(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6369021
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】反射型マスクの製造方法および反射型マスク
(51)【国際特許分類】
G03F 1/48 20120101AFI20180730BHJP
G03F 1/74 20120101ALI20180730BHJP
G03F 1/24 20120101ALI20180730BHJP
【FI】
G03F1/48
G03F1/74
G03F1/24
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-267259(P2013-267259)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-125166(P2015-125166A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松井 一晃
【審査官】
田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−238801(JP,A)
【文献】
特開2009−098369(JP,A)
【文献】
特開2010−109164(JP,A)
【文献】
特開2009−210805(JP,A)
【文献】
特開2012−063699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G03F 1/00−1/86、
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUV光を透過する基板の表面に、EUV光を反射する多層膜と金属化合物を含有するEUV光を吸収する吸収膜を順次積層したマスクブランクに対し、
前記吸収膜上にレジスト膜を形成する工程、
前記レジスト膜にパターン描画を行う工程、
現像によりレジストパターンを形成する工程、
前記レジストパターン以外の前記吸収膜をエッチングする工程、
前記レジストパターンを除去する工程からなる反射型マスクの製造方法であって、
不要なパターンとして吸収膜が残った黒欠陥部を、フッ素系ガスやヨウ素等のエッチングアシストガスを用いたガスアシストエッチングにより除去する工程、
前記ガスアシストエッチングにより前記黒欠陥部を除去した直後に、ガスアシストエッチング部分に、酸化性ガスを吹き付けて酸化皮膜形成による表面処理を行う工程、
ガラス質の珪素有機化合物を含んだデポジションガスを噴きつけながら、集束イオンビームまたは電子ビームを照射して、堆積膜を形成させる工程を有し、
黒欠陥修正後、欠陥修正部のパターン形状の変化を±5%以内に抑制することを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【請求項2】
前記ガスアシストエッチング部分への前記酸化皮膜および前記堆積膜の形成後の基板反射率の変動が1%以内であるように抑制することを特徴とする請求項1記載の反射型マスクの製造方法。
【請求項3】
EUV光を透過する基板の表面にEUV光を反射する多層膜を有し、この多層膜上に、金属化合物を含有してEUV光を吸収する吸収膜をパターン状に有する反射型マスクであって、
前記吸収膜パターンの側面の少なくとも一部に、酸化皮膜が形成され、および前記酸化皮膜を覆う表面に透明な堆積膜が形成されていることを特徴とする反射型マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反射型フォトマスク製造方法に関するものである。特に、エッチングに対し、過剰な反応を示す遮光層材料に対する黒欠陥修正後の表面処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体加工、特に、大規模集積回路の高集積化により、回路パターンの微細化が進められており、その結果、フォトマスクの製造においても、上記微細化に伴い、より微細かつ正確なマスクパターンを描画できる技術が求められている。
【0003】
そのため、反射型マスクの加工においては、より高精度のマスクパターンを形成しなければならず、それにはフォトマスクブランク上に高精度のレジストパターンとエッチングプロセスが必要になる。
【0004】
より微細なパターンを得るために、ドライエッチングによりパターン形成する際に用いられる遮光膜材料として、エッチング選択性の高い遮光膜材料が用いられるようになった。
【0005】
一方、プロセス後のフォトマスクの欠陥には、本来必要なパターンが欠損もしくは欠落しているもの(白欠陥)と、不要なパターンが余剰に存在しているもの(黒欠陥)とがある。黒欠陥の修正方法としては、アシストガスを吹き付けながら集束イオンビーム(FIB)や電子ビーム(EB)を照射して、黒欠陥部をガスアシストエッチングすることにより除去する方法が主流となっている(特許文献1)。
【0006】
前述の様なエッチング選択性の高い遮光膜材料の黒欠陥に対し、ガスアシストエッチングを用いて欠陥修正を行った後しばらくすると、欠陥修正部の遮光層側のエッジが浸食される現象が観察される。これはエッチングに対する遮光膜の反応が過剰で、ガスアシストエッチング後に残留しているエッチングガスに対しても反応していると考えられる。
【0007】
このように、欠陥修正部のパターンに経時的な形状変化があると、露光を行う際、正常なマスクパターンとして、転写されない恐れがある。
【0008】
近年、反射型マスクのパターンの微細化、高精度化に伴い、フォトマスクの黒欠陥を高精度に修正することができる方法が望まれている。パターンの微細化と共に、エッチング選択性の高い遮光層材料が用いられるようになった。前記吸収膜材料に対し、ガスアシストエッチングで欠陥修正をおこなうと、欠陥修正部のパターンに経時的な形状変化が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−189491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、黒欠陥修正後、経時的な欠陥修正部のパターン形状の変化を抑制する反射型マスクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための手段として、本発明は、
EUV光を透過する基板の表面に、EUV光を反射する多層膜と金属化合物を含有するEUV光を吸収する吸収膜を順次積層したマスクブランクに対し、
前記吸収膜上にレジスト膜を形成する工程、
前記レジスト膜にパターン描画を行う工程、
現像によりレジストパターンを形成する工程、
前記レジストパターン以外の前記吸収膜をエッチングする工程、
前記レジストパターンを除去する工程からなる反射型マスクの製造方法であって、
不要なパターンとして吸収膜が残った黒欠陥部を、フッ素系ガスやヨウ素等のエッチングアシストガスを用いたガスアシストエッチングにより除去する工程、
前記ガスアシストエッチングにより
前記黒欠陥部を除去した直後に、ガスアシストエッチング部分に、酸化性ガスを吹き付けて酸化皮膜形成による表面処理を行う工程、
ガラス質の珪素有機化合物を含んだデポジションガスを噴きつけながら、集束イオンビームまたは電子ビームを照射して、堆積膜を形成させる工程を有し、
黒欠陥修正後、欠陥修正部のパターン形状の変化を±5%以内に抑制することを特徴とする反射型マスクの製造方法である。
【0012】
ガスアシストエッチング部分への酸化皮膜および堆積膜の形成後の基板反射率の変動が1%以内であるように抑制することが一層好ましい。
【0013】
本発明による反射型マスクは、
EUV光を透過する基板の表面にEUV光を反射する多層膜を有し、この多層膜上に、金属化合物を含有してEUV光を吸収する吸収膜をパターン状に有する反射型マスクであって、前記吸収膜パターンの側面の少なくとも一部に、酸化皮膜
が形成され、および前記酸化皮膜を覆う表面に透明な堆積膜が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、EUV光の吸収率が高い吸収膜材料の黒欠陥に対して、ガスアシストエッチングを行った直後、表面処理を行うので、ガスアシストエッチング後の経時的なエッチングに対する反応を抑制でき、ガスアシストエッチング部の吸収膜のエッジの侵食を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る黒欠陥に対するガスアシストエッチングの簡略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る黒欠陥に対するガスアシストエッチング後の表面処理方法の簡略図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る黒欠陥に対するガスアシストエッチング後の表面処理方法の簡略図である。
【
図4】(a)ガスアシストエッチング直後、被表面処理基板のウエハ転写結果である。(b)ガスアシストエッチング1時間後、被表面処理基板のウエハ転写結果である。
【
図5】(a)本発明における製造方法に係るガスアシストエッチング直後の被表面処理基板のウエハ転写結果である。(b)本発明における製造方法に係るガスアシストエッチング1時間後の被表面処理基板のウエハ転写結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の反射型マスクの製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、保護膜20上に、吸収膜2がパターン状に形成された反射型反射型マスク1は、吸収膜2が余剰に存在している黒欠陥部8を有している。反射型マスクに用いられる基板は、石英(SiO
2)を主成分とし酸化チタン(TiO
2)を含む材料で形成される。
【0021】
反射型マスクを製造する際、基板上に吸収膜が形成されたマスク上に、レジスト膜を形成し、このレジスト膜にパターン描画および現像を行って、所望のレジストパターンを形成する。そして、このレジストパターンをマスクとして吸収膜をエッチングし、レジストパターンを除去し、吸収膜のパターンを形成するとよい。
【0022】
EUVに対して吸収率の高い物質としては、タンタル(Ta)の窒素化合物(TaN)が好適であり、他の材料として、タンタルホウ素窒化物(TaBN)、タンタルシリコン(TaSi)、タンタル(Ta)や、それらの酸化物(TaBON、TaSiO、TaO)でも良い。また、吸収膜2は金属化合物を含有しており、エッチングに対する反応が過剰である。
【0023】
黒欠陥部8を除去するためには、まず、
図1に示すように、黒欠陥部8に、エッチングアシストガス7を吹き付けながら、集束イオンビームまたは電子ビーム5を照射して、黒欠陥部8に対し、ガスアシストエッチングを行う。
【0024】
エネルギービームとしては、黒欠陥部8のみを局所的にエッチングできるものであれば、特に限定されるものではないが、集束イオンビームまたは電子ビームが好ましい。これらは、高度な微細加工が可能であり、微細な黒欠陥部8にも対応できるからである。
【0025】
集束イオンビームのイオン源としては、Ga、Au−Si−Be、Au、Li、Be等があげられる。また、集束イオンビームのイオン源としては、集束することができるものであれば良いが、通常は、Gaが用いられる。
【0026】
また、エッチングアシストガスとしては、黒欠陥部をエッチングできるガスであれば特に限定されるものではなく、例えば、フッ化キセノン(XeF
2)などのフッ素系ガスやヨウ素等が上げられる。
【0027】
次に、
図2に示すように、ガスアシストエッチング部9周辺に、吸収膜2側面及び表面に含まれる金属化合物を酸化させる酸化性ガス10を吹き付けて、ガスアシストエッチング部9に接する吸収膜2の側面及び表面を酸化させて、酸化皮膜11を形成する表面処理工程を行う。酸化皮膜11は、吸収膜2よりもエッチング反応が鈍いので、ガスアシストエッチング後、ガスアシストエッチング部周辺9に残留しているエッチングガスによる吸収膜2の侵食が抑制され、経時的なパターン形状の変化は抑制される。
【0028】
使用される酸化性ガスは、黒欠陥部に含有される金属化合物を酸化させるガスであれば、特に限定されるものではない。例えば、酸素、オゾン、水蒸気、過酸化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物、及び二酸化塩素などがあり、特に水蒸気が一般的で、取り扱う上での安全性は高い。この、酸化性ガスを使うことによって、エッチングプロセスによりマスクパターンが正常に形成された参照部に対しての反射光強度の差異が小さくなるという効果がある。
【0029】
次いで図3に示すように、ガスアシストエッチング工程直後、
酸化皮膜11を形成したガスアシストエッチング部9周辺に、珪素有機化合物を含んだデポジションガス12を噴きつけながら、集束イオンビームまたは電子ビーム5を照射して、堆積膜13を形成させる。堆積膜13
もガスアシストエッチング部9周辺に残留しているエッチングガスによる吸収膜2の侵食に対する保護膜の役割を果たすため、経時的なパターン形状の変化は抑制される。また、洗浄処理に対する耐性も高くなる。
【0030】
このときの堆積膜13は透明で、かつ、この処理以降の洗浄処理で、物理的または化学的変化が少ないものが望ましい。また、堆積量は、反射型マスクの機能に支障をきたさないように、基板反射率の変動が1%以内になるようにすることが望ましい。
【0031】
また、デポジションガスは、透明な堆積膜を得るためにテトラエトキシシラン(C
8H
20O
4Si)のようなガラス質の珪素有機化合物のガスが望ましい。この材料を用いることにより、局所的、かつ、高温溶融を経ずに透明な堆積膜を形成することができるため、大規模な設備が不要である。
【0032】
図4(a)は、従来の方法でガスアシストエッチング工程を実施した直後の被表面処理基板のウエハ転写後のパターン形状である。参照パターン14aは寸法75nm程度のホールパターンである。それに対し、ガスアシストエッチング部パターン15aは、参照部とするホールパターンのひとつを、ガスアシストエッチングした直後のパターンで、79nm程度のホールパターンである。参照パターン14aとガスアシストエッチング部パターン15aとの寸法を比較すると、ガスアシストエッチング部パターン15aの寸法は参照パターン14aの寸法に対して±5%程度以内である。
【0033】
図4(b)は、従来の方法でガスアシストエッチング工程を実施した1時間後の被表面処理基板のウエハ転写後のパターン形状である。参照パターン14bは寸法75nm程度のホールパターンである。それに対しガスアシストエッチング部パターン15bは、参照部とするホールパターンのひとつを、ガスアシストエッチングを実施した1時間後のパターンで、105nm程度のホールパターンである。参照パターン14bとガスアシストエッチング部パターン15bとの寸法を比較すると、ガスアシストエッチング部パターン15bの寸法は参照パターン14bの寸法に対して30%程度大きい。15aと15bを比較すると、経時的なパターン形状の変化が確認される。
【0034】
一方、
図5(a)は、本発明に係る表面処理実施した直後の被表面処理基板のウエハ転写後のパターン形状である。参照パターン16aは、寸法75nm程度のホールパターンである。それに対し、ガスアシストエッチング後表面処理パターン17aは、参照部とするホールひとつを、ガスアシストエッチング後、本発明に係る製造方法を実施した直後のパターンで、78nm程度のホールパターンである。参照パターン16aとガスアシストエッチング部パターン17aとの寸法を比較すると、ガスアシストエッチング部パターン17aの寸法は参照パターン16aの寸法に対して±5%程度以内である。
【0035】
さらに、
図5(b)は、本発明に係る表面処理実施した1時間後の被表面処理基板のウエハ転写後のパターン形状である。参照パターン16bは寸法75nm程度のホールパターンである。それに対し、ガスアシストエッチング後表面処理パターン17bは、参照部とするホールのひとつを、ガスアシストエッチング後、本発明に係る製造方法を実施した1時間後のパターンで、78nm程度のホールパターンである。参照パターン16bとガスアシストエッチング部パターン17aとの寸法を比較すると、ガスアシストエッチング部パターン17bの寸法は参照パターン16bの寸法に対して±5%程度以内のままである。17aと17bを比較すると、経時的なパターン形状の変化が抑制されることが確認される。
【0036】
反射型マスクの吸収性材料に対して発生していた問題が、このようにエッチング選択性の高い吸収膜材料の黒欠陥に対して、ガスアシストエッチングを行った直後に酸化性ガスや珪素有機化合物を射出し表面処理を行うことによって、ガスアシストエッチング後の経時的なエッチングに対する反応を抑制でき、ガスアシストエッチング部の吸収膜のエッジの侵食を抑制することができるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0037】
1・・・反射型マスク
2・・・吸収膜
20・・・保護膜
3・・・基板
30・・・多層膜
4・・・集束イオンビーム/電子ビーム鏡筒
40・・・導電膜
5・・・集束イオンビーム/電子ビーム
6・・・ガス供給ノズル
7・・・エッチングアシストガス
8・・・黒欠陥部
9・・・ガスアシストエッチング部
10・・・酸化性ガス
11・・・酸化皮膜
12・・・デポジションガス
13・・・堆積膜
14a・・・参照パターン
14b・・・参照パターン
15a・・・ガスアシストエッチング部パターン
15b・・・ガスアシストエッチング部パターン
16a・・・参照パターン
16b・・・参照パターン
17a・・・ガスアシストエッチング後表面処理パターン
17b・・・ガスアシストエッチング後表面処理パターン