(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御回路(3)は、前記電力変換器(2)を制御して、前記交流電圧の位相である電圧位相を、前記脈動成分の瞬時値の増大に応じて増大させて、前記負荷角を増大させる、請求項1に記載の電力変換器の制御装置。
前記制御回路(3)は、前記第1回転速度指令(ω0c**)に基づいて前記第1電圧指令(VMc*,VTc*)を生成する、請求項6に記載の電力変換器の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<電動機駆動装置の構成>
図1は、電動機駆動装置の構成の一例を概略的に示している。電動機駆動装置は例えば電力変換器2と制御回路30と電圧検出部4を備えている。
【0031】
電力変換器2はその入力側において直流母線LH,LLに接続されている。直流母線LH,LLの間には直流電圧Vdcが印加されており、電力変換器2には、この直流電圧Vdcが入力される。直流母線LHに印加される電位は、直流母線LLに印加される電位よりも高い。
【0032】
図1に示すように、直流母線LH,LLの間には、コンデンサC1が接続されていてもよい。このコンデンサC1は、例えば、大きな静電容量を有する平滑コンデンサであってもよく、あるいは、小さな静電容量を有するコンデンサ(例えばフィルタコンデンサ)であってもよい。直流電圧VdcはこのコンデンサC1に印加されている。
【0033】
図1に示すように、電動機駆動装置には、整流器1が設けられてもよい。整流器1はその入力側において交流電源E1に接続され、その出力側において直流母線LH,LLに接続される。整流器1は、交流電源E1から入力される交流電圧を整流して、整流後の直流電圧を直流母線LH,LLの間に出力する。整流器1は、例えばダイオード整流回路である。なお整流器1は、ダイオード整流回路に限らず、他の整流回路(例えば自励式整流回路または他励式整流回路)であってもよい。
【0034】
図1の例では、交流電源E1は単相交流電源であり、2本の入力線を介して整流器1に接続されている。また
図1に示すように、この入力線の一つの上にリアクトルL1が、コンデンサC1に対して電力変換器2とは反対側で、設けられていてもよい。このリアクトルL1は、入力線を流れる入力電流の高周波を抑制することができる。また、交流電源E1は単相交流電源に限らず、N(Nは3以上の整数)相交流電源であってもよい。換言すれば、整流器1はN相の整流器であってもよい。
【0035】
電力変換器2は制御回路30から制御信号Sに基づいて、直流電圧Vdcを交流電圧に変換する。そして、電力変換器2はこの交流電圧を電動機M1へと出力する。電力変換器2は例えばインバータ回路である。
図1の例では、電力変換器2として三相のインバータ回路が示されている。この電力変換器2は、例えば、スイッチング素子S1〜S6とダイオードD1〜D6とを備えている。
【0036】
スイッチング素子S1〜S6は例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタである。スイッチング素子S1,S2は直流母線LH,LLの間で相互に直列に接続されており、スイッチング素子S3,S4は直流母線LH,LLの間で相互に直列に接続されており、スイッチング素子S5,S6は直流母線LH,LLの間で相互に直列に接続されている。スイッチング素子S1〜S6は制御回路30からの制御信号Sに基づいて導通/非導通する。
【0037】
ダイオードD1〜D6は、それぞれスイッチング素子S1〜S6に並列に接続されている。ダイオードD1〜D6の順方向は直流母線LLから直流母線LHへと向かう方向である。
【0038】
なお、スイッチング素子S1〜S6は、直流母線LLから直流母線LHへと向かう順方向の寄生ダイオードを有していてもよい。このようなスイッチング素子S1〜S6としては、例えばMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)電界効果トランジスタを挙げることができる。この場合、ダイオードD1〜D6は設けられていなくてもよい。
【0039】
スイッチング素子S1,S2を接続する接続点は出力線Puの一端に接続され、スイッチング素子S3,S4を接続する接続点は出力線Pvの一端に接続され、スイッチング素子S5,S6を接続する接続点は出力線Pwの一端に接続される。出力線Pu,Pv,Pwの他端は電動機M1に接続されている。
【0040】
スイッチング素子S1〜S6が適切に制御されることによって、電力変換器2は直流電圧Vdcを交流電圧(
図1の例では三相交流電圧)に変換し、変換後の交流電圧を、出力線Pu,Pv,Pwを介して電動機M1へと出力することができる。なお、
図1では三相の電動機M1が例示されているものの、その相数はこれに限らない。換言すれば、電力変換器2は三相の電力変換器に限らない。
【0041】
電動機M1は同期電動機であって、界磁(不図示)および電機子(不図示)を備えている。界磁は例えば永久磁石を有しており、電機子へ鎖交磁束を供給する。電機子は電機子巻線を有している。電力変換器2からの交流電圧が電機子巻線に印加されることにより、当該電機子巻線には交流電流が流れる。この交流電流によって、電機子は界磁へと回転磁界を印加することができる。界磁はこの回転磁界に応じて、電機子に対して相対的に回転する。
【0042】
制御回路30は制御信号Sを電力変換器2(具体的にはスイッチング素子S1〜S6)へ出力して、電力変換器2の出力を制御し、ひいては電動機M1を制御する。
【0043】
またここでは、制御回路30はマイクロコンピュータと記憶装置を含んで構成される。マイクロコンピュータは、プログラムに記述された各処理ステップ(換言すれば手順)を実行する。上記記憶装置は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、書き換え可能な不揮発性メモリ(EPROM(Erasable Programmable ROM)等)、ハードディスク装置などの各種記憶装置の1つ又は複数で構成可能である。当該記憶装置は、各種の情報やデータ等を格納し、またマイクロコンピュータが実行するプログラムを格納し、また、プログラムを実行するための作業領域を提供する。なお、マイクロコンピュータは、プログラムに記述された各処理ステップに対応する各種手段として機能するとも把握でき、あるいは、各処理ステップに対応する各種機能を実現するとも把握できる。また、制御回路30はこれに限らず、制御回路30によって実行される各種手順、あるいは実現される各種手段又は各種機能の一部又は全部をハードウェアで実現しても構わない。
【0044】
<直流電圧Vdcの脈動成分>
例えばスイッチング素子S1〜S6のスイッチングに起因して、直流電圧Vdcは脈動する。つまり直流電圧Vdcには、高周波たる脈動成分が含まれる。
図2は、直流電圧Vdcの一例を模式的に示す図である。
図2の例では、脈動成分の1周期分の直流電圧Vdcが示されている。本実施の形態では、このような脈動成分の振幅(つまり直流電圧Vdcの変動幅)の増大を制御によって抑制することを企図する。
【0045】
ところで、
図1の例では、整流器1の入力側のリアクトルL1と、整流器1の出力側のコンデンサC1とは、交流電源E1の出力端の間において直列に接続されるので、リアクトルL1およびコンデンサC1は共振回路を形成し得る。よって、直流電圧Vdcの脈動成分の振幅は、この共振回路による共振に起因して急激に増大する場合がある。本制御では、このような共振による脈動成分の振幅の増大も抑制することを企図する。そこで、以下では、脈動成分の振幅を抑制する本実施の形態の制御を、共振抑制制御と呼ぶことがある。ただし、本制御は必ずしも共振の発生を前提としない。共振がなくとも、大きな振幅を有する脈動成分が発生する場合もあり得るからである。
【0046】
<共振抑制制御の基本的な考え方>
次に、共振抑制制御の基本的な考え方について説明する。共振抑制制御では、電力変換器2の出力電力を制御することで、電力変換器2の入力電圧たる直流電圧Vdcを制御する。具体的には、直流電圧Vdcの脈動成分の瞬時値の増大に応じて、電力変換器2の出力電力を増大させる。これにより、脈動成分の瞬時値の増大中において、電力変換器2からの出力電流、ひいては電力変換器2へ入力される直流電流が増大する。この直流電流の増大によって、直流電圧Vdcの脈動成分の更なる増大を抑制することができる。したがって、脈動成分の振幅を低減することができる。
【0047】
逆に説明すると、脈動成分の瞬時値の低減に応じて、電力変換器2の出力電力を低減させる。これにより、脈動成分の瞬時値の低減中において、電力変換器2への直流電流が低減する。この直流電流の低減により、直流電圧Vdcの脈動成分の更なる低減を抑制することができる。これにより、脈動成分の振幅を低減することができる。
【0048】
<共振抑制制御の概要>
本実施の形態では、電動機M1の負荷角(後述)を制御して、出力電力を制御する。以下では、まず負荷角と出力電力との関係について述べる。電力変換器2の出力電力は理想的には電動機M1の出力と等しい。そしてこの電動機M1の出力は出力トルクと回転速度との積で表される。出力トルクは、電動機M1の一次磁束(後述)の大きさ、および、負荷角によって決まる。
【0049】
次に、一次磁束および負荷角について説明する。
図3は、電動機M1における一次磁束[λ0](記号[]はベクトル量を表す:以下同様)と、界磁による電機子への鎖交磁束[Λa]との関係を示すベクトル図である。鎖交磁束[Λa]は例えば電動機M1が永久磁石を有している場合には当該永久磁石によって発生するし、電動機M1が界磁巻線を有している場合には当該界磁巻線に電流が流れることによって発生する。
【0050】
図3では、α−β軸固定座標系、d−q軸回転座標系、M−T軸回転座標系およびMc−Tc軸回転座標系が、原点を一致させて表示されている。α−β軸固定座標系は、電動機M1の固定子(例えば電機子)に固定された座標系であり、α軸およびβ軸によって構成されている。β軸はα軸に対して位相が90度進む。d−q軸回転座標系は、電動機M1の回転子(例えば界磁)に固定された座標系であり、d軸およびq軸によって構成されている。d軸は鎖交磁束[Λa]と同相に設定され、q軸はd軸に対して位相が90度進む。よって、d−q軸回転座標系は電動機M1の回転に同期して回転する。M−T軸回転座標系は、電動機M1の回転に応じて回転する座標系であり、M軸およびT軸によって構成されている。M軸は一次磁束[λ0]と同相に設定され、T軸はM軸に対して位相が90度進む。Mc軸−Tc軸回転座標系は、制御で用いられる座標系(以下、制御座標系とも呼ぶ)であり、例えば、理想的にはM−T軸回転座標系と一致する。
【0051】
一次磁束[λ0]は、電機子巻線に交流電流が流れて発生する電機子反作用による磁束[λi]と、鎖交磁束[Λa]との合成である。電機子巻線に流れる電流は、
図3においては電流[ia]で示される。電機子反作用による磁束[λi]は、周知のように、電機子巻線に流れる電流と、電機子巻線のインダクタンスとで決定される。負荷角δはd軸とM軸との間の角度である。
【0052】
図3においては、参考のために、電圧[V],[Va]も示されている。電圧[V]は電動機M1に印加される電圧であり、電圧[Va]は電機子巻線のインダクタンス成分に印加される電圧である。よって、電圧[V]は、電機子巻線の抵抗成分の抵抗値Rと、電流[Ia]の積と、電圧[Va]との合成である。
【0053】
一次磁束[λ0]の大きさが一定である場合、出力トルクは負荷角δの増大に応じて増大し、ピークをとった後、負荷角の増大に応じて低減する。そして通常、電動機M1は、負荷角δの増大に応じて出力トルクが増大する範囲で制御される。したがって、負荷角δが増大すれば出力トルクは増大する、と考えることができる。
【0054】
そこで、本実施の形態では、制御回路30は、直流電圧Vdcの脈動成分の瞬時値の増大に応じて負荷角δが増大するように、電力変換器2を制御する。これにより、脈動成分の瞬時値の増大に応じて出力電力を増大でき、ひいては脈動成分の瞬時値の更なる増大を抑制できる。逆に言えば、制御回路30は、直流電圧Vdcの脈動成分の瞬時値の低減に応じて負荷角δが低減するように、電力変換器2を制御する。これにより、脈動成分の瞬時値の低減に応じて出力電力を低減でき、ひいては脈動成分の瞬時値の更なる低減を抑制できる。よって、脈動成分の振幅を低減できるのである。
【0055】
<電圧位相>
例えば、制御回路30は、電力変換器2から出力される交流電圧の位相(以下、電圧位相とも呼ぶ)を制御することで、負荷角δを制御してもよい。以下、電圧位相と負荷角δとの関係について述べる。
【0056】
図4の例においては、電圧位相として、d−q軸回転座標系における電圧位相θvq、および、α−β軸固定座標系における電圧位相θvαが示されている。例えば電圧位相θvqはq軸に対する電圧[V]の位相であり、電圧位相θvαはα軸に対する電圧[V]の位相である。電圧位相θvq,θvαのいずれを用いて説明を行ってもよいものの、ここでは電圧位相θvqを用いて説明する。
【0057】
例えば電圧位相θvqを増大させると、電圧[V]が進み方向(例えば
図3において反時計回り)に回転し、これに応じて、電圧[Va]も進み方向に回転する。つまり、M−T軸回転座標系がd−q軸回転座標系に対して進み方向に回転する。よって、負荷角δが増大する。これにより、出力トルクが増大して、電力変換器2の出力電力が増大する。逆に、電圧位相を低減させると、これに応じて、負荷角δが低減する。これにより、出力トルクが低減して、電力変換器2の出力電力が低減する。
【0058】
そこで例えば、制御回路30は、直流電圧Vdcの脈動成分の瞬時値の増大に応じて電圧位相が増大するように、電力変換器2を制御する。これにより、脈動成分の瞬時値の増大に応じて負荷角δを増大でき、ひいては出力電力を増大できる。したがって、脈動成分の瞬時値の更なる増大を抑制できる。逆に言えば、制御回路30は、直流電圧Vdcの脈動成分の瞬時値の低減に応じて電圧位相が低減するように、電力変換器2を制御する。これにより、脈動成分の瞬時値の低減に応じて負荷角δを低減でき、ひいては出力電力を低減できる。したがって、脈動成分の瞬時値の更なる低減を抑制できる。よって、脈動成分の振幅を低減できるのである。
【0059】
なお以下では、脈動成分の瞬時値の増大を単に脈動成分の増大とも言い、脈動成分の瞬時値の低減を単に脈動成分の低減とも言う。
【0060】
<共振抑制制御の具体例>
図4は、制御回路30の内部構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。制御回路30は、電圧指令生成部31と、積分器32と、電圧位相補正部33と、座標変換部302と、制御信号生成部34とを備えている。
【0061】
電圧指令生成部31は、電力変換器2から出力される交流電圧についての電圧指令を生成する。この電圧指令は所定の制御座標系における電圧指令である。制御座標系は回転座標系であって、適宜に設定されればよい。電圧指令の生成方法は特に限定されないものの、例えば電圧指令生成部31は一次磁束制御を実行して、電圧指令を生成してもよい。この場合、
図3に示すMc−Tc軸回転座標系を制御座標系として採用することができる。電圧指令は、Mc軸成分たる電圧指令VMc*と、Tc軸成分たる電圧指令VTc*とを含む。
【0062】
図4は、一次磁束制御を用いて電圧指令を生成する制御回路30を例示している。
図4の例では、電圧指令生成部31には、一次磁束指令λ0c*、回転速度指令ω0c*および電流iMc,iTcが入力される。一次磁束指令λ0c*は一次磁束[λ0]の大きさについての指令であって、例えば外部から電圧指令生成部31に入力される。
【0063】
回転速度指令ω0c*は制御座標系の回転速度についての指令である。
図4の例では、回転速度指令ω0c*は、制御回路30に属する速度制御部301によって算出される。速度制御部301には、回転速度指令ω0c**および電流iMc,iTcが入力される。電流iMc,iTcは、電動機M1に流れる交流電流を、Mc−Tc軸回転座標系で表したものであり、それぞれ電流[ia]のMc軸成分およびTc軸成分である。電動機M1を流れる電流は電流検出部5によって検出される(
図1も参照)。電流検出部5は例えば電流検出回路であって、出力線Pu,Pv,Pwをそれぞれ流れる電流iu,iv,iwを検出し、これらを制御回路3へと出力する。この電流iu,iv,iwは制御回路30に属する座標変換部302へと入力される。座標変換部302は、Mc−Tc軸回転座標系の位相角θ0cも入力される。位相角θ0cはα軸とMc軸との間の位相差である。以下では、位相角θ0cを位相差θ0cとも呼ぶ。座標変換部302は電流iu,iv,iwを位相差θ0cに基づいて座標変換して、電流iMc,iTcを算出する。
【0064】
なお
図1の例では、電流検出部5は電流iu,iv,iwの全てを検出しているものの、いずれか二つを検出してもよい。電流iu,iv,iwの総和は理想的には零であるので、この二つの電流から残りの一つの電流を算出することができる。また
図1の例では、電流検出部5は電流iu,iv,iwを直接に検出しているものの、直流母線LHまたは直流母線LLを流れる直流電流を検出してもよい。具体的には、電流検出部5は、コンデンサC1と電力変換器2との間において直流母線LHまたは直流母線LLを流れる直流電流を検出してもよい。この直流電流は、電流iu,iv,iwのうちスイッチング素子S1〜S6のスイッチパターンに応じた電流と一致する。よってスイッチパターンおよび直流電流に基づいて電流iu,iv,iwを把握できる。かかる電流検出は、いわゆる1シャント方式と呼ばれる。
【0065】
速度制御部301は、回転速度指令ω0c**を電流iMc,iTcの少なくともいずれか一方に基づいて補正して、回転速度指令ω0c*を算出し、この回転速度指令ω0c*を積分器32および電圧指令生成部31へと出力する。例えば速度制御部301は、電流iTcの高調波を抽出し、この高調波に所定の正のゲインを乗算して得られた補正量を、回転速度指令ω0c**から減算することで、回転速度指令ω0c*を算出する。
【0066】
なお、この回転速度指令の補正は、電動機M1の安定的な運転に資するものの、必ずしも必要ではない。例えば速度制御部301は回転速度指令ω0c**をそのまま回転速度指令ω0c*として出力してもよい。
【0067】
電圧指令生成部31は、一次磁束指令λ0c*、回転速度指令ω0c*および電流iMc,iTcに基づいて、電圧指令VMc*,VTc*を生成し、その電圧指令VMc*,VTc*を制御信号生成部34へと出力する。例えば電圧指令生成部31は、一次磁束指令λ0c*についてフィードフォワード制御を行って、電圧指令VMc*,VTc*を生成してもよい。具体的な一例として、電圧指令生成部31は、以下の式に基づいて、電圧指令VMc*,VTc*を生成する。
【0068】
VMc*=R・iMc+s・λMc*−ω0c*・λTc* ・・・(1)
VTc*=R・iTc+s・λTc*+ω0c*・λMc* ・・・(2)
【0069】
ここで、λMc*,λTc*は、一次磁束[λ0]について磁束指令であって、それぞれMc軸成分およびTc軸成分である。例えば一次磁束指令λTc*を零に設定した場合、一次磁束指令λMc*は一次磁束指令λ0c*に等しい。式(1)および式(2)は電動機M1の電圧方程式に相当する。これらの式(1)および式(2)によれば、電圧指令VMc*,VTc*がフィードフォワード制御によって算出されていることが理解できる。
【0070】
式(1)および式(2)の第1項はそれぞれの第2項および第3項に比べて小さい場合がある。例えば回転速度指令ω0c*が高い場合、当該第1項は小さい。このような場合には、式(1)および式(2)の第1項を省略してもよい。
【0071】
なお、電圧指令生成部31は必ずしも式(1)および式(2)を用いる必要はない。また、電圧指令生成部31はフィードフォワード制御に替えて、或いは、フィードフォワード制御とともにフィードバック制御を用いてもよい。
【0072】
積分器32は回転速度指令ω0c*を積分してMc−Tc軸回転標系の位相差θ0cを算出する。積分器32はこの位相差θ0cを座標変換部302および電圧位相補正部33へと出力する。
【0073】
電圧位相補正部33には、直流電圧Vdcの脈動成分Vdchも入力される。脈動成分Vdchは、例えば脈動成分抽出部35から電圧位相補正部33へと入力される。脈動成分抽出部35は例えば制御回路30に設けられていてもよい。脈動成分抽出部35には、直流電圧Vdcが入力される。この直流電圧Vdcは電圧検出部4(
図1も参照)によって検出される。脈動成分抽出部35は、直流電圧Vdcからその脈動成分Vdchを抽出し、この脈動成分Vdchを電圧位相補正部33へと出力する。
【0074】
図5は、脈動成分抽出部35の内部構成の一例を示す機能ブロック図である。例えば脈動成分抽出部35は、ローパスフィルタ351と、減算器352とを備えている。ローパスフィルタ351には、電圧検出部4からの直流電圧Vdcが入力される。ローパスフィルタ351は、直流電圧Vdcから脈動成分Vdchを除去して、除去後の直流電圧Vdc(つまり、直流電圧Vdcの低周波、例えば直流成分)を減算器352へと出力する。減算器352には、電圧検出部4からの直流電圧Vdcも入力される。減算器352は、電圧検出部4が出力する直流電圧Vdcから、ローパスフィルタ351の出力を減算して、直流電圧Vdcの脈動成分Vdchを算出し、この脈動成分Vdchを電圧位相補正部33へと出力する。
【0075】
なお、脈動成分抽出部35は、
図5の構成に替えて、ハイパスフィルタを有していてもよい。このハイパスフィルタには、電圧検出部4から直流電圧Vdcが入力される。ハイパスフィルタは直流電圧Vdcから低周波を除去して脈動成分Vdchを抽出し、この脈動成分Vdchを電圧位相補正部33へと出力する。
【0076】
電圧位相補正部33には、位相差θ0cおよび直流電圧Vdcの脈動成分Vdchが入力される。電圧位相補正部33は、脈動成分Vdchに基づいて位相差θ0cを補正することで、電圧位相を補正する。位相差θ0cを補正することで、電圧位相を補正できる理由については後に述べる。
【0077】
電圧位相補正部33は、脈動成分Vdchの増大に応じて位相差θ0cを増大させて、補正後の位相差θ0c’を算出し、この位相差θ0c’を制御信号生成部34へと出力する。
【0078】
図4に示すように、例えば電圧位相補正部33はゲイン部331と加算器332とを備えている。ゲイン部331には、脈動成分抽出部35から脈動成分Vdchが入力される。ゲイン部331は脈動成分VdchにゲインKを乗算して、その結果(K・Vdch)を加算器332へ出力する。ゲインKは例えば予め設定された正の値であってよく、例えば、制御回路30に属する所定の記憶媒体に記憶されている。加算器332には、位相差θ0cも入力される。加算器332はゲイン部331からの出力と位相差θ0cとを加算して、位相差θ0c’を算出する。以下の式は、
図4に例示する電圧位相補正部33の演算を示している。
【0079】
θ0c’=θ0c+K・Vdch ・・・(3)
【0080】
式(3)によれば、位相差θ0c’は脈動成分Vdchが増大するほど増大し、脈動成分Vdchが低減するほど低減する。より具体的には、位相差θ0c’は脈動成分Vdchの波形と同様に脈動する。よって、
図4の電圧位相補正部33は位相差θ0cに脈動成分Vdchを重畳している、とも説明できる。
【0081】
また式(3)によれば、脈動成分Vdchが正であるときには、位相差θ0cよりも大きく位相差θ0c’が算出され、脈動成分Vdchが負であるときには、位相差θ0cよりも小さくθ0c’が算出される。つまり、電圧位相補正部33は、直流電圧Vdcがその平均値よりも大きいときに、補正前の位相差θ0cよりも大きく補正後の位相差θ0c’を算出し、直流電圧Vdcがその平均値よりも小さいときに、補正前の位相差θ0cよりも小さく補正後の位相差θ0c’を算出してもよい。
【0082】
制御信号生成部34には、電圧指令VMc*,VTc*および位相差θ0c’が入力される。制御信号生成部34は電圧指令VMc*,VTc*および位相差θ0c’に基づいて制御信号Sを生成し、制御信号Sを電力変換器2へと出力する。具体的な一例を説明する。制御信号生成部34は位相差θ0c’を用いて電圧指令VMc*,VTc*に対して座標変換を施して、不図示のUVW固定座標系における三相の電圧指令を生成する。そして例えば制御信号生成部34はこの三相の電圧指令の各々に対して直流電圧Vdcを除算して、三相の電圧指令を規格化する。制御信号生成部34は規格化後の電圧指令と所定のキャリアとの比較に基づいて、制御信号Sを生成する。このような制御信号Sの生成方法はパルス幅変調で用いられる方法である。このとき電力変換器2はキャリアCに基づくパルス幅変調で動作することになる。
【0083】
以上のように、制御信号生成部34は、補正後の位相差θ0c’を用いて、電圧指令VMc*,VTc*に対して座標変換を施して、三相の電圧指令を生成する。
図6は、この座標変換を説明するための図である。
図6では、制御座標系としてのMc−Tc軸回転座標系が示されている。このMc−Tc軸回転座標系の位相角は位相差θ0cである。
図6では、補正後の位相差θ0c’によって示される補正後の制御座標系、即ち、Mc’−Tc’軸回転座標系も示されている。
【0084】
上述のとおり、制御信号生成部34は、位相差θ0cではなく補正後の位相差θ0c’を用いて、電圧指令VMc*,VTc*に対して座標変換を施している。つまり、この座標変換は、電圧指令VMc*,VTc*に対する座標変換ではなく、Mc’−Tc’軸回転座標系における電圧指令VMc*’,VTc*’(後述)に対する座標変換に相当する。
【0085】
電圧指令VMc*’,VTc*’の値自体はそれぞれ電圧指令VMc*,VTc*の値と同じである。ただし、電圧指令VMc*,VTc*がMc−Tc軸回転座標系における値を示すのに対して、電圧指令VMc*’,VTc*’はMc’−Tc’軸回転座標系における値を示す。つまり、この電圧指令VMc*’,VTc*’は、電圧指令VMc*,VTc*を、Mc−Tc軸回転座標系からMc’−Tc’軸回転座標系までの位相差(=θ0c’−θ0c)で回転させて得られる電圧指令である。つまり、電圧指令VMc*’,VTc*’の電圧位相θvq’(θvα’)は、電圧位相θvq(θvα)に対して、補正量(K・Vdch)で補正して得られる値である。
【0086】
要するに、制御信号生成部34は、位相差θ0c’を用いて電圧指令VMc*’,VTc*’に対して座標変換を施しているのである。そしてこれは、電圧位相を、位相差θ0cに対する補正量(K・Vdch)と同様の補正量で補正していることを意味する。
【0087】
以上のように、本実施の形態では、直流電圧Vdcの脈動成分Vdchの増大に応じて位相差θ0c’を増大させることで、脈動成分Vdchの増大に応じて電圧位相を増大させている。逆に言えば、脈動成分Vdchの低減に応じて位相差θ0c’を低減させることで、脈動成分Vdchの低減に応じて電圧位相を低減させている。
【0088】
このように脈動成分Vdchの増大に応じて電圧位相を増大させることで、脈動成分Vdchの増大に応じて負荷角δを増大させることができ、ひいては出力トルクを増大できる。よって、脈動成分Vdchの増大に応じて電力変換器2の出力電力を増大できる。逆に、脈動成分Vdchの低減に応じて出力電力を低減できる。よって、脈動成分Vdchの振幅を低減することができる。つまり、直流電圧Vdcの変動(脈動成分Vdchの振幅)を低減できるのである。
【0089】
しかも本実施の形態のように、電圧位相に基づいて負荷角δを制御すれば、簡易に負荷角δを制御できる。
【0090】
また本実施の形態によれば、電圧指令の大きさ(振幅)を脈動成分Vdchに基づいて増減する必要がない。つまり電力変換器2が出力する交流電圧の振幅を増減させる必要がない。比較例として、例えば特許文献1の技術では、交流電圧の振幅が増減し得る。この場合、交流電圧の振幅を上限値に維持することは当然にできない。つまり、交流電圧の振幅の平均値は当該上限値よりも小さくなる。このような交流電圧の振幅の平均値の低減は、回転速度をより高い範囲で制御するという観点で望ましくない。
【0091】
ここで電圧利用率を導入する。電圧利用率は、直流電圧Vdcに対して、平均的に、どの程度の割合で交流電圧を出力するかを示す指標である。この電圧利用率は、例えば、交流電圧の振幅の平均値の、直流電圧Vdcに対する比で表される。そして、上述のように交流電圧の振幅の平均値の低減が望ましくないので、この電圧利用率の上限値の低減も望ましくない。
【0092】
一方で、本実施の形態によれば、脈動成分Vdchの低減のために電圧指令の大きさ(振幅)を増減する必要がない。よって、交流電圧の振幅を上限値に維持することができる。これによれば、電圧利用率の上限値の低減を回避、あるいは、抑制することができる。
【0093】
また上述の例においては、脈動成分Vdchに基づいて位相差θ0cを補正している。他の一例として、電圧指令VMc*,VTc*に基づいて制御座標系における電圧位相を算出し、この電圧位相を脈動成分Vdchに基づいて補正することが考えられる。具体的には、電圧指令VMc*,VTc*は直交座標系の値であるので、これを極座標系の値に座標変換することで、制御座標系における電圧指令の振幅および電圧位相を算出することができる。そして、電圧位相を補正し、その補正後の電圧位相と、振幅とに基づいて、再び直交座標系における補正後の電圧指令VMc*’,VTc*’を算出してもよい。これによっても、上記の制御と同様の作用を得ることができ、直流電圧Vdcの脈動成分Vdchの振幅を低減できる。しかしながら、制御座標系における電圧位相を算出する処理などが必要となる。
【0094】
一方で、位相差θ0cを補正すれば、制御座標系における電圧位相を算出したり、補正後の電圧位相に基づいて補正後の電圧指令を算出する必要がない。つまり、処理を簡易にすることができる。
【0095】
なお
図4を参照して、電圧検出部4および脈動成分抽出部35からなる部分は、直流電圧Vdcの脈動成分Vdchを検出する脈動成分検出部6に相当する。この場合、制御回路30から脈動成分検出部6を除いた部分は、電力変換器2を制御して、脈動成分Vdchの増大に応じて負荷角δを増大させる制御回路3に相当する。
【0096】
<過変調>
以下では、スイッチング素子S1,S3,S5を上側のスイッチング素子とも呼び、スイッチング素子S2,S4,S6を下側のスイッチング素子とも呼ぶ。なお上述の例でも同様であるが、同じ出力端に接続された上側のスイッチング素子および下側のスイッチング素子は、相互に排他的にオンするように制御される。
【0097】
電力変換器2が出力可能な交流電圧の振幅の上限は、直流電圧Vdcによって制限される。よって、交流電圧として略正弦波状の波形を採用する場合にも、その振幅の上限は直流電圧Vdcによって制限される。そこで、より大きな電圧を電力変換器2に出力させる場合、交流電圧として正弦波ではなく、例えば、略台形状または矩形波状の波形などを採用するとよい。つまり、交流電圧の瞬時値が最大値をとる期間(上側のスイッチング素子がオンする期間)、および、交流電圧の瞬時値が最小値をとる期間(下側のスイッチング素子がオンする期間)を長くすることにより、実質的により大きな振幅を有する交流電圧を出力するのである。このような制御は過変調制御とも呼ばれる。
【0098】
ところで、電力変換器2が出力する交流電圧の振幅は、電動機M1の回転速度が高いほど大きくなる傾向にある。よって、制御回路3は、回転速度(或いは回転速度指令)が基準値よりも高いときに、過変調制御を行うとよい。
【0099】
<矩形波>
図7は、出力線Pu,Pv,Pwに印加される交流電圧Vu,Vv,Vwについての電圧指令Vu*,Vv*,Vw*の一例を概略的に示す図である。
図7の例では、電圧指令Vu*,Vv*,Vw*の各々は矩形波状の波形(より具体的には1パルス波形)を有している。電圧指令Vu*,Vv*,Vw*の相互間の位相差は略120度である。このような電圧指令Vu*,Vv*,Vw*は電圧位相θvに応じて最小値または最大値をとる。より具体的に、例えば電圧指令Vu*は、電圧位相θvが例えば0度から180度の位相範囲に属するときに最大値をとり、電圧位相θvが例えば180度から360度の位相範囲に属するときに最小値をとる。電圧指令Vv*,Vw*の各々と電圧指令Vu*との違いは位相差のみであるので、電圧指令Vv*,Vw*の説明を省略する。
【0100】
このように電圧指令Vu*,Vv*,Vw*は電圧位相θvに応じて決まるので、電圧位相θvを算出すれば、この電圧位相θvに基づいて、電圧指令Vu*,Vv*,Vw*を生成することができる。
【0101】
図8は、制御回路30の内部構成の他の一例を示す機能ブロック図である。制御回路30は積分器32と電圧位相補正部33と制御信号生成部34と脈動成分抽出部35とを備えている。
【0102】
積分器32は回転速度指令ω0c*を積分して電圧位相指令θv*を算出し、この電圧位相指令θv*を電圧位相補正部33へ出力する。
【0103】
電圧位相補正部33には、脈動成分抽出部35から脈動成分Vdchも入力される。電圧位相補正部33は、脈動成分Vdchの増大に応じて電圧位相指令θv*を増大させる補正を行って、補正後の電圧位相指令θv*’を算出する。電圧位相補正部33は、補正後の電圧位相指令θv*’を制御信号生成部34へ出力する。電圧位相補正部33による具体的な補正方法は
図4の電圧位相補正部33による補正方法と同様であるので、繰り返しの説明を避ける。
【0104】
制御信号生成部34は、補正後の電圧位相指令θv*’に基づいて制御信号Sを生成する。例えばまず、制御信号生成部34は電圧指令Vu*,Vv*,Vw*を電圧位相指令θv*’に基づいて生成する。例えば制御信号生成部34は、電圧位相指令θv*’が所定の第1位相範囲(例えば0〜180度)に属するときに、電圧指令Vu*を最大値とし、電圧位相指令θv*’が所定の第2位相範囲(例えば180〜360度)に属するときに、電圧指令Vu*を最小値とする。第1位相範囲および第2位相範囲の合計が交流電圧の1周期の位相(360度)となる。電圧指令Vv*,Vw*も同様にして生成される。
【0105】
次に、制御信号生成部34は、例えば、電圧指令Vu*,Vv*,Vw*の各々とキャリアとを比較し、その比較結果を制御信号Sとして出力する。キャリアは例えば三角波であり、例えば、その最大値は電圧指令Vu*,Vv*,Vw*の最大値と等しく、その最小値は電圧指令Vu*,Vv*,Vw*の最小値と等しい。
【0106】
このような制御信号Sにより、電力変換器2は、電圧指令Vu*,Vv*,Vw*と略等しい交流電圧Vu,Vv,Vwを出力する。つまり、制御回路30は、電圧位相指令θv*’が所定の第1位相範囲(例えば0〜180度)に属するときに、スイッチング素子S1をオンし、電圧位相指令θv*’が所定の第2位相範囲(例えば180〜360度)に属するときに、スイッチング素子S2をオンする。スイッチング素子S3〜S6も同様である。
【0107】
以上のように、電力変換器2は、矩形波(例えば1パルス波形)の交流電圧Vu,Vv,Vwを出力できる。つまり、実質的に高い振幅を有する交流電圧Vu,Vv,Vwを出力できる。よって、電動機M1をより高い回転速度で駆動することができる。しかも、電圧位相を直流電圧Vdcの脈動成分Vdchの増大に応じて補正しているので、脈動成分Vdchの振幅も低減できる。
【0108】
<台形波>
図9は、略台形状の波形を有する電圧指令Vu*,Vv*,Vw*の一例を概略的に示す図である。
図9に示す電圧位相θvと電圧指令Vu*との関係は、例えば、予め決められてもよく、制御回路30に属する記憶媒体に記憶されていてもよい。制御回路30(制御信号生成部34)は、補正後の電圧位相指令θv*’と、当該関係に基づいて、電圧指令Vu*,Vv*,Vw*を生成してもよい。
【0109】
図10は、電圧指令Vu*、キャリアCおよび制御信号Suの一例を概略的に示す図である。制御信号Suはスイッチング素子S1についての制御信号であり、その波形は、簡易には、交流電圧Vuと等しい。例えば、キャリアCは三角波であり、その最大値および最小値は電圧指令Vu*の最大値および最小値にそれぞれ等しい。
図10の例では、電圧指令Vu*がキャリアC以上であるときに、制御信号Suが活性化し、電圧指令Vu*がキャリアC以下であるときに、制御信号Suが非活性化する。
【0110】
図10に示すように、電圧指令Vu*が最大値をとるときには、電圧指令Vu*はキャリアC以上であるので、制御信号Suは活性化する。電圧指令Vu*がキャリアCの複数周期に亘って最大値をとれば、制御信号SuはキャリアCの複数周期に亘って活性化する。
【0111】
電圧指令Vu*が最大値と最小値との間を遷移する期間では、電圧指令Vu*とキャリアCとの大小関係が、キャリアCの1周期において、交互に切り替わる。よって、この期間では、制御信号Suは活性/非活性を交互にとる。
【0112】
電圧指令Vu*が最小値をとるときには、電圧指令Vu*がキャリアC以下となるので、制御信号Suは非活性化する。電圧指令Vu*がキャリアCの複数周期に亘って最小値をとれば、制御信号SuはキャリアCの複数周期に亘って非活性化する。
【0113】
したがって、制御信号Suは、
図10に示すように、比較的に広いパルス幅を有するパルスと、その両側に比較的狭いパルス幅を有するパルスとを含む。制御信号Suの波形は交流電圧Vuの波形と略等しいので、交流電圧Vuも、比較的に広いパルス幅を有するパルスと、その両側に比較的狭いパルス幅を有するパルスとを含む。
【0114】
このような略台形状の電圧指令Vu*,Vv*,Vw*を採用しても、実質的に大きな振幅を有する交流電圧Vu,Vv,Vwを出力できる。しかも、電圧位相指令θv*を直流電圧Vdcの脈動成分Vdchの増大に応じて補正しているので、脈動成分Vdchの振幅も低減できる。
【0115】
また、電圧指令として正弦波の波形を採用してもよい。ただし、この電圧指令においても、脈動成分Vdchに応じた電圧位相の補正は行われる。また、この場合、電圧指令の振幅を、キャリアの振幅よりも大きく設定する。
図11は、電圧指令Vu*、キャリアCおよび制御信号Suの一例を概略的に示す図である。電圧指令Vu*のピーク付近では、キャリアCの複数周期に亘って、電圧指令Vu*がキャリアCよりも大きくなる。したがって、当該複数周期に亘って制御信号Sは活性化する。同様に、電圧指令Vu*のボトム付近では、キャリアCの複数周期に亘って、電圧指令Vu*がキャリアCよりも小さくなる。よって、当該複数周期に亘って制御信号Sは非活性化する。
【0116】
ここで、過変調制御を行わない場合の交流電圧の一周期に含まれるパルス数を考える。過変調制御を行わない場合、電圧指令Vu*とキャリアCとの大小関係は、キャリアCの各周期において、交互に切り替わる。よって、制御信号Su(交流電圧Vu)はキャリアCの周期ごとに一つのパルスを含む。したがって、交流電圧Vuのパルス数NPは、交流電圧Vuの周波数FvとキャリアCの周波数Fcとを用いて以下の式で表される。
【0118】
一方で、過変調制御では、制御信号SuがキャリアCの複数周期に亘って活性化あるいは非活性化する。したがって、過変調制御において交流電圧の1周期に含まれるパルス数は、過変調制御を行わないときの交流電圧の1周期に含まれるパルス数NPよりも少ない。つまり、過変調制御におけるパルス数は、周波数Fvを周波数Fcで除算した値(NP)よりも少なくなる。また、過変調制御では、キャリアCの周期よりも長いパルス幅を有するパルスが交流電圧に含まれる。
【0119】
以上のように、過変調制御においては、制御回路30は、パルス数NPよりも少ないパルスを含み、かつ、そのパルスの少なくとも一つが、キャリアCの周期よりも広いパルス幅を有する交流電圧を、電力変換器2に出力させる。
【0120】
なお交流電圧が
図7のように1パルスを含む場合には、実質的な交流電圧の振幅を最大化できる一方で、1シャントの電流検出は行いにくい。一方で、例えば
図10および
図11に示すように、交流電圧が複数(例えば5以下)のパルスを含む場合においては、一つのパルスが出力されるキャリアCの一周期において、1シャントによる電流検出を行うことができる。
【0121】
<回転速度に応じた制御の切り替え>
例えば制御回路30は、電動機M1の回転速度が低いときには、
図4の構成にしたがって動作し、回転速度が高いときに、
図8の構成にしたがって動作してもよい。例えば、制御回路30は、初期的には
図4の構成にしたがって動作する。電動機M1の回転速度が増大すると、電圧指令の振幅が増大する。そこで、制御回路30は、電圧指令の振幅を例えば電圧指令VMc*,VTc*に基づいて算出し、この振幅が基準値Vref(例えば直流電圧Vdc)よりも大きいか否かを判断する。そして、当該振幅が直流電圧Vdcよりも大きいと判断したときには、制御回路30は
図8の構成にしたがって動作してもよい。
【0122】
これによれば、電動機M1の回転速度が高いときにも、実質的に大きな振幅を有する交流電圧を出力することができ、電動機M1の回転速度を増大させることができる。
【0123】
<回転速度指令の補正>
上述の例では、制御回路30は電圧位相に対して補正を行っていた。しかるに、電圧位相は回転速度指令の積分によって算出されるので、制御回路3は回転速度指令に対して補正を行っても構わない。つまり、電圧位相の元となる回転速度指令に対して補正を行ってもよい。
図12は、制御回路30の内部構成の他の一例を概略的に示す機能ブロック図である。
図12の制御回路30は、
図8の制御回路30と比べて、電圧位相補正部33の替わりに、回転速度指令補正部36を備えている。
【0124】
回転速度指令補正部36には、回転速度指令ω0c*および脈動成分Vdchが入力される。回転速度指令補正部36は、脈動成分Vdchの増大に応じて回転速度指令ω0c*が増大するように補正を行って、補正後の回転速度指令ω0c*’を生成する。例えば回転速度指令補正部36は、ゲイン部361と加算器362とを備えている。ゲイン部361には、脈動成分抽出部35から脈動成分Vdchが入力される。ゲイン部361は、脈動成分Vdchに所定のゲインKを乗算して、その結果(K・Vdch)を加算器362へと出力する。加算器362には、回転速度指令ω0c*も入力される。加算器362は回転速度指令ω0c*に、ゲイン部361からの出力を加算し、その結果を補正後の回転速度指令ω0c*’として積分器32へと出力する。以下の式は、
図12の回転速度指令補正部36による演算の一例を示す式である。
【0125】
ω0c*’=ω0c*+K・Vdch ・・・(5)
【0126】
式(5)によれば、回転速度指令ω0c*’は、脈動成分Vdchが増大するほど増大し、脈動成分Vdchが低減するほど低減する。より具体的には、回転速度指令ω0c*’は脈動成分Vdchの波形と同様に脈動する。よって、
図12の回転速度指令補正部36は回転速度指令ω0c*に脈動成分Vdchを重畳している、とも説明できる。
【0127】
また式(5)によれば、脈動成分Vdchが正であるときには、回転速度指令ω0c*よりも大きく回転速度指令ω0c*’が算出され、脈動成分Vdchが負であるときには、回転速度指令ω0c*よりも小さく回転速度指令ω0c*’が算出される。つまり、回転速度指令補正部36は、直流電圧Vdcがその平均値よりも大きいときに、補正前の回転速度指令ω0c*よりも大きく補正後の回転速度指令ω0c*’を算出し、直流電圧Vdcがその平均値よりも小さいときに、補正前の回転速度指令ω0c*よりも小さく補正後の回転速度指令ω0c*’を算出してもよい。
【0128】
積分器32は、回転速度指令ω0c*’を積分して電圧位相指令θv*’を算出し、電圧位相指令θv*’を制御信号生成部34へと出力する。回転速度指令ω0c*’は脈動成分Vdchの増大に応じて増大するので、その回転速度指令ω0c*’の積分によって算出される電圧位相指令θv*’も脈動成分Vdchの増大に応じて増大する。つまり、
図12の例においては、電圧位相指令θv*(=ω0c*/s)に対する補正ではなく、その算出の元となる回転速度指令ω0c*に対して補正を行う。これにより、
図8の電圧位相補正部33による電圧位相指令θv*に対する補正と同様の作用を得ることができる。
【0129】
回転速度指令ω0c*に対する上記の補正は、過変調制御のみならず、過変調制御以外の通常の制御にも適用可能である。
図13は、制御回路30の内部構成の他の一例を概略的に示す機能ブロック図である。
図13の制御回路30は、
図4の制御回路30と比べて、電圧位相補正部33の替わりに、回転速度指令補正部36を備えている。回転速度指令補正部36の機能は、
図12の回転速度指令補正部36と同様であるので、繰り返しの説明を避ける。
【0130】
なお
図13に例示するように、電圧指令生成部31は、例えば、脈動成分Vdchを用いた補正が行われる前の回転速度指令ω0c*を用いて、電圧指令VMc*,VTc*を生成するとよい。補正後の回転速度指令ω0c*’は、脈動成分Vdchの増減に応じて増減するので、もし仮に、回転速度指令ω0c*’を用いて電圧指令VMc*,VTc*を算出すると、その電圧指令VMc*,VTc*の振幅も脈動成分Vdchの増減に応じて増減し得る。よって、このような振幅の増減を回避すべく、電圧指令生成部31は、脈動成分Vdchを用いた補正が行われる前の回転速度指令ω0c*を用いて、電圧指令VMc*,VTc*を生成するのである。
【0131】
<脈動成分Vdch>
コンデンサC1は、上述のように、小さい静電容量を有するコンデンサであっても構わない。この場合、直流電圧VdcはコンデンサC1によって十分に平滑されず、整流器1の整流に起因して脈動する。例えば交流電源E1が単相交流電圧を出力し、整流器1が全波整流を行う場合には、直流電圧Vdcは単相交流電圧の周波数の2倍の周波数(以下、整流周波数と呼ぶ)で脈動する。また、交流電源E1がN相交流電圧を出力し、整流器1が全波整流を行う場合には、直流電圧VdcはN相交流電圧の周波数の2N倍の周波数で脈動する。
【0132】
一方で、スイッチング素子S1〜S6のスイッチング周波数は整流周波数よりも高いので、これに起因して生じる脈動成分の周波数は、整流周波数よりも高い。
【0133】
さて、本実施の形態では、例えば、整流成分よりも高い脈動成分を低減の対象としているものの、低減の対象となる周波数成分は任意に設定してもよい。例えば、リアクトルLとコンデンサC1とによる共振回路の共振周波数を低減の対象としてもよい。かかる周波数は、脈動成分抽出部35のフィルタのカットオフ周波数などによって設定される。
【0134】
<電動機駆動装置の他の例>
図14は、電動機駆動装置の構成の一例を概略的に示す図である。
図14の例においては、電動機駆動装置は、
図1の電動機駆動装置と比較して、リアクトルL2を更に備えている。リアクトルL2は、整流器1とコンデンサC1との間において、直流母線LHの上に設けられている。なおリアクトルL2は、整流器1とコンデンサC1との間において、直流母線LLの上に設けられてもよい。
【0135】
コンデンサC1は、小さい静電容量を有するコンデンサである。よって、直流電圧Vdcは脈動成分Vdchと整流成分とを含む。
【0136】
この場合、リアクトルL1の電圧VLは脈動成分Vdchに相当する。その理由について簡単に述べる。まず、直流電圧Vdcは整流成分Vrecと脈動成分Vdchとの和(Vrec+Vdch)である。そして、例えばリアクトルL2のコンデンサC1側の一端の電位を基準電位とした電圧VLを考慮すると、キルヒホッフの法則により、整流器1の出力電圧は電圧VLと直流電圧Vdcの和と等しい。整流器1の出力電圧は、整流成分Vrecとほぼ等しいと考えることができるので、Vrec=Vdc+VLが成立する。Vdc=Vrec+Vdchをこの式に代入すると、VL=−Vdchが成立する。つまり、電圧VLは理想的には脈動成分Vdchの逆相となる。言い換えれば、電圧VLの正負は脈動成分Vdchと正負と相違する。
【0137】
同様に、リアクトルL2の整流器1側の一端の電位を基準電位とした電圧VLを考慮すると、キルヒホッフの法則により、Vrec=Vdc−VLが成立する。Vdc=Vrec+Vdchをこの式に代入すると、VL=Vdchが成立する。つまり、この場合、電圧VLは理想的には、脈動成分Vdchと一致する。
【0138】
以上のように、電圧VLは脈動成分Vdchに相当する。
図14の例では、脈動成分検出部6は、電圧検出回路であって、リアクトルL2の電圧VLを検出する。より具体的な一例として、脈動成分検出部6は、コンデンサC1側のリアクトルL2の一端の電位を基準電位としたリアクトルL2の電圧VLを、脈動成分Vdchの逆相として検出する。あるいは、脈動成分検出部6は、リアクトルL2の他端の電位を基準電位としたリアクトルL2の電圧VLを、脈動成分Vdchとして検出する。脈動成分検出部6は、検出した電圧VLを制御回路3へと出力する。
【0139】
制御回路3は電圧VLに基づいて負荷角δを制御する。例えば電圧VLが脈動成分Vdchと逆相である場合、制御回路3は、電圧VLの瞬時値の増大に応じて、負荷角δを低減するように、言い換えれば、電圧VLの瞬時値の低減に応じて、負荷角δを増大するように、負荷角δを制御する。つまり、電圧VLの正負が脈動成分Vdchの正負と逆であるので、電圧VLの増減と負荷角δの増減との関係を、脈動成分Vdchの増減と負荷角δの増減との関係と逆にするのである。
【0140】
具体的な一例としては、制御回路3は、位相差θ0c、電圧位相指令θv*、または、電圧位相指令θv*の算出の元となる回転速度指令ω0c*を、電圧VLに基づいて補正すればよい。代表的に位相差θ0c’を用いて説明すると、例えば、制御回路3は以下の式を用いて位相差θ0c’を算出してもよい。電圧位相指令θv*および回転速度指令ω0c*についても同様である。
【0141】
θ0c’=θ0c−K・VL ・・・(6)
【0142】
また、例えば電圧VLが脈動成分Vdchと同相である場合、制御回路3は、電圧VLの瞬時値の増大に応じて、負荷角δを増大するように、言い換えれば、電圧VLの瞬時値の低減に応じて、負荷角δを低減するように、負荷角δを制御する。
【0143】
具体的な一例としては、制御回路3は、位相差θ0c、電圧位相指令θv*、または、電圧位相指令θv*の算出の元となる回転速度指令ω0c*を、電圧VLに基づいて補正すればよい。代表的に位相差θ0c’を用いて説明すると、例えば、制御回路3は以下の式を用いて位相差θ0c’を算出してもよい。電圧位相指令θv*および回転速度指令ω0c*についても同様である。
【0144】
θ0c’=θ0c+K・VL ・・・(7)
【0145】
これにより、直流電圧Vdcの脈動成分Vdchの振幅を低減できる。しかも、
図14の脈動成分検出部6においては、直流電圧Vdcに対してフィルタを施す処理が不要であるので、処理を簡易にできる。言い換えれば、簡易に脈動成分Vdchを検出できる。
【0146】
他方、
図5のようにローパスフィルタ351を採用したり、あるいは不図示のハイパスフィルタを採用したりすれば、フィルタのカットオフ周波数を調整することで、脈動成分Vdchの周波数を適宜に調整することができる。つまり、低減の対象となる周波数帯域を容易に調整できる。
【0147】
本電動機駆動装置および制御回路3では、その発明の範囲内において、相互に矛盾しない限り、上記の種々の実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。