(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インナ軸部材の外周面に本体ゴム弾性体が固着された防振装置本体を備えていると共に、該防振装置本体の外周面に筒状のアウタ筒部材が装着されている筒形防振装置において、
該インナ軸部材の軸方向中間部分には第一の軸直角方向の各一方側へ突出する一対のストッパ突部が設けられて、該一対のストッパ突部の表面には該本体ゴム弾性体と一体形成された緩衝ゴム層が固着されていると共に、
前記アウタ筒部材の内周面には該一対のストッパ突部が差し入れられるストッパ凹部が設けられて、該ストッパ凹部の壁部が該ストッパ突部に対して軸方向と該第一の軸直角方向と該第一の軸直角方向と直交する第二の軸直角方向の各方向で対向配置されており、
該ストッパ凹部の壁部と該ストッパ突部の当接によって該インナ軸部材と該アウタ筒部材の相対変位量を制限する軸方向ストッパと第一の軸直角方向ストッパと第二の軸直角方向ストッパとが構成されることを特徴とする筒形防振装置。
前記インナ軸部材の軸方向中間部分には前記第二の軸直角方向の各一方側へ突出する一対の固着突部が設けられて、前記本体ゴム弾性体が該一対の固着突部に固着されている請求項1に記載の筒形防振装置。
前記固着突部と前記ストッパ突部が前記インナ軸部材とは別部材として一体形成されており、それら固着突部とストッパ突部が該インナ軸部材に固設されている請求項2に記載の筒形防振装置。
前記インナ軸部材の外周側に離れて中間部材が配設されており、該インナ軸部材と該中間部材が前記本体ゴム弾性体によって相互に弾性連結されて前記防振装置本体が構成されていると共に、該中間部材が前記アウタ筒部材の内周面に嵌着されて該防振装置本体の外周面に該アウタ筒部材が装着されている請求項1〜3の何れか一項に記載の筒形防振装置。
前記中間部材の一対が前記インナ軸部材に対する前記第二の軸直角方向の両側に離隔配置されており、該インナ軸部材と該一対の中間部材が前記本体ゴム弾性体によって相互に弾性連結されていると共に、該一対の中間部材が前記アウタ筒部材の内周面に嵌着されている請求項4に記載の筒形防振装置。
前記本体ゴム弾性体が前記第二の軸直角方向の両側において外周へ向けて開口する凹所を備えており、該凹所において該本体ゴム弾性体で構成された内面が自由表面とされている請求項1〜5の何れか一項に記載の筒形防振装置。
前記アウタ筒部材が前記防振装置本体に対して前記第一の軸直角方向の両側から装着される一対の分割体を含んで構成されている請求項1〜7の何れか一項に記載の筒形防振装置。
相互に突き合わされる前記一対の分割体の突合せ端部には該一対の分割体の接近によって相互に係止される第一の係止部と第二の係止部が設けられており、該一対の分割体が該第一の係止部と該第二の係止部の係止によってそれら第一の係止部と第二の係止部の係止方向で相互に位置決めされていると共に、該一対の分割体が該第一の係止部と該第二の係止部の係止方向と直交する方向で相対変位を許容されている請求項8に記載の筒形防振装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、本体ゴム弾性体と一体形成された緩衝ゴム層にストッパ荷重が作用して亀裂が生じたとしても、本体ゴム弾性体の耐久性に対する影響が回避されて優れた耐久性が確保される、新規な構造の筒形防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0009】
すなわち、本発明の第一の態様は、インナ軸部材の外周面に本体ゴム弾性体が固着された防振装置本体を備えていると共に、該防振装置本体の外周面に筒状のアウタ筒部材が装着されている筒形防振装置において、該インナ軸部材の軸方向中間部分には第一の軸直角方向の各一方側へ突出する一対のストッパ突部が設けられて、該一対のストッパ突部の表面には該本体ゴム弾性体と一体形成された緩衝ゴム層が固着されていると共に、前記アウタ筒部材の内周面には該一対のストッパ突部が差し入れられるストッパ凹部が設けられて、該ストッパ凹部の壁部が該ストッパ突部に対して軸方向と該第一の軸直角方向と該第一の軸直角方向と直交する第二の軸直角方向の各方向で対向配置されており、該ストッパ凹部の壁部と該ストッパ突部の当接によって該インナ軸部材と該アウタ筒部材の相対変位量を制限する軸方向ストッパと第一の軸直角方向ストッパと第二の軸直角方向ストッパとが構成されることを、特徴とする。
【0010】
このような第一の態様に従う構造とされた筒形防振装置では、インナ軸部材に設けられた一対のストッパ突部と、アウタ筒部材に設けられたストッパ凹部の壁部との当接によって、インナ軸部材とアウタ筒部材の相対変位量が軸方向と第一の軸直角方向と第二の軸直角方向の各方向において制限されることから、本体ゴム弾性体の耐久性の向上が図られる。
【0011】
また、一対のストッパ突部によってストッパが構成されることから、一対のストッパ突部の表面を覆う緩衝ゴム層に仮に亀裂が生じたとしても、亀裂が本体ゴム弾性体まで進展し難く、本体ゴム弾性体の耐久性の低下が回避される。
【0012】
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載された筒形防振装置において、前記インナ軸部材の軸方向中間部分には前記第二の軸直角方向の各一方側へ突出する一対の固着突部が設けられて、前記本体ゴム弾性体が該一対の固着突部に固着されているものである。
【0013】
第二の態様によれば、一対のストッパ突部と略直交する方向へ突出する一対の固着突部に対して本体ゴム弾性体が固着されることにより、一対のストッパ突部を覆う緩衝ゴム層の損傷が、緩衝ゴム層と一体形成された本体ゴム弾性体に対してより影響し難くなって、本体ゴム弾性体の耐久性の向上が図られる。また、本体ゴム弾性体のインナ軸部材側への固着面積が一対の固着突部によって大きく確保されることから、本体ゴム弾性体のインナ軸部材側へより強固に固着されて、インナ軸部材に対する剥がれなどが問題になり難い。
【0014】
本発明の第三の態様は、第二の態様に記載された筒形防振装置において、前記固着突部と前記ストッパ突部が前記インナ軸部材とは別部材として一体形成されており、それら固着突部とストッパ突部が該インナ軸部材に固設されているものである。
【0015】
第三の態様によれば、インナ軸部材に対する要求性能と、固着突部およびストッパ突部に対する要求性能とを、より高度に両立して実現することができる。具体的には、例えば、インナ軸部材を金属で形成して優れた変形剛性を実現しつつ、固着突部およびストッパ突部を合成樹脂で形成して軽量化を図ることなどが可能となる。
【0016】
本発明の第四の態様は、第一〜第三の何れか1つの態様に記載された筒形防振装置において、前記インナ軸部材の外周側に離れて中間部材が配設されており、該インナ軸部材と該中間部材が前記本体ゴム弾性体によって相互に弾性連結されて前記防振装置本体が構成されていると共に、該中間部材が前記アウタ筒部材の内周面に嵌着されて該防振装置本体の外周面に該アウタ筒部材が装着されているものである。
【0017】
第四の態様によれば、本体ゴム弾性体の外周形状が中間部材によって安定することから、防振装置本体の外周面に対するアウタ筒部材の装着がより容易になる。
【0018】
本発明の第五の態様は、第四の態様に記載された筒形防振装置において、前記中間部材の一対が前記インナ軸部材に対する前記第二の軸直角方向の両側に離隔配置されており、該インナ軸部材と該一対の中間部材が前記本体ゴム弾性体によって相互に弾性連結されていると共に、該一対の中間部材が前記アウタ筒部材の内周面に嵌着されているものである。
【0019】
第五の態様によれば、中間部材がインナ軸部材に対して第二の軸直角方向の両側に配される一対とされていることにより、防振装置本体の外周面にアウタ筒部材を装着する際に、一対の中間部材を相互に接近する方向へ押圧すれば、インナ軸部材と中間部材の間に配された本体ゴム弾性体に対して、第二の軸直角方向で予圧縮を施すことができる。これにより、例えば第二の軸直角方向の振動入力時に本体ゴム弾性体に作用する引張応力が低減されて、本体ゴム弾性体の耐久性を向上させることができる。
【0020】
本発明の第六の態様は、第一〜第五の何れか1つの態様に記載された筒形防振装置において、前記本体ゴム弾性体が前記第二の軸直角方向の両側において外周へ向けて開口する凹所を備えており、該凹所において該本体ゴム弾性体で構成された内面が自由表面とされているものである。
【0021】
第六の態様によれば、本体ゴム弾性体の自由表面が大きく確保されて、本体ゴム弾性体の弾性変形時に応力集中による本体ゴム弾性体の損傷が回避されることから、本体ゴム弾性体の耐久性の向上が図られる。特に、他部材への固着によって拘束される本体ゴム弾性体の外周表面の中間部分に凹所を設けることにより、本体ゴム弾性体において弾性変形を拘束される領域が効率的に減少せしめられて、振動入力時に本体ゴム弾性体における応力の集中が有効に緩和される。
【0022】
本発明の第七の態様は、第六の態様に記載された筒形防振装置において、前記本体ゴム弾性体には前記凹所を大気開放する連通路が形成されているものである。
【0023】
第七の態様によれば、凹所における空気ばねの作用が回避されて、空気ばねが筒形防振装置のばね特性に影響するのを防ぐことができる。しかも、凹所に水などが侵入した場合には、連通路を通じて排出することもできる。
【0024】
本発明の第八の態様は、第一〜第七の何れか1つの態様に記載された筒形防振装置において、前記アウタ筒部材が前記防振装置本体に対して前記第一の軸直角方向の両側から装着される一対の分割体を含んで構成されているものである。
【0025】
第八の態様によれば、アウタ筒部材を防振装置本体の外周面に対して容易に装着することができる。しかも、アウタ筒部材の分割方向が第一の軸直角方向とされていることにより、アウタ筒部材の分割部分が第二の軸直角方向の両側に位置せしめられて、第一の軸直角方向に突出するストッパ突部はアウタ筒部材の分割部分に当接しない。これにより、アウタ筒部材の分割部分にストッパ荷重が作用するのを防ぐことができて、分割構造とされたアウタ筒部材の損傷が防止される。
【0026】
本発明の第九の態様は、第八の態様に記載された筒形防振装置において、相互に突き合わされる前記一対の分割体の突合せ端部には該一対の分割体の接近によって相互に係止される第一の係止部と第二の係止部が設けられており、該一対の分割体が該第一の係止部と該第二の係止部の係止によってそれら第一の係止部と第二の係止部の係止方向で相互に位置決めされていると共に、該一対の分割体が該第一の係止部と該第二の係止部の係止方向と直交する方向で相対変位を許容されているものである。
【0027】
第九の態様によれば、一対の分割体を相互に接近させることにより、それら一対の分割体の端部に形成された第一の係止部と第二の係止部を係止させて、防振装置本体の外周面に装着された筒状のアウタ筒部材を容易に設けることができる。しかも、一対の分割体を第一の係止部と第二の係止部の係止によって連結する構造とすることで、一対の分割体の端部の突合せ方向である第一の係止部と第二の係止部の係止方向において、一対の分割体の連結強度を必要に応じて設定し易くなって、十分な強度で一対の分割体を連結することができる。
【0028】
さらに、第一の係止部と第二の係止部の係止方向と直交する方向では、一対の分割体が相対変位を許容されていることから、一対の分割体が軸方向や軸直角方向で相互にずれた状態で固定されるのを防ぐことができる。それ故、例えば、アウタ筒部材を車両ボデーなどの取付対象部材に挿入乃至は圧入して取り付ける際に、一対の分割体を第一の係止部と第二の係止部の係止方向と直交する方向で適切な相対位置に移動させることなども可能であり、一対の分割体の組付け誤差などに影響されることなくアウタ筒部材を取付対象部材に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、インナ軸部材に設けられた一対のストッパ突部と、アウタ筒部材に設けられたストッパ凹部の壁部との当接によって、インナ軸部材とアウタ筒部材の相対変位量が軸方向と第一の軸直角方向と第二の軸直角方向の各方向において制限されることから、本体ゴム弾性体の耐久性の向上が図られる。また、一対のストッパ突部によってストッパが構成されることから、一対のストッパ突部の表面を覆う緩衝ゴム層に仮に亀裂が生じたとしても、亀裂が本体ゴム弾性体まで進展し難く、本体ゴム弾性体の耐久性への影響が防止される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
図1〜8には、本発明に従う構造とされた筒形防振装置の一実施形態として、自動車用のデフマウント10が示されている。デフマウント10は、
図9〜13に示すように、インナ軸部材12と中間部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結された防振装置本体としてのマウント本体17を備えていると共に、
図3〜8に示すように、マウント本体17の中間部材14にアウタ筒部材18が外嵌されることにより、インナ軸部材12とアウタ筒部材18が本体ゴム弾性体16で相互に弾性連結された構造を有している。以下の説明では、原則として、前後方向とは軸方向19となる
図6中の左右方向を、左右方向とは後述する第一の軸直角方向26となる
図8中の左右方向を、上下方向とは後述する第二の軸直角方向30となる
図8中の上下方向を、それぞれ言う。なお、軸方向19と第一の軸直角方向26と第二の軸直角方向30は、
図1および
図6〜8中に矢印で示す方向であり、
図1(
図6〜8)中で方向を示す矢印の図形は、その中心を本体ゴム弾性体16の弾性中心として表した説明図である。また、以下の説明において、各方向の符号は適宜に省略する場合がある。
【0033】
より詳細には、インナ軸部材12は、金属や合成樹脂等で形成された高剛性の部材であって、本実施形態では、
図12〜17に示すように、取付軸部材20の軸方向中間部分にストッパ部材22が取り付けられた構造を有している。
【0034】
取付軸部材20は、直線的に延びる小径の略円筒形状を有している。なお、本実施形態では、取付軸部材20の内孔が周方向で部分的に拡径されているが、取付軸部材20の内孔の具体的な形状は、特に限定されるものではなく、例えば円形断面や楕円形断面なども採用され得る。
【0035】
ストッパ部材22は、金属や合成樹脂等によって取付軸部材20とは別部材として形成されており、筒状の固定筒部24に対して、第一の軸直角方向26である左右方向に突出する一対のストッパ突部28,28と、第二の軸直角方向30である上下方向に突出する一対の固着突部32,32とが、一体形成された構造を有している。
【0036】
より具体的には、ストッパ部材22のストッパ突部28は、略一定の長方形断面で突出しており、突出先端面が固定筒部24の周方向に湾曲している。一方、ストッパ部材22の固着突部32は、突出先端に向けて先細となる略四角錐台形状を有しており、側面が突出先端に向けて前後方向又は左右方向で内側に傾斜する傾斜側面34とされている。また、本実施形態において、ストッパ突部28は、固着突部32よりも周方向の幅が小さくされていると共に、固着突部32よりも前後方向の長さが大きくされている。なお、固着突部32は必須ではなく、ストッパ部材22が固定筒部24に一対のストッパ突部28,28だけを設けた構造とされていても良い。
【0037】
そして、固定筒部24の内孔に取付軸部材20が挿通された状態で、固定筒部24の内周面と取付軸部材20の外周面が固着されていることにより、ストッパ部材22が取付軸部材20の軸方向中間部分に固定されている。これにより、一対のストッパ突部28,28と一対の固着突部32,32は、取付軸部材20から外周へ向けて互いに略直交する軸直角方向で突出するように固設されている。
【0038】
なお、ストッパ部材22は、取付軸部材20が固定筒部24に挿通されて、それら取付軸部材20と固定筒部24の重ね合わせ面が溶着や接着などの手段で固着されることで、取付軸部材20に後固定される他、取付軸部材20の外周面上に成形されることで、成形と同時に取付軸部材20に固定されるようにもできる。また、本実施形態では、一対のストッパ突部28,28と一対の固着突部32,32が、取付軸部材20とは別体のストッパ部材22に設けられて取付軸部材20に固定された構造とされているが、一対のストッパ突部28,28や一対の固着突部32,32を取付軸部材20と一体形成して、インナ軸部材12を一つの部材で構成することもできる。
【0039】
一方、中間部材14は、金属や合成樹脂等で形成された硬質の部材であって、
図18〜20に示すように、全体として略円弧状に湾曲する湾曲板状とされていると共に、周方向および軸方向の中間部分には厚さ方向に貫通する略四角孔形状の窓部36が形成されている。
【0040】
さらに、中間部材14の軸方向両端部には、内周側へ突出するゴム支持部38が一体形成されて、周方向に延びている。本実施形態のゴム支持部38は、窓部36の上下両外側に設けられており、周方向で窓部36よりも外側まで延びていると共に、窓部36側(上下内側)の面が内周へ行くに従って軸方向外側へ傾斜する内側傾斜面40とされている。
【0041】
そして、一対の中間部材14,14がインナ軸部材12に対して第二の軸直角方向30の各一方側に離れて配置されており、インナ軸部材12と一対の中間部材14,14が、本体ゴム弾性体16によって相互に弾性連結されることによって、マウント本体17が構成されている。本体ゴム弾性体16は、
図10,12,13などに示すように、第二の軸直角方向30(上下方向)でインナ軸部材12と一対の中間部材14,14の間に配設されている。
【0042】
さらに、本体ゴム弾性体16には、中間部材14の窓部36を通じて外周側に開口する凹所42が形成されている。この凹所42は、第二の軸直角方向30の両側において本体ゴム弾性体16の外周面に開口するように設けられており、前後方向寸法と左右方向寸法が、内周側に向けてそれぞれ小さくなるテーパ形状の壁内面を有している。更にまた、本体ゴム弾性体16に凹所42が形成されていることにより、本体ゴム弾性体16は、径方向の外側(外周側)へ行くに従って軸方向と周方向の少なくとも一方の外側へ傾斜する断面形状を有している。
【0043】
このような傾斜断面形状を有する本体ゴム弾性体16は、内周側の端部がストッパ部材22に設けられた固着突部32の傾斜側面34に固着されていると共に、外周側の端部が中間部材14のゴム支持部38の内側傾斜面40に固着されている。また、本体ゴム弾性体16は、インナ軸部材12と、中間部材14におけるゴム支持部38の内側傾斜面40との上下方向間において、上下に連続して設けられている。なお、本実施形態の本体ゴム弾性体16は、軸方向に貫通して凹所42の壁面に開口する連通路46を備えており、凹所42が連通路46を通じて軸方向外側に開放されている。
【0044】
また、ストッパ部材22に設けられたストッパ突部28は、表面の全体が本体ゴム弾性体16と一体形成された緩衝ゴム層48によって覆われている。更に、ストッパ部材22の固着突部32の突出先端面は、本体ゴム弾性体16と一体形成された被覆ゴム層50で覆われている。また、中間部材14は、表面の全体が、本体ゴム弾性体16および本体ゴム弾性体16と一体形成された嵌着ゴム層52によって覆われている。
【0045】
なお、インナ軸部材12と一対の中間部材14,14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結された状態において、一対の中間部材14,14は、インナ軸部材12のストッパ部材22に対して外周側に離れて配置されていると共に、ストッパ部材22の固着突部32が中間部材14の窓部36に対して位置決めされている。また、本体ゴム弾性体16に形成された凹所42の開口が、中間部材14の窓部36と位置決めされていることにより、本体ゴム弾性体16における凹所42の壁内面を構成する部分が、中間部材14で拘束されることなく自由表面とされている。
【0046】
かくの如き構造とされたマウント本体17の外周面には、アウタ筒部材18が取り付けられている。アウタ筒部材18は、金属や合成樹脂材料などで形成されており、
図1〜8に示すように、全体として略円筒形状を有している。また、アウタ筒部材18は、
図1〜8や
図21に示すように、それぞれ略半円筒形状とされた一対の分割体54a,54bを組み合わせて構成された2分割構造を有している。
【0047】
本実施形態では、一対の分割体54a,54bが互いに略同一形状とされている一方、一方の分割体54aに後述する第一の係止部70が設けられていると共に、他方の分割体54bに後述する第二の係止部80が設けられており、それら分割体54a,54bを向い合わせに組み合わせることでアウタ筒部材18が構成されている。以下では、一対の分割体54a,54bの共通の構造について説明した後、第一の係止部70と第二の係止部80の構造についてそれぞれ説明する。
【0048】
より詳細には、分割体54は、
図21〜24に示すように、外周面が略一定の曲率半径を有する円弧状の湾曲面とされており、軸方向の両側にはそれぞれ周方向の全長に亘って延びる内フランジ部56,56が設けられている。また、分割体54の軸方向一方の端部には、径方向外方へ突出する外フランジ部57が一体形成されている。本実施形態の外フランジ部57は複数が周方向で断続的に設けられているが、外フランジ部57は、例えば全周に亘って連続して設けられていても良いし、設けられていなくても良い。
【0049】
さらに、分割体54の周方向の中間部分には、第一の軸直角方向26で内周側へ向けて突出する上下ストッパ受部58,58が、軸方向で直線的に延びて形成されており、上下ストッパ受部58,58の軸方向端部が内フランジ部56,56に一体的につながっている。なお、上下ストッパ受部58,58は、第二の軸直角方向30で相互に所定の距離を隔てて配されている。
【0050】
これにより、分割体54の周方向の中央部分には、第一の軸直角方向26で内周側へ向けて開口するストッパ凹部60が形成されている。このストッパ凹部60は、第一の軸直角方向26に延びる略四角筒状の周壁部を有しており、内フランジ部56,56におけるストッパ凹部60の周壁部を構成する部分が前後ストッパ受部62,62とされていると共に、ストッパ凹部60の底壁部が左右ストッパ受部64とされている。なお、ストッパ凹部60の周壁部における上下両側部分は、上下ストッパ受部58,58で構成されており、ストッパ凹部60の壁部が、上下ストッパ受部58,58と前後ストッパ受部62,62と左右ストッパ受部64とによって構成されている。また、内フランジ部56における前後ストッパ受部62の構成部分は、他の部分に比して内周側への突出寸法が大きくされている。
【0051】
また、
図21〜24に示すように、一方の分割体54aの内フランジ部56は、突合せ端部である周方向端部68に第一の係止部70をそれぞれ備えている。なお、本実施形態において、分割体54aの周方向一方の端部68に設けられる第一の係止部70と、分割体54aの周方向他方の端部68に設けられる第一の係止部70は、相互に略同じ構造とされているが、相互に異なる構造とされていても良い。同様に、軸方向一方の端部に設けられる第一の係止部70と、軸方向他方の端部に設けられる第一の係止部70は、本実施形態において略同じ構造とされているが、相互に異なる構造とされていても良い。
【0052】
第一の係止部70は、分割体54aにおける内フランジ部56の周方向端部68から第一の軸直角方向26の外側へ突出する長手板状の弾性支持部72を備えており、弾性支持部72の先端部分には、弾性支持部72の厚さ方向(分割体54aの軸方向)外側へ突出する係止突部74が形成されている。
【0053】
係止突部74は、弾性支持部72の先端側へ行くに従って突出高さが小さくなっており、先端側に位置する係止突部74の端面がガイド面76とされていると共に、基端側に位置する係止突部74の端面が係止面78とされている。そして、ガイド面76が弾性支持部72の突出方向に対して傾斜して広がっていると共に、係止面78が後述する第二の係止部80との係止方向となる弾性支持部72の突出方向に対して略直交して広がっている。
【0054】
一方、他方の分割体54bの内フランジ部56は、
図1〜5や
図21などに示すように、突合せ端部である周方向端部68に第二の係止部80をそれぞれ備えている。なお、本実施形態において、分割体54bの周方向一方の端部68に設けられる第二の係止部80と、分割体54bの周方向他方の端部68に設けられる第二の係止部80は、相互に略同じ構造とされているが、相互に異なる構造とされていても良い。同様に、軸方向一方の端部に設けられる第二の係止部80と、軸方向他方の端部に設けられる第二の係止部80は、本実施形態において略同一とされているが、相互に異なる構造とされていても良い。
【0055】
第二の係止部80は、内フランジ部56の周方向外端面および軸方向外端面に開口して分割体54bの周方向端面と略直交する第一の軸直角方向26に延びる挿入溝部82が形成されていると共に、分割体54bの挿入溝部82の軸方向開口を跨ぐように延びる係止受部84が設けられた構造を有している。
【0056】
このような第一の係止部70を備えた分割体54aと第二の係止部80を備えた分割体54bは、
図25にも示すように、マウント本体17に対して第一の軸直角方向26の両側から接近せしめられることにより、周方向端部68,68が相互に突き合わされた状態で、複数組の第一の係止部70と第二の係止部80によって相互に連結されている。
【0057】
すなわち、分割体54aと分割体54bが軸直角方向で相互に接近せしめられると、第二の係止部80の各係止受部84が第一の係止部70の各係止突部74のガイド面76に当接する。更に、係止受部84を係止突部74のガイド面76に摺接させながら、分割体54aと分割体54bを相互に接近させることにより、第一の係止部70が第二の係止部80の挿入溝部82内へ案内される。
【0058】
そして、係止突部74が係止受部84よりも分割体54bの周方向内側まで差し入れられると、係止突部74のガイド面76と係止受部84との当接が解除されて、第一の係止部70の係止突部74が弾性支持部72の弾性的な復元力によって外周側へ変位せしめられる。
【0059】
これにより、係止突部74の係止面78が係止受部84と重ね合わされて、それら係止突部74と係止受部84の重ね合わせ方向において第一の係止部70と第二の係止部80が相互に係止される。その結果、分割体54aと分割体54bが、第一の係止部70と第二の係止部80の係止によって相互に連結されて位置決めされており、連結された分割体54a,54bによって筒状のアウタ筒部材18が構成されている。
【0060】
また、
図26に示すように、第二の係止部80の挿入溝部82の溝幅寸法が、第一の係止部70の弾性支持部72および係止突部74の幅寸法よりも大きくされていると共に、第二の係止部80の挿入溝部82の底壁面と係止受部84の対向面間距離が、第一の係止部70の弾性支持部72の厚さよりも大きくされている。
【0061】
これにより、弾性支持部72と係止突部74が挿入溝部82へ差し入れられた状態において、第一の係止部70を構成する弾性支持部72と第二の係止部80を構成する挿入溝部82の溝側内面との間に隙間が形成されていると共に、第一の係止部70を構成する弾性支持部72と第二の係止部80の係止受部84の内周面との間にも隙間が形成されている。
【0062】
これらの隙間によって、第一の係止部70と第二の係止部80で連結された分割体54a,54bが、第一の係止部70と第二の係止部80の係止方向である相互の突合せ方向(第一の軸直角方向26)と直交する分割体54a,54bの軸方向19および径方向(第二の軸直角方向30)で相対的な変位を許容されている。
【0063】
さらに、
図26に示されているように、挿入溝部82における係止受部84より奥方の深さ寸法(第一の軸直角方向26の寸法)が、第一の係止部70の係止突部74の同方向の長さよりも大きくされている。これにより、係止突部74の係止受部84への係止操作が容易とされている。
【0064】
なお、第一の係止部70と第二の係止部80が係止されると、分割体54a,54bの間で圧縮される本体ゴム弾性体16の弾性に基づいて、係止突部74の係止面78が係止受部84への当接係止状態に保たれる。また、かかる当接係止状態下では、分割体54aと分割体54bとにおいて重ね合わされた周方向の両端面間に隙間があっても良い。
【0065】
また、分割体54aと分割体54bは、
図25にも示すように、マウント本体17の外周面に対して、第二の軸直角方向30の両側から嵌め付けられている。そして、分割体54a,54bが連結されてアウタ筒部材18が構成されることで、マウント本体17の中間部材14,14がアウタ筒部材18の内周面に嵌着されて、アウタ筒部材18がマウント本体17の外周面を覆うように装着されている。
【0066】
さらに、分割体54a,54bの間に配されたマウント本体17の本体ゴム弾性体16は、分割体54a,54bが第一の係止部70と第二の係止部80で連結されることにより、分割体54a,54bの突合せ方向と直交する第二の軸直角方向30で圧縮されている。
【0067】
すなわち、分割体54a,54bの内周面が、それぞれ被覆ゴム層50で覆われた中間部材14,14の外周面に押し当てられることにより、中間部材14,14が第二の軸直角方向30で内側へ押し込まれて、本体ゴム弾性体16がインナ軸部材12と中間部材14の間で圧縮される。これにより、本体ゴム弾性体16の引張応力が低減されて、耐久性の向上が図られている。本実施形態では、分割体54a,54bの内周面に重ね合わされる中間部材14,14の外周面が、第一の軸直角方向26で中央側へ行くに従って第二の軸直角方向30の外側へ傾斜する傾斜面とされていることから、分割体54a,54bを中間部材14,14に摺接させつつ相互に接近させて連結することによって、中間部材14,14が第二の軸直角方向30で相互に接近する内側へ押し込まれるようになっている。
【0068】
また、本体ゴム弾性体16に形成された凹所42の開口部がアウタ筒部材18によって閉塞されていると共に、連通路46がアウタ筒部材18よりも内周側で軸方向外側へ開口しており、凹所42が連通路46を通じて大気に開放されている。これにより、凹所42の密閉が防止されて、空気ばねの影響が低減乃至は回避されていると共に、凹所42内に入り込んだ水などを連通路46を通じて排出することも可能とされている。
【0069】
また、マウント本体17に設けられた一対のストッパ突部28,28の先端部分は、アウタ筒部材18の各分割体54a,54bに設けられたストッパ凹部60,60に対して差し入れられている。ストッパ凹部60に差し入れられたストッパ突部28の先端部分は、ストッパ凹部60の壁部を構成する前後ストッパ受部62,62と左右ストッパ受部64と上下ストッパ受部58,58とに対して、何れも所定の距離(ストッパクリアランス)を隔てて配置されている。
【0070】
そして、ストッパ突部28の先端部分と前後ストッパ受部62の当接によって、インナ軸部材12とアウタ筒部材18の前後方向(軸方向19)の相対変位量を制限する軸方向ストッパ86が構成されている。更に、ストッパ突部28の先端部分と左右ストッパ受部64の当接によって、インナ軸部材12とアウタ筒部材18の左右方向(第一の軸直角方向26)の相対変位量を制限する第一の軸直角方向ストッパ88が構成されている。更にまた、ストッパ突部28の先端部分と上下ストッパ受部58の当接によって、インナ軸部材12とアウタ筒部材18の上下方向(第二の軸直角方向30)の相対変位量を制限する第二の軸直角方向ストッパ90が構成されている。
【0071】
なお、各ストッパ86,88,90において、ストッパ突部28とストッパ受部58,62,64は、ストッパ突部28を覆う緩衝ゴム層48を介して当接して、当接時の打音や衝撃が緩和されるようになっている。
【0072】
このような構造を有するデフマウント10は、インナ軸部材12が図示しない差動装置に取り付けられると共に、
図6,7に示すように、アウタ筒部材18がサブフレームなどに設けられた取付対象部材としての取付筒部92に嵌め入れられて固定される。
【0073】
本実施形態において、一対の分割体54a,54bで構成されたアウタ筒部材18は、それら分割体54a,54bの相対的な変位が第一,第二の係止部70,80間の隙間によって許容されていることから、取付筒部92への嵌入れに際して、分割体54a,54bが適切な相対位置まで移動することで、アウタ筒部材18が取付筒部92へ嵌入可能な形状となる。
【0074】
これにより、分割体54a,54bの組付け時の誤差などに起因するアウタ筒部材18の取付筒部92への取付け不良が防止されて、デフマウント10を車両に対して確実に取り付けることが可能となる。なお、アウタ筒部材18の取付筒部92への軸方向の取付位置は、取付筒部92の軸方向端面が外フランジ部57に当接することで規定されるようになっている。
【0075】
また、デフマウント10の車両への装着状態において、差動装置とサブフレームの間に振動が入力されると、デフマウント10の本体ゴム弾性体16が弾性変形せしめられることによって、差動装置とサブフレームの間での振動伝達が低減されるようになっている。
【0076】
本実施形態では、本体ゴム弾性体16に凹所42が形成されていると共に、本体ゴム弾性体16の表面における凹所42の壁内面を構成する部分が自由表面とされていることから、弾性変形時に本体ゴム弾性体16の表面において局所的な応力集中が発生し難く、本体ゴム弾性体16の耐久性の向上が図られている。このように、本体ゴム弾性体16には凹所42が設けられていることが好ましいが、凹所42は必須ではない。
【0077】
しかも、本体ゴム弾性体16には凹所42を大気に開放する連通路46が形成されており、本体ゴム弾性体16の弾性変形時に凹所42における空気ばねの作用が回避されていることから、デフマウント10のばね特性を適切に設定し易くなる。具体的には、例えば、凹所42における空気ばねの作用を防ぐことによって、デフマウント10の上下方向のばねが硬くなるのを防止できる。尤も、連通路46を設けずに、アウタ筒部材18で開口が覆われた凹所42を略密閉空間とすることにより、空気ばねを積極的に利用してデフマウント10のばね特性を調節することも可能である。
【0078】
さらに、差動装置とサブフレームの間に大荷重が入力されると、差動装置に固定されるインナ軸部材12とサブフレームに固定されるアウタ筒部材18の相対変位量が、各ストッパ86,88,90によって制限される。これにより、本体ゴム弾性体16の変形量が制限されて、本体ゴム弾性体16の耐久性の向上が図られる。
【0079】
ここにおいて、ストッパ86,88,90は、インナ軸部材12に設けられた一対のストッパ突部28,28の先端部分と、アウタ筒部材18に設けられたストッパ受部58,62,64との当接によって構成されており、ストッパ突部28におけるストッパ受部58,62,64との当接部位が、本体ゴム弾性体16と一体形成された緩衝ゴム層48で覆われていると共に、本体ゴム弾性体16から離れた位置に設定されている。
【0080】
これにより、仮にストッパ突部28を覆う緩衝ゴム層48がストッパ荷重の作用によって損傷しても、緩衝ゴム層48の亀裂などは、本体ゴム弾性体16から周方向に離れたストッパ突部28の先端部分を覆う位置に生じる。それ故、緩衝ゴム層48に生じた亀裂などが本体ゴム弾性体16まで進展するのを防止できて、本体ゴム弾性体16の耐久性への影響が回避される。
【0081】
また、本体ゴム弾性体16は、一対のストッパ突部28,28の突出方向と直交する第二の軸直角方向30の両側へ突出する一対の固着突部32,32に固着されているが、各ストッパ86,88,90は一対のストッパ突部28,28によって構成されることから、一対の固着突部32,32にストッパ荷重が作用することはない。
【0082】
したがって、本体ゴム弾性体16と一体形成された被覆ゴム層50が、本体ゴム弾性体16の近傍で一対の固着突部32,32を覆うように設けられていても、被覆ゴム層50が大荷重の作用によって損傷することはなく、本体ゴム弾性体16の耐久性に悪影響を及ぼすこともない。また、本実施形態では、ストッパ受部58,62,64が、アウタ筒部材18における分割位置を外れて、各分割体54a,54bにそれぞれ一体形成されていることから、ストッパ受部58,62,64の耐荷重強度も容易に得ることができる。
【0083】
また、分割体54a,54bは、第一の係止部70と第二の係止部80の係止によって十分な強度で相互に連結されており、特に本実施形態では、第一の係止部70と第二の係止部80で構成される係止構造が、分割体54a,54bの周方向両端部68,68に設けられていると共に軸方向の両側に設けられており、分割体54a,54bが4つの係止構造によって優れた信頼性をもって連結されている。
【0084】
しかも、係止突部74のガイド面76が係止受部84に当接することで、弾性支持部72が弾性支持部72に作用する当接反力によって厚さ方向で撓むように弾性変形せしめられて、係止突部74が係止受部84を乗り越えて係合されるようになっている。これにより、分割体54a,54bを相対的に位置決めしつつ相互に接近させるだけで、係止突部74と係止受部84の係止が簡単に実現される。
【0085】
加えて、一方の分割体54aには第一の係止部70が軸方向両側に各2つ設けられていると共に、他方の分割体54bには第二の係止部80が軸方向両側に各2つ設けられている。これにより、分割体54a,54bを相互に接近させて第一の係止部70と第二の係止部80を係止させる際に、係止突部74と係止受部84の摺接による摩擦抵抗などに起因するモーメントが、相互に打ち消し合って低減乃至は回避されて、分割体54a,54bの連結作業の容易化が図られている。
【0086】
また、第一の係止部70と第二の係止部80による分割体54a,54bの係止連結構造が、分割体54a,54bの径方向中間部分に配されていることから、第一の係止部70と第二の係止部80が取付筒部92に嵌め入れられるアウタ筒部材18の外周面に設けられるのを回避することができる。これにより、例えば、アウタ筒部材18の取付筒部92への嵌入時に、係止突部74が取付筒部92に接触して第一の係止部70と第二の係止部80の係止が解除されたり、係止構造が取付筒部92に引っ掛かるなどの不具合を回避することができる。
【0087】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、アウタ筒部材18は二分割構造に限定されず、分割構造ではない筒状であっても良いし、3つ以上に分割されていても良い。更に、アウタ筒部材18は、周方向に分割された構造の他、軸方向に分割された構造も採用することができる。
【0088】
さらに、アウタ筒部材18における分割体54a,54bの連結方法は、あくまでも例示であって、第一,第二の係止部70,80による非接着の係止連結に限定されるものではなく、例えば溶着や接着などの手段によって固定することもできる。また、分割体54a,54bの分割方向は、第二の軸直角方向30のような第一の軸直角方向26以外の方向とすることも可能である。
【0089】
更にまた、一方の分割体54aの周方向の両端部68,68に第一の係止部70と第二の係止部80を設けると共に、他方の分割体54bの周方向の両端部68,68に対応する第二の係止部80と第一の係止部70を設けることもできる。これによれば、分割体54aと分割体54bを同一構造とすることも可能であり、部品の共通化による生産性の向上や部品管理の容易化などが図られ得る。
【0090】
また、前記実施形態では、第二の軸直角方向30で対向する一対の中間部材14,14を例示したが、中間部材の具体的な構造は限定的に解釈されるものではなく、例えば、各環状とされた一対の中間部材を軸方向で所定の距離を隔てて配置して、それら中間部材とインナ軸部材12を本体ゴム弾性体16によって相互に弾性連結する構造も採用され得る。なお、中間部材は無くても良い。
【0091】
本発明は、デフマウントにのみ適用されるものではなく、エンジンマウントやサブフレームマウント、ボデーマウント等として用いられる筒形防振装置にも適用可能である。更に、本発明の適用範囲は、自動車用の筒形防振装置に限定されるものではなく、自動二輪車や鉄道用車両、産業用車両等に用いられる筒形防振装置にも好適に採用され得る。
インナ軸部材12に設けられて第一の軸直角方向26の各一方側へ突出する一対のストッパ突部28,28の表面には、本体ゴム弾性体16と一体形成された緩衝ゴム層48が固着されている。アウタ筒部材18の内周面には、一対のストッパ突部28,28が差し入れられるストッパ凹部60が設けられて、ストッパ凹部60の壁部がストッパ突部28に対して軸方向19と第一の軸直角方向26と第二の軸直角方向30の各方向で対向配置されており、ストッパ凹部60の壁部とストッパ突部28の当接によってインナ軸部材12とアウタ筒部材18の相対変位量を制限する軸方向ストッパ86と第一の軸直角方向ストッパ88と第二の軸直角方向ストッパ90が構成されるようにした。