特許第6369065号(P6369065)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6369065分散型電源システムの制御装置、パワーコンディショナ、分散型電源システム及び、分散型電源システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6369065
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】分散型電源システムの制御装置、パワーコンディショナ、分散型電源システム及び、分散型電源システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/35 20060101AFI20180730BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20180730BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20180730BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20180730BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20180730BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   H02J7/35 K
   H02J3/32
   H02J7/00 B
   H01M10/44 Q
   H01M10/48 301
   H01M10/48 P
   H02J3/38 130
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-50909(P2014-50909)
(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公開番号】特開2015-177606(P2015-177606A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2017年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085006
【弁理士】
【氏名又は名称】世良 和信
(74)【代理人】
【識別番号】100106622
【弁理士】
【氏名又は名称】和久田 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100125357
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 剛
(72)【発明者】
【氏名】大橋 誠
【審査官】 小池 堂夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−188077(JP,A)
【文献】 特開2012−120419(JP,A)
【文献】 特開2000−102192(JP,A)
【文献】 特開2012−100453(JP,A)
【文献】 特開2010−041883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00−7/12
H02J 7/34−7/36
H01M 10/42−10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を出力する発電手段と、
電力を貯蔵し、前記発電手段の発電量と電力負荷量との偏差に応じて充電され、または放電する蓄電池と、
を備える分散型電源システムの制御装置であって、
前記発電手段による発電量が電力負荷量に対し不足している場合には該不足量に応じて前記蓄電池から放電して前記発電手段による発電量を補完するとともに、前記発電手段による発電量が電力負荷量より多い場合にはその余剰量に応じた電力を前記蓄電池に充電する制御手段と、
所定期間における前記発電手段による発電量の推移の予想値である発電量予想情報と、前記所定期間における前記電力負荷量の推移の予想値である電力負荷量予想情報とから、前記所定期間において前記蓄電池へ充電することが必要な電力量である必要充電量を算出する必要充電量算出手段と、
前記必要充電量に応じて、前記蓄電池への充電量を制御する充電量制御手段と、
を備え、
前記充電量制御手段は、前記所定期間における前記蓄電池への充電量の推移である充電量曲線を算出する充電量曲線算出手段を有し、
前記充電量曲線算出手段は、前記所定期間において前記蓄電池における充電率が最大となる時期と、前記所定期間において前記蓄電池の周囲温度が最高となる時期とを異ならしめる前記充電量曲線を算出し、
前記発電手段は太陽電池であって、
前記発電量予想情報は、少なくとも所定の日一日間における前記発電手段による発電量の推移の予想値であり、
前記電力負荷量予想情報は、少なくとも前記所定の日一日間における前記電力負荷量の推移の予想値であり、
前記発電量予想情報は、前記所定の日一日間のうち、正午前後の時間帯においては前記電力負荷量予想情報より大きな値を有するとともに、午後の所定時刻において、前記電力負荷量予想情報より小さい値を有するようになり、
前記充電量曲線算出手段は、前記蓄電池への前記必要充電量の充電が完了する時期を、前記所定の日における前記所定時刻に設定し、
前記充電量曲線算出手段は、前記所定の日一日間のうち、前記発電量予想情報が、前記
電力負荷量予想情報より大きな値を有する時間帯における、前記発電量予想情報の最大値より小さく、前記電力負荷量予想情報より大きな電力値である最大充電電力を算出し、
前記発電量予想情報が前記電力負荷量予想情報より大きな値を有する時間帯における、前記最大充電電力以下の値を示す前記発電量予想情報と、前記最大充電電力とによって、前記充電量曲線を算出し、
前記最大充電電力は、発電量が最大となる時刻における前記太陽電池による充電量の半分の値を基準に設定されることを特徴とする、分散型電源システムの制御装置。
【請求項2】
前記充電量曲線算出手段は、前記所定の日一日間のうち、前記発電量予想情報が、前記電力負荷量予想情報より大きな値を有する時間帯に含まれ前記蓄電池への充電を開始する時刻である充電開始時刻を算出し、
前記発電量予想情報が前記電力負荷量予想情報より大きな値を有する時間帯における、前記充電開始時刻以降の前記発電量予想情報によって、前記充電量曲線を算出することを特徴とする請求項1に記載の分散型電源システムの制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の制御装置と、
前記発電手段及び前記蓄電池の少なくとも一方と、電力負荷及び系統の少なくとも一方との間で、各々の出力を電圧変換および/または直流交流変換する電力変換装置と、
を備えることを特徴とする分散型電源システムのパワーコンディショナ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の制御装置と、
電力を出力する発電手段と、
電力を貯蔵し、前記発電手段の発電量と電力負荷量との偏差に応じて充電され、または放電する蓄電池と、
を備えることを特徴とする分散型電源システム。
【請求項5】
請求項3に記載のパワーコンディショナと、
電力を出力する発電手段と、
電力を貯蔵し、前記発電手段の発電量と電力負荷量との偏差に応じて充電され、または放電する蓄電池と、
を備えることを特徴とする分散型電源システム。
【請求項6】
電力を出力する発電手段と、
電力を貯蔵し、前記発電手段の発電量と電力負荷量との偏差に応じて充電され、または放電する蓄電池と、
前記発電手段による発電量が電力負荷量に対し不足している場合には該不足量に応じて前記蓄電池から放電して前記発電手段による発電量を補完するとともに、前記発電手段による発電量が電力負荷量より多い場合にはその余剰量に応じた電力を前記蓄電池に充電する、分散型電源システムの制御方法であって、
所定期間における前記発電手段による発電量の推移の予想値である発電量予想情報と、前記所定期間における前記電力負荷量の推移の予想値である電力負荷量予想情報とを入手し、
前記発電量予想情報及び前記電力負荷量予想情報から、前記所定期間において前記蓄電池へ充電することが必要な電力量である必要充電量を算出するとともに、前記所定期間における前記蓄電池への充電量の合計が前記必要充電量になるような、前記所定期間における前記蓄電池への充電量の推移である充電量曲線を算出し、
前記充電量曲線においては、前記所定期間において前記蓄電池における充電率が最大となる時期と、前記所定期間において前記蓄電池の周囲温度が最高となる時期とを異ならしめ、
前記発電手段は太陽電池であって、
前記発電量予想情報は、少なくとも所定の日一日間における前記発電手段による発電量の推移の予想値であり、
前記電力負荷量予想情報は、少なくとも前記所定の日一日間における前記電力負荷量の推移の予想値であり、
前記発電量予想情報は、前記所定の日一日間のうち、正午前後の時間帯においては前記電力負荷量予想情報より大きな値を有するとともに、午後の所定時刻において、前記電力負荷量予想情報より小さい値を有するようになり、
前記充電量曲線においては、前記蓄電池への前記必要充電量の充電が完了する時期が、前記所定時刻に設定され、
前記所定の日一日間のうち、前記発電量予想情報が、前記電力負荷量予想情報より大きな値を有する時間帯における、前記発電量予想情報の最大値より小さく、前記電力負荷量予想情報より大きな電力である最大充電電力を算出し、
前記充電量曲線においては、前記発電量予想情報が前記電力負荷量予想情報より大きな値を有する時間帯において、前記発電量予想情報が前記最大充電電力以下の値を示す時間については前記発電量予想情報に基づき、前記発電量予想情報が前記最大充電電力より大きい値を示す時間については前記最大充電電力に基づき、前記蓄電池への充電量が推移し、
前記最大充電電力は、発電量が最大となる時刻における前記太陽電池による充電量の半分の値を基準に設定されることを特徴とする、分散型電源システムの制御方法。
【請求項7】
前記所定の日一日間のうち、前記発電量予想情報が、前記電力負荷量予想情報より大きな値を有する時間帯に含まれ前記蓄電池への充電を開始する時刻である充電開始時刻を算出し、
前記充電量曲線においては、前記発電量予想情報が前記電力負荷量予想情報より大きな値を有する時間帯において、前記充電開始時刻において前記蓄電池への充電を開始し、前記発電量予想情報に基づき、前記蓄電池への充電量が推移することを特徴とする、請求項6に記載の分散型電源システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置に蓄電池を併設して出力電力の変動を抑制する分散型電源システムの制御装置、パワーコンディショナ、分散型電源システム及び、分散型電源システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題が注目される中、クリーンなエネルギーである自然エネルギーを利用して発電する、自然エネルギー発電装置の普及が進んでいる。この自然エネルギー発電装置においては、出力が天候の変化により大きく変動する場合がある。この出力変動を抑制する対策の一つとして、自然エネルギー発電装置と蓄電池とを組み合わせたシステムが提案されている。このシステムでは、蓄電池でその充電レベルを適正に維持しつつ、システム全体としての急峻な出力変動を抑制し、系統の周波数調整力で緩やかな出力変動を吸収することが検討されている。また、コジェネレーションシステムや燃料電池に蓄電池を併設し、同様の制御を行う検討も行われている。なお、上記のように、自然エネルギー発電装置及び、コジェネレーションシステムや燃料電池などの電源装置と蓄電池とを組み合わせたシステムを、以下において分散型電源システムと呼ぶ。
【0003】
ここで、上述の分散型電源システムにおいては、蓄電池の充放電の制御によっては蓄電池が早期に劣化し、充分な機能を果たせなくなる場合がある。この分散型電源システムにおける蓄電池の劣化には、大きく分けてサイクル劣化と保存劣化がある。前者は充放電回数、充放電深度、充放電電流と相関関係があり、後者は充電状態(以下、SOC:State Of Chargeと呼ぶ)及び温度と相関関係があり、さらに高温時に高SOCの状態が続けば
劣化をさらに早めることが知られている。従来より、特に蓄電池の保存劣化対策として、蓄電池が本来有する充電容量の100%を使用せず、例えば一律に80%までしか使用しないというものがあった。しかし、この対策では蓄電池が有する充電容量を100%使用することができず、最適な制御とは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−198192号公報
【特許文献2】特開2012−75224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の従来技術に鑑みて発明されたものであり、その目的は、電源装置と蓄電池を組み合わせた分散型電源システムにおいて、蓄電池のSOCの管理を最適化することで、蓄電池の長寿命化を可能とする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、電力を出力する発電手段と、蓄電池と、発電手段による発電量が電力負荷量に対し不足している場合には該不足量に応じて蓄電池から放電し、発電手段による発電量が電力負荷量より多い場合にはその余剰量に応じた電力を蓄電池に充電する制御手段と、を備える分散型電源システムに関し、所定期間における発電手段による発電量の推移の予想値と、所定期間における電力負荷量の推移の予想値とから、所定期間において蓄電池へ充電することが必要な電力量を算出し、所定期間における蓄電池への充電量の合計が、算出された電力量と等しくなるように、蓄電池への充電量を制御
し、その蓄電池への充電量は、所定期間において蓄電池における充電率が最大となる時期と、所定期間において蓄電池の周囲温度が最高となる時期とを異ならしめるように制御されることを最大の特徴とする。
【0007】
より詳しくは、電力を出力する発電手段と、
電力を貯蔵し、前記発電手段の発電量と電力負荷量との偏差に応じて充電され、または放電する蓄電池と、
を備える分散型電源システムの制御装置であって、
前記発電手段による発電量が電力負荷量に対し不足している場合には該不足量に応じて前記蓄電池から放電して前記発電手段による発電量を補完するとともに、前記発電手段による発電量が電力負荷量より多い場合にはその余剰量に応じた電力を前記蓄電池に充電する制御手段と、
所定期間における前記発電手段による発電量の推移の予想値である発電量予想情報と、前記所定期間における前記電力負荷量の推移の予想値である電力負荷量予想情報とから、前記所定期間において前記蓄電池へ充電することが必要な電力量である必要充電量を算出する必要充電量算出手段と、
前記必要充電量に応じて、前記蓄電池への充電量を制御する充電量制御手段と、
を備え、
前記充電量制御手段は、前記所定期間における前記蓄電池への充電量の推移である充電量曲線を算出する充電量曲線算出手段を有し、
前記充電量曲線算出手段は、前記所定期間において前記蓄電池における充電率が最大となる時期と、前記所定期間において前記蓄電池の周囲温度が最高となる時期とを異ならしめる前記充電量曲線を算出することを特徴とする。
【0008】
すなわち、本発明においては、分散型電源システムにおいて、所定期間における前記発電手段による発電量の推移の予想値である発電量予想情報と、所定期間における電力負荷量の推移の予想値である電力負荷量予想情報とを入手し、これらの情報から、必要充電量算出手段が、所定期間において蓄電池へ充電することが必要な電力量である必要充電量を算出する。そして、充電量制御手段が、前記必要充電量に応じて、前記蓄電池への充電量を制御する。
【0009】
これによれば、予め、所定期間における発電量の予想曲線と、電力負荷量の予想曲線とから、所定期間において蓄電池へ充電することが必要な電力量を予想し、充電量制御手段は、所定期間においては、必要と予想される電力量のみを蓄電池に充電することができる。そうすると、蓄電池におけるSOCを、必要最低限に抑えることができ、蓄電池に不要な負担をかけることを防止でき、蓄電池を長寿命化することができる。
【0010】
なお、所定期間における前記発電手段による発電量の推移の予想値である発電量予想情報は、例えば、発電手段が太陽電池の場合は、所定期間における日照量の予想情報を入手することで取得できる。また、発電手段が風力発電機の場合は、所定期間における風速の予想情報を入手することで取得できる。また、発電手段が小規模水力発電の場合には、所定期間における雨量の予想情報を入手することで取得できる。また、本発明に係る分散型電源システムが適用される需要家が独自に収集した過去のデータベースを入手することでも取得できる。
【0011】
また、所定期間における電力負荷量の推移の予想値である電力負荷量予想情報は、例えば、一般家庭における前記所定期間の電力消費量の統計データを入手することで取得できる。また、本発明に係る分散型電源システムが適用される需要家の過去の実績データを入手することでも取得できる。
【0012】
そして、本発明においては、前記充電量制御手段は、前記所定期間における前記蓄電池への充電量の推移である充電量曲線を算出する充電量曲線算出手段を有し、
前記充電量曲線算出手段は、前記所定期間において前記蓄電池における充電率が最大となる時期と、前記所定期間において前記蓄電池の周囲温度が最高となる時期とを異ならしめる前記充電量曲線を算出する。
【0013】
すなわち、本発明においては、充電量曲線算出手段が、前記所定期間における蓄電池への充電量の推移である充電量曲線を算出し、充電量制御手段は、この充電量曲線に従って充電量を変化させながら蓄電池に充電を行う。そして、この充電量曲線は、前記所定期間において蓄電池における充電率が最大となる時期と、前記所定期間において気温が最高となる時期とを異ならしめるように設計される。
【0014】
そうすれば、充電池の充電率が高く且つ気温が高いという状況を可能な限り低減できる。これによって、より確実に蓄電池に対する負担が増えることを防止でき、蓄電池を長寿命化することが可能となる。
【0015】
また、本発明においては、前記充電量曲線算出手段は、前記蓄電池への前記必要充電量の充電が完了する時期を、前記所定期間において前記蓄電池の周囲温度が最高となる時期の後に設定することにより、前記所定期間において前記蓄電池における充電率が最大となる時期と、前記所定期間において前記蓄電池の周囲温度が最高となる時期とを異ならしめる前記充電量曲線を算出するようにしてもよい。
【0016】
この場合は、充電量曲線算出手段が、前記所定期間における蓄電池への充電量の推移である充電量曲線を算出する。そして、充電量制御手段は、この充電量曲線に従って充電量を変化させながら蓄電池に充電を行う。そして、この充電量曲線は、蓄電池への前記必要充電量の充電が完了する時期が、前記所定期間において気温が最高となる時期の後になるように設計される。
【0017】
そうすれば、所定期間において気温が最高となる時期には、蓄電池には未だ必要充電量が充電されていないことになる。これによっても自動的に、気温が最高となる時期における蓄電池の充電率を低下させることができる。よって、より確実に蓄電池に対する負担が増えることを防止でき、蓄電池を長寿命化することが可能となる。
【0018】
また、本発明においては、前記発電手段は太陽電池であって、
前記発電量予想情報は、少なくとも所定の日一日間における前記発電手段による発電量の推移の予想値であり、
前記電力負荷量予想情報は、少なくとも前記所定の日一日間における前記電力負荷量の推移の予想値であり、
前記発電量予想情報は、前記所定の日一日間のうち、正午前後の時間帯においては前記電力負荷量予想情報より大きな値を有するとともに、午後の所定時刻において、前記電力負荷量予想情報より小さい値を有するようになり、
前記充電量曲線算出手段は、前記蓄電池への前記必要充電量の充電が完了する時期を、前記所定の日において周囲温度が最高となる時刻より後で、前記所定時刻以前の時刻に設定するようにしてもよい。
【0019】
この場合は、発電手段が太陽電池である場合に着目している。そして、発電量予想情報は、少なくとも所定の日一日間における前記太陽電池による発電量の推移の予想値であり、電力負荷量予想情報は、少なくとも所定の日一日間における前記電力負荷量の推移の予想値である。ここで、少なくとも所定の日一日間とは、少なくとも、蓄電池の充電量の制御を予定している対象の日の例えば、0時から24時の間を含む期間を意味する。よって
、必要に応じ、蓄電池の充電量の制御を予定している対象の日の例えば、0時から24時の間に、次の日の午前中までを加えた期間としてもよい。
【0020】
そして、この場合には、発電量予想情報は、所定の日一日間のうち、正午前後の時間帯においては日照量が増加するため電力負荷量予想情報より大きな値を有するとともに、午後の所定時刻、例えば夕刻において、日照量の減少とともに電力負荷量予想情報より小さい値を有するようになると考えられる。
【0021】
そして、本発明では、充電量曲線算出手段は、蓄電池への必要充電量の充電が完了する時期を、前記所定の日において周囲温度が最高となる時刻より後で、前記所定時刻以前に設定する。これによれば、蓄電池が高温に晒される時刻と、蓄電池のSOCが最高になる時刻とを自動的に異ならしめることができる。よって、蓄電池への負担の増加を抑制でき、蓄電池の長寿命化を図ることができる。
【0022】
また、本発明においては、前記充電量曲線算出手段は、前記蓄電池への前記必要充電量の充電が完了する時期を、前記所定の日における前記所定時刻に設定してもよい。そうすれば、発電量予想情報が、電力負荷量予想情報より大きな値を有する期間を最大限に利用することができ、より効率よく、蓄電池への充電を行うことが可能である。また、蓄電池のSOCが最大になる時刻を、可及的に、蓄電池の周囲温度が最高になる時刻から遠ざけることが可能で、より確実に、蓄電池が高温に晒される時刻と、蓄電池のSOCが最高になる時刻とを自動的に異ならしめることができる。よって、より確実に蓄電池への負担の増加を抑制でき、蓄電池の長寿命化を図ることができる。
【0023】
また、本発明においては、前記充電量曲線算出手段は、前記所定の日一日間のうち、前記発電量予想情報が、前記電力負荷量予想情報より大きな値を有する時間帯における、前記発電量予想情報の最大値より小さく、前記電力負荷量予想情報より大きな電力値である最大充電電力を算出し、
前記発電量予想情報が前記電力負荷量予想情報より大きな値を有する時間帯における、前記最大充電電力以下の値を示す前記発電量予想情報と、前記最大充電電力とによって、前記充電量曲線を算出するようにしてもよい。
【0024】
これは、充電量曲線算出手段が、算出する充電量曲線の、具体的な形状を定めるものである。本発明では、充電量曲線算出手段は、所定の日一日間のうち、発電量予想情報が、電力負荷量予想情報より大きな値を有する時間帯における、発電量予想情報の最大値より小さく、電力負荷量予想情報より大きな電力値である最大充電電力を算出する。そして、発電量予想情報が電力負荷量予想情報より大きな値を有する時間帯における、最大充電電力以下の値を示す発電量予想情報と、最大充電電力とによって、充電量曲線を算出することとした。
【0025】
すなわち、発電量予想情報が、電力負荷量予想情報より大きな値を有する時間帯において、蓄電池への充電量は、発電量予想情報の値から電力負荷量予想情報の値を差し引いた偏差であるところ、本発明では、発電量予想情報の値が最大充電電力より大きい場合には、発電量予想情報の値ではなく最大充電電力から電力負荷量予想情報の値を差し引いた偏差を充電することにした。
【0026】
これによれば、蓄電池への充電量の最大値を抑えることができ、より確実に、蓄電池への必要充電量の充電が完了する時期を、前記所定の日において発電量予想情報が電力負荷量予想情報より小さい値をとるようになる前記所定時刻に設定することができる。また、蓄電池におけるSOCの変化の傾きを低く抑えることができるので、蓄電池の周囲温度が最高になる時刻におけるSOCを低く抑えることができる。これにより、より確実に蓄電
池への負担の増加を防止でき、蓄電池を長寿命化することが可能となる。
【0027】
また、本発明においては、前記充電量曲線算出手段は、前記所定の日一日間のうち、前記発電量予想情報が、前記電力負荷量予想情報より大きな値を有する時間帯に含まれ前記蓄電池への充電を開始する時刻である充電開始時刻を算出し、
前記発電量予想情報が前記電力負荷量予想情報より大きな値を有する時間帯における、前記充電開始時刻以降の前記発電量予想情報によって、前記充電量曲線を算出するようにしてもよい。
【0028】
これも、充電量曲線算出手段が算出する充電量曲線の、具体的な形状を定めるものである。本発明では、充電量曲線算出手段は、所定の日一日間のうち、発電量予想情報が、電力負荷量予想情報より大きな値を有する時間帯に含まれ蓄電池への充電を開始する時刻である充電開始時刻を算出する。そして、発電量予想情報が電力負荷量予想情報より大きな値を有する時間帯における、充電開始時刻以降の発電量予想情報によって、充電量曲線を算出することとした。
【0029】
すなわち、発電手段が太陽電池である場合、前記所定の日において、正午の前後の時間帯においては、発電量予想情報が、電力負荷量予想情報より大きな値を有するが、その時間帯の全域において蓄電池に充電するのではなく、その時間帯のうちの充電開始時間以降の時間のみに集中して、蓄電池に充電する。充電開始時間以降の充電量曲線は、発電量予想情報と一致しても構わない。
【0030】
これによれば、蓄電池への充電期間を、発電量予想情報が、電力負荷量予想情報より大きな値を有する時間帯のうちの後半部分に集中させることができる。一方、発電量予想情報が、電力負荷量予想情報より大きな値を有する時間帯の中央の時間帯と蓄電池の周囲温度が最高になる時間帯とは概略一致することが多い。従って、より確実に、蓄電池の周囲温度が最高になる時刻におけるSOCを低い状態に抑えることが可能となる。これにより、より確実に蓄電池への負担の増加を防止でき、蓄電池を長寿命化することが可能となる。
【0031】
また、本発明は、上記の制御装置と、
前記発電手段及び前記蓄電池の少なくとも一方と、電力負荷及び系統の少なくとも一方との間で、各々の出力を電圧変換および/または直流交流変換する電力変換装置と、
を備えることを特徴とする分散型電源システムのパワーコンディショナであってもよい。
【0032】
あるいは、本発明は、上記の制御装置と、
電力を出力する発電手段と、
電力を貯蔵し、前記発電手段の発電量と電力負荷量との偏差に応じて充電され、または放電する蓄電池と、
を備えることを特徴とする分散型電源システムであってもよい。
【0033】
また、本発明は、上記のパワーコンディショナと、
電力を出力する発電手段と、
電力を貯蔵し、前記発電手段の発電量と電力負荷量との偏差に応じて充電され、または放電する蓄電池と、
を備えることを特徴とする分散型電源システムであってもよい。
【0034】
また、本発明は、電力を出力する発電手段と、
電力を貯蔵し、前記発電手段の発電量と電力負荷量との偏差に応じて充電され、または
放電する蓄電池と、
前記発電手段による発電量が電力負荷量に対し不足している場合には該不足量に応じて前記蓄電池から放電して前記発電手段による発電量を補完するとともに、前記発電手段による発電量が電力負荷量より多い場合にはその余剰量に応じた電力を前記蓄電池に充電する、分散型電源システムの制御方法であって、
所定期間における前記発電手段による発電量の推移の予想値である発電量予想情報と、前記所定期間における前記電力負荷量の推移の予想値である電力負荷量予想情報とを入手し、
前記発電量予想情報及び前記電力負荷量予想情報から、前記所定期間において前記蓄電池へ充電することが必要な電力量である必要充電量を算出するとともに、前記所定期間における前記蓄電池への充電量の合計が前記必要充電量になるような、前記所定期間における前記蓄電池への充電量の推移である充電量曲線を算出し、
前記充電量曲線においては、前記所定期間において前記蓄電池における充電率が最大となる時期と、前記所定期間において前記蓄電池の周囲温度が最高となる時期とを異ならしめることを特徴とする分散型電源システムの制御方法であってもよい。
【0035】
また、発電手段は太陽電池である場合は、
前記発電量予想情報は、少なくとも所定の日一日間における前記発電手段による発電量の推移の予想値であり、
前記電力負荷量予想情報は、少なくとも前記所定の日一日間における前記電力負荷量の推移の予想値であり、
前記発電量予想情報は、前記所定の日一日間のうち、正午前後の時間帯においては前記電力負荷量予想情報より大きな値を有するとともに、午後の所定時刻において、前記電力負荷量予想情報より小さい値を有するようになり、
前記充電量曲線においては、前記蓄電池への前記必要充電量の充電が完了する時期が、前記所定時刻に設定されるようにしてもよい。
【0036】
また、その場合は、前記所定の日一日間のうち、前記発電量予想情報が、前記電力負荷量予想情報より大きな値を有する時間帯における、前記発電量予想情報の最大値より小さく、前記電力負荷量予想情報より大きな電力である最大充電電力を算出し、
前記充電量曲線においては、前記発電量予想情報が前記電力負荷量予想情報より大きな値を有する時間帯において、前記発電量予想情報が前記最大充電電力以下の値を示す時間については前記発電量予想情報に基づき、前記発電量予想情報が前記最大充電電力より大きい値を示す時間については前記最大充電電力に基づき、前記蓄電池への充電量が推移するようにしてもよい。
【0037】
また、前記所定の日一日間のうち、前記発電量予想情報が、前記電力負荷量予想情報より大きな値を有する時間帯に含まれ前記蓄電池への充電を開始する時刻である充電開始時刻を算出し、
前記充電量曲線においては、前記発電量予想情報が前記電力負荷量予想情報より大きな値を有する時間帯において、前記充電開始時刻において前記蓄電池への充電を開始し、前記発電量予想情報に基づき、前記蓄電池への充電量が推移するようにしてもよい。
【0038】
なお、上記した課題を解決するための手段は、可能な限り組み合わせて使用することが可能である。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、発電装置と蓄電池を組み合わせた分散型電源システムにおいて、充電池の充電率が高く且つ気温が高いという状況を可能な限り低減できる。これによって、蓄電池に対する負担が増えることを防止でき、蓄電池を長寿命化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の実施例1における太陽光発電システムの概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施例1における制御装置のシステム構成を示す図である。
図3】従来の充放電量制御の内容を示すブロック図である。
図4】2日間に亘っての太陽電池の発電量と、負荷における電力負荷の時間的変化を示す図である。
図5】実施例1における充電量制御の内容を示す図である。図5(a)は、示した初期日の充電量カーブ及び、電力負荷カーブに重ねて、充電量の変化を描いた図である。図5(b)は、初期日の温度変化と、SOCの変化について示す図である。
図6】本発明の実施例1における充電量制御ルーチンのフローチャートである。
図7】本発明の実施例1における発電予想カーブ算出ルーチンのフローチャートである。
図8】本発明の実施例1における充電量カーブを算出・最適化ルーチン1のフローチャートである。
図9】実施例2における充電量制御の内容を示す図である。図9(a)は、示した初期日の充電量カーブ及び、電力負荷カーブに重ねて、充電量の変化を描いた図である。図9(b)は、初期日の温度変化と、SOCの変化について示す図である。
図10】本発明の実施例2における発電予想カーブ算出ルーチンのフローチャートである。
図11】実施例1及び実施例2における制御装置による充放電量制御のブロック図である。
図12】本発明の実施例における太陽光発電システムの概略構成の別例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。なお、下記の実施例においては、発電手段の例として太陽電池を例にとって説明するが、本発明の適用対象は太陽光発電に限定されるものではない。発電手段は例えば、風力発電機、潮力発電機、地熱発電機、小規模水力発電機、コジェネレーションシステム、燃料電池などでも良い。
【0042】
<実施例1>
図1には、本実施例における分散型電源システムの一例である太陽光発電システム1の概略構成を示す。太陽光発電システム1においては、自然エネルギーとして太陽光エネルギーを利用して発電する発電手段の一例としての太陽電池2が設けられている。太陽電池2の出力は、太陽電池2の直流出力を電圧変換して昇圧するDC/DC変換回路3に入力される。また、DC/DC変換回路3から出力される直流電力は、双方向DC/AC変換回路4によって交流に変換される。この双方向DC/AC変換回路3の出力は、系統8及び負荷9に接続されている。
【0043】
系統8が正常に作動している場合には、太陽光発電システム1は、系統8と連系した連系運転状態になる。そのとき、双方向DC/AC変換回路4は系統8と負荷9に交流電力を出力する。双方向DC/AC変換回路4からの出力電力が負荷9の消費電力よりも少ないときには、不足分が系統8から負荷9に自動的に供給されるようにしてもよい。逆に、双方向DC/AC変換回路4からの出力電力が負荷9の消費電力よりも多いときには、余剰分が系統8に自動的に供給されるようにしてもよい。
【0044】
また、本実施例における太陽光発電システム1は、蓄電池5を備えている。本実施例においては、蓄電池5としてリチウム・イオン電池を用いることを前提に説明を進めるが、
蓄電池5は、例えばNaS電池(ナトリウム−硫黄電池)など、他の種類のものであっても構わない。蓄電池5の出力は双方向DC/DC変換回路6に接続され電圧変換される。双方向DC/DC変換回路6の出力は、DC/DC変換回路3の出力に接続されている。これにより、負荷9の消費電力が太陽電池2による発電電力より多い場合には、蓄電池5から放電される電力を補完することで負荷9の消費電力を充足させる。また、前述のように、太陽電池2による発電量は天候の影響を受けて出力が大きく変動し、系統8の電圧変動や周波数変動といった電力品質への悪影響を与える虞があるので、蓄電池5からの電力供給によって、太陽電池2と蓄電池5の組み合わせにおける発電電力の変動を抑制するようになっている。
【0045】
また、負荷9の消費電力が太陽電池2による発電電力より少なく、蓄電池5の充電量が不充分な場合は、太陽電池2で発電された電力のうち、負荷9に供給されない分は、蓄電池5の充電のために双方向DC/DC変換回路6を通じて蓄電池5に供給される。また、蓄電池5の充電量が不十分であって太陽電池2で発電された電力のうち、負荷9に供給されない分の電力が蓄電池5の充電のための電力として不充分な場合には、系統8から、双方向DC/AC変換回路4、双方向DC/DC変換回路6を通じて、蓄電池5に電力が供給されるようにしてもよい。
【0046】
この蓄電池5からの充放電量の制御は、制御装置7が有する図示しないマイクロプロセッサ及び、マイクロプロセッサ上で実行されるプログラムによって双方向DC/DC変換回路6が制御されることにより実現される。この図示しないマイクロプロセッサ及びプログラムは、本実施例における制御手段に相当する。制御装置7は、後述するPV発電量センサーによってDC/DC変換回路3の出力電力を計測するとともに、負荷量センサーによって負荷9における負荷電力を計測し、その偏差の量に応じて、蓄電池5の充放電量を制御する。なお、図1において破線で示す範囲、すなわちDC/DC変換回路3、双方向DC/AC変換回路4、制御装置7、双方向DC/DC変換回路6を、パワーコンディショナ1aという形で一筐体内に配置してもよい。あるいは、制御装置7だけを独立の装置とし、点線で示す範囲、すなわちDC/DC変換回路3、双方向DC/AC変換回路4、双方向DC/DC変換回路6をパワーコンディショナ1bという形で一筐体内に配置してもよい。ここで、DC/DC変換回路3、双方向DC/AC変換回路4、双方向DC/DC変換回路6のうちの少なくとも一つは、本実施例における電力変換装置に相当する。
【0047】
図2には、制御装置7のシステム構成図を示す。制御装置7は、CPU76、ROM77、RAM78の他、先述のPV発電量センサーとしての電圧センサー71、電流センサー72と、負荷量センサーとしての電圧センサー73、電流センサー74と、を備えており、これらのセンサーからのアナログ出力は、ADコンバーター74によってデジタル化される。また、制御装置7の制御信号は、I/Oインターフェース75を通じて、充放電量制御のために双方向DC/DC変換回路6に入力される。
【0048】
図3には、制御装置7による従来の充放電量制御のブロック図を示す。図3に示すように、従来の充放電量制御においては、太陽電池2による発電量と負荷9の負荷量との偏差と、蓄電池5による充放電量と、の間の偏差が目標値に近づくように、制御ロジックに基づく充放電制御が行われる。この目標値が0の場合には、基本的に系統8との間の電力授受がないように制御されることになる。
【0049】
ここで、太陽光発電システム1における蓄電池5の劣化について説明する。蓄電池5の劣化には、大きく分けて、サイクル劣化と保存劣化の2種類がある。前者は充放電回数、充放電深度、充放電電流と相関関係があり、後者は充電状態(以下、SOC:State Of Chargeと呼ぶ)及び温度と相関関係があり、さらに高温時に高SOCの状態に晒されるこ
とで、劣化が早まることが知られている。本実施例は後者の保存劣化に着目して、蓄電池
5を長寿命化することを実現した。
【0050】
具体的には、蓄電池5を長寿命化するためには、まず、蓄電池5においてSOCが高い状態、例えば蓄電池容量の100%のSOCが長時間継続するようなことは避ける必要がある。特に、その状態が日中の正午など気温が上昇する時間帯において継続することは避けなければならない。これに対し、従来より、本来蓄電池が有する蓄電池容量の100%を使用せず、例えば一律に80%までしか充電しないという対策が行われていた。しかし、この対策では本来蓄電池が有する蓄電池容量を100%使用することができず、効率的な充電量の制御とは言えなかった。また、仮に蓄電池容量が80%であっても、その状態で例えば、真夏の日中を経過すれば蓄電池5の劣化を避けることは困難であった。
【0051】
それに対し、本実施例においては、太陽電池2の発電量が負荷9による電力負荷より大きくなる日中に、太陽電池2の発電量と電力負荷の偏差をそのまま蓄電池5に充電するのではなく、事前に、太陽電池2の発電量が負荷9による電力負荷より大きい時間帯において必要な充電量を算出し、夕刻が近づき日照が低下することで、太陽電池2の発電量と電力負荷の大きさが逆転する頃に、事前に算出された必要充電量が充電されるように充電量を制御する。
【0052】
図4は、本実施例における充電量の制御について説明するための図である。図4は、2日間に亘っての太陽電池2の発電量と、負荷9における電力負荷の時間的変化を示している。図中、t1は初期日の0時を示す。t2は初期日において太陽電池2の発電量が電力負荷を上回る時刻を示す。t3は、初期日において、太陽電池2の発電量がピークとなる時刻を示す。t4は、初期日の太陽電池2の発電量が電力負荷を下回る時刻を示す。また、t5は初期日の24時(二日目の0時)を示す。t6は二日目の太陽電池2の発電量が電力負荷を上回る時刻を示す。t7は、二日目において、太陽電池2の発電量がピークとなる時刻を示す。t8は、二日目の太陽電池2の発電量が電力負荷を下回る時刻を示す。t9は二日目の24時(三日目の0時)を示す。
【0053】
また、図4中、実線で示すのは太陽電池2による発電量のカーブである。この発電量のカーブは、本実施例において発電量予想情報に相当する。図から分かるように、初期日及び二日目の12時ころにピークを迎えている。また、破線で示すのは、負荷9による電力負荷のカーブである。この電力負荷のカーブは、本実施例において電力負荷量予想情報に相当する。そして、初期日について着目すると、t1〜t2は、電力負荷が発電量より多く蓄電池5から放電が行われる時間帯、t2〜t4は、太陽電池2の発電量が電力負荷より多く蓄電池5に充電している時間帯、t4〜t5は、電力負荷が発電量より多く蓄電池5から放電が行われる時間帯であることが分かる。同様に、二日目について着目すると、t5〜t6は、電力負荷が発電量より多く蓄電池5から放電が行われる時間帯、t6〜t8は、太陽電池2の発電量が電力負荷より多く蓄電池5に充電している時間帯、t8〜t9は、電力負荷が発電量より多く蓄電池5から放電が行われる時間帯であることが分かる。
【0054】
本実施例においては、図4中のt1の時点で、初期日及び二日目の気象データなどから、初期日及び二日目の発電量のカーブを予想する。また、過去の同時期の電力使用量データなどから、初期日及び二日目の電力負荷のカーブを予想する。そして、予想された2つのカーブから、少なくとも初期日に充電すべき電力量を算出する。そして、算出された、充電すべき電力量のみを蓄電池に充電し、余分な電力は充電しないようにする。
【0055】
例えば通常の夏の日であれば、図4におけるt2〜t4の間に充電される電力量は、充電すべき電力量より多くなるので、t2〜t4において、太陽電池2の発電量と電力負荷の差分の全てを蓄電池5に充電するのではなく、t4において、必要なSOCが達成でき
るように充電量を制御することにした。
【0056】
図5は、本実施例における充電量制御の内容を示す図である。図5(a)は、図4に示した初期日の充電量カーブ及び、電力負荷カーブに重ねて、充電量の変化を描いた図である。図5(b)は、図5(a)の充電制御を行った場合の、初期日の温度変化と、SOCの変化について示す図である。図5(a)において、実線で示すのは太陽電池2による発電量のカーブである。この発電量のカーブは、図から分かるように、12時ころにピークを迎えている。また、破線で示すのは、負荷9による電力負荷のカーブである。また、図5(b)において、実線で示すのは温度変化のカーブであり、破線で示すのは、蓄電池のSOCのカーブである。温度変化のカーブは、太陽電池2による発電量のカーブと高い相関を示しており、12時ころにピークを迎えている。また、蓄電池のSOCは、t2近傍において最小値を示し、t4近傍において最大値を示す。図5(a)に示すように、本実施例においては、最大充電量Knを定め、t2〜t4の間の期間に日照量が増加し、最大充電量Knより多くの電力を蓄電池5に充電可能な状況であっても、最大充電量Knより多くの量は充電しないようにした。また、この最大充電量の値を最適化することで、t4付近で、SOCが最大(例えば、100%)に到達するようにした。
【0057】
これにより、図5(b)に示すように、気温が最高となる時間帯と、SOCが最高となる時間帯をずらすことが可能となり、また、SOCが高い状態(例えば、SOCが100%近い状態)が長時間に亘り継続することを抑制できるので、蓄電池5への負担を軽減でき、長寿命化することが可能となる。ここで、気温が蓄電池5の周囲温度と仮定している。気温以外に、近くに熱源があるなど、蓄電池5の周囲温度に影響を及ぼす要因がある場合は、その要因の予想値を織り込んで、蓄電池5の周囲温度が最高となる時間帯を算出してもよい。
【0058】
次に、図6には、本実施例における充電量制御ルーチンのフローチャートを示す。このルーチンは、太陽光発電システム1の制御装置7のROM77に格納されたプログラムであり、CPU76によって実行される。
【0059】
本ルーチンが実行されると、S101において、初期日及び二日目の発電予想カーブが入手される。この発電予想カーブの基礎となる情報を取得するためには、例えば、太陽光発電システム1の設置場所の経度及び緯度情報と日付の情報から、太陽光発電システム1の設置場所における初期日及び二日目における日射量データベースより、照度と温度のデータを入手してもよい。さらに、例えばインターネット経由で天気に関する情報を入手してもよい。そして、これらの情報から、図4における実線カーブに相当するカーブを演算して入手する。
【0060】
図7には、初期日及び二日目の発電予想カーブを入手する際の発電予想カーブ算出ルーチンの例を示す。S1011においては、太陽光発電システム1の設置場所における初期日及び二日目の照度予想カーブを入手する。次に、S1012においては、同様に、太陽光発電システム1の設置場所における初期日及び二日目の温度予想カーブを入手する。そして、S1013においては、S1011とS1012において入手した照度予想カーブと温度予想カーブに基づいて、発電予想カーブを算出する。ここで図6の説明に戻る。S101の処理が終了すると、S102に進む。
【0061】
S102においては、初期日及び二日目の負荷予想カーブが入手される。より具体的には、過去の電力負荷あるいは、一般的な電力消費量のデータベースから、初期日及び二日目に相当する日の時間毎の電力負荷データを取得し、このデータに基づいて、負荷予想カーブを入手してもよい。S102の処理が終了するとS103に進む。
【0062】
S103においては、初期日に充電すべき電力量Whbatが算出される。具体的には、以下の(1)式によって、算出される。

Whbat=∫t1t2{Ld(t)-PV(t)}dt+∫t4t6{Ld(t)-PV(t)}dt-S(t1)・・・・・(1)

ここで、Ld(t)は、S102で入手された負荷予想カーブを示す関数である。また、PV(t)は、S101で入手された発電予想カーブを示す関数である。また、S(t1)は、時刻t1の時点における蓄電池5の充電量である。(1)式は、電力負荷が太陽電池2の発電量より多くなるt1〜t2及び、t4〜t6における放電量に相当する電力量を、初期日において太陽電池2の発電量が電力負荷より多くなるt2〜t4の間に充電すべきという考え方に基づく。なお、本実施例において初期日に充電すべき電力量Whbatは必要充電量に相当する。S103の処理が終了するとS104に進む。
【0063】
S104においては、初期日の充電可能電力量が算出される。より具体的には、以下の(2)式によって、算出される。

充電可能電力量=∫t2t4{PV(t)-Ld(t)}dt・・・・・(2)

S104の処理が終了するとS105に進む。
【0064】
S105においては、S101〜S104で入手された情報から、充電量カーブを算出するとともに、最適化がなされる。この充電量カーブは、t2〜t4の間の充電量をどのように制御するかを示すカーブである。また、ここで最適化とは、充電量カーブの形状を、t4の時点で、初期日に充電すべき電力量Whbatが充電されているように、充電量カーブの形状を修正することをいう。この処理の具体的な内容については後述する。なお、充電量カーブは、本実施例において充電量曲線に相当する。S105の処理が終了すると、S106に進む。
【0065】
S106においては、S105において算出・最適化された充電量カーブに従い、蓄電池5への充電制御を開始する。S106の処理が終了すると本ロジックを一旦終了する。ここで、充電量制御ルーチンのS103の処理を実行するCPU76は、本実施例における必要充電量算出手段に相当する。また、S105の処理を実行するCPU76は、充電量曲線算出手段に相当する。また、S106の処理を実行するCPU76は、充電量制御手段に相当する。
【0066】
次に、S105において、充電量カーブを算出・最適化する際に実行されるサブルーチンである、充電量カーブ算出・最適化ルーチン1の内容について説明する。
【0067】
図8には、本実施例における充電量カーブを算出・最適化ルーチン1のフローチャートを示す。本ルーチンも、太陽光発電システム1の制御装置7のROM77に格納されたプログラムであり、CPU76によって実行される。
【0068】
本ルーチンが実行されると、まずS1051において、仮最大充電量k1が設定される。この仮最大充電量k1は、この値を最適化してknを算出すれば、初期日に充電すべき電力量Whbatと同等の電力量が初期日に充電できると予定されるknの初期値である。具体的には、k1は以下の(3)式のように求められる。また、S1051では、今後、最適化された最大充電量knを算出する際に使用される変数Osetが、(4)式に示す
ように、先ずはk1に設定される。

k1={PV(t3)-Ld(t3)}/2・・・・・(3)

Oset=k1・・・・・(4)

すなわち、最大充電量の初期値として、取りあえず、発電量が最大となる時刻t3における、太陽電池2による充電量の半分の値を設定する。S1051の処理が終了すると、S1052に進む。
【0069】
S1052においては、最大充電量をk1とした場合の、初期日における予想充電量が(5)式のように求められる

予想充電量=∫t2t4{min(PV(t)−Ld(t),k1)}dt・・・・・(5)

すなわち、予想充電量は、PV(t)−Ld(t)と、k1の小さい方の値をt2〜t4まで積分することで算出される。S1052の処理が終了するとS1053に進む。
【0070】
S1053においては、上記のWhbatと予想充電量の値が比較され、その大小関係が判定される。ここで、Whbatが予想充電量より大きいと判定された場合には、S1054に進む。また、予想充電量がWhbatより小さいと判定された場合には、S1055に進む。さらに、Whbatと予想充電量の値が等しいと判定された場合には、本ルーチンを終了し、充電量制御ルーチンのS106に進む。なお、Whbatと充電予想電力量の値が等しいか否かの判定については、Whbatに例えば、±1%程度の電力量の範囲を設定しておき、予想充電量がその範囲に属すれば、Whbatと充電予想電力量の値が等しいと判定してもよい。この電力量の範囲は、±1%に限らず、適宜設定可能であることは当然である。
【0071】
S1054では、以下の(6)及び(7)の演算が行われる。

Oset=Oset/2・・・・・(6)

Km+1=km+Oset・・・・・(7)

すなわち、S1054においては、現時点での最大充電量では、予想充電量が少なすぎたために、最大充電量kmをOset分だけ増加させる。S1054の処理が終了するとS1052の処理の前に戻る。
【0072】
S1055では、以下の(8)及び(9)の演算が行われる。

Oset=Oset/2・・・・・(8)

Km+1=km−Oset・・・・・(9)

すなわち、S1054においては、現時点での最大充電量では、予想充電量が多すぎるために、最大充電量kmをOset分だけ減少させる。S1055の処理が終了するとS1052の処理の前に戻る。
【0073】
すなわち、本ルーチンでは、最初に仮のS1052〜S1055の処理では、最大充電量の初期値k1として、取りあえず、発電量が最大となる時刻t3における、太陽電池2による充電量の半分の値を設定し、これを基に予想充電量を演算する。予想充電量がWhbatより小さい場合には、最大充電量の値を少しだけ増加し、また、予想充電量がWh
batより大きい場合には、最大充電量の値を少しだけ減少し、繰り返し予想充電量を演算し、予想充電量がWhbatになるように、最大充電量kmを収束させていく、二分法を実践していることになる。そして、予想充電量がWhbatになった際の最大充電量knを最適化した最大充電量とする。
【0074】
以上、説明したように、本実施例においては、最大充電量knを求めて、t2〜t4の間の充電量が初期日の充電すべき電力量Whbatとなるように、充電量を制御した。これにより、SOCが高い(例えば、SOCが100%)の状態が長時間続いたり、気温が最高となる時間帯にSOCが最大になるような事態を避けることができ、蓄電池5を長寿命化することが可能となる。また、本実施例では、最適化された最大充電量knは、充電中一定値であるので、SOCが急峻に変化することを避けることができ、この意味でも蓄電池5の負担を軽減することが可能である。
【0075】
なお、本実施例では、二分法の考え方で、予想充電量がWhbatになるように、最大充電量kmを収束させていく手法をとったが、最大充電量knの最適化の手法はこれに限られない。例えば、仮最大充電量k1をPV(t3)とし、最大充電量kmをLd(t3)まで所定量ずつ減少させて、予想充電量がWhbatになった際の最大充電量knを最適化した最大充電量としてもよい。同様に、仮最大充電量k1をLd(t3)とし、最大充電量kmをPV(t3)まで所定量ずつ増加させて、予想充電量がWhbatになった際の最大充電量knを最適化した最大充電量としてもよい。なお、本実施例における最大充電量は最大充電電力に相当する。
【0076】
<実施例2>
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例1では、t2〜t4における充電の際に、最大充電量knを設定して、t2〜t4の間は、単位時間あたりの充電量が最大充電量knより多くならないように制御した。それに対し、本実施例では、t2〜t4の間の所定の時刻tnまでは充電せず、tn以降は、発電予想カーブに沿った最大の充電を実施する例について説明する。
【0077】
図9は、本実施例における充電量制御の内容を示す図である。図9(a)は、図4に示した初期日の充電量カーブ及び、電力負荷カーブに重ねて、本実施例における充電量の変化を太線で描いた図である。図9(b)は、図9(a)の充電制御を行った場合の、初期日の温度変化と、SOCの変化について示す図である。図9(a)に示すように、本実施例においては、充電開始時刻tnを定め、t2以降の期間に日照量が増加し、太陽電池2の発電電力で蓄電池5に充電可能な状況であっても、充電開始時刻tnになるまでは充電を開始しないようにした。また、この充電開始時刻tnの値を最適化することで、t4付近で、SOCが最大(例えば、100%)に到達するようにした。
【0078】
これにより、図9(b)に示すように、気温が最高となる時間帯と、SOCが最高となる時間帯をずらすことが可能となり、また、SOCが100%近い状態が長時間に亘り継続することを抑制できる。特に、本実施例においては、実施例1に比較しても、気温が最高となる時間帯におけるSOCを低く抑えることができるので、より確実に、蓄電池5への負担を軽減でき、蓄電池5を長寿命化することが可能となる。しかしながら、本実施例における充電制御では、tn〜t4までのSOCの増加速度が大きくなるため、充電速度の観点からは実施例1の充電制御と比較すると蓄電池5への負荷が大きくなる。本実施例の充電制御と、実施例1で説明した充電制御のいずれを採用するかは、蓄電池5の特性を考慮して決定すればよい。
【0079】
本実施例においても、充電量の制御は、実施例1で説明した充電量制御ルーチンによって行われる。しかしながら、本実施例においては、充電量制御ルーチンのS105におい
ては、充電量カーブを算出・最適化ルーチン2によって充電量カーブが算出・最適化される点が実施例1とは異なる。
【0080】
図10には、本実施例における充電量カーブを算出・最適化ルーチン2のフローチャートを示す。このルーチンは、太陽光発電システム1の制御装置7のROM77に格納されたプログラムであり、CPU76によって実行される。
【0081】
本ルーチンが実行されると、まずS1151において、仮充電開始時刻ts1が設定される。この仮充電開始時刻ts1は、この値を最適化してtsnを算出すれば、初期日に充電すべき電力量Whbatと同等の電力量が初期日に充電できると予定されるtsnの初期値である。具体的には、ts1は以下の(10)式のように求められる。また、S1151では、今後、最適化された充電開始時刻tsnを算出する際に使用される変数Osetが、(11)式に示すように、先ずはts1に設定される。

ts1=(t4-t2)/2・・・・・(10)

Oset=ts1・・・・・(11)

すなわち、充電開始時刻の初期値ts1として、取りあえず、太陽電池2による発電量が電力負荷より大きい時間帯t2〜t4の中央の値を設定する。S1151の処理が終了すると、S1152に進む。
【0082】
S1152においては、充電開始時刻をts1とした場合の、初期日における予想充電量が(12)式のように求められる

予想充電量=∫ts1t4{PV(t)-Ld(t)}dt・・・・・(12)

すなわち、予想充電量は、PV(t)−Ld(t)の値をts1〜t4まで積分することで算出される。S1152の処理が終了するとS1153に進む。
【0083】
S1153においては、上記のWhbatと予想充電量の値が比較され、その大小関係が判定される。ここで、Whbatが予想充電量より大きいと判定された場合には、S1154に進む。また、予想充電量がWhbatより小さいと判定された場合には、S1155に進む。さらに、Whbatと予想充電量の値が等しいと判定された場合には、本ルーチンを終了し、充電量制御ルーチンのS116に進む。なお、Whbatと充電予想電力量
の値が等しいか否かの判定については、Whbatに例えば、±1%程度の電力量の範囲を設定しておき、予想充電量がその範囲に属すれば、Whbatと充電予想電力量の値が等しいと判定してもよい。この電力量の範囲は、±1%に限らず、適宜設定可能であることは当然である。
【0084】
S1154では、以下の(13)及び(14)の演算が行われる。

Oset=Oset/2・・・・・(13)

tsm+1=tsm+Oset・・・・・(14)

すなわち、S1154においては、現時点での充電開始時刻では、予想充電量が少なすぎたために、充電開始時刻tsmをOset分だけ増加させる。S1154の処理が終了するとS1152の処理の前に戻る。
【0085】
S1155では、以下の(15)及び(16)の演算が行われる。

Oset=Oset/2・・・・・(15)

tsm+1=tsm−Oset・・・・・(16)

すなわち、S1154においては、現時点での最大充電量では、予想充電量が多すぎるために、充電開始時刻tsmをOset分だけ減少させる。S1155の処理が終了するとS1152の処理の前に戻る。
【0086】
すなわち、本ルーチンでは、最初に仮のS1152〜S1155の処理では、充電開始時刻の初期値をts1として、取りあえず、太陽電池2による発電量が電力負荷より大きい時間帯t2〜t4における中央の値を設定し、これを基に予想充電量を演算する。予想充電量がWhbatより小さい場合には、充電開始時刻の値を少しだけ早め、また、予想充電量がWhbatより大きい場合には、充電開始時刻の値を少しだけ遅らせ、繰り返し予想充電量を演算し、予想充電量がWhbatになるように、充電開始時刻tsmを収束させていく、二分法を実践していることになる。そして、予想充電量がWhbatになった際の充電開始時刻tsnを最適化した充電開始時刻とする。
【0087】
以上、説明したように、本実施例においては、充電開始時刻tsnを求めて、tsn〜t4の間の充電量が初期日の充電すべき電力量Whbatとなるように、充電量を制御した。これにより、SOCが100%の状態が長時間続いたり、気温が最高となる時間帯にSOCが最大になるような事態を避けることができ、蓄電池5を長寿命化することが可能となる。また、本実施例では、t2以降も、最適化された充電開始時刻tsnまでは、充電を開始せず、充電開始時刻tsnになってから充電を開始するので、気温が高くなる正午前後のSOCを可及的に低減することができる。
【0088】
なお、本実施例では、二分法の考え方で、予想充電量がWhbatになるように、充電開始時刻tsmを収束させていく手法をとったが、充電開始時刻tsnの最適化の手法はこれに限られない。例えば、仮充電開始時刻ts1をt2とし、充電開始時刻tsmをt4まで所定量ずつシフトさせて、予想充電量がWhbatになった際の充電開始時刻tsnを最適化した充電開始時刻としてもよい。同様に、仮充電開始時刻ts1をt4とし、充電開始時刻tsmをt2まで所定量ずつ早めて、予想充電量がWhbatになった際の充電開始時刻tsnを最適化した充電開始時刻としてもよい。
【0089】
なお、本発明における蓄電池5への充電量の制御は、実施例1及び2の2つのパターンに限られない。SOCが高い状態が長時間続かず、気温が最高となる時間帯にSOCが最大にならないようにした態様であれば、他の態様を採用しても構わない。例えば、実施例1に示した最大充電量knを用いた充電を行いつつ、実施例2で示した充電開始時間tsnに充電を開始しても構わない。
【0090】
次に、図11には、実施例1及び実施例2における制御装置7による充放電量制御のブロック図を示す。図3に示した、従来の充放電量制御のブロック図に対して、実施例1及び実施例2では、従来の制御ロジック11の他に、蓄電池5に関して時間tにおける充電量制御を追加する、新たな制御ロジック2が追加されている点が異なっている。
【0091】
なお、上記においては、本発明を図1に示した太陽光発電システム1に適用する例について説明したが、本発明が適用される太陽光発電システムはこれに限られない。図12に示すような太陽光発電システム10に適用されても構わない。この太陽光発電システム10では、蓄電池5は、双方向DC/AC変換回路16に接続されており、双方向DC/A
C変換回路16の出力は、双方向DC/AC変換回路4の出力に接続されている。これにより、太陽光発電システム10は、太陽光発電システム1と同等の機能を発揮することが可能となっている。
【0092】
図12において破線で示す範囲、すなわちDC/DC変換回路3、双方向DC/AC変換回路4、制御装置7、双方向DC/AC変換回路16を、パワーコンディショナ10aという形で一筐体内に配置してもよい。あるいは、制御装置7だけを独立の装置とし、点線で示す範囲、すなわちDC/DC変換回路3、双方向DC/AC変換回路4、双方向DC/AC変換回路16をパワーコンディショナ10bという形で一筐体内に配置してもよい。ここで、DC/DC変換回路3、双方向DC/AC変換回路4、双方向DC/AC変換回路16のうちの少なくとも一つは、本実施例における電力変換装置に相当する。
【符号の説明】
【0093】
1・・・太陽光発電システム
1a、1b・・・パワーコンディショナ
2・・・太陽電池
3・・・DC/DC変換回路
4・・・双方向DC/AC変換回路
5・・・蓄電池
6・・・双方向DC/DC変換回路
7・・・制御装置
10・・・太陽光発電システム
10a、10b・・・パワーコンディショナ
図1
図2
図3
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図5
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図11
図12