(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載された保温技術は、スラブの仮置き、取り出しを行うごとに、スラブの上面からいったん保温カバーをはずし、その後スラブの上面に再度保温カバーを載置する必要があり、余分なハンドリングが必要であるうえ、スラブをハンドリングする間、保温カバーを仮置きするスペースが必要となり、生産効率が低く実現するのが困難であるという問題がある。
【0010】
また、上記特許文献2に記載された保温技術は、スラブ仮置きストックヤードにおいて、スラブの仮置き及び搬出をする場合に、スラブ仮置場の上方が完全に開口されるように保温シートを折りたたむ必要があり、スラブのハンドリング時間が長くなるうえに、台風や風雨に対する耐候性や耐久性が低く、安定した保温を長期にわたって行うのが困難であるという問題がある。
【0011】
そこで、製鋼工場から搬送された鋳片について、鋳片仮置ストックヤードにおける温度低下を抑制しつつ、鋳片仮置ストックヤードにおける鋳片の仮置き及び鋳片仮置ストックヤードからの搬出を効率的に行うことが可能な技術への強い要請がある。
【0012】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、製鋼工場から搬送された鋳片について、鋳片仮置ストックヤードにおける温度低下を抑制しつつ、鋳片仮置ストックヤードにおける仮置き及び鋳片仮置ストックヤードからの搬出を効率的に行うことが可能な鋳片保温装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に記載の発明は、熱間加工工程に供給する前に仮置きされる鋳片の鋳片保温装置であって、前記鋳片が仮置きされる鋳片仮置位置に移動可能とされ、前記鋳片の上方を覆う保温屋根と、前記鋳片仮置位置の周囲を断熱材により囲む保温枠体と、を備え、前記保温屋根は、上下方向に多段に配置され、平面視互いに相対移動可能とされた複数の保温屋根構成体と、前記保温屋根構成体に配置され前記鋳片から上方への放熱を抑制する断熱材と、を備えることを特徴とする。
【0014】
この発明に係る鋳片保温装置によれば、鋳片が仮置きされる鋳片仮置位置に移動可能とされ、上下方向に多段に配置されるとともに、平面視互いに相対移動可能とされた複数の保温屋根構成体と、これら保温屋根構成体に配置され鋳片から上方への放熱を抑制する断熱部材とを有し、鋳片の上方を覆う保温屋根を備えているので、鋳片仮置ストックヤードに仮置きされた鋳片から上方への熱の持ち出しが抑制される。
また、鋳片仮置位置の周囲を断熱材により囲む保温枠体を備えているので、鋳片から側方への熱の持ち出しを抑制して、鋳片の温度低下を効率的に抑制することができる。
【0015】
また、上下方向に多段に配置された複数の保温屋根構成体が、平面視互いに相対移動可能とされて、搬入又は搬出される鋳片の上方に開口を形成することができるので、鋳片の仮置き及び搬出を容易かつ効率的に行うことができる。
その結果、鋳片仮置きストックヤードに仮置きされた鋳片の温度低下が抑制され、ひいては加工工程に温度が高い鋳片を装入することで、加熱工程における消費エネルギーの削減と、加熱に要するリードタイムを短縮することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鋳片保温装置であって、前記鋳片仮置位置の近傍に配置され
て前記保温屋根構成体のそれぞれに対応して設けられ、前記鋳片保温屋根の移動方向に沿って形成された軌道と、
上面が平坦に形成され前記鋳片仮置位置をはさんで前記軌道と平行に配置された平板部材と、前記軌道に載置されて前記保温屋根構成体を移動可能に支持
し前記軌道の幅方向への変位を抑制する鍔が形成された第1の車輪と、
前記平板部材と対応して配置され前記保温屋根構成体を移動可能に支持する第2の車輪と、を備え、前記第2の車輪は、前記
保温屋根構成体の幅方向に変位可能とされていることを特徴とする。
【0017】
この発明に係る鋳片保温装置によれば、鋳片仮置位置の近傍に配置され
保温屋根構成体のそれぞれに対応して設けられた、鋳片保温屋根の移動方向に沿って形成された軌道に載置されて、保温屋根構成体を移動可能に支持するとともに、
保温屋根構成体の幅方向への変位を抑制する鍔が形成された第1の車輪を備えているので、鋳片を長時間にわたって保持することにより、保温屋根構成体が高温になって熱膨張し、第1の車輪と第2の車輪と軸方向の間隔が変動した場合でも、第1の車輪の形成された鍔が軌道から外れないので、保温屋根構成体を軌道に沿って安定して移動することができる。
【0018】
また、第2の車輪は、前記軌道の幅方向に変位可能とされているので、第1の車輪と第2の車輪の間隔が変動した場合でも、第2の車輪は保温屋根構成体を安定して移動可能に支持することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の鋳片保温装置であって、前記保温枠体を構成する断熱部材を被覆する保護部材を備えることを特徴とする。
【0020】
この発明に係る鋳片保温装置によれば、前記保温枠体を構成する断熱部材を被覆する保護部材を備えているので、断熱部材の劣化を抑制するとともに、保温枠体の寿命を延長することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋳片保温装置であって、制御部を備え、前記制御部は、製鉄工程と熱延工程の間におけるいずれかの生産指示信号に基づいて、前記鋳片が移送される鋳片仮置位置と対応する前記保温屋根構成体を移動して開口部を形成するように構成されていることを特徴とする。
【0022】
この発明に係る鋳片保温装置によれば、制御部が、製鉄工程と熱延工程の間におけるいずれかの生産指示信号に基づいて、鋳片が移送される鋳片仮置位置と対応する保温屋根構成体を移動して開口部を形成するように構成されているので、鋳片の仮置き又は鋳片の取り出しを行う、対象の仮置き場に、鋳片が上下方向に移動可能な開口部を効率的に形成することができる。
【0023】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の鋳片保温装置であって、制御部は、前記生産指示信号に定義された鋳片の長さに基づいて、前記保温屋根構成体の移動量を制御するように構成されていることを特徴とする。
【0024】
この発明に係る鋳片保温装置によれば、制御部は、生産指示信号に定義された鋳片の長さに基づいて、保温屋根構成体の移動量を制御するように構成されているので、指示された所定の鋳片仮置き位置への鋳片の仮置きや、鋳片を取り出して加熱工程(又は熱間加工工程)に移送する場合に、保温屋根構成体の無駄な移動を抑制しつつ、鋳片の長さと適応した開口部を形成することができる。
その結果、保温屋根構成体を移動するのに要するエネルギー及び移動時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明に係る鋳片保温装置によれば、鋳片仮置きストックヤードに仮置きされた鋳片の温度低下を抑制することができ、ひいては加熱工程における消費エネルギーの削減することができる。
また、保温屋根構成体が、仮置きのために搬入及び搬出される鋳片の上方に開口を形成することにより、鋳片を効率的に搬入及び搬出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、
図1から
図9を参照して、本発明の第1の実施形態に係るスラブ保温装置について説明する。
【0028】
図1は、第1の実施形態に係るスラブ仮置ストックヤード(鋳片仮置ストックヤード)の概略構成を示す図であり、符号1はスラブ仮置ストックヤードを、符号2はスラブ保温装置(鋳片保温装置)を、符号Wはスラブを示している。
【0029】
スラブ仮置ストックヤード1は、
図1に示すように、スラブ仮置エリア11を備えており、スラブ仮置エリア11は、例えば、東西方向に並列配置され南北に伸びる7つのスラブ仮置レーン11A、11B、11C、11D、11E、11F、11Gから構成されている。
【0030】
各スラブ仮置レーン11A、11B・・・11Gには、天井クレーン(以下、クレーンという)15が配置されるとともに、製鋼工場(不図示)で生産されたスラブWを搬送する貨車Jがクレーン15と対応する位置に配置されている。
【0031】
また、スラブ仮置ストックヤード1には、各スラブ仮置レーン11A、11B・・・11Gと対応してローラテーブル13が配置されていて、スラブWを加熱工程及び熱間圧延工程に搬送するようになっている。
【0032】
それぞれのスラブ仮置レーン11A、11B、11C、11D、11E、11F、11Gは、スラブWが、その長手方向を各スラブ仮置レーン11A、11B・・・11Gの長手方向と直交する向きに配置されるとともに、各スラブ仮置レーン11A、11B・・・11Gの長手方向に沿ってそれぞれ2列に仮置き可能とされている。
【0033】
スラブ仮置ストックヤード1においては、例えば、ビジコン等の電子計算機から出力された生産指示情報(生産指示信号)に基づき、スラブWが搬入されるスラブ仮置レーン11A、11B・・・11G及びにスラブ仮置レーン11A、11B・・・11GおけるスラブWのスラブ仮置位置(鋳片仮置位置)12のアドレスが設定されるようになっている。
そして、スラブWは、クレーン15によってスラブ仮置位置12のアドレスまで搬送され、スラブ仮置位置12に仮置きされるようになっている。
【0034】
なお、この実施形態において、スラブ仮置ストックヤード1には、例えば、12基のスラブ保温装置2が配置されており、スラブ保温装置2の中には、
図1に示すように、例えば、東西方向2列、南北方向に2列のスラブWは保持可能とされている。そして、長時間にわたって仮置きされるスラブWを、可能な範囲でスラブ保温装置2に仮置きするようになっている。
【0035】
また、熱間圧延工程(熱間加工工程)は、生産指示情報に基づいてスラブWを熱延するようになっており、スラブ仮置ストックヤード1に仮置きされたスラブWは、熱間圧延工程の要求により搬出され、ローラテーブル13によって矢印R方向に搬送されて、加熱工程で所定温度まで昇温された後に、熱間圧延工程に供給されるようになっている。
【0036】
図2は、スラブ保温装置2の概略構成を示す斜視図であり、
図3は、スラブ保温装置2の概略構成を説明する平面図である。
また、
図4はスラブ保温装置2の概略構成を説明する図であり、
図4(A)は
図3においてA−A矢視した正面図を、
図4(B)は
図3においてB−B矢視した側面図を示している。
【0037】
スラブ保温装置2は、
図2〜
図4に示すように、例えば、仮置きされたスラブWの上方を覆うスラブ保温屋根(鋳片保温屋根)20と、スラブ保温屋根駆動機構30と、保温枠体40と、制御部(不図示)とを備え、長手方向が東西に延在する構成とされている。
【0038】
スラブ保温屋根20は、下段保温ルーフ(保温屋根構成体)21と、上段保温ルーフ(保温屋根構成体)25とを備え、下段保温ルーフ21と上段保温ルーフ25とは、上下方向において二段に配置可能とされている。
【0039】
下段保温ルーフ21は、
図4(B)に示すように、スラブWの上方を覆うセラミックウールからなる断熱材23と、例えば、断熱材23の上方に設けられて、断熱材23を被覆する鋼板からなる屋根部材22とを備えている。
【0040】
また、上段保温ルーフ25は、スラブWの上方を覆うセラミックウールからなる断熱材27と、例えば、断熱材27の上方に設けられて、断熱材27を被覆する鋼板からなる屋根部材26とを備えている。
【0041】
このように、スラブWの上方を、断熱材23、27が設けられた下段保温ルーフ(保温屋根構成体)21と、上段保温ルーフ(保温屋根構成体)25により覆うことで、仮置きされたスラブWから上方に逃げる熱を減少させて、スラブWの温度が低下するのを抑制することができる。
【0042】
また、断熱材23、27の上方を、鋼板からなる屋根部材22、26で被覆することにより、断熱材23、27の劣化を抑制して、断熱材23、27の寿命を延長することができる。
【0043】
また、下段保温ルーフ21、上段保温ルーフ25は、スラブ保温屋根駆動機構30により、それぞれ平面視スラブ保温装置2の長手方向に沿って水平にスライド可能とされており、互いに相対移動することで、保温枠体40内のスラブ仮置位置12に仮置きされたスラブWの上方を覆い又は開口部V10を形成可能とされている。
【0044】
スラブ保温屋根駆動機構30は、下段保温ルーフ21と対応する車輪受部材31と、ルーフ走行車輪32と、ルーフ走行車輪32に駆動源(不図示)からの動力を伝達する駆動軸33と、上段保温ルーフ25と対応する車輪受部材35と、ルーフ走行車輪32と、ルーフ走行車輪32に駆動源(不図示)からの動力を伝達する駆動軸38と、車輪受部材31、35を支持する支持架台39とを備えている。
【0045】
車輪受部材31は、上部にコーナRが形成されたレール(軌道)31Lと、上面が平坦に形成された平板部材31Rとを備えている。
ルーフ走行車輪32は、レール31Lに載置される鍔付車輪(第1の車輪)32Lと、平板部材31Rに載置され回転軸を含む断面における外周が平坦に形成されたフラット車輪(第2の車輪)32Rとを備え、鍔付車輪32L及びフラット車輪32Rは、それぞれ下段保温ルーフ21の進行方向両側端部から下方に形成された支持壁部24下端の台車に設けられている。
【0046】
また、車輪受部材35は、上部にコーナRが形成されたレール(軌道)35Lと、上面が平坦に形成された平板部材35Rとを備えている。
ルーフ走行車輪32は、レール35Lに載置される鍔付車輪36Lと、平板部材35Rに載置され回転軸を含む断面における外周が平坦に形成されたフラット車輪36Rとを備え、鍔付車輪36L及びフラット車輪36Rは、それぞれ上段保温ルーフ25の進行方向両側端部から下方に形成された支持壁部28下端の台車に設けられている。
【0047】
支持架台39は、保温枠体40の北側に配置される第1支持架台39Lと、保温枠体40の南側に配置される第2支持架台39Lとを備え、第1支持架台39Lの上面には、レール31L、レール35Lが保温枠体40の側壁から順に配置され、第2支持架台39Rの上面には、平板部材31R、平板部材35Rが保温枠体40の側壁から順に配置されている。また、レール31L、レール35L、平板部材31R、平板部材35Rは、互いに平行に配置されている。
【0048】
保温枠体40は、例えば、南北方向に伸びる保温側壁41と、保温側壁42と、東西方向に伸びる保温側壁43、保温側壁44と、保温側壁41及び保温側壁43をコーナ部で連結する保温側壁41Lと、保温側壁41及び保温側壁44をコーナ部で連結する保温側壁41Rと、保温側壁42及び保温側壁43をコーナ部で連結する保温側壁42Lと、保温側壁42及び保温側壁44をコーナ部で連結する保温側壁42Rとを備え、保温枠体40内に仮置きされたスラブWの周囲を囲むように構成されている。
【0049】
この実施形態において、保温枠体40を構成する保温側壁41は、例えば、
図6に示すように、セラミックウールからなる断熱材45と、断熱材45を両側面から挟んで被覆するステンレス板からなる保護部材46とを備えている。
なお、保温側壁42、43、44、41L、41R、42L、42Rについても、それぞれ保温側壁41と同様に構成されている。
【0050】
その結果、スラブWの側方を保温枠体40で囲むことで、仮置きされたスラブWから側方に逃げる熱を減少させて、スラブWの温度が低下するのを抑制することができる。
また、断熱材45を、保護部材46で被覆することにより、断熱材45が風雨等にさらされて劣化を抑制するとともに、保温枠体40の寿命を延長することができる。
【0051】
次に、
図7、
図8を参照して、スラブ仮置ストックヤード1におけるスラブ保温装置2の制御の一例について説明する。
図7は、第1の実施形態に係るスラブ保温装置2におけるスラブ保温屋根20の制御の概略構成を説明するフローチャートを、また、
図8は、スラブ仮置ストックヤード1におけるクレーン15の制御の概略構成を説明するフローチャートを示している。
【0052】
以下、
図7に基づいて、スラブ保温屋根20の動作を説明する。
(1)まず、制御部(不図示)が、生産指示情報に基づく指示を受け取る(S1)。
(2)次に、制御部は、生産指示情報に基づいて、搬入されるスラブWの仕様(例えば、鋼種、長さ等)を確認する(S2)。
(3)次いで、制御部は、搬入されるスラブWの仕様(例えば、鋼種、長さ等)に基づいて、スラブWを仮置きするスラブ仮置位置のアドレスを設定する(S3)。
スラブ仮置位置のアドレスが設定されることにより、使用するスラブ保温装置2、スラブWを搬入する貨車の停止位置、使用するクレーン15、クレーン15の移動先が設定される。
(4)次に、制御部は、駆動する保温ルーフ(下段保温ルーフ21、上段保温ルーフ25)を設定する(S4)。
(5)次いで、制御部は、スラブWの長さに基づいて、駆動する保温ルーフ(下段保温ルーフ21、上段保温ルーフ25)の移動量を設定する(S5)。
(6)制御部は、対象となる保温ルーフ(下段保温ルーフ21、上段保温ルーフ25)に移動を指示する信号を出力する(S6)。
(7)次に、制御部は、移動指示した保温ルーフ(下段保温ルーフ21、上段保温ルーフ25)が所定位置まで移動して開口していることを確認する(S7)。
保温ルーフ(下段保温ルーフ21、上段保温ルーフ25)が所定位置まで移動して開口していることを確認したら、クレーン15に開口確認信号を出力する。
(8)次いで、制御部は、クレーン15が、スラブWを所定の仮置位置に搬送したことを確認する(S8)。
(9)制御部は、クレーン15が、所定の位置まで上昇したことを確認する(S9)。
(10)制御部は、クレーン15が所定の位置まで上昇したことが確認されたら、保温ルーフ(下段保温ルーフ21、上段保温ルーフ25)を原位置に移動する(S10)。
【0053】
以下、
図8に基づいて、スラブ保温屋根20へのスラブWの搬入及び搬出について説明する。
(1)まず、制御部(不図示)が、生産指示情報に基づく指示を受け取る(S1)。
(2)次に、制御部は、生産指示情報に基づいて、搬入されるスラブWの仕様(例えば、鋼種、長さ等)を確認する(S2)。
(3)次いで、制御部は、搬入されるスラブWの仕様(例えば、鋼種、長さ等)に基づいて、スラブWを仮置きするスラブ仮置位置のアドレスを設定する(S3)。
(4)次に、制御部は、設定されたスラブ仮置位置のアドレスに基づいて、スラブWを搬入する貨車の停止位置を設定する(S11)。
(5)次いで、制御部は、設定されたスラブ仮置位置のアドレスに基づいて、使用するクレーン15を設定する(S12)。
(6)制御部は、貨車Jが所定位置に停止したことを確認する(S13)。
(7)制御部は、対象となるクレーン15を駆動する指示信号を出力する(S14)。
(8)指示されたクレーン15は、貨車JからスラブWを受け取り、設定された仮置位置に搬送する(S15)。
(9)次に、制御部は、保温ルーフ(下段保温ルーフ21、上段保温ルーフ25)の位置に基づいて、スラブ保温屋根20が開口していることを確認する(S16)。
(10)次いで、制御部は、スラブ保温屋根20が開口していることを確認したら、クレーン15によりスラブWを所定の仮置位置に仮置きする(S17)。
(11)制御部は、クレーン15がスラブWを所定の仮置位置に仮置きした後に、クレーン15の所定の位置まで上昇したことを確認する(S18)。
(12)制御部は、クレーン15が所定の位置まで上昇したことが確認されたら、クレーン15を原位置に移動する(S19)。
【0054】
次に、
図9を参照して、スラブ保温装置2の動作の概略を説明する。
図9(A)は、スラブ保温装置2において、下段保温ルーフ21、上段保温ルーフ63が互いに異なる位置に位置されていて、スラブ保温装置2内に仮置きされたすべてのスラブWがスラブ保温屋根20により覆われている状態を示している。
【0055】
図9(B)は、スラブ保温装置2において、下段保温ルーフ21及び上段保温ルーフ25が西側に位置されることで、東側に開口部V11が形成された状態を示している。
これにより、保温枠体40の東側に、保温枠体40の長手方向の約1/2の長さのスラブWを効率的に搬入、搬出することができる。
なお、
図9に示した符号25Tは、下段保温ルーフ21が、上段保温ルーフ25よりも東側に移動するのを防止するためのストッパを示している。
【0056】
図9(C)は、スラブ保温装置2において、下段保温ルーフ21、上段保温ルーフ25が東側に位置されることで、保温枠体40の東側に、開口部V12が形成された状態を示している。
これにより、保温枠体40の西側に、保温枠体40の長手方向の約1/2の長さのスラブWを効率的に搬入、搬出することができる。
【0057】
なお、
図9(A)〜
図9(C)に示した開口部V11、V12は、スラブ保温装置2において形成される開口部V10の一例であり、例えば、下段保温ルーフ21、上段保温ルーフ25の移動量及び配置は、スラブWの長さや仮置位置と対応させて任意に設定することができる。
【0058】
第1の実施形態に係るスラブ保温装置2によれば、スラブ仮置ストックヤード1に仮置きされたスラブWの上方をスラブ保温屋根20により覆うので、スラブWから上方への熱の持ち出しが減少して、仮置きされたスラブWの温度低下を抑制することができる。
その結果、保温屋根構成体を移動するのに要するエネルギー及び移動時間を短縮することができる。
【0059】
また、スラブ保温装置2によれば、保温枠体40を備え、スラブWから側方への熱の持ち出しを抑制することにより、スラブWの温度低下を効率的に抑制することができる。
その結果、加熱工程における消費エネルギーの削減することができる。
【0060】
また、スラブ保温装置2によれば、スラブ保温屋根20のうち、搬入又は搬出するスラブWの仮置位置に対応した保温ルーフ21、22が移動して、スラブ保温屋根20に仮置きされるスラブWと対応した開口部V10を形成するので、スラブ仮置ストックヤード1に仮置きされたスラブWを容易かつ効率的に搬入及び搬出することができる。
【0061】
また、保温ルーフ21、22が、上下方向に二段に配置されて、平面視互いに相対移動可能とされているので、スラブ保温屋根20に開口部V10を形成する際に、スラブWの上方から保温ルーフ21、22を別の場所に移動する必要がないので、仮置きに際しての二度手間が発生せず、しかも保温ルーフ21、22を仮置きするためのスペースが必要されず、省スペースを実現することができる。
【0062】
また、スラブ保温装置2によれば、レール31L、35Lに対して鍔付車輪32L、36Lが載置されるので、保温ルーフ21、25を、軌道に沿って安定して移動することができる。
【0063】
また、スラブ保温装置2によれば、フラット車輪32R、36Rが平板部材31R、35Rに載置されていて、フラット車輪32R、36Rが、保温ルーフ21、25の幅方向(進行方向と直交する方向)に変位して、フラット車輪32R、36Rの軸方向位置の変化に対応することができるので、スラブWから上方に放出された熱によって、スラブ保温ルーフ21、25が熱膨張した場合でも、スラブ保温ルーフ21、25を所定の方向に安定して移動することができる。
【0064】
また、スラブ保温装置2によれば、製鉄工程と熱延工程の間におけるいずれかの生産指示信号に基づいて、スラブWを移送しようとするスラブ仮置位置12と対応して、保温ルーフ21、25を移動して開口部V10を形成するようになっているので、スラブWの仮置き又はスラブWの搬出に必要とされる位置に、効率的に開口部V10を形成することができる。
【0065】
また、スラブ保温装置2によれば、生産指示信号に定義されたスラブWの長さに基づいて、スラブ保温ルーフ21、25の移動量を制御するので、指示された所定のスラブ仮置位置12と対応する位置に、スラブWの長さに応じた大きさの開口部V10を効率的に形成することができる。
【0066】
次に、
図10、
図11を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。
図10は、第2の実施形態に係るスラブ保温装置の概略構成を説明する斜視図であり、符号5はスラブ保温装置(鋳片保温装置)を示している。
【0067】
第2の実施形態が、第1の実施形態と異なるのは、スラブ保温装置2が上下2段の保温ルーフを備えていたのに代えて、スラブ保温装置6は、上下3段の下段保温ルーフ61、中段保温ルーフ62、上段保温ルーフ63と、下段保温ルーフ61、中段保温ルーフ62、上段保温ルーフ63と対応するレール(軌道)71L、72L、73L、及び平板部材71R、72R、73R及び支持架台78L、78Rを備えている点であり、その他の構成は、第1の実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0068】
次に、
図11を参照して、スラブ保温装置6の動作の概略を説明する。
図11(A)は、スラブ保温装置6において、下段保温ルーフ61、中段保温ルーフ62、上段保温ルーフ63が互いに異なる位置に位置されて、スラブ保温装置6内に仮置きされたすべてのスラブWが保温屋根60により覆われている状態を示している。
【0069】
なお、
図11に示した符号62Tは、下段保温ルーフ61が、中段保温ルーフ62よりも東側に移動するのを防止するためのストッパを、符号63Tは、下段保温ルーフ61及び中段保温ルーフ62が、上段保温ルーフ63よりも東側に移動するのを防止するためのストッパを示している。
【0070】
図11(B)は、スラブ保温装置6において、下段保温ルーフ61、中段保温ルーフ62が中央に位置されるとともに、上段保温ルーフ63が東側に位置されることで、西側に開口部V21が形成された状態を示している。
これにより、保温枠体40内に、保温枠体40の長手方向の約1/3の長さのスラブWを、効率的に搬入、搬出することができる。
【0071】
図11(C)は、スラブ保温装置6において、下段保温ルーフ61、中段保温ルーフ62が西側に位置されるとともに、上段保温ルーフ63が東側に位置されることで、保温枠体40の長手方向の中央部に開口部V22が形成された状態を示している。
これにより、保温枠体40内に、保温枠体40の長手方向の約1/3の長さのスラブWを仮置きする場合に、中央にも仮置きすることが可能となり、スペース効率を向上することができる。また、仮置きを効率的に行うことができる。
【0072】
図11(D)は、スラブ保温装置6において、下段保温ルーフ61、中段保温ルーフ62、上段保温ルーフ63が西側に位置されることで、保温枠体40の西側に、保温枠体40の長手方向の約2/3の開口部V23が形成された状態を示している。
これにより、保温枠体40内に、保温枠体40の長手方向の約2/3の長さのスラブWを仮置きすることが可能となる。
【0073】
図11(E)は、スラブ保温装置6において、下段保温ルーフ61が西側に位置されるとともに、中段保温ルーフ62及び上段保温ルーフ63が中央に位置されることで、東側に開口部V24が形成された状態を示している。
これにより、東側に
図11(B)と同様に、保温枠体40の長手方向の約1/3の長さのスラブWを東側に仮置きすることができる。
【0074】
図11(F)は、スラブ保温装置6において、下段保温ルーフ61、中段保温ルーフ62、上段保温ルーフ63が西側に位置されることで、保温枠体40の東側に、保温枠体40の長手方向の約2/3の開口部V25が形成された状態を示している。
【0075】
なお、
図11(A)〜
図11(F)に示した図は、スラブ保温装置6において形成される開口部V20の一例を示すものであり、下段保温ルーフ61、中段保温ルーフ62、上段保温ルーフ63の配置は、必要に応じて任意に設定することが可能である。
また、下段保温ルーフ61、中段保温ルーフ62、上段保温ルーフ63の移動量は、スラブWの長さや仮置位置と対応させて任意に設定することができる。
【0076】
以下、
図12を参照して、スラブ保温装置の効果の一例について説明する。
図12は、スラブ保温装置を用いない場合と、長さ約28m、幅約8m、高さ約1.7mの保温枠体の上方に、二段式保温ルーフを設けたスラブ保温装置を用いて仮置きした場合のスラブの温度低下を示しており、長さ約12m、幅約1.5、高さ約20cmのスラブを、平面視2×2に配置して、それぞれ8段積みにした場合のスラブ間の平均温度を示したものである。
【0077】
スラブ保温装置を用いない場合、
図12に示すように、当初700℃であったスラブは、5時間後に約570℃、10時間後に470℃、15時間後に約380℃、20時間後に約320℃、30時間後に約230℃まで温度が低下した。
【0078】
一方、スラブ保温装置を用いた場合、当初700℃であったスラブは、5時間後に約678℃、10時間後に650℃、15時間後に624℃、20時間後に593℃、30時間後に549℃までしか低下しないことが判明した。
以上のように、スラブ保温装置を用いることにより、スラブを仮置後30時間経過しても、スラブ保温装置を用いない場合の約5時間経過後程度にしか温度低下しておらず、熱エネルギー換算で、10時間経過後で78%、30時間経過後で68%と、極めて大きなエネルギーロス削減が可能であることが確認できた。
【0079】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
【0080】
例えば、上記実施の形態においては、鋳片が、スラブWである場合について説明したが、例えば、スラブWに代えて、ビレットやブルームに適用してもよいことはいうまでもない。
【0081】
また、上記実施の形態においては、スラブ保温装置2が、保温枠体40を備える場合について説明したが、例えば、保温枠体40を備えない構成としてもよい。
【0082】
また、上記実施の形態においては、制御部が、生産指示信号に基づいて、保温屋根構成体が対応するべきスラブ仮置位置12と、開口部V10、V20の大きさ、すなわち保温ルーフ21、25、61、62、63の移動量を制御する場合について説明したが、例えば、保温ルーフ21、25、61、62、63が前進端まで移動するように構成してもよいし、保温ルーフ21、25、61、62、63を手動で操作する構成としてもよい。
【0083】
また、上記実施の形態においては、保温枠体40において、セラミックウールからなる断熱材45を被覆する保護部材46が、断熱材45を両側面から被覆するステンレス板である場合について説明したが、ステンレス板に代えて、他の材料で被覆する構成としてもよい。
また、断熱材45の一方側の面のみを保護部材46により被覆してもよいし、断熱材45を保護部材46により被覆しない構成としてもよい。
【0084】
また、上記実施の形態においては、断熱材23、27、45がセラミックウールである場合について説明したが、セラミックウールに代えて、他の断熱材料を適用する構成としてもよい。
【0085】
また、上記実施の形態においては、スラブ保温屋根駆動機構30の一方側に、レール31L、35Lが配置され、レール31L、35Lに鍔付車輪32L、36Lが載置される場合について説明したが、スラブ保温屋根駆動機構30の構成は、任意に設定することができる。
【0086】
また、上記実施の形態においては、スラブ仮置ストックヤード1の保温エリア11が東西にスラブ仮置レーン11A、11B・・・11Gを有する場合について説明したが、スラブ仮置ストックヤード1、スラブ保温装置2の配置については任意に設定することができる。
【0087】
また、上記実施の形態においては、スラブ仮置ストックヤード1の一部に、12基のスラブ保温装置2が配置される場合について説明した、スラブ保温装置2の数及び配置は任意に設定することができる。