【実施例】
【0031】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。(以下、光硬化性組成物を単に組成物と呼ぶ。)
【0032】
組成物を調製するために下記成分を準備した。
(A)成分:スチレン重合体とエチレン/ブチレン重合体のブロック共重合体
・スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンの骨格を有するブロック共重合体(G1726 クレイトンポリマージャパン株式会社製)
・無水マレイン酸変性されたスチレン重合体とエチレン/ブチレン重合体のブロック共重合体(FG1901X クレイトンポリマージャパン株式会社製)
(B)成分:炭化水素基と(メタ)アクリル基を1有する(メタ)アクリルモノマー
・イソボルニルアクリレート(ライトアクリレートIB−XA 共栄社化学株式会社製)
・イソオクチルアクリレート(IOAA 大阪有機化学工業株式会社製)
・ラウリルアクリレート(ライトアクリレートL−A 共栄社化学株式会社製)
・イソステアリルアクリレート(S−1800A 新中村化学工業株式会社製)
(B’)成分:(B)成分以外の(メタ)アクリルモノマー
・メトキシジプロピレングリコールアクリレート(ライトアクリレートDPM−A 共栄社化学株式会社製)
多官能(メタ)アクリルモノマー
・トリメチロールプロパントリアクリレート(A−TMPT 新中村化学工業株式会社製)
・ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(ライトアクリレートDCP−A 共栄社化学株式会社製)
・2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート(ライトアクリレートBEPG−A 共栄社化学株式会社製)
(C)成分:2以上のチオール基を有する化合物
・ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(PEMP−20P SC有機化学株式会社製)
(D)成分:光開始剤
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE 184 BASF社製)
充填剤
・ジメチルジクロロシランで表面処理したアモルファスシリカ(AEROSIL R976 日本アエロジル株式会社製)
【0033】
[実施例1〜6、比較例1]
実施例1〜6と比較例1の調整を行った。(A)成分、(B)成分およびその他の(メタ)アクリルモノマーを秤量して攪拌釜に投入し、攪拌器にて30分間攪拌して均一にする。その後、(C)成分をさらに秤量して攪拌釜に投入し、さらに30分間攪拌する。最後に、(D)成分を秤量して攪拌釜に投入し、30分間減圧脱泡攪拌を行う。詳細な調製量は表1に従い、数値は全て質量部で表記する。また、表1には(B)成分のみの合計を「(B)成分の合計」として、(B)成分と(B’)成分とその他の(メタ)アクリルモノマーの合計を「全(メタ)アクリルモノマーの合計」として、全ての(メタ)アクリルモノマーの合計を100質量部としたときの(C)成分の添加量を「全(メタ)アクリルモノマー100質量部に対する(C)成分」として記載した。
【0034】
【表1】
【0035】
実施例1〜6、比較例1に対して、外観確認、粘度測定、表面硬化性確認、厚膜硬化性確認、硬度測定(ショアーA)を行った結果を表2にまとめた。
【0036】
[外観確認]
組成物をガラス容器に入れて、目視によりガラス容器が「透明」または「白濁」の確認を行い、その結果を「外観」とする。厚膜硬化性の観点から「透明」であることが好ましい。
【0037】
[粘度測定]
1ccの組成物を採取して、測定用カップに吐出する。以下の条件で、EHD型粘度計(東機産業株式会社製)にて粘度測定を行った。その結果を「初期の粘度(Pa・s)」とする。作業性の観点から、50Pa・s以下が好ましい。
測定条件
コーンローター:3°×R14
回転速度:10rpm
測定時間:3分
測定温度:25℃(恒温槽により温度制御する)
【0038】
[表面硬化性確認]
組成物がガラス容器内に深さ2mmまで入れた状態で、紫外線照射機で積算光量30kJ/m
2を照射してシート状の硬化物を作成する。以下の評価基準により指触にて確認し、「表面硬化性」とする。埃などの付着を防ぐため、表面硬化性は「○」が好ましい。
○:硬化物表面に指紋が残らない
×:硬化物表面に指紋が残る(タックがある)
【0039】
[厚膜硬化性確認]
組成物がガラス容器内に深さ6mmまで入れた状態で、紫外線照射機で積算光量30kJ/m
2を照射してシート状の硬化物を作成する。未硬化物を拭き取り、ノギスにて厚さを測定し、その数値を「厚膜硬化性(mm)」とする。硬化物の硬化状態が均一であるためには、厚膜硬化性が2mm以上あることが好ましい。
【0040】
[硬度測定(ショアーA)]
組成物の厚さを2mmに設定した状態で、紫外線照射機で積算光量30kJ/m
2を照射してシート状の硬化物を作成する。当該硬化物を3層に重ねて6mmの硬化物を作成する。A型デュロメータ(硬度計)の加圧面をシート状硬化物に対して平行に保ちながら、衝撃を伴うことなく速やかに10Nの力で押しつけ、加圧面と試料とを密着させる。測定時に最大値を読み取り、最大値を「硬度(単位無し)」とする。詳細はJIS K 6253に従う。A60以下であれば、環境の温度変化に追従することができる。
【0041】
【表2】
【0042】
実施例1〜6および比較例1の中で、比較例1は外観において白濁している。その原因は明確ではないが、比較例1は、(A)成分100質量部に対して(B)成分が334質量部と最も多く含まれることから、(B)成分の添加量が多すぎることが原因と推測される。実施例6の様に、(A)成分100質量部に対して(B)成分が300質量部以下であれば、外観は透明になる。
【0043】
[実施例7、比較例2〜4]
さらに検証を進めるため、表3に従い実施例7と比較例2〜4を調整した。数値は全て質量部で表記する。(A)成分、(B)成分(比較例の場合は(B’)成分)およびその他の(メタ)アクリルモノマーを秤量して攪拌釜に投入し、攪拌器にて30分間攪拌して均一にする。その後、(C)成分をさらに秤量して攪拌釜に投入し、さらに30分間攪拌する。最後に、(D)成分を秤量して攪拌釜に投入し、30分間減圧脱泡攪拌を行う。また、表3には(B)成分のみの合計を「(B)成分の合計」として、(B)成分と(B’)成分とその他の(メタ)アクリルモノマーの合計を「全(メタ)アクリルモノマーの合計」として、全ての(メタ)アクリルモノマーの合計を100質量部としたときの(C)成分の添加量を「全(メタ)アクリルモノマー100質量部に対する(C)成分」として記載した。
【0044】
【表3】
【0045】
実施例7、比較例2〜4に対して、DMA(動的粘弾性)測定、引張剪断接着強さ測定を行い、その結果を表4にまとめた。
【0046】
[DMA(動的粘弾性)測定]
組成物の厚さを1mmに設定し、積算光量30kJ/m
2を照射してシート状の硬化物を作成する。幅10mmに打ち抜き、テストピースを作製する。DMA装置に取り付けて−40〜100℃の温度範囲で測定を行う。−20℃における貯蔵弾性率、損失弾性率の極大値(ガラス転移点)、tanδの極大値(ガラス転移点)を確認し、それぞれ「E’(×10
8Pa)」、「E”(℃)」、「tanδ(℃)」と表す。また、テストピースが作成できない場合は、「測定不可」と記載する。材質の異なる被着体を接着した際に、高温雰囲気における被着体の熱膨張率の違いに追従するためには、E’における貯蔵弾性率が5.0×10
8Pa以下であり、E”が−30℃以下にあることが好ましい。
【0047】
[引張剪断接着強さ測定]
下記の被着体(1)〜(3)の組み合わせに対して、引張剪断接着強さを測定した。被着体は長さ100mm×幅25mm×厚さ1mmの形状であり、幅25mm×長さ10mmの接着面積を組成物で貼り合わせて、はみ出し部を拭き取った後でクリップにより被着体の端部を固定する。その後、紫外線照射機で積算光量30kJ/m
2を照射して組成物を硬化してテストピースを作成する。テストピースを引張試験器に固定して、50mm/分の速度で引張方向に引っ張って最大強度(N)を測定し、接着面積から計算して「剪断強度(MPa)」とする。好ましくは「剪断強度」が1.0MPa以上であれば、被着体を十分固定することができる。
被着体(1):ポリフェニレンサルフィド樹脂とシクロオレフィンポリマー
被着体(2):シクロオレフィンポリマーとシクロオレフィンポリマー
被着体(3):亜鉛ダイカスト用合金とシクロオレフィンポリマー
・シクロオレフィンポリマー(ZEONEX 480R 日本ゼオン株式会社製)
・ポリフェニレンサルフィド樹脂(サスティールPPS GS−40 東ソー株式会社製)
・亜鉛ダイカスト用合金:ZDC2
以下、被着体(1)〜(3)の測定結果をそれぞれ剪断強度1〜3と呼ぶ。
【0048】
【表4】
【0049】
(C)成分が含まれない比較例2、4は表面硬化性が劣る。また、比較例3と4はE”が−30℃以下であると推測されるものの、硬化物が軟質すぎてテストピースが作成できなかった。また、比較例3の表面硬化性も「×」であった。これは、(B’)成分が含まれていることが原因と推測される。実施例7と比較例2〜4においては、剪断強度1〜3の初期測定値は、1.0MPa以上の数値が出ている。
【0050】
[実施例8〜11]
さらに検証を進めるため、表5に従い実施例8〜11を調整した。数値は全て質量部で表記する。(A)成分、(B)成分およびその他の(メタ)アクリルモノマーを秤量して攪拌釜に投入し、攪拌器にて30分間攪拌して均一にする。その後、(C)成分をさらに秤量して攪拌釜に投入し、さらに30分間攪拌する。最後に、(D)成分を秤量して攪拌釜に投入し、30分間減圧脱泡攪拌を行う。また、表5には(B)成分のみの合計を「(B)成分の合計」として、(B)成分と(B’)成分とその他の(メタ)アクリルモノマーの合計を「全(メタ)アクリルモノマーの合計」として、全ての(メタ)アクリルモノマーの合計を100質量部としたときの(C)成分の添加量を「全(メタ)アクリルモノマー100質量部に対する(C)成分」として記載した。さらに、実施例1〜6、8〜11に対して、DMA(動的粘弾性)測定、引張剪断接着強さ測定を行い、その結果を表6にまとめた。
【0051】
【表5】
【0052】
【表6】
【0053】
実施例1〜6と実施例8〜11について、DMA測定の結果よりE’が
10.0×10
8Pa以下であり、E”が−30℃以下にあることが分かる。また、剪断強度1〜3について、1.0MPa以上の強度が発現していることが分かる。
【0054】
さらに検証を進めるため、表3と表5に記載の実施例7〜10に対して、下記の耐湿試験とヒートサイクル試験を行い、引張剪断接着強さの変化を確認した。ここで、引張剪断接着強さ測定の初期値は、表4と表6の数値を用いる。その結果を表7にまとめた。
【0055】
[耐湿試験]
前記の引張剪断接着強さ測定におけるテストピース作成方法と同様にテストピースを作成する。85℃×85%RHの雰囲気下で、テストピースを500時間放置する。耐湿試験終了後にテストピースを取り出し、テストピースの温度が室温になった後、「剪断強度(MPa)」を測定した。また、初期の剪断強度からの変化を「変化率(%)」とする。剪断強度1〜3に関して、「変化率」は−50〜100%の範囲に入る事が好ましい。
【0056】
[ヒートサイクル試験]
前記の引張剪断接着強さ測定におけるテストピース作成方法と同様にテストピースを作成する。−40℃×30分と80℃×30分を1サイクルとして、テストピースを500サイクル放置する。ヒートサイクル試験終了後にテストピースを取り出し、テストピースの温度が室温になった後、「剪断強度(MPa)」を測定した。また、初期の剪断強度からの変化を「変化率(%)」とする。剪断強度1〜3に関して、「変化率」は−50〜100%の範囲に入る事が好ましい。
【0057】
【表7】
【0058】
(B)成分を使用した実施例7〜10については、剪断強度の変化率がほぼプラスに変化し、マイナスに変化しても−50%を下回ることはない。一方、(B’)成分を含む比較例3は、マイナスに変化すると共にその変化率が−50%を下回る。