(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6368982
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】溶接された曲げ剛性プラスチック部分を有するバッグ
(51)【国際特許分類】
A61J 1/05 20060101AFI20180730BHJP
A61J 1/10 20060101ALI20180730BHJP
A61M 1/16 20060101ALI20180730BHJP
B65D 77/00 20060101ALI20180730BHJP
B65D 77/08 20060101ALI20180730BHJP
A61J 3/00 20060101ALN20180730BHJP
【FI】
A61J1/05 351A
A61J1/10 330B
A61J1/10 335A
A61M1/16 175
B65D77/00 C
B65D77/08 B
!A61J3/00 312
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-507412(P2015-507412)
(86)(22)【出願日】2013年4月18日
(65)【公表番号】特表2015-519929(P2015-519929A)
(43)【公表日】2015年7月16日
(86)【国際出願番号】EP2013001155
(87)【国際公開番号】WO2013159883
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2016年4月15日
(31)【優先権主張番号】102012007904.4
(32)【優先日】2012年4月23日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】61/636,771
(32)【優先日】2012年4月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597075904
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】クーゲルマン フランツ
(72)【発明者】
【氏名】ホエルマン ヨエルン
【審査官】
胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/073274(WO,A1)
【文献】
米国特許第04312352(US,A)
【文献】
特開2004−081276(JP,A)
【文献】
特表2005−523843(JP,A)
【文献】
米国特許第3371897(US,A)
【文献】
特表平03−503500(JP,A)
【文献】
特開昭51−132692(JP,A)
【文献】
特表2010−511476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/05
A61J 1/10
A61M 1/16
B65D 77/00
B65D 77/08
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腎臓治療のための医療用流体を保持するためのバッグであって、少なくとも幾つかの区分の境界線に沿って外周が互いに溶接されたフィルム壁区分からなり、第1の端部が前記バッグの内部領域を外部領域と流体接続させると共に、前記境界線に封止して組み込まれる少なくとも1つのアクセス・ポートと、曲げ剛性プラスチック部分とを有し、アクセス・ポート/回収ポート及び/又はベント・ポート及び/又は管ホルダのためのレセプタクルが、前記曲げ剛性プラスチック部分に組み込まれているバッグにおいて、
前記曲げ剛性プラスチック部分は、前記境界線とは別に、前記フィルム壁の突出するフィルム区分に複数の溶接ポイントによって連結され、
前記曲げ剛性プラスチック部分は、非封止溶接によって、封止する前記境界線とは別個に前記フィルム壁に結合されている、
ことを特徴とするバッグ。
【請求項2】
前記曲げ剛性プラスチック部分は、前記ポートを受け入れるように作製された受入れ領域を有する、
請求項1に記載のバッグ。
【請求項3】
前記曲げ剛性プラスチック部分は、一体型固定手段、特に保持レール及び/又は1つ又はそれ以上のベント・ポートを含む、
請求項1又は2に記載のバッグ。
【請求項4】
前記曲げ剛性プラスチック部分は、前記一体型固定手段、特にU型保持レールを有する非対称の幾何学的形状を形成することができ、その結果、前記バッグを相補的拘束システムに一義的な方法でのみ結合することができる、
請求項3に記載のバッグ。
【請求項5】
前記1つのアクセス・ポートは、前記境界線内に溶接される、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のバッグ。
【請求項6】
5乃至120リットル、好ましくは30乃至90リットル、好ましくは45乃至75リットルの容量を有する大容量バッグである、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のバッグ。
【請求項7】
マルチチャンバ・バッグである、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のバッグ。
【請求項8】
前記バッグの少なくとも2つのチャンバの各々が1つのアクセス・ポートに結合され、1つのアクセス・ポートを有する各々は前記バッグの外部領域に結合され、前記境界線を封止貫通する、
請求項7に記載のバッグ。
【請求項9】
前記2つのアクセス・ポートの各々が、前記曲げ剛性プラスチック部分により収容される、
請求項7又は8に記載のバッグ。
【請求項10】
前記フィルム壁は、弾性伸縮性材料で作成される、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のバッグ。
【請求項11】
情報担体が、前記曲げ剛性プラスチック部分及び前記フィルム壁の溶接領域内に固定される、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のバッグ。
【請求項12】
バッグを製造する方法であって、
・少なくとも2つのフィルムを上下に配置するか又はフィルム管を平坦化するステップと、
・少なくとも1つのアクセス・ポートを、前記フィルムの間に又は前記平坦化されたフィルム管の対向するフィルム区分の間に位置決めし、前記ポートがフィルム又はフィルム区分の対向する側に近接するようにするステップと、
・前記フィルム又は前記フィルム管を前記ポートに溶接及び/又は接着することによって、封止境界線を生成するステップと、
・前記封止境界線を超えて突出する前記フィルム管の前記フィルム部分又は前記フィルム区分の間の領域内に、曲げ剛性プラスチック部分を位置決めするステップと、
・前記曲げ剛性プラスチック部分を、前記封止境界線とは別に、複数の溶接スポットを有する溶接によって、前記突出するフィルム区分に接続するステップと、
を含み、
前記ポートは、前記曲げ剛性プラスチック材料上の受入れ領域内の材料に取り付けられ、
前記フィルム又はフィルム区分と前記曲げ前記剛性プラスチック部分との間の結合は、封止を形成するように実施されない、
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記曲げ剛性プラスチック部分は、溶接又は接着又はクランプによって、前記フィルム区分に結合される、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
4つのフィルムが上下に配置され、且つ接合境界線に沿って溶接され、その結果、少なくとも2つの対向するフィルムを平坦化されたフィルム管のフィルム区分から形成して、内側チャンバを含む内側バッグ及び前記内側バッグを囲むバッグを有し、且つ、第2のチャンバ及び/又は第3のチャンバを有するマルチチャンバ・バッグを得る、
請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
別のフィルム片が、前記フィルム又は前記フィルム区分と前記曲げ剛性プラスチック部分との間の結合線に結合される、
請求項12乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療溶液、特に輸液及び腎置換療法(renal substitution therapy)のための溶液を調製する分野に関する。本発明の主題は、バッグ、特に、周方向封止部と、液体のための供給ポート及び/又は引出ポートを囲む曲げ剛性材料で作成された保持領域とを有する、濃縮物を保持するためのマルチチャンバ・バッグである。
【背景技術】
【0002】
血液透析又は腹膜透析用の透析液、並びに血液ろ過法用の液体及び補液は、典型的には、例えば:
・患者の許容可能な電解質平衡を維持するための電解質Na、K、Mg、Ca、
・緩衝剤(例えば、重炭酸塩、酢酸塩、乳酸塩等)、
・腹膜透析における浸透圧剤としての、又は血液透析及び血液ろ過中の血糖値を維持するためのブドウ糖(又は他の浸透圧剤)、
・塩基性部分透析液の中和に寄与し得る、又は電気化学平衡における対イオンとして存在する酸又は酸の塩(例えば、HCl及び/又はCl
-、酢酸、及び/又は酢酸塩、クエン酸及び/又はクエン酸塩)、
などの溶解物質を含む。
【0003】
透析液で使用される物質は、これらの物質が相互劣化を生じることがあるため、通常、使用準備済の混合物として貯蔵することはできない。成分の貯蔵時に必要とされる安定性は、他の成分の劣化につながる貯蔵条件を前提とすることがある。一例はブドウ糖であり、ブドウ糖は、溶液中のその濃度に応じて、特定の酸性pH範囲内でしか、望ましくない劣化プロセスを過度に被ることなく、長期間貯蔵間することができる。同時に、透析液の緩衝剤として使用されることが多い化合物重炭酸ナトリウムは、重炭酸塩が、pHに応じて分解する傾向があり、CO
2を発生することがあるため、こうした酸性条件下で貯蔵することができない。分解条件下では、重炭酸塩の濃度が変化し、これは、治療上の観点から受け入れられない。また、CO
2分圧の上昇は、医療透析機器に負担を加え、技術上の問題をもたらす。
【0004】
長期にわたる貯蔵を可能にする、透析液又は濃縮物の様々な代替的組成物、貯蔵条件及び剤形が知られている。部分溶液又は部分濃縮物の適合する成分だけが一緒に貯蔵されるように、溶液の成分を分割して部分溶液又は濃縮物の組み合わせにすることが知られている。腹膜透析に使用される溶液については、浸透圧剤の機能を果たすブドウ糖を含む第1の部分溶液は、典型的には、例えば、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム等の付加的な電解質に加えて酸性pHで貯蔵される。別の塩基性即ち緩衝部分溶液は、生理学的混合溶液、即ち第1酸性部分溶液の使用時に第1部分及び第2部分の治療用の少なくとも混合使用準備済溶液を供給することを必要とする。第2部分は、多くの場合、重炭酸ナトリウム及び塩化ナトリウムの溶液又は濃縮物から成る。部分溶液又は濃縮物は、幾つかの容器内、又は1つの容器の幾つかの区画内に存在する部分溶液又は部分濃縮物は、相互に影響を及ぼすことがないように別々に存在する。別々の部分溶液又は部分濃縮物は、恐らくは他の水性成分を加えることにより、透析液の使用直前に混合され、治療のために調製される。
【0005】
血液透析において、部分溶液又は部分濃縮物は、多くの場合、透析機内に存在し、治療中に混合され、完成した透析液を調製する。固体形態又は液体形態の部分濃縮物は、この目的のために使用されることが多く、これらの濃縮物は個々の容器内にあり、透析機に結合することによって、調製された水圧溶液の助けにより希釈され、次いで、処理されて使用準備済の完成した透析液をもたらす。
【0006】
透析における他の開発は、必要な濃縮物を単一の容器で供給する傾向がある。第1に、これは、容器の製造及び取り扱いを簡単にし、第2に、部分溶液又は濃縮物に対して保持ユニットを1つしか必要とせず、水圧システムを通した溶液の処理に必要な結合部が少ないため、透析機の水圧システムも簡単にする。こうした傾向は、治療システムの可搬性が大きいことが必要とされているため、特に、緊急透析で見られる。
【0007】
別の変形においては、血液透析用の透析液を、治療中に濃縮物から調製するのではなく、代わりに、透析液の必要とされる全容積を、治療前の1ステップで1つのバッチで調製する。透析機に結合する準備がなされたタンクにバッチを貯蔵する。多くの場合、タンクは、透析治療ユニットの一体の構成要素であり、又は特定の場合には、タンクを透析治療ユニットとは別々に動かしてもよい。従って、バッチ透析には、バッチの一回の調製により、場所に関係なく治療部位を相対的に選択することができるという利点をもたらし得る。従って、透析液調製ユニット又は濃縮物の希釈に必要な水を供給する通水部に依存する必要なしに、様々な場所で治療ステーションを使用することができる。これらの場合、透析液は、この目的で設置された装置において濃縮物から混合され、次いで通常は可搬式タンク内に貯蔵される。
【0008】
少なくとも5リットルの容量を有するバッグであるように以下で理解される大容量液体バッグは、特別な機械的要件の対象になる。バッグのフィルム材料は、バッグが落下した場合に破裂しないように十分に高い衝撃強度を有する必要がある。こうした要件は、特に低温において必要とされる。対応する適合性試験により、落下試験における溶液バッグの強度が評価された。この試験において、初めに温度4℃に調整されたバッグが、それに応じて調整された室内で2メートルの高さから床に落下され、生じるバッグのいずれかの破裂挙動が評価される。さらに、フィルム区分から組み立てられるバッグの溶接部は、バッグの漏れをもたらすことなく、特定の圧縮応力に耐える必要がある。また、バッグの材料は、熱滅菌性及び透明性の付加的な要件も満たす必要がある。これらの要件は、特に、滅菌され使用準備済みの形で販売及び流通される溶液バッグに関連する。そうしたバッグが流通ルート上で機械的応力に曝された結果、顧客の側の製造者に対する苦情及び不愉快な追加要求をもたらす。腹膜透析、血液透析及び血液ろ過用の溶液バッグは、従来より最大5リットルまでのサイズで入手可能である。
【0009】
大容量溶液バッグを使用準備済の形で供給することは、輸送ロジスティクスのために依然として困難である。上述のようなバッチ透析に使用されるバッグについては、溶液を治療現場及び使用現場で調製する必要がある。従って、バッグは、適切な流体処理設備によって現場で充填する必要があり、病棟内で、そしてある程度まで病棟の領域を超えて使用することができる。そうしたバッチ・システムは、30乃至120リットルのバッグ容量を必要とすることがある。そうした大容量バッグには、その固有重量のために、溶接区分、例えば溶接シーム(継目)又はバッグに溶接されたポートに既に重い荷重がかかっている。
【0010】
ポートを通じてバッグを充填し又は空にすることができるために、これらのポートを、フィルム壁区分を互いに固定し、バッグの内容積を定める周方向溶接部内に組み込む必要がある。ポートはバッグの内側を外部領域に結合する貫通開口部を有するので、流体はこれを通って流れることができる。ポートの外端部は、治療ステーションのバッグ・システムの付加的なライン又は結合部に結合される。ポートの溶接領域は、特に、フィルム材料に溶接結合するように設計する必要があることが知られている。従って、ポートの貫通開口部の広がり方向に対して横断方向に延び、且つ、フィルムの溶接部に平行に延びる、いわゆる溶接リブが開発されている。製造プロセス中、溶接工具がフィルムをこれらの比較的薄い溶接リブに押し付けて、非常に高い接触圧力を局所的に生じさせ、それが溶接部を封止する。
【0011】
しかしながら、これらの接合部は、フィルムとポートの間に、単純な封止を上回る一定の機械的結合を確立しなければならない。バッグは、多くの場合、溶接されたポートで又は吊り下げられた位置でホルダによって支持されるのが普通である。それぞれの充填されるバッグの容積に応じて、フィルムは、充填物を形成する物質の重力に起因する高い張力を溶接部に及ぼす。大容量バッグについては、述べられた溶接部を封止して荷重に耐えるように確立するための技術的要件は、大量生産において許容可能な製造コストでバッグ・システムを製造するためにはあまりに高いものとなる。
【0012】
重力、そして場合によってはフィルム壁にかかる充填された大容量バッグの内部の静水圧のためにフィルム壁に作用する張力が、フィルム材料の薄化(thinning)をもたらすことがある。フィルム壁は、塑性変形又は弾性変形のために張力に屈する。これらの変形にもかかわらず、これに応じてフィルムが安定するように設計することができる。特に、特許文献1が参照され、その内容が本明細書で言及される。この文献は、大容量バッグを製造するために提供される弾性伸縮性フィルムについて記載している。
【0013】
大容量バッグの溶接部分の機械的応力に生じる1つの問題は、薄化のために溶接ボートの溶接リブとの溶接接続部から、フィルムが剥離することがある点である。そうした影響は、特に、溶接作業のためにフィルム材料を溶接ボートの湾曲した溶接リブの上に引き伸ばさなければならないことから生じる。さらに、充填されるバッグの重力又は静水圧により、フィルム伸縮力もこの溶接箇所に作用する。
【0014】
また、そうしたプラスチック部分が、バッグへのアクセス・ポートのための保持区分、又はバッグを取り付けることができる保持装置などの機能設計を有することも望ましい。これらの使用要件もまた、機械的に安定した曲げ剛性材料の使用を必要とする。
【0015】
特許文献2は、溶液バッグのフィルム壁の間の所定位置に管ポートを封止し、溶接する方法を開示している。この文献は、フィルムの機械的把持、管ポートの挿入、そして溶接について言及している。フィルム伸長の問題が論じられているが、この文献は、曲げ剛性材料で作成されたプラスチック部分を開示している。
【0016】
特許文献3は、各々がバッグの2つの別々の内部領域に通じる2つのアクセス・ポートを有するバッグを開示している。バッグは、フィルム材料内の単純な受け穴から成るホルダを有する。そのような保持装置は、フィルム材料が充填済みバッグの荷重を受けて破れることがあるので、大容量バッグには適さない。
【0017】
特許文献4は、液体を加える/除去するように機能的に作製された、バッグのホルダ機能をもつプラスチック部分を有する濃縮物バッグを開示している。プラスチック部分は、溶接リブを介してフィルム壁に封止溶接される。バッグは、飽和溶液を調製するために濃縮物を保持し、この飽和溶液を用いて透析液を調製することができる。全体として、バッグは、充填された状態でも低重量しか有さないので、溶接される硬質部分の溶接区域の封止機能及び保持機能を確実にする問題は重要でない。
【0018】
特許文献5は、透析液を調製するための乾燥濃縮物が入れられる大容量容器を開示している。水を加えることによって、液体濃縮物を調製する。フィルム壁と硬質部分の間の結合部の実施形態は、固定及び封止の観点から詳細には記載されてはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際公開第2011/128185号
【特許文献2】欧州特許第1 554 177号明細書
【特許文献3】欧州特許第1 438 090号明細書
【特許文献4】欧州特許第1 642 614 B1号明細書
【特許文献5】米国特許第4,386,634号明細書
【特許文献6】国際公開第2007/115803号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従って、本発明の目的は、入口ライン及び出口ラインの領域における機械的荷重に耐えることができるバッグを生成することであり、このバッグは同時に、該バッグを充填する物質の封止貯蔵に関する高い安全性を保証する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的は、医療用流体、特に、体外血液処理又は腎臓治療において生じるような使用準備済み及び/又は使用済み流体を保持するためのバッグである請求項1の主題、並びにバッグを製造する方法である請求項14の主題によって達成される。有利な実施形態が、従属項の特徴によって表される。
【0022】
この目的は、特に、境界線とは別個のフィルム壁に結合された曲げ剛性プラスチック部分(flexurally rigid plastic part)によって達成される。
【0023】
バッグを製造するための1つのプロセスにおいて、入口ポート又は出口ポートが、製造されるバッグの境界線においてフィルム壁に封止結合される。この封止溶接領域とは別個の領域において、曲げ剛性プラスチック部分がフィルム壁に結合され、バッグの機械的要求に向けられた機械的耐荷重結合区域を形成する。
【0024】
本発明によるバッグは、フィルム壁区分から構成される。バッグの壁は、完全にフィルム材料で作成されることが好ましい。フィルム材料は、本発明の教示の意味において、薄く平担な可撓性弾性材料である点で特徴付けられる。表面上に平らに配置することができる管形状で存在する平担なプラスチック材料も、この概念にカバーされる。本発明の主題のために使用されるフィルムの層厚は、50乃至500μmの範囲内、特に80乃至300μmの範囲内、また設計に応じて100乃至250μmの範囲内にある。本発明の教示の意味における「バッグ」という用語は、その固有重量のために空のときに平らな形状となる折畳み可能な容器を含む。用語バッグはまた、その全体的特性において空のときにバッグを折り畳むことができる限り、バッグ壁の一部分が曲げ剛性材料で作製される実施形態も含む。
【0025】
本発明の実施形態の特徴は、少なくとも2つのフィルムが共通境界線に沿って内部密閉容積を形成し、それによりバッグが形成されることである。境界線は、上下に配置される2つのフィルムを結合する周方向溶接部とすることができる。しかしながら、境界線はまた、幾つかの区分においてのみフィルムの溶接部からなり、他の区分においては、折り畳まれたフィルムを形成することを意味するものと理解することができる。これは、具体的には管状フィルムの場合に当てはまる。そうしたフィルムが平担に配置される結果、2つのフィルム管半分が上下に配置され、少なくとも側面で折り畳まれたフィルムを形成し、これもまた境界線であると理解される。付加的な領域において、密閉バッグを得るために、フィルムの解放端部(loose end)を溶接する必要がある。アクセス・ポートがフィルムの間に生成される。例えば、管区分を2つのフィルムの間に挿入して所定の場所に溶接又は接着し、特許文献2に示されるように、少なくとも2つのフィルムの共通境界線内に封止を形成することができる。代替的に、ポートは、溶接リブを含む曲げ剛性材料から形成することもでき、封止を形成するように、フィルムの共通境界線内に溶接することもできる。
【0026】
ポートは、内部バッグ容積及び外部領域へのアクセスを確立する機能を果たす。ポートは、流体の供給及び流体の引出しを確実にするために、例えば、管、コネクタ及びアダプタなどの付加的な流体案内手段に結合することができる。
【0027】
さらに、本発明によるバッグは、バッグ内に形成され、少なくとも1つの供給/引出ポートを一体的に収容するように設計された少なくとも1つの曲げ剛性プラスチック部分によって特徴付けられる。この文脈における用語「曲げ剛性」とは、機能的配向を損なわずに、物体を幾何学的に変形させることができないことを意味するものと理解されたい。
【0028】
曲げ剛性プラスチックは、特に、ISO306に従ったそれらのビカー軟化温度より低い温度で使用される熱可塑性材料であることが理解される。曲げ剛性プラスチック部分はバッグ又はフィルム壁に接合される。これは、プラスチック部分が、クランプ作用によってフィルムに溶接、結合又は接合されることを意味するものと理解されたい。付加的な固定方法は、これらがフィルム壁への機械的結合において耐荷重結合をもたらす場合は、同等のものであると考えることができる。具体的には、組み込まれたプラスチック部分によって、バッグを固定システム又は拘束システムに結合することができる。これは、曲げ剛性プラスチック部分とバッグのフィルム壁との間の結合が、例えばバッグを吊るされた状態又は部分的に吊るされた状態で貯蔵できるように、安定でなければならないことを前提とする。
【0029】
封止を形成し、バッグの外周線に組み込まれたアクセス・ポートと、バッグの機械的固定及び/又は拘束のために付加的に組み込まれた曲げ剛性部分とが、別々の結合領域によってバッグのフィルム壁に有利に結合される。これにより、アクセス・ポートの周りの外周線の封止領域が、静水学的充填圧力に起因する機械的応力のみを受けることを確実にすることが可能になる。しかしながら、封止領域は、例えばバッグの吊り下げ貯蔵が原因で生じる、封止領域にかかるフィルムの張力による機械的応力を受けない。その結果、曲げ剛性プラスチック部分とフィルム壁の間の結合は、封止機能を実現するように精密に生成する必要がなく、これは有利なことであり、吊り下げ貯蔵の場合にも、またこれらの接合領域に結果として生じる張力があっても、そうした不浸透性が保持される。
【0030】
一実施形態において、アクセス・ポート又は付加的なポート、例えばベント・ポート(vent port)が、溶接/接着によって外周線に組み込まれる。この外周線を超えて突出するフィルム区分を、曲げ剛性プラスチック部分に溶接又はクランプ又は接着して、封止領域及び拘束領域がバッグの異なる区域上で作用するようにすることができる。
【0031】
曲げ剛性プラスチック部分は、付加的な機能ユニットを含むことができる。これは、付加的な流体をバッグの内部に導くため、又は流体を回収若しくは加える際にバッグのガス抜き(venting)/通気を可能にするための別のアクセス・ポートを収容するように準備することができる。この場合、各アクセス・ポートに、例えば、注入器によって貯蔵される透析液の付加的成分を供給できるように、隔膜を備えることができる。さらに、バッグの滅菌ガス抜き及び充填のために、アクセス・ポートに疎水性フィルタを含ませることもできる。
【0032】
バッグ・フィルムとポートとの間の接合部を生成するための好ましい方法として溶接法が推奨される。バッグ構成要素の類似の接合効果は接着結合によって達成可能であるが、工業的生産の観点からは溶接が好ましい。バッグの外周線への管状アクセス・ポートの溶接もまた、溶接法によって行われることが好ましい。また、溶接法は、特許文献6に記載されるようなレーザビーム溶接法を含む。同様に、ポートを所定位置に溶接することに関して特許文献2の技術を参照することができる。
【0033】
ポートの封止溶接と、機能性曲げ剛性プラスチック部分の溶接との分離は、特に大容量のバッグに関連する。透析液で充填された、5リットルの容積を有するバッグは、特に透析の分野において提供される。これらのバッグが患者の治療の場所に吊るされると、フィルム材料は充填されたバッグの固有重量のために非常に大きい機械的応力を受ける。従って、本発明による目的は、特に、例えば腹膜透析に使用されるような2リットルを上回るバッグサイズに関連する。これはまた、腹膜透析、血液透析又は血液ろ過における透析液又は補液のために使用される5リットルのバッグサイズに関連する。透析において、複数の透析治療ステーションに透析液を一元的に供給するための最大500リットルまでのバッグサイズを供給するための周知の構想がある。緊急透析においては、最大120リットルまでのバッグ容積を準備することができ、これらのバッグは、透析治療ステーションに結合される可搬式タンク内に貯蔵される。特定的には、封止外周線の溶接と曲げ剛性プラスチック部分の溶接が別個に行われるバッグは、5乃至120リットルのサイズのバッグに関連する。30乃至90リットル、特に好ましくは45乃至75リットルの容量を有するバッグサイズが好ましい。
【0034】
封止外周線内のポートの別々の溶接と、別々に溶接された曲げ剛性プラスチック部分内のポートの収容を別々に行う技術的利点は、特に、バッグがマルチチャンバ・バッグとして設計されるときに明らかになる。この場合、ポートは、チャンバの内部領域をバッグの外部領域と結合することができ、この方法で、バッグに溶接された曲げ剛性プラスチック部分によって複数のポートを収容することができる。チャンバは、様々に設計することができる。一実施形態において、チャンバが内側バッグから形成され、この内側バッグを囲むバッグが2つの付加的なチャンバを形成する。内側チャンバ又は外側チャンバがさらに区画に細分される可能性もある。区画は、好ましくは溶接部から成る境界線によって分割される。別の好ましい実施形態において、境界線は、少なくとも幾つかの区分における剥離シーム(peel seam)から成る。
【0035】
この文脈において、剥離可能な溶接結合部は、熱処理により互いに接着効果を及ぼす対をなす2つの接合部の接合部位であると理解されたい。本願では、これらの対をなす接合部は、バッグの2つの対向するフィルム片であり、これらは、溶接プロセスにおいて、熱の作用及び接触圧力によって、溶接ジョー内で互いに接合される。剥離シームを開放できる力は、溶接温度により決定される。剥離シームは、フィルム材料を完全に破ることなく、力の作用によって再び開放できる接着結合部であると理解されたい。特別な実施形態においては、剥離接合部は、力が加えられたときに多層フィルム積層体の部分的層間剥離を生じる結合部を指すとも理解されたい。こうした場合、層間剥離により、フィルム材料が完全に破れることがないということが重要であり、フィルム材料が完全に破れると、バッグが使用不能になる。
【0036】
溶接された曲げ剛性プラスチック部分は、各々がバッグの複数のチャンバ又は区画への結合を確立する複数のポートを受けることができるように作製されることが好ましい。従って、このことは、複数のポートが1つのプラスチックバッグに結合されることの利点をもたらす。この利点は、特に、バッグがプラスチック部分によって拘束固定され、且つ、ポートが、例えば、配管、アダプタなどの付加的な流体伝導手段に結合されるときに明らかになる。具体的には、曲げ剛性プラスチック部分は、全ての実施形態において付加的な機能を有利に組み込むことができる。例えば、付加的な物体、例えば配管などの付加的な物体を拘束することができる。さらに、プラスチック部分の区分を分割線で分離することができ、それにより、プラスチック部分の区分が裂けてバッグが既に使用済みであることを示すことが可能である。
【0037】
フィルム壁と曲げ剛性プラスチック部分の間の結合領域については、この結合部を封止結合部として設計する必要はない。生産技術の観点から、この結合部、例えば、溶接され又は接着され又はクランプされた結合部が、安定しており、充填されたバッグの荷重による全ての機械的力を吸収することができるように設計されることのみを有利に確実にする。これは、特に、曲げ剛性プラスチック部分によりバッグを固定する際に作用する力に言及するものである。バッグの固定が、バッグが自由に吊り下げられた状態で支持され、且つ、バッグに溶接された硬質プラスチック部分によって担持されるように見えることがある。従って、硬質プラスチック部分には、補完的保持装置と係合する小穴又は保持レールが備えられる。保持要素を曲げ剛性プラスチック部分に組み込む利点は、特に、それを非対称的に設計するものである。従って、バッグを保持するためのバッグの保持要素及び補完的保持装置は、特定の関係においてのみ保持係合状態にすることができる。これにより、透析治療ステーションの結合部分におけるバッグの適切な固定又は適切な結合を可能にすることが確実になる。
【0038】
非常に大きいバッグを用いる場合、バッグに溶接された曲げ剛性プラスチック部分による拘束に加えて、さらに支持装置が設けられ、この支持装置は、フィルム壁と曲げ剛性溶接部分との間の結合部に作用する力を減らすために、バッグを囲み、少なくとも幾つかの区分内に支持する。
【0039】
弾性伸縮性フィルム材料が、5リットルから120リットルまでの間の大容量実施形態においてバッグにより使用されるのが有利である。バッグを充填する際、バッグの容量は、バルーンを膨らませるのと同じように充填量の増加に伴って増加する。こうした弾性伸縮性フィルム材料の使用は、より少ないフィルム材料を用いて大容量の充填バッグを利用できるという利点を有する。従って、バッグが、伸長されていない状態で5リットルの容積を有し、充填された状態で60リットルの容積を有することが可能になる。好ましくは本明細書で使用できるフィルム材料は、本明細書で全ての詳細が明示的に参照される特許文献1に記載されるものである。
【0040】
本発明による目的は、伸縮性フィルム材料を用いたバッグの設計において特に重要である。バッグの伸長により、フィルムが薄化される。従って、そうしたフィルム材料の選択は、封止溶接の実行において高い精度を要求する。この点で、溶接部を機械的に耐荷重にすると同時に封止するように設計することは特に難しい。従って、本発明によると、封止機能を担う溶接領域が、バッグの機械的拘束を担う溶接領域から分離される。
【0041】
幾つかの実施形態においては、上述の曲げ剛性プラスチック部分の保持に加えた付加的な機能のために、非封止溶接領域を使用することが可能である。これは、特に、曲げ剛性プラスチック部分とフィルム区分との間の結合を形成する領域に、溶接する又は接着する又はクランプすることによって情報担体(information carrier)が接合される実施形態において与えられる。情報担体は、バッグ及びバッグ内に収容される製品についての情報を提供する印刷されたフィルム片として具体化することができる。情報担体は、読み取り装置によって光学的又は磁気的又は誘導的に処理することができる機械可読情報を含むことができる。光学的情報伝送の例としては、例えば、ドットマトリクスコード、並びにカラーコード等の機械可読バーコード又はピクセルコードが挙げられる。磁気伝送は、磁気ストリップ上の情報の出力によって達成することができる。また、一実施形態において情報担体上でバッグと関連付けることもできるRFID技術による誘導情報伝送も周知である。別の実施形態において、情報担体は、取り外し可能手段によって、バッグ、及び/又はフィルムと曲げ剛性プラスチック部分との間の非封止領域に結合される。取り外し可能手段は、例えば、情報担体の取り外しを可能にする穴の開いたフィルム区分を含むことができる。代替的に、フィルム型情報担体が剥離結合によってバッグに結合される。この場合、情報担体は、非封止結合領域とは別個に配置することもできる。
【0042】
本発明による目的はまた、封止溶接領域と機械的耐荷重溶接領域が互いに分離された、バッグを製造する方法を含む。本発明による方法においては、平坦なフィルムが上下に平行に配置され、外周線に沿って溶接すること又は接着することによって互いに接合される。ここでの使用には、溶接法が好ましい。バッグが管状フィルムに基づいて構成される場合、バッグを生成するために平坦化されたフィルム管が使用され、上部フィルム区分は下部区分に平行に且つ向かい合うようにされる。外周線を生成するために、フィルム管を両側で溶接する又は接着する必要はない。この場合、平坦化された状態に形成されたフィルム折畳み部が外周線の一区分を形成する。
【0043】
次に、好ましくは管ポートを用いて、接合されるフィルムの間にアクセス・ポートが配置される。2つのフィルムの結合外周線を生成することにより、管ポートが外周線内に封止取り付けされる。例えば、超音波溶接、ミラー溶接、接触溶接又はレーザビーム溶接を用いて、ポートが組み込まれた封止外周線を生成する。
【0044】
別のステップにおいて、曲げ剛性プラスチック部分がバッグのフィルム区分に結合される。そうするために、ポートが外周線に組み込まれる領域において突出するフィルム区分が使用される。プラスチック部分が突出するフィルム区分に結合され、これは、溶接技術、接着技術又はクランプによって達成することができる。好ましい接合方法は、溶接法を含む。プラスチック部分を、ポートを封止密閉する外周線のすぐ近くに配置することができる。
【0045】
曲げ剛性プラスチック部分は、その場で溶接されるポートを受け入れるように作製することができる.例えば、1つ又はそれ以上のポートをプラスチック部分の中空通路に挿入することができる。ポートと曲げ剛性プラスチック部分のレセプタクル(receptacle)との間の結合は、接着、熱ブロッキング、又は溶接、特にレーザビーム溶接によって行うことができる。熱ブロッキングとは、熱の影響下で管ポートの材料と曲げ剛性プラスチック部分を結合する方法である。特に、「曲げ剛性プラスチック部分上にポートを受け入れる」とは、ポートと曲げ剛性プラスチック部分が一体の構成要素を形成することを意味することも理解される。ポート区分自体は、曲げ剛性プラスチック部分の材料で作成することができる。
【0046】
一実施形態において、曲げ剛性プラスチック部分のポート受入れ領域は、針で穿孔することができる入口ポートを形成するための隔膜を含むことができる。別の受入れ領域は、フィルタ、特に、バッグを充填するとき又は流体を回収するとき殆ど滅菌状態でバッグを通気するための疎水性フィルタを含むことができる。このフィルタは、微生物又は内毒素の移送を効果的に排除する滅菌フィルタとして設計される。
【0047】
本明細書では本発明による目的を記述する一連の製造ステップを記述するが、これは、異なる順序で行うことと完全に同等であると考えるべきである。特に、ポートが最初にバッグのフィルム区分に結合され、次いで曲げ剛性プラスチック部分の受入れ領域に結合されるか、又はその逆であるかは問題ではない。後者の場合、第1のステップにおいて管ポートが、接着接合、ブロッキング又は溶接によって曲げ剛性プラスチック部分の受入れ領域に結合される。別のステップにおいて、この組み立てられた部分がフィルム材料に溶接される。そうする際に、組み立てられた部分が、上下に配置されたフィルム層の間のポート端部によって位置決めされる。次に、曲げ剛性プラスチック部分がフィルムに接合される又はポートを封止する封止外周線を最初に生成する製造ステップが行われる。
【0048】
工業的生産の観点から、曲げ剛性プラスチック材料とフィルムとの間の結合領域が封止するように設計されない場合が好ましい。例えば溶接結合などの封止結合では、高い製造精度が必要とされる。湾曲面に溶接される硬質部分又は管ポートを囲むようにフィルム区分を正確に引き伸ばして、封止を形成する必要がある。この理由のために、曲げ剛性プラスチック部分とフィルムとの間の溶接結合が、材料の引き伸しを伴わない溶接を迅速に行うことができる区分にのみ使用されれば十分である。従って、フィルム壁及びプラスチック硬質部分の平坦な面、及び平行に位置合わせされた平坦な面だけが溶接される。プラスチック部分内のポートの受入れ領域は、溶接から除かれることが好ましい。
【0049】
本発明による方法は、勿論、マルチチャンバ・バッグのためにも、特に、内側バッグが第1の容量を定め、外側バッグ、即ち内側バッグを囲むバッグが第2の容量を、そして随意的に第3の容量を形成する、いわゆる「バッグ・イン・バッグ」構造のためにも用いることができる。この場合、上下に層状にされた4つのフィルムが用いられると仮定し、下層のフィルムは管状フィルムの半分であると理解することもできる。この構想はまた、一方が他方の内部に配置された2つの平坦化された管状フィルムが、上下に配置された一連の4つのフィルム層を生じさせることを意味すると理解される。同様に、平坦化された管状フィルム及び2つの個々のフィルムが一連の4つのフィルムを生じさせる。別のステップにおいて、ポートは、完成したバッグのチャンバ領域に既に割り当てられているように、フィルムの間に配置される。従って、1つのポートを第1のフィルムと第2のフィルムとの間に、又は第2のフィルムと第3のフィルムとの間に、又は第3のフィルムと第4のフィルムとの間に配置することができる。次に、前述のように、封止外周線が、内部に封止されたポートを有し、この領域内で4つのフィルム及びそれぞれのポートが共通外周線によって接合されるように設計される。従って、これにより、複数のチャンバを有するバッグがもたらされ、それぞれの所望の実施形態に応じて、各チャンバにはアクセス・ポートが備えられる。
【0050】
この外周線又は結合部の実施形態により、別の機能性フィルム片をプラスチック部分とフィルム壁との間に結合することができる。その場所において、判読可能な形態又は機械可読の形態で製品についての情報を含む情報担体を適用することが有利であることが分かっている。特に、弾性伸縮性フィルムを有するバッグが使用されるとき、バッグが充填され、フィルムが伸長されたときに印刷イメージが損なわれるので、バッグの領域に判読可能な情報を印刷することはできない。従って、情報担体を別個にバッグに適用し、フィルムの伸長がそれに何ら影響を及ぼさないようにする必要があることが分かっている。特に、例えば、バーコード、ドットマトリクスコード、磁気ストリップ又はRFIDチップとして、書面形式の情報を含む適用されたフィルムを前面又は裏面上に設けることができる。外周線の結合又はプラスチック部分とフィルム壁との間の結合領域への結合は、情報担体を取り外すことができ、例えば患者のカルテ情報を治療記録に挿入することができるように、剥離可能とすることができ、又は接着接合で構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】本発明によるバッグ、特に、外周線内に密封収容されたポートと、それとは別個に組み込まれた曲げ剛性プラスチック部分とを有するマルチチャンバ・バッグの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1に概略的に示すように、バッグは、接合外周線(エッジ)108によって境界付けられ、液密方式で接合される、上部外壁102a及び下部外壁102b(図示せず)を示す。好ましいバージョンにおいて、102a及び102bはバッグの上部及び下部フィルムであり、封止外周線108は、恒久的接合溶接部によって形成される。
【0053】
バッグは、透析液を調製するための濃縮物で充填される第1の区画A及び付加的な区画C2を有する。区画A及びC2は、ここで示される実施形態においては少なくとも幾つかの区分に剥離可能な分割線から成る分割線109aにより、閉じた外周線に沿って囲まれる。区画A及びC2の内容物は、付加的な分割線109bによって互いに分離される。付加的な分割線109bは、恒久的溶接線、部分的に半恒久的な溶接線、又は剥離シームから構成することができる。分割線109a及び109bは、剥離シームとして具体化され、剥離シーム区分の粘着性一体構造を形成することが好ましい。
【0054】
図1による例示的な実施形態は、接続ポート106が、バッグ内の第1の端部106b及びバッグ101の外部の付加的な端部106aを介して、バッグの充填チャンバ110をバッグの外部に接続する点でも特徴付けられる。ポート106は、封止外周線108において、溶接接合部によって液密方式で溶接区域120に取り付けられることが好ましい。さらに、ポート106は、溶接、接着、又は封止ブロックによって、曲げ剛性プラスチック部分122の受入れ領域121により収容される。流入希釈剤に流体の乱流を生成するために、手段106cが、ポート106の端部106bに設けられることが好ましい。これらの手段は、乱流生成ノズルとして又は乱流生成フリットとして具体化することができる。さらに、ポート106は、その長手方向範囲においてバッグの内部を貫通する管体から成る。従って、充填プロセスにおいて、バッグが直立して貯蔵されたとき、例えば、バッグを曲げ剛性プラスチック部分122を通って保持レール上に収容することにより、バッグが下方から充填され、内部充填圧のために、区画A、B、C1、C2が、同時にAとB、次にC1とC2の順序で開かれることが保証される。
【0055】
バッグの外部の第1の端部107a及び別の端部107bを有する別のポート107は、使用済み医療用流体、好ましくは使用済み透析液を、バッグ・システムの別のチャンバに戻す働きをする。ポート107は、ここではバッグの内部の管体として設計され、例えば、バッグを曲げ剛性プラスチック部分122の保持レール上に収容することにより、バッグが吊り下げ状態で貯蔵されるときに、長手方向範囲に沿ってバッグを貫通するように設けられる。溶接区域111において、管体107は、バッグ101の外周線108aを貫通し、別のチャンバ(図示せず)に通じる。区域111は、バッグを上部境界面102aと下部境界面102bとの間に固定し、溶接外周線108の一部分である液密溶接位置とすることができる。チャンバ(図示せず)は、被覆容器、好ましくは、容器システム101の一体構成要素であるバッグである。これは、使用準備済液体を保持するバッグが、使用準備済液体を保持するバッグによって覆われる「バッグ・イン・バッグ」構造をもたらす。
【0056】
さらに、
図1の実施形態は、閉じた外周線109cに沿った別の分割線109cに囲まれる1組の濃縮物チャンバB、C1を示す。別の分割線109dが、濃縮物チャンバB及びC1の内容物を分離する。好ましい実施形態において、剥離シームとして具体化される線109c及び109dは、互いの中に延びる剥離シーム区分の一体構造を形成する。
【0057】
例示的な実施形態において、区画Bは、粉末形態及び/又は無水形態又は液体形態のブドウ糖濃縮物を含む。
【0058】
別の区画C1は、区画A及びBの濃縮物と混合できない、即ち、劣化する傾向を有する又は望ましくない相互作用を引き起こす濃縮物を収容する。
【0059】
この実施形態はまた、好ましくは恒久的溶接部から成る外周線108を示す。付加的な恒久的溶接線である区分108a及び108bが、容器の内容物又はバッグの内容物を境界付け、内部空間の傾斜した底面を形成する。この設計は、流体乱流を生成するための手段106cのために、流入する希釈剤の流れに乱流を生成するのを促進し、従って、区画A、B、C2及びC1からの濃縮物の溶解プロセスを促進する。境界線108c及び108dは、現場容器(field container)、特に、充填された状態のバッグに付加的な安定性を与える。これは、含まれる量に起因する内圧が外周線108に張力効果を及ぼすことがある大容量容器にとって特に重要である。5乃至120リットル、40乃至80リットル、特定的には60リットル±15%の容積を有する大容量バッグが、この意味での容器であると理解されたい。
【0060】
一実施形態において、充填チャンバがポート106を通して充填され、区画A、B、C1、C2からの濃縮物を溶解する。調製された溶液を回収するために、透析治療又は他のプロセスのための内容物が、回転ホース・ポンプ又はダイアフラム・ポンプなどの外部ポンプ手段によって取り出される。取り出された液体を使用した後、液体はポート107を通り、ポートの端部が外側被覆バッグの容積と流体接続するように反対側のフィルム内の凹部113を通ってバッグ・システムに戻される。
【0061】
図1はまた、ポート端部107a、106aが付加的な流体案内手段、この場合には管140、140aに結合されることも示す。これら管は、それらの端部に、透析液を透析機などの別の流体処理装置と流体結合するために設けられるコネクタ部分123を有する。
【0062】
ベント・ポートは、124及び125と表記され、125は、例えばバッグの充填チャンバ110に結合することができ、他方、124は被覆バッグに結合される。バッグ101のチャンバ110がポート106を通して充填されると、余分な空気は、ベント・ポート125を通って逃げることができる。使用済み流体がポート107を通して被覆バッグ(図示せず)に戻されると、ポート124を通して必要な通気を行うことができる。ベント・ポート124、125は、封止外周線を貫通して封止位置120c及び120bに達し、曲げ剛性プラスチック部分122により保持される。このプラスチック部分は、疎水性膜124a及び125bのための受入れ領域を含み、その結果、殆ど滅菌状態の下でチャンバの通気を達成することができる。
【0063】
4つのポート106、107、124、125が、位置120、120a、120b、120cで外周線を通って封止を形成し、曲げ剛性プラスチック部分122によって保持されることが、全体として明らかである。曲げ剛性プラスチック部分自体は、溶接スポット126、126a、126b、126cでフィルム102a及びフィルム102b(図示せず)に溶接される。これにより示されるように、溶接区域は透過性ではない。
【0064】
内側バッグのフィルム材料の貫通開口部は、116、117、118、119と表記され、周囲バッグ(図示せず)がポート107及び開口部113を通して使用済み液体で充填されると、周囲バッグが一様に充填されるようにする必要がある。
【0065】
図2は、本発明によるバッグの別の図を示す。この図には、外側バッグが示されている。バッグ・システムは、内側バッグ及び外側バッグを含み、部分的に充填された状態にある。この図は、上部フィルム202cを示し、これは裏面フィルム202d及び外周線208に沿った結合部と共に周囲バッグの閉鎖容量を定める。外側バッグの内部及び内側バッグ(図示せず)の内部へのアクセスは、ポート206、207、225、224を通して確立される。ポート206、207は液体を充填し、回収するための流体ポートである。ポート225及び224は、充填及び回収プロセス中の滅菌充填及び通気のためのアクセスである。ポート206は、内側バッグへのアクセスを与え、ポート207は内側バッグを囲む外側バッグへのアクセスを与える。同様に、ポート225は内側バッグのためのベント・ポートであり、224は外側バッグを通気するためのポートである。これらのポートは、位置220、220a、220b、220cにおいて外周線208に組み込まれ、位置221、221a、221b及び221cにおいて曲げ剛性プラスチック部分によって収容される。曲げ剛性プラスチック部分は、例えば溶接によって、外周線208を超えて突出するフィルム区分227に接続される。ポート受入れ領域221、221a、221b、221cは、溶接から除外される。
【0066】
図2は、ポート端部207a、206aに結合されたホース(図示せず)を受け入れるためのホース・クリップを示す。対応する管体は、
図1では140、140aと表記される。プラスチック部分222は、射出成形法で作成されることが好ましい。従って、プラスチック部分の一作業操作の射出成形で、複数の機能ユニットをプラスチック部分に組み込むことが可能である。具体的には、これはまた、プラスチック部分の長手方向広がりのためにU形状断面を有するプラスチック部分をもたらす。この実施形態において、プラスチック部分は、230で示されるようにU形状保持レールとなる。この保持レールは次に、相補的形状の保持装置に適用することができ、次いでバッグが透析治療ステーションの受入れユニット内に固定される。例えばポート及びホース・クリップなどのプラスチック部分の付加的な機能ユニットと組み合わせて、プラスチック部分の非対称設計を、適切な配置で実現することができる。この文脈における非対称とは、プラスチック部分の鏡像を、回転及び移動によって元の像と一致するように形成できないことを意味する。
図2に示されるように、プラスチック部分222の幾何学的コード化は、バッグ及びプラスチック部分を、ここでは示されない一義的にのみ取り付けることができるように確立することができる。これは、特にバッグ誤操作を防ぐために重要である。
【0067】
図2において、情報担体が概略的に示され、228と表示される。この情報担体は、フィルム型材料から成り、結合区域228aを介して溶接区域226の一方の側のみに接合される。フィルム材料は印刷することができ、一方の側のみに設けられる締め具によって折り畳むことができる。結合区域228aは、例えば接着接合部又はブロック接合部又は剥離シーム接合部が228のために選択される場合、取り外し可能とすることができる。
【符号の説明】
【0068】
101:バッグ(容器システム)
102a、102b、202c、202d:フィルム
106、107、206、207、224、225:ポート
106a、106b、107a、107b、206a、207a:端部
106c:手段
108、108a、109c、208:外周線
108c、108d:境界線
109a、109b、109c、109d:分割線
110:充填チャンバ
111:溶接区域
113:開口部
116、117、118、119:貫通開口部
120:溶接区域
121:受入れ領域
122:曲げ剛性プラスチック部分
123:コネクタ部分
124、125:ベント・ポート
124a、125b:疎水性膜
126、126a、126b、126c:溶接スポット
140、140a:管
221、221a、221b、221c:ポート受入れ領域
222:プラスチック部分
226:溶接区域
228:情報担体
228a:結合領域
230:保持レール
A、B、C1、C2:区画