(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、現在接続されているモータの種別に対応した専用の制御プログラムモジュールだけを変更して専用の制御パラメータを変更しない可能性や、それまで接続していなかった種別であったために内容が未設定のままであった専用の制御パラメータを未設定状態のまま適用してしまう可能性があり、そのための具体的な対策については考慮されていなかった。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、接続しているモータの種別に応じた制御パラメータの設定確認をユーザに促して誤った制御を回避できるモータ制御装置、モータ制御システム、モータ制御方法、及びモータ制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、位置検出器を備えたモータの駆動を制御するように構成されたモータ制御装置であって、所定の制御パラメータに基づいてインバータの電力変換を制御するように構成された電力変換制御部と、前記位置検出器から受信した信号に基づいて前記モータの種別を判別するように構成されたモータ種別判別部と、前記モータ種別判別部により判別された前記モータの種別を不揮発性メモリに記録するように構成されたメモリ制御部と、前記モータ種別判別部により判別された現在の前記モータの種別と、前記不揮発性メモリに記録された直前の前記モータの種別とを比較し、一致するか否かを判定するように構成された比較判定部と、前記比較判定部により前記モータの種別が一致しないと判定された場合に
前記モータ種別判別部で判別した前記モータの種別に応じて前記所定の制御パラメータの設定確認に関する報知を報知部で行う報知制御を実行するとともに、実行中の前記報知制御が解除されない限り、前記電力変換制御部に対して電力変換制御を実行させないよう制御する報知制御部と、
前記所定の制御パラメータのうち各前記モータの種別に対応して内容が異なる専用制御パラメータのさらに現在の前記モータの種別に対応する専用制御パラメータの内容を設定するように構成されたパラメータ設定部と、を有し、前記報知制御部は、現在の前記モータの種別と直前の前記モータの種別にそれぞれ対応する専用制御パラメータの内容を前記報知部に対比表示する表示制御部を有するとともに、前記パラメータ設定部により現在の前記モータの種別に対応する専用制御パラメータが全て設定されるまで前記報知制御が解除されないモータ制御装置が適用される。
【0007】
また、上記課題を解決するため、本発明の別の観点によれば、位置検出器を備えたモータの駆動を制御するように構成されたモータ制御装置であって、所定の制御パラメータに基づいてインバータの電力変換を制御するように構成された手段と、前記位置検出器から受信した信号に基づいて前記モータの種別を判別するように構成された手段と、判別された前記モータの種別を不揮発性メモリに記録するように構成された手段と、判別された現在の前記モータの種別と、記録された直前の前記モータの種別とを比較し、一致するか否かを判定するように構成された手段と、前記モータの種別が一致しないと判定された場合に
判別した前記モータの種別に応じて前記所定の制御パラメータの設定確認に関する報知を行う報知制御を実行するとともに、実行中の前記報知制御が解除されない限り、電力変換制御を実行させないよう制御する手段と、
前記所定の制御パラメータのうち各前記モータの種別に対応して内容が異なる専用制御パラメータのさらに現在の前記モータの種別に対応する専用制御パラメータの内容を設定するように構成された手段と、を有し、前記報知制御を実行する手段は、現在の前記モータの種別と直前の前記モータの種別にそれぞれ対応する専用制御パラメータの内容を対比表示するとともに、現在の前記モータの種別に対応する専用制御パラメータが全て設定されるまで前記報知制御が解除されないモータ制御装置が適用される。
【0008】
また、上記課題を解決するため、本発明のさらに別の観点によれば、モータ制御システムであって、位置検出器を備えたモータと、前記モータの駆動を制御するように構成された請求項1乃至8のいずれか1項に記載のモータ制御装置と、を有するモータ制御システムが適用される。
【0009】
また、上記課題を解決するため、本発明の別の観点によれば、位置検出器を備えたモータの駆動を制御するモータ制御方法であって、所定の制御パラメータに基づいてインバータの電力変換を制御することと、前記位置検出器から受信した信号に基づいて前記モータの種別を判別することと、判別された前記モータの種別を不揮発性メモリに記録することと、判別された現在の前記モータの種別と、前記不揮発性メモリに記録された直前の前記モータの種別とを比較し、一致するか否かを判定することと、前記モータの種別が一致しないと判定された場合に
判別した前記モータの種別に応じて前記所定の制御パラメータの設定確認に関する報知を報知部で行う報知制御を実行するとともに、実行中の前記報知制御が解除されない限り、電力変換制御を実行させないよう制御することと、
前記所定の制御パラメータのうち各前記モータの種別に対応して内容が異なる専用制御パラメータのさらに現在の前記モータの種別に対応する専用制御パラメータの内容を設定することと、を有し、前記報知制御の実行では、現在の前記モータの種別と直前の前記モータの種別にそれぞれ対応する専用制御パラメータの内容を前記報知部に対比表示するとともに、前記パラメータ設定部により現在の前記モータの種別に対応する専用制御パラメータが全て設定されるまで前記報知制御が解除されないモータ制御方法が適用される。
【0010】
また、上記課題を解決するため、本発明の別の観点によれば、位置検出器を備えたモータの駆動を制御するように構成されたモータ制御装置が備える演算部に実行させるモータ制御プログラムであって、所定の制御パラメータに基づいてインバータの電力変換を制御することと、前記位置検出器から受信した信号に基づいて前記モータの種別を判別することと、判別された前記モータの種別を不揮発性メモリに記録することと、判別された現在の前記モータの種別と、前記不揮発性メモリに記録された直前の前記モータの種別とを比較し、一致するか否かを判定することと、前記モータの種別が一致しないと判定された場合に
判別した前記モータの種別に応じて前記所定の制御パラメータの設定確認に関する報知を報知部で行う報知制御を実行するとともに、実行中の前記報知制御が解除されない限り、電力変換制御を実行させないよう制御することと、
前記所定の制御パラメータのうち各前記モータの種別に対応して内容が異なる専用制御パラメータのさらに現在の前記モータの種別に対応する専用制御パラメータの内容を設定することと、を実行
し、前記報知制御の実行では、現在の前記モータの種別と直前の前記モータの種別にそれぞれ対応する専用制御パラメータの内容を前記報知部に対比表示するとともに、前記パラメータ設定部により現在の前記モータの種別に対応する専用制御パラメータが全て設定されるまで前記報知制御が解除されないモータ制御プログラムが適用される。
【0011】
また、上記課題を解決するため、本発明のさらに別の観点によれば、位置検出器を備えたモータの駆動を制御するモータ制御方法であって、所定の制御パラメータに基づいてインバータの電力変換を制御するステップと、前記位置検出器から受信した信号に基づいて前記モータの種別を判別するステップと、判別した前記モータの種別に応じて前記所定の制御パラメータの設定確認に関する報知を行うステップと、を有するモータ制御方法が適用される。
【0012】
また、上記課題を解決するため、本発明のさらに別の観点によれば、前記モータの種別を判別するステップでは、前記モータの種別を回転形又は直動形と判別するモータ制御方法が適用される。
【0013】
また、上記課題を解決するため、本発明のさらに別の観点によれば、判別された前記モータの種別を不揮発性メモリに記録するステップと、判別された現在の前記モータの種別と、前記不揮発性メモリに記録された直前の前記モータの種別とを比較し、一致するか否かを判定するステップと、をさらに有し、前記報知を行うステップでは、前記判定するステップで前記モータの種別が一致しないと判定された場合に報知するモータ制御方法が適用される。
【0014】
また、上記課題を解決するため、本発明のさらに別の観点によれば、外部端末からの解除信号に基づいて前記報知を行うステップによる報知制御を解除するステップをさらに有するモータ制御方法が適用される。
【0015】
また、上記課題を解決するため、本発明のさらに別の観点によれば、前記報知を行うステップでは、前記所定の制御パラメータのうち各前記モータの種別に対応して内容が異なる専用制御パラメータを表示するモータ制御方法が適用される。
【0016】
また、上記課題を解決するため、本発明のさらに別の観点によれば、前記報知を行うステップでは、現在の前記モータの種別と直前の前記モータの種別にそれぞれ対応する専用制御パラメータの内容を対比表示するモータ制御方法が適用される。
【0017】
また、上記課題を解決するため、本発明のさらに別の観点によれば、現在の前記モータの種別の専用制御パラメータの内容を設定するステップをさらに有するモータ制御方法が適用される。
【0018】
また、上記課題を解決するため、本発明のさらに別の観点によれば、位置検出器を備えたモータの駆動を制御するように構成されたモータ制御装置であって、所定の制御パラメータに基づいてインバータの電力変換を制御する電力変換制御部と、前記位置検出器から受信した信号に基づいて前記モータの種別を判別するモータ種別判別部と、前記モータ種別判別部で判別した前記モータの種別に応じて前記所定の制御パラメータの設定確認に関する報知を報知部で行う報知制御部と、を有するモータ制御装置が適用される。
【0019】
また、上記課題を解決するため、本発明のさらに別の観点によれば、前記モータ種別判別部は、前記モータの種別を回転形又は直動形と判別するモータ制御装置が適用される。
【0020】
また、上記課題を解決するため、本発明のさらに別の観点によれば、前記モータ種別判別部により判別された前記モータの種別を不揮発性メモリに記録するメモリ制御部と、前記モータ種別判別部により判別された現在の前記モータの種別と、前記不揮発性メモリに記録された直前の前記モータの種別とを比較し、一致するか否かを判定する比較判定部と、をさらに有し、前記報知制御部は、前記比較判定部により前記モータの種別が一致しないと判定された場合に報知するモータ制御装置が適用される。
【0021】
また、上記課題を解決するため、本発明のさらに別の観点によれば、外部端末からの解除信号に基づいて前記報知制御部による報知制御を解除する報知制御解除部をさらに有するモータ制御装置が適用される。
【0022】
また、上記課題を解決するため、本発明のさらに別の観点によれば、前記報知制御部は、
前記所定の制御パラメータのうち各前記モータの種別に対応して内容が異なる専用制御パラメータを前記報知部に表示する表示制御部を有するモータ制御装置が適用される。
【0023】
また、上記課題を解決するため、本発明のさらに別の観点によれば、前記表示制御部は、現在の前記モータの種別と直前の前記モータの種別にそれぞれ対応する専用制御パラメータの内容を前記報知部に対比表示するモータ制御装置が適用される。
【0024】
また、上記課題を解決するため、本発明のさらに別の観点によれば、現在の前記モータの種別の専用制御パラメータの内容を設定するパラメータ設定部を有するモータ制御装置が適用される。
【0025】
また、上記課題を解決するため、本発明のさらに別の観点によれば、モータ制御システムであって、位置検出器を備えたモータと、所定の制御パラメータに基づいてインバータの電力変換を制御し、前記位置検出器から受信した信号に基づいて前記モータの種別を判別し、判別した前記モータの種別に応じて前記所定の制御パラメータの設定確認に関する報知を行うモータ制御装置と、を有するモータ制御システムが適用される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、接続しているモータの種別に応じた制御パラメータの設定確認をユーザに促して誤った制御を回避できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0029】
<モータ制御システムの構成例>
まず、
図1を参照しつつ、本実施形態のモータ制御システムの構成の一例について説明する。
【0030】
図1は本実施形態のモータ制御システムのハードウェア構成を模式的なブロック図で示している。この
図1に示すように、モータ制御システム1は、モータ11と、モータ制御装置12と、外部端末13とを有する。
【0031】
モータ11は、後述のモータ制御装置12から供給される電力(以下、給電電力という)により駆動されてそのエネルギーを機械的な力や変位に変換する電動機であり、その機械的構成や電磁気的動作方式の違いにより回転形、直動形、同期形、誘導形など多様な種別のものを適用できる。なお本実施形態の例では、トルクと回転変位を発生する回転形と、推力と直線変位を発生するリニア形(直動形)の2つの種別のモータ11のいずれか1つを互換可能に接続して適用する場合を説明する。これらはいずれも3相交流電力により駆動されるものとし、給電用の配線とコネクタの仕様を共通させてモータ制御装置12への接続に互換性を持たせている。またいずれの種別のモータ11も、その出力変位と当該モータ11の種別を検出可能な位置検出器14を備えており、以下においては特に回転形モータが備える位置検出器14はエンコーダといい、直動形モータが備える位置検出器14はリニアスケールという。
【0032】
モータ制御装置12は、交流電源15から供給される交流電力を適宜の給電電力に変換して上記モータ11に給電し、その駆動を制御する機能を有する。このモータ制御装置12は、主にコンバータ21と、インバータ22と、モータ制御回路部23を有している。
【0033】
コンバータ21は、その内部に備えた特に図示しない整流回路や平滑回路により、交流電源15から供給される交流電力を所定の直流電力に変換する機能を有する。インバータ22は、その内部に備えた特に図示しない複数の半導体スイッチング素子からなるブリッジ回路を切り替えることにより、コンバータ21から供給される直流電力を所定の給電電力に変換して上記モータ11に給電する機能を有する。モータ制御回路部23は、特に図示しない上位制御装置からの指令と、上記モータ11が備える位置検出器14からの出力変位の検出信号に基づいて、上記インバータ22の電力変換を制御する機能を有する。なお、このモータ制御回路部23の詳細な構成例については、後の
図5で説明する。
【0034】
外部端末13は、例えば汎用パーソナルコンピュータや、上記モータ制御装置12と別体のエンジニアリングツールで構成され、モータ制御装置12に外部から接続することで各種情報を送受信する機能を有する。この外部端末13は、表示部(報知部)と操作部を備えており(いずれも図示省略)、後述する報知制御の実行時にはモータ制御装置12から受信する情報に基づいてモータ種別変更報知画面(後述の
図3参照)を表示部に表示するとともに、操作部を介したユーザからの入力操作に基づいて報知制御の解除信号や各制御パラメータの設定情報をモータ制御装置12に送信する。なおこの外部端末13は、上記の報知制御等の特別な処理を実行する場合にのみモータ制御装置12に接続するものであり、モータ制御装置12の通常作動時には接続する必要はない。
【0035】
<本実施形態の特徴>
上述したように、モータ11には、回転形と直動形、又は同期形と誘導形などといった機械的構成や電磁気的動作方式に差異のある複数の種別が存在する。本実施形態の例では、回転形と直動形の2つの種別のいずれに対しても1台のモータ制御装置12で兼用化してそれぞれ適切な制御を行う。この場合、基本的にハードウェア上の観点では、いずれの種別のモータ11を制御する場合でも上記
図1に示したモータ制御装置12の構成が共通して必要とされる。しかし、ソフトウェア上の観点では、モータ制御回路部23の電力変換制御において適用する多数の制御パラメータや多数の制御プログラムモジュールの中には各種別に対応して異なる内容で設定すべき(もしくは所定の種別だけが独自に必要となる)専用制御パラメータや専用制御プログラムモジュールが存在する。そのため、同一のモータ制御装置12で複数の種別のモータ11に対応して制御するためには、適用する種別ごとに専用制御パラメータを設定して専用制御プログラムモジュールとともに使い分ける必要がある。
【0036】
しかし、例えば試験機用として使用されるモータ制御装置12などのように接続するモータ11の種別が頻繁に変更される場合には、ユーザが専用制御プログラムモジュールだけを変更して専用制御パラメータの変更を忘れてしまう可能性や、それまで接続していなかった種別であったために内容が未設定のままであった専用制御パラメータを未設定状態のまま適用してしまう可能性があった。
【0037】
これに対して本実施形態では、モータ制御回路部23がモータ11の位置検出器14から受信した信号に基づいて当該モータ11の種別を判別する。そして、モータ制御回路部23が判別したモータ11の種別に応じて所定の制御パラメータの設定確認に関する報知を行う。これにより、本実施形態のモータ制御装置12は、接続しているモータ11の種別に応じた制御パラメータの設定確認をユーザに促すことができ、誤った制御を回避できる。
【0038】
<モータ制御回路部が実行するソフトウェアブロックの構成例>
以下、上記モータ制御回路部23の構成の一例について説明する。
【0039】
モータ制御回路部23は、上位制御装置からの指令と所定の制御パラメータに基づいてインバータ22の電力変換を制御し、位置検出器14から受信した信号に基づいてモータ11の種別を判別し、判別したモータ11の種別に応じて所定の制御パラメータの設定確認に関する報知を行う。以下、
図2を参照しつつ、モータ制御回路部23の構成について、より具体的に機能ブロックで実装した例を説明する。
【0040】
図2は、モータ制御回路部23が実行する処理内容をソフトウェアブロック図で模式的に示している。この
図2に示すように、モータ制御回路部23が実行する処理内容の構成としては、電力変換制御部31と、モータ種別判別部32と、メモリ制御部33と、比較判定部34と、報知制御部35と、報知制御解除部36と、パラメータ設定部37を有している。これらの各部は、モータ制御回路部23のCPU901(後述の
図5参照)が実行するプログラムにより実装される。
【0041】
電力変換制御部31は、例えば上位制御装置から入力される位置指令や速度指令などの指令と、位置検出器14から入力されるモータ11の出力変位の検出信号に基づいて所定のループ制御及びPWM制御による電力変換制御を行う。そしてその電力変換制御に基づいて、インバータ22に対しその内部に備える半導体スイッチング素子の切替信号を出力することでモータ11への給電電力を制御する。この電力変換制御部31が行う電力変換制御の処理は、制御プログラムモジュールと制御パラメータに基づいて実行される。これら制御プログラムモジュールと制御パラメータの大部分は、いずれのモータ種別でも共通して適用される共通制御プログラムモジュールと共通制御パラメータで構成される。しかし、一部には回転形のモータ種別に対応して実行、設定すべき専用制御プログラムモジュールと専用制御パラメータが存在し、他の一部にはリニア形のモータ種別に対応して実行、設定すべき専用制御プログラムモジュールと専用制御パラメータが存在する。
【0042】
これら種別間の専用制御プログラムモジュール及び専用制御パラメータは、各モータ種別の出力単位の違い(例えば回転数と直線変位)などに対応して異なる内容に設定されるべきものであったり、またはいずれか一方の種別だけが独自に必要となるものであったりする。電力変換制御部31が回転形用とリニア形用のいずれの制御プログラムモジュール及び制御パラメータを適用するかの使い分けは、後述のモータ種別判別部32によるモータ種別の判別結果により切り替えられる。
【0043】
モータ種別判別部32は、モータ11に備えられた位置検出器14から当該モータ11の種別に関する情報信号を受信し、その内容に基づいてその時点で接続しているモータ11の種別を判別する。本実施形態の例では、位置検出器14が電源投入時のタイミングで自動的にモータ種別に関する情報信号を出力するよう構成されており、モータ種別判別部32はその情報信号に基づいてモータ種別を判別する。他にも、モータ種別判別部32が別途の信号線を介して位置検出器14に要求信号を送信し、その返信としてモータ種別に関する情報を受信するよう構成してもよい。
【0044】
メモリ制御部33は、その内部に特に図示しない不揮発性メモリを備えており、上記モータ種別判別部32がモータ種別を判別するたびにその判別結果を全て時系列順に蓄積した履歴情報を不揮発性メモリに記録する。
【0045】
比較判定部34は、現在接続されているモータ種別の判別結果と、上記メモリ制御部33の不揮発性メモリに記録されている履歴のうちの直前のモータ種別とを比較し、一致するか否かを判定する。
【0046】
報知制御部35は、上記比較判定部34から一致しないとする判定結果が出力された場合に、現在接続しているモータ11の種別に対応した専用制御パラメータの設定確認に関する報知制御を実行する。本実施形態の例では、この報知制御は、まずアラーム音を発音させるなどにより、ユーザに対して専用制御パラメータの設定確認の必要性を報知する。そして、その時点で設定されている回転形とリニア形それぞれの専用制御パラメータを取得し、外部から接続された上記外部端末13の表示部に各種別用の専用制御パラメータを対比表示させる(後述する
図3のモータ種別変更報知画面を参照)。なお、この報知内容の表示は、当該報知制御部35が内部に備える表示制御部35aにより行う。また報知制御部35は、実行中の報知制御が解除されない限り、電力変換制御部31に対してその電力変換制御を実行させないよう制御する。
【0047】
報知制御解除部36は、外部端末13から報知解除信号を受信した際に、報知制御部35に対してその報知制御を解除させる。
【0048】
パラメータ設定部37は、外部端末13の操作部を介したユーザからの入力操作に基づいて、現在接続されているモータ種別の専用制御パラメータの内容を設定する。なお、当該パラメータ設定部37が回転形とリニア形のいずれの専用制御パラメータを設定するかは、上記モータ種別判別部32によるモータ種別の判別結果により切り替えられる。
【0049】
なお、モータ制御回路部23における上記の各処理は、これらの処理の分担の例に限定されるものではなく、例えば、1つの処理部で処理されたり、更に細分化された多数の処理部により処理されてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、モータ制御回路部23における上記の各処理が上記CPU901で実行するプログラムにより実装される場合について説明するが、各処理は、その一部又は全部がASICやFPGA、その他の電気回路等の実際の装置により実装されてもよい。
【0051】
<モータ種別変更報知画面の具体的な表示例>
図3は、報知制御部35の表示制御部35aにより外部端末13の表示部に表示されたモータ種別変更報知画面の一例を示している。図示する例では、汎用パーソナルコンピュータで構成する外部端末13のディスプレイを表示部として、いわゆるGUI(Graphical User Interface)表示により表示されたモータ種別変更報知画面を示している。
【0052】
この
図3に示す例では、前回判別されたモータ種別が回転形であったことに対し、今回判別されたモータ種別がリニア形に変更された場合を示している。この図示する状態のモータ種別変更報知画面において、多数存在するうちの9つの専用制御パラメータが列記されており、各専用制御パラメータに対して変更前の回転形と、変更後のリニア形でそれぞれ対応する設定値を対比するよう表示されている。また、一方のモータ種別だけに独自に設定される専用制御パラメータ(図示する例のエンコーダ分解能、リニアスケールピッチ)については、他方のモータ種別に対応する設定内容はブランクで表示される。なお特に図示しないが、今回判別されたモータ種別がそれまでに接続されていなかったモータ種別であったために対応する専用制御パラメータの設定値がいずれも未設定状態であった場合には、それら全ての専用制御パラメータの設定値がブランクで表示される。また、各設定値の表示は、各制御パラメータの設定値の識別情報であるパラメータナンバー(図中の「Pn○○○」で表記される値)や、設定値の諸元単位(図中の「min
−1」等)も併せて表示される。
【0053】
そして、変更後のモータ種別に対応する専用制御パラメータの設定値については、その表示箇所にカーソルCを合わせて所定の入力操作をすることで、ユーザが新たにその値の内容を設定入力することができる(図中のリニアスケールピッチの設定値表示を参照)。外部端末13は、この入力された設定値を上記パラメータ設定部37に送信し、モータ制御回路部23内の適宜の記憶領域に記憶される。この専用制御パラメータの設定入力は、未設定状態の専用制御パラメータに対する初期設定は当然であるが、すでに設定されている専用制御パラメータの設定値に対する修正も可能である。なお、同じ種別のモータ11でも容量などに差異のある型式の区別があるが、同一のモータ制御装置12が駆動制御できる型式の種類(範囲)には限りがあるため、一般的には同じモータ種別のモータ11であれば異なる型式でも同じ専用制御パラメータの設定値を共用できる。つまり、同じモータ種別の専用制御パラメータを一度設定していれば、型式の違いにより設定しなおす必要はない。
【0054】
そして、全ての専用制御パラメータの値が設定されている状態でユーザが報知の解除操作(図示する例では「種別変更報知解除」ボタン41の押下操作)を行うことにより、外部端末13がモータ制御回路部23の報知制御解除部36に解除信号を送信する。これにより初めて報知制御が解除されて、電力変換制御部31の電力変換制御が実行可能となり、言い換えるとモータ制御装置12によるモータ11の駆動制御が可能となる。
【0055】
<報知制御を含めた立ち上げ処理の制御手順>
次に、
図4を参照しつつ、モータ制御回路部23が実行する報知制御を含めた立ち上げ処理の制御手順の一例について説明する。なお、この立ち上げ処理は、当該モータ制御装置12の電源投入時に実行を開始する。
【0056】
図4に示すように、まず、ステップS5で、モータ制御回路部23は、モータ11が備える位置検出器14から受信した信号に基づいて当該モータ11の種別を判別する。なお、このステップS5の手順が、上記のモータ種別判別部32として機能する。
【0057】
そして、ステップS10で、モータ制御回路部23は、上記ステップS5で判別したモータ種別を過去の時系列順に従った履歴情報として蓄積するよう不揮発性メモリに記録する。なお、このステップS10の手順が、上記のメモリ制御部33として機能する。
【0058】
そして、ステップS15で、モータ制御回路部23は、上記ステップS5で今回判別したモータ種別と、不揮発性メモリに記録されている直前(前回)のモータ種別とを比較し、一致するか否かを判定する。今回の判別結果と前回の判別結果が一致している場合、判定が満たされ、このフローを終了する。
【0059】
一方、今回の判別結果と前回の判別結果が一致していない場合、判定は満たされず、モータ種別が変更されたとみなしてステップS20へ移る。なお、このステップS15の手順が、上記の比較判定部34として機能する。
【0060】
そして、ステップS20で、モータ制御回路部23は、各モータ種別に対応する全ての専用制御パラメータの設定値を取得する。
【0061】
そして、ステップS25で、モータ制御回路部23は、アラーム音を発音させるなどによりユーザに対して専用制御パラメータの設定確認の必要性を報知する。またこの際には、電力変換制御部31に対してその電力変換制御を実行させないよう制御する。
【0062】
そして、ステップS30で、モータ制御回路部23は、外部から接続された外部端末13の表示部に、上記ステップS20で取得した専用制御パラメータを含めたモータ種別変更報知画面(上記
図3参照)を表示する。なお、このステップS30の手順が、上記の表示制御部35aとして機能する。
【0063】
そして、ステップS35で、モータ制御回路部23は、外部端末13の操作部を介してユーザから今回判別されたモータ種別に対応する専用制御パラメータの設定入力の操作が行われたか否かを判定する。設定入力の操作が行われた場合、判定が満たされ、ステップS40へ移る。
【0064】
そして、ステップS40で、モータ制御回路部23は、上記ステップS35で設定入力が判定された今回のモータ種別の専用制御パラメータの設定値を変更(もしくは初期入力)するよう設定する。そして、上記ステップS35に戻り、同様の手順を繰り返す。なお、このステップS40の手順が、上記のパラメータ設定部37として機能する。
【0065】
一方、上記ステップS35の判定において、設定入力の操作が行われていない場合、判定は満たされず、ステップS45へ移る。
【0066】
そして、ステップS45で、モータ制御回路部23は、外部端末13から解除信号を受信したか否か、言い換えると外部端末13の操作部を介してユーザから報知解除の操作が行われたか否かを判定する。外部端末13から解除信号を受信していない場合、判定は満たされず、上記ステップS35に戻り、同様の手順を繰り返す。
【0067】
一方、外部端末13から解除信号を受信した場合、判定が満たされ、ステップS50へ移る。なお、このステップS45の手順が、上記の報知制御解除部36として機能する。
【0068】
そして、ステップS50で、モータ制御回路部23は、外部端末13におけるモータ種別変更報知画面の表示を消去するとともに、電力変換制御部31に対してその電力変換制御の実行が可能となるよう制御して報知制御を解除する。そしてこのフローを終了する。
【0069】
なお、上記のステップS20、S25、S30、S35、S50の手順が、上記の報知制御部35として機能する。
【0070】
<モータ制御回路部の構成例>
次に、
図5を参照しつつ、上記で説明したCPU901が実行するプログラムにより実装された電力変換制御部31や報知制御部35等による処理を実現するモータ制御回路部23の構成例について説明する。
【0071】
図5に示すように、モータ制御回路部23は、例えば、CPU901(演算部)と、ROM903、RAM905と、ASIC又はFPGA等の特定の用途向けに構築された専用集積回路907と、入力装置913と、出力装置915と、ストレージ装置917と、ドライブ919と、接続ポート921と、通信装置923とを有する。これらの構成は、バス909や入出力インターフェース911を介し相互に信号を伝達可能に接続されている。
【0072】
プログラムは、例えば、ROM903やRAM905、ストレージ装置917等の記録装置に記録しておくことができる。
【0073】
また、プログラムは、例えば、フレキシブルディスクなどの磁気ディスク、各種のCD・MOディスク・DVD等の光ディスク、半導体メモリ等のリムーバブル記憶媒体925に、一時的又は永続的に記録しておくこともできる。このようなリムーバブル記憶媒体925は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することもできる。この場合、これらのリムーバブル記憶媒体925に記録されたプログラムは、ドライブ919により読み出されて、入出力インターフェイス919やバス909等を介し上記記録装置に記録されてもよい。
【0074】
また、プログラムは、例えば、ダウンロードサイト・他のコンピュータ・他の記録装置等(図示せず)に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、LANやインターネット等のネットワークNWを介し転送され、通信装置923がこのプログラムを受信する。そして、通信装置923が受信したプログラムは、入出力インターフェイス919やバス909等を介し上記記録装置に記録されてもよい。
【0075】
また、プログラムは、例えば、適宜の外部接続機器927に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、適宜の接続ポート921を介し転送され、入出力インターフェイス919やバス909等を介し上記記録装置に記録されてもよい。
【0076】
そして、CPU901が、上記記録装置に記録されたプログラムに従い各種の処理を実行することにより、上記の電力変換制御部31や報知制御部35等による処理が実現される。この際、CPU901は、例えば、上記記録装置からプログラムを、直接読み出して実行してもよく、RAM905に一旦ロードした上で実行してもよい。更にCPU901は、例えば、プログラムを通信装置923やドライブ919、接続ポート921を介し受信する場合、受信したプログラムを記録装置に記録せずに直接実行してもよい。
【0077】
また、CPU901は、必要に応じて、例えばマウス・キーボード・マイク(図示せず)等の入力装置913から入力する信号や情報に基づいて各種の処理を行ってもよい。
【0078】
そして、CPU902は、上記の処理を実行した結果を、例えば表示装置や音声出力装置等の出力装置915から出力してもよく、さらにCPU902は、必要に応じてこの処理結果を通信装置923や接続ポート921を介し送信してもよく、上記記録装置やリムーバブル記憶媒体925に記録させてもよい。
【0079】
<本実施形態による効果の一例>
以上説明したように、本実施形態のモータ制御システム1が備えるモータ制御装置12は、モータ種別判別部32が、モータ11の位置検出器14から受信した信号に基づいて当該モータ11の種別を判別する。そして、報知制御部35が、上記モータ種別判別部32で判別したモータ11の種別に応じて所定の制御パラメータの設定確認に関する報知を報知部で行う。これにより本実施形態のモータ制御装置12は、接続しているモータ11の種別に応じた制御パラメータの設定確認をユーザに促すことができ、誤った制御を回避できる。
【0080】
また、本実施形態では特に、モータ種別判別部32は、モータ11の種別を回転形又は直動形と判別するように構成される。一般的に、回転形と直動形は、それぞれの制御で必要とする制御パラメータや制御プログラムモジュールの多くが共通しているため、モータ種別判別部32を上記のように構成することで同一のモータ制御装置12における各種別の制御の兼用化を容易に実現できる。
【0081】
また、本実施形態では特に、モータ種別判別部32により判別されたモータ11の種別を不揮発性メモリに記録するように構成されたメモリ制御部33と、モータ種別判別部32により判別された現在のモータ11の種別と、不揮発性メモリに記録された直前のモータ11の種別とを比較し、一致するか否かを判定するように構成された比較判定部34と、をさらに有し、報知制御部35は、比較判定部34によりモータ11の種別が一致しないと判定された場合に報知するように構成される。これにより、特に現在のモータ11と異なる種別の専用制御パラメータの適用や、内容が未設定状態である専用制御パラメータの適用を回避できる。
【0082】
また、本実施形態では特に、外部端末13からの解除信号に基づいて報知制御部35による報知制御を解除するように構成された報知制御解除部36をさらに有する。このように当該モータ制御装置12と別体で構成する外部端末13を外部から接続して解除信号を入力しない限り報知制御を解除できないようにすることにより、制御パラメータの設定確認の必要性をユーザに特に意識させることができ、設定確認作業を確実に行わせることができる。
【0083】
また、本実施形態では特に、報知制御部35は、所定の制御パラメータのうち各モータ11の種別に対応して内容が異なる専用制御パラメータを外部端末13の表示部に表示するように構成された表示制御部35aを有する。
【0084】
上述したように、モータ11の制御には数多くの制御パラメータや制御プログラムモジュールが必要とされており、モータ11の種別を頻繁に変更するたびに全ての制御パラメータの設定を確認することは非常に煩雑な作業となる。また、全ての制御パラメータのうちのいずれが現在のモータ11の種別に対応した専用制御パラメータであるかを正確に見分けることは非常に困難である。
【0085】
これに対し本実施形態では、各種別で共通して適用する共通制御パラメータを除き、各モータ11の種別に対応して異なる内容で設定すべき(もしくは所定の種別だけが独自に必要となる)専用制御パラメータだけを一覧できるよう表示して報知する。これにより、種別変更に伴う制御パラメータの設定確認の作業量を必要最小限に抑えることができ、ユーザの作業性及び利便性を向上できる。
【0086】
また、本実施形態では特に、表示制御部35aは、現在のモータ11の種別と直前のモータ11の種別にそれぞれ対応する専用制御パラメータの内容を外部端末13の表示部に対比表示するように構成される。これにより変更前後の各モータ種別の専用制御パラメータの対応関係を容易に理解でき、またいずれの専用制御パラメータが未設定状態であるか、もしくは独自のものであるかが明確となるため、パラメータの設定確認の作業が容易となる。
【0087】
また、本実施形態では特に、現在のモータ11の種別の専用制御パラメータの内容を設定(過去の設定内容の修正も含む)するように構成されたパラメータ設定部37を有する。これにより、現在のモータ11の種別に対応する専用制御パラメータに対してその設定確認と同時に必要に応じた設定内容の入力及び修正も容易に行うことができる。
【0088】
<変形例等>
なお、実施形態は、上記内容に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0089】
例えば、上記実施形態では、それまでに接続されていなかったモータ種別に対応する専用制御パラメータの設定値は未設定状態としていたが、これに限られずあらかじめ工場出荷時に全ての専用制御パラメータをデファクト値で設定していてもよい。この場合には、上記
図3のモータ種別変更報知画面でそれまでユーザ自身が設定していない専用制御パラメータの設定値についても、デファクト値が表示される。
【0090】
また、上記実施形態では、メモリ制御部33がそれまでに判別されたモータ種別の判別結果を全て時系列順に蓄積する履歴情報を不揮発性メモリに記録していたが、これに限られず、例えばメモリ制御部33が一回分の判別結果だけを不揮発性メモリに記録するようにしてもよい。例えば、上記
図4のフローにおけるステップS10の手順で、不揮発性メモリに前回の判別結果がクリアされている(記録が残っていない)場合だけ今回の判別結果をそのまま前回の判別結果として不揮発性メモリに記録する。この場合には、前回と今回とで判別結果が一致するため、モータ種別の変更がないものと判定されて報知を行わない。そして今回の判別結果と、不揮発性メモリに記録されている前回の判別結果とが一致しない場合には、モータの種別が変更されて報知を行うが、その後にユーザから報知解除操作が入力されてステップS50の手順で報知解除を行う際には、報知解除部36が不揮発性メモリに記録されている前回の判別結果の記録をクリアする(もしくは今回の判定結果を前回の判定結果として置き換えるよう不揮発性メモリに記録する)。このようにすると、報知制御の最中(報知解除前)に電源を再投入した場合でも、報知解除を行わない限り引き続き報知制御を継続させることができる。すなわち、比較判定部34は、前回適用が確定したモータ種別と現在のモータ種別とが一致しない場合に報知制御を行うよう判定すればよく、上述したアルゴリズム以外での判定を行ってもよい。
【0091】
また、
図1、
図2、及び
図5中に示す矢印は、信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
【0092】
また、
図4に示すフローチャートは、実施形態の内容を図示する手順に限定するものではなく、趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0093】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態等による手法を適宜組み合わせて利用してもよい。
【0094】
その他、一々例示はしないが、上記実施形態等は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。