(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(a)工程において前記処理容器内で発生する水分が単独で存在した場合に該水分が前記処理容器内に残留する温度下で、前記(a)工程と前記(b)工程とを行う請求項1に記載のクリーニング方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態について、
図1〜
図3を用いて説明する。
【0008】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、後述するようにガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0009】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO
2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド(インレットフランジ)209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)等の金属からなり、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、反応管203は垂直に据え付けられた状態となる。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成されている。処理容器の筒中空部には処理室201が形成されている。処理室201は、複数枚の基板としてのウエハ200を、後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に配列した状態で収容可能に構成されている。マニホールド209の内周には、カバー209aが設けられている。カバー209aは、例えば石英やSiC等により構成され、マニホールド209の内壁に沿ってマニホールド209の内壁を覆うように設けられている。
【0010】
処理室201内には、ノズル249a,249b,249eが、マニホールド209を貫通するように設けられている。ノズル249a,249b,249eは、例えば石英またはSiC等の耐熱性材料からなる。ノズル249a,249b,249eには、ガス供給管232a,232b,232eがそれぞれ接続されている。ガス供給管232aにはガス供給管232cが接続されている。ガス供給管232bにはガス供給管232d,232iが接続されている。ガス供給管232eにはガス供給管232jが接続されている。このように、反応容器には、3本のノズル249a,249b,249eと、7本のガス供給管232a〜232e,232i,232jとが設けられており、処理室201内へ複数種類のガスを供給することができるように構成されている。
【0011】
ガス供給管232a〜232e,232i,232jには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a〜241e,241i,241jおよび開閉弁であるバルブ243a〜243e,243i,243jがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a,232b,232eのバルブ243a,243b,243eよりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管232f〜232hがそれぞれ接続されている。ガス供給管232f〜232hには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるMFC241f〜241hおよび開閉弁であるバルブ243f〜243hがそれぞれ設けられている。
【0012】
ガス供給管232a,232bの先端部には、ノズル249a,249bがそれぞれ接続されている。ノズル249a,249bは、
図2に示すように、反応管203の内壁とウエハ200との間における円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a,249bは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a,249bは、処理室201内へ搬入された各ウエハ200の端部(周縁部)の側方にウエハ200の表面(平坦面)と垂直にそれぞれ設けられている。ノズル249a,249bは、L字型のロングノズルとしてそれぞれ構成されており、それらの各水平部はマニホールド209の側壁を貫通するように設けられており、それらの各垂直部は少なくともウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように設けられている。ノズル249a,249bの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a,250bがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の中心を向くようにそれぞれ開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0013】
このように、本実施形態では、反応管203の側壁の内壁と、反応管203内に配列された複数枚のウエハ200の端部(周縁部)と、で定義される円環状の縦長の空間内、すなわち、円筒状の空間内に配置したノズル249a,249bを経由してガスを搬送している。そして、ノズル249a,249bにそれぞれ開口されたガス供給孔250a,250bから、ウエハ200の近傍で初めて反応管203内へガスを噴出させている。そして、反応管203内におけるガスの主たる流れを、ウエハ200の表面と平行な方向、すなわち、水平方向としている。このような構成とすることで、各ウエハ200に均一にガスを供給でき、各ウエハ200に形成される薄膜の膜厚均一性を向上させることが可能となる。ウエハ200の表面上を流れたガス、すなわち、反応後の残ガスは、排気口、すなわち、後述する排気管231の方向に向かって流れる。但し、この残ガスの流れの方向は、排気口の位置によって適宜特定され、垂直方向に限ったものではない。
【0014】
ガス供給管232eの先端部には、ノズル249eが接続されている。ノズル249eは、
図1に示すように、マニホールド209の内壁とカバー209aとの間における円環状の空間(以下、パージ空間ともいう)201a内へガスを噴出させるように構成されている。ノズル249eはL字型のノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁を貫通するように設けられており、その垂直部は上方に向かって立ち上がるように設けられている。ノズル249eの先端部には、ガス供給孔が上方に向かって開口するように設けられている。このガス供給孔はノズル249eの先端部の側面に設けられていてもよく、この場合、このガス供給孔は水平方向に向かって開口することとなる。
【0015】
ガス供給管232aからは、所定元素を含む原料ガスとして、例えば、所定元素としてのSiおよびハロゲン元素を含むハロシラン原料ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0016】
ハロシラン原料ガスとは、気体状態のハロシラン原料、例えば、常温常圧下で液体状態であるハロシラン原料を気化することで得られるガスや、常温常圧下で気体状態であるハロシラン原料等のことである。ハロシラン原料とは、ハロゲン基を有するシラン原料のことである。ハロゲン基には、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基、ヨード基等が含まれる。すなわち、ハロゲン基には、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン元素が含まれる。ハロシラン原料は、ハロゲン化物の一種ともいえる。本明細書において「原料」という言葉を用いた場合は、「液体状態である液体原料」を意味する場合、「気体状態である原料ガス」を意味する場合、または、その両方を意味する場合がある。
【0017】
ハロシラン原料ガスとしては、例えば、SiおよびClを含む原料ガス、すなわち、クロロシラン原料ガスを用いることができる。クロロシラン原料ガスとしては、例えば、ヘキサクロロジシラン(Si
2Cl
6、略称:HCDS)ガスを用いることができる。HCDSのように常温常圧下で液体状態である液体原料を用いる場合は、液体原料を気化器やバブラ等の気化システムにより気化して、原料ガス(HCDSガス)として供給することとなる。
【0018】
ガス供給管232bからは、反応ガスとして、例えば、酸素(O)含有ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。O含有ガスは、後述する成膜処理において、酸化ガス、すなわち、Oソースとして作用する。O含有ガスとしては、例えば、酸素(O
2)ガスを用いることができる。
【0019】
ガス供給管232cからは、反応ガスとして、例えば、水素(H)含有ガスが、MFC241c、バルブ243c、ガス供給管232a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。H含有ガスは、それ単体では酸化作用は得られないが、後述する成膜処理において、特定の条件下でO含有ガスと反応することで原子状酸素(atomic oxygen、O)等の酸化種を生成し、酸化処理の効率を向上させるように作用する。そのため、H含有ガスは、O含有ガスと同様に酸化ガスに含めて考えることができる。H含有ガスとしては、例えば、水素(H
2)ガスを用いることができる。
【0020】
ガス供給管232dからは、第1のクリーニングガスとして、例えば、フッ化水素(HF)ガスが、MFC241d、バルブ243d、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0021】
ガス供給管232eからは、第2のクリーニングガスとして、例えば、HFガスが、MFC241e、バルブ243e、ノズル249eを介して、カバー209aよりも内側のパージ空間201a内へ供給される。
【0022】
ガス供給管232iからは、第1のアルコールが、MFC241i、バルブ243i、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。アルコールは、それ単体ではクリーニング作用は得られないが、クリーニングガスに添加されることでクリーニング処理の効率を向上させるように作用する。そのため、アルコールは、HFガスと同様にクリーニングガスに含めて考えることができる。アルコールとしては、例えば、メタノール(CH
3OH)を用いることができる。CH
3OHのように常温常圧下で液体状態であるアルコールを用いる場合は、液体状態のアルコールを気化器やバブラ等の気化システムにより気化して、アルコールガス(CH
3OHガス)として供給することとなる。
【0023】
ガス供給管232jからは、第2のアルコールとして、例えば、CH
3OHが、MFC241j、バルブ243j、ガス供給管232e、ノズル249eを介して、カバー209aよりも内側のパージ空間201a内へ供給される。
【0024】
ガス供給管232f〜232hからは、不活性ガスとして、例えば、窒素(N
2)ガスが、それぞれMFC241f〜241h、バルブ243f〜243h、ガス供給管232a,232b,232e、ノズル249a,249b,249eを介して処理室201内へ供給される。
【0025】
ガス供給管232aから原料ガスを流す場合、主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、原料ガス供給系が構成される。ノズル249aを原料ガス供給系に含めて考えてもよい。原料ガス供給系を原料供給系と称することもできる。ガス供給管232aからハロシラン原料ガスを流す場合、原料ガス供給系を、ハロシラン原料ガス供給系、或いは、ハロシラン原料供給系と称することもできる。
【0026】
ガス供給管232bからO含有ガスを供給する場合、主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、O含有ガス供給系が構成される。ノズル249bをO含有ガス供給系に含めて考えてもよい。O含有ガス供給系を、酸化ガス供給系、或いは、酸化剤供給系と称することもできる。
【0027】
ガス供給管232cからH含有ガスを供給する場合、主に、ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより、H含有ガス供給系が構成される。ガス供給管232aにおけるガス供給管232cとの接続部よりも下流側、ノズル249aをH含有ガス供給系に含めて考えてもよい。H含有ガス供給系を、上述の酸化ガス供給系(酸化剤供給系)に含めて考えることもできる。
【0028】
ガス供給管232dからクリーニングガスを供給する場合、主に、ガス供給管232d、MFC241d、バルブ243dにより、第1のクリーニングガス供給系が構成される。ガス供給管232bにおけるガス供給管232dとの接続部よりも下流側、ノズル249bを第1のクリーニングガス供給系に含めて考えてもよい。ガス供給管232dからHFガスを供給する場合、第1のクリーニングガス供給系を第1のHFガス供給系と称することもできる。
【0029】
ガス供給管232eからクリーニングガスを供給する場合、主に、ガス供給管232e、MFC241e、バルブ243eにより、第2のクリーニングガス供給系が構成される。ノズル249eを第2のクリーニングガス供給系に含めて考えてもよい。ガス供給管232eからHFガスを供給する場合、第2のクリーニングガス供給系を第2のHFガス供給系と称することもできる。
【0030】
ガス供給管232iからアルコールを供給する場合、主に、ガス供給管232i、MFC241i、バルブ243iにより、第1のアルコール供給系が構成される。ガス供給管232bにおけるガス供給管232iとの接続部よりも下流側、ノズル249bを第1のアルコール供給系に含めて考えてもよい。第1のアルコール供給系を、第1のクリーニングガス供給系に含めて考えることもできる。
【0031】
ガス供給管232jからアルコールを供給する場合、主に、ガス供給管232j、MFC241j、バルブ243jにより、第2のアルコール供給系が構成される。ガス供給管232eにおけるガス供給管232eとの接続部よりも下流側、ノズル249eを第2のアルコール供給系に含めて考えてもよい。第2のアルコール供給系を、第2のクリーニングガス供給系に含めて考えることもできる。
【0032】
上述の原料ガス供給系、O含有ガス供給系、H含有ガス供給系のうち、いずれか、或いは、全てのガス供給系を、成膜ガス供給系と称することもできる。また、O含有ガス供給系、H含有ガス供給系のうち、いずれか、或いは、両方のガス供給系を、反応ガス供給系と称することもできる。
【0033】
上述の第1のクリーニングガス供給系、第2のクリーニングガス供給系のうち、いずれか、或いは、両方の供給系を、クリーニングガス供給系と称することもできる。また、上述の第1のHFガス供給系、第2のHFガス供給系のうち、いずれか、或いは、両方の供給系を、HFガス供給系と称することもできる。
【0034】
上述の第1のアルコール供給系、第2のアルコール供給系のうち、いずれか、或いは、両方の供給系を、アルコール供給系と称することもできる。アルコール供給系を、クリーニングガス供給系に含めて考えることもできる。
【0035】
また、主に、ガス供給管232f〜232h、MFC241f〜241h、バルブ243f〜243hにより、不活性ガス供給系が構成される。不活性ガス供給系を、パージガス供給系、希釈ガス供給系、或いは、キャリアガス供給系と称することもできる。
【0036】
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および排気バルブ(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することにより、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することにより、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されているバルブである。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。排気管231は、反応管203に設ける場合に限らず、ノズル249a,249b,249eと同様に、マニホールド209に設けてもよい。
【0037】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219はマニホールド209の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は例えばSUS等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面にはマニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入および搬出することが可能なように構成されている。ボートエレベータ115は、ボート217およびボート217に支持されるウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0038】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25〜200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる断熱板218が水平姿勢で多段に支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。但し、本実施形態は上述の形態に限定されない。例えば、ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料からなる筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。
【0039】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、ノズル249a,249bと同様にL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0040】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0041】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピや、後述するクリーニング処理の手順や条件等が記載されたクリーニングレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピおよびクリーニングレシピは、それぞれ、後述する各種処理(成膜処理、或いは、クリーニング処理)における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピやクリーニングレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピやクリーニングレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0042】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a〜241j、バルブ243a〜243j、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0043】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a〜241jによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a〜243jの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
【0044】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0045】
(2)成膜処理
上述の基板処理装置を用い、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に膜を形成するシーケンス例について、
図4を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0046】
図4に示す成膜シーケンスでは、
処理容器内(処理室201内)に収容された基板としてのウエハ200に対して原料ガスとしてHCDSガスを供給するステップ1と、
加熱された大気圧未満の圧力下にある処理容器内へO含有ガスとしてのO
2ガスとH含有ガスとしてのH
2ガスとを供給するステップ2と、
を非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを所定回数(n回以上)行うことで、ウエハ200上に、O含有膜としてシリコン酸化膜(SiO
2膜、以下、単にSiO膜ともいう)を形成する。
【0047】
本明細書では、上述の成膜処理を、便宜上、以下のように示すこともある。なお、以下の変形例や他の実施形態の説明においても同様の表記を用いることとする。
【0048】
(HCDS→O
2+H
2)×n ⇒ SiO
【0049】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体(集合体)」を意味する場合、すなわち、表面に形成された所定の層や膜等を含めてウエハと称する場合がある。また、本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面、すなわち、積層体としてのウエハの最表面」を意味する場合がある。
【0050】
従って、本明細書において「ウエハに対して所定のガスを供給する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)に対して所定のガスを直接供給する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等に対して、すなわち、積層体としてのウエハの最表面に対して所定のガスを供給する」ことを意味する場合がある。また、本明細書において「ウエハ上に所定の層(または膜)を形成する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)上に所定の層(または膜)を直接形成する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等の上、すなわち、積層体としてのウエハの最表面の上に所定の層(または膜)を形成する」ことを意味する場合がある。
【0051】
また、本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同様であり、その場合、上記説明において、「ウエハ」を「基板」に置き換えて考えればよい。
【0052】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)される。その後、
図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0053】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内のウエハ200が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。また、回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転を開始する。回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転は、少なくとも、ウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0054】
(SiO膜の形成処理)
その後、以下のステップ1,2を順次実行する。
【0055】
[ステップ1]
(HCDSガス供給)
このステップでは、処理室201内のウエハ200に対してHCDSガスを供給する。
【0056】
バルブ243aを開き、ガス供給管232a内にHCDSガスを流す。HCDSガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してHCDSガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ243fを開き、ガス供給管232f内へN
2ガスを流す。N
2ガスは、MFC241fにより流量調整され、HCDSガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0057】
また、ノズル249b内、および、カバー209aよりも内側のパージ空間201a内へのHCDSガスの侵入を防止するため、バルブ243g,243hを開き、ガス供給管232g,232h内へN
2ガスを流す。N
2ガスは、ガス供給管232b,232e、ノズル249b,249e、パージ空間201aを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0058】
このとき、APCバルブ244を適正に調整し、処理室201内の圧力を、例えば1〜4000Pa、好ましくは67〜2666Pa、より好ましくは133〜1333Paの範囲内の圧力とする。
【0059】
MFC241aで制御するHCDSガスの供給流量は、例えば1〜2000sccm、好ましくは10〜1000sccmの範囲内の流量とする。MFC241f〜241hで制御するN
2ガスの供給流量は、それぞれ例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。HCDSガスをウエハ200に対して供給する時間、すなわち、ガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜120秒、好ましくは1〜60秒の範囲内の時間とする。
【0060】
ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば250〜700℃、好ましくは300〜650℃、より好ましくは350〜600℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。
【0061】
ウエハ200の温度が250℃未満となると、ウエハ200上にHCDSが化学吸着しにくくなり、実用的な成膜速度が得られなくなることがある。ウエハ200の温度を250℃以上とすることで、これを解消することが可能となる。ウエハ200の温度を300℃以上、さらには350℃以上とすることで、ウエハ200上にHCDSをより充分に吸着させることが可能となり、より充分な成膜速度が得られるようになる。
【0062】
ウエハ200の温度が700℃を超えると、CVD反応が強くなり過ぎる(過剰な気相反応が生じる)ことで、膜厚均一性が悪化しやすくなり、その制御が困難となってしまう。ウエハ200の温度を700℃以下とすることで、適正な気相反応を生じさせることができることにより、膜厚均一性の悪化を抑制でき、その制御が可能となる。特に、ウエハ200の温度を650℃以下、さらには600℃以下とすることで、気相反応よりも表面反応が優勢になり、膜厚均一性を確保しやすくなり、その制御が容易となる。
【0063】
よって、ウエハ200の温度は250〜700℃、好ましくは300〜650℃、より好ましくは350〜600℃の範囲内の温度とするのがよい。
【0064】
上述の条件下でウエハ200に対してHCDSガスを供給することにより、ウエハ200の最表面上に、第1の層として、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さのClを含むSi含有層が形成される。Clを含むSi含有層は、Clを含むSi層であってもよいし、HCDSの吸着層であってもよいし、その両方を含んでいてもよい。HCDSの吸着層は、HCDSの物理吸着層であってもよいし、HCDSの化学吸着層であってもよいし、その両方を含んでいてもよい。
【0065】
ここで、1原子層未満の厚さの層とは不連続に形成される原子層のことを意味しており、1原子層の厚さの層とは連続的に形成される原子層のことを意味している。1分子層未満の厚さの層とは不連続に形成される分子層のことを意味しており、1分子層の厚さの層とは連続的に形成される分子層のことを意味している。Clを含むSi含有層は、Clを含むSi層とHCDSの吸着層との両方を含み得る。但し、上述の通り、Clを含むSi含有層については「1原子層」、「数原子層」等の表現を用いて表すこととする。
【0066】
HCDSガスが自己分解(熱分解)する条件下、すなわち、HCDSガスの熱分解反応が生じる条件下では、ウエハ200上にSiが堆積することでClを含むSi層が形成される。HCDSガスが自己分解(熱分解)しない条件下、すなわち、HCDSガスの熱分解反応が生じない条件下では、ウエハ200上にHCDSが吸着することでHCDSの吸着層が形成される。ウエハ200上にHCDSの吸着層を形成するよりも、ウエハ200上にClを含むSi層を形成する方が、成膜レートを高くすることができる点では、好ましい。以下、Clを含むSi含有層を、便宜上、単に、Si含有層とも称することとする。
【0067】
第1の層の厚さが数原子層を超えると、後述するステップ2での改質の作用が第1の層の全体に届かなくなる。また、第1の層の厚さの最小値は1原子層未満である。よって、第1の層の厚さは1原子層未満から数原子層程度とするのが好ましい。第1の層の厚さを1原子層以下、すなわち、1原子層または1原子層未満とすることで、後述するステップ2での改質反応の作用を相対的に高めることができ、ステップ2での改質反応に要する時間を短縮することができる。ステップ1での第1の層の形成に要する時間を短縮することもできる。結果として、1サイクルあたりの処理時間を短縮することができ、トータルでの処理時間を短縮することも可能となる。すなわち、成膜レートを高くすることも可能となる。また、第1の層の厚さを1原子層以下とすることで、膜厚均一性の制御性を高めることも可能となる。
【0068】
(残留ガス除去)
第1の層が形成された後、バルブ243aを閉じ、HCDSガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは第1の層形成に寄与した後のHCDSガスを処理室201内から排除する。このとき、バルブ243f〜243hは開いたままとして、N
2ガスの処理室201内への供給を維持する。N
2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留するガスを処理室201内から排除する効果を高めることができる。
【0069】
このとき、処理室201内に残留するガスを完全に排除しなくてもよく、処理室201内を完全にパージしなくてもよい。処理室201内に残留するガスが微量であれば、その後に行われるステップ2において悪影響が生じることはない。処理室201内へ供給するN
2ガスの流量も大流量とする必要はなく、例えば、反応管203(処理室201)の容積と同程度の量を供給することで、ステップ2において悪影響が生じない程度のパージを行うことができる。このように、処理室201内を完全にパージしないことで、パージ時間を短縮し、スループットを向上させることができる。N
2ガスの消費も必要最小限に抑えることが可能となる。
【0070】
原料ガスとしては、HCDSガスの他、例えば、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2、略称:DCS)ガス、モノクロロシラン(SiH
3Cl、略称:MCS)ガス、テトラクロロシランすなわちシリコンテトラクロライド(SiCl
4、略称:STC)ガス、トリクロロシラン(SiHCl
3、略称:TCS)ガス、トリシラン(Si
3H
8、略称:TS)ガス、ジシラン(Si
2H
6、略称:DS)ガス、モノシラン(SiH
4、略称:MS)ガス等の無機原料ガスや、テトラキスジメチルアミノシラン(Si[N(CH
3)
2]
4、略称:4DMAS)ガス、トリスジメチルアミノシラン(Si[N(CH
3)
2]
3H、略称:3DMAS)ガス、ビスジエチルアミノシラン(Si[N(C
2H
5)
2]
2H
2、略称:BDEAS)ガス、ビスターシャリブチルアミノシラン(SiH
2[NH(C
4H
9)]
2、略称:BTBAS)ガス等の有機原料ガスを用いることができる。
【0071】
不活性ガスとしては、N
2ガスの他、例えば、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いることができる。
【0072】
[ステップ2]
(O
2ガス+H
2ガス供給)
ステップ1が終了した後、処理室201内へO
2ガスとH
2ガスとを別々に供給し、これらのガスを処理室201内で混合させて反応させる。
【0073】
このステップでは、バルブ243b,243f〜243hの開閉制御を、ステップ1におけるバルブ243a,243f〜243hの開閉制御と同様の手順で行う。ガス供給管232b内を流れたO
2ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。このとき、同時にバルブ243cを開く。ガス供給管232c内を流れたH
2ガスは、MFC241cにより流量調整され、ガス供給管232a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。O
2ガスとH
2ガスとは、処理室201内で初めて混合して反応し、その後、排気管231から排気される。
【0074】
このとき、APCバルブ244を適正に調整し、処理室201内の圧力を、大気圧未満、例えば1〜1333Paの範囲内の圧力とする。
【0075】
MFC241bで制御するO
2ガスの供給流量は、例えば1000〜10000sccmの範囲内の流量とする。MFC241cで制御するH
2ガスの供給流量は、例えば1000〜10000sccmの範囲内の流量とする。O
2ガスおよびH
2ガスをウエハ200に対して供給する時間、すなわち、ガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜120秒の範囲内の時間とする。
【0076】
その他の処理条件は、ステップ1における処理条件と同様の条件とする。
【0077】
上述の条件下でO
2ガスおよびH
2ガスを処理室201内へ供給することで、O
2ガスおよびH
2ガスは、加熱された減圧雰囲気下においてノンプラズマで熱的に活性化(励起)されて反応し、それにより原子状酸素(O)等の酸素を含む水分(H
2O)非含有の酸化種が生成される。そして、主にこの酸化種により、ステップ1でウエハ200上に形成された第1の層(Si含有層)に対して酸化処理が行われる。この酸化種の持つエネルギーは、Si含有層中に含まれるSi−Cl、Si−H等の結合エネルギーよりも高いため、この酸化種のエネルギーをSi含有層に与えることで、Si含有層中に含まれるSi−Cl、Si−H結合等は切り離される。Siとの結合を切り離されたH、Cl等は膜中から除去され、Cl
2、HCl等として排出される。また、H、Cl等との結合が切られることで余ったSiの結合手は、酸化種に含まれるOと結びつき、Si−O結合が形成される。このようにして、Si含有層は、第2の層、すなわち、Cl等の不純物の含有量が少ないSiO層へと変化させられる(改質される)。この酸化処理によれば、O
2ガスを単独で供給する場合や水蒸気(H
2O)を供給する場合に比べ、酸化力を大幅に向上させることができる。すなわち、減圧雰囲気下においてO
2ガスにH
2ガスを添加することで、O
2ガス単独供給の場合やH
2Oガスを供給する場合に比べ大幅な酸化力向上効果が得られる。
【0078】
(残留ガス除去)
第1の層(Si含有層)を第2の層(SiO層)へと変化させた後、バルブ232b,232cを閉じ、O
2ガスおよびH
2ガスの供給をそれぞれ停止する。そして、ステップ1と同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するO
2ガスやH
2ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。このとき、処理室201内に残留するガス等を完全に排出しなくてもよい点は、ステップ1と同様である。
【0079】
O含有ガスとしては、O
2ガスの他、オゾン(O
3)ガス等を用いることができる。H含有ガスとしては、H
2ガスの他、重水素(D
2)ガス等を用いることができる。なお、原料ガスとして、4DMASガスや3DMASガス等のアミノシラン原料ガスを用いる場合は、O含有ガスとしてO
3ガスを用いるようにすれば、H含有ガスを用いることなく充分な(同様な)成膜レートで成膜することもできる。不活性ガスとしては、N
2ガスの他、例えば、ステップ1で例示した各種希ガスを用いることができる。
【0080】
(所定回数実施)
上述したステップ1,2を非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを所定回数(n回)行うことにより、ウエハ200上に、所定膜厚のSiO膜を形成することができる。上述のサイクルは複数回繰り返すのが好ましい。すなわち、上述のサイクルを1回行う際に形成される第2の層(SiO層)の厚さを所望の膜厚よりも小さくし、第2の層(SiO層)を積層することで形成されるSiO膜の膜厚が所望の膜厚になるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すのが好ましい。
【0081】
(パージおよび大気圧復帰)
SiO膜の形成が完了した後、バルブ243f〜243hを開き、ガス供給管232f〜232hのそれぞれからN
2ガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。N
2ガスはパージガスとして作用する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(パージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0082】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態で、マニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出される(ボートアンロード)。処理済のウエハ200は、ボート217より取出される(ウエハディスチャージ)。
【0083】
(3)クリーニング処理
上述の成膜処理を行うと、反応管203の内壁、ノズル249a,249bの表面、カバー209aの表面、ボート217の表面、シールキャップ219の上面等に、SiO膜等の薄膜を含む堆積物が累積する。すなわち、Oを含む堆積物が、加熱された処理室201内の部材の表面等に付着して累積する。また、成膜処理中にパージ空間201a内をN
2ガスでパージしていたとしても、パージ空間201a内にHCDSガス、O
2ガス、H
2ガスが微量に侵入する場合もある。そのため、パージ空間201a内の部材の表面、例えば、マニホールド209の内壁やカバー209aの内側の表面等にも、Oを含む堆積物が累積する場合もある。そこで、これらの堆積物の量(堆積物の厚さ)、すなわち、累積膜厚が、堆積物に剥離や落下が生じる前の所定の量(厚さ)に達する前に、クリーニング処理が行われる。
【0084】
図5に示すクリーニング処理では、
処理容器(処理室201)内へ少なくともHFガスを供給するエッチングステップと、
処理室201内へのHFガスの供給を停止した状態で、処理室201内へアルコールとしてCH
3OHを供給するアルコールパージステップと、
を間欠期間を設けることなく連続的に行う。
【0085】
以下、本実施形態におけるクリーニング処理の一例を、
図5を参照しながら説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0086】
(ボートロード)
空のボート217、すなわち、ウエハ200を装填していないボート217が、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0087】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内が後述する所定のエッチング圧力となるように、真空ポンプ246によって真空排気される。真空ポンプ246は、少なくともアルコールパージステップが終了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内が後述する所定のエッチング温度となるように、必要に応じてヒータ207によって加熱される。なお、エッチングステップおよびアルコールパージステップは、後述するように、室温、或いは、それ未満の温度で行われる場合もある。そのため、ヒータ207への通電を行わない場合もある。また、回転機構267によるボート217の回転を開始する。ボート217の回転は、少なくともアルコールパージステップが完了するまでの間は、継続して行われる。但し、ボート217は回転させなくてもよい。
【0088】
(エッチングステップ)
このステップでは、ウエハ200上にSiO膜を形成する処理を行った後の処理室201内、すなわち、O含有膜を含む堆積物が付着した処理室201内へ、少なくともHFガスを供給する。
【0089】
バルブ243d,243eを開き、ガス供給管232d,232e内へHFガスをそれぞれ流す。HFガスは、MFC241d,241eにより流量調整され、ガス供給管232b、ノズル249b,249e、パージ空間201aを介して処理室201内へ供給される。このとき同時にバルブ243i,243jを開き、ガス供給管232b,232e内へCH
3OH(CH
3OHガス)をそれぞれ流すようにしてもよい。
図5は、HFガスと一緒にCH
3OHを流す例を示している。CH
3OHは、MFC241i,241jにより流量調整され、ノズル249b,249eを介して処理室201内へ供給される。またこのとき、ガス供給管232g,232hからN
2ガスを流し、HFガスやCH
3OHをガス供給管232b,232e内でそれぞれ希釈するようにしてもよい。N
2ガスの供給流量を制御することで、処理室201内へ供給するHFガスやCH
3OHの濃度をそれぞれ制御することができる。また、ノズル249a内へのHFガス等の侵入を防止するため、バルブ243fを開き、ガス供給管232f内へN
2ガスを流す。N
2ガスは、ガス供給管232a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0090】
処理室201内へ供給されたHFガスは、処理室201内を通過して排気管231から排気される際に、処理室201内の部材の表面、例えば、反応管203の内壁、ノズル249a,249bの表面、ボート217の表面、カバー209aの外側および内側の表面、マニホールド209の内壁、シールキャップ219の上面等に接触する。このとき、熱化学反応により、処理室201内の部材に付着していたO含有膜を含む堆積物が除去されることとなる。すなわち、HFと堆積物とのエッチング反応により、堆積物が除去されることとなる。なお、エッチング反応が進行する際には、堆積物(SiO)に含まれるOと、HFに含まれるHと、が結合することで、処理室201内に水分(H
2O)が発生することとなる。また、堆積物に含まれるSiと、HFに含まれるFと、が結合することで、処理室201内にSiF
4等が発生することとなる。
【0091】
このように、O含有膜を含む堆積物が付着した処理室201内へHFガスを供給することで、ノンプラズマの雰囲気下において、上述の堆積物のエッチング反応を進行させることが可能となる。この際、処理室201内へHFガスと一緒にCH
3OHを供給することで、HFによる上述のエッチング反応を促進させることが可能となる。というのも、ガス供給管232i,232jから供給されたCH
3OHは、ガス供給管232b,232e内および処理室201内およびパージ空間201a内でHFと混合されて反応することとなる。そして、CH
3OHに含まれるヒドロキシ基(−OH)の作用により、HFのイオン化が促進される等し、例えばHF
2−等の活性なエッチング種が生成されることとなる。このエッチング種の作用により、処理室201内へHFガスを単体で供給する場合よりも、上述のエッチング反応を促進させ、堆積物のエッチングレートを増大させ、クリーニング作用を向上させることが可能となる。結果として、エッチング処理を進行させるための処理室201内の温度や圧力等の処理条件を比較的低温、低圧側の条件とした場合であっても、処理室201内へHFガスを単体で供給する場合よりも、高いエッチングレートを得ることが可能となる。
【0092】
エッチングステップでは、MFC241d,241eで制御するHFガスの供給流量を、それぞれ、例えば1000〜8000sccm、好ましくは2000〜8000sccmの範囲内の流量とする。MFC241i,241jで制御するCH
3OHの供給流量を、それぞれ、例えば0〜4000sccm、好ましくは1000〜4000sccmの範囲内の流量とする。すなわち、HFガスの流量に対するCH
3OHの流量の比率(CH
3OH流量/HF流量)を、例えば0〜50%の範囲内の比率とする。
【0093】
また、APCバルブ244を適正に調整し、処理室201内の圧力を、例えば133〜53329Pa(1〜400Torr)、好ましくは667〜39997Pa(5〜300Torr)の範囲内の圧力(エッチング圧力)とする。
【0094】
また、ヒータ207の温度は、処理室201内の温度が、例えば0〜100℃、好ましくは室温(25℃)〜50℃、より好ましくは30〜50℃の範囲内の温度(エッチング温度)となるような温度に設定する。
【0095】
処理室201内の温度を0℃未満とするには、処理室201内をこの温度に冷却するための大がかりな冷却機構を設ける必要が生じ、基板処理装置の製造コストの上昇や、温度制御の複雑化等を招いてしまう場合がある。処理室201内の温度を0℃以上とすることで、これを解決することが可能となる。処理室201内の温度を室温以上、好ましくは30℃以上とすることで、処理室201内を冷却するために例えば送風機等の簡素な冷却機構すら設ける必要がなくなり、基板処理装置の製造コストを低減させ、温度制御を簡素化させることが可能となる。
【0096】
処理室201内の温度が100℃を超えると、処理室201内の部材の表面にHFが吸着し難くなり、堆積物のエッチングをすることが困難となる場合がある。処理室201内の温度を100℃以下とすることで、これを解決することが可能となる。処理室201内の温度を50℃以下とすることで、HFによるエッチング反応を確実に進行させることが可能となる。
【0097】
このように、エッチングステップは、処理室201内で発生する水分(H
2O)が処理室201内に単独で存在した場合に、この水分が処理室201内に残留する程度の条件、例えば、この水分の沸点より低い温度、この水分が沸騰しない圧力下で行うこととする。
【0098】
クリーニングガスとしては、HFガスのようなHを含むフッ素系ガスを用いるのが好ましい。というのも、発明者等は、エッチングステップにおいて、処理室201内へHFガスの代わりにフッ素(F
2)ガスやフッ化塩素(ClF
3)ガスを供給した場合、これらのガスにアルコールを添加しても、上述したエッチングレートの向上効果が得られないことを確認している。これは、SiOを主成分とする堆積物、すなわち、O含有膜を含む堆積物をエッチングするには、クリーニングガスとして、HFガスのようなHを含むフッ素系ガスを用いることが必要であるのに対し、F
2ガスやClF
3ガスはHを含まないフッ素系ガスであることが要因であると考えられる。
【0099】
アルコールとしては、CH
3OHの他、エタノール(CH
3CH
2OH)、1−プロパノール(CH
3(CH
2)
2OH)、1−ブタノール(CH
3(CH
2)
3OH)等の第1級アルコールや、2−プロパノールすなわちイソプロピルアルコール((CH
3)
2CHOH)、2−ブタノール(CH
3CHOHCH
2CH
3)等の第2級アルコールや、t−ブタノール((CH
3)
3COH)等の第3級アルコールを好適に用いることができる。すなわち、R−OH(R:CH
3,C
2H
5,C
3H
7等)の化学式で表され、ヒドロキシ基を有する物質をHFに添加することで、堆積物のエッチング作用を増大させる上述の効果を得ることが可能となる。
【0100】
不活性ガスとしては、N
2ガスの他、例えば、上述の成膜処理で例示した各種希ガスを用いることができる。
【0101】
(アルコールパージステップ)
エッチングステップを行うと、上述したように、処理室201内において、水分やSiF
4等が発生する。処理室201内で発生した水分は、処理室201内に残留するHFガスと共存することで、処理室201内の金属部材を腐食させたり、これによりパーティクルを発生させたりする要因となる。そのため、本実施形態では、エッチングステップが完了した後、処理室201内へのHFガスの供給を停止した状態で、処理室201内へCH
3OH(CH
3OHガス)を供給するアルコールパージステップを行う。
【0102】
このステップでは、APCバルブ244を開いた状態としたまま、すなわち、処理室201内の排気を継続したまま、バルブ243d,243eを閉じ、処理室201内へのHFガスの供給を停止する。エッチングステップにおいて処理室201内へHFガスと一緒にCH
3OHを供給していた場合、HFガスの供給を停止する際に、処理室201内へのCH
3OHの供給を停止することなく継続する。すなわち、バルブ243d,243eを閉じる際に、バルブ243i,243jを開いたまま保持する。また、エッチングステップにおいて処理室201内へCH
3OHを供給していなかった場合、HFガスの供給を停止すると同時に、或いは、停止するよりも前に、処理室201内へのCH
3OHの供給を開始する。すなわち、バルブ243d,243eを閉じると同時に、或いは、閉じるよりも前に、バルブ243i,243jを開くようにする。
【0103】
エッチングステップを行った後、処理室201内を排気する際、処理室201内にHFと水分とが共存していると、各成分の蒸気圧が降下し、水分が蒸発しにくくなることがある。そのため、エッチングステップが完了したら、処理室201内へのHFガスの供給を直ちに停止するのが好ましい。処理室201内にHFが残留しておらず、水分のみが残留している状態を作り出すことで、処理室201内からの水分の除去を効率的に行うことが可能となる。
【0104】
但し、エッチングステップを行った後、処理室201内を排気する際、処理室201内へCH
3OHを供給しないと、処理室201内の温度を上述のエッチング温度(0〜100℃)に維持したままでは、処理室201内から水分を充分かつ効率的に除去することは困難である。というのも、上述のエッチング温度は、水の沸点(100℃)よりも低い温度であり、水分が処理室201内に単独で存在した場合に、この水分が処理室201内に液相の状態で残留しやすい温度、すなわち、この水分が処理室201内に残留する程度の温度であるからである。この温度下では、水分は単独では蒸発し難く、その一部が蒸発したとしても処理室201内に液体状態のまま残留しやすくなる。また水分は、低温部に残留しやすい性質がある。この状態で処理室201内を真空引きしても、N
2ガス等の不活性ガスでパージしても、これらを繰り返しても、水分を除去するのは難しい。これに対し、処理室201内を排気する際、処理室201内へCH
3OHを供給することで、処理室201内の温度を上述のエッチング温度に維持したとしても、処理室201内から水分を効率的に除去することが可能となる。すなわち、処理室201内を、上述のエッチング温度よりも高い温度、例えば、処理室201内で発生する水分が単独で存在した場合にこの水分が処理室201内に残留しない程度の温度(例えば、この水分の沸点を超える温度)とするように加熱することなく、処理室201内から水分を効率的に除去することが可能となる。
【0105】
処理室201内へCH
3OHを供給することで水分の除去効率を向上させることが可能となる要因として、CH
3OHに含まれるヒドロキシ基の作用により、処理室201内に残留している水分子(H
2O)の分子間結合(水素結合)の結合力が弱まることが挙げられる。というのも、処理室201内へCH
3OHを供給しない場合には、処理室201内に残留している水分子間で相互作用が起こることで、処理室201内の部材等に水分が吸着しやすくなる。これに対し、処理室201内へCH
3OHを供給する場合には、処理室201内に残留している水分子がCH
3OHによって囲まれることとなり、水分子間の相互作用が弱まることとなる。結果として、処理室201内に残留している水分子を、処理室201の外部へ速やかに排出することが可能となる。また、他の要因として、上述のヒドロキシ基の作用により、処理室201内に残留している水分子に含まれるO−H結合の結合力が弱まり、水分子が分解しやすくなることも挙げられる。また、他の要因として、処理室201内の部材の表面に物理吸着していた水分にCH
3OHが混ざることで、水分の沸点が下がり(水分の蒸気圧が上昇し)、この部材の表面から水分が蒸発しやすくなる(物理吸着していた水分子が脱離しやすくなる)ことも挙げられる。すなわち、処理室201内へCH
3OHを供給することで、処理室201内に残留していた水分を不安定な状態とすることができ、これにより、処理室201内からの水分の除去を促進することが可能となる。
【0106】
アルコールパージステップは、エッチングステップとの間に、間欠期間を設けることなく連続的に行うようにする。例えば、エッチングステップを行った後、処理室201内の不活性ガスによるパージおよび真空引きを行うことなく、また、外部から水分等を処理室201内へ供給することなく、アルコールパージステップを行うようにする。すなわち、アルコールパージステップを、エッチングステップの直後に、つまり、エッチングステップの終了とほぼ同時に開始するようにする。このようにすることで、処理室201内に残留しているガス状の水分子をCH
3OHによって速やかに囲うことができ、水分子間の相互作用を弱めることが可能となる。結果として、処理室201内からの水分除去の効率を高めることが可能となる。また、このとき、処理室201内を、処理室201内で発生する水分が単独で存在した場合にこの水分が処理室201内に残留しない程度の温度とするよう加熱することなく、アルコールパージステップを行うようにする。このようにすることで、クリーニング処理の手順を簡素化することができる。また、エッチングステップを行った後、処理室201内からの水分除去が完了するまでの時間を短縮することができる。結果として、クリーニング処理全体の所要時間を短縮することが容易となる。
【0107】
アルコールパージステップでは、APCバルブ244を適正に調整し、処理室201内の圧力を、例えば67〜53329Pa(0.5Torr〜400Torr)、好ましくは67〜26664Pa(0.5Torr〜200Torr)の範囲内の圧力とする。
【0108】
また、MFC241i,241jで制御するCH
3OHの供給流量は、それぞれ例えば500〜4000sccm、好ましくは1000〜4000sccmの範囲内の流量とする。
【0109】
その他の処理条件は、エッチングステップの処理条件と同様とする。
【0110】
このように、アルコールパージステップは、エッチングステップと同様に、処理室201内に水分が単独で存在した場合に、この水分が処理室201内に残留する程度の条件、例えば、この水分の沸点より低い温度下、この水分が沸騰しない圧力下で行うこととする。
【0111】
アルコールとしては、CH
3OHの他、エッチングステップで例示した各種アルコールを用いることが可能である。なお、発明者等は、アルコールパージステップにおいて、処理室201内へCH
3OHの代わりにイソプロピルアルコール((CH
3)
2CHOH)を供給した場合、上述の効果がさらに得やすくなることを確認している。すなわち、アルコールパージステップにおいて、処理室201内へ(CH
3)
2CHOHを供給する方が、処理室201内へCH
3OHを供給するよりも、処理室201内から水分をさらに効率的に除去できることを確認している。これは、(CH
3)
2CHOHと水分との共沸混合物の方が、CH
3OHと水分との共沸混合物よりも、より低温で蒸発することが要因であると考えられる。また、(CH
3)
2CHOHの分子間結合の結合力の方が、CH
3OHの分子間結合の結合力よりも低いことが要因であるとも考えられる。
【0112】
(パージおよび大気圧復帰)
処理室201内から水分等を除去したら、バルブ243i,243jを閉じ、処理室201内へのCH
3OHの供給を停止する。そして、バルブ243f〜243hを開き、ガス供給管232f〜232hのそれぞれから処理室201内へN
2ガスを流し、排気管231から排気する。N
2ガスはパージガスとして作用する。これにより、処理室201内がパージされる。このとき、バルブ243f〜243hの開閉動作を繰り返すことで、処理室201内のパージを間欠的に行うようにしてもよい(サイクルパージ)。その後、処理室201内の雰囲気がN
2ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0113】
(ボートアンロード)
ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、空のボート217が、マニホールド209の下端から反応管203の外部へ搬出される(ボートアンロード)。また、ノズル249a,249bの内壁等に付着している堆積物の量が多い場合は、必要に応じてノズル249a,249bを交換する。これら一連の工程が終了すると、上述の成膜処理が再開されることとなる。
【0114】
なお、本実施形態で述べたクリーニング処理、すなわち、エッチングステップとアルコールパージステップとを間欠期間を設けることなく連続的に行う処理については、
処理容器(処理室201)内へHFガスとCH
3OHとを供給するステップと、
処理室201内へのCH
3OHの供給を継続した状態で、処理室201内へのHFガスの供給を停止するステップと、
処理室201内へのHFガスの供給を停止した状態で処理室201内へのCH
3OHの供給を継続するステップと、
を間欠期間を設けることなく連続的に行う処理と表現することもできる。
【0115】
(4)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す一つ又は複数の効果が得られる。
【0116】
(a)ウエハ200上にSiO膜を形成する成膜処理を行った後、処理室201内へ少なくともHFガスを供給するエッチングステップを行うことで、処理室201内の部材の表面に付着した堆積物を除去することが可能となる。これにより、その後に行われる成膜処理の品質を向上させることが可能となる。
【0117】
(b)エッチングステップにおいて、HFガスと一緒にCH
3OHを供給することで、HFによるエッチング反応を促進させることが可能となる。これにより、堆積物のエッチングレートを増大させ、クリーニング作用を向上させることが可能となる。また、処理室201内の温度や圧力等の処理条件を、低温、低圧側の条件(例えば、常温下)とした場合でも、高いエッチングレートで堆積物を除去できるようになる。これらの結果から、エッチングステップ、すなわち、クリーニング処理全体の所要時間を短縮させ、基板処理装置のダウンタイムを短くすることが可能となる。
【0118】
(c)堆積物のエッチングを、ノンプラズマの環境下で行えることから、基板処理装置の構成を簡素化することができ、その製造コストやメンテナンスコストを低減させることが可能となる。また、処理室201内の部材に対するプラズマダメージを回避することも可能となる。
【0119】
(d)エッチングステップを行った後、アルコールパージステップを行うことで、処理室201内から水分を除去することが可能となる。これにより、残留水分による処理室201内の金属部材の腐食を抑制することができ、腐食によって処理室201内にパーティクルが発生することを回避できるようになる。
【0120】
(e)アルコールパージステップにおいて、処理室201内へCH
3OHを供給することで、処理室201内からの水分の除去効率を高めることが可能となる。これにより、アルコールパージステップ、すなわち、クリーニング処理全体の所要時間を短縮させることができ、基板処理装置のダウンタイムを短くすることが可能となる。
【0121】
(f)エッチングステップおよびアルコールパージステップにおいて、すなわち、処理室201内にHFガスや水分が残留している状態において、処理室201内の温度を上述の低温帯(0〜100℃)の範囲内に保持していることから、処理室201内の金属部材の腐食をより確実に抑制することが可能となる。これに対し、エッチングステップの実施中や実施後に、すなわち、処理室201内にHFガスや水分が残留している状態において、処理室201内が例えば800℃程度の温度となるように処理室201内を加熱した場合、処理室201内に残留しているHFガスと水分との反応が促進され、処理室201内の金属部材が腐食してしまう可能性がある。
【0122】
(g)エッチングステップとアルコールパージステップとを、これらの間に間欠期間を設けることなく連続的に行うことで、クリーニング処理の手順を簡素化することができる。また、エッチングステップを行った後、処理室201内からの水分除去が完了するまでの時間を短縮することができる。結果として、クリーニング処理全体の所要時間を短縮することが容易となる。
【0123】
(h)クリーニング処理を上述の温度帯で行うことで、クリーニング処理の後に行うノズル交換等の作業を、処理室201内の温度を変更(例えば降温)するステップを行うことなく迅速に開始することが可能となる。結果として、基板処理装置のダウンタイムを短くすることが可能となる。
【0124】
(i)上述の効果は、原料ガスとしてHCDSガス以外のガスを用いる場合や、O含有ガスとしてO
2ガス以外のガスを用いる場合や、H含有ガスとしてH
2ガス以外のガスを用いる場合においても、同様に得ることができる。また、上述の効果は、アルコールとしてCH
3OH以外のアルコールを用いる場合においても、同様に得ることができる。
【0125】
(5)クリーニング処理の変形例
本実施形態におけるクリーニング処理は、上述の態様に限定されず、以下に示す変形例のように変更することができる。
【0126】
(変形例1)
図6(a)に示すクリーニングシーケンスのように、エッチングステップでは、処理室201内へのHFガスの供給を間欠的に行うようにしてもよい。なお、本変形例においても、エッチングステップからアルコールパージステップにかけて、間欠期間を設けることなく連続的に処理室201内へCH
3OHを供給する。
【0127】
本変形例においても、
図5に示すクリーニングシーケンスと同様の効果が得られる。また、HFガスの供給を間欠的に行うことで、処理室201内における水分やSiF
4の量を適正に制御することができ、エッチング反応が進行しやすい環境を整えることが可能となる。また、HFガスの供給を間欠的に行うことで、処理室201内に圧力変動を生じさせ、堆積物に対して圧力の変動に伴う衝撃を与えることができる。これにより、堆積物にクラックや剥離等を生じさせ、堆積物のエッチングを効率的に進めることが可能となる。
【0128】
(変形例2)
図6(b)に示すクリーニングシーケンスのように、エッチングステップでは、処理室201内へのCH
3OHの供給を間欠的に行うようにしてもよい。本変形例においても、エッチングステップとアルコールパージステップとを、間欠期間を設けることなく連続的に行う。
【0129】
本変形例においても、
図5に示すクリーニングシーケンスと同様の効果が得られる。また、CH
3OHの供給を間欠的に行うことで、処理室201内における水分やSiF
4の量を適正に制御することができ、エッチング反応が進行しやすい環境を整えることが可能となる。また、CH
3OHの供給を間欠的に行うことで、処理室201内に圧力変動を生じさせ、堆積物に対して圧力の変動に伴う衝撃を与えることができる。これにより、堆積物にクラックや剥離等を生じさせ、堆積物のエッチングを効率的に進めることが可能となる。
【0130】
(変形例3)
図6(c)に示すクリーニングシーケンスのように、エッチングステップでは、処理室201内へのHFガスの供給とCH
3OHの供給とを、これらの間に処理室201内をパージするステップを挟むことなく交互に繰り返すようにしてもよい。本変形例においても、エッチングステップとアルコールパージステップとを、間欠期間を設けることなく連続的に行う。本変形例においても、
図5に示すクリーニングシーケンスと同様の効果が得られる。
【0131】
(変形例4)
図6(d)に示すクリーニングシーケンスのように、エッチングステップでは、HFガスを供給する期間の初期の所定期間に処理室201内へCH
3OHを供給するようにしてもよい。この場合、CH
3OHを供給する期間を、HFガスを供給する期間よりも短くする。本変形例においても、エッチングステップとアルコールパージステップとを、間欠期間を設けることなく連続的に行う。
【0132】
本変形例においても、
図5に示すクリーニングシーケンスと同様の効果が得られる。また、本変形例においては、エッチングステップの初期におけるCH
3OHの供給を、HFガスによるエッチング反応のトリガとすることができる。そして、このCH
3OHを供給するタイミングを調整することにより、エッチング反応の開始時期、すなわち、クリーニングの始点を制御することが可能となる。
【0133】
(変形例5)
図6(e)に示すクリーニングシーケンスのように、エッチングステップでは、処理室201内へのHFガスとCH
3OHとの同時供給を間欠的に繰り返すようにしてもよい。本変形例においても、エッチングステップとアルコールパージステップとを、間欠期間を設けることなく連続的に行う。
【0134】
本変形例においても、
図5に示すクリーニングシーケンスと同様の効果が得られる。また、HFガスとCH
3OHとの同時供給を間欠的に繰り返すことで、処理室201内における水分やSiF
4の量を適正に制御することができ、エッチング反応が進行しやすい環境を整えることが可能となる。また、HFガスとCH
3OHとの同時供給を間欠的に行うことで、処理室201内に圧力変動を生じさせ、堆積物に対して圧力の変動に伴う衝撃を与えることができる。これにより、堆積物にクラックや剥離等を生じさせ、堆積物のエッチングを効率的に進めることが可能となる。
【0135】
(変形例6)
図7(a)に示すクリーニングシーケンスのように、アルコールパージステップでは、CH
3OHの供給を間欠的に行うようにしてもよい。本変形例においても、エッチングステップとアルコールパージステップとを、間欠期間を設けることなく連続的に行う。本変形例においても、
図5に示すクリーニングシーケンスと同様の効果が得られる。また、CH
3OHの使用量を適正に抑制することができ、クリーニング処理のコストを低減することが可能となる。
【0136】
(変形例7)
図7(b)に示すクリーニングシーケンスのように、アルコールパージステップでは、CH
3OHの供給を間欠的に行うようにし、CH
3OHの供給を行う度に、その供給時間を徐々に短縮させるようにしてもよい。本変形例においても、エッチングステップとアルコールパージステップとを、間欠期間を設けることなく連続的に行う。本変形例においても、
図5に示すクリーニングシーケンスと同様の効果が得られる。また、CH
3OHの使用量を適正に抑制することができ、クリーニング処理のコストを低減することが可能となる。
【0137】
(変形例8)
図7(c)に示すクリーニングシーケンスのように、アルコールパージステップでは、CH
3OHの供給を間欠的に行うようにし、CH
3OHの供給を行う度に、その供給量を徐々に減少させるようにしてもよい。本変形例においても、エッチングステップとアルコールパージステップとを、間欠期間を設けることなく連続的に行う。本変形例においても、
図5に示すクリーニングシーケンスと同様の効果が得られる。また、CH
3OHの使用量を適正に抑制することができ、クリーニング処理のコストを低減することが可能となる。
【0138】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0139】
例えば、上述の実施形態では、エッチングステップにおいてHFガスと一緒にCH
3OH、すなわち、アルコールを流す例について説明したが、本発明はこのような態様に限定されない。すなわち、エッチングステップにおいて処理室201内へHFガスを流す際、アルコールを流さないようにし、堆積物のエッチングを、HFガス単体、或いは、N
2ガスで希釈したHFガスを用いて行うようにしてもよい。このようにした場合、エッチングステップにおける堆積物のエッチングレートを適正に抑制することが可能となる。
【0140】
また例えば、上述の実施形態では、エッチングステップとアルコールパージステップとを、同様な温度下(例えば室温下)で行う例について説明したが、本発明はこのような態様に限定されない。すなわち、エッチングステップとアルコールパージステップとを、それぞれ異なる温度下で行うようにしてもよい。
【0141】
例えば、エッチングステップを室温下で行い、アルコールパージステップを室温よりも高い温度(例えば30〜50℃)下で行うようにしてもよい。この場合、アルコールパージステップにおける処理室201内からの水分除去の効率を、さらに高めることが可能となる点で、好ましい。但し、エッチングステップとアルコールパージステップとを、同様な温度下(例えば室温下)で行う方が、これらのステップの間に、処理室201内の温度を変更(例えば昇温)するステップを行う必要がない点で、好ましい。すなわち、クリーニング処理の手順を簡素化することができ、その所要時間を短縮することが容易となる点で、好ましい。
【0142】
また、上述の実施形態では、HFガスを、HCDSガスを供給するノズル249aとは異なるノズル249bを用いて供給する例について説明したが、本発明はこのような態様に限定されない。HFガスの供給を、ノズル249aを用いて行う場合であっても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。但し、以下に述べる理由から、HFガスの供給は、ノズル249aとは異なるノズルを用いて行う方が好ましい。
【0143】
というのも、成膜処理を行うと、処理室201内の部材の表面にはSiOを主成分とする堆積物が付着するのに対し、ノズル249a内にはSiを主成分とする堆積物が付着することとなる。これは、ノズル249a内へはHCDSガス、H
2ガスが流れるものの、O
2ガスは流れないためである。Siを主成分とする堆積物は、SiOを主成分とする堆積物よりも、HFによって除去することが困難な特性がある。よって、エッチングステップにおいてノズル249aを用いてHFガスを流したとしても、ノズル249aの内壁に付着した堆積物を除去することは困難である。
【0144】
また、エッチングステップにおいてノズル249aを用いてHFガスを流すと、ノズル249aの内壁に付着した堆積物とノズル249aの内壁との間にHFが入り込むことがあり、堆積物と内壁との結合状態が不安定となる(脆くなる)ことがある。この状態で再び成膜処理を行うと、ノズル249a内へHCDSガス等を流した際に、ノズル249aの内壁に付着していた堆積物が部分的に剥がれることでパーティクルとなることがある。
【0145】
これらのことから、上述の実施形態では、HFガスの供給を、HCDSガスを供給するノズル249aとは異なるノズル249bを用いて行うようにしている。また、これらのことから、上述の実施形態では、エッチングステップにおいて、ノズル249a内へN
2ガスを供給することで、ノズル249a内へのHFガスの侵入を防止するようにしている。
【0146】
なお、ノズル249a内のクリーニング、すなわち、ノズル249aの内壁に付着したSiを主成分とする堆積物の除去は行う必要はない。堆積物の累積膜厚が、堆積物に剥離が生じてパーティクルが発生し始める前の所定の厚さ、例えば、4〜5μmの厚さに達した時点で、ノズル249aを交換すればよい。また、成膜処理においては、ノズル249b内へはO
2ガスが流れるだけなので、ノズル249bの内壁には堆積物が付着しないか、付着したとしてもノズル249b内へ僅かに侵入したHCDSガスによるものである。そのため、その付着量も僅かとなる。従って、ノズル249bについてはノズル交換の必要性も高くない。但し、ノズル249aを交換する際に、ノズル249bも併せて交換するようにしてもよい。
【0147】
上述の実施形態では、HCDSガス、O
2ガス、H
2ガスを用いて高温条件下でウエハ200上にSiO膜を形成する例について説明したが、本発明はこのような態様に限定されない。例えば、本発明は、3DMASガスやBTBASガス等のアミノシラン原料ガスを用いて中温条件下でウエハ200上にSiO膜を形成する場合や、ピリジン(C
5H
5N)等のアミン系触媒を用いて低温条件下でウエハ200上にSiO膜を形成する場合等においても、好適に適用可能である。また例えば、本発明は、BTBASガス等のアミノシラン原料ガスとプラズマ励起させたO
2ガスとを用いて低温条件下でウエハ200上にSiO膜を形成する場合等においても、好適に適用可能である。すなわち、本発明は、例えば以下に示す成膜シーケンスによりウエハ200上にSiO膜を形成する処理を行った処理容器内をクリーニングする場合においても、好適に適用可能である。
【0148】
(3DMAS→O
3)×n ⇒ SiO
【0149】
(HCDS+ピリジン→H
2O+ピリジン)×n ⇒ SiO
【0150】
(BTBAS→O
2 plasma)×n ⇒ SiO
【0151】
また例えば、本発明は、ウエハ200上にSiO膜を形成する場合に限らず、ウエハ200上に、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)、シリコン酸窒化膜(SiON膜)等のSi系酸化膜を形成する場合においても、好適に適用可能である。すなわち、本発明は、ウエハ200上にSiO膜以外のSi系酸化膜を形成する処理を行った処理容器内をクリーニングする場合においても、好適に適用可能である。
【0152】
また例えば、本発明は、ウエハ200上にSi系酸化膜を形成する場合に限らず、ウエハ200上に、例えば、金属元素を含む酸化膜を形成する場合においても、好適に適用可能である。すなわち、本発明は、ウエハ200上に金属系酸化膜を形成する処理を行った処理容器内をクリーニングする場合においても、好適に適用可能である。
【0153】
以上述べたように、本発明は、Si系酸化膜等の半導体系酸化膜や金属系酸化膜を含む堆積物を除去することで処理室内をクリーニングする場合にも、好適に適用可能である。これらの場合においても、クリーニング処理の処理手順、処理条件は、上述の実施形態と同様の処理手順、処理条件とすることができる。これらの場合においても、上述の実施形態や各変形例と同様の効果が得られる。
【0154】
成膜処理やクリーニング処理に用いられるレシピ(処理手順や処理条件等が記載されたプログラム)は、処理内容(形成、或いは、除去する薄膜の膜種、組成比、膜質、膜厚、処理手順、処理条件等)に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、各種処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて、適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の薄膜を汎用的に、かつ、再現性よく形成したり除去したりできるようになる。また、オペレータの負担(処理手順や処理条件等の入力負担等)を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各種処理を迅速に開始できるようになる。
【0155】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0156】
上述の実施形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本発明は上述の実施形態に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。また、上述の実施形態では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本発明は上述の実施形態に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。これらの場合においても、処理手順、処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理手順、処理条件とすることができる。
【0157】
例えば、
図10(a)に示す処理炉302を備えた基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、本発明は好適に適用できる。処理炉302は、処理室301を形成する処理容器303と、処理室301内へガスをシャワー状に供給するガス供給部としてのシャワーヘッド303sと、1枚または数枚のウエハ200を水平姿勢で支持する支持台317と、支持台317を下方から支持する回転軸355と、支持台317に設けられたヒータ307と、を備えている。シャワーヘッド303sのインレット(ガス導入口)には、ガス供給ポート332a,332bが接続されている。ガス供給ポート332aには、上述の実施形態の原料ガス供給系、H含有ガス供給系と同様のガス供給系が接続されている。ガス供給ポート332bには、上述の実施形態のO含有ガス供給系、HFガス供給系、アルコール供給系と同様のガス供給系が接続されている。シャワーヘッド303sのアウトレット(ガス排出口)には、処理室301内へガスをシャワー状に供給するガス分散板が設けられている。シャワーヘッド303sは、処理室301内に搬入されたウエハ200の表面と対向(対面)する位置に設けられている。処理容器303には、処理室301内を排気する排気ポート331が設けられている。排気ポート331には、上述の実施形態の排気系と同様の排気系が接続されている。
【0158】
また例えば、
図10(b)に示す処理炉402を備えた基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、本発明は好適に適用できる。処理炉402は、処理室401を形成する処理容器403と、1枚または数枚のウエハ200を水平姿勢で支持する支持台417と、支持台417を下方から支持する回転軸455と、処理容器403内のウエハ200に向けて光照射を行うランプヒータ407と、ランプヒータ407の光を透過させる石英窓403wと、を備えている。処理容器403には、ガス供給ポート432a,432bが接続されている。ガス供給ポート432aには、上述の実施形態の原料ガス供給系、H含有ガス供給系と同様のガス供給系が接続されている。ガス供給ポート432bには、上述の実施形態のO含有ガス供給系、HFガス供給系、アルコール供給系と同様のガス供給系が接続されている。ガス供給ポート432a,432bは、処理室401内に搬入されたウエハ200の端部の側方、すなわち、処理室401内に搬入されたウエハ200の表面と対向しない位置にそれぞれ設けられている。処理容器403には、処理室401内を排気する排気ポート431が設けられている。排気ポート431には、上述の実施形態の排気系と同様の排気系が接続されている。
【0159】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の実施形態や変形例と同様なシーケンス、処理条件にて成膜処理やクリーニング処理を行うことができ、上述の実施形態や変形例と同様の効果が得られる。
【0160】
また、上述の実施形態や変形例等は、適宜組み合わせて用いることができる。また、このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【実施例】
【0161】
以下、上述の実施形態や変形例で得られる効果を裏付ける実験結果について説明する。
【0162】
実施例として、上述の実施形態における基板処理装置を用い、
図4に示す成膜シーケンスにより、複数枚のウエハ上にSiO膜を形成する成膜処理を行った。原料ガスとしてはHCDSガスを、O含有ガスとしてはO
2ガスを、H含有ガスとしてはH
2ガスを用いた。成膜処理の処理条件は、上述の実施形態に記載の処理条件範囲内の条件とした。その後、
図5に示すクリーニングシーケンスにより、処理容器内の部材の表面に付着した堆積物を除去するエッチングステップ(HF+Alcohol Etching)とアルコールパージステップ(Alcohol PRG)とを行った。クリーニングガスとしてはHFガスを、アルコールとしてはCH
3OHを用いた。クリーニング温度は室温(R.T.)とした。その他の処理条件は、上述の実施形態に記載の処理条件範囲内の条件とした。その後、処理容器内をサイクルパージ(N
2PRG/VAC/N
2PRG/VAC)し、その後、処理容器内に設けられたノズルの交換作業(Nozzle change)を行った。
【0163】
比較例として、上述の実施形態における基板処理装置を用い、
図4に示す成膜シーケンスにより、複数枚のウエハ上にSiO膜を形成する成膜処理を行った。処理手順や処理条件は実施例の処理手順、処理条件と同様とした。その後、実施例と同様の処理手順、処理条件により、エッチングステップ(HF+Alcohol Etching)を行った。そして、アルコールパージステップを行わずに、処理容器内を排気しながら800℃まで昇温(Heating)させ、処理容器内をサイクルパージ(N
2PRG/VAC/N
2PRG/VAC)することで処理容器内から水分を除去した。そして、処理容器内を常温にまで降温(Cooling)させた後、処理容器内に設けられたノズルの交換作業(Nozzle change)を行った。
【0164】
図8(a)は、実施例において、処理容器内のクリーニングおよびサイクルパージが完了する迄の経過を示す図であり、
図8(b)は、比較例において、処理容器内のクリーニングおよびサイクルパージが完了する迄の経過を示す図である。また、
図9(a)は、実施例において、処理容器内に設けられたノズルの交換が完了する迄の経過を示す図であり、
図9(b)は、比較例において、処理容器内に設けられたノズルの交換が完了する迄の経過を示す図である。いずれの図も、横軸は経過時間を、縦軸は処理容器内の温度を示している。また、いずれの図も、成膜処理については図示を省略している。
【0165】
図8(a)、
図8(b)によれば、比較例よりも実施例の方が、処理容器内からの水分除去を迅速に完了させることができ、結果として、エッチングステップ開始からサイクルパージ完了までの所要時間を短縮できることが分かる。また、
図9(a)、
図9(b)によれば、比較例よりも実施例の方が、ノズル交換を迅速に開始することができ、結果として、エッチングステップ開始からノズル交換完了までの所要時間を短縮できることが分かる。すなわち、実施例の方が、比較例よりも、基板処理装置のダウンタイムを短くできることが分かる。
【0166】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0167】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
基板上に酸素含有膜を形成する処理を行った後の処理容器内をクリーニングする方法であって、
(a)前記処理容器内へ少なくともフッ化水素ガスを供給する工程と、
(b)前記処理容器内への前記フッ化水素ガスの供給を停止した状態で、前記処理容器内へアルコールを供給する工程と、
を間欠期間を設けることなく連続的に行うクリーニング方法が提供される。
【0168】
(付記2)
付記1に記載の方法であって、好ましくは、
前記(a)工程において前記処理容器内で発生する水分が単独で存在した場合に該水分が前記処理容器内に残留する温度(条件)下で、前記(a)工程と前記(b)工程とを行う。
【0169】
(付記3)
付記1または2に記載の方法であって、好ましくは、
前記(a)工程と前記(b)工程とを、同様な温度下で行う。
【0170】
(付記4)
付記1または2に記載の方法であって、好ましくは、
前記(a)工程と前記(b)工程とを、室温下で行う。
【0171】
(付記5)
付記1または2に記載の方法であって、好ましくは、
前記(a)工程と前記(b)工程とを、それぞれ異なる温度下で行う。
【0172】
(付記6)
付記1乃至5のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記(a)工程では、さらに前記処理容器内へ前記アルコールを供給する。
【0173】
(付記7)
付記6に記載の方法であって、好ましくは、
前記(a)工程から前記(b)工程にかけて、間欠期間を設けることなく連続的に前記処理容器内へ前記アルコールを供給する。すなわち、前記(a)工程から前記(b)工程にかけて、前記アルコールの供給を停止させることなく継続する。
【0174】
(付記8)
付記6に記載の方法であって、好ましくは、
前記(a)工程では、前記フッ化水素ガスを供給する期間の初期の所定期間に前記処理容器内へ前記アルコールを供給する。この場合、前記所定期間(前記アルコールを供給する期間)を、前記フッ化水素ガスを供給する期間よりも短くする。このアルコールの供給を前記フッ化水素ガスによるエッチング反応のトリガとすることができる。すなわち、このアルコールを供給するタイミングにより、クリーニングの始点を制御することができる。
【0175】
(付記9)
付記1乃至8のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記(a)工程直後に、前記(b)工程を行う。
【0176】
(付記10)
付記1乃至9のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記(a)工程後に、前記処理容器内へ外部から水分(H
2O)を供給することなく、前記(b)工程を行う。
【0177】
(付記11)
付記1乃至10のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記(a)工程後に、前記処理容器内の不活性ガスによるパージおよび真空引きを行うことなく、前記(b)工程を行う。
【0178】
(付記12)
付記1乃至11のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記(a)工程では、前記処理容器内に付着した前記酸素含有膜を含む堆積物を(エッチング反応により)除去する。
【0179】
(付記13)
付記1乃至12のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記(b)工程では、前記(a)工程において前記処理容器内で発生した水分を除去する。
【0180】
(付記14)
本発明の他の態様によれば、
基板上に酸素含有膜を形成する処理を行った後の処理容器内をクリーニングする方法であって、
(a)前記処理容器内へフッ化水素ガスとアルコールとを供給する工程と、
(b)前記処理容器内への前記フッ化水素ガスの供給を停止した状態で、前記処理容器内へ前記アルコールを供給する工程と、
を間欠期間を設けることなく連続的に行うクリーニング方法が提供される。
【0181】
(付記15)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板上に酸素含有膜を形成する処理を行った後の処理容器内をクリーニングする方法であって、
(a)前記処理容器内へフッ化水素ガスとアルコールとを供給する工程と、
(b)前記処理容器内への前記アルコールの供給を継続した状態で、前記処理容器内へのフッ化水素ガスの供給を停止する工程と、
(c)前記処理容器内へのフッ化水素ガスの供給を停止した状態で前記処理容器内への前記アルコールの供給を継続する工程と、
を間欠期間を設けることなく連続的に行うクリーニング方法が提供される。
【0182】
(付記16)
本発明のさらに他の態様によれば、
処理容器内で基板上に酸素含有膜を形成する処理を行う工程と、
前記酸素含有膜を形成する処理を行った後の前記処理容器内をクリーニングする工程と、
を有し、前記処理容器内をクリーニングする工程では、
(a)前記処理容器内へ少なくともフッ化水素ガスを供給する工程と、
(b)前記処理容器内への前記フッ化水素ガスの供給を停止した状態で、前記処理容器内へアルコールを供給する工程と、
を間欠期間を設けることなく連続的に行う半導体装置の製造方法が提供される。
【0183】
(付記17)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板上に酸素含有膜を形成する処理を行う処理容器と、
前記処理容器内へフッ化水素ガスを供給するフッ化水素ガス供給系と、
前記処理容器内へアルコールを供給するアルコール供給系と、
基板上に酸素含有膜を形成する処理を行った後の前記処理容器内をクリーニングする際に、(a)前記処理容器内へ少なくとも前記フッ化水素ガスを供給する処理と、(b)前記処理容器内への前記フッ化水素ガスの供給を停止した状態で、前記処理容器内へ前記アルコールを供給する処理と、を間欠期間を設けることなく連続的に行わせるように、前記フッ化水素ガス供給系および前記アルコール供給系を制御するよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0184】
(付記18)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板上に酸素含有膜を形成する処理を行った後の基板処理装置の処理容器内をクリーニングする手順であって、
(a)前記処理容器内へ少なくともフッ化水素ガスを供給する手順と、
(b)前記処理容器内への前記フッ化水素ガスの供給を停止した状態で、前記処理容器内へアルコールを供給する手順と、
を間欠期間を設けることなく連続的に行わせる手順をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム、または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。