(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スタビライザバーに外挿状態で接着される筒状のゴム弾性体と、該ゴム弾性体の外周面上に装着されて車両ボデー側へ取り付けられるブラケットとを有する接着タイプのスタビライザブッシュにおいて、
前記ゴム弾性体の軸方向中間部分の外周面に重ね合わされる前記ブラケットの軸方向中間部分には、軸方向へ直線的に延びる中間ストレート部が設けられていると共に、
該ブラケットの軸方向両端部分には、軸方向へ直線的に延びて該ゴム弾性体の軸方向端部から外方にまで突出する端部ストレート部が設けられている一方、
該ブラケットにおける該中間ストレート部と各該端部ストレート部との間には、内周側に開口して周方向に延びる溝状部が設けられて、各該溝状部が該ゴム弾性体の軸方向両側部分の外周面に重ね合わされており、且つ
該ブラケットにおける該中間ストレート部の内周面半径寸法が該端部ストレート部の内周面半径寸法よりも小さくされていると共に、該ブラケットの該中間ストレート部における該ゴム弾性体の圧縮率が該ブラケットの該溝状部における該ゴム弾性体の圧縮率よりも大きくされていることを特徴とする接着タイプのスタビライザブッシュ。
前記ゴム弾性体に設けられて前記スタビライザバーに外挿される挿通孔が、一定の断面形状で直線的に延びている請求項1又は2に記載の接着タイプのスタビライザブッシュ。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車などの車両では、旋回時などにおける車体の傾きを抑えて走行安定性を向上させるためのスタビライザバーが用いられている。スタビライザバーは、アンチロールバーとも言われており、一般に左右のサスペンション部材の間に跨がって配設されていると共に、長さ方向の中間部分がスタビライザブッシュを介して車両ボデーに対して防振支持されている。
【0003】
かかるスタビライザブッシュは、一般に、スタビライザバーに対して筒状のゴム弾性体が外挿状態で装着されると共に、車両ボデー側に取り付けられるブラケットがゴム弾性体の外周面上に装着された構造となっている。
【0004】
ところで、スタビライザブッシュを構成するゴム弾性体の弾性変形によりスタビライザバーとゴム弾性体との間に隙間が発生すると、泥水等が浸入するおそれがあり、異音の原因にもなりやすい。そこで、特開平11−108096号公報(特許文献1)には、ゴム弾性体をスタビライザバーに対して外挿状態で接着した接着タイプのスタビライザブッシュが提案されている。
【0005】
ところが、従来の接着タイプのスタビライザブッシュについて本発明者が検討したところ、解決すべき問題点があった。すなわち、接着タイプのスタビライザブッシュでは、スタビライザバーに接着されているが故に、スタビライザバーの軸方向移動に際してゴム弾性体がブラケットから抜け出す方向に相対移動しやすく、ブラケットによる安定した保持が難しいという問題があった。
【0006】
なお、かかる問題に対処するために、本発明者は、ブラケットの軸方向両側部分の半径寸法を小さく絞って、ゴム弾性体に対する軸方向の抜け抗力を向上させることも試みた。しかしながら、軸方向の抜け抗力を十分に確保しようとすると、軸方向中央部分の半径寸法を大きくすると共に軸方向両端部分の半径寸法を小さくして両部分間における半径寸法差を大きく設定する必要があった。そのために、ゴム弾性体の軸方向中央部分が厚肉となって軸直角方向の硬いばね特性を設定し難くなり、要求されるスタビライザバーの支持特性の実現が難しくなるおそれがある。また、ゴム弾性体の軸方向両側部分が薄肉となることから、スタビライザバーがこじり方向に変位した際のゴム弾性体の圧縮率が大きくなって耐久性が低下するおそれがある。それ故、ブラケットの軸方向両側部分の半径寸法を小さく絞るだけでは、上述の問題に対する十分な解決策とはならなかったのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景としてなされたものであって、その解決課題とするところは、スタビライザバーに対して接着されて取り付けられる接着タイプのスタビライザブッシュにおいて、軸直角方向における硬いばね特性や良好な耐久性を確保しつつブラケットに対する軸方向の抜け抗力を得ることのできる、新規な構造のスタビライザブッシュを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0010】
本発明の第一の態様は、スタビライザバーに外挿状態で接着される筒状のゴム弾性体と、該ゴム弾性体の外周面上に装着されて車両ボデー側へ取り付けられるブラケットとを有する接着タイプのスタビライザブッシュにおいて、前記ゴム弾性体の軸方向中間部分の外周面に重ね合わされる前記ブラケットの軸方向中間部分には、軸方向へ直線的に延びる中間ストレート部が設けられていると共に、該ブラケットの軸方向両端部分には、軸方向へ直線的に延びて該ゴム弾性体の軸方向端部から外方にまで突出する端部ストレート部が設けられている一方、該ブラケットにおける該中間ストレート部と各該端部ストレート部との間には、内周側に開口して周方向に延びる溝状部が設けられて、各該溝状部が該ゴム弾性体の軸方向両側部分の外周面に重ね合わされており、且つ該ブラケットにおける該中間ストレート部の内周面半径寸法が該端部ストレート部の内周面半径寸法よりも小さ
くされていると共に、該ブラケットの該中間ストレート部における該ゴム弾性体の圧縮率が該ブラケットの該溝状部における該ゴム弾性体の圧縮率よりも大きくされている接着タイプのスタビライザブッシュを、特徴とする。
【0011】
本態様に従う構造とされたスタビライザブッシュでは、ブラケットに中間ストレート部と端部ストレート部とが設けられていることにより、ゴム弾性体に対するブラケットの軸方向部抜け抗力が、ブラケットの端部ストレート部に加えて中間ストレート部の軸方向両側部分においても発揮され得る。しかも、ブラケットの中間ストレート部は半径寸法を小さく設定できるから、スタビライザブッシュの軸直角方向でのばね特性が過度に柔らかくなってしまうことを回避できる。更に、ゴム弾性体の半径方向の肉厚寸法は、ブラケットの中間ストレート部の両側に設けた溝状部で大きくされていることから、スタビライザバーがこじり方向に変位した際のゴム弾性体の圧縮率も、溝状部を設けない形状に比べて軽減される。しかも、ブラケットの端部ストレート部の半径寸法が中間ストレート部よりも大きくされており且つ先細り形状ともされていないことから、こじり荷重の入力でゴム弾性体が変形して、たとえブラケットの端部ストレート部内で軸方向に膨らんだ場合でも、端部ストレート部の圧縮率の増大が抑えられることとなり、耐久性の確保も容易となる。
【0012】
従って、本態様に従えば、軸直角方向における硬いばね特性や良好な耐久性を確保しつつブラケットに対する軸方向の抜け抗力を得ることのできる、新規な構造とされた接着タイプのスタビライザブッシュが実現可能となるのである。
【0013】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る接着タイプのスタビライザブッシュにおいて、前記ゴム弾性体の軸方向端部が、前記ブラケットの前記端部ストレート部の内周に位置しているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされたスタビライザブッシュでは、ゴム弾性体の軸方向端部がブラケットの溝状部を軸方向に越えて位置することから、例えばブラケットの溝状部内にゴム弾性体の軸方向端部が位置している場合に比して、荷重入力時におけるゴム弾性体の軸方向端部の圧縮量の増大をより効率的に抑えることが可能になる。即ち、ブラケットの両端部分におけるスタビライザバーとの対向面間距離は、溝状部では軸方向外方に向かって次第に小さくなるが、端部ストレート部では略一定とされる。一方、こじり方向等の荷重入力で圧縮変形して軸方向に膨らむゴム弾性体には、軸方向端部に比較的大きな圧縮変形が生ぜしめられる。そして、スタビライザバーとの対向面間距離が軸方向外方に向かって次第に小さくなっている溝状部に比べると、かかる対向面間距離が略一定とされた端部ストレート部の方が、弾性変形により軸方向に膨らむゴム弾性体の端部に対する圧縮変形量の増大を小さく抑えることができる。
【0015】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係る接着タイプのスタビライザブッシュにおいて、前記ゴム弾性体に設けられて前記スタビライザバーに外挿される挿通孔が、一定の断面形状で直線的に延びているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされたスタビライザブッシュでは、例えば特許文献1の
図3に記載のようにスタビライザバーに特別な形状加工を必要とすることなく、ゴム弾性体のスタビライザバーへの接着によってスタビライザブッシュをスタビライザバーの軸方向で位置決めしつつ、本発明によるブラケットのゴム弾性体への軸方向位置決め効果も併せて享受することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に従う構造とされたスタビライザブッシュによれば、ブラケットの軸方向中間部分に小径の中間ストレート部が設けられていることから、軸直角方向における硬いばね特性を設定することが容易となる。また、溝状部が設けられたブラケットがゴム弾性体の外周面に重ね合わされることにより、ブラケットからのゴム弾性体の抜けが効果的に防止され得る。さらに、ブラケットにおいて、中間ストレート部よりも端部ストレート部の方が、内周面半径寸法が大きくされていることから、ゴム弾性体の軸方向両端部分における圧縮変形量が小さくされて、耐久性の向上が図られ得る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
先ず、
図1〜5には、本発明の一実施形態としての接着タイプのスタビライザブッシュ10が示されている。このスタビライザブッシュ10は、略筒状のゴム弾性体12と、当該ゴム弾性体12の外周面14上に装着されるブラケット16とから構成されている。そして、ゴム弾性体12がスタビライザバー18に外挿状態で接着されるとともに、ブラケット16が車両ボデー20側に取り付けられることで、スタビライザブッシュ10によりスタビライザバー18の長さ方向中間部分が車両ボデー20に防振支持せしめられている。なお、以下の説明において、軸方向とは、スタビライザバー18の中心軸方向となる
図2中の上下方向を言う。また、上下方向とは、
図3中の上下方向を言うが、車両装着状態における上下などの方向が限定されるものではない。
【0021】
より詳細には、ゴム弾性体12は、単品状態が
図6,7に示されているように、略小鉤形の断面形状で軸方向に延びる全体形状を有している。また、断面の略中央には、スタビライザバー18が挿通される挿通孔22が形成されている。この挿通孔22は、略一定の円形断面で軸方向の全長に亘ってストレートに延びており、ゴム弾性体12を貫通している。
【0022】
すなわち、ゴム弾性体12における挿通孔22周りの周壁部は、挿通孔22の周囲で略半周に亘って延びる半円弧状断面の上壁部24と、上壁部24の周方向両端からそれぞれ接線方向で下方に延びる側壁部26,26と、両側壁部26,26の下方端を相互に接続する下壁部28とから構成されている。そして、ゴム弾性体12の外周面14が、上壁部24と側壁部26,26と下壁部28との各外周面によって構成されている。
【0023】
なお、挿通孔22の内径寸法は、スタビライザバー18の径寸法と略等しいか僅かに大きくされている。また、ゴム弾性体12における挿通孔22回りの周壁部には、周上の一箇所において略軸方向に延びるスリット状の切割り29が設けられている。そして、この切割り29を開くようにゴム弾性体12を弾性変形させることで、スタビライザバー18の側方からゴム弾性体12を外挿状態に組み付けることができるようになっている。
【0024】
かかるゴム弾性体12の軸方向中間部分には、下壁部28を除く外周面14を周方向に延びる凹溝30が設けられている。この凹溝30の溝底面は、ゴム弾性体12の外周面14によって構成されており、ゴム弾性体12の軸方向となる溝幅方向で所定長さにわたってゴム弾性体12の軸方向へ直線状に延びる略平底面とされている。
【0025】
また、ゴム弾性体12の軸方向両側部分には、外周に向かって湾曲凸状に突出する山形断面で周方向に延びる山部32,32が設けられている。これらの山部32,32は、凹溝30の溝幅方向両側の壁部を構成しており、凹溝30の全長に亘って、下壁部28を除く外周面14を周方向に延びるように形成されている。換言すれば、両側の山部32,32は、凹溝30によって軸方向で所定距離だけ相互に隔てられている。
【0026】
なお、ゴム弾性体12の外周面14において、軸方向略中央に位置する凹溝30の溝底面から両壁内面および両側の山部32,32の湾曲凸面を経て軸方向両端側に至る表面は、ゴム弾性体12の軸方向で滑らかに連続して形成されている。即ち、
図7に示すゴム弾性体12の縦断面において、凹溝30と山部32,32が形成された外周面は、軸方向の全長に亘って、共通接線をもって連続的に変化することで、折れ点のない曲線または直線で構成されている。
【0027】
そして、ゴム弾性体12の実質的な厚さ寸法である挿通孔22の周壁厚さは、凹溝30や山部32,32が形成されることにより軸方向で変化している。すなわち、
図7に示されているように、ゴム弾性体12の厚さ寸法は、凹溝30の底部で最も小さなDcとされていると共に、各山部32の頂部で最も大きなDmとされている。なお、本実施形態において山部32の外側の裾部となる軸方向両端の厚さ寸法は、凹溝30の形成部位の厚さ寸法Dcよりも大きなDoとされている。
【0028】
また、ゴム弾性体12における下壁部28の下端面は、略全体に亘って矩形状に広がる平坦面とされている。更にまた、ゴム弾性体12の装着前の単品状態では、軸方向両端面35,35がそれぞれ軸直角方向に広がる略平坦面とされている。
【0029】
なお、かかるゴム弾性体12の材質は特に限定されるものでないが、例えば天然ゴム(NR)や、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)などの合成ゴム材料を用いて形成されることが望ましい。
【0030】
一方、ブラケット16は、
図8,9に示されているように、所定幅をもって略U字形(
図8では逆U字状)に延びる帯板状の装着部36を有している。また、装着部36においてU字形に開口する両端縁には、互いに反対側に向かって略直角に屈曲されて広がる平板形の取付脚部38,38が一体形成されている。
【0031】
装着部36は、ゴム弾性体12における底面を除く外周面14に重ね合わされて装着されるようになっており、ゴム弾性体12の表面形状に対応してゴム弾性体12の軸方向となる板幅方向で湾曲した内周面形状とされている。すなわち、装着部36は、ゴム弾性体12の周方向となる長さ方向で中央部分に位置して半円弧状に延びる湾曲壁部40を有している。更に、かかる湾曲壁部40の周方向両端からは、それぞれ下方に延びる縦壁部42,42が一体的に形成されている。
【0032】
また、装着部36は、ゴム弾性体12の外周面14の形状に対応していることから、装着部36の幅方向中間部分には、ゴム弾性体12の凹溝30に対応して、幅方向(ゴム弾性体12の軸方向)へ直線的に延びる中間ストレート部44が設けられている。更にまた、装着部36の幅方向両側部分には、ゴム弾性体12の山部32,32に対応して、内周側に開口して周方向に延びる溝状部46,46が形成されている。さらに、各溝状部46において、中間ストレート部44と反対側に位置する、装着部36の幅方向両端部分には、幅方向(ゴム弾性体12の軸方向)へ直線的に延びる端部ストレート部48,48が設けられている。
【0033】
なお、本実施形態では、
図9に示されるブラケット16の縦断面において、溝状部46,46がそれぞれ1/3周程度の円弧形状とされている。また
、中間ストレート部44の長さ寸法(ゴム弾性体12の軸方向寸法)に比して、各端部ストレート部48,48の長さ寸法(ゴム弾性体12の軸方向寸法)が小さくされている。
【0034】
かくの如き形状とされた装着部36は、ゴム弾性体12の外周面形状に対応した内周面形状を有しており、
図9に示される縦断面において、一方の端部ストレート部48から他方の端部ストレート部48までが、折れ点を有することなく連続して滑らかにつながる直線又は曲線からなる表面形状とされている。
【0035】
なお、装着部36において、ゴム弾性体12の外周面14に対応する形状は、内周面49に設けられていれば良く、装着部36の外周面などの形状は限定されるものでない。尤も、本実施形態では、プレス成形金具からなるブラケット16が採用されており、装着部36の全体に亘って略一定の板厚寸法とされていることから、装着部36の外周面も対応する表面形状とされている。
【0036】
ここにおいて、装着部36では、
図8,9に示されるように、中間ストレート部44における湾曲壁部40の周方向の曲率半径(中間ストレート部44の内周面半径寸法)Rcが、溝状部46,46における湾曲壁部40の周方向の曲率半径(溝状部46,46の内周面半径寸法)Rmよりも小さくされている。また、端部ストレート部48,48における湾曲壁部40の周方向曲率半径(端部ストレート部48,48の内周面半径寸法)Roが、中間ストレート部44における湾曲壁部40の周方向曲率半径Rcよりも大きく、且つ溝状部46,46における湾曲壁部40の周方向曲率半径Rmよりも小さくされている。
【0037】
上記の如き形状とされた装着部36と一対の取付脚部38,38とを一体的に備えたブラケット16は、例えば鉄やステンレスなどの金属板に対してプレス加工を施すことにより形成され得る。また、各取付脚部38には、中央部分を板厚方向に貫通するボルト孔50が、打抜プレス加工などによって形成されている。
【0038】
上述の如き構造とされた本実施形態のスタビライザブッシュ10は、自動車の車両ボデー20に取り付けられてスタビライザバーを車両ボデー20に対して防振支持せしめることとなる。その際、ゴム弾性体12はスタビライザバーに対して外挿状態で接着される一方、ゴム弾性体12の外周面に装着されたブラケット16が、取付脚部38,38において、ボルト孔50,50に挿通される固定ボルト52,52によって車両ボデー20へ固定される。
【0039】
なお、ゴム弾性体12をスタビライザバー18へ接着するに際しては、例えばスタビライザバー18の表面に対して必要に応じて接着前処理を行った後、ゴム弾性体12の挿通孔22の内面とスタビライザバー18の外面との少なくとも一方に接着剤を塗布する。その後、スタビライザバー18に外挿状態で組み付けたゴム弾性体12に対して、必要に応じて径方向の圧縮力を外周面から及ぼしつつ、接着処理を施す。
【0040】
なお、上記の如きゴム弾性体12とスタビライザ
バー18との接着処理に際して、ゴム弾性体12に圧縮力を及ぼすには、ブラケット16を用いることも可能であるが、適宜の治具を用いてゴム弾性体12の外周面14に押圧力を及ぼしても良い。
【0041】
また、スタビライザブッシュ10の車両への装着時においてゴム弾性体12へブラケット16を組み付ける際には、ゴム弾性体12の外周面形状とブラケット16の内周面形状とが対応していることから、ブラケット16の溝状部46,46にゴム弾性体12の山部32,32が入り込むとともに、ゴム弾性体12の凹溝30にブラケット16の中間ストレート部44が入り込んで、ゴム弾性体12とブラケット16とが軸方向で位置決めされる。
【0042】
なお、単品状態におけるゴム弾性体12の外周面形状(例えば、
図6中のTg)に比して、ブラケット16の内周面形状(例えば、
図9中のTb)は、僅かに小さくされている。これにより、スタビライザブッシュ10の車両への装着状態では、ゴム弾性体12の外周面に対して径方向の圧縮力が及ぼされる。そして、スタビライザバー18とブラケット16および車両ボデー20との間で、ゴム弾性体12の挿通孔22回りの周壁部が径方向に圧縮変形されるようになっている。なお、
図5では、ゴム弾性体12が圧縮変形した装着状態を、ゴム弾性体12の軸方向両端面35,35が軸方向外方への僅かに膨出変形した態様をもって示している。
【0043】
本実施形態では、ゴム弾性体12の軸方向両端面35,35が、単品状態でも、端部ストレート部48,48の内周に位置しているが、スタビライザブッシュ10の車両装着状態において、軸直角方向やこじり方向の入力荷重でゴム弾性体12が圧縮変形した場合でも、軸方向両端面35,35が端部ストレート部48,48内に収まるように、ブラケット16の軸方向両端部である端部ストレート部48,48が、ゴム弾性体12の軸方向両端部よりも所定長さで軸方向外方まで突出されている。
【0044】
このように、ゴム弾性体12が圧縮状態で装着されることにより、ゴム弾性体12の耐久性の向上やスタビライザバー18の防振支持特性の向上が図られると共に、ゴム弾性体12ブラケット16との間への泥水の浸入も防止され得る。
【0045】
以上の如き構造とされたスタビライザブッシュ10では、ブラケット16の軸方向中間部分における内周面半径寸法が小さく設定されることから、ゴム弾性体12の軸方向中間部分におけるゴムボリュームが小さく抑えられる。これにより、スタビライザバー18が軸直角方向に変位する際にゴム弾性体12の変形量が小さくされて、硬いばね特性が発揮される。特に本実施形態では、ブラケット16の中間ストレート部44が所定の軸方向寸法を有していることから、硬いばね特性を維持しつつ全体的なゴムボリュームも確保して耐久性や耐荷重性を確保することも容易となる。また、ブラケット16における中間ストレート部44の内周面半径寸法Rcや端部ストレート部48,48の内周面半径寸法Ro、中間ストレート部44の軸方向寸法などを適宜設定することにより、発揮されるばね特性を調節することができることから、軸直角方向だけでなくこじり方向のばね特性などゴム弾性体12の特性のチューニング自由度も向上され得る。
【0046】
さらに、ブラケット16の軸方向両端部の端部ストレート部48,48では、中間ストレート部44より大径とされて、スタビライザバー18からの離隔距離が大きくされていることから、スタビライザバー18がこじり方向に大きく変位した際のブラケット16への干渉も効果的に回避され得る。
【0047】
また、中間ストレート部44の軸方向両側には、中間ストレート部44よりも内周面半径寸法が大きくされた溝状部46,46が設けられていることから、ゴムボリュームが大きく確保されて、溝状部46,46における圧縮率が中間ストレート部44における圧縮率よりも小さくされる。それに加えて、端部ストレート部48,48の内周面半径寸法Roが、中間ストレート部44の内周面半径寸法Rcより大きくされていることから、スタビライザバー18がこじり方向に変位する際のゴム弾性体12の圧縮率が、両端部分において過大になることも回避される。その結果、こじり方向のばね特性を適切な範囲でチューニングできると共に、ゴム弾性体12ひいてはスタビライザブッシュ10の耐久性の向上も図られ得る。
【0048】
加えて、ブラケット16の軸方向両端部分が軸方向にストレートに延びる端部ストレート部48,48とされていることから、例えばブラケットの軸方向両端部分が軸方向外方に行くに従って内周側に向かって傾斜する場合に比して、軸直角方向やこじり方向の荷重入力に際してゴム弾性体12の軸方向端部が端部ストレート部48内へ膨らんだ場合でも、ゴム弾性体12の変形率の著しい増大やそれに伴う高ばね化が軽減され得る。
【0049】
また、ゴム弾性体12とブラケット16との組付状態では、ゴム弾性体12の山部32,32がブラケット16の溝状部46,46に入り込むと共にブラケット16の中間ストレート部44がゴム弾性体12の凹溝30に入り込むことから、ゴム弾性体12とブラケット16との軸方向での係合面積を大きく確保することができ、ゴム弾性体12とブラケット16との位置決め作用と抜け抵抗作用とが一層効果的に発揮され得る。
【0050】
すなわち、ゴム弾性体12とブラケット16との間に軸方向の外力が及ぼされた際には、ゴム弾性体12の山部32の軸方向外側面に対してブラケット16の溝状部46の軸方向外側壁部が押し付けられることに加えて、ゴム弾性体の山部32の軸方向内側面に対しても、ブラケット16の溝状部46の軸方向内側壁部が押し付けられることとなる。このように軸方向で異なる2箇所において、ゴム弾性体12とブラケット16との軸方向の係合部が存在することから、ゴム弾性体12に対するブラケット16の軸方向抜け抗力を効率的に得ることが可能になる。
【0051】
特に後者の、ブラケット16の溝状部46の軸方向内側壁部が押し付けられるゴム弾性体の山部32の軸方向内側面は、径方向高さ(Rm−Rc)が、ブラケット16の溝状部46の軸方向外側壁部が押し付けられるゴム弾性体12の山部32の軸方向外側面の径方向高さ(Rm−Ro)に比して大きくされていることに加えて、自由表面とされるゴム弾性体12の軸方向端面35までの距離が長くされてブラケット16で拘束状態にあることから、大きな軸方向抜け抗力をより効率的に得ることが可能となる。
【0052】
更にまた、本実施形態では、車両装着時において、ゴム弾性体12の軸方向両端部が端部ストレート部48,48の内周に位置していることから、ゴム弾性体の軸方向両端部が溝状部の内周に位置する場合に比して、軸直角方向やこじり方向の荷重入力に際してのゴム弾性体12の軸方向への膨出変形が容易に許容されて耐久性の向上が図られ得る。特に、端部ストレート部48,48の内周面半径寸法Roが中間ストレート部44の内周面半径寸法Rcより大きくされていることから、こじり方向の荷重入力に際してのゴム弾性体12の過大な変形も回避され得る。
【0053】
また、ゴム弾性体12においてスタビライザバー18が挿通される挿通孔22が軸方向で一定の断面形状で直線的に延びていることから、挿通孔22の形成や、ゴム弾性体12のスタビライザバー18への装着において、特別な加工や処理が必要とされず、スタビライザブッシュ10の製造が容易とされる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
【0055】
たとえば、中間ストレート部や端部ストレート部は、本発明の効果が発揮される限り、中心軸と厳密に平行である必要はなく、軸方向で僅かに傾斜していてもよい。その際、中間ストレート部は、軸方向中央から軸方向両側に向かって対称的な傾斜が付されることが望ましく、一対の端部ストレート部は、相互に対称的な傾斜が付されることが望ましい。これにより、ブラケットの全体が対称形状とされて、製造や組付けが容易になるとともに、所期のばね特性が安定して発揮され得る。なお、端部ストレート部に傾斜を付す場合には、少なくとも荷重入力に際してゴム弾性体が膨らんで至る領域において、中間ストレート部の内周面における最小の半径寸法よりも大きな半径寸法の内周面が設定されていればよい。
【0056】
また、中間ストレート部および端部ストレート部の軸方向寸法は、要求される特性などに応じて適宜に設定可能である。例えば、中間ストレート部の軸方向寸法を大きくすることで、軸直角方向のばね特性をより硬くするように調節することも可能である。さらに、端部ストレート部は、ゴム弾性体の変形時に軸方向に膨らむ位置を少なくとも覆い得る長さを設定することが望ましいが、より好適には、例えばスタビライザバーへゴム弾性体を外挿して接着処理する際の外周押え金具としてもブラケットを利用するような場合には、接着処理用の装置へ位置決めや固定等することを考慮して端部ストレート部の寸法や形状を適宜に調節することも可能である。
【0057】
更にまた、前記実施形態では、単品状態におけるゴム弾性体12の軸方向両端面35,35がそれぞれ、軸直角方向に広がる平坦面とされており、また、車両装着状態においては、軸方向両端面35,35の径方向中間部分が軸方向外方に膨出変形した形状とされていたが、かかる態様に限定されるものではない。たとえば、単品状態や車両装着状態において、軸方向両端面を、内周側と外周側の少なくとも一方を径方向中間部分に比して軸方向外方に突出させた湾曲形状とすることで、軸方向全体の自由表面積を大きくしたり、スタビライザバーへの接着面積やブラケットへの重ね合わせ面積を大きく確保することなども可能である。
【0058】
また、単品状態におけるゴム弾性体における外周面の形状は、前記実施形態に記載のものに限定されない。すなわち、車両への装着状態で前記実施形態の如き凹溝30や山部32,32が設けられていれば良い。また、ゴム弾性体の断面形状は、前記実施形態の如き略小鉤状に限定されるものでもないし、要求される特性を考慮して、例えばゴム弾性体に対して湾曲プレート状の補強部材である公知のインターリング等を埋設することも可能である。