(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
R32などの可燃性冷媒を使用した場合の火災対策として、万が一、室外機内で火災が発生しても、火炎が外部に広がらないことがようにすることが重要である。火炎を外部に伝播させないように機械室を密閉する方法が考えられる。
【0003】
しかし、電装ユニットに収容された基板を冷却するために、外部から空気を導入し、基板の熱を外部に逃がすことが必要であることから、空気調和機の室外機には外気導入口を設けることが一般的である。したがって、機械室を密閉する構造を採用することは困難である。
【0004】
そこで、R32冷媒を用いた室外機では、外気導入口の開口の実効直径を3.5mm以下にすることで火炎伝播を防止している。
【0005】
実効直径は以下のように表される。
実効直径=4×開口部面積[mm^2]/開口部の周囲長[mm]
【0006】
R32冷媒の場合、実効直径を3mm程度以下の孔を火炎が通過しないことは、非特許文献1などに記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、筐体には端子台を露出させるための端子台開口部が設けられており、不燃性冷媒使用時は端子台開口部から基板冷却用の空気が導入されていた。しかし、可燃性冷媒使用時は内部で火炎が発生しても外部に伝播しないように開口部を消炎直径以下にしなければならない。ここで、消炎直径とは、火炎が通過できない実効直径のことを指す。
【0009】
ところが、端子台開口部は端子台の搭載部分を露出させるため大きさに制約があるので消炎直径以下にすることは困難である。
【0010】
端子台開口部は雨水等が筐体内に進入するのを防止するためカバーで覆われており、カバーには外部から空気を端子台開口部へ導入するために端子台開口部からより下側に離れた位置に外部へ開口するカバー開口部が設けられている。したがって、カバーの内部空間で流路を形成し、流路の一部で流路断面の実効直径を消炎直径以下にすることで、火炎が端子台開口部を通過しても当該箇所で火炎伝播を阻止できる。例えば、流路内に端子台開口部とカバー開口部とを仕切る仕切板を設け、仕切板に実効直径が消炎直径以下の孔を設けることで、筐体内で火炎が生じても当該孔を火炎が通過せず、火炎伝播を阻止できる。
【0011】
しかし、流路断面の実効直径を消炎直径以下にすると開口面積が減り空気の導入量が低減する。また、開口面積を大きくするために消炎直径以下の開口部を複数設ける等すると、開口部を設けるスペースが大きくなってしまい室外機の大型化に繋がってしまう。
【0012】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、大型化を招くことなく、機械室内で発生した火炎の外部への伝播を防止することのできる空気調和機の室外機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る空気調和機の室外機は、可燃性を有する冷媒を用いた空気調和機の室外機であって、前記室外機と室内機とを電気的に接続するための配線を中継する端子台が取り付けられ、前記室外機の機械室内に開口する端子台開口部と、前記室外機と前記室内機側の冷媒配管を接続する操作弁が取り付けられた操作弁取付部と、上部に前記端子台開口部が配置され下部に前記操作弁取付部が配置される筐体側面と、前記筐体側面に着脱自在に取り付けられ、前記端子台開口部及び前記操作弁取付部を外側から覆うカバーと、前記筐体側面と前記カバーにより形成されるカバー空間と、前記カバーの前記操作弁取付部に対向する位置に設けられ、前記カバー空間及び前記端子台開口部を介して前記機械室に外気を導入するカバー開口部と、前記カバー空間における前記カバー開口部と前記端子台開口部との間の空気流通方向に直交する流路断面の実効直径をカバー空間断面実効直径Dとし、前記カバー開口部側から前記端子台開口部側にかけて空気流通方向に平行で、且つ、前記カバーから前記筐体側面に向かって延び、端面が前記筐体側面に接触する一つ又は二つ以上のリブと、前記リブによって前記流路断面を複数に分割し形成される複数の通風路と、を備え、前記通風路は、前記端子台開口部側入口の実効直径を通風路実効直径d(d<D)とし、前記通風路実効直径dを消炎直径より大きく、且つ、空気流通方向に平行な通風路の長さLは、前記機械室内で発生した火炎が前記通風路を通過しない長さとなるように定めることを特徴としたものである。
【0014】
また、本発明の一形態に係る空気調和機の室外機は、前記通風路実効直径dは、前記通風路長さLが長くなるにつれて大きく定めることができることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、大型化を招くことなく、空気調和機の室外機内で発生した火炎の外部への伝播を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態である空気調和機の室外機の外観を正面側右斜め方向から示す斜視図である。
図2は、
図1の室外機の外観を背面側斜め方向から示す斜視図である。
図3は、
図1の室外機の内部構造を正面側右斜め方向から示す斜視図である。
【0018】
これらの図に示すように、本実施例の空気調和機の室外機1は、箱状の筐体10を有する。筐体10は、筐体10の下面を形成するベース11と、筐体10の前面を形成する前面パネル13と、筐体10の側面を形成する左側パネル14及び右側パネル15と、筐体10の上面を形成する天板16とで構成される。前面パネル13には、吹出口131が設けられる。吹出口131の外側にはファンガード17が取り付けられている。右側パネル15の構成については後で説明する。
【0019】
筐体10内には、圧縮機21、冷媒配管22、熱交換器23、送風ファン24および電装ユニット25などが収納されている。
【0020】
筐体10の内部空間は、仕切り板26によって主に圧縮機21、冷媒配管22および電装ユニット25などが配置された機械室31と、送風ファン24と、熱交換器23が配置された熱交換室32とに仕切られている。
【0021】
熱交換器23は、筐体10の背面から左側の側面に沿ってL字型に設けられる。熱交換器23に流通する冷媒には、たとえばR32などの可燃性冷媒が使用される。
【0022】
電装ユニット25には、圧縮機21および送風ファン24などを制御する制御回路および電源回路などを構成する電子部品が実装された基板が収納されている。また、電装ユニット25には、端子台251を保持する端子台ホルダー252が取り付けられている。また、電装ユニット25は、熱交換室32側に図示しない開口部を有しており、送風ファン24が駆動されることによって、右側パネル15の後述する端子台開口部151から機械室31内へ外気を導入し(
図4の矢印A)、導入された空気が電装ユニット25内に流入し、電装ユニット25の図示しない開口部を介して熱交換室32へ導入される。この空気流によって電装ユニット25内の基板が冷却される。
【0023】
(右側パネル15の構成)
図1および
図2に示すように、右側パネル15にはカバーである電装カバー41が着脱自在に取り付けられる。
【0024】
図4は、右側パネル15から電装カバー41を取り外した状態を示す斜視図である。
右側パネル15の、電装カバー41によって覆われる部分には、端子台ホルダー252における端子台251の搭載部分を露出させる端子台開口部151と、配管を繋ぐ操作弁27を露出させる操作弁取付部153が設けられる。電装カバー41は、これらの開口部151、153を通して外部から機械室31内に水などが浸入することを防ぐためのものであり、室外機1の筐体10と比べ小さく形成される。端子台251は、室外機1と室内機(図示せず)とを接続するための配線を中継するためのものである。
【0025】
図5は電装カバー41が取り付けられた右側パネル15を背面側より視た側面図、
図6は
図5の断面図、
図7は電装カバー41の裏側を示す斜視図である。
【0026】
図7に示すように、電装カバー41は、裏側がドーム状に構成される。したがって、電装カバー41は、
図6に示すように、右側パネル15の表面15e(筐体側面)との間で、外気の通風が可能なカバー空間41Aを形成する。
【0027】
電装カバー41は、端子台開口部151に対応する部分411と、操作弁取付部153に対応する部分413と、これら2つの部分411、413を連結する部分415とを有する。
【0028】
操作弁取付部153に対応する部分413は、操作弁取付部153を通して右側パネル15の外に突出した操作弁27を覆うように構成される。さらに、室内機(図示せず)からの配管の接続のために、操作弁取付部153に対応する部分413の背面にはカバー開口部414が設けられている。このカバー開口部414は、外部から電装カバー41のカバー空間41Aに外気(
図2の矢印B)を導入する役割をも担う。
【0029】
端子台開口部151に対応する部分411は、端子台開口部151より露出した端子台ホルダー252を覆い、外気を操作弁取付部153を通じて機械室31に導くための部分である。
【0030】
端子台開口部151に対応する部分411と操作弁取付部153に対応する部分413とを連結する部分415は、右側パネル15の表面15e(筐体側面)との間に複数の通風路51を設けるための空間を形成する。
【0031】
(複数の通風路51の構成)
次に、
図6、
図7、
図8を用いて、複数の通風路51の構成について説明する。
カバー空間41A内において、複数の通風路51は、カバー開口部414と端子台開口部151との間に設けられている。
【0032】
送風ファン24が駆動されているとき、外部よりカバー開口部414を通じてカバー空間41A内に導入された外気(矢印C)は、上記の複数の通風路51を通じて端子台開口部151に流れ、この端子台開口部151を通じて機械室31に導入される。そして機械室31内に導入された空気は、電装ユニット25内を通過する間に基板の熱を奪って熱交換室32に移り、吹出口131から外部に排出される。
【0033】
ところで、端子台開口部151は、端子台ホルダー252における端子台251の搭載部分を露出させるように大きさや形状が決められるという制約がある以上、消炎直径の条件を満足するように構成することは現実的には困難である。そのため、複数の通風路51の断面の実効直径を消炎直径以下にすることで火炎伝播を防止する方法が考えられる。しかし、その方法だと基板冷却用に必要な分の外気導入量を得るための流路断面積が得られない。
【0034】
そこで本実施形態では、上記の複数の通風路51の実効直径Dを必要外気導入量が得られる大きさにしつつ、長さLを火炎が通過しない長さとすることによって、これら複数の通風路51で、基板冷却用の外気を十分に導入しつつ、火炎の外部への伝播を防止するようにしている。
【0035】
複数の通風路51は、右側パネル15の表面15e(
図6参照)と、電装カバー41の裏面41e(
図6参照)と、カバー開口部414側から端子台開口部151側にかけて電装カバー41から右側パネル15の表面15eに向かって延びる一つ又は二つ以上のリブ53(
図7および
図8参照)とで形成される。
【0036】
一つ又は二つ以上のリブ53は、外気の通風路51に沿った2つの側面53a,53b(
図8参照)と、外気導入側の面53c(
図8参照)と、外気導出側の面53d(
図8参照)と、右側パネル15の表面15eに密着されるパネル当接面53e(
図7参照)とを有する。電装カバー41が右側パネル15に取り付けられた状態において、各々のリブ53のパネル当接面53eが右側パネル15の表面15eに密着する。これにより、各々のリブ53の側面53a,53b、電装カバー41の裏面41e(
図6参照)、そして右側パネル15の表面15a(
図6参照)によって4面が囲われ、かつ外気導入側と外気導出側が各々開口した複数の通風路51が形成される。
【0037】
図6のカバー空間41Aにおけるリブ53が取り付けられた位置の外気の流通方向(矢印C)に直交する断面(a−a')を
図10に示す。右側パネル15の表面15eと電装カバー41の裏面41eによって形成されたカバー空間41A(図中点線で示す。)の実効直径をDとし、各々のリブ53等によって分割し形成された通風路51の実効直径をdとした場合、当然d<Dの関係が成り立つ。
【0038】
また、端子台251には室内機(図示せず)と電気的に接続するための配線が取り付けられる。端子台251に一端が取り付けられた配線は通常、カバー空間41Aを介してカバー開口部414から外部に引き出され、他端を室内機へ取り付ける。そのため、通風路51以外に別途図示しない配線経路を設ける必要がある。
【0039】
複数の通風路51は、必要な外気の流量が得られるようにするため、複数設けられている。この際、通風路51の長さLは火炎が通過しない長さとされているので、消炎直径の制約を受けることなく、高い自由度で各々の通風路51の断面形状と面積を選定することができる。したがって、実効直径dが消炎直径以上である通風路51とすることができる。なお、
図5及び
図6に示すように、電装カバー41は右側パネル15の表面15eから突出した操作弁27を保護するため、カバー空間41Aが端子台開口部151側よりも操作弁取付部153側を大きくするように形成されている。このため、カバー空間41A断面の実効直径D及び通風路51断面の実効直径dは端子台開口部151側から操作弁取付部153側に向かって大きくなる。この場合、実効直径が最少となる端子台開口部151側を必要な外気の流量が得られるように設定することで、基板冷却に必要な外気導入量を確保できる。
【0040】
もともと端子台開口部151に対応する部分411と、操作弁取付部153に対応する部分413は筐体10の上下に離れて配置されるので、通風路51の長さLは十分に高い自由度で選定できる。したがって、通風路51の長さLを火炎が通過しない長さとすることは十分可能である。
【0041】
本発明者らは、火炎が伝播しない通風路51の長さL(mm)と実効直径d(mm)との関係について試験を行い、その結果から次のような関係を導き出すにいたった。
【0042】
通風路51の実効直径d(mm)は、下記の式(1)および式(2)を満足すればよい。
0<L<50(mm)のとき、
d<=−0.0014×L^2+0.15×L+3.5 ・・・(1)
50<=L<=200(mm)のとき
d<=0.02×L+6.5 ・・・(2)
【0043】
図9は、本発明者らが行った試験結果と上記式(1)および式(2)を示したグラフであり、上記式(1)および式(2)から、通風路51の実効直径Dは、通風路51の長さLが長くなるにつれて大きくなるように定めればよい。
【0044】
以上のように、本実施形態によれば、カバー空間41A内において、カバー開口部414と端子台開口部151との間に、火炎が通過しない長さLを有する複数の通風路51を設けたので、右側パネル15に、消炎直径の条件を満たす専用の外気導入口を設けなくて済む。このため、右側パネル15の構成を簡素化することができ、低コスト化を図れる。さらには、消炎直径の条件を満たすように設計された外気導入口によって右側パネル15の広い領域が奪われることがなくなり、機械室内の部品の設置上の制約も軽減する。これにより室外機の小型化を図れる。
【0045】
さらに、本実施形態によれば、複数の通風路51を複数のリブ53で構成したことによって、電装カバー41の強度を上げることができる。
【0046】
本実施形態では、可燃性冷媒としてR32を使用するものについて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、可燃性冷媒、微燃性冷媒を用いた空気調和機の室外機全般に適用することができる。