(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記位置決め機構が、上記導体の周面に両側から沿うよう対向配設され、かつ回転軸が上記導体の軸方向と垂直に位置する2対のガイドロールを有する請求項3に記載の塗布ヘッド。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0012】
本発明の一態様に係る塗布ヘッドは、軸方向に連続的に送られる線状の導体に絶縁塗料を塗布する塗布ヘッドであって、上記絶縁塗料を貯留するキャビティと、上記キャビティに上記絶縁塗料を流入させる供給口と、上記キャビティ内に貫通する導体挿入孔と、上記導体挿入孔と同軸上に配設され、導体外周面の絶縁塗料の塗布量を制御する導体排出孔とを備える。
【0013】
当該塗布ヘッドは、線状の導体が連続的に導体挿入孔に送られ、かつこの導体挿入孔と同軸上に配設される導体排出孔から連続的に排出されることで、上記導体の外周面に絶縁塗料を的確に塗布することができる。つまり、当該塗布ヘッドは、同軸上に配設される上記導体挿入孔及び上記導体排出孔がキャビティ内に貫通されると共に、上記キャビティに絶縁塗料を流入させる供給口を有するので、上記供給口から絶縁塗料をキャビティ内に流入させつつ、このキャビティ内を通過する上記導体に絶縁塗料を塗布することができる。また、当該塗布ヘッドは、上記導体が上記導体排出孔から排出される際に上記導体外周面への絶縁塗料の塗布量が制御されるので、上記導体外周面に絶縁塗料を略均一に塗布することができる。当該塗布ヘッドは、このように、上記供給口から上記キャビティ内に絶縁塗料を流入させると共に、上記キャビティ内を通過する上記導体の外周面に絶縁塗料を塗布することができるので、従来の塗布槽を用いた塗布装置のような塗布槽内への異物の混入に基づく絶縁塗料への異物の混入を防止することができる。また、当該塗布ヘッドは、導体外周面への絶縁塗料の塗布量を制御するダイスを別途設ける必要がないため、従来の塗布装置のような塗布槽及びダイス間での異物の混入を防止することができる。
【0014】
上記導体挿入孔及び導体排出孔が鉛直方向に配設されているとよい。このように、上記導体挿入孔及び導体排出孔が鉛直方向に配設されることによって、上記導体外周面への絶縁塗料の塗布量の均一化をさらに促進することができる。
【0015】
上記導体挿入孔に対し、挿入する導体を位置決めする機構をさらに備えるとよい。このように、上記導体挿入孔に挿入する導体に対する位置決め機構を備えることによって、同軸上に配設される上記導体挿入孔及び上記導体排出孔に対する上記導体の挿入位置及び挿入角度を容易に調整することができ、その結果、絶縁塗料を上記導体の外周面に略均一に塗布することができる。
【0016】
上記位置決め機構が、上記導体の周面に両側から沿うよう対向配設され、かつ回転軸が上記導体の軸方向と垂直に位置する2対のガイドロールを有するとよい。このように、上記位置決め機構が、上記導体の周面に両側から沿うように対向配設され、かつ回転軸が上記導体の軸方向と垂直に位置する2対のガイドロールを有することによって、上記導体挿入孔及び上記導体排出孔に対する上記導体の挿入位置及び挿入角度を容易かつ確実に調整することができる。
【0017】
本発明の一態様に係る絶縁電線の製造装置は、当該塗布ヘッドと、線状の導体をその軸方向に連続的に搬送し、上記塗布ヘッドの導体挿入孔に導体を挿通する送り機構と、上記塗布ヘッドの供給口に絶縁塗料を供給する機構と、上記塗布ヘッドの導体排出孔から排出され、絶縁塗料が塗布された導体を加熱する機構とを備える。
【0018】
当該絶縁電線の製造装置は、上記絶縁塗料供給機構から絶縁塗料をキャビティ内に供給すると共に、上記送り機構によって上記導体を上記キャビティ内に通過させつつ、上記導体の外周面に絶縁塗料を塗布することができる。また、当該絶縁電線の製造装置は、上記導体排出孔によって導体外周面への絶縁塗料の塗布量が制御されるので、上記導体排出孔から排出される上記導体を上記加熱機構によって加熱することで、上記絶縁塗料が硬化して形成される絶縁層を上記導体外周面に略均一厚みで容易かつ確実に形成することができる。当該絶縁電線の製造装置は、このように、上記絶縁塗料供給機構から供給される絶縁塗料を上記キャビティ内に流入させると共に、上記キャビティ内を通過する上記導体の外周面にこの絶縁塗料を塗布することができるので、従来の塗布槽を用いた塗布装置のような塗布槽内への異物の混入に基づく絶縁塗料への異物の混入を防止することができる。また、当該絶縁電線の製造装置は、導体外周面への絶縁塗料の塗布量を制御するダイスを別途設ける必要がないため、従来の塗布装置のような塗布槽及びダイス間での異物の混入を防止することができる。
【0019】
上記供給機構による絶縁塗料の供給圧としては、0.1MPaG以下が好ましい。このように、上記供給機構による絶縁塗料の供給圧を上記範囲とすることによって、上記導体挿入孔及び上記導体排出孔からの絶縁塗料の漏れを抑制しつつ、この絶縁塗料を上記導体の外周面に塗布することができる。
【0020】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る塗布ヘッド及び絶縁電線の製造装置を説明する。
【0021】
[第一実施形態]
<塗布ヘッド>
図1及び
図2の塗布ヘッド1は、本体2と、ダイス3と、蓋部4とを備える。塗布ヘッド1は、
図3に示すように、絶縁塗料を貯留するキャビティ5と、キャビティ5に絶縁塗料を流入させる供給口6aと、キャビティ5内に貫通する導体挿入孔7と、導体外周面の絶縁塗料の塗布量を制御する導体排出孔8とを有する。導体挿入孔7及び導体排出孔8は同軸上に配設されている。また、導体挿入孔7及び導体排出孔8は鉛直方向に配設されている。塗布ヘッド1は、軸方向に連続的に送られる線状の導体に絶縁塗料を塗布する。
【0022】
本体2は、略円筒状に形成されている。本体2は、
図3に示すように、上面から軸方向に凹設される穴部9を有する。穴部9は、開口にダイス3が配設されることでキャビティ5を形成する。また、本体2は、外周面からキャビティ5の側面に亘って形成される絶縁塗料供給孔6と、底面からキャビティ5の底面に亘って形成される導体挿入孔7とを有する。絶縁塗料供給孔6の本体2の外周面側の開口が供給口6aとして機能する。また、穴部9の上端部には、フランジ状に拡径された第一係合部10が形成されている。さらに、本体2の外周面の上端部は段状に縮径されており、この縮径部位には径方向に突出した第二係合部11が形成されている。
【0023】
絶縁塗料供給孔6の軸方向と垂直な面における断面形状としては、特に限定されないが、円形、楕円形、多角形等が挙げられる。絶縁塗料供給孔6の平均径D
1の下限としては、1mmが好ましく、2mmがより好ましい。一方、絶縁塗料供給孔6の平均径D
1の上限としては、10mmが好ましく、6mmがより好ましい。絶縁塗料供給孔6の平均径D
1が上記下限未満の場合、絶縁塗料をキャビティ5に供給し難くなるおそれがある。逆に、絶縁塗料供給孔6の平均径D
1が上記上限を超える場合、塗布ヘッド1が不必要に大きくなるおそれがある。なお、「平均径」とは、円形の場合は直径をいい、楕円形の場合は長径及び短径の平均をいい、多角形又はその他の形状の場合は断面積を真円の面積に換算した場合の真円の直径をいうものとする。
【0024】
導体挿入孔7の軸方向と垂直な面における断面形状としては、特に限定されないが、円形、楕円形、多角形等が挙げられる。中でも、導体挿入孔7の軸方向と垂直な面における断面形状としては、導体挿入孔7に挿入される導体の軸方向と垂直な面における断面の相似形が好ましい。当該塗布ヘッド1は、導体挿入孔7の軸方向と垂直な面における断面形状を導体の軸方向と垂直な面における断面形状の相似形とすることで、導体挿入孔7に導体をスムーズに挿入することができる。また、当該塗布ヘッド1は、導体挿入孔7の軸方向と垂直な面における断面形状を導体の軸方向と垂直な面における断面形状の相似形とすることによって、キャビティ5に貯留される絶縁塗料が導体と導体挿入孔7との間の空隙から漏れるのを抑制することができる。
【0025】
導体挿入孔7の平均径D
2の下限としては、導体挿入孔7に挿入される導体の平均径+0.04mmが好ましく、導体挿入孔7に挿入される導体の平均径+0.1mmがより好ましい。一方、導体挿入孔7の平均径D
2の上限としては、導体挿入孔7に挿入される導体の平均径+1mmが好ましく、導体挿入孔7に挿入される導体の平均径+0.5mmがより好ましい。導体挿入孔7の平均径D
2が上記下限未満の場合、導体を挿入させ難くなるおそれがあると共に絶縁塗料の塗布時における線ブレ等によって導体が擦れて外観を損ねるおそれがある。逆に、導体挿入孔7の平均径D
2が上記上限を超える場合、キャビティ5に貯留される絶縁塗料が導体挿入孔7から漏れるおそれが高くなる。
【0026】
導体挿入孔7の平均深さLの下限としては、5mmが好ましく、10mmがより好ましい。一方、導体挿入孔7の平均深さLの上限としては、50mmが好ましく、30mmがより好ましい。導体挿入孔7の平均深さLが上記下限未満の場合、キャビティ5に貯留される絶縁塗料が導体挿入孔7から漏れるおそれが高くなる。逆に、導体挿入孔7の平均深さLが上記上限を超える場合、塗布ヘッド1が不必要に大きくなるおそれがある。
【0027】
絶縁塗料供給孔6の下端から穴部9の底面までの距離W
1としては、特に限定されないが短い方が好ましく、例えば0mm以上3mm以下とすることができる。また、絶縁塗料供給孔6の上端からダイス3の下端までの距離W
2の下限としては、5mmが好ましく、10mmがより好ましい。一方、絶縁塗料供給孔6の上端からダイス3の下端までの距離W
2の上限としては、30mmが好ましく、20mmがより好ましい。絶縁塗料供給孔6の上端からダイス3の下端までの距離W
2が上記下限未満の場合、導入部13側に絶縁塗料を均一圧力で供給し難くなり、絶縁塗料を導体の外周面に均一に塗布できなくなるおそれがある。逆に、絶縁塗料供給孔6の上端からダイス3の下端までの距離W
2が上記上限を超える場合、塗布ヘッド1が不必要に大きくなるおそれがある。
【0028】
ダイス3は、円環状の基部12と、基部12の下面から下方に延出される略円筒状の導入部13とを有する。基部12は、導体挿入孔7と同軸上に配設され、導体外周面の絶縁塗料の塗布量を制御する導体排出孔8を有する。導体排出孔8は、キャビティ5内に貫通している。基部12の高さは、第一係合部10の鉛直方向長さと同一とされている。ダイス3は、基部12が第一係合部10と係合されることで本体2に連結されている。また、導入部13は、内径が基部12との連結部に向けて徐々に縮径され、基部12との連結部において基部12の内径と同一径となるようテーパー状の空間が内部に形成されている。なお、ダイス3としては、本体2と連結されてキャビティ5を形成できるものである限り特に限定されるものではなく、例えば従来の塗布装置に用いられるダイスを用いることが可能である。
【0029】
当該塗布ヘッド1は、本体2とダイス3とが連結されることによって、キャビティ5の上部が導体排出孔8を除いてダイス3によって封止される。その結果、当該塗布ヘッド1は、絶縁塗料を貯留するキャビティ5が、供給口6a、導体挿入孔7及び導体排出孔8を除いて密閉空間として形成される。
【0030】
当該塗布ヘッド1は、導体挿入孔7及び導体排出孔8が鉛直方向に配設されることによって、導体挿入孔7及び導体排出孔8の中心軸に沿って導体を容易かつ確実に搬送することができる。また、当該塗布ヘッド1は、導体挿入孔7及び導体排出孔8が鉛直方向に配設されることによって、導体外周面に塗布される絶縁塗料が一定の周方向に流動するのを防止することができる。それゆえ、当該塗布ヘッド1は、導体外周面への絶縁塗料の塗布量の均一化を促進することができる。
【0031】
導体排出孔8の軸方向と垂直な面における断面形状は、導体の外周面を被覆する絶縁層の形状に基づいて規定されるが、導体挿入孔7の相似形であるのが好ましい。また、導体排出孔8の平均径D
3は、導体及びこの導体の外周面を被覆する絶縁層の厚みに基づいて規定される。
【0032】
蓋部4は、円環状の蓋本体14と、蓋本体14の周縁から筒状に下方に立設される筒状部15とを有する。また、筒状部15の内面には係止溝16が形成されている。蓋部4は、蓋本体14が本体2の上面及び基部12の上面に当接され、かつ係止溝16が第二係合部11と係合されることによって本体2及びダイス3と連結される。当該塗布ヘッド1は、蓋部4がこのように本体2及びダイス3と連結されることによって、導体排出時にダイス3に対して導体排出方向に力が加えられた場合でも、ダイス3の移動が蓋部4によって確実に防止される。このように、当該塗布ヘッド1は、ダイス3の移動が蓋部4によって確実に防止されるので、ダイス3と本体2との乖離に起因して異物がキャビティ5内に混入するのを的確に防止することができる。
【0033】
(導体)
上記導体の断面形状としては、特に限定されるものではなく、円形、楕円形、方形、多角形等が挙げられる。また、上記導体は、複数の素線を撚り合わせた撚り線であってもよい。
【0034】
上記導体の材質としては、導電率が高くかつ機械的強度が大きい金属が好ましい。このような金属としては、例えば銅、銅合金、アルミニウム、ニッケル、銀、鉄、鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。上記導体の材料としては、これらの金属を線状に形成した材料や、このような線状の材料にさらに別の金属を被覆した多層構造のもの、例えばニッケル被覆銅線、銀被覆銅線、銅被覆アルミ線、銅被覆鋼線等を用いることができる。
【0035】
上記導体の平均断面積の下限としては、0.01mm
2が好ましく、0.1mm
2がより好ましい。一方、上記導体の平均断面積の上限としては、10mm
2が好ましく、5mm
2がより好ましい。上記導体の平均断面積が上記下限未満の場合、上記導体の外周面に絶縁塗料を塗布して形成される絶縁層に対する上記導体の体積が小さくなり、体積効率が低くなるおそれがある。逆に、上記導体の平均断面積が上記上限を超える場合、誘電率を十分に低下させるために絶縁層を厚く形成しなければならず、細線化の要請に反するおそれがある。
【0036】
(絶縁塗料)
上記絶縁塗料としては、特に限定されないが、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を溶剤で希釈したワニスが挙げられる。また、上記絶縁塗料は、さらに硬化剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0037】
上記熱硬化性樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えばポリビニールホルマール、熱硬化ポリウレタン、熱硬化アクリル、エポキシ、熱硬化ポリエステル、熱硬化ポリエステルイミド、熱硬化ポリエステルアミドイミド、芳香族ポリアミド、熱硬化ポリアミドイミド、熱硬化ポリイミド等が挙げられる。また、上記熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えばポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン等が挙げられる。
【0038】
上記溶剤としては、特に限定されるものではなく、絶縁ワニスに従来より用いられている公知の有機溶剤が挙げられる。具体的には、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサエチルリン酸トリアミド、γ−ブチロラクトンなどの極性有機溶媒をはじめ、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、ジクロロメタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、クレゾール、クロルフェノールなどのフェノール類、ピリジンなどの第三級アミン類などが挙げられ、これらの有機溶媒はそれぞれ単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0039】
上記絶縁塗料の25℃における粘度ηの下限としては、0.2Pa・sが好ましく、0.5Pa・sがより好ましい。一方、上記絶縁塗料の25℃における粘度ηの上限としては、50Pa・sが好ましく、20Pa・sがより好ましい。上記絶縁塗料の25℃における粘度ηが上記下限未満の場合、上記絶縁塗料が導体挿入孔7から漏れるおそれが高くなる。逆に、上記絶縁塗料の25℃における粘度ηが上記上限を超える場合、塗布ヘッド1に上記絶縁塗料を送るのに必要な圧力が大きくなるおそれがある。
【0040】
<利点>
当該塗布ヘッド1は、線状の導体が連続的に導体挿入孔7に送られ、かつこの導体挿入孔7と同軸上に配設される導体排出孔8から連続的に排出されることにより、上記導体の外周面に絶縁塗料を的確に塗布することができる。つまり、当該塗布ヘッド1は、同軸上に配設される導体挿入孔7及び導体排出孔8がキャビティ5内に貫通されると共に、キャビティ5に絶縁塗料を流入させる供給口6aを有するので、供給口6aから絶縁塗料をキャビティ5内に流入させつつ、キャビティ5内を通過する上記導体に絶縁塗料を塗布することができる。また、当該塗布ヘッド1は、上記導体が導体排出孔8から排出される際に上記導体外周面への絶縁塗料の塗布量が制御されるので、上記導体外周面に絶縁塗料を略均一に塗布することができる。当該塗布ヘッド1は、このように、供給口6aからキャビティ5内に絶縁塗料を流入させると共に、キャビティ5内を通過する上記導体の外周面に絶縁塗料を塗布することができるので、従来の塗布槽を用いた塗布装置のような塗布槽内への異物の混入に基づく絶縁塗料への異物の混入を防止することができる。また、当該塗布ヘッド1は、導体外周面への絶縁塗料の塗布量を制御するためのダイスを別途設ける必要がないため、従来の塗布装置のような塗布槽及びダイス間での異物の混入を防止することができる。
【0041】
[第二実施形態]
<塗布ヘッド>
図4の塗布ヘッド21は、本体2と、ダイス3と、蓋部4と位置決め機構22とを備える。塗布ヘッド21における本体2、ダイス3及び蓋部4は、
図1乃至
図3の塗布ヘッド1と同様のため、同一符号を付して説明を省略する。
【0042】
位置決め機構22は、導体挿入孔7に対し、挿入する導体の位置決めをする。位置決め機構22は、
図5に示すように、導体の周面に両側から沿うように対向配設され、かつ回転軸が導体の軸方向と垂直に位置する2対のガイドロール23、24を有する。2対のガイドロール23、24は、本体2の底面から下方に設けられる支持部25を介して本体2の底面に連結されている。第一の一対のガイドロール23及び第二の一対のガイドロール24は、導体挿入孔7の中心軸に対して各々対向配設されている。また、第一の一対のガイドロール23の回転軸及び第二の一対のガイドロール24の回転軸は、平面視において直交するように配設されている。位置決め機構22は、第一の一対のガイドロール23及び第二の一対のガイドロール24がこのように配設されることによって、導体挿入孔7の軸方向に垂直な第一方向と、導体挿入孔7の軸方向及び上記第一方向に垂直な第二方向との移動を規制する。なお、当該塗布ヘッド21は、
図5に示すように、第一の一対のガイドロール23及び第二の一対のガイドロール24がいずれも同一面上に配設される必要はない。
【0043】
第一の一対のガイドロール23間の間隔及び第二の一対のガイドロール24間の間隔としては、特に限定されないが、導体の平均径以上導体挿入孔7の平均径以下が好ましい。
【0044】
<利点>
当該塗布ヘッド21は、導体挿入孔7に挿入する導体に対する位置決め機構22を備えるので、同軸上に配設される導体挿入孔7及び導体排出孔8に対する導体の挿入位置及び挿入角度を容易に調整することができ、その結果、絶縁塗料を上記導体の外周面に略均一に塗布することができる。
【0045】
当該塗布ヘッド21は、位置決め機構22が、上記導体の周面に両側から沿うように対向配設され、かつ回転軸が上記導体の軸方向と垂直に位置する2対のガイドロール23、24を有するので、導体挿入孔7及び導体排出孔8に対する上記導体の挿入位置及び挿入角度を容易かつ確実に調整することができる。
【0046】
[第三実施形態]
<絶縁電線の製造装置>
図6の絶縁電線の製造装置31は、塗布ヘッド1と、送り機構32と、供給機構33と、加熱機構34とを主として備える。絶縁電線の製造装置31は、線状の導体100の外周面に絶縁塗料を塗布し、硬化させることで、導体100の外周面に絶縁層が被覆された絶縁電線を製造する。絶縁電線の製造装置31における塗布ヘッド1は、
図1乃至
図3の塗布ヘッド1と同様のため、同一符号を付して説明を省略する。また、導体100及び上記絶縁塗料としては、
図1乃至
図3の塗布ヘッド1に用いられる導体及び絶縁塗料と同様のものを用いることができる。
【0047】
送り機構32は、線状の導体100をその軸方向に連続的に搬送し、塗布ヘッド1の導体挿入孔及び導体排出孔に導体100を挿通する。送り機構32は、導体100の外周面に絶縁層が被覆された絶縁電線を回収する回収ロール35を有する。回収ロール35は、導体100を連続的に塗布ヘッド1側から回収ロール35側に搬送しつつ、導体100の外周面に絶縁層が被覆された絶縁電線を連続的に回収する。なお、当該絶縁電線の製造装置31は、回収ロール35によって絶縁電線が回収されるまでに、絶縁塗料の塗布及び硬化を複数回に亘って行ってもよい。この場合、当該絶縁電線の製造装置31は、絶縁電線を回収ロール35によって回収するまでの搬送経路において、塗布ヘッド1、供給機構33及び加熱機構34を有する複数の塗布ユニットを備えてもよい。また、この場合、塗布ヘッド1の導体排出孔は順次拡径されてもよい。
【0048】
送り機構32によって搬送される導体100の線速の下限としては、1.0m/minが好ましく、5.0m/minがより好ましい。一方、送り機構32によって搬送される導体100の線速の上限としては、1000m/minが好ましく、100m/minがより好ましい。送り機構32によって搬送される導体100の線速が上記下限未満の場合、導体挿入孔から絶縁塗料が漏れるおそれが高くなる。逆に、送り機構32によって搬送される導体100の線速が上記上限を超える場合、導体の外周面に絶縁塗料を的確に塗布できないおそれがある。なお、当該絶縁電線の製造装置31は、絶縁塗料の粘度、導体挿入孔の平均径及び平均深さ、導体100の平均断面積及び送り機構32によって搬送される導体100の線速を調整することによって、絶縁塗料の導体挿入孔からの漏れを的確に防止することができる。
【0049】
供給機構33は、塗布ヘッド1の供給口に絶縁塗料を供給する。供給機構33によって供給口に供給される絶縁塗料の供給経路は、密閉空間として形成されている。
【0050】
供給機構33による上記絶縁塗料の供給圧の下限としては、0.01MPaGが好ましく、0.03MPaGがより好ましい。一方、供給機構33による上記絶縁塗料の供給圧の上限としては、0.1MPaGが好ましく、0.07MPaGがより好ましい。供給機構33による上記絶縁塗料の供給圧が上記下限未満の場合、導体排出孔から排出される導体100の外周面に絶縁塗料を的確に塗布することができないおそれがある。逆に、供給機構33による上記絶縁塗料の供給圧が上記上限を超える場合、キャビティに貯留される絶縁塗料が導体挿入孔から漏れるおそれが高くなると共に、導体にかかる圧力が大きくなり過ぎるおそれがある。
【0051】
加熱機構34は、塗布ヘッド1の導体排出孔から排出され、絶縁塗料が塗布された導体100を加熱する。加熱機構34は、導体100の外周面に塗布された絶縁塗料に含まれる溶剤を気化させる第一加熱部と、上記溶剤が気化された絶縁塗料を硬化させる第二加熱部とを有する。上記第一加熱部及び上記第二加熱部としては、例えば誘導加熱コイルが用いられる。
【0052】
<利点>
当該絶縁電線の製造装置31は、絶縁塗料供給機構33から絶縁塗料を塗布ヘッド1のキャビティ内に供給すると共に、送り機構32によって導体100をキャビティ内に通過させつつ、導体100の外周面に絶縁塗料を塗布することができる。また、当該絶縁電線の製造装置31は、塗布ヘッド1の導体排出孔によって導体100外周面への絶縁塗料の塗布量が制御されるので、導体排出孔から排出される導体100を加熱機構34によって加熱することで、絶縁塗料が硬化して形成される絶縁層を導体100外周面に略均一厚みで容易かつ確実に形成することができる。当該絶縁電線の製造装置31は、このように、絶縁塗料供給機構33から供給される絶縁塗料をキャビティ内に流入させると共に、キャビティ内を通過する導体100の外周面にこの絶縁塗料を塗布することができるので、従来の塗布槽を用いた塗布装置のような塗布槽内への異物の混入に基づく絶縁塗料への異物の混入を防止することができる。また、当該絶縁電線の製造装置31は、導体100外周面への絶縁塗料の塗布量を制御するダイスを別途設ける必要がないため、従来の塗布装置のような塗布槽及びダイス間での異物の混入を防止することができる。
【0053】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0054】
上記実施形態では、導体挿入孔7及び導体排出孔8が鉛直方向に配設される構成としたが、導体挿入孔7及び導体排出孔8は必ずしも鉛直方向に配設される必要はなく、例えば水平方向に配設されてもよい。
【0055】
ダイス3は、必ずしも導入部13を有する必要はなく、また導入部13を有する場合でも、導入部13の内壁がテーパー状に形成されていなくてもよい。当該塗布ヘッドは、上述の導入部13を有しない場合であっても、絶縁塗料が外周面に塗布された導体が導体排出孔を挿通されることによって、導体外周面の絶縁塗料の塗布量を制御することができるので、導体の外周面に被覆される絶縁層の厚みの均一化を図ることができる。
【0056】
位置決め機構22は、必ずしも2対のガイドロール23、24を有する必要はなく、例えば導体の周面に両側から沿うよう対向配設され、かつ回転軸が導体の軸方向と垂直に位置する1対のガイドロールのみを有していてもよく、また3対以上のガイドロールを有していてもよい。さらに、位置決め機構としては、例えば導体挿入孔7及び導体排出孔8と同軸上に配設される孔によって導体挿入孔7の軸方向と垂直方向の位置決めをする構成としてもよい。また、位置決め機構は、必ずしも支持部25を介して本体2に連結されている必要はなく、本体2と別体として設けられてもよい。
【0057】
上記実施形態では、当該絶縁電線の製造装置31は、
図1乃至
図3の塗布ヘッド1を有する構成としたが、この塗布ヘッド1に代えて
図4の塗布ヘッド21を有する構成としてもよい。