くなりすぎ、折り曲げるときに大きな力が必要となってしまう。従って、上記構成によれば、形状保持機能を発揮する塑性変形が可能な金属層を形成することができるとともに、形状保持フィルムを張り付けた状態のフレキシブル配線板を折り曲げ容易にし、折り曲げる作業性を良くすることができる。
【0008】
(2)上記金属層は、銅、銀、ニッケル、アルミのうちの一種以上を主成分としていてもよい。
【0009】
上記構成によれば、塑性変形が可能な金属層を形成することが可能になり、形状保持フィルムによるフレキシブル配線板の形状保持効果を高めることができる。
【0010】
(3)上記金属層
が圧延加工により形成されていてもよい。
【0012】
(4)上記接着剤層は、導電性を有していてもよい。
【0013】
上記構成によれば、形状保持フィルムをフレキシブル配線板に接着するだけで、フレキシブル配線板を変形した状態で形状保持することができるだけでなく、外部からフレキシブル配線板に進行する電界波、磁界波、電磁波及び静電気や、フレキシブル配線板から外部に進行する電界波、磁界波、電磁波及び静電気を良好に遮断することができる。
【0014】
(5)上記金属層には、上記接着剤層側とは反対の一方面側に、保護層が形成されていてもよい。
【0015】
上記構成によれば、保護層によって金属層を保護することが可能になり、金属層の経時劣化を好適に防止することができる。
【0016】
(6)上記金属層には、上記接着剤層側とは反対の一方面側に、接着剤層が更に形成されていてもよい。
【0017】
金属層の両面側に接着剤層が形成されることにより、一方の接着剤層でフレキシブル配線板に形状保持フィルムが接着可能であるとともに、他方の接着剤層で電子機器の筐体内の他の場所に接着可能である。このため、折り曲げられた形状保持型フレキシブル配線板を、上記他方の接着剤層を介して電子機器の筐体内の他の場所に接着することによって、更に形状保持型フレキシブル配線板に反発力が発生することを抑制でき、形状保持効果を高めることができる。
【0018】
(7)上記金属層の前記接着剤層側とは反対の一方面側に形成された接着剤層が導電性を有していてもよい。
【0019】
上記構成によれば、金属層における、フレキシブル配線板に接着される接着剤層側とは反対の一方面側に形成された接着剤層が導電性を有すれば、この接着剤層を介して形状保持フィルムが外部グランドに接着された場合に、シールド効果を発揮することができる。
【0020】
(8)上記金属層は、耐食性表面処理が施されたものであってもよい。
【0021】
上記構成によれば、熱処理や経時劣化等によって、金属層が腐食することを効果的に防止することができる。
【0022】
(9)本発明に係る形状保持型フレキシブル配線板は、上記形状保持フィルムと、上記フレキシブル配線板とが、上記接着剤層で接着されている。
【0023】
上記構成によれば、上記(1)から上記(8)の発明と同様の作用効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
(形状保持型フレキシブル配線板10の全体構成)
先ず、
図1及び
図2を用いて、本実施形態に係る形状保持型フレキシブル配線板10について説明する。
【0027】
形状保持型フレキシブル配線板10は、形状保持フィルム1と、フレキシブル配線板8とが接着剤層4で接着されてなり、これによって、折り曲げられる等して変形された状態で形状保持可能に形成されたものである。具体的には、形状保持型フレキシブル配線板10では、フレキシブル配線板8の上面に形状保持フィルム1が接着されるようになっている。フレキシブル配線板8は、柔軟性があり折り曲げられる等の変形可能なプリント配線板である。
【0028】
形状保持フィルム1は、塑性変形可能な金属層3と、金属層3の一方面側(下面側)に形成され、フレキシブル配線板に接着される接着剤層4とを備える。金属層3が塑性変形可能であるため、形状保持型フレキシブル配線板10が変形された場合に、金属層3によって、形状保持型フレキシブル配線板10を変形した状態で形状保持することができる。
【0029】
また、接着剤層4は、導電性を有するため、形状保持フィルム1が接着剤層4を介してフレキシブル配線板8に接着された状態で、金属層3とフレキシブル配線板8のグランド回路6bとを導通させることができる。これによって、本実施形態にかかる形状保持フィルム1は、フレキシブル配線板8から外部に進行する電界波、磁界波、電磁波及び静電気、及び外部からフレキシブル配線板8に進行する電界波、磁界波、電磁波及び静電気を良好に遮断することができるシールドフィルムとしても機能する。このため、形状保持フィルム1によって、フレキシブル配線板8の信号回路6aがノイズの影響を受けること等を効果的に防止することができる。
【0030】
なお、金属層3には、接着剤層4側(下側)とは反対の一方面側(上面側)に、金属層3の保護のために、保護層2が形成されている。これによって、金属層3が経時的に劣化することを効果的に防止することができる。
【0032】
(形状保持フィルム1の構成:金属層3)
金属層3は、上述したように塑性変形可能に形成されている。具体的には、金属層3は、塑性の金属である銅、銀、ニッケル、アルミ等のうちの一種以上を主成分としている。これによって、形状保持型フレキシブル配線板10が変形された状態で電子機器に搭載される場合に、この形状保持型フレキシブル配線板10に反発力が生じることを効果的に防止することができる。このため、電子機器内における形状保持型フレキシブル配線板10同士を繋ぎ合わせた部位において、上記反発力の発生により接続不具合が生じることを効果的に防止することができる。
【0033】
また、形状保持型フレキシブル配線板10を組み付ける際の作業性を良好にすることができる。例えば、形状保持型フレキシブル配線板10を折り曲げて電子機器等に組み付ける場合、作業者が折り曲げ状態を維持しなくても、形状保持フィルム1の良好な形状保持性によって、形状保持型フレキシブル配線板10が折り曲げ状態を維持する。このため、形状保持型フレキシブル配線板10を電子機器に組み付ける作業の負荷を軽減することができる。
【0034】
十分な塑性の金属層3を構成するために、金属層3の厚みは、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、更には、2μm以上がさらに好ましい。また、形状保持型フレキシブル配線板10を折り曲げ容易にするため、金属層3の厚みは、12μm以下が好ましく、9μm以下がより好ましく、6μm以下がさらに好ましい。
【0035】
また、金属層3は、金属箔であることが好ましい。これにより、所望の厚みの金属層を容易に得ることができると共に、蒸着法で形成された薄膜の金属層3よりも良好なシールド特性を得ることができる。
【0036】
更に好ましくは、金属層3は、圧延加工により形成されることが好ましい。これにより、形状保持フィルム1は良好な形状保持性を有することができる。なお、金属層3は、エッチングにより層厚が上述した範囲に調整されてもよい。
【0037】
なお、金属層3は、圧延加工により形成された金属箔であることに限定されず、電解による金属箔(特殊電解銅箔など)、真空蒸着、スパッタリング、CVD法、MO(メタルオーガニック)、メッキなどにより形成されるものであってもよい。
【0038】
(形状保持フィルム1の構成:接着剤層4)
接着剤層4は、導電性フィラーが添加されて形成される等方導電性および異方導電性のうち何れかの接着剤により形成されていてもよい。等方導電性接着剤で接着剤層4が形成されている場合には、厚み方向および幅方向、長手方向からなる三次元の全方向に電気的な導電状態を確保することができる。
【0039】
一方、異方導電性接着剤で接着剤層4が形成されている場合には、厚み方向からなる二次元の方向にだけ電気的な導電状態を確保することができる。これによって、異方導電性接着剤で接着剤層4が形成されている場合には、等方導電性接着剤で接着剤層4が形成されている場合に比較して、フレキシブル配線板が良好な伝送特性を有することができる。
【0040】
なお、接着剤層4の厚みは、2μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。また、接着剤層4の厚みは、15μm以下が好ましく、9μm以下がより好ましい。
【0041】
なお、接着剤層4は、接着性樹脂として、ポリスチレン系、酢酸ビニル系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリアミド系、ゴム系、アクリル系などの熱可塑性樹脂や、フェノール系、エポキシ系、ウレタン系、メラミン系、アルキッド系などの熱硬化性樹脂で構成されていてもよい。尚、接着剤は、上記樹脂の単体でも混合体でもよい。また、接着剤は、難燃剤や粘着性付与剤をさらに含んでいてもよい。粘着性付与剤としては、脂肪酸炭化水素樹脂、C5/C9混合樹脂、ロジン、ロジン誘導体、テルペン樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、熱反応性樹脂などのタッキファイヤーが挙げられる。
接着剤樹脂は、熱硬化性、熱可塑性、紫外線硬化性やリワーク性をもつ粘着性等を使用できるが、フレキシブル配線板の加工を考慮すると、熱硬化性、熱可塑性、粘着性であることが好ましい。
【0042】
接着剤層4に添加される導電性フィラーは、金属材料により一部または全部が形成されている。例えば、導電性フィラーは、銅粉、銀粉、ニッケル粉、銀コート銅粉(AgコートCu粉)、金コート銅粉、銀コートニッケル粉(AgコートNi粉)、金コートニッケル粉があり、これら金属粉は、アトマイズ法、カルボニル法などにより作製することができる。また、上記以外にも、金属粉に樹脂を被覆した粒子、樹脂に金属粉を被覆した粒子を用いることもできる。そして、接着剤層4には、1以上の種類の導電性フィラーが混合されて添加されてもよい。尚、導電性フィラーは、AgコートCu粉、またはAgコートNi粉であることが好ましい。この理由は、安価な材料により導電性の安定した導電性粒子を得ることができるからである。
【0043】
導電性フィラーの接着性樹脂への配合割合は、接着性樹脂100重量部に対して、下限は10重量部とするのが好ましく、上限は400重量部とするのが好ましい。また、接着剤層8bに異方導電性接着剤を用いる場合、導電性フィラーの接着性樹脂への配合割合は、接着性樹脂100重量部に対して下限は10重量部とするのが好ましく、上限は180重量部とするのが好ましい。また、接着剤層8bに等方導電性接着剤を用いる場合、導電性フィラーの接着性樹脂への配合割合は、接着性樹脂100重量部に対して下限は150重量部とするのが好ましく、上限は250重量部とするのが好ましい。また、導電性フィラーの平均粒径は、2μm〜20μmの範囲が好ましいが、接着剤層4の厚みによって最適な値を選択すればよい。金属フィラーの形状は、球状、針状、繊維状、フレーク状、樹枝状のいずれであってもよい。
【0044】
(形状保持フィルム1の構成:保護層2)
保護層2は、上述したように、金属層3を保護するためのものであり、例えば、カバーフィルムや絶縁樹脂のコーティング層からなる。カバーフィルムとしては、エンジニアリングプラスチック製のものであってもよい。例えば、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンツイミダゾール、アラミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などがエンジニアリングプラスチックとして挙げられる。なお、あまり耐熱性を要求されない場合は、安価なポリエステルフィルムが好ましく、難燃性が要求される場合においては、ポリフェニレンサルファイドフィルム、さらに耐熱性が要求される場合にはアラミドフィルムやポリイミドフィルムが好ましい。
【0045】
絶縁樹脂は、絶縁性を有する樹脂であればよく、例えば、次のような熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。すなわち、熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、アクリル変性シリコン樹脂などが挙げられる。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、エポキシアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、及びそれらのメタクリレート変性品などが挙げられる。尚、硬化形態としては、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化などどれでもよく、硬化するものであればよい。熱可塑性樹脂組成物としては、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等を用いることができる。
【0046】
尚、保護層2の厚みは、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。また、保護層2の厚みは、10μm以下が好ましく、7μm以下がより好ましい。また、保護層2は単一の層に限定されない。例えば、保護層2は、組成が異なる2以上の層からなっていてもよい。また、保護層2は、必要に応じて、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填剤、難燃剤、粘度調節剤、ブロッキング防止剤等が含まれていてもよい。
【0047】
(フレキシブル配線板8の構成)
フレキシブル配線板8は、ベースフィルム5、プリント回路6、及び、絶縁フィルム7が順次積層されてなるものである。
図1に示すように、プリント回路6の表面は、信号回路6aとグランド回路6bとからなる。なお、信号回路6a及びグランド回路6bは、例えば、導電性材料をエッチング処理することにより配線パターンが形成されてなる。
【0048】
グランド回路6bは、グランド電位を保つパターンである。グランド回路6bは、少なくとも一部(非絶縁部6c)を除いて、絶縁フィルム7によって被覆されている。絶縁フィルム7における非絶縁部6c上の位置には、導通用孔7aが形成されている。これによって、形状保持フィルム1がフレキシブル配線板8に接着された場合に、導通用孔7a内に接着剤層4の一部が入り込むようになり、グランド回路6bと金属層3とが電気的に接続される。
【0049】
また、信号回路6aは、所定の周波数の信号を伝送するためのものである。なお、本実施形態では、信号回路6aに、10MHz以上でありかつ10GHz以下である周波数の信号が伝送される。
【0050】
また、ベースフィルム5とプリント回路6との接合は、接着剤によって接着しても良いし、接着剤を用いない、所謂、無接着剤型銅張積層板と同様に接合しても良い。また、絶縁フィルム7は、可撓性絶縁フィルムを接着剤を用いて張り合わせても良いし、感光性絶縁樹脂の塗工、乾燥、露光、現像、熱処理などの一連の手法によって形成しても良い。接着剤を用いて絶縁フィルム7を貼付する場合は、この接着剤におけるグランド回路6b上の箇所についても導通用孔7aを形成する。
【0051】
また、更には、フレキシブル配線板8は、ベースフィルム5の一方の面にのみプリント回路を有する片面型FPC、ベースフィルム5の両面にプリント回路を有する両面型FPC、この様なFPCが複数層積層された多層型FPC、多層部品搭載部とケーブル部を有するフレクスボード(登録商標)や、多層部を構成する部材を硬質なものとしたフレックスリジッド基板等を適宜採用して実施することができる。
【0052】
また、ベースフィルム5、絶縁フィルム7はいずれもエンジニアリングプラスチックからなる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンツイミダゾール、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂が挙げられる。あまり耐熱性を要求されない場合は、安価なポリエステルフィルムが好ましく、難燃性が要求される場合においては、ポリフェニレンサルファイドフィルム、さらに耐熱性が要求される場合にはポリイミドフィルムが好ましい。
【0053】
尚、ベースフィルム5の厚みは、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましい。また、ベースフィルム5の厚みは、60μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましい。
【0054】
また、絶縁フィルム7の厚みは、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましい。また、絶縁フィルム7の厚みは、60μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましい。
【0055】
(形状保持フィルム1の製造方法)
本実施形態の形状保持フィルム1の製造方法の一例について説明する。
先ず、回転する1対のロールの間に銅を通して圧延加工を行い、厚みを第1寸法まで薄くする。この第1寸法は、3μm以上が好ましく、6μm以上がより好ましく、9μm以上がさらに好ましい。また、この第1寸法は35μm以下が好ましく、18μm以下がより好ましく、12μm以下がさらに好ましい。
【0056】
そして、圧延加工されて厚みが第1寸法になった銅箔に対して、エッチングを行なって、厚みを第2寸法まで薄くして金属層3を形成する。この第2寸法は、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。また、この第2寸法は、12μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましい。具体的には、例えば、第1寸法(例えば6μm)の厚みの銅箔を硫酸、過酸化水素水のエッチング液に浸して、第2寸法(例えば2μm)の厚みの銅箔になるように加工する。尚、エッチングされた銅箔面に対し、プラズマ処理を行なって接着性を改質することが好ましい。
【0057】
さらに、金属層3の一方面については、接着剤層4をコーティングする。また、形成した金属層3の他方面については、保護層2を貼付またはコーティングにより作製する。
【0058】
(形状保持型フレキシブル配線板10の製造方法)
先ず、フレキシブル配線板8の絶縁フィルム7に対して、レーザー加工などによって穴を開けて導通用孔7aを形成する。これにより、グランド回路6bの一部の領域が導通用孔7aにおいて外部に露出される。
【0059】
次に、フレキシブル配線板8の絶縁フィルム7上に、形状保持フィルム1が接着される。この接着時においては、ヒーターによって形状保持フィルム1を加熱しながら、プレス機によって上下方向からフレキシブル配線板8と形状保持フィルム1とを圧着する。これにより、形状保持フィルム1の接着剤層4がヒーターの熱によって軟らかくなり、プレス機の加圧によって絶縁フィルム7上に接着される。この際、柔らかくなった接着剤層4の一部が導通用孔7aに充填される。従って、導通用孔7aで露出していたグランド回路6bの一部が充填された接着剤層4に接着する。これにより、グランド回路6bと金属層3とが接着剤層4を介して電気的に接続され、形状保持型フレキシブル配線板10が製造されることになる。
【0060】
以上、本発明の実施形態を説明した。尚、本発明は上記の実施形態に限定される必要はない。
【0061】
以上の詳細な説明では、本発明をより容易に理解できるように、特徴的部分を中心に説明したが、本発明は、以上の詳細な説明に記載する実施形態に限定されず、その他の実施形態にも適用することができ、その適用範囲は可能な限り広く解釈されるべきである。以下に、本実施形態の変形例を説明する。
【0062】
(変形例)(1)金属層3は、耐食性表面処理が施されたものであってもよい。例えば、
図3で示す変形例に係る形状保持型フレキシブル配線板10Aのように、金属層3の表面(例えば下面)に、耐食性に優れた金属製材料(例えば、金や銀等の貴金属、ニッケル等)でメッキ層31が形成されてもよい。これによって、熱処理や経時劣化等によって、金属層3が腐食することを効果的に防止することができる。なお、金属層3は、腐食すると抵抗値が上がり、シールド効果が低減する。本変形例では、金属層3の表面にメッキ層31が形成されているため、金属層3の腐食を防止して、長期間に亘って低い電気抵抗の状態を維持することができる。これによって、長期間に亘って、形状保持フィルム1Aによるシールド効果を維持することができる。
図3では、金属層3の下面にメッキ層31が形成されているが、上面に形成されていてもよく、上面及び下面の両方に形成されていてもよい。
【0063】
なお、メッキ層31の形成方法としては、次のような方法がある。例えば大サイズの金属層3の上面をめっき浴に浸漬することでメッキ層31を形成する。その後に、金属層3の下面に接着剤層4を貼着またはコーティングし、メッキ層31の上面に保護層2を貼着またはコーティングをする。そして、このようにして形成された大サイズの形状保持フィルム1Aを縦方向及び横方向にそれぞれ所定の寸法で切断することによって、複数個の形状保持フィルム1Aが形成される。
【0064】
(2)また、接着剤層4が導電性を有さず、形状保持フィルム1が、金属層3とグランド回路6bとが電気的に接続されていなくてもよい。この変形例に係る形状保持型フレキシブル配線板10Bでは、
図4で示すようにグランド回路6bが形成されなくてもよい。
【0065】
(3)また、
図5で示す変形例に係る形状保持型フレキシブル配線板10Cのように、形状保持フィルム1Cに保護層2が形成されていなくてもよい。
【0066】
(4)また、
図1、
図2で示す本実施形態に係る形状保持型フレキシブル配線板10において、形状保持フィルム1はフレキシブル配線板8の片面に貼付されるものであったがこれに限定されない。例えば、形状保持フィルム1がフレキシブル配線板8の両面に貼付されるものでもよい。
【0067】
(5)また、
図1、
図2で示す本実施形態では、形状保持フィルム1では、金属層3には、接着剤層4側とは反対の一方面側に、保護層2が形成されているが、
図6Aで示す形状保持型フレキシブル配線板10Dにおける形状保持フィルム1Dのように、保護層2に代えて接着剤層4´が更に形成されていてもよい。また、
図6Bで示す形状保持型フレキシブル配線板10Eにおける形状保持フィルム1Eのように、保護層2の上に接着剤層4´が更に形成されていてもよい。このように、金属層3の両面側に接着剤層4、4´が形成されることにより、接着剤層4でフレキシブル配線板8に形状保持フィルム1D、1Eが接着可能であるとともに、接着剤層4´で電子機器の筐体内の他の場所に接着可能である。このため、折り曲げられた形状保持型フレキシブル配線板10D、10Eを、接着剤層4´を介して電子機器の筐体内の他の場所に接着することによって、更に形状保持型フレキシブル配線板10D、10Eに反発力が発生することを抑制でき、形状保持効果を高めることができる。なお、接着剤層4´(本発明の「接着剤層側とは反対の一方面側に形成された接着剤層」に相当)は、接着剤層4と同様に、必ずしも導電性を有する必要はないが、導電性を有していることが好ましい。接着剤層4´が導電性を有すれば、接着剤層4´を介して形状保持フィルム1D、1Eが外部グランドに接着された場合に、シールド効果を発揮することができる。なお、接着剤層4´は、前述の接着剤層4と同様のものを使用できるが、紫外線硬化性や粘着性を有することが好ましい。また、
図6A、
図6Bで示す構成において、(1)で示すように、更にメッキ層31を備えてもよい。
【0068】
本明細書において用いた用語及び語法は、本発明を的確に説明するために用いたものであり、本発明の解釈を制限するために用いたものではない。また、当業者であれば、本明細書に記載された発明の概念から、本発明の概念に含まれる他の構成、システム、方法等を推考することは容易であると思われる。従って、請求の範囲の記載は、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で均等な構成を含むものであるとみなされるべきである。また、本発明の目的及び本発明の効果を充分に理解するために、すでに開示されている文献等を充分に参酌することが望まれる。
【実施例】
【0069】
図7で示す試験装置を用いて形状保持フィルムにおける金属層の形状保持性(塑性)の試験を行った。この形状保持性の試験では、厚み50μm、縦寸法10mm、横寸法100mmのポリイミドフィルムの上面又は両面に所定の厚みを有する形状保持フィルムを形成した試験体51が用意された。なお、形状保持フィルムは、接着剤層の厚みが10μmであり、保護層の厚みが5μmのものが用いられた。
【0070】
具体的には、本試験においては、試験体51として、0.1μmの厚みを有する真空蒸着法による銀の金属層を備えた形状保持フィルムがポリイミドフィルムの上面に形成された実施例A1、6μmの厚みを有する銅の圧延箔(金属層)を備えた形状保持フィルムがポリイミドフィルムの上面に形成された実施例A2、2μmの厚みを有する銅(タフピッチ銅)の圧延箔(金属層)を備えた形状保持フィルムがポリイミドフィルムの上面に形成された実施例A3、及び、2μmの厚みを有する銅の圧延箔(JX日鉱日石金属株式会社製のHA箔:金属層)を備えた形状保持フィルムがポリイミドフィルムの上面に形成された実施例A4が用意された。
【0071】
更に、本試験においては、試験体51として、1μmの厚みを有する銅の電解箔(金属層)を備えた形状保持フィルムがポリイミドフィルムの上面に形成された実施例A5、2μmの厚みを有する銅の電解箔(金属層)を備えた形状保持フィルムがポリイミドフィルムの上面に形成された実施例A6、5μmの厚みを有する銅の電解箔(金属層)を備えた形状保持フィルムがポリイミドフィルムの上面に形成された実施例A7が用意された。
【0072】
また、本試験においては、試験体51として、0.1μmの厚みを有する銀の金属層を備えた形状保持フィルムがポリイミドフィルムの両面に形成された実施例B1、6μmの厚みを有する銅の圧延箔(金属層)を備えた形状保持フィルムがポリイミドフィルムの両面に形成された実施例B2、2μmの厚みを有する銅(タフピッチ銅)の圧延箔(金属層)を備えた形状保持フィルムがポリイミドフィルムの両面に形成された実施例B3、及び、2μmの厚みを有する銅の圧延箔(JX日鉱日石金属株式会社製のHA箔:金属層)を備えた形状保持フィルムがポリイミドフィルムの両面に形成された実施例B4が用意された。
【0073】
更に、本試験においては、試験体51として、1μmの厚みを有する銅の電解箔(金属層)を備えた形状保持フィルムがポリイミドフィルムの両面に形成された実施例B5、2μmの厚みを有する銅の電解箔(金属層)を備えた形状保持フィルムがポリイミドフィルムの両面に形成された実施例B6、5μmの厚みを有する銅の電解箔(金属層)を備えた形状保持フィルムがポリイミドフィルムの両面に形成された実施例B7が用意された。
【0074】
また、本試験においては、他に、試験体51として、形状保持フィルムが形成されていないポリイミドフィルム51のみから構成される比較例C1が用意された。
【0075】
なお、試験体51におけるポリイミドフィルムの上面又は両面への形状保持フィルムの形成は、次のような方法で行った。すなわち、ポリイミドフィルムの一面に形状保持フィルムを配置した状態で、170℃の雰囲気中において3MPaの加圧力で、ポリイミドフィルムを30分間加圧する処理(加圧処理)を行う。この加圧処理を、ポリイミドフィルムの上面又は両面について行うことで、ポリイミドフィルムの上面又は両面に形状保持フィルムが形成される。
【0076】
本試験において、上記実施例A1からA7、B1からB7、及び比較例C1についての形状保持性の試験を行った。具体的には、
図7で示すように、試験体51を、基板54(ポリプロピレン製)上に載置する。なお、基板54上には、スペーサとして、略平行な一対のステンレス板(図略)が配置されており、これらのステンレス板の間に試験体51が載置される。また、一対のステンレス板の間隔は、0.3mmであり、ステンレス板の厚みは、0.15mmである。そして、試験体51の中心付近の折曲部51aで山折りに折り曲げ、折曲部51aから一方側(
図7の右方側)である右部51bが、折曲部51aから他方側(
図7の左方側)である左部51cと対向する状態にする。なお、ポリイミドフィルム51を山折りにした場合に、実施例A1からA7については、形状保持フィルムが外側になる。
【0077】
上記のように基板54上に折り曲げられた試験体51を載置した状態で、上方からシリコンゴム板53によって、所定の加圧力(0.1MPa)で5秒間ポリイミドフィルム51をプレスした。その後1分経過後の右部51bと左部51cとの間の角度を、戻り角度として計測した。この計測結果が、表1に示されている。また、この表1の計測結果は、
図8のグラフでも示されている。
【0078】
【表1】
【0079】
上記表1において、比較例C1の戻り角度が134°であるのに対して、実施例A1からA7、及びB1からB7の戻り角度は、いずれも著しく小さくなっている。このことから、銀、銅等の塑性変形可能な金属層を備えた形状保持フィルムがフレキシブル配線板に貼着されることで、フレキシブル配線板を折り曲げた状態で形状保持可能であることが示される。また、特に、実施例A5では、戻り角度が102°となり、比較例C1よりも顕著に戻り角度が小さくなっており、金属層の厚みが1μm以上であれば、より好ましいことが示される。更に、実施例A3、A4、A6では、戻り角度が90°前後になっており、金属層の厚みが2μm以上であれば、更に優れた形状保持特性があることが示される。また、実施例A7では、戻り角度が31°になっており、金属層の厚みが5μm以上であれば、特に好ましいことが示される。
【0080】
また、実施例A1からA7と実施例B1からB7とを比較するに、実施例B1からB7の戻り角度が小さくなっている。このことから、フレキシブル配線板の両面に形状保持フィルムを貼着することが、より、形状保持効果の高い形状保持型フレキシブル配線板を形成することができることが示されている。