特許第6368791号(P6368791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6368791硬化性鋼製の1つ又はそれ以上のワークピースを突合せ継手においてレーザ溶接する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368791
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】硬化性鋼製の1つ又はそれ以上のワークピースを突合せ継手においてレーザ溶接する方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/21 20140101AFI20180723BHJP
   B23K 26/211 20140101ALI20180723BHJP
   B23K 35/30 20060101ALI20180723BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20180723BHJP
   C22C 38/38 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   B23K26/21 F
   B23K26/211
   B23K26/21 W
   B23K35/30 320A
   C22C38/00 301A
   C22C38/38
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-552549(P2016-552549)
(86)(22)【出願日】2015年1月29日
(65)【公表番号】特表2017-512137(P2017-512137A)
(43)【公表日】2017年5月18日
(86)【国際出願番号】EP2015051780
(87)【国際公開番号】WO2015121074
(87)【国際公開日】20150820
【審査請求日】2017年10月20日
(31)【優先権主張番号】102014001979.9
(32)【優先日】2014年2月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511135787
【氏名又は名称】ウイスコ テイラード ブランクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】WISCO Tailored Blanks GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】アルント ブロイアー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ボース
【審査官】 岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/014512(WO,A1)
【文献】 特表2013−545619(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102010018687(DE,A1)
【文献】 特表2013−533807(JP,A)
【文献】 特表2013−532070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/21
B23K 26/211
B23K 35/30
C22C 38/00
C22C 38/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス硬化性鋼製、具体的にはマンガンボロン鋼製の1つ又はそれ以上のワークピースを突合せ継手においてレーザ溶接する方法であって、前記ワークピース又は複数のワークピース(1、2;1、2’)は、0.5mmと1.8mmの間の厚さを有し、及び/又は前記突合せ継手(3)において0.2mmと0.4mmの間の厚さの段差(d)を生じ、前記レーザ溶接は、少なくとも1つのレーザビーム(6)によって生成される溶融浴(8)中へのフィラーワイヤ(10)の送込みによって行われ、前記溶融浴(8)は前記少なくとも1つのレーザビーム(6)によってのみ生成され、前記フィラーワイヤ(10)は、マンガン、クロム、モリブデン、シリコン及び/又はニッケルを含む群からの少なくとも1つの合金元素を含み、前記合金元素は、前記レーザビーム(6)によって生成された前記溶融浴(8)内でのオーステナイトの形成を促進し、前記少なくとも1つの合金元素は前記フィラーワイヤ(10)中に、前記ワークピース又は複数のワークピース(1、2;1、2’)の前記プレス硬化性鋼中よりも少なくとも0.1重量%大きい質量百分率で存在し、使用される前記ワークピース又は複数のワークピース(1、2;1、2’)は、コーティングされていないか、又は前記レーザ溶接の前に、溶接される当接部に沿った周辺領域におけるその/それらのコーティングの剥離によって部分的にコーティングが除去される、方法であり、前記フィラーワイヤ(10)が以下の組成、
0.05乃至0.15重量%のC、
0.5乃至2.0重量%のSi、
1.0乃至2.5重量%のMn、
0.5乃至2.0重量%のCr+Mo、及び
1.0乃至4.0重量%のNi、
残りはFe及び不可避の不純物、
を有し、前記フィラーワイヤ(10)は、前記ワークピース又は複数のワークピース(1、2;1、2’)の前記プレス硬化性鋼よりも少なくとも0.1重量%小さい炭素質量百分率を有する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ワークピース又は複数のワークピース(1、2;1、2’)の前記鋼は以下の組成、
0.1乃至0.50重量%のC、
最大0.40重量%のSi、
0.50乃至2.00重量%のMn、
最大0.025重量%のP、
最大0.010重量%のS、
最大0.60重量%のCr、
最大0.50重量%のMo、
最大0.050重量%のTi、
0.0008乃至0.0070重量%のB、及び、
最小0.010重量%のAl、
残りはFe及び不可避の不純物、
を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィラーワイヤ(10)は、加熱された状態で前記溶融浴(8)に送込まれることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィラーワイヤ(10)の少なくとも長さ部分が、前記溶融浴(8)中に送込まれる前に、少なくとも50℃の温度に加熱されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項5】
レーザ溶接中に、不活性ガスが前記溶融浴(8)に加えられることを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
使用される前記不活性ガスは、純アルゴン又はアルゴンと二酸化炭素との混合物であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項7】
使用される前記部分的にコーティングが除去されるワークピース又は前記部分的にコーティングが除去される複数のワークピース(1、2;1、2’)は、アルミニウム又はアルミニウム−シリコンをベースとする表面層を有することを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部による、プレス硬化性鋼製、具体的にはマンガンボロン鋼製の1つ又はそれ以上のワークピースを突合せ継手においてレーザ溶接する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムをベースとするコーティングを有し、レーザ溶接の前に、溶接される当接端部に沿った縁領域におけるそれらのコーティングの除去により部分的にコーティング除去される、プレス硬化性マンガンボロン鋼からのワークピースが使用される、上記の方法は、特許文献1により知られている。
【0003】
自動車工学において、衝突安全に課せられる高い要求を、車体の最低限の可能な重量によって満たすためにテーラード鋼板ブランク(いわゆるテーラードブランク)が使用される。このために、異なる材料品質及び/又は板厚の個々のブランク又はストリップが突合せ継手においてレーザ溶接によって結合される。このようにして、完成車体の構成要素の種々異なる区域を種々異なる応力に適合させることができる。従って、比較的厚い又はより高強度の鋼板を高応力区域に使用することができ、より薄い板又は比較的軟らかい延伸グレードの板を他の区域に使用することができる。付加的な補強部品は、テーラード金属板ブランクのために車体には不必要である。これは材料を節約し、車体の総重量を減らすことを可能にする。
【0004】
近年、急冷を伴う加熱成形中に高強度、例えば、1500乃至2000MPaの範囲の引張強度を達成するボロン合金鋼、具体的にはマンガンボロン鋼が開発されている。初期状態において、マンガンボロン鋼は通常フェライト−パーライト構造を有し、凡そ600MPaの強度を有する。しかし、プレス硬化により、即ち、成型プレス内でのオーステナイト化温度への加熱及び次の急冷によって、マルテンサイト構造にすることができ、その結果、このように処理された鋼は1500乃至2000MPaの範囲の引張強度を達成することができる。
【0005】
車体構成要素、例えば、このタイプのテーラード鋼ブランクから作製されたBピラーは、特定の板厚に至るまで、又は厚さの特定の段差に至るまで完全な硬度プロファイルを有する。しかし、特に0.5mmと1.8mmの間の板厚に対して、又は0.2mmと0.4mmの間の厚さの段差がある場合にも、レーザ溶接継ぎ目が加熱成形(プレス硬化)中に適切に硬化しないという問題が生じることが見出されている。それゆえに、溶接継ぎ目の領域内でマルテンサイト構造が部分的にしか生成されず、その結果、完成された構成要素に応力が加えられると、溶接継ぎ目が破損する可能性がある。この問題は、特に厚さに段差がある場合、通常、冷却された成形ツール又は冷却ツールとの適切な接触が確保されない可能性があり、従って、溶接継ぎ目がマルテンサイトに完全には変態しない可能性があることに関係すると推定される。
【0006】
特許文献は、アルミニウム含有表面層を有するマンガンボロン鋼のブランクが突合せ継手において結合されるレーザ・アークハイブリッド溶接法であって、レーザビームが少なくとも1つの電気アークと組み合せられて突合せ継手における金属を溶融してブランクを溶接する方法を記載している。この点において、電気アークはタングステン溶接電極によって放射されるか又はミグ(MIG)溶接トーチの使用中にフィラーワイヤの先端に生じる。フィラーワイヤは、鋼のオーステナイト構造への変態を引き起こし、溶融浴内でのオーステナイト変態の維持を促進する元素(例えば、Mn、Ni及びCu)を含むことができる。このレーザ・アークハイブリッド溶接法の目的は、アルミニウム−シリコンベースのコーティングを備えたマンガンボロン鋼の加熱成形可能ブランクを溶接することを、生成される溶接継ぎ目の領域内のコーティング材料を予め除去することなく、可能にすることであるが、それにもかかわらず、この意図はまた、ブランクの当接端部にあるアルミニウムが、継ぎ目内の構成要素の引張強度の低下を招かないことを確実にすることである。レーザビームの下流に電気アークをもたらすことの目的は、溶融浴を均一にし、それによりフェライト構造を生成する1.2重量%を超えるアルミニウムの局所濃度を排除することである。この既知のハイブリッド溶接法は、電気アークの生成による比較的高いエネルギー消費量を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2013/014481(A1)号
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0011720(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、プレス硬化性鋼、具体的にはマンガンボロン鋼の、0.5mmと1.8mmの間の厚さを有し、及び/又は突合せ継手において0.2mmと0.4mmの間の厚さの段差を生じる、ワークピースを突合せ継手において結合してテーラードワークピース、具体的にはテーラードブランクを生成することができるレーザ溶接法であって、その溶接継ぎ目を加熱成形(プレス硬化)中に確実に硬化させてマルテンサイト構造にすることができる、レーザ溶接法を提供することである。さらに、この方法は、高効率且つ比較的少ないエネルギー消費によって特徴付けられるべきものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、請求項1に記載の特徴を有する方法が提案される。本発明によるこの方法の好ましい且つ有利な実施形態が従属請求項において提示される。
【0010】
本発明による方法は、プレス硬化性鋼製、具体的にはマンガンボロン鋼製の1つ又はそれ以上のワークピースを突合せ継手においてレーザ溶接するために用いられ、この方法において、ワークピース又は複数のワークピースは、0.5mmと1.8mmの間、具体的には0.5mmと1.6mmの間の厚さを有し、及び/又は突合せ継手において、0.2mmと0.4mmの間、具体的には0.2mmと0.3mmの間の厚さの段差を生じる。レーザ溶接は、レーザビームによって生成される溶融浴中へのフィラーワイヤの送込みによって行われる。フィラーワイヤ、マンガン、クロム、モリブデン、シリコン及び/又はニッケルを含む群からの少なくとも1つの合金元素であって、レーザビームによって生成される溶融浴中でのオーステナイトの形成を促進する合金元素を含み、ここで前記少なくとも1つの合金元素は、フィラーワイヤ中に、ワークピース又は複数のワークピースのプレス硬化性鋼中よりも少なくとも0.1重量%大きい質量百分率で存在し、ここで使用されるワークピース又は複数のワークピースはコーティングされていないか又はレーザ溶接の前に、溶接される当接部分に沿った周辺領域内でのその/それらのコーティングの剥離によって部分的にコーティングが除去される。本発明による方法は、フィラーワイヤが以下の組成、
0.05乃至0.15重量%のC、
0.5乃至2.0重量%のSi、
1.0乃至2.5重量%のMn、
0.5乃至2.0重量%のCr+Mo、及び
1.0乃至4.0重量%のNi、
残りはFe及び不可避の不純物、
を有し、ここでフィラーワイヤは、ワークピース又は複数のワークピースのプレス硬化性鋼よりも少なくとも0.1重量%小さい炭素質量百分率を有することによってさらに特徴付けられる。試験は、本発明による方法を用いて、このタイプのフィラーワイヤにより次のプレス硬化中に特に確実に、溶接継ぎ目のマルテンサイト構造への完全な変態を保証することができることを示した。フィラーワイヤの比較的少ない炭素含有量は溶接継ぎ目の脆化を防ぐことができる。具体的には、フィラーワイヤの比較的少ない炭素含有量のために、溶接継ぎ目において良好な残余伸展性を達成することが可能である。
【0011】
本発明によって生成されるワークピース又はテーラードブランクは、加熱成形(プレス硬化)に関して、構成要素の、また特にそれらの溶接継ぎ目において、十分な硬化が達成される、より広いプロセスウィンドウを提供する。
【0012】
本発明による方法は、異なる材料品質及び/又は板厚の複数の鋼ブランクを突合せ継手において結合するためだけではなく、例えば、単一の板状又はストリップ状の鋼板をレーザ溶接するためにも用いることができ、後者の場合には、溶接されるワークピースの端部が成形によって、例えば、折り曲げによって又はロール成形によって互いに向かって動かされ、その結果、それらは最終的に突合せ継手において互いに向き合うように配置される。
【0013】
鋼ストリップ又は鋼板の上のスケール層の形成を防ぐために、普通、それらにはアルミニウム又はアルミニウム−シリコンをベースとするコーティングが備えられる。本発明による方法は、このタイプのコーティングされた鋼ブランク又は鋼ストリップを使用して、用いることができ、本発明による方法の有利な変形体により、アルミニウムベース又はアルミニウム−シリコンベースのコーティングが、溶接される当接端部に沿って、レーザ溶接の前に剥離され、その結果、使用されるワークピース又は複数のワークピースは部分的にコーティングが除去される。これは、少なくとも1つのエネルギービーム、好ましくはレーザビームを用いて行うことができる。機械的又は高周波(HF)コーティング除去手法もまた考えられる。このようにして、溶接継ぎ目が、別に非意図的に内部に導入され、加熱成形(プレス硬化)中に硬度プロファイル中に断続をもたらし得る又はもたらすことになるコーティング材料によって、損なわれることを確実に防ぐことが可能になる。
【0014】
コーティングのない鋼ブランク又は鋼ストリップもまた、本発明の方法によって溶接することができる。
【0015】
本発明による方法の好ましい実施形態において、ワークピース又は複数のワークピースは、それらの鋼が、0.1乃至0.50重量%のC、最大0.40重量%のSi、0.50乃至2.00重量%のMn、最大0.025重量%のP、最大0.010重量%のS、最大0.60重量%のCr、最大0.50重量%のMo、最大0.050重量%のTi、0.0008乃至0.0070重量%のB、並びに最小0.010重量%のAl、残りはFe及び不可避の不純物、の組成を有するように選択される。このタイプの鋼から作られる構成要素は、プレス硬化の後に比較的高い引張強度を有する。
【0016】
本発明による方法において、より好ましく使用されるのは、プレス硬化の後で1500乃至2000MPaの範囲の引張強度を有する、プレス硬化性鋼のブランク状又はストリップ状ワークピースである
【0017】
本発明による方法の別の有利な実施形態は、フィラーワイヤが加熱された状態で溶融浴内に送込まれるようにする。その結果、より高速の処理速度及び/又はより高い効率を達成することが可能となる。この実施形態において、レーザビームを用いてフィラーワイヤを溶融するのに、より少ないエネルギーが消費される。溶融浴内に送込まれる前に、フィラーワイヤの少なくとも長さ部分が少なくとも50℃の温度に加熱されることが好ましい。
【0018】
溶接継ぎ目が脆弱になるのを防ぐために、本発明による方法の別の好ましい実施形態は、レーザ溶接中に不活性ガスが溶融浴に加えられるようにする。不活性ガスとして使用するのに特に好ましいのは、純アルゴン、ヘリウム、窒素又はこれらの混合物、或いは、アルゴン、ヘリウム、窒素及び/又は二酸化炭素及び/又は酸素の混合物である。
【0019】
以下で、本発明は、実施形態を示す略図を参照しながらより詳しく説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明による、実質的に同じ厚さの2つのプレス硬化性鋼ブランクを突合せ継手において溶接するレーザ溶接方法を実施するためのデバイスの部分の斜視図である。
図2】本発明による、厚さが異なる2つのプレス硬化性鋼ブランクを突合せ継手において溶接するレーザ溶接方法を実施するためのデバイスの部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、それを用いて本発明によるレーザ溶接方法を実行することができるデバイスの略図を示す。このデバイスは支持台(図示せず)を備え、その上で異なる材料品質の2つの鋼ストリップ又は2つの鋼ブランク1、2が、結合部3に沿って互いに突き当たる。例えば、一方のワークピース1又は2が比較的軟らかい延伸グレードを有し、他方のワークピース2又は1がより高強度の鋼板から成る。ワークピース1、2のうちの少なくとも1つが、プレス硬化性鋼、例えば、マンガンボロン鋼から作られる。
【0022】
ワークピース1、2は実質的に同じ厚さのものである。それらの厚さは0.5mmと1.8mmの間、例えば、1.6mmである。
【0023】
上で概略を説明したワークピース1、2はレーザ溶接ヘッド4の一部分であり、レーザ溶接ヘッド4にはレーザビームを供給するための光学系(図示せず)と、レーザビーム6の集束レンズ5との両方が備えられる。さらに、ライン7がレーザ溶接ヘッド4上に配置されて不活性ガスを供給する。不活性ガスライン7の開口は、レーザビーム6の集束領域の上に、又はレーザビーム6によって生成される溶融浴8の上に、実質的に向けられる。使用する不活性ガスは純アルゴン、或いは、例えば、アルゴン、ヘリウム及び/又は二酸化炭素の混合物であることが好ましい。さらに、レーザ溶接ヘッド4にはワイヤ送込み装置9が結合され、それによってワイヤ10の形態の特定の付加的材料が溶融浴8中に送込まれ、さらにレーザビーム6によって溶融される。フィラーワイヤ10は、加熱された状態で溶融浴8中に送込まれる。このために、ワイヤ送込み装置9には少なくとも1つの加熱要素(図示せず)、例えば、ワイヤ10を囲む加熱コイル、が取付けられる。加熱要素は、フィラーワイヤ10を、少なくとも50℃、より好ましくは少なくとも90℃の温度に加熱することが好ましい。
【0024】
図2に示す実施形態は、ワークピース1、2’が異なる厚さを有し、それゆえに、0.2mmと0.4mmの間、例えば0.3mmの厚さの段差dが突合せ継手3において存在する点で、図1による実施形態とは異なる。例えば、一方のワークピース2’が1.2mmから1.3mmまでの範囲内の板厚を有し、他方のワークピース1が1.4mmから1.5mmまでの範囲内の板厚を有する。さらに、突合せ継手3において結合されるワークピース1、2’は、それらの材料品質が互いに異なってもよい。例えば、より厚いブランク1はより高強度の鋼板から作られ、他方、より薄い鋼ブランク2’は比較的軟らかい延伸グレードを有する。
【0025】
突合せ継手3において結合されるワークピース1、2又は2’のうちの少なくとも1つのプレス硬化性鋼は、例えば、以下の化学組成、
最大0.45重量%のC、
最大0.40重量%のSi、
最大2.0重量%のMn、
最大0.025重量%のP、
最大0.010重量%のS、
最大0.8重量%のCr+Mo、
最大0.05重量%のTi、
最大0.0050重量%のB、
最小0.010重量%のAl、
残りはFe及び不可避の不純物、
を有することができる。
【0026】
ワークピース即ち鋼ブランク1、2及び2’はコーティングされていなくても良く、又は、特にAl−Si層のコーティングが備えられても良い。納入状態、即ち、熱処理及び急速冷却の前は、プレス硬化性鋼ブランク1、2及び/又は2’の降伏強度Reが好ましくは少なくとも300MPaであり、それらの引張強度Rmが少なくとも480MPaであり、及びそれらの破断伸び率A80が少なくとも10%である。加熱成形(プレス硬化)の後、即ち、凡そ900乃至920℃におけるオーステナイト化及び次の急速冷却の後、これらの鋼ブランクは凡そ1100MPaの降伏強度Re、凡そ1500乃至2000Mpaの引張強度Rm、及び凡そ5.0%の破断伸び率A80を有する。
【0027】
ワークピース即ち鋼ブランク1、2及び/又は2’にアルミニウムコーティング、特にAl−Siコーティングが備えられている場合、前記コーティングはレーザ溶接の前に、溶接される当接端部に沿った周辺領域内で剥離又は部分的に除去される。当接端部又は切断縁3に付着したアルミニウムコーティング材料もまた、適切な場合には除去される。アルミニウムコーティング材料は少なくとも1つのレーザビームによって剥離(除去)できることが好ましい。
【0028】
使用されるフィラーワイヤ10は、例えば、以下の化学組成、
0.1重量%のC、
0.8重量%のSi、
1.8重量%のMn、
0.35重量%のCr、
0.6重量%のMo、及び、
2.25重量%のNi、
残りはFe及び不可避の不純物
を有する。
【0029】
フィラーワイヤ10のマンガン含有量は、プレス硬化性ワークピース1、2及び/又は2’のマンガン含有量よりも必ず多い。フィラーワイヤ10のマンガン含有量は、プレス硬化性ワークピース1、2及び/又は2’のマンガン含有量よりも凡そ0.2重量%多いことが好ましい。さらに、フィラーワイヤ10のクロム及びモリブデンの含有量もまた、プレス硬化性ワークピース1、2及び/又は2’中のクロム及びモリブデンの含有量よりも多ければ好都合である。フィラーワイヤ10のクロム−モリブデン組合せ含有量が、プレス硬化性ワークピース1、2及び/又は2’のクロム−モリブデン組合せ含有量よりも凡そ0.2重量%多いことが好ましい。フィラーワイヤ10のニッケル含有量は1乃至4重量%の範囲内にあることが好ましい。さらに、フィラーワイヤ10は、ワークピース1、2及び/又は2’のプレス硬化性鋼よりも少ない炭素含有量を有することが好ましい。
図1
図2