(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
質量%で、C:0.03〜0.1%、Si:0.01〜1.2%、Mn:1.2〜1.9%、Al:0.01〜0.08%、Cr:0.005〜0.8%、Mo:0.01〜0.12%、P:0.01〜0.05%、S:0.001〜0.005%、N:0.001〜0.01%、Nb、Ti、及びVのうち選択された1種以上の和:0.001〜0.15%、残部Fe及びその他の不可避不純物からなり、
前記各成分は下記数式1を満たし、引張強さ(MPa)と穴広げ率(%)の積が48000以上であり、
5〜20%のベイナイトと残部フェライトからなる微細組織を有する、溶接性及びバーリング性に優れた熱延鋼板。
10.646+0.2[C]+0.25[Si]+0.3[Mn]−0.1[Cr]+0.55[Al]+0.2[Mo]−4.23[Ti]−2.5[Nb]−2.9[V]≦11.1 [数式(1)]
(但し、前記数式1においてC、Si、Mn、Cr、Al、Mo、Ti、Nb、及びVはそれぞれ該当元素の含量(質量%)である)
質量%で、C:0.03〜0.1%、Si:0.01〜1.2%、Mn:1.2〜1.9%、Al:0.01〜0.08%、Cr:0.005〜0.8%、Mo:0.01〜0.12%、P:0.01〜0.05%、S:0.001〜0.005%、N:0.001〜0.01%、Nb、Ti、及びVのうち選択された1種以上の和:0.001〜0.15%、残部Fe及びその他の不可避不純物からなり、前記各成分が下記数式1を満たす鋼スラブを設ける段階と、
前記鋼スラブを1200〜1300℃で再加熱する段階と、
前記再加熱された鋼スラブを850〜1000℃の仕上げ圧延温度で熱間圧延して鋼板を得る段階と、
前記熱間圧延された鋼板を500〜750℃の温度まで10〜100℃/秒の冷却速度で1次冷却する段階と、
前記冷却された鋼板を4〜10秒間空冷する段階と、
前記空冷された鋼板を300〜500℃の温度まで10〜100℃/秒の冷却速度で2次冷却して熱延鋼板を得る段階と、を含み、
前記熱延鋼板は、引張強さ(MPa)と穴広げ率(%)の積が48000以上であり、5〜20%のベイナイトと残部フェライトからなる微細組織を有する、溶接性及びバーリング性に優れた熱延鋼板の製造方法。
10.646+0.2[C]+0.25[Si]+0.3[Mn]−0.1[Cr]+0.55[Al]+0.2[Mo]−4.23[Ti]−2.5[Nb]−2.9[V]≦11.1 [数式(1)]
(但し、前記数式1においてC、Si、Mn、Cr、Al、Mo、Ti、Nb、及びVはそれぞれ該当元素の含量(質量%)である)
前記酸洗する段階後に、450〜480℃で再加熱し、溶融亜鉛めっきを行う段階をさらに含む、請求項3に記載の溶接性及びバーリング性に優れた熱延鋼板の製造方法。
【背景技術】
【0002】
最近、自動車業界ではCO
2排出量の低減のための軽量化、及び衝突安定性を向上させるための車体の強化を両立させるために、自動車車体への高強度鋼板(High Tensile Strength Steel)の適用が広がっている。高強度鋼板は、このような相反する要請を実現する費用に対する効果に優れた材料であり、今後さらに厳しくなる規制に対応すべく、その適用量が次第に増大すると思われる。特に、衝突安定性に対する関心が高まるにつれて、その役割が次第に大きくなっている。
【0003】
一般的に、材料は高強度になるほど成形性が悪くなる。鉄鋼材料においても例外ではなく今まで高強度と高延性の両立に対する試みが行われている。また、自動車部品に使用される材料に求められる特性としては、延性の他にバーリング加工性がある。しかし、バーリング加工性も高強度化に伴って低下する傾向を示すため、バーリング加工性の向上も高強度鋼板の自動車部品への適用に関する課題となっている。一方、自動車部品は、プレス成形等によって加工された部材がスポット、アーク、プラズマ、レーザー等の溶接によって組み立てられる。また、最近は、鋼板をこれら溶接によって接合してからプレス成形する場合もある。成形時に、または部品として組み立て付着されて使用されたときの溶接部の強度は、成形限界及び安定性の側面で非常に重要である。したがって、自動車部品等への高強度鋼板の適用においては、そのバーリング加工性とともに溶接部の強度も重要な検討課題となる。
【0004】
特許文献1では、熱間圧延後に、700℃前後の温度まで冷却させた後、一定の時間空冷し、再び冷却して巻取する3段冷却を用いることにより、フェライト−ベイナイト組織を形成して
穴広げ率を向上させる技術を提案している。また、特許文献2では、フェライト−ベイナイト組織で制御し、このとき、フェライト比率が80%以上になるようにするとともに、結晶粒子の短い直径(ds)と長い直径(dl)の比が0.1である結晶粒子が80%以上になるようにして、69kg/cm
2以上の強度を有し、延伸率及び
穴広げ率にともに優れた熱延鋼板を製造する技術を提案している。
【0005】
しかし、上述のような技術は、Si、Mn、Al、Mo等の合金成分を主に活用してフェライト−ベイナイトの二相複合組織鋼を製造する。しかし、このような合金成分は、電気抵抗溶接時に電気抵抗を増加させて抵抗発熱が激しくなるか、または入力電流値を低くして作業する場合に冷接が生じるという問題がある。また、Si、Mn、Al等は溶接時に酸化物を形成して溶接部の健全性を低下させるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一側面は、電気抵抗溶接性に優れるため溶接作業が容易であり、バーリング性に優れた熱延鋼板及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、
質量%で、C:0.03〜0.1%、Si:0.01〜1.2%、Mn:1.2〜1.9%、Al:0.01〜0.08%、Cr:0.005〜0.8%、Mo:0.01〜0.12%、P:0.01〜0.05%、S:0.001〜0.005%、N:0.001〜0.01%、残部Fe及びその他の不可避不純物を含み、上記各成分は下記数式1を満たし、引張強さと
穴広げ率の積が48000以上である溶接性及びバーリング性に優れた熱延鋼板を提供する。
【0009】
10.646+0.2[C]+0.25[Si]+0.3[Mn]−0.1[Cr]+0.55[Al]+0.2[Mo]−4.23[Ti]−2.5[Nb]−2.9[V]≦11.1 [数式(1)]
但し、上記数式1においてC、Si、Mn、Cr、Al、Mo、Ti、Nb、及びVはそれぞれ該当元素の含量(
質量%)を示す。
【0010】
本発明の他の一側面である溶接性及びバーリング性に優れた熱延鋼板の製造方法は、
質量%で、C:0.03〜0.1%、Si:0.01〜1.2%、Mn:1.2〜1.9%、Al:0.01〜0.08%、Cr:0.005〜0.8%、Mo:0.01〜0.12%、P:0.01〜0.05%、S:0.001〜0.005%、N:0.001〜0.01%、残部Fe及びその他の不可避不純物を含み、上記各成分が下記数式1を満たす鋼スラブを設ける段階と、上記鋼スラブを1200〜1300℃で再加熱する段階と、上記再加熱された鋼スラブを850〜1000℃の仕上げ圧延温度で熱間圧延して鋼板を得る段階と、上記熱間圧延された鋼板を500〜750℃の温度まで10〜100℃/秒の冷却速度で1次冷却する段階と、上記冷却された鋼板を4〜10秒間空冷する段階と、上記空冷された鋼板を300〜500℃の温度まで10〜100℃/秒の冷却速度で2次冷却する段階と、を含む。
【0011】
10.646+0.2[C]+0.25[Si]+0.3[Mn]−0.1[Cr]+0.55[Al]+0.2[Mo]−4.23[Ti]−2.5[Nb]−2.9[V]≦11.1 [数式(1)]
但し、上記数式1においてC、Si、Mn、Cr、Al、Mo、Ti、Nb、及びVはそれぞれ該当元素の含量(
質量%)を示す。
【0012】
さらに、上述の課題の解決手段は本発明の特徴をすべて列挙したものではない。本発明の多様な特徴とそれによる長所及び効果は以下の具体的な実施形態を参照してより詳細に理解されることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、鋼の成分及び熱延組織を最適化することにより、引張強さと
穴広げ率の積が48000以上であり、溶接時の溶接部の健全性が向上して溶接性及びバーリング性に優れた熱延鋼板を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、上記した技術が解決できなかった問題点を克服することができる熱延鋼板を開発するために研究した結果、鋼の組成成分、微細組織、及び工程条件を制御することにより、溶接性及びバーリング性に優れた熱延鋼板を生産することができることを確認し本発明に至った。
【0016】
以下、本発明の一側面である溶接性及びバーリング性に優れた熱延鋼板について詳細に説明する。
【0017】
本発明の一側面は、
質量%で、C:0.03〜0.1%、Si:0.01〜1.2%、Mn:1.2〜1.9%、Al:0.01〜0.08%、Cr:0.005〜0.8%、Mo:0.01〜0.12%、P:0.01〜0.05%、S:0.001〜0.005%、N:0.001〜0.01%、残部Fe及びその他の不可避不純物を含み、上記各成分は下記数式1を満たし、引張強さと
穴広げ率の積が48000以上である溶接性及びバーリング性に優れた熱延鋼板を提供する。
【0018】
10.646+0.2[C]+0.25[Si]+0.3[Mn]−0.1[Cr]+0.55[Al]+0.2[Mo]−4.23[Ti]−2.5[Nb]−2.9[V]≦11.1 [数式(1)]
但し、上記数式1においてC、Si、Mn、Cr、Al、Mo、Ti、Nb、及びVはそれぞれ該当元素の含量(
質量%)を示す。
【0019】
炭素C:0.03〜0.1
質量%
Cは、鋼を強化させるのに最も経済的且つ効果的な元素である。上記炭素の添加量が増加すると、フェライト−マルテンサイト複合組織鋼のマルテンサイト分率が増加して引張強さが増加するようになる。上記炭素の含量が0.03
質量%未満である場合は、熱延後の冷却中におけるマルテンサイト相の形成が容易ではない。これに対し、上記炭素の含量が0.1
質量%を超過すると、強度が上昇しすぎるようになり、溶接性、成形性及び靭性が低下するという問題点がある。したがって、上記Cの含量は0.03〜0.1
質量%含まれることが好ましい。
【0020】
シリコン(Si):0.01〜1.2
質量%
Siは、溶鋼を脱酸させ、固溶強化の効果があり、フェライト安定化元素として熱延後の冷却中におけるフェライト変態を促進するという効果があるため、フェライトマルテンサイト複合組織鋼の基地を構成するフェライト分率の増大に効果的な元素である。上記シリコンの含量が0.01
質量%未満である場合は、フェライト安定化の効果が少ないため基地組織をフェライト組織に製造することが難しい。これに対し、上記シリコンの含量が1.2
質量%を超過すると、熱間圧延時の鋼板表面にSiによる赤スケールが形成されて鋼板表面品質が非常に悪くなるだけでなく、延性及び溶接性も低下するという問題がある。したがって、上記シリコンの含量は0.01〜1.2
質量%含まれることが好ましい。
【0021】
マンガン(Mn):1.2〜1.9
質量%
Mnは、Siと同様に鋼を固溶強化させるのに効果的な元素であり、鋼の硬化能を増加させて熱延後の冷却中におけるベイナイト相の形成を容易にするという効果がある。本発明では、このような効果を示すために1.2
質量%以上含まれることが好ましい。しかし、上記マンガンの含量が1.9
質量%を超過すると、フェライト変態を大きく遅らせて基地組織であるフェライトの適正分率を確保することが難しい。また、連鋳工程におけるスラブの鋳造時に厚さ中心部で偏析部が大きく発達して最終製品の溶接性を損なうという問題点がある。したがって、上記Mnの含量は1.2〜1.9
質量%含まれることが好ましい。
【0022】
アルミニウム(Sol.Al):0.01〜0.08
質量%
Alは、主に脱酸のために添加する成分であり、フェライト安定化元素として熱間圧延後の冷却中に鋼にフェライト相を形成するのに役立つ効果がある。上記アルミニウムの含量が0.01
質量%未満である場合は、本発明で意図しようとする効果を十分に確保することができない。これに対し、上記アルミニウムの含量が0.08
質量%を超過すると、連続鋳造時のスラブにコーナークラックのような欠陥が発生しやすくなり、熱延後に表面欠陥が発生して表面品質が低下するという問題がある。したがって、上記アルミニウムの含量は0.01〜0.08
質量%含まれることが好ましい。
【0023】
クロム(Cr):0.005〜0.8
質量%
Crは、鋼を固溶強化させ、冷却時におけるフェライト相の変態を遅らせてベイナイトの形成に役立てる役割をする。本発明で意図しようとする効果を確保するためには0.005
質量%以上含まれることが好ましい。これに対し、上記クロムの含量が0.8
質量%を超過すると、フェライト変態を大きく遅らせて必要以上のマルテンサイト分率の増加により延伸率が減少するようになる。したがって、上記Crの含量は0.005〜0.8
質量%含まれることが好ましい。
【0024】
モリブデン(Mo):0.01〜0.12
質量%
Moは、鋼の硬化能を増加させてベイナイト組織の形成を容易にするという効果がある。本発明のこのような効果を示すためには0.01
質量%以上含まれることが好ましい。これに対し、上記モリブデンの含量が0.12
質量%を超過すると、焼入性が増加しすぎて溶接性を悪化させ、経済的にも不利である。したがって、上記Moの含量は0.01〜0.12
質量%含まれることが好ましい。
【0025】
リン(P):0.01〜0.05
質量%
Pは、Siと同様に固溶強化及びフェライト変態の促進効果がある。上記リンの含量が0.01
質量%未満である場合は、本発明が確保しようとする強度を得るのに十分ではない。これに対し、上記リンの含量が0.05
質量%を超過すると、ミクロ偏析によるバンド組織化によって延性が低下することがある。したがって、上記Pは0.01〜0.05
質量%含まれることが好ましい。
【0026】
窒素(N):0.001〜0.01
質量%
Nは、Cとともに代表的な固溶強化元素であり、Ti、Al等とともに粗大な析出物を形成する。一般的に、Nの固溶強化効果は炭素より優れるが、鋼中にNの量が増加するほど靭性が大きく低下するという問題点がある。上記窒素の含量が0.001
質量%未満である場合は、製鋼操業時に時間が多くかかり生産性が低下するようになる。これに対し、上記窒素の含量が0.01
質量%を超過すると、脆性が発生するおそれが大きく増加する。したがって、上記窒素は0.001〜0.01
質量%含まれることが好ましい。
【0027】
本発明の残りの成分は鉄(Fe)である。但し、通常の製造過程では、原料または周囲環境から意図されない不純物が不可避に混入される可能性があるためこれを排除することはできない。これら不純物は、通常の製造過程における技術者であれば誰でも分かるものであるため、そのすべての内容を特に本明細書で言及しない。
【0028】
但し、そのうちの硫黄は一般的に多く言及される不純物である。これについて簡略に説明すると以下の通りである。
【0029】
硫黄(S):0.001〜0.005%
上記硫黄は、不可避に含有される不純物として、Mn等と結合して非金属介在物を形成し、その結果、鋼の
穴広げ率を大きく低下させるためその含量を最大限に抑制することが好ましい。理論上硫黄の含量は0
質量%に制限することが有利であるが、製造工程上必然的に含有されるしかない。したがって、上限を管理することが重要であり、本発明において上記硫黄の含量の上限は0.01
質量%に限定することが好ましい。
【0030】
さらに、本発明の鋼材は、後述するニオビウム(Nb)、チタン(Ti)、及びバナジウム(V)からなる群より選択された1種以上の元素を追加的に添加する場合、本発明の効果をさらに向上させることができる。より好ましくは、上記群より選択された1種以上の元素を合わせて0.001〜0.15
質量%含む。
【0031】
Tiは、鋼中にTiNとして存在して熱間圧延のための加熱過程で結晶粒が成長することを抑制するという効果がある。また、窒素と反応して残ったTiが鋼中に固溶されて炭素と結合することにより、TiC析出物が形成されて鋼の強度を向上させるのに有用な成分である。
【0032】
Nb及びVは、鋼中炭化物を形成して結晶粒微細化に効果的であり、微細な析出物を形成して鋼の強度及び靱性を向上させることができる。電気比抵抗を増加させるC、N等の固溶元素を安定化させるため電気抵抗溶接時に局部的な火花が発生する現像を緩和させ、溶接部の軟化を抑制するという効果もある。
【0033】
さらに、溶接性を向上させるために、上記C、Si、Mn、Cr、Al、Mo、Ti、Nb、及びVは下記数式1を満たすことが好ましい。数式1で境界として設定した11.1を超過すると、高温における電気比抵抗が高くなって溶接性が顕著に低くなることがある。下限は特に限定される必要はないが、
穴広げ率及び延伸率を考慮してその下限は10.5に制限されることができる。それ以下で添加される場合は、強度または延伸率が急激に劣るという問題がある。
【0034】
10.646+0.2[C]+0.25[Si]+0.3[Mn]−0.1[Cr]+0.55[Al]+0.2[Mo]−4.23[Ti]−2.5[Nb]−2.9[V]≦11.1 [数式(1)]
但し、上記数式1においてC、Si、Mn、Cr、Al、Mo、Ti、Nb、及びVはそれぞれ該当元素の含量(
質量%)を示す。
【0035】
また、上記熱延高バーリング性鋼は、引張強さと
穴広げ率の積が48000以上であることが好ましい。
【0036】
また、上記熱延鋼板は、フェライト組織内にベイナイト相を含む微細組織を含むことが好ましい。このような微細組織を含むことにより、粗大な炭化物の形成を抑制して塑性変形中に上記界面における破壊を防止するという効果がある。さらに、フェライト組織内にベイナイト相の分率は5〜20%含まれることがより好ましい。含まれるベイナイト相の分率が5%未満である場合は、本発明が確保しようとする強度を確保することができない。これに対し、20%を超過すると延伸率が劣るようになる。
【0037】
以下、本発明の他の一側面である溶接性及びバーリング性に優れた熱延鋼板の製造方法について詳細に説明する。
【0038】
本発明の他の一側面である溶接性及びバーリング性に優れた熱延鋼板の製造方法は、
質量%で、C:0.03〜0.1%、Si:0.01〜1.2%、Mn:1.2〜1.9%、Al:0.01〜0.08%、Cr:0.005〜0.8%、Mo:0.01〜0.12%、P:0.01〜0.05%、S:0.001〜0.005%、N:0.001〜0.01%、残部Fe及びその他の不可避不純物を含み、上記各成分が下記数式1を満たす鋼スラブを設ける段階と、上記鋼スラブを1200〜1300℃で再加熱する段階と、上記再加熱された鋼スラブを850〜1000℃の仕上げ圧延温度で熱間圧延して鋼板を得る段階と、上記熱間圧延された鋼板を500〜750℃の温度まで10〜100℃/秒の冷却速度で1次冷却する段階と、上記冷却された鋼板を4〜10秒間空冷する段階と、上記空冷された鋼板を300〜500℃の温度まで10〜100℃/秒の冷却速度で2次冷却する段階と、を含む。
【0039】
10.646+0.2[C]+0.25[Si]+0.3[Mn]−0.1[Cr]+0.55[Al]+0.2[Mo]−4.23[Ti]−2.5[Nb]−2.9[V]≦11.1 [数式(1)]
但し、上記数式1においてC、Si、Mn、Cr、Al、Mo、Ti、Nb、及びVはそれぞれ該当元素の含量(
質量%)を示す。
【0040】
(再加熱段階)
上述の成分系を満たすスラブを1200〜1300℃で再加熱することが好ましい。上記再加熱温度が1200℃未満である場合は、析出物が十分に再固溶されないため熱間圧延後の工程でNbC、TiC等の析出物が減少することがある。これに対し、1300℃を超過すると、オーステナイト結晶粒の異常粒成長によって強度が低下することがある。したがって、スラブの再加熱温度は1200〜1300℃に限定することが好ましい。
【0041】
(熱間圧延段階)
上記のように再加熱されたスラブに熱間圧延を行うことができる。このとき、仕上げ圧延は850〜1000℃で行うことが好ましい。上記熱間仕上げ圧延温度が850℃未満である場合は圧延荷重が大きく増加することがある。これに対し、上記熱間仕上げ圧延温度が1000℃を超過すると、鋼板の組織が粗大化して鋼材が脆弱となり、スケールが厚くなり、高温圧延性スケール欠陥等の表面品質が低下することがある。したがって、上記熱間仕上げ圧延は850〜1000℃に限定することが好ましい。
【0042】
(1次冷却段階)
上記のように熱間圧延された鋼板を1次冷却することが好ましい。また、上記熱間圧延された鋼板の上記仕上げ熱間圧延温度から500〜750℃に達するまで1次冷却することが好ましい。1次冷却が終了する温度が500℃未満である場合は、鋼中の微細組織が大部分ベイナイトを有することにより、本発明が確保しようとする微細組織を十分に確保することができない。これに対し、750℃を超過すると、粗大なフェライト及びパーライト組織が形成されて鋼の強度が減少することがある。また、10〜100℃/秒の冷却速度で1次冷却することが好ましい。10℃/秒未満である場合は、フェライト結晶粒の粗大化が行われ、析出も粗大化して本発明が得ようとする強度を確保するのに問題がある。また、100℃/秒を超過すると熱延板の形状が不良となることがある。
【0043】
(空冷段階)
上記のように冷却された鋼板を空冷することが好ましい。上記冷却された鋼板を4〜10秒間空冷することが好ましい。4秒未満で空冷を行う場合は、フェライト組織を十分に形成させることができないため延性が大きく低下するという問題がある。これに対し、10秒超過して空冷を行う場合は、フェライト分率が増加してマルテンサイト分率が減少するため、本発明が確保しようとする強度及び延伸率を十分に確保することができない。
【0044】
(2次冷却段階)
上記のように空冷された鋼板を2次冷却することが好ましい。また、上記空冷された鋼板の温度から300〜500℃に達するまで10〜100℃/秒の冷却速度で2次冷却することが好ましい。2次冷却が終了する温度が300℃未満である場合は、マルテンサイト相が形成されて
穴広げ率が劣ることがある。これに対し、500℃を超過すると、粗大な炭化物が形成されるため
穴広げ率が劣ることがある。また、10〜100℃/秒の冷却速度で1次冷却することが好ましい。10℃/秒未満である場合は、粗大な炭化物が形成されて本発明が確保しようとする
穴広げ率を確保するのに問題がある。また、100℃/秒を超過すると、熱延板の形成が不良となるという問題がある。
【0045】
上記冷却段階後には、冷却された鋼板の保管及び移動を容易にするために巻取する段階をさらに含むことができる。
【0046】
上記のような方法によって製造された鋼板を自然冷却した後、酸洗して表層部のスケールを除去し塗油する段階をさらに含むことにより酸洗鋼板を製造することができる。
【0047】
また、上記酸洗鋼板を450〜480℃で再加熱した後、溶融亜鉛めっき浴を通過させる段階をさらに含むことにより、溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示してより詳細に説明するためだけのものであり、本発明の権利範囲を限定するためのものではない点に留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項とそこから合理的に類推される事項によって決定されるためである。
【0049】
下記表1に示す成分系を満たす鋼スラブを1250℃で加熱し、下記表2に示す温度で熱間仕上げ圧延を行った。その後、680℃の温度まで70℃/秒の冷却速度で1次冷却し、6秒間空冷した後、450℃の温度まで70℃/秒の冷却速度で2次冷却を行ってから、下記表2に示す温度で巻取した。
【0050】
巻取工程を完了して得られた最終の熱延鋼板の降伏強度(YS)、引張強さ(TS)、破壊延伸率(T−El)、
穴広げ率(Hole Expanding Ratio、HER)を評価した。下記表2に示す。
【0051】
また、フェライト組織内のベイナイト分率は、最終の熱延鋼板をエッチングした後、光学顕微鏡を用いて500倍率で観察してからイメージ分析器で分析した。下記表2に相分率を示す。
【0052】
さらに、上記最終の熱延鋼板の溶接性も下記表2に示す。上記溶接性は、表3に示す条件で溶接を行った後、鋼板の溶接部の強度を一軸引張試験法で測定した。このとき、溶接部が破断される場合、溶接性が劣ると評価した。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
上記表2に示されているように、発明例
2、4〜6は本発明が提案した成分範囲及び製造条件を満たすことにより、引張強さと
穴広げ率の積の値が高く溶接性に優れた熱延鋼板を確保することが確認できる。
【0057】
これに対し、比較例1、4、5、6及び7は、数式1を満たさなかったため溶接性が劣ることが確認できる。
【0058】
また、比較例2、3及び8は、引張強さと
穴広げ率の積の値が本発明が提案する範囲の値を満たすが、数式1を満たさないため、溶接性が劣ることが確認できる。