特許第6369475号(P6369475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6369475
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】封止用樹脂組成物及び封止用シート
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20180730BHJP
   C08L 71/10 20060101ALI20180730BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20180730BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20180730BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20180730BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20180730BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20180730BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20180730BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20180730BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   C08L63/00 C
   C08L71/10
   C08K3/26
   C08K3/34
   C08K3/36
   C08K5/54
   C08G59/40
   C08J5/18CFC
   H01L23/30 R
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-546685(P2015-546685)
(86)(22)【出願日】2014年11月7日
(86)【国際出願番号】JP2014079523
(87)【国際公開番号】WO2015068786
(87)【国際公開日】20150514
【審査請求日】2017年10月10日
(31)【優先権主張番号】特願2013-232532(P2013-232532)
(32)【優先日】2013年11月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100117743
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 美由紀
(74)【代理人】
【識別番号】100163658
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 順造
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(72)【発明者】
【氏名】高田 基之
【審査官】 柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−234034(JP,A)
【文献】 特開2003−105174(JP,A)
【文献】 特開2009−029919(JP,A)
【文献】 特開2002−256252(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0208106(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0265438(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00−63/10
C08G 59/00−59/72
C08J 5/18
C08K 3/00−13/08
H01L 23/29
H01L 23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)焼成ハイドロタルサイト、(C)タルク及び(D)シリカを含有する封止用樹脂組成物であって、
(A)エポキシ樹脂80質量部に対し、(B)が3〜38質量部、(C)が1〜16質量部及び(D)が1〜16質量部であることを特徴とする封止用樹脂組成物。
【請求項2】
(A)エポキシ樹脂の透過率が90%以上である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
さらに(E)熱可塑性樹脂を(A)エポキシ樹脂80質量部に対し、1〜40質量部含有する、請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(E)熱可塑性樹脂がフェノキシ樹脂である、請求項3項記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(E)熱可塑性樹脂の透過率が90%以上である、請求項3または4記載の樹脂組成物。
【請求項6】
さらに(F)表面処理剤を(A)エポキシ樹脂80質量部に対し、0.1〜3質量部含有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(F)表面処理剤がシランカップリング剤である、請求項6項記載の樹脂組成物。
【請求項8】
当該樹脂組成物の硬化物の透過率が84%以上である、請求項1〜7のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項9】
さらに(G)硬化剤を(A)エポキシ樹脂80質量部に対し、0.1〜3質量部含有する、請求項1〜8のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項10】
(G)硬化剤がイオン液体である、請求項9記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項記載の樹脂組成物の層が支持体上に形成されてなる封止用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は封止用樹脂組成物および封止用シートに関し、特に有機EL(Electroluminescence)素子等の発光素子および太陽電池等の受光素子等の光電変換素子の封止等に好適な封止用樹脂組成物および封止用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electroluminescence)素子は発光材料に有機物質を使用した発光素子であり、低電圧で高輝度の発光を得ることができるため近年脚光を浴びている。しかしながら、有機EL素子は水分に極めて弱く、発光材料(発光層)が水分によって変質して、輝度が低下したり、発光しなくなったり、電極と発光層との界面が水分の影響で剥離したり、金属が酸化して高抵抗化してしまったりする問題がある。このため、素子内部を外気中の水分から遮断するために、例えば、基板上に形成された発光層の全面を覆うように樹脂組成物による封止層を形成して有機EL素子を封止することが行われる。
【0003】
ところで、このような有機EL素子の封止に使用する樹脂組成物には、高いバリア性(耐透湿性)だけでなく、高い接着強度が必要であり、また、封止面(封止層の表面)から光を取り出す場合に、高い透過性が求められる。従来、この種の樹脂組成物としては、高いバリア性と高い接着強度を実現するために、タルクや酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム等の吸湿性金属酸化物の粒子を樹脂組成物に含有させることが提案されている(例えば、特許文献1:特開2011−84667号公報)。しかし、かかる吸湿性金属酸化物を使用すると、樹脂組成物の透過性が失われるため、高い透過性が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−84667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、耐透湿性、接着強度および透過性のいずれもが良好な封止用樹脂組成物を提供することである
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究をした結果、ハイドロタルサイト焼成粉体、タルクおよびシリカを、それぞれ、エポキシ樹脂に対して特定量配合せしめた組成物は、耐透湿性、接着強度及び透過性のいずれもが良好な樹脂組成物となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の特徴を有する。
[1] (A)エポキシ樹脂、(B)焼成ハイドロタルサイト、(C)タルク及び(D)シリカを含有する封止用樹脂組成物であって、
(A)エポキシ樹脂80質量部に対し、(B)が3〜38質量部、(C)が1〜16質量部及び(D)が1〜16質量部であることを特徴とする封止用樹脂組成物。
[2] (A)エポキシ樹脂の透過率が90%以上である、上記[1]記載の樹脂組成物。
[3] さらに(E)熱可塑性樹脂を(A)エポキシ樹脂80質量部に対し、1〜40質量部含有する、上記[1]又は[2]記載の樹脂組成物。
[4] (E)熱可塑性樹脂がフェノキシ樹脂である、上記[3]記載の樹脂組成物。
[5] (E)熱可塑性樹脂の透過率が90%以上である、上記[3]または[4]記載の樹脂組成物。
[6] さらに(F)表面処理剤を(A)エポキシ樹脂80質量部に対し、0.1〜3質量部含有する、上記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[7] (F)表面処理剤がシランカップリング剤である、上記[6]記載の樹脂組成物。
[8] 当該樹脂組成物の硬化物の透過率が84%以上である、上記[1]〜[7]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[9] さらに(G)硬化剤を(A)エポキシ樹脂80質量部に対し、0.1〜3質量部含有する、上記[1]〜[8]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[10] (G)硬化剤がイオン液体である、上記[9]記載の樹脂組成物。
[11] 上記[1]〜[10]のいずれか1つに記載の樹脂組成物の層が支持体上に形成されてなる封止用シート。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、バリア性(耐透湿性)、接着強度及び透過性のいずれもが良好な封止用樹脂組成物を得ることができる。したがって、本発明の封止用樹脂組成物を例えば有機EL素子等の発光素子の封止に使用すれば、素子内部が外気中の水分から確実かつ長期に亘って遮断されて、発光動作が長期に亘って安定化し、しかも、封止面から光を効率よく取り出せる発光素子を実現することができる。
また、本発明の封止用樹脂組成物は、バリア性(耐透湿性)、接着強度及び透過性のいずれもが良好であるため、例えば、太陽電池パネルでの、ガラスとバックシートの間に挟まれた太陽電池セルのシリコン等の半導体をガラス板に固定したり、湿気から保護するための封止材等としても好適に使用することができる。従って、本発明の封止用樹脂組成物は発光素子だけでなく、太陽電池等の受光素子を含む光電変換素子の封止用として使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】耐透湿性試験による耐透湿性が良好と評価された浸水域の代表写真である。
図2】耐透湿性試験による耐透湿性が可と評価された浸水域の代表写真である。図中の囲み線は浸水域を特定するために付した線である。
図3】耐透湿性試験による耐透湿性が不可と評価された浸水域の代表写真である。図中の囲み線は浸水域を特定するために付した線である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳しく説明する。
本発明の封止用樹脂組成物は、
(A)エポキシ樹脂、
(B)焼成ハイドロタルサイト、
(C)タルク及び
(D)シリカを含有する組成物であって、
(A)エポキシ樹脂80質量部に対し、(B)が3〜38質量部、(C)が1〜16質量部及び(D)が1〜16質量部であることが主たる特徴である。
【0011】
[(A)エポキシ樹脂]
本発明で使用するエポキシ樹脂は、平均して1分子当り2個以上のエポキシ基を有し、かつ、透過率の高いものであれば制限なく使用できる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂(例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、ジグリシジルトルイジン、ジグリシジルアニリン等)、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物、及びアルコール類のジグリシジルエーテル化物、並びにこれらのエポキシ樹脂のアルキル置換体、ハロゲン化物及び水素添加物等が挙げられる。かかるエポキシ樹脂はいずれか1種を使用するか2種以上を混合して用いることができる。本発明におけるエポキシ樹脂は重量平均分子量15000未満のものを用いることができる。
【0012】
エポキシ樹脂は、中でも、透過率が80%以上のものが好ましく、透過率が85%以上のものがより好ましく、透過率が90%以上のものが特に好ましい。かかる好適なエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0013】
なお、本発明でいう透過率とは、全光線透過率を指し、材料を通して明るさがどの程度伝わるかを調べる目的で測定される反射や散乱を考慮した光線透過率である。入射光には可視光線や紫外線を利用し、透過した光を積分球で集める方法で測定される。具体的にはファイバー式分光光度計(例えばMCPD−7700、大塚電子社製)を用いて、試料(絶縁層厚20μm)にハロゲンランプの入射光を照射し、8°投光のφ60mm積分球にて収光された全光線透過率スペクトルの450nmの値を空気をリファレンスとして測定した値を、本発明における透過率とすることができる。
【0014】
後記にて詳述するように、本発明の樹脂組成物は、封止対象物に直接塗布し、その塗膜を硬化することで封止層を形成する態様の他、本発明の樹脂組成物を溶剤と混合してワニスにし、該ワニスを支持体上に塗布、乾燥して本発明の樹脂組成物の層を形成した封止用シートを作製し、封止用シートを封止対象物にラミネートして封止を行う態様にて、使用される。
【0015】
エポキシ樹脂は、液状であっても、固形状であっても、液状と固形状の両方を用いてもよい。ここで、「液状」及び「固形状」とは、常温(25℃)でのエポキシ樹脂の状態である。塗工性、加工性、接着性の観点から、使用するエポキシ樹脂全体の少なくとも10質量%以上が液状であるのが好ましい。
【0016】
また、エポキシ樹脂は、反応性の観点から、エポキシ当量が100〜1000g/eqの範囲が好ましく、120〜1000g/eqの範囲がより好ましく、150〜1000g/eqの範囲が更に好ましい。なお、「エポキシ当量」とは1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(g/eq)であり、JIS K 7236に規定された方法に従って測定される。
【0017】
本発明の樹脂組成物におけるエポキシ樹脂の含有量は、樹脂組成物(不揮発分)全体当たり、20〜80質量%が好ましく、30〜70質量%の範囲であるのがより好ましく、50〜65質量%の範囲であるのがさらにより好ましい。
【0018】
[(B)焼成ハイドロタルサイト]
本発明の樹脂組成物は、焼成ハイドロタルサイトを含有する。
焼成ハイドロタルサイトは天然ハイドロタルサイト(MgAl(OH)16CO・4HO)および/または合成のハイドロタルサイト(ハイドロタルサイト様化合物)の焼成したものである。合成のハイドロタルサイト(ハイドロタルサイト様化合物)としては、例えば、下記一般式(I)で表される複水酸化物、下記一般式(II)で表される複水酸化物等が挙げられる。
【0019】
【化1】
【0020】
(式中、M2+はMg2+、Zn2+などの2価の金属イオンを表し、M3+はAl3+、Fe3+などの3価の金属イオンを表し、An−はCO2−、Cl、NOなどのn価のアニオンを表し、0<x<1であり、0≦m<1であり、nは正の数である。)
【0021】
【化2】
【0022】
(式中、M2+はMg2+、Zn2+などの2価の金属イオンを表し、An−はCO2−、Cl、NOなどのn価のアニオンを示し、xは2以上の正の数であり、zは2以下の正の数であり、mは正の数であり、nは正の数である。)
【0023】
すなわち、「焼成ハイドロタルサイト」は、天然ハイドロタルサイト(MgAl(OH)16CO・4HO)および/または合成のハイドロタルサイト(ハイドロタルサイト様化合物)を焼成して、層間のアニオンと水分子を気化させて得られる、複合酸化物であり、好適には、400〜900℃、より好ましくは、500〜700℃で、30分〜5時間、より好ましくは30分〜3時間、さらに好ましくは45分〜2時間焼成して得られる複合酸化物が挙げられる。
【0024】
好ましい焼成ハイドロタルサイトは、上記式(II)の複水酸化物等のMg−Al系ハイドロタルサイト様化合物を焼成して得られるMg−Al系複合酸化物であり、当該Mg−Al系複合酸化物は、MgとAlの組成比をMg:Al=x:2とした場合のxが2≦x≦6である組成比の複合酸化物がより好ましく、当該xが3≦x≦6である組成比の複合酸化物がさらに好ましく、当該xが4≦x≦6である組成比の複合酸化物が特に好ましい。
【0025】
本発明において使用する焼成ハイドロタルサイトは、樹脂組成物の透過性、吸湿性の観点から粒径が小さいものを使用するのが好ましい。一般に、粉体状態の焼成ハイドロタルサイトはその多くが一次粒子が凝集した二次粒子となっていると考えられ、一次粒子の平均粒径の測定は比較的困難であることから、BET比表面積を所定の値とすることで、本発明により好適な焼成ハイドロタルサイトとすることができる。好適なBET比表面積は5〜200m/gであり、10〜150m/gであるのがより好ましい。
【0026】
BET比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(Macsorb HM Model-1210(株)マウンテック製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。焼成ハイドロタルサイトのBET比表面積の調整は、焼成前のハイドロタルサイトを粉砕、分級するか、ハイドロタルサイトの焼成体(焼成ハイドロタルサイト)を粉砕、分級するか、或いは、これら両者を組み合わせて行うことができる。
【0027】
焼成ハイドロタルサイトは焼成によって多孔化するため、樹脂組成物内に入射した光は焼成ハイドロタルサイトの存在によってその散乱性が高くなり、透過性向上により有利に作用する。
【0028】
本発明の樹脂組成物において、(B)焼成ハイドロタルサイトの含有量は、(A)エポキシ樹脂80質量部に対して3〜38質量部であり、耐透湿性、透過性の観点から、好ましく5〜35質量部であり、より好ましくは10〜35質量部である。配合量が少なすぎると耐透湿性が低下する傾向となり、透過率が低下する傾向となる。
【0029】
なお、(B)焼成ハイドロタルサイトの含有量は樹脂組成物(不揮発分)全体当たり、2〜24質量%が好ましく、5〜23質量%の範囲であるのがより好ましい。
【0030】
[(C)タルク]
本発明の樹脂組成物はタルクを含有する。タルクは樹脂組成物の特に接着強度向上に寄与し、少量の配合によって、樹脂組成物の接着強度を大きく向上させることができる。タルクの平均粒径は接着強度、透過率の観点から、0.5〜2μmが好ましく、0.8〜1.5μmがより好ましい。
【0031】
タルクの平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製LA−500を使用することができる。
【0032】
本発明の樹脂組成物において、(C)タルクの含有量は、(A)エポキシ樹脂80質量部に対して1〜16質量部であり、特に、樹脂組成物の接着強度および透過率を高いレベルに維持する観点からは、1〜10質量部が好ましく、より好ましくは2〜8質量部である。タルクの配合量が少な過ぎると接着強度が低下する傾向にあり、多すぎると透過率が低下する傾向にある。
【0033】
なお、(C)タルクの含有量は樹脂組成物(不揮発分)全体当たり、0.5〜12質量%が好ましく、1.0〜11質量%の範囲であるのがより好ましい。
【0034】
[(D)シリカ]
本発明の樹脂組成物はシリカを含有する。シリカは樹脂組成物の特に耐透湿性および透過率の向上に寄与し、少量の配合によって、樹脂組成物の接着強度を低下させることなく、耐透湿性および透過率を向上させることができる。シリカとしては、一次粒子の粒径がナノオーダーのいわゆるナノシリカが好ましい。一次粒子の粒経が1〜100nmのものがより好ましく、1〜50nmであるものがより好ましく、10〜20nmのものがより好ましく、10〜15nmのものがより好ましい。ナノシリカの1次粒子径の測定は比較的困難であることから、比表面積測定値(JIS Z8830に準拠)からの換算値が用いられることがある。本発明に好適なシリカにおいても、BET比表面積を所定の値とすることで、本発明により好適なシリカとすることができる。好適なBET比表面積は2720〜27m/gであり、2720〜54m/gであるのがより好ましく、272〜136m/gであるのがより好ましく、272〜181m/gであるのがより好ましい。
【0035】
シリカは、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカ(水分散型、有機溶剤分散型、気相シリカ等)等のいずれも使用可能であるが、沈殿、沈降しにくく、樹脂との複合化がしやすいという観点から、コロイダルシリカが好ましく、有機溶剤分散型コロイダルシリカ(オルガノシリカゾル)が特に好ましい。具体的には、球状のコロイダルシリカとして、日産化学工業社製のスノーテックス−C、スノーテックス−O、スノーテックス−N、スノーテックス−S、スノーテックス−OL、スノーテックス−XS、スノーテックス−XL、MP1040等があり、有機溶剤に分散させたオルガノシリカゾルとして、IPA−ST、MEK−ST、IPA−ST−ZL等の一般グレードの他、MEK−EC、MEK−AC、PGM−AC等の表面改質グレードがある。鎖状のコロイダルシリカとして、日産化学工業社製のスノーテックス−UP、スノーテックス−OUP等があり、オルガノシリカゾルとして、IPA−ST−UP等がある。気相シリカとしては、日本アエロジル社製のアエロジル130、アエロジル200、アエロジル200CF、アエロジル300、アエロジル300CF、アエロジル380、アエロジルMOX80等がある。
【0036】
本発明の樹脂組成物において、(D)シリカの含有量は、(A)エポキシ樹脂80質量部に対して1〜16質量部であり、特に、樹脂組成物の接着強度および透過率を高いレベルに維持する観点からは、1〜14質量部が好ましく、より好ましくは5〜12質量部である。
【0037】
なお、(D)シリカの含有量は樹脂組成物(不揮発分)全体当たり、0.5〜10質量%が好ましく、1.0〜9質量%の範囲であるのがより好ましい。
【0038】
本発明の樹脂組成物には、樹脂組成物の耐透湿性、封止シートを調製する際の樹脂組成物ワニスの塗工性(はじき防止)等の観点から、本発明の効果が阻害されない範囲で、ハイドロタルサイト、タルクおよびシリカ以外の無機充填材をさらに含有させることができる。そのような無機充填材としては、例えば、アルミナ、硫酸バリウム、クレー、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられる。無機充填材は1種又は2種以上を使用できる。
【0039】
本発明の樹脂組成物が無機充填材を含有する場合、無機充填材の含有量は、樹脂組成物(不揮発分)全体当たり、30質量%以下であるのが好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0040】
[(E)熱可塑性樹脂]
本発明の樹脂組成物には、樹脂組成物を硬化して得られる封止層への可撓性の付与、封止シートを調製する際の樹脂組成物ワニスの塗工性(はじき防止)等観点から、熱可塑性樹脂を含有させることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂等を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂はいずれか1種を使用しても2種以上を混合して用いてもよい。熱可塑性樹脂は、樹脂組成物を硬化して得られる封止層への可撓性の付与、封止シートを調製する際の樹脂組成物ワニスの塗工性(はじき防止)等の点から、重量平均分子量が15,000以上であるのが好ましく、20,000以上がより好ましい。しかし、重量平均分子量が大きすぎると、エポキシ樹脂との相溶性が低下する等の傾向があることから、重量平均分子量は1,000,000以下であるのが好ましく、800,000以下がより好ましい。
【0041】
なお、ここでいう「熱可塑性樹脂の重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定される。GPC法による重量平均分子量は、具体的には、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0042】
また、熱可塑性樹脂は、透過率が80%以上のものが好ましく、透過率が90%以上のものがより好ましい。
【0043】
熱可塑性樹脂は、上述した例示物の中でも、フェノキシ樹脂が特に好ましい。フェノキシ樹脂はエポキシ樹脂との相溶性が良く、樹脂組成物の透過性、耐透湿性に有利に作用する。
【0044】
フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格等から選択される1種以上の骨格を有するものが挙げられる。フェノキシ樹脂は1種または2種以上を使用できる。
【0045】
フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、三菱化学(株)製YL7213B35(ビフェニル骨格含有フェノキシ樹脂)、1256(ビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、YX6954BH35(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)等を好適に使用することができる。
【0046】
本発明の樹脂組成物において、熱可塑性樹脂の含有量は、樹脂組成物(不揮発分)全体当たり1〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
【0047】
[(F)表面処理剤]
本発明の樹脂組成物には、樹脂組成物の接着強度向上の観点から、表面処理剤を含有させることができる。かかる表面処理剤としては、例えば、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、シランカップリング剤等のカップリング剤を挙げることができる。カップリング剤は、中でも、シランカップリング剤が好ましい。カップリング剤は1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
シランカップリング剤としては、例えば、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシランおよび2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ系シランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン及び11−メルカプトウンデシルトリメトキシシランなどのメルカプト系シランカップリング剤;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルジメトキシメチルシランなどのアミノ系シランカップリング剤;3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイド系シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルメチルジエトキシシランなどのビニル系シランカップリング剤;p−スチリルトリメトキシシランなどのスチリル系シランカップリング剤;3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよび3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリレート系シランカップリング剤;3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート系シランカップリング剤;ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系シランカップリング剤;フェニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等を挙げることができる。これらの中でも、エポキシ系シランカップリング剤が特に好適である。
【0049】
本発明の樹脂組成物において、表面処理剤を使用する場合、表面処理剤の含有量は、樹脂組成物(不揮発分)全体当たり、0.5〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。この範囲外で含有した場合、表面処理剤添加による密着性の改善効果を得ることができない。
【0050】
なお、本発明における焼成ハイドロタルサイト、タルク、シリカ、その他の無機充填材は、分散性等の向上のため、これら表面処理剤で表面処理されているものを用いてもよい。
【0051】
[ゴム粒子]
本発明の樹脂組成物には、樹脂組成物を硬化して得られる封止層の機械強度の向上や応力緩和等の目的からゴム粒子を含有させてもよい。当該ゴム粒子は、樹脂組成物を調製する際の有機溶媒にも溶解せず、エポキシ樹脂等の樹脂組成物中の成分とも相溶せず、樹脂組成物のワニス中では分散状態で存在するものが好ましい。このようなゴム粒子は、一般には、ゴム成分の分子量を有機溶剤や樹脂に溶解しないレベルまで大きくし、粒子状とすることで調製することができ、具体的には、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリルニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子等が挙げられる。コアシェル型ゴム粒子は、粒子がコア層とシェル層を有するゴム粒子であり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマー、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、または外層のシェル層がガラス状ポリマー、中間層がゴム状ポリマー、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のものなどが挙げられる。ガラス層は例えば、メタクリル酸メチルの重合物などで構成され、ゴム状ポリマー層は例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)などで構成される。コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、スタフィロイドAC3832、AC3816N(以上、ガンツ化成(株)製)、メタブレンKW−4426(三菱レイヨン(株)製)、F351(日本ゼオン(株)製)等が挙げられる。アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、XER−91(JSR(株)製)などが挙げられる。スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例としては、XSK−500(JSR(株)製)などが挙げられる。アクリルゴム粒子の具体例としては、メタブレンW300A、W450A(以上、三菱レイヨン(株)製)を挙げることができる。
【0052】
ゴム粒子の平均粒子径は0.005〜1μmの範囲が好ましく、0.2〜0.6μmの範囲がより好ましい。かかるゴム粒子の平均粒子径は、動的光散乱法を用いて測定することが出来る。例えば、適当な有機溶剤にゴム粒子を超音波などにより均一に分散させ、FPRA−1000(大塚電子(株)製)を用いて、ゴム粒子の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒子径とすることで測定される。
【0053】
本発明の樹脂組成物において、ゴム粒子を使用する場合、ゴム粒子の含有量は、樹脂組成物(不揮発分)全体当たり、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。0.1質量%よりも少ないとゴム粒子を配合することの効果が十分に得られず、20質量%より多いと、耐熱性、耐透湿性が低下する場合がある。
【0054】
[(G)硬化剤]
本発明の樹脂組成物は、通常、エポキシ樹脂の硬化剤を含有する。すなわち、封止層は、樹脂組成物層を硬化させた硬化物層として得られる。硬化剤はエポキシ樹脂を硬化する機能を有するものであれば特に限定されないが、樹脂組成物の硬化処理時における有機EL素子等の発光素子の熱劣化を抑制する観点から、140℃以下(好ましくは120℃以下)の温度下でエポキシ樹脂を硬化し得るものが好ましい。
【0055】
例えば、一級アミン、二級アミン、三級アミン系硬化剤、ポリアミノアミド系硬化剤、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド等が挙げられるが、中でも、速硬化性の点から、アミンアダクト系化合物(アミキュアPN−23、アミキュアMY−24、アミキュアPN−D、アミキュアMY−D、アミキュアPN−H、アミキュアMY−H、アミキュアPN−31、アミキュアPN−40、アミキュアPN−40J等(いずれも味の素ファインテクノ株式会社製))、有機酸ジヒドラジド(アミキュアVDH−J、アミキュアUDH、アミキュアLDH等(いずれも味の素ファインテクノ株式会社製))等が特に好ましい。
【0056】
また、140℃以下(好ましくは120℃以下)の温度下でエポキシ樹脂を硬化し得るイオン液体、すなわち、140℃以下(好ましくは120℃以下)の温度領域で融解しうる塩であって、エポキシ樹脂の硬化作用を有する塩も、(G)硬化剤として特に好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物においては、エポキシ樹脂に当該イオン液体を均一に溶解している状態で使用されるのが望ましく、また、イオン液体は樹脂硬化物の耐透湿性向上に有利に作用する。
【0057】
かかるイオン液体を構成するカチオンとしては、イミダゾリウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピラゾニウムイオン、グアニジニウムイオン、ピリジニウムイオン等のアンモニウム系カチオン;テトラアルキルホスホニウムカチオン(例えば、テトラブチルホスホニウムイオン、トリブチルヘキシルホスホニウムイオン等)等のホスホニウム系カチオン;トリエチルスルホニウムイオン等のスルホニウム系カチオン等が挙げられる。
【0058】
また、かかるイオン液体を構成するアニオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物系アニオン;メタンスルホン酸イオン等のアルキル硫酸系アニオン;トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロホスホン酸イオン、トリフルオロトリス(ペンタフルオロエチル)ホスホン酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、トリフルオロ酢酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン等の含フッ素化合物系アニオン;フェノールイオン、2−メトキシフェノールイオン、2,6−ジ−tert−ブチルフェノールイオン等のフェノール系アニオン;アスパラギン酸イオン、グルタミン酸イオン等の酸性アミノ酸イオン;グリシンイオン、アラニンイオン、フェニルアラニンイオン等の中性アミノ酸イオン;N−ベンゾイルアラニンイオン、N−アセチルフェニルアラニンイオン、N−アセチルグリシンイオン等の下記一般式(1)で示されるN−アシルアミノ酸イオン;ギ酸イオン、酢酸イオン、デカン酸イオン、2−ピロリドン−5−カルボン酸イオン、α−リポ酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、馬尿酸イオン、N−メチル馬尿酸イオン、安息香酸イオン等のカルボン酸系アニオンが挙げられる。
【0059】
【化3】
【0060】
(式中、R−CO−は炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖の脂肪酸より誘導されるアシル基、或いは、置換または無置換ベンゾイル基であり、Xはアミノ酸の側鎖を表す。)
【0061】
該式(1)におけるアミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、アラニン、フェニルアラニンなどが挙げられ、中でも、グリシンが好ましい。
【0062】
上述の中でも、カチオンは、アンモニウム系カチオン、ホスホニウム系カチオンが好ましく、イミダゾリウムイオン、ホスホニウムイオンがより好ましい。イミダゾリウムイオンは、より詳細には、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムイオン等である。
【0063】
また、アニオンは、フェノール系アニオン、一般式(1)で示されるN−アシルアミノ酸イオン又はカルボン酸系アニオンが好ましく、N−アシルアミノ酸イオン又はカルボン酸系アニオンがより好ましい。
【0064】
フェノール系アニオンの具体例としては、2,6−ジ−tert−ブチルフェノールイオンが挙げられる。また、カルボン酸系アニオンの具体例としては、酢酸イオン、デカン酸イオン、2−ピロリドン−5−カルボン酸イオン、ギ酸イオン、α−リポ酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、馬尿酸イオン、N−メチル馬尿酸イオン等が挙げられ、中でも、酢酸イオン、2−ピロリドン−5−カルボン酸イオン、ギ酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、馬尿酸イオン、N−メチル馬尿酸イオンが好ましく、酢酸イオン、N−メチル馬尿酸イオン、ギ酸イオンが殊更好ましい。また、一般式(1)で示されるN−アシルアミノ酸イオンの具体例としては、N−ベンゾイルアラニンイオン、N−アセチルフェニルアラニンイオン、アスパラギン酸イオン、グリシンイオン、N−アセチルグリシンイオン等が挙げられ、中でも、N−ベンゾイルアラニンイオン、N−アセチルフェニルアラニンイオン、N−アセチルグリシンイオンが好ましく、N−アセチルグリシンイオンが殊更好ましい。
【0065】
具体的なイオン液体としては、例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムラクテート、テトラブチルホスホニウム−2−ピロリドン−5−カルボキシレート、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムトリフルオロアセテート、テトラブチルホスホニウムα−リポエート、ギ酸テトラブチルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウムラクテート、酒石酸ビス(テトラブチルホスホニウム)塩、馬尿酸テトラブチルホスホニウム塩、N−メチル馬尿酸テトラブチルホスホニウム塩、ベンゾイル−DL−アラニンテトラブチルホスホニウム塩、N−アセチルフェニルアラニンテトラブチルホスホニウム塩、2,6−ジ−tert−ブチルフェノールテトラブチルホスホニウム塩、L−アスパラギン酸モノテトラブチルホスホニウム塩、グリシンテトラブチルホスホニウム塩、N−アセチルグリシンテトラブチルホスホニウム塩、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムラクテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、ギ酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム塩、馬尿酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム塩、N−メチル馬尿酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム塩、酒石酸ビス(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム)塩、N−アセチルグリシン1−エチル−3−メチルイミダゾリウム塩が好ましく、N−アセチルグリシンテトラブチルホスホニウム塩、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、ギ酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム塩、馬尿酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム塩、N−メチル馬尿酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム塩が殊更好ましい。
【0066】
上記イオン液体の合成法としては、アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、アルキルアンモニウム及びアルキルスルホニウムイオン等のカチオン部位と、ハロゲンを含むアニオン部位から構成される前駆体に、NaBF、NaPF、CFSONaやLiN(SOCF等を反応させるアニオン交換法、アミン系物質と酸エステルとを反応させてアルキル基を導入しつつ、有機酸残基が対アニオンになるような酸エステル法、及びアミン類を有機酸で中和して塩を得る中和法等があるがこれらに限定されない。アニオンとカチオンと溶媒による中和法では、アニオンとカチオンとを等量使用し、得られた反応液中の溶媒を留去して、そのまま用いることも可能であるし、更に有機溶媒(メタノール、トルエン、酢酸エチル、アセトン等)を差し液濃縮しても構わない。
【0067】
本発明の樹脂組成物において、硬化剤の含有量は、樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂の総量(不揮発分)に対し、0.1〜50質量%の範囲で使用されるのが好ましい。この範囲よりも少ないと十分な硬化性が得られない恐れがあり、50質量%より多いと、樹脂組成物の保存安定性が損なわれることがある。なお、イオン液体を使用する場合、樹脂組成物の硬化物の耐透湿性等の点からは、エポキシ樹脂の総量(不揮発分)に対し0.1〜10質量%が好ましい。
【0068】
本発明の樹脂組成物には、硬化剤としてイオン液体を使用する場合、イオン液体とともに分子内にチオール基を2個以上有するポリチオール化合物を含有させてもよい。分子内にチオール基を2個以上有するポリチオール化合物を含有させることで硬化速度を速めることができる。分子内にチオール基を2個以上有するポリチオール化合物の具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)、ジペンタエリスリトールポリ(β−チオプロピオネート)等のポリオールとメルカプト有機酸のエステル化反応によって得られるチオール化合物が挙げられる。かかるチオール化合物は、製造上塩基性物質の使用を必要としない、分子内にチオール基を2個以上有するチオール化合物である。
【0069】
また、分子内にチオール基を2個以上有するポリチオール化合物としては、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,10−デカンジチオール等のアルキルポリチオール化合物;末端チオール基含有ポリエーテル;末端チオール基含有ポリチオエーテル;エポキシ化合物と硫化水素との反応によって得られるチオール化合物;ポリチオール化合物とエポキシ化合物との反応によって得られる末端チオール基を有するチオール化合物等を挙げることができる。なお、エポキシ化合物と硫化水素との反応によって得られるチオール化合物や、ポリチオール化合物とエポキシ化合物との反応によって得られる末端チオール基を有するチオール化合物等で、その製造工程上反応触媒として塩基性物質を使用するものにあっては、脱アルカリ処理を行い、アルカリ金属イオン濃度を50ppm以下としたものを使用するのが好ましく、かかる脱アルカリ処理の方法としては、例えば処理を行うポリチオール化合物をアセトン、メタノールなどの有機溶媒に溶解し、希塩酸、希硫酸等の酸を加えることにより中和した後、抽出・洗浄等により脱塩する方法やイオン交換樹脂を用いて吸着する方法、蒸留により精製する方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
本発明の樹脂組成物において、かかるポリチオール化合物を使用する場合、エポキシ樹脂とポリチオール化合物の混合比は、SH当量数/エポキシ当量数で通常0.2〜1.2とすることが好ましい。0.2よりも少ないと十分な速硬化性が得られない場合があり、他方、1.2より多いと耐熱性などの硬化物の物性が損なわれる場合がある。接着性が安定するという観点から0.5〜1.0がより好ましい。
【0071】
[(H)硬化促進剤]
本発明の樹脂組成物は、硬化時間を調整する等の目的で硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤としては、例えば、有機ホスフィン化合物、イミダゾール化合物、アミンアダクト化合物(例えば、エポキシ樹脂に3級アミンを付加させて反応を途中で止めているエポキシアダクト化合物等)、3級アミン化合物などが挙げられる。有機ホスフィン化合物の具体例としては、TPP、TPP−K、TPP−S、TPTP−S(北興化学工業(株)商品名)などが挙げられる。イミダゾール化合物の具体例としては、キュアゾール2MZ、2E4MZ、C11Z、C11Z−CN、C11Z−CNS、C11Z−A、2MZOK、2MA−OK、2PHZ(四国化成工業(株)商品名)などが挙げられる。アミンアダクト化合物の具体例としては、フジキュア(富士化成工業(株)商品名)などが挙げられる。3級アミン化合物の具体例としては、DBU(1,8-diazabicyelo[5.4.0]undec-7-ene)、DBUの2−エチルヘキサン酸塩、オクチル酸塩などのDBU−有機酸塩、U−3512T(サンアプロ社製)等の芳香族ジメチルウレア、U−3503N(サンアプロ社製)等の脂肪族ジメチルウレアなどが挙げられる。中でも耐湿性の点からウレア化合物が好ましく、芳香族ジメチルウレアが特に好ましく用いられる。本発明の樹脂組成物において、硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂の総量を100質量%(不揮発分)とした場合、通常0.05〜5質量%の範囲で使用される。0.05質量%未満であると、硬化が遅くなり熱硬化時間が長く必要となる傾向にあり、5質量%を超えると樹脂組成物の保存安定性が低下する傾向となる。
【0072】
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果が発揮される範囲で、上述した成分以外の各種樹脂添加剤を任意で含有させても良い。このような樹脂添加剤としては、例えば、シリコーンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等の有機充填剤、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、トリアゾール化合物、チアゾール化合物、トリアジン化合物、ポルフィリン化合物等の密着性付与剤等を挙げることができる。
【0073】
本発明の樹脂組成物は、配合成分を、必要により溶媒等をさらに加えて、混練ローラーや回転ミキサーなどを用いて混合することで調製される。
【0074】
本発明の樹脂組成物は、高い透過率を有し、形成される封止層(すなわち、樹脂組成物の硬化物)は好ましくは84%以上、より好ましくは86%以上の透過率を有する。
【0075】
本発明の樹脂組成物は封止対象物に直接塗布し、その塗膜を硬化することで封止層を形成することができるが、支持体上に本発明の樹脂組成物の層を形成した封止用シートを作製し、封止用シートを封止対象物の必要箇所にラミネートして樹脂組成物層を被覆対象物に転写し、硬化することで封止層を形成するようにしてもよい。
【0076】
封止用シートは、当業者に公知の方法、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解したワニスを調製し、支持体上にワニスを塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等によって有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成させることによって製造することができる。
【0077】
封止用シートに使用する支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドなどのプラスチックフィルムが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、とくにPETが好ましい。支持体はマット処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。離型処理としては、例えば、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等の離型剤による離型処理が挙げられる。
【0078】
支持体の厚さは特に限定されないが、樹脂組成物シートの取り扱い性等の観点から、通常10〜150μmであり、好ましくは20〜100μmの範囲で用いられる。
【0079】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(以下、「MEK」とも略称する)、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。かかる有機溶剤はいずれか1種を単独で使用しても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
乾燥条件は特に制限はないが、通常50〜100℃程度で3〜15分程度が好適である。
【0081】
乾燥後に形成される樹脂組成物層の厚みは、通常3μm〜200μm、好ましくは5μm〜100μm、更に好ましくは5μm〜50μmの範囲である。
【0082】
樹脂組成物層は、保護フィルムで保護されていてもよく、保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。保護フィルムは、支持体と同様のプラスチックフィルムを用いるのが好ましい。また、保護フィルムもマット処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。保護フィルムの厚さは特に制限されないが、通常1〜150μm、好ましくは10〜100μmの範囲で用いられる。
【0083】
封止用シートは、支持体に、防湿性を有し、かつ、透過率の高い支持体を使用すれば、封止用シートを封止対象物の必要箇所にラミネートし、そのまま、樹脂組成物層を硬化して封止層を形成することで、高い耐防湿性と高い透過性を備えた封止構造を形成することができる。このような、防湿性を有し、かつ、透過率の高い支持体としては、表面に酸化ケイ素(シリカ)、窒化ケイ素、SiCN、アモルファスシリコン等の無機物を蒸着させたプラスチックフィルム等が挙げられる。プラスチックフィルムは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド等のプラスチックフィルムが使用できる。プラスチックフィルムとしては、とくにPETが好ましい。市販されている防湿性を有するプラスチックフィルムの例としては、テックバリアHX、AX、LX、Lシリーズ(三菱樹脂社製)や更に防湿効果を高めたX−BARRIER(三菱樹脂社製)等が挙げられる。封止基材は2層以上の複層構造を有するものを使用しても良い。
【0084】
封止用シートは樹脂組成物層が保護フィルムで保護されている場合はこれを剥離した後、封止用シートをその樹脂組成物層が封止対象物(例えば、有機EL素子等)に直接接するようにラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。ラミネート後、支持体を剥離し、後述の樹脂組成物層の熱硬化作業を行なう。封止用シートの支持体が防湿性を有する支持体であり、封止用シートをラミネートした後、支持体を剥離せず、そのまま後述の樹脂組成物層の熱硬化作業を行なう。
【0085】
樹脂組成物層の硬化は通常熱硬化によって行われる。例えば、熱風循環式オーブン、赤外線ヒーター、ヒートガン、高周波誘導加熱装置、ヒートツールの圧着による加熱などが挙げられる。硬化温度及び硬化時間のそれぞれの下限値は、硬化後の樹脂組成物層(封止層)を封止対象物に十分に満足できる接着強度で接着させる観点から、硬化温度においては、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく、硬化時間においては20分以上が好ましく、30分以上がより好ましい。
【実施例】
【0086】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0087】
実施例及び比較例で用いた材料(原料)は以下の通りである。
(A)エポキシ樹脂
・jER828EL(三菱化学社製):液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量(185g/eq)、透過率(91.8%)
【0088】
・jER1001B80(三菱化学社製):固形状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量(475g/eq)、透過率(91.6%)
【0089】
(B)焼成ハイドロタルサイト
KW2200(協和化学工業社製):平均粒径(0.4μm)、BET比表面積(146m/g)
【0090】
(C)タルク
・FG−15(日本タルク社製):タルク、平均粒径(1.4μm)
【0091】
(D)シリカ
MEK−EC-2130Y(日産化学工業社製):有機溶剤分散コロイダルシリカ(シリカ粒径:10〜15nm、固形分30質量%、MEK溶剤)
【0092】
(E)フェノキシ樹脂
・YL7213B35(三菱化学社製):透過率(91.4%)、重量平均分子量(約38,000)
【0093】
(F)表面処理剤
・KBM403(信越化学社製):シランカップリング剤(3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン)
【0094】
(G)硬化剤(イオン液体)
TBP・N−Ac−Gly(合成品):N−アセチルグリシンテトラブチルホスホニウム塩
該イオン液体は以下の手順にて合成した。
テトラブチルホスホニウムハイドロキサイド41.4質量%水溶液(北興化学工業社製)20.0gに対し、0℃にてN−アセチルグリシン(東京化成工業社製)3.54gを加え10分間攪拌した。エバポレーターを用いて40−50mmHgに減圧し、60−80℃にて2時間、90℃にて5時間濃縮した。室温にて酢酸エチル(純正化学社製)14.2mlに再度溶解し、エバポレーターを用いて40−50mmHgに減圧し、70−90℃にて3時間濃縮した。テトラブチルホスホニウムN−アセチルグリシネート11.7g(純度:96.9%)をオイル状化合物として得た。
[NMRスペクトル]
1HNMR (CDCl3) d : 0.89-0.99 (m, 12H) , 1.42-1.55 (m, 16H), 1.92 (s, 3H) , 2.24‐2.35 (m, 8H), 3.66 (d, J=3.8 Hz, 2H), 6.70 (br s, 1H)
【0095】
(H)硬化促進剤
・U−3512T(サンアプロ社製):芳香族ジメチルウレア
【0096】
[実験例1:実施例1〜5、比較例1〜3]
下記表1の上段に示す配合比の樹脂組成物のワニスを以下の手順で調製した。液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER828EL」)に、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM−403」)、タルク粉末(日本タルク社製「FG15」)、および焼成ハイドロタルサイト(協和化学工業社製「KW2200」)を3本ロールで分散させた混合物(混合物A)と、硬化促進剤(サンアプロ社製「U−3512T」)をフェノキシ樹脂(三菱化学社製「YL7213」の35質量%MEK溶液)に溶解させた混合物(混合物B)と、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER1001」)の80質量%MEK溶液と、有機溶剤分散型コロイダルシリカ(アモルファスシリカ粒径10〜15nm(BET比表面積272〜181m/g)、固形分30質量%、MEK溶剤、日産化学工業社製「MEK−EC−2130Y」)と、イオン液体硬化剤(N−アセチルグリシンテトラブチルホスホニウム塩)とを配合し、高速回転ミキサーで均一に分散してワニス状の樹脂組成物を得た。
次に、この樹脂組成物のワニスをアルキッド系離型剤で処理されたPETフィルム(厚さ38μm)の離型処理面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが30μmになるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、60〜80℃で6分間乾燥させることにより、封止用シートを得た。そして、得られた封止用シートを下記の評価試験に供した。
なお、表1の上段の各欄の数値は各材料の使用量(質量部)であり、括弧内の数値は固形分量(質量部)を表す。
【0097】
1.透過率(透過性の評価)
PETフィルムを支持体として作成した封止用シート(PETフィルム厚さ38μm、樹脂組成物層厚さ20μm)を長さ50mm、幅20mmにカットしてガラス板(長さ76mm、幅26mm、厚さ1.2mmのマイクロスライドガラス、松浪ガラス工業(株)白スライドグラスS1112 縁磨No.2)にラミネートした。その後PETフィルムを剥離し、露出した封止用シート上にさらに上記と同じガラス板をラミネートした。得られた積層体をホットプレート上で110℃にて30分間加熱硬化した後(絶縁層厚さ20μm)、8°投光のφ60mm積分球(型名SRS-99-010、反射率99%)を装着したファイバー式分光光度計(MCPD−7700、形式311C、大塚電子社製、外部光源ユニット:ハロゲンランプMC−2564(24V、150W仕様)を用いてサンプルの光透過率スペクトルを測定した。光透過率は積分球とサンプルの距離を0mmとし、平行線透過率に反射成分と拡散成分も含んだ全光線透過率とした。リファレンスは空気とし、450nmにおける値を透過率として採用した。
【0098】
2.ピール強度(接着強度の評価)
PETフィルムを支持体として作成した封止用シートを長さ50mm、幅20mmにカットして長さ100mm、幅25mmのアルミニウム箔(厚さ50μm、東海東洋アルミ販売社製)にラミネートした。その後PETフィルムを剥離し、露出した封止用シート上にさらにガラス板(長さ76mm、幅26mm、厚さ1.2mmのマイクロスライドガラス)をラミネートした。得られた積層体をホットプレート上で110℃にて30分間加熱硬化した後、アルミニウム箔の長さ方向に沿って90度方向に剥離したときの接着強度を測定した(引っ張り速度50mm/分)。サンプル数(n)=2で測定し、平均した値を採用した。
【0099】
3.耐透湿性の評価
上記と同様にして作成したピール強度評価用積層体を121℃、100%RHの条件下で24時間保持した後に、封止シート端面からの浸水域を顕微鏡によって比較し、耐透湿性の指標とした。
浸水域がシート端面から0〜0.5mmの範囲のものを良好(○)、
浸水域が0.5mm超、1.0mm以下の範囲、あるいは0.5mm未満の径をもつ小さな水泡が発生しているものを可(△)、
浸水度が1.0mm超、あるいは0.5mm以上の径をもつ大きな水泡が発生しているものを不可(×)とした。
図1は耐透湿性が良好(○)と評価された浸水域の代表写真、図2は耐透湿性が可(△)と評価された浸水域の代表写真、図3は耐透湿性が不可(×)と評価された浸水域の代表写真を示す。
【0100】
4.取り扱い性
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER828EL」)に、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM−403」)、タルク粉末(日本タルク社製「FG−15」)、および焼成ハイドロタルサイト(協和化学工業社製「KW2200」)を3本ロールで分散させて混合物(混合物A)を調製する際に、粘度が上がり過ぎて3本ロールによる分散を適切に行えなかったものを不適(×)として評価した。
なお、比較例1はタルクおよび焼成ハイドロタルサイトを使用せず、比較例2は焼成ハイドロタルサイトを使用していない。
【0101】
【表1】
【0102】
[実験例2:実施例6〜8、比較例4]
下記表2の上段に示す配合比の樹脂組成物のワニスを、前述の実験例1と同様の手順で調製し、さらに得られた樹脂組成物のワニスから前述の実験例1と同様の手順にて封止用シートを作製した。そして、得られた封止用シートを前述の評価試験に供した。
なお、表2の上段の各欄の数値は各材料の使用量(質量部)であり、括弧内の数値は固形分量(質量部)を表す。
【0103】
【表2】
【0104】
[実験例3:実施例9、10、比較例5〜8]
下記表3の上段に示す配合比の樹脂組成物のワニスを、前述の実験例1と同様の手順で調製し、さらに得られた樹脂組成物のワニスから前述の実験例1と同様の手順にて封止用シートを作製した。そして、得られた封止用シートを前述の評価試験に供した。
なお、表3の上段の各欄の数値は各材料の使用量(質量部)であり、括弧内の数値は固形分量(質量部)を表す。
【0105】
【表3】
【0106】
本出願は日本で出願された特願2013−232532を基礎としており、それらの内容は本明細書に全て包含される。
図1
図2
図3