(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定部における判定結果を、前記可変容量型ターボチャージャによって過給されるエンジンを制御する制御ユニットに送信するための送信部を更に備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の可変容量型ターボチャージャの異常判定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では異常を検出するためにノズル機構を意図的に駆動する必要があるため、異常検出はエンジンが停止している間でなければ行うことができない。つまり、エンジン動作中は異常検出を行うことができないという問題点があり、ノズル機構の異常を早期且つ精度よく検出しなければならないという要請に対して十分応じられていない。
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態は上述の問題点に鑑みなされたものであり、ノズル機構の異常を早期且つ精度よく検出可能な可変容量型ターボチャージャの異常判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る可変容量型ターボチャージャの異常判定装置は上記課題を解決するために、アクチュエータによって排ガス流路面積を可変なノズル機構を有する可変容量型ターボチャージャの異常判定装置であって、前記アクチュエータの荷重、又は、前記アクチュエータへの供給エネルギーの少なくとも一方を検出可能に構成された第1の検出部と、前記第1の検出部における検出結果が、前記可変容量型ターボチャージャの稼動状態に応じた許容範囲から逸脱した場合に、異常があると判定する判定部とを備える。
【0009】
上記(1)の構成によれば、アクチュエータの荷重又はアクチュエータへの供給エネルギーの少なくとも一方について、許容範囲を逸脱するか否かに基づいて、可変容量型ターボチャージャにおける異常の有無を判定する。判定基準として使用される許容範囲は、可変容量型ターボチャージャの稼動状態に応じて設定されるため、可変容量型ターボチャージャが搭載される車両の様々な運転状態においても早期且つ高精度で異常判定が可能となる。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、前記可変容量型ターボチャージャの稼動状態を検出する第2の検出部と、前記可変容量型ターボチャージャの稼動状態と前記許容範囲との関係を規定するマップを記憶する記憶部とを更に備え、前記判定部は、前記マップに基づいて、前記第2の検出部によって検出された稼動状態に対応する前記許容範囲を設定する。
【0011】
上記(2)の構成によれば、可変容量型ターボチャージャの稼動状態と許容範囲との関係をマップとして予め記憶しておくことにより、判定部は当該マップを参照することで、可変容量型ターボチャージャの稼動状態に応じて適切な許容範囲を設定することができる。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、前記マップは、前記ノズル機構の開度に応じて複数用意される。
【0013】
上記(3)の構成によれば、許容範囲を設定するためのマップをノズル機構の開度に応じて複数用意することにより、マップの記憶容量を抑制しつつ、様々な稼動状態に対応する許容範囲をきめ細やかに規定可能なマップを構築できる。
【0014】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)から(3)のいずれか1構成において、前記第1の検出部は、前記アクチュエータの荷重、及び、前記アクチュエータへの供給エネルギーの両方を検出し、前記判定部は、前記アクチュエータへの供給エネルギーに対して前記アクチュエータの荷重が前記供給エネルギーに対応する目標値に比べて少ない場合、前記アクチュエータへのエネルギー供給経路に異常があると判定する。
【0015】
上記(4)の構成によれば、アクチュエータの荷重及びアクチュエータへの供給エネルギーの両方に基づいて異常判定を行うことによって、より精度のよい判定を行うことができる。特に、供給エネルギー(入力エネルギー)に対してアクチュエータの荷重(出力エネルギー)が当該供給エネルギーに対応する目標値(すなわち、入力に対して期待される出力)に比べて少ない場合、供給エネルギーが漏洩するなどの異常が懸念されるとして、アクチュエータへのエネルギー供給経路に異常があると判定できる。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)から(4)のいずれか1構成において、前記アクチュエータの反力が作用可能なハウジングと、前記アクチュエータ及び前記ハウジング間に介在する圧電素子とを更に備え、前記第1の検出部は、前記圧電素子の出力電圧に基づいて、前記アクチュエータの荷重を検出する。
【0017】
上記(5)の構成によれば、アクチュエータが駆動した際にハウジングに作用する反力を、アクチュエータ及びハウジング間に介在する圧電素子の出力電圧として検出する。これにより、アクチュエータの荷重を電気的信号として効率的に取得できる。
【0018】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、前記アクチュエータは、軸方向に沿って駆動可能に構成されたロッド部材を介して前記ノズル機構に接続されており、前記圧電素子は、前記アクチュエータのうち前記ロッド部材が接続された側と反対側に設けられている。
【0019】
上記(6)の構成によれば、アクチュエータのうちロッド部材が接続された側と反対側は、ハウジングに反力が最も作用し易い位置であるため、当該位置に圧電素子を配置することで、アクチュエータの荷重を精度よく検出できる。
【0020】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)から(6)のいずれか1構成において、エネルギー供給源と前記アクチュエータとの間を接続するエネルギー供給路上に設けられたエネルギーセンサを更に備え、前記第1の検出部は、前記エネルギーセンサの検出値に基づいて前記供給エネルギーを検出する。
【0021】
上記(7)の構成によれば、エネルギー供給源とアクチュエータとの間を接続するエネルギー供給路上にエネルギーセンサを配置することによって、アクチュエータへの供給エネルギーを検出できる。
【0022】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)から(7)のいずれか1構成において、前記稼動状態は、前記可変容量型ターボチャージャの過給圧力、及び、前記アクチュエータの荷重の少なくとも1つを含んで規定される。
【0023】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)から(8)のいずれか1構成において、前記供給エネルギーは電気エネルギー及び圧力エネルギーのいずれかである。
【0024】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)から(9)のいずれか1構成において、前記判定部における判定結果を、前記可変容量型ターボチャージャによって過給されるエンジンを制御する制御ユニットに送信するための送信部を更に備える。
【0025】
上記(10)の構成によれば、判定部における判定結果をエンジンを制御する制御ユニットに送信するように構成することで、上述の異常判定に関する構成要素を、エンジンの制御ユニットとは別体として構成できる。これにより、制御ユニットにおける演算負担を軽減でき、処理速度の高速化及び低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の少なくとも1実施形態によれば、ノズル機構の異常を早期且つ精度よく検出可能な可変容量型ターボチャージャの異常判定装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0029】
まず
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る可変容量型ターボチャージャ(以下、適宜「ターボチャージャ」と称する)2を備えるディーゼルエンジン(以下、適宜「エンジン」と称する)1の全体構成について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るターボチャージャ2を備えるエンジン1の全体構成を示す模式図である。
【0030】
ターボチャージャ2は、排気マニホールド4に接続された排気管6に設けられた排気タービン8と、吸気マニホールド10に接続された吸気管12に設けられたコンプレッサ14とを備えて構成される。排気タービン8及びコンプレッサ14は互いに連結されており、エンジン1の排気ガスによって排気タービン8が駆動されると、該排気タービン8に連結されたコンプレッサ14が駆動され、吸気が圧縮供給(過給)される。
【0031】
尚、吸気管12の入口近傍には給気を浄化するためのエアクリーナ16が設けられている。また、吸気管12のうちコンプレッサ14より下流側には、コンプレッサ14によって圧縮加熱された給気を冷却するためのインタークーラ18が設けられている。また排気管6の出口近傍には消音用のマフラー20が設けられている。
【0032】
ターボチャージャ2はエンジン回転数に応じて開度が可変なノズルベーンが排気タービン8に設けられたノズル機構22を備える、いわゆる可変容量型のターボチャージャである。ノズル機構22は、例えば電気的エネルギーや圧力エネルギーを利用して駆動可能なアクチュエータ56によって開度が調整可能に構成されている。
尚、ノズル機構22には開度θを検出するための開度センサ24が設けられている。
【0033】
続いて
図2を参照して、上記構成を有するエンジン1の制御系30について説明する。
図2は
図1のエンジン1が備える制御系30の構成を示す模式図であり、
図3は
図2の制御系30に含まれる専用ECU34の内部構成を機能的に示すブロック図である。
【0034】
制御系30はエンジン1を含む車両全体の各種制御を統括的に処理するメインECU32と、ターボチャージャ2に関するローカル制御を処理する専用ECU34と、制御系30に駆動電力を供給するための電源供給ライン36と、ターボチャージャ2における異常診断に関する信号を送受信するための異常診断ライン38と、制御系30と外部機器との間の制御信号を送受信するためのネットワークライン40とを備える。
尚、ネットワークライン40は信頼性向上のためにCAN通信が採用されている。
【0035】
メインECU32は、電源供給ライン36から供給された駆動電力を該メインECU32の各部に分配する電源回路42、異常診断ライン38及びネットワークライン40と各種信号を送受信するためのトランシーバ44A及び44B、各種演算処理を実施する演算処理ユニットであるCPU46、並びに、CPU46で実施される各種処理に用いられるデータ類を記憶可能なメモリ47を備えている。
【0036】
専用ECU34は、電源供給ライン36から供給された駆動電力を該専用ECU34の各部に分配する電源回路48、異常診断ライン38及びネットワークライン40とそれぞれ信号を送受信するためのトランシーバ50A及び50B、専用ECU34における各種演算処理を実施する演算処理ユニットであるCPU52、並びに、CPU52で実施される各種処理に用いられる情報類を記憶可能なメモリ54を備える。
【0037】
このように制御系30では、車両全体に関する処理演算をメインECU32実施する一方で、ターボチャージャ2に関するローカル制御を専用ECU34で実施することにより、メインECU32における処理負担を軽減する中央制御型が採用されている。
【0038】
ここで専用ECU34のCPU52について内部構成を機能的に示すと、
図3に示されるように、アクチュエータ56の荷重、又は、アクチュエータ56への供給エネルギーの少なくとも一方を検出可能に構成された第1の検出部58と、ターボチャージャ2の稼動状態を検出する第2の検出部60と、異常の有無を判定する判定部62と、アクチュエータ56の駆動制御を実施する駆動制御部64とを備える。本実施形態では上記構成を備えることにより、後述する異常判定制御が実施される。以下、より具体的な実施例に基づいて説明する。
【0039】
(実施例1)
まず
図4乃至
図7を参照して、実施例1に係る異常判定制御について説明する。
図4は実施例1に係る専用ECU34
の構成を示す模式図であり、
図5はアクチュエータ56の荷重を検知するための構造例を示す模式図であり、
図6は実施例1に係る異常判定制御を工程毎に示すフローチャートであり、
図7は
図4のメモリ54に予め記憶されたマップ66の一例である。
尚、以下の説明では上記と共通する構成については共通する符号を付すこととし、重複する説明を適宜省略することとする。
【0040】
実施例1では、アクチュエータ56の荷重を検出し、その検出結果に基づいて異常判定が行われる。アクチュエータ56は例えば電源回路48から供給される駆動電力(電気的エネルギー)によって動作可能なモータ(電動機)であり、
図5の例では、不図示の動力伝達機構によってモータの回転運動が往復運動に変換された後、駆動ロッド68に伝達されるように構成されている。ノズル機構22は、このような駆動ロッド68の往復運動によって開度が可変に構成されている。
【0041】
アクチュエータ56は、
図5に示されるように、該アクチュエータ56の近傍を囲むように形成されたハウジング70内に収容されている。アクチュエータ56は、その三方がハウジング70によって囲まれると共に、開放された一方に駆動ロッド68が接続されている。アクチュエータ56及びハウジング60間には、荷重検出用の圧電素子72が設けられている。圧電素子72はアクチュエータ56の駆動時にハウジング70との間に生じる反力を検出し、それに応じた電圧信号を出力する。CPU34(第1の検出部58)はこのように圧電素子58から出力された電圧信号を取得することにより、アクチュエータ56の荷重を検出可能に構成されている。
【0042】
本実施例では特に、圧電素子72は、アクチュエータ56のうち駆動ロッド68が接続された側と反対側に設けられている。アクチュエータ56のうち駆動ロッド68が接続された側と反対側は、アクチュエータ56からハウジング70に対して反力が最も作用し易い位置であるため、このような位置に圧電素子72を配置することで、アクチュエータ56の荷重を精度よく検出できる。
【0043】
続いて
図6を参照して、上記構成に基づいて実施される異常判定方法について説明する。
まず第2の検出部60は開度センサ24からの検出信号を取得することにより、ターボチャージャ2の稼動状態を検出する(ステップS11)。
【0044】
続いて専用ECU34は、メモリ54にアクセスすることにより、該メモリ54に予め記憶されたマップ66を取得する(ステップS12)。ここで
図7はマップ66の一例を示しており、ターボチャージャ2の稼動状態を表すノズル機構22の開度θ毎に、ターボチャージャ2の過給圧と荷重との関係について許容範囲L
limit(許容上限値L
max及び許容下限値L
min)が規定されている。判定部62はステップS12で取得したマップ66に基づいて、ステップS11で検出した稼動状態に対応する許容範囲L
limit(許容上限値L
max及び許容下限値L
min)を設定する(ステップS13)。
【0045】
続いて第1の検出部58は圧電素子72の電圧信号を取得することにより、アクチュエータ56の荷重を検出する(ステップS14)。そして、ステップ14で検出されたアクチュエータの荷重が、ステップS13で設定された許容範囲L
limit内であるか否かを判定する(ステップS15)。判定の結果、アクチュエータ56の荷重が許容範囲L
limit内である場合(ステップS15:YES)、判定部62は正常判定を行う(ステップS16)。一方、アクチュエータ56の荷重が許容範囲L
limit内でない場合(ステップS15:NO)、判定部62は異常判定を行い(ステップS16)、その旨を報知するための警報を発する(ステップS17)。
【0046】
以上説明したように実施例1によれば、圧電素子72を用いてアクチュエータ56の荷重を検出し、その検出結果が稼動状態に応じて設定された許容範囲L
limitであるか否かに基づいて異常判定がなされる。このような異常判定はエンジン1が動作中であるか否かに関わらず実施可能であるため、ノズル機構22の異常を早期且つ精度よく検出できる。
【0047】
(実施例2)
続いて
図8及び
図9に基づいて、実施例2に係る異常判定制御について説明する。
図8は実施例2に係る専用ECU34
の構成を示すブロック図であり、
図9は
図8の専用ECU34によって実施される異常判定制御を工程毎に示すフローチャートであり、
図10は
図8のメモリ54に予め記憶されたマップ78の一例である。
【0048】
図8に示されるように、実施例2では、専用ECU34において電源回路48からアクチュエータ56に駆動電力を供給する電力供給ライン74上に、該電力供給ライン74を流れる電流値を検出するための電流センサ76が設けられている。これにより、CPU52は電流センサ76の検出値に基づいてアクチュエータ56における消費電力値(すなわち、供給エネルギー)をモニタリング可能に構成されている。
【0049】
続いて
図9を参照して、上記構成に基づいて実施される異常判定方法について説明する。
まず第2の検出部60は開度センサ24からの検出信号を取得することにより、ターボチャージャ2の稼動状態を検出する(ステップS21)。続いて専用ECU34は、メモリ54にアクセスすることにより、該メモリ54に予め記憶されたマップ66を取得する(ステップS22)。
【0050】
ここで
図10はマップ78の一例を示しており、ターボチャージャの稼動状態を表すノズル機構22の開度θ毎に、ターボチャージャの過給圧と電流値との関係の許容範囲L
limit(許容上限値L
max及び許容下限値L
min)を規定している。判定部62はステップS12で取得したマップ66に基づいて、ステップS11で検出した稼動状態に対応する許容範囲L
limit(許容上限値L
max及び許容下限値L
min)を設定する(ステップS23)。
【0051】
続いて第1の検出部58は電流センサ76の信号を取得することにより、アクチュエータ56への供給エネルギー(電気的エネルギー)を検出する(ステップS24)。そして、ステップ24で検出されたアクチュエータへの供給エネルギーが、ステップS23で設定された許容範囲L
limit内であるか否かを判定する(ステップS25)。判定の結果、アクチュエータ56への供給エネルギーが許容範囲L
limit内である場合(ステップS25:YES)、判定部62は正常判定を行う(ステップS26)。一方、アクチュエータ56への供給エネルギーが許容範囲L
limit内でない場合(ステップS25:NO)、判定部62は異常判定を行い(ステップS26)、その旨を報知するための警報を発する(ステップS27)。
【0052】
以上説明したように実施例2によれば、電流センサ76を用いてアクチュエータ56への供給エネルギー(電気的エネルギー)を検出し、その検出結果が稼動状態に応じて設定された許容範囲L
limitであるか否かに基づいて異常判定がなされる。このような異常判定はエンジン1が動作中であるか否かに関わらず実施可能であるため、ノズル機構22の異常を早期且つ精度よく検出できる。
【0053】
(実施例3)
続いて
図11及び
図12を参照して実施例3について説明する。
図11は実施例3に係る専用ECU34
の構成を示すブロック図であり、
図12は
図11の専用ECU34によって実施される異常判定制御を工程毎に示すフローチャートである。
【0054】
図11に示されるように、実施例3では、上記実施例1と同様に圧電素子72によってアクチュエータ56の荷重を圧電素子によって検出可能に構成されると共に、上記実施例2と同様に電流センサ76によってアクチュエータ56への供給エネルギーを検出可能に構成されている。これにより、CPU52は圧電素子72及び電流センサ76の両方の検出値に基づいて異常判定可能に構成されている。
【0055】
続いて
図12を参照して、上記構成に基づいて実施される異常判定方法について説明する。
まず第2の検出部60は開度センサ24からの検出信号を取得することにより、ターボチャージャ2の稼動状態を検出する(ステップS31)。続いて専用ECU34は、メモリ54にアクセスすることにより、該メモリ54に予め記憶されたマップ66、78を取得する(ステップS32)。ここでマップ66,78は、上記
図7及び
図10に示されたものと同様であり、それぞれ、ターボチャージャ2の稼動状態を表すノズル機構22の開度θ毎に、ターボチャージャ2の過給圧と荷重又は電流値との関係の許容範囲L
limit(許容上限値L
max及び許容下限値L
min)を規定している。判定部62はステップS32で取得したマップ66,78に基づいて、ステップS31で検出した稼動状態に対応する許容範囲L
limit(許容上限値L
max及び許容下限値L
min)を設定する(ステップS33)。
【0056】
続いて第1の検出部58は圧電素子72の信号を取得することによりアクチュエータ56の荷重を検出すると共に(ステップS34)、電流センサ76の信号を取得することによりアクチュエータ56への供給エネルギーを検出する(ステップS35)。そして、ステップ34で検出されたアクチュエータ56の荷重及びステップS35で検出されたアクチュエータへの供給エネルギーの双方が、ステップS33で設定された許容範囲L
limit内であるか否かを判定する(ステップS36)。判定結果が真である場合(ステップS36:YES)、判定部62は正常判定を行う(ステップS37)。
【0057】
一方、判定結果が偽である場合(ステップS36:NO)、判定部62は更に供給エネルギーに対して荷重が少ないか否かを判定する(ステップS38)。すなわち、ステップS34で検出されるアクチュエータ56の荷重が、ステップS35で検出されるアクチュエータ56への供給エネルギーから期待される荷重に達していないか否かが判定される。判定結果が真である場合(ステップS38:YES)、判定部62は供給エネルギーがアクチュエータ56の駆動に正常にされていないとして、エネルギー供給路に異常(例えば短絡や漏洩など)があると判定する(ステップS39)。一方、判定結果が偽である場合(ステップS38:NO)、判定部62はその他の異常判定として判定する(ステップS40)。
【0058】
以上説明したように実施例3によれば、アクチュエータ56の荷重及びアクチュエータ56への供給エネルギーの両方に基づいて異常判定を行うことによって、より精度のよい判定を行うことができる。特に、供給エネルギー(入力エネルギー)に対してアクチュエータ56の荷重(出力エネルギー)が当該供給エネルギーに対応する目標値(すなわち、入力に対して期待される出力)に比べて少ない場合、供給エネルギーが漏洩するなどの異常が懸念されるとして、アクチュエータ56へのエネルギー供給経路に異常があると判定できる。
【0059】
(実施例4)
続いて
図13に基づいて、実施例4について説明する。
図13は実施例4に係る専用ECU34
の構成を示すブロック図である。
【0060】
上述の各実施例では、電源供給ライン74から供給された駆動用電力(電気的エネルギー)によって駆動可能なアクチュエータ56を採用したターボチャージャについて説明したが、これに代えて実施例3では圧力エネルギーによって駆動可能なアクチュエータ56を採用したターボチャージャ2について説明する。
【0061】
実施例3は、気体又は液体からなる流体を圧縮して蓄積可能な圧力源80と、該圧力源80から供給される圧縮流体をアクチュエータ56に供給するための流路82と、該流路82上に設けられた圧力センサ84とを備える。アクチュエータ56は流路82を介して供給される圧縮流体が有する圧力エネルギーによって駆動されることにより、ノズル機構22を動作可能に構成されている。
【0062】
上記実施例2及び3ではアクチュエータ56への供給エネルギー(電気的エネルギー)を、電流センサ76によって取得した電流値に基づいて検出していたが、本実施例では、圧力センサ84で取得した圧力値に基づいて、アクチュエータ56への供給エネルギー(圧力エネルギー)を検出可能に構成されている。またアクチュエータ56には、上述の実施例1及び実施例3と同様に圧電素子72が設けられており、該圧電素子72の信号を取得することによりアクチュエータ56の荷重を検出可能に構成されている。
【0063】
このように実施例4では、圧力エネルギーのように電気的エネルギー以外の供給エネルギーによってアクチュエータ56が駆動される。この場合、上記実施例2及び3における電流センサ76の検出内容を、圧力センサの検出内容に置換することで、同様の制御に基づいて異常判定を行うことができる。
【0064】
尚、圧力センサ84に代えて、流量センサを用いて圧縮流体の流量に基づいて上記制御を行ってもよい。
【0065】
以上説明したように、上述の実施形態によれば、ノズル機構22の異常を早期且つ精度よく検出可能な可変容量型ターボチャージャの異常判定装置を提供できる。