(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6369521
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】住宅の基礎構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/01 20060101AFI20180730BHJP
E04B 1/72 20060101ALI20180730BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
E02D27/01 A
E04B1/72
E04B1/76 400K
E04B1/76 500Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-225656(P2016-225656)
(22)【出願日】2016年11月21日
(65)【公開番号】特開2018-84022(P2018-84022A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2016年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一聡
【審査官】
西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−106907(JP,U)
【文献】
特開2015−145585(JP,A)
【文献】
特開2016−156134(JP,A)
【文献】
特開昭59−004736(JP,A)
【文献】
特開2013−019262(JP,A)
【文献】
特開平10−121486(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0319507(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00
E02D 27/01
E04B 1/348
E04B 1/72
E04B 1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平部及び垂直部を有する逆T字型の断面形状の住宅の布基礎と、
上記基礎の水平部に沿って設けられた地盤層と、
上記地盤層に積層された高硬度層と、
上記高硬度層に積層され、防蟻用の薬液を水平方向に流して拡散させる薬液拡散層と、
上記薬液拡散層に積層された土間コンクリート層と、を具備し、
上記高硬度層の材料は、上記薬液拡散層を構成する材料の硬度よりも高い硬度を有する材料である住宅の基礎構造。
【請求項2】
上記薬液拡散層と上記土間コンクリート層との間に断熱材層を備えている請求項1に記載の住宅の基礎構造。
【請求項3】
上記高硬度層は、上記薬液を鉛直方向に透過させるものである請求項1又は2に記載の住宅の基礎構造。
【請求項4】
上記高硬度層は、プラスチック、ゴム、又は鉄で構成された板材である請求項1から3のいずれかに記載の住宅の基礎構造。
【請求項5】
水平部及び垂直部を有する逆T字型の断面形状の住宅の布基礎と、
上記基礎の水平部に沿って設けられた地盤層と、
上記地盤層に積層され、防蟻用の薬液が下方に流れることを防ぐ板材と、
上記板材に積層され、防蟻用の薬液を水平方向に流して拡散させる土壌層と、
上記土壌層に積層された土間コンクリート層と、を具備し、
上記板材は、上記土壌層を構成する材料の硬度よりも高い硬度を有する住宅の基礎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図6には、住宅の玄関土間における基礎構造500が示されている。玄関土間などの土間は、地面と同じ高さに位置するので、シロアリが進入しやすい。土間の外縁には、床の框120が配置されている。この框120は木材で構成されているため、シロアリの食害を受けやすい。そのため、住宅が新築されるときに、土間の土壌内に防蟻用の薬剤が散布され、その後に、土間の仕上げ部分が施工される。散布された薬剤の効果は、時間の経過を伴って失われる。そこで、新築から一定期間が経過した後に、土間の土壌に防蟻用の薬液を改めて散布する工事が実施される。
【0003】
土間は、例えば、土間コンクリート層114、モルタル層115、及びタイル117が順に積層されて構成される。前述された工事では、ドリルが用いられて、タイル117の目地から土間コンクリート層114及びモルタル層115に鉛直方向に穿孔123が穿たれる。穿孔123は地盤層111に到達しており、穿孔123を通じて地盤層111に防蟻用の薬液が注入される。特許文献1には、このような工事に適した建築物の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−94713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6(a)に示されるように、注入された薬液は、地盤層111を浸透して水平方向及び鉛直方向に拡がる。
図6(a)では、地盤層111の密度が略均一である。薬液は地盤層111を球状に拡がる。薬液が拡がる範囲501の水平方向の最大長さは、例えば40cm程度である。
図6(b)では、地盤層111の密度に粗密が存在する。地盤層111の密度は、基礎110に近い部分では小さい。このような密度の粗密は、例えば、地盤層111に圧力を加える作業の偏りによって生じることがあり、基礎110付近では圧力が加わりにくいことによる。薬液は、地盤層111の密度の小さい箇所では拡がりやすい。したがって、薬液が拡がる範囲502は、穿孔123から基礎110に向けて斜めに形成される。
【0006】
所定期間経過後の工事において防蟻を確実なものとするには、地盤層111において、特に水平方向の全域に薬液が拡散されることが望まれる。一箇所の穿孔123から注入された薬液が地盤層111を拡がる範囲には限界があるが、例えば30センチメートルのピッチで複数の穿孔123を土間コンクリート層114及びモルタル層115に形成する必要がある。しかしながら、タイル117の目地に複数の穿孔123を形成することは、土間の外観が損なわれることから現実的ではない。したがって、土間の外観が損なわれることなく、且つ薬液が地盤層111に十分に拡散することが望まれている。
【0007】
特許文献1に開示される建築物においては、土間の土壌内に、薬液を拡散させる透水性シートと撥水性シートとを配置している。土間の穿孔を介して注入された薬液は、透水性シートに浸透しつつ水平方向に拡がる。これにより、薬液を注入するための穿孔の数をできる限り少なくしつつ、広範囲に薬液が拡散され得る。
【0008】
しかし、特許文献1に開示された技術においては、ドリルによって土間に穿孔が形成されるときに、透水性シート及び撥水性シートをドリルが貫通するおそれがある。そうすると、穿孔に注入された薬液は、透水性シート及び撥水性シートの下方に流れ、透水性シートに沿って水平方向へ十分に拡がることができないおそれがある。
【0009】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、防蟻用の薬液を注入するための穿孔ができる限り少なく、且つ穿孔に注入された薬液が土間コンクリート層の下方において水平方向に拡がることを可能にする基礎構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明に係る住宅の基礎構造は、住宅の基礎と、上記基礎に沿って設けられた地盤層と、上記地盤層に積層された高硬度層と、上記高硬度層に積層され、防蟻用の薬液を水平方向に流して拡散させる薬液拡散層と、上記薬液拡散層に積層された土間コンクリート層と、を具備し、上記高硬度層の材料は、上記薬液拡散層を構成する材料の硬度よりも高い硬度を有する材料である。
【0011】
上記構成によれば、薬液拡散層の下方に高硬度層が配置され、高硬度層の材料は、薬液拡散層を構成する材料の硬度よりも高い硬度を有する。そのため、作業者は、ドリルを用いて防蟻用の薬液を注入する穿孔を形成する際に、ドリルが高硬度層に到達したことを把握しやすい。これにより、穿孔が高硬度層を貫通することが抑制される。薬液拡散層よりも下方まで穿孔が形成される不具合が発生し難い。したがって、上記基礎構造においては、上記防蟻用の薬液を注入するための穿孔が土間に形成されつつ、注入された薬液が土間コンクリート層に沿って水平方向に拡がることが可能である。
【0012】
(2) 好ましくは、上記薬液拡散層は、不織布により構成されている。
【0013】
(3) 好ましくは、上記薬液拡散層と上記土間コンクリート層との間に断熱材層を備えている。
【0014】
上記構成によれば、薬液拡散層の上に断熱材層が位置する。そのため、薬液拡散層内の薬液によって、シロアリ等の蟻による食害から断熱材層も保護される。
【0015】
(4) 好ましくは、上記高硬度層は、上記薬液を鉛直方向に透過させるものである。
【0016】
上記構成によれば、穿孔に注入されて薬液拡散層を水平方向に拡散した薬液を、高硬度層を透過させて地盤層に含浸させることができる。
【0017】
(5) 好ましくは、上記高硬度層は、プラスチック、ゴム、又は鉄で構成された板材である。
【0018】
(6) 好ましくは、住宅の基礎と、上記基礎に沿って設けられた地盤層と、上記地盤層に積層され、防蟻用の薬液が下方に流れることを防ぐ板材と、上記板材に積層され、防蟻用の薬液を水平方向に流して拡散させる土壌層と、上記土壌層に積層された土間コンクリート層と、を具備し、上記板材は、上記土壌層を構成する材料の硬度よりも高い硬度を有する。
【0019】
上記構成によれば、土壌層の下方に板材が配置されているので、薬液が下方に流れることなく、土壌層内を水平方向に流れて拡散できる。また、板材の材料は、土壌層を構成する材料の硬度よりも高い硬度を有する。そのため、作業者は、ドリルを用いて防蟻用の薬液を注入する穿孔を形成する際に、ドリルが板材に到達したことを把握しやすく、高硬度層を穿孔が貫通するおそれが少ない。土壌層よりも下方まで穿孔が形成される不具合が発生し難い。したがって、上記基礎構造は、上記防蟻用の薬液を注入するための穿孔が土間に形成されつつ、注入された薬液が土間コンクリート層に沿って水平方向に拡がることが可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る住宅の基礎構造は、防蟻用の薬液を注入するための穿孔ができる限り少なく、且つ穿孔に注入された薬液が土間コンクリート層の下方において水平方向に拡がることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る住宅の基礎構造の断面斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る住宅の基礎構造の要部断面斜視図である。
【
図3】
図3は、穿孔が設けられた第1実施形態に係る住宅の基礎構造の要部断面斜視図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る住宅の基礎構造の要部断面斜視図である。
【
図5】
図5は、第3実施形態に係る住宅の基礎構造の要部断面斜視図である。
【
図6】
図6は、従来の住宅の基礎構造の断面斜視図であり、
図6(a)は薬液が球状に拡がる様子を示す図であり、
図6(b)は薬液が偏って流れる様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態が説明される。なお、各実施形態は、本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更できることは言うまでもない。
【0023】
[第1実施形態に係る住宅の基礎構造100]
図1、
図2を参照して、第1実施形態に係る住宅の基礎構造(以下、基礎構造)100が説明される。基礎構造100は、住宅の土間においてシロアリ等の蟻の進入を防止する構造である。本実施形態における土間は、玄関土間である。基礎構造100は、住宅の基礎10と、地盤層11と、高硬度層12と、薬液拡散層13と、土間コンクリート層14と、モルタル層15と、タイル層16と、を備える。地盤層11と、高硬度層12と、薬液拡散層13と、土間コンクリート層14と、モルタル層15と、タイル層16は、それぞれ、玄関土間の水平方向における全域を覆っている。
【0024】
基礎10は、逆T字型の断面構造を有する布基礎である。基礎10は、水平方向に延びる水平部21と、水平部21から鉛直上方に延びる垂直部22と、を有する。垂直部22の上には、住宅の構造部材が配置される。
図1において、垂直部22の上に床の框20が配置されている。
【0025】
地盤層11は、水平部21に沿って設けられた層である。地盤層11は、土によって構成されている。
【0026】
高硬度層12は、地盤層11に積層された層である。第1実施形態では、高硬度層12は、鉄板によって構成されている。高硬度層12は、玄関土間の全域を覆うように構成される限り、一枚の鉄板によって構成されても、複数枚の連結された鉄板によって構成されてもよい。
【0027】
薬液拡散層13は、高硬度層12に積層され、防蟻用の薬液を水平方向に流して拡散させる層である。第1実施形態では、薬液拡散層13は、不織布によって構成されている。高硬度層12の材料である鉄の硬度は、薬液拡散層13を構成する材料である不織布の硬度よりも高い。
【0028】
土間コンクリート層14は、コンクリートによって構成された層である。土間コンクリート層14は、土間の仕上げ部分の下層を構成する。
【0029】
モルタル層15は、モルタルによって構成された層である。モルタル層15は、土間の仕上げ部分の中間層を構成する。
【0030】
タイル層16は、水平方向に沿って配置された複数のタイル17と、タイル17間の目地を埋める目地部18と、によって構成された層である。目地部18は、モルタル層15のモルタルと同一のモルタルで構成されている。タイル層16は、土間の仕上げ部分の上層を構成する。
【0031】
[防蟻用の再施工工事]
住宅が新築されたときには、防蟻用の施工として、防蟻用の薬液が含浸された薬液拡散層13が配置される。あるいは、薬液拡散層13と土間コンクリート層14の間に、防蟻用の固形の薬剤が、水平方向に沿って並べて配置される。固形の薬剤は、土間内の水分によって液化して拡散する。なお、固形の薬剤に代えて液体の薬剤が使用されてもよい。これらの薬液又は薬剤は、時間経過に伴って消失するので、防蟻用の薬液の再施工工事が実行される。防蟻用の薬液の再施工工事は、薬液拡散層13に防蟻用の薬液を注入する工事である。
【0032】
図3に示されるように、防蟻用の再施工工事では、基礎構造100に、防蟻用の薬液を注入するための穿孔23が、形成される。穿孔23は、例えばドリルを用いて、タイル17間の目地から鉛直下方に向けてタイル層16などを切削することによって形成される。穿孔23は、目地部18から、モルタル層15、土間コンクリート層14、及び薬液拡散層13を経由して、高硬度層12に至っている。穿孔23は、薬液拡散層13まで形成されていればよい。施工者は、ドリルの先端が高硬度層12に到達することによって、土間コンクリート層14に穿孔23を形成するときに生じた抵抗より、大きな抵抗を感じる。これにより、施工者は、穿孔23が高硬度層12の上方に到達してことを把握し、高硬度層12を穿孔23が貫通する前に、ドリルの使用を停止する。
【0033】
穿孔23が形成されると、液状の薬液が穿孔23を介して薬液拡散層13に注入される。薬液拡散層13は不織布によって構成されているので、注入された薬液は薬液拡散層13に沿って水平方向に流れて拡散する。薬液の注入が終了すると、穿孔23が目地部によって埋められる。なお、穿孔23の形成は、例えば玄関土間の四隅のそれぞれに対して実行される。形成された穿孔23のそれぞれから薬液が注入される。このようにして、防蟻用の再施工工事が完了する。
【0034】
[第1実施形態の作用効果]
第1実施形態に係る基礎構造100によれば、薬液拡散層13の下方に高硬度層12が配置され、高硬度層12の材料は、薬液拡散層13を構成する材料の硬度よりも高い硬度を有する。そのため、作業者は、ドリルを用いて防蟻用の薬液を注入する穿孔23を形成する際に、ドリルが高硬度層12に到達したことを把握しやすい。これにより、穿孔23が高硬度層12を貫通することが抑制される。したがって、基礎構造100においては、上記防蟻用の薬液を注入するための穿孔23が土間に形成されつつ、注入された薬液が土間コンクリート層14に沿って水平方向に拡がることを可能にする。
【0035】
また、高硬度層12は、薬液を鉛直方向に透過させるものである。したがって、穿孔23に注入されて薬液拡散層13を水平方向に拡散した薬液を、高硬度層12を透過させて地盤層11に含浸させることができる。
【0036】
[第2実施形態に係る基礎構造200]
図4を参照して、第2実施形態に係る基礎構造200が説明される。第2実施形態に係る基礎構造200は、断熱材層24が設けられている点で、第1実施形態に係る基礎構造100とは異なっている。他の点においては、第2実施形態に係る基礎構造200は、第1実施形態に係る基礎構造100と同一の構成を有している。同一の構成については、その説明が省略されている。
【0037】
図4に示されるように、基礎構造200は、薬液拡散層13と土間コンクリート層14に積層された断熱材層24を備えている。つまり、断熱材層24は薬液拡散層13に積層されており、土間コンクリート層14は断熱材層24に積層されている。断熱材層24は、断熱材によって構成された層である。第2実施形態では、断熱材層24の断熱材は、例えばグラスウールである。
【0038】
防蟻用の再施工工事において、穿孔23は、目地部18から高硬度層12まで形成される。穿孔23は、目地部18から、モルタル層15、土間コンクリート層14、断熱材層24、及び薬液拡散層13を経由して、高硬度層12の上方にまで至っている。つまり、断熱材層24にも穿孔23が形成されている。穿孔23は、薬液拡散層13まで形成されていればよい。
【0039】
[第2実施形態の作用効果]
第2実施形態に係る基礎構造200によれば、薬液拡散層13の上に断熱材層24が位置する。そのため、薬液拡散層13内の薬液によって、シロアリ等の蟻による食害から断熱材層24も保護される。
【0040】
[第3実施形態に係る基礎構造300]
図5を参照して、第3実施形態に係る基礎構造300が説明される。第3実施形態に係る基礎構造300は、不織布で構成された薬液拡散層13の代わりに土壌層25が設けられている点で、第2実施形態に係る基礎構造200とは異なっている。他の点においては、第3実施形態に係る基礎構造300は、第2実施形態に係る基礎構造200と同一の構成を有している。同一の構成については、その説明が省略されている。
【0041】
図5に示されるように、基礎構造300は、高硬度層12と断熱材層24との間に、土壌層25を備えている。土壌層25は、地盤層11と同様に土によって構成されている。土壌層25は、防蟻用の薬液を水平方向に流して拡散させる層である。
【0042】
高硬度層12は、上述したように鉄板で構成されている。高硬度層12を構成する鉄板は、穿孔23の形成範囲を制限するだけでなく、薬液が下方に流れることを防止する板材である。そのため、高硬度層12が複数の鉄板により構成されている場合、鉄板間のシーリングが確保されるように、例えばシーリング材などによって鉄板間の隙間が塞がれている。高硬度層12の鉄板により薬液が下方に流れないので、高硬度層12に積層された土壌層25内に薬液が滞留できる。そのため、高硬度層12が存在しない場合と比べて、薬液が土壌層25を水平方向に拡がりやすい。
【0043】
また、高硬度層12の鉄板は、その上面が水平方向に対して傾斜して配置されてもよい。この場合、鉄板の上面は、土間の中央側から基礎10の垂直部22に向けて下降するように配置される。この配置により、鉄板と基礎10の垂直部22との接続部に向けて薬液が流れ、接続部の周辺の土に拡散する。ここで、シロアリ等の蟻が鉄板自体を食害して進入することはない。シロアリ等の蟻が進入する可能性があるのは、基礎10の垂直部22との接続部である。この接続部の土に薬液が拡散されるので、シロアリ等の蟻の進入が防止される。
【0044】
[第3実施形態に係る作用効果]
第3実施形態に係る基礎構造300によれば、土壌層25の下方に鉄板が配置されているので、薬液が下方に流れることなく、土壌層25を水平方向に流れて拡散される。また、鉄板の材料は、土壌層25を構成する材料の硬度よりも高い硬度を有する。そのため、作業者は、ドリルを用いて防蟻用の薬液を注入する穿孔23を形成する際に、ドリルが鉄板に到達したことを把握しやすく、高硬度層12を穿孔23が貫通するおそれが少ない。したがって、基礎構造300は、上記防蟻用の薬液を注入するための穿孔23が土間に形成されつつ、注入された薬液が土間コンクリート層14に沿って水平方向に拡がることが可能である。
【0045】
[変形例]
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。本実施形態に係る基礎構造100、200、300の各構成要素に関して、実施の形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換、及び追加が行われてもよい。また、上記基礎構造100、200、300の各構成要素の形状及び大きさも、実施の形態に応じて、適宜、設定されてよい。例えば、以下の変更が可能である。
【0046】
第1及び第2実施形態に係る基礎構造100、200では、薬液拡散層13を構成する材料は、不織布である。薬液拡散層13を構成する材料は、防蟻用の薬液が浸透しやすい材料であればよく、例えば、発泡樹脂材であってもよい。特に、発泡樹脂材の発泡倍率が2倍程度の低発泡体が好ましい。
【0047】
第1から第3実施形態に係る基礎構造100、200、300では、高硬度層12は鉄板によって構成されているが、この構成に限定されない。
【0048】
薬液拡散層13を有する第1及び第2実施形態に係る基礎構造100、200では、高硬度層12は、薬液拡散層13の材料よりも硬度の高い材料により構成されていればよい。高硬度層12の材料は鉄に限定されず、例えば、プラスチック又はゴムであってもよい。高硬度層12の材料がプラスチック又はゴムの場合、高硬度層12は、プラスチック又はゴム製の板材であることが好ましい。この場合、ドリルが瞬間的に触れても穿孔されない程度の一定の厚みを有することが好ましい。特に、ゴム製の板材は、ドリルによる穿孔が容易ではないので、好ましい。また、高硬度層12の形態は、板材に限定されない。高硬度層12は、例えば、ケプラー繊維布で構成されてもよく、多数の孔が形成された板材であるパンチングメタルであってもよい。また、高硬度層12は、複数の鉄製の球が敷き詰められた層や砂利が敷き詰められた層であってもよい。これにより、高硬度層12にドリルの先端が当接することによって、施工者に穿孔23を形成するときの抵抗を感じさせ、且つ穿孔23に注入されて薬液拡散層13を水平方向に拡散した薬液を、高硬度層を透過させて地盤層11に含浸させることができる。
【0049】
土壌層25を有する第3実施形態に係る基礎構造300では、高硬度層12は、土壌層25の材料よりも硬度の高い材料により構成され、且つ、薬液が下方に流れることを防止できる板材であれば限定されない。高硬度層12である板材として、例えば、プラスチック製、ゴム製、又はアルミ製の板材が用いられてもよい。
【0050】
第1から第3実施形態に係る基礎構造100、200、300は、モルタル層15を有しているが、モルタル層15は設けられなくてもよい。また、第3実施形態に係る基礎構造300は、断熱材層24を備えているが、断熱材層24は設けられなくてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10・・・基礎
11・・・地盤層
12・・・高硬度層
13・・・薬液拡散層
14・・・土間コンクリート層
24・・・断熱材層
25・・・土壌層
100、200、300・・・基礎構造