(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態のペースト材印刷装置1の構成例を示した断面説明図である。
【0023】
図1を参照して、本実施形態のペースト材印刷装置1について説明する。ペースト材印刷装置1は、ワーク(図示せず)にペースト材30を印刷するためのマスク10と、ペースト材30を「スキージング」するスキージ20を備える。スキージングについては後述する。
【0024】
マスク10は、マスク母材10aと、ワークにペースト材30を印刷するための印刷開口部10bと、マスク母材10aとは摩擦係数の異なる部材が充填部10cに充填された摩擦変更部40を備える。摩擦変更部40はスキージングの上流部分に形成する。
【0025】
スキージ20は、マスク10との間にペースト材30を挟んで、ペースト材30に下方向への印圧をかけながらマスク10の表面を左方向から右方向にペースト材30を移動させる。
【0026】
このとき、マスク10の表面上のペースト材30には、スキージ20からの印圧とマスク10からの摩擦力を受けて、左方向へのペースト材の流れ30aが発生する。そして、スキージ20に遮られたペースト材30には、スキージ20からの印圧に対するマスク10からの反発力とスキージ20からの摩擦力を受けて、スキージ20の表面に沿って右上方向へのペースト材の流れ30aが発生する。さらに、スキージ20の上辺付近のペースト材30には、重力によりスキージ20の表面を離れて右下方向へ向きを変えたペースト材の流れ30aが発生する。
【0027】
このように、ペースト材30には、スキージ20によってマスク10の表面を移動させられることにより、上述のペースト材の流れ30aが、それぞれ発生する。そのため、ペースト材30には、それぞれのペースト材30の流れ30aの大きな流れとして、全体的ローリング30bが発生する。スキージングとは、スキージ20がマスク10の表面を移動し、上述のようにペースト材30を移動させることである。
【0028】
ペースト材30は、スキージ20によりスキージングされ、ローリングされることによって流動性が高められる。流動性が高められたペースト材30は、マスク10の印刷開口部10bから所定の位置に印刷される。
【0029】
マスク10は、マスク母材10aとは摩擦係数が異なる部材が充填された摩擦変更部40を備える。そのため、ペースト材30には、マスク母材10aと摩擦変更部40の境界で摩擦係数が異なることにより、マスク10から受ける摩擦力が局所的に不連続となり負荷が発生する。負荷の発生により、マスク10の表面のペースト材の流れ30aには、局所的ローリング30cが発生する。局所的ローリング30cの発生により、ペースト材30の流動性がさらに高められて、印刷開口部10bへのペースト材30の供給が容易化される。
【0030】
図2は、本実施形態の印刷工程を例示した説明図である。
図2を参照して、ペースト材印刷装置1の印刷工程を説明する。
【0031】
図2(a)では、ペースト材30が印刷されるワーク100が準備される。ワーク100は、表面に導通部101を備える。
図2(b)では、準備されたワーク100の上に、マスク10が位置合わせされて載せられる。
【0032】
図2(c)では、マスク10の表面の左側にスキージ20とペースト材30が準備され、スキージ20がペースト材30を右方向にスキージングする。これによって、ペースト材30には、前述したように全体的ローリング30bと、摩擦変更部40による局所的ローリング30cが発生する。局所的ローリング30cが発生することによって、ペースト材30のローリングが促進されて、印刷開口部10bからワーク100の所定の導通部101にペースト材30が印刷される。
【0033】
図2(d)では、マスク10がワーク100から離される。このとき、ワーク100の導通部101の所定の箇所にはマスク10から抜けた所定量の被印刷ペースト材31が印刷されて残る。このように、ペースト材印刷装置1は、ペースト材30をワーク100に印刷する。
【0034】
図3は、本実施形態のマスクを例示した説明図である。
図3を参照して、マスク10について説明する。
【0035】
図3(a)は、
図2(c)で説明したスキージ20による印刷工程の図である(ワーク100は図示せず)。
図3(b)は、マスク10がスキージ20およびペースト材30と接触する面である。
図3(b)のマスク10のA−A’線での断面が
図3(a)のマスク10である。
【0036】
マスク10は、マスク母材10aに印刷開口部10bと摩擦変更部40を備える。マスク10には、丸型の摩擦変更部40が、複数、格子状に配列される。スキージ20によってスキージングされたペースト材30は、複数の摩擦変更部40によって流動性を高められて、各印刷開口部10bに供給される。
【0037】
図4は、本実施形態のマスクの他の例を示した説明図である。
図4を参照して、マスク11について説明する。
【0038】
図4(a)は、
図2(c)で説明したスキージ20による印刷工程の図(ワーク100は図示せず)に対して、マスク10がマスク11に変更された図である。
図4(b)は、マスク11がスキージ20およびペースト材30と接触する面である。
図4(b)のマスク11のA−A’線での断面が
図4(a)のマスク11である。
【0039】
マスク11は、マスク母材11aに印刷開口部11bと摩擦変更部41を備える。マスク11には、長方形の摩擦変更部41が、複数、列状に配列される。スキージ20によってスキージングされたペースト材30は、複数の摩擦変更部41によって流動性を高められて、各印刷開口部11bに供給される。
【0040】
図5は、本実施形態のマスクの他の例を示した説明図である。
図5を参照して、マスク12について説明する。
【0041】
図5(a)は、
図2(c)で説明したスキージ20による印刷工程の図(ワーク100は図示せず)に対して、マスク10がマスク12に変更された図である。
図5(b)のマスク12では、
図4(b)で説明したマスク11に、さらに
図3(b)で説明した丸型の摩擦変更部40が、複数、印刷開口部12bの周辺部に格子状に配置される。
図5(b)のマスク12のA−A’線での断面が
図5(a)のマスク12である。
【0042】
マスク12は、マスク母材12aに印刷開口部12bと丸型の摩擦変更部40と長方形の摩擦変更部41を備える。スキージ20によってスキージングされたペースト材30は、複数の摩擦変更部40と41によってさらに流動性を高められて、各印刷開口部12bに供給される。
【0043】
このように、本実施形態では、マスク母材に設けられた充填部にマスク母材とは異なる摩擦係数の部材が充填された摩擦変更部の近傍で、ペースト材の局所的ローリングが発生する。全体的ローリングに加えて局所的ローリングが発生することによって、ペースト材のローリングが促進される。そのため、本実施形態は、ペースト材の流動性がさらに高められ、印刷開口部へのペースト材の供給を容易化することができる。なお、マスク表面の摩擦変更部の平坦性が確保されているので、マスクへのペースト材の残存はなく、マスクの清浄性は確保される。
【0044】
以上、本実施形態のペースト材印刷装置は、清浄性を確保して、ペースト材のローリングを促進することができる。
【0045】
なお、本実施形態では、マスク母材とは摩擦係数が異なる部材による摩擦変更部を設けると説明したが、摩擦変更部の部材の摩擦係数はマスク母材の摩擦係数に対して大きくてもよいし、小さくてもよい。すなわち、マスク母材と摩擦変更部に接触して移動するペースト材に摩擦変更部の近傍で前述の局所的ローリングが発生させられればよい。そのため、摩擦変更部の部材の摩擦係数がマスク母材の摩擦係数と異なっていればよい。
【0046】
さらに、本実施形態では、マスク母材に対して、摩擦係数の大きい摩擦変更部と、摩擦係数の小さい摩擦変更部が混在して設けられてもよい。なお、マスクの全体的摩擦力を大きくしてペースト材の全体的ローリングを促進する上では、摩擦変更部の部材の摩擦係数はマスク母材の摩擦係数より大きい方が望ましい。
【0047】
また、本実施形態では、マスク母材の材質は限定されないが、一般的にメタルマスク母材として用いられている、ステンレス鋼やニッケル、ニッケル合金などを用いることができる。摩擦変更部の部材としては、マスク母材の摩擦係数とは異なる摩擦係数である、エポキシ等の樹脂や異種の金属を用いることができる。
【0048】
また、本実施形態では、摩擦変更部の表面形状は、丸型または長方形として説明した。しかし、摩擦変更部の表面形状は、丸型や長方形に限定されない。すなわち、摩擦変更部は、前述したようにマスク母材と摩擦変更部とでペースト材に局所的ローリングが発生させられればよい。そのため、摩擦変更部の表面形状は、例えば、ひし形や星形、三角形でもよいし、略ドーナツ形状でもよい。略ドーナツ形状の摩擦変更部の内側に印刷開口部があってもよい。さらに、摩擦変更部の表面形状のサイズや組合せも限定されない。例えば、摩擦変更部は、大きい丸型と小さい丸型のものや、丸型と矩形のものが、それぞれ、混在して設けられてもよい。そして、摩擦変更部の数量は印刷開口部より先にスキージングされる配置のものが1つ以上あればよい。
【0049】
また、本実施形態では、摩擦変更部の平面配置形状は、格子状や列状など規則的に配置して説明した。しかし、摩擦変更部の平面配置形状は、格子状や列状などの規則的な配置に限定されない。すなわち、摩擦変更部の平面配置形状は、印刷開口部と干渉しなければよい。したがって、摩擦変更部は、印刷開口部と混在して配置されてもよく、千鳥格子状や不規則に配置されてもよいし、各配置形状が組合せられてもよい。そして、摩擦変更部相互の間隔についても限定されない。
【0050】
このように、摩擦変更部の表面形状やサイズ、組合せ、数量、平面配置形状、相互の間隔は、摩擦変更部がペースト材に局所的ローリングを発生させるものであればよく、上記のように、それぞれ、限定されない。そして、様々な摩擦変更部がマスクに設けられることで、様々な局所的ローリングが発生され、ペースト材のローリングがさらに促進される。そのため、ペースト材の流動性がさらに高められ、より微細な印刷開口部へのペースト材の供給が容易化される。
【0051】
例えば、印刷開口部や印刷開口部の相互の間隔において、より精細さが要求されるとき、精細さの度合いに対応して、摩擦変更部を密に設けて、ペースト材の流動性をより高めることができる。
【0052】
また、本実施形態の充填部の断面形状は限定されない。すなわち、充填部に充填される部材によって摩擦変更部がマスク表面に設けられればよく、充填部の断面形状は限定されない。例えば、充填部の断面形状は、テーパ形状や段付き形状、鼓形状であってもよい。充填部の断面形状がテーパ形状や段付き形状、鼓形状とすることで、充填部の加工が容易となる、充填部への部材の充填が容易となる、あるいは充填された部材の脱落を抑制するなどの効果が得られる。
【0053】
また、本実施形態のペースト材はペースト材のローリングを促進することで流動性が高められるものであればよい。例えば、ペースト材ははんだペースト材でもよいし、印刷インキペースト材でもよい。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について説明する。
図6は、本発明の第2の実施形態のペースト材印刷装置2の構成例を示した断面説明図である。
【0054】
図6を参照して、本実施形態のペースト材印刷装置2について説明する。ペースト材印刷装置2は、
図1で説明したマスク10がマスク13に変更されていることが、第1の実施形態と相違する。よって、第1の実施形態と同一の構成要素には同一の参照番号を付記して、その説明を省略する。
【0055】
マスク13は、マスク母材13aと、ワーク(図示せず)にペースト材30を印刷するための印刷開口部13bと、マスク母材13aとは摩擦係数の異なる部材が充填部13cに充填された摩擦変更部42を備える。充填部13cは、
図1で説明したマスク10の充填部10cとは異なり、マスク10を貫通しない。摩擦変更部42は、所定の深さの充填部13cにマスク母材13aとは摩擦係数の異なる部材が充填される。したがって、マスク13は、摩擦変更部42によって局所的ローテーション30cを発生させ、ペースト材30のローテーションを促進することができる。
【0056】
以上、本実施形態のマスクは、摩擦変更部によって局所的ローテーションを発生させ、ペースト材のローテーションを促進するので、前述の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、本実施形態では、充填部がマスクを貫通しないため、充填部材の使用量が削減され、マスクの強度の低下が抑制される。
【0057】
なお、本実施形態の充填部のマスク表面からの深さは限定されない。すなわち、充填部に充填される部材によって摩擦変更部がマスク表面に設けられればよく、充填部の深さは限定されない。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態について説明する。
図7は、本発明の第3の実施形態のペースト材印刷装置3の構成例を示した断面説明図である。
【0058】
図7を参照して、本実施形態のペースト材印刷装置3について説明する。ペースト材印刷装置3は、
図2で説明したマスク13がマスク14に変更されていることが、第2の実施形態と相違する。よって、第2の実施形態と同一の構成要素には同一の参照番号を付記して、その説明を省略する。
【0059】
マスク14は、マスク母材14aと、ワーク(図示せず)にペースト材30を印刷するための印刷開口部14bと、マスク母材14aとは摩擦係数の異なる部材がマスク母材14aの表面にメッキされた摩擦変更部43を備える。摩擦変更部43は、
図1や
図6で説明したマスクの充填部10cや13cをマスクに設けず、マスク母材14aとは摩擦係数の異なる部材がマスク母材14aにメッキされる。したがって、マスク14は、摩擦変更部43によって局所的ローテーション30cを発生させ、ペースト材30のローテーションを促進することができる。
【0060】
以上、本実施形態のマスクは、摩擦変更部によって局所的ローテーションを発生させ、ペースト材のローテーションを促進するので、前述の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、本実施形態では、マスク表面にマスク母材とは異なる摩擦係数の部材がメッキされるため、摩擦変更部の部材の使用量が削減される。さらに、本実施形態では、マスクに充填部を設けないので、マスクの強度は低下しない。
【0061】
なお、本実施形態では、摩擦変更部の部材はメッキされると説明した。しかし、摩擦変更部の部材はメッキされることに限定されない。すなわち、摩擦変更部の部材が所定の摩擦力を維持でき、ペースト材の残存を少なくできる厚さでマスク表面に摩擦変更部は設けられればよい。例えば、摩擦変更部の部材が蒸着または塗布されて、摩擦変更部は形成されてもよい。
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態について説明する。
図8は、本発明の第4の実施形態のペースト材印刷装置4の構成例を示した断面説明図である。
【0062】
図8を参照して、本実施形態のペースト材印刷装置4について説明する。ペースト材印刷装置4は、
図1で説明したマスク10がマスク15に、スキージ20がスキージ21に変更されていることが、第1の実施形態と相違する。よって、第1の実施形態と同一の構成要素には同一の参照番号を付記して、その説明を省略する。
【0063】
マスク15は、マスク母材15aと、ワーク(図示せず)にペースト材30を印刷するための印刷開口部15bを備える。スキージ21は、スキージ母材21aと、スキージ母材21aとは摩擦係数の異なる部材が充填部21bに充填された摩擦変更部44を備える。
【0064】
スキージ21は、マスク15との間にペースト材30を挟んで、ペースト材30に下方向への印圧をかけながらマスク15の表面を左方向から右方向にペースト材30を移動させる。このとき、ペースト材30は、スキージ母材21aと摩擦変更部44の境界で摩擦係数が異なることにより、スキージ21から受ける摩擦力が局所的に不連続となり負荷が発生する。負荷の発生により、スキージ21の表面のペースト材の流れ30aには、局所的ローリング30cが発生する。局所的ローリング30cの発生により、ペースト材30の流動性がさらに高められて、印刷開口部15bへのペースト材30の供給が容易化される。
【0065】
図9は、本実施形態のスキージを例示した説明図である。
図9を参照して、スキージ21について説明する。
【0066】
図9(a)は、
図2(c)で説明したスキージ20による印刷工程の図(ワーク100は図示せず)に対して、マスク10がマスク15に、スキージ20がスキージ21にそれぞれ変更された図である。
図9(b)は、スキージ21がペースト材30と接触する面の図である。
図9(b)のスキージ21のB−B’線での断面が
図9(a)のスキージ21である。
【0067】
スキージ21は、スキージ母材21aに前述の摩擦変更部44を備える。スキージ21では、丸型の摩擦変更部44が、複数、格子状に配列される。スキージ21によってスキージングされたペースト材30は、複数の摩擦変更部44によって流動性を高められて、各印刷開口部15bに供給される。
【0068】
図10は、本実施形態のスキージの他の例を示した説明図である。
図10を参照して、スキージ22について説明する。
【0069】
図10(a)は、
図2(c)で説明したスキージ20による印刷工程の図(ワーク100は図示せず)に対して、マスク10がマスク15に、スキージ20がスキージ22にそれぞれ変更された図である。
図10(b)は、スキージ22がペースト材30と接触する面の図である。
図10(b)のスキージ22のB−B’線での断面が
図10(a)のスキージ22である。
【0070】
スキージ22では、長方形の摩擦変更部45が、複数、列状に配列される。スキージ22によってスキージングされたペースト材30は、複数の摩擦変更部45によって流動性を高められて、各印刷開口部15bに供給される。
【0071】
このように、本実施形態では、ペースト材に接触するスキージ母材に設けられた充填部にスキージ母材とは異なる摩擦係数の部材が充填された摩擦変更部の近傍で、ペースト材の局所的ローリングが発生する。全体的ローリングに加えて局所的ローリングが発生することによって、ペースト材のローリングが促進される。そのため、本実施形態は、ペースト材の流動性がさらに高められ、印刷開口部へのペースト材の供給を容易化することができる。なお、スキージ表面の平坦性が確保されているので、スキージへのペースト材の残存はなく、スキージの清浄性は確保される。
【0072】
以上、本実施形態のペースト材印刷装置は、清浄性を確保して、ペースト材のローリングを促進することができる。さらに、本実施形態では、マスクに変更を加えることがないため、各ワークに対応して制作されるマスクの制作費用や制作期間に影響を与えず、スキージのみの対応でペースト材のローリングを促進することができる。したがって、本実施形態は、スキージのみの対応でペースト材印刷装置としての印刷性能を向上できる。
【0073】
なお、本実施形態では、スキージ母材とは摩擦係数が異なる部材による摩擦変更部を設けると説明したが、摩擦変更部の部材の摩擦係数はスキージ母材の摩擦係数に対して大きくてもよいし、小さくてもよい。すなわち、スキージ母材と摩擦変更部に接触して移動するペースト材に摩擦変更部の近傍で前述の局所的ローリングが発生させられればよい。そのため、摩擦変更部の部材の摩擦係数がスキージ母材の摩擦係数と異なっていればよい。
【0074】
さらに、本実施形態では、スキージ母材に対して、摩擦係数の大きい摩擦変更部と、摩擦係数の小さい摩擦変更部が混在して設けられてもよい。なお、スキージの全体的摩擦力を大きくしてペースト材の全体的ローリングを促進する上では、摩擦変更部の部材の摩擦係数はスキージ母材の摩擦係数より大きい方が望ましい。
【0075】
また、本実施形態では、スキージ母材の材質は限定されないが、一般的にメタルマスク母材として用いられている、ステンレス鋼やニッケル、ニッケル合金などやウレタンゴムなどを用いることができる。摩擦変更部の部材としては、スキージ母材の摩擦係数と異なる摩擦係数のエポキシ等の樹脂や異種の金属を用いることができる。
【0076】
また、本実施形態では、摩擦変更部の表面形状は、丸型または長方形として説明した。しかし、摩擦変更部の表面形状は、丸型や長方形に限定されない。すなわち、前述したようにスキージ母材と摩擦変更部とでペースト材に局所的ローリングが発生させられればよい。そのため、摩擦変更部の表面形状は、例えば、ひし形、星形、三角形でもよいし、略ドーナツ形状でもよい。さらに、摩擦変更部の表面形状のサイズや組合せも限定されない。例えば、摩擦変更部は、大きい丸型と小さい丸型のものや、丸型と矩形のものが、それぞれ、混在して設けられてもよい。そして、摩擦変更部の数量は1つ以上であればよい。
【0077】
また、本実施形態では、摩擦変更部の平面配置形状は、格子状や列状など規則的に配置して説明した。しかし、摩擦変更部の平面配置形状は、格子状や列状などの規則的な配置に限定されない。すなわち、摩擦変更部は、千鳥格子状や不規則に配置されてもよいし、各配置形状が組合せられてもよい。そして、摩擦変更部相互の間隔についても限定されない。
【0078】
このように、摩擦変更部の表面形状やサイズ、組合せ、数量、平面配置形状、相互の間隔は、摩擦変更部がペースト材に局所的ローリングを発生させるものであればよく、上記のように、それぞれ、限定されない。そして、様々な摩擦変更部がスキージに設けられることで、様々な局所ローリングが発生され、ペースト材のローリングがさらに促進される。そのため、ペースト材の流動性がさらに高められ、より微細な印刷開口部へのペースト材の供給が容易化される。
【0079】
また、本実施形態の充填部の断面形状は限定されない。すなわち、充填部に充填される部材によって摩擦変更部がスキージ表面に設けられればよく、充填部の断面形状は限定されない。例えば、充填部の断面形状は、テーパ形状や段付き形状、鼓形状であってもよい。充填部の断面形状がテーパ形状や段付き形状、鼓形状とすることで、充填部の加工が容易となる、充填部への部材の充填が容易となる、あるいは充填された部材の脱落を抑制するなどの効果が得られる。
【0080】
また、本実施形態の摩擦変更部は、第2の実施形態や第3の実施形態と同様に、スキージを貫通しない充填部やスキージ表面に設けられてもよく、それぞれ同様の効果が得られる。
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態について説明する。
図11は、本発明の第5実施形態のペースト材印刷装置5構成例を示した断面説明図である。
【0081】
図11を参照して、本実施形態のペースト材印刷装置5について説明する。ペースト材印刷装置5は、
図8で説明したマスク15がシルクスクリーン50に、スキージ21がスキージ23に変更され、ワーク200が追加されていることが、第4の実施形態と相違する。よって、第4の実施形態と同一の構成要素には同一の参照番号を付記して、その説明を省略する。
【0082】
ペースト材印刷装置5は、ワーク200と、ペースト材30をワーク200に印刷するためのシルクスクリーン50と、スキージ23を備える。
【0083】
シルクスクリーン50は、ワーク200にペースト材30を印刷しない部分にはマスク用乳剤50aが塗布され、ペースト材30を印刷する部分にはマスク用乳剤50aが塗布されない印刷開口部50bを備える。
【0084】
スキージ23は、スキージ母材23aとは摩擦係数の異なる部材がスキージ母材23aの表面にメッキされた摩擦変更部46を備える。摩擦変更部46は、
図8で説明したスキージ21の充填部21cをスキージに設けず、スキージ母材23aとは摩擦係数の異なる部材がスキージ母材23aにメッキされて設けられる。
【0085】
スキージ23は、シルクスクリーン50との間にペースト材30を挟んで、ペースト材30に下方向への印圧をかけながらシルクスクリーン50の表面を左方向から右方向にペースト材30を移動させる。
【0086】
このとき、シルクスクリーン50の表面上のペースト材30には、スキージ23からの印圧とシルクスクリーン50からの摩擦力を受けて、左方向へのペースト材の流れ30aが発生する。そして、スキージ23に遮られたペースト材30には、スキージ23からの印圧に対するシルクスクリーン50からの反発力とスキージ23からの摩擦力を受けて、スキージ23の表面に沿って右上方向へのペースト材の流れ30aが発生する。さらに、スキージ23の上辺付近のペースト材30には、重力によりスキージ23の表面を離れて右下方向へ向きを変えたペースト材の流れ30aが発生する。
【0087】
このように、ペースト材30には、スキージ23によってシルクスクリーン50の表面を移動させられることにより、上述のペースト材の流れ30aが、それぞれ発生する。そのため、ペースト材30には、それぞれのペースト材30の流れ30aの大きな流れとして、全体的ローリング30bが発生する。
【0088】
さらに、ペースト材30は、スキージ23によりスキージングされ、ローリングされることによって流動性が高められる。流動性が高められたペースト材30は、マスク用乳剤50aが塗布されていない印刷開口部50bからワーク200に押し出される。
【0089】
スキージ23がペースト材30をスキージングした後方では、シルクスクリーン50がワーク200から離れる。シルクスクリーン50が離れた後のワーク200の所定の位置には、所定の量のペースト材30が被印刷ペースト材32として印刷される。
【0090】
ここで、スキージ23は、スキージ母材23aとは摩擦係数が異なる部材がメッキされた摩擦変更部46を備える。そのため、ペースト材30は、スキージ母材23aと摩擦変更部46の境界で摩擦係数が異なることにより、スキージ23から受ける摩擦力が局所的に不連続となり負荷が発生する。負荷の発生により、スキージ表面のペースト材の流れ30aには、局所的ローリング30cが発生する。局所的ローリング30cの発生により、ペースト材30の流動性がさらに高められ、印刷開口部50bへのペースト材30の供給が容易化される。
【0091】
このように、本実施形態では、ペースト材に接触するスキージ母材に設けられた充填部にスキージ母材とは異なる摩擦係数の部材が充填された摩擦変更部の近傍で、ペースト材の局所的ローリングが発生する。全体的ローリングに加えて局所的ローリングが発生することによって、ペースト材のローリングが促進される。そのため、本実施形態は、ペースト材の流動性がさらに高められ、印刷開口部へのペースト材の供給を容易化することができる。なお、スキージ表面の平坦性が確保されているので、スキージへのペースト材の残存はなく、スキージの清浄性は確保される。なお、シルクスクリーンを使用したペースト材印刷装置においても、上述のように、ペースト材のローリングを促進することは、ワークにより精細なペースト材の印刷を行うために有効である。
【0092】
以上、本実施形態のペースト材印刷装置は、これまでの実施形態と同様に、清浄性を確保して、ペースト材のローリングを促進することができる。さらに、本実施形態では、シルクスクリーンに変更を加えることがないため、各ワークに対応して制作されるシルクスクリーンの制作費用や制作期間に影響を与えず、スキージのみの対応でペースト材のローリングを促進することができる。したがって、本実施形態は、スキージのみの対応でペースト材印刷装置としての印刷性能を向上できる。そして、本実施形態では、スキージ表面にスキージ母材とは異なる摩擦係数の部材がメッキされるため、摩擦変更部の部材の使用量が削減される。また、本実施形態では、スキージに充填部を設けないので、スキージの強度は低下しない。
【0093】
なお、本実施形態では、摩擦変更部の部材はメッキされると説明した。しかし、摩擦変更部の部材はメッキされることに限定されない。すなわち、摩擦変更部の部材が所定の摩擦力を維持でき、ペースト材の残存を少なくできる厚さでスキージ表面に摩擦変更部は設けられればよい。例えば、摩擦変更部の部材が蒸着または塗布されて、摩擦変更部は形成されてもよい。
【0094】
なお、本願発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、本願発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更、変形して実施することができる。
【0095】
例えば、本発明の第1から第4の実施形態では、摩擦変更部がマスクとスキージのどちらか一方に設けられると説明が、摩擦変更部はマスクとスキージの双方に設けられてもよい。マスクとスキージの双方に摩擦変更部が設けられることで、ペースト材のローリングはさらに促進される。
【0096】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
ペースト材との接触面に、母材とは異なる摩擦係数の第1部材の第1摩擦変更部を設ける
ことを特徴とするペースト材印刷装置。
(付記2)
前記第1摩擦変更部は前記母材に設けられた充填部に前記第1部材が充填される
ことを特徴とする付記1に記載のペースト材印刷装置。
(付記3)
前記充填部が前記母材を貫通する、または前記接触面から所定の深さを備える
ことを特徴とする付記2に記載のペースト材印刷装置。
(付記4)
前記充填部の断面形状がテーパ形状、段付き形状または鼓形状である
ことを特徴とする付記3に記載のペースト材印刷装置。
(付記5)
前記第1部材が前記接触面にメッキ、蒸着、または塗布される
ことを特徴とする付記1から4のいずれかに記載のペースト材印刷装置。
(付記6)
前記母材より前記第1部材の前記摩擦係数が大きい
ことを特徴とする付記1から5のいずれかに記載のペースト材印刷装置。
(付記7)
前記第1摩擦変更部が前記母材に1つ以上設けられる
ことを特徴とする付記1から6のいずれかに記載のペースト材印刷装置。
(付記8)
前記第1摩擦変更部の前記接触面の平面形状が、円形、多角形、略ドーナツ形状またはそれらの組み合わせである
ことを特徴とする付記1から7のいずれかに記載のペースト材印刷装置。
(付記9)
前記第1摩擦変更部の前記接触面の平面配置形状が、列状、格子状、千鳥格子状または不規則である
ことを特徴とする付記1から8のいずれかに記載のペースト材印刷装置。
(付記10)
印刷開口部および前記印刷開口部の相互の間隔の精細さの度合いに対応して、前記第1摩擦変更部の配置密度を高める
ことを特徴とする付記1から9のいずれかに記載のペースト材印刷装置。
(付記11)
前記接触面に、前記母材および前記第1部材とは異なる摩擦係数の第2部材の第2摩擦変更部をさらに設ける
ことを特徴とする付記1から10のいずれかに記載のペースト材印刷装置。
(付記12)
マスク母材およびスキージ母材のうち少なくとも一方が前記母材である
ことを特徴とする付記1から11のいずれかに記載のペースト材印刷装置。
(付記13)
前記母材がマスク母材であるとき、前記第1摩擦変更部および前記第2摩擦変更部のうち少なくとも一方がスキージングの上流部分に設けられる
ことを特徴とする付記12に記載のペースト材印刷装置。
(付記14)
前記ペースト材がはんだペースト材である
ことを特徴とする付記1から13のいずれかに記載のペースト材印刷装置。
(付記15)
ペースト材との接触面に、母材とは異なる摩擦係数の第1部材の第1摩擦変更部を設ける
ことを特徴とするマスク。
(付記16)
印刷用開口部よりも先にスキージングされる前記第1摩擦変更部が1つ以上配置される
ことを特徴とする付記15に記載のマスク。
(付記17)
ペースト材との接触面に、母材とは異なる摩擦係数の第1部材の第1摩擦変更部を設ける
ことを特徴とするスキージ。
(付記18)
母材と異なる摩擦係数の第1部材の第1摩擦変更部をペースト材との接触面に設けて、前記母材と前記第1摩擦変更部がペースト材と接触してペースト材を印刷する
ことを特徴とするペースト材印刷方法。