特許第6369571号(P6369571)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6369571
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】鋳片の連続鋳造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/124 20060101AFI20180730BHJP
   C21D 1/00 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   B22D11/124 L
   B22D11/124 N
   B22D11/124 K
   C21D1/00 118B
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-569331(P2016-569331)
(86)(22)【出願日】2016年1月7日
(86)【国際出願番号】JP2016050304
(87)【国際公開番号】WO2016114208
(87)【国際公開日】20160721
【審査請求日】2017年7月4日
(31)【優先権主張番号】特願2015-6209(P2015-6209)
(32)【優先日】2015年1月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】村上 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】四橋 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】高屋 慎
【審査官】 坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−307149(JP,A)
【文献】 特開2007−222920(JP,A)
【文献】 特開2014−208378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00−11/22
C21D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲型または垂直曲げ型の連続鋳造機を用いて鋳片を連続鋳造する方法であって、
鋳型から引き抜いた鋳片に対して前記鋳型の直下から冷却を行う二次冷却帯における工程に、第1水冷工程、該第1水冷工程の後に行われる第1復熱工程、該第1復熱工程の後に行われる第2水冷工程、および、該第2水冷工程の後に行われる第2復熱工程が含まれ、
前記第1水冷工程は、表面温度が1000℃以上である鋳片の広幅面に冷却水を供給することにより、前記鋳片の頂点および稜から20mm以内の領域である角部のみ、その表面温度がAr点未満になり、且つ、前記角部以外の前記鋳片の部位の表面温度がAr点以上に留まるように、前記鋳片を冷却する工程であり、
前記第1復熱工程は、前記角部を含む前記鋳片の全体の表面温度がAr点以上になるように、前記鋳片を復熱させる工程であり、
前記第2水冷工程は、表面温度がAr点〜900℃である鋳片の広幅面に冷却水を供給することにより、前記角部を含む前記鋳片の全体の表面温度がAr点未満になるように、前記鋳片を冷却する工程であり、
前記第2復熱工程は、前記角部の表面温度をAr点未満の温度に留めつつ、前記角部以外の前記鋳片の部位の表面温度がAr点以上になるように、前記鋳片を復熱させる工程である、鋳片の連続鋳造方法。
【請求項2】
前記第1水冷工程で前記鋳片へと供給される冷却水の水量密度が170〜290L/分/mであり、且つ、前記第1水冷工程で前記鋳片へ前記冷却水を供給する時間が0.95〜4.0分である、請求項1に記載の鋳片の連続鋳造方法。
【請求項3】
前記第2水冷工程で前記鋳片へと供給される冷却水の水量密度が170〜290L/分/mであり、且つ、前記第2水冷工程で前記鋳片へ前記冷却水を供給する時間が0.95〜4.0分である、請求項1又は2に記載の鋳片の連続鋳造方法。
【請求項4】
前記第1復熱工程で前記鋳片を復熱させる時間が2分以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋳片の連続鋳造方法。
【請求項5】
前記第2復熱工程で前記鋳片を復熱させる時間が2分以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋳片の連続鋳造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳片の連続鋳造方法に関し、特に、湾曲型または垂直曲げ型の連続鋳造機を用いて鋳片を連続鋳造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造では、取鍋からタンディッシュ内に溶鋼が注入され、さらにタンディッシュから鋳型内に溶鋼が注入される。鋳型内で、溶鋼の外周部に凝固シェルを形成させ、この状態の鋳片(凝固シェルおよび内部の溶鋼)が、鋳型の下方に引き抜かれる。その後、スプレー帯で二次冷却することにより、鋳片を内部まで凝固させる。このようにして得られた鋳片は、適切な大きさに切断され、場合により、分塊再加熱により適切な温度にされた後、分塊圧延される。
【0003】
鋳片の冷却条件によっては、分塊再加熱時に鋳片表面に割れが生じる。このため、そのような割れを防止すべく、鋳片の冷却方法が工夫されている。たとえば、鋳片表層の組織を微細化することを目的として、切断後の鋳片は、連続鋳造機外の冷却装置であるブルームクーラーを用いて、冷却(三次冷却)される。
【0004】
特許文献1には、連続鋳造された鋳片を、所定の長さに切断した後、ブルームクーラーを用いて、Ar点直上の温度域から冷却する方法が記載されている。特許文献1では、水平に配置された鋳片上面の水量密度を5×10−4〜4×10−3/sm(=30〜240L/分/m)として冷却し、この鋳片の側面および下面の水量密度を、この鋳片上面の水量密度と異ならせることで、冷却時に発生する割れを防止できるとされている。
【0005】
また、特許文献2には、ブルームクーラーを用いて、Ar点直上の温度の鋳片を冷却する際に、鋳片の移動速度を3〜10m/分にすることが記載されている。特許文献2では、これにより、鋳片下面を均一に冷却できるとされている。
【0006】
特許文献1および2の方法は、分塊再加熱を行う時点で、鋳片の表層に、γ粒が微細化された組織が存在していることを意図したものである。
【0007】
一方、特許文献3では、二次冷却時に、鋳片を急冷することにより、鋳片表層の組織を高温延性が高い組織に改質することにより、表面に割れのない鋳片が得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−1719号公報
【特許文献2】特開2005−40837号公報
【特許文献3】特開2002−307149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1および2のいずれの方法を採用しても、鋳片の復熱時に割れが生じることがあり、また、分塊圧延時に割れが生じる。これは、鋳片が急冷されたときに鋳片の一部がマルテンサイト化し復熱時に膨張すること、および、分塊再加熱時に鋳片の表層と内部との間に熱応力が生じることに起因するものと考えられる。
【0010】
さらに、近年においては、三次冷却の冷却能を極端に落とす方法などが提案されているが、いずれも十分な効果が得られていない。
【0011】
また、鋳片の角部は、冷却時に、鋳片の幅方向(長辺方向)および厚さ方向(短辺方向)の2方向に収縮する。そのため、特許文献3の方法では、鋳片の長辺面の組織を改質させるだけの急冷を実施すると、角部での割れが増加する傾向にあった。
【0012】
本発明は、二次冷却から分塊圧延に至る工程で表面割れが生じ難い鋳片を製造できる連続鋳造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、二次冷却時に鋳片の組織を改質させるための冷却を、鋳片の角部(本発明において、鋳片の頂点および稜から20mm以内の領域を言う。以下において同じ。)のみを組織改質するための冷却(第1水冷工程)と、鋳片の角部以外の部位を組織改質するための冷却(第2水冷工程)と、に分けた。鋳片の角部のみ、その表面温度がAr点未満になるように鋳片を冷却する第1水冷工程の終了後に、鋳片の角部を含む鋳片の長辺面全面をAr点以上の温度に復熱させる復熱工程を行い、復熱工程を行った後に、鋳片の角部を含む鋳片の長辺面全面をAr点未満の温度に冷却する第2水冷工程を行った。そして、第2水冷工程の終了後に、鋳片の角部をAr点未満の温度に留めつつ、鋳片の角部以外の部位をAr点以上の温度に復熱させた。その結果、鋳片の角部を含む全表面が組織改質された鋳片が得られ、二次冷却から分塊圧延に至る工程で表面割れを防止することが可能であった。本発明は、このような知見に基づいて完成させた。以下、本発明について説明する。以下の説明において、「Ar点〜900℃」は、Ar点以上900℃未満を意味する。このほかの、数値範囲を意味する「X〜Y」は、特に断らない限り、X以上Y以下を意味する。
【0014】
本発明は、湾曲型または垂直曲げ型の連続鋳造機を用いて鋳片を連続鋳造する方法であって、鋳型から引き抜いた鋳片に対して上記鋳型の直下から冷却を行う二次冷却帯における工程に、第1水冷工程、該第1水冷工程の後に行われる第1復熱工程、該第1復熱工程の後に行われる第2水冷工程、および、該第2水冷工程の後に行われる第2復熱工程が含まれ、
上記第1水冷工程は、表面温度が1000℃以上である鋳片の広幅面に冷却水を供給することにより、鋳片の頂点および稜から20mm以内の領域である角部のみ、その表面温度がAr点未満になり、且つ、上記角部以外の鋳片の部位の表面温度がAr点以上に留まるように、鋳片を冷却する工程であり、
上記第1復熱工程は、上記角部を含む鋳片の全体の表面温度がAr点以上になるように、鋳片を復熱させる工程であり、
上記第2水冷工程は、表面温度がAr点〜900℃である鋳片の広幅面に冷却水を供給することにより、上記角部を含む鋳片の全体の表面温度がAr点未満になるように、鋳片を冷却する工程であり、
上記第2復熱工程は、上記角部の表面温度をAr点未満の温度に留めつつ、上記角部以外の鋳片の部位の表面温度がAr点以上になるように、鋳片を復熱させる工程である、
鋳片の連続鋳造方法を要旨とする。
【0015】
ここで、本発明における「鋳片」は、厚さが200mm以上である大断面の鋳片であり、本発明における鋳片には、いわゆる「スラブ(スラブ鋳片)」および「ブルーム(ブルーム鋳片)」が含まれる。また、第1水冷工程による冷却が開始される際の鋳片の表面温度である「1000℃以上」や、第2水冷工程による冷却が開始される際の鋳片の表面温度である「Ar点〜900℃」は、鋳片の幅方向中央の、表面からの深さが10mmの部位における温度である。また、冷却や復熱によってAr点未満にするかまたはAr点以上にするかが制御される、鋳片の角部や角部以外の部位の「表面温度」も、鋳片の表面からの深さが10mmの部位における温度である。これらの表面温度は、例えば、凝固伝熱解析による計算によって求めることができる。また、「広幅面」とは、鋳片の長手方向を法線方向とする平面で鋳片を切断して得られる断面を画定する長辺(鋳片の幅方向の辺)および短辺(鋳片の厚さ方向の辺)のうち、短辺を含まない面を言う。換言すれば、広幅面とは、鋳片の上面および下面を意味する。また、本発明における「第1水冷工程」および「第2水冷工程」は、鋳片の上面側および下面側から、鋳片がスラブ鋳片の場合には鋳片の広幅面全面に向けて冷却水を供給することにより、鋳片がブルーム鋳片の場合には鋳片の広幅面における角部以外の部位に向けて冷却水を供給することにより、鋳片の角部を含む鋳片の広幅面全面を水冷する工程である。
【0016】
第1水冷工程でAr点未満の温度へと冷却された角部を、鋳片の内部に存在する未凝固の溶鋼の顕熱や潜熱を利用する第1復熱工程でAr点以上の温度へと復熱させることにより、鋳片の角部のみの表層(鋳片の最表面から5〜10mmの厚さの領域を言う。以下において同じ。)に、γ粒界が不明瞭な組織を形成することができる。この組織は、フェライトおよびパーライトの混合組織である。より具体的には、高温側からAr点よりも低温側に鋳片が冷却される際に、フェライトがγ粒界に粒状に生成した状態の凝固組織であり、この組織は高温延性を有する。ここで、γ粒界が不明瞭な組織を形成するためには、一旦Ar点未満の温度にした後、その温度をAr点以上へと戻す必要がある。本発明において、第1水冷工程および第1復熱工程における、鋳片の角部以外の部位の表面温度は、Ar点以上の温度である。そのため、第1水冷工程および第1復熱工程を経ても、鋳片の角部以外の部位に、γ粒界が不明瞭な組織は形成されない。
次に、第2水冷工程でAr点未満の温度へと冷却された角部以外の部位を、鋳片の内部に存在する未凝固の溶鋼の顕熱や潜熱を利用する第2復熱工程でAr点以上の温度へと復熱させることにより、鋳片の角部以外の部位の表層に、鋳片の角部に形成した組織と同様の、γ粒界が不明瞭な組織を形成することができる。一方、第1水冷工程および第1復熱工程によりγ粒界が不明瞭な組織が形成された鋳片の角部は、第2水冷工程で冷却された後、第2復熱工程で復熱されることにより温度が上昇するが、その温度はAr点未満に留まる。一旦形成された、γ粒界が不明瞭な組織は、Ar点以上の温度に到達せずさらに二次元的に冷却を受けるため、逆変態組織(γ→α(フェライト)+P(パーライト)に変態させた、組織の再結晶による微細化組織)が形成されない。そのため、第2水冷工程および第2復熱工程を経ても、その組織は維持される。したがって、上記4つの工程を経ることにより、鋳片の角部および角部以外の部位の表層が組織改質された鋳片を製造することができる。鋳片のすべての表層を組織改質することにより、二次冷却から分塊圧延に至る工程で表面割れを防止することが可能になる。
【0017】
また、上記本発明において、第1水冷工程で鋳片へと供給される冷却水の水量密度が170〜290L/分/mであり、且つ、第1水冷工程で鋳片へ冷却水を供給する時間が0.95〜4.0分であることが好ましい。
また、上記本発明において、第2水冷工程で鋳片へと供給される冷却水の水量密度が170〜290L/分/mであり、且つ、第2水冷工程で鋳片へ冷却水を供給する時間が0.95〜4.0分であることが好ましい。
【0018】
本発明において、「冷却水の水量密度」は、鋳片の上面および下面のそれぞれへと供給される冷却水の水量密度を言い、鋳片の単位表面積あたり単位時間あたりに供給する水の量である。また、「冷却水を供給する時間」は、鋳片の上面および下面のそれぞれへ冷却水を供給する時間(冷却時間)を言う。
第1水冷工程や第2水冷工程における水量密度および冷却水を供給する時間を、上記の範囲内にすることにより、従来よりも少量の冷却水による冷却によって、角部および角部以外の部位の表層にγ粒界が不明瞭な組織を形成しやすくなる。これにより、二次冷却帯で用いる冷却水の量を従来よりも少なくしても、二次冷却から分塊圧延に至る工程で表面割れを防止することが可能になる。ここで、鋳片の長手方向に関して、第2水冷工程による水冷の対象とする部分は、第1水冷工程による水冷の対象とする部分に比して、鋳片移動方向の下流側にあるため、温度が低い。このため、第2水冷工程では、第1水冷工程に比して、用いる冷却水の量を少なくしても、鋳片の角部以外の部位をAr点未満の温度へと冷却することが可能である。
【0019】
また、上記本発明において、第1復熱工程で鋳片を復熱させる時間が2分以上であることが好ましい。
また、上記本発明において、第2復熱工程で鋳片を復熱させる時間が2分以上であることが好ましい。
【0020】
第1復熱工程では、例えば、鋳片を復熱させる時間を2分以上とすることにより、実質的に鋳片表面の幅方向の全域に亘って、Ar点以上の温度まで鋳片の表層を復熱させやすくなる。また、第2復熱工程では、例えば、鋳片を復熱させる時間を2分以上とすることにより、鋳片の角部以外の部位の表層を、Ar点以上の温度まで復熱させやすくなる。Ar点未満の温度まで冷却した後に、Ar点以上の温度へと復熱させることにより、γ粒界が不明瞭な組織を形成することができるので、このような形態にすることにより、二次冷却から分塊圧延に至る工程で表面割れを防止しやすくなる。
【0021】
図1は、水冷した鋳片について、経過時間と鋳片の表面および内部の温度との関係の一例を示す図である。表面温度は、鋳片の表面に設置した熱電対により測定した温度であり、内部温度は、鋳片の表面から深さ22mmの部位に設置した熱電対により測定した温度である。この例では、Ar点は、1123Kであった。水冷を停止した時(一点鎖線T0で示す。)から、2分経過時(一点鎖線T2で示す。)と3分経過時(一点鎖線T3で示す。)との間に、鋳片の表面温度は、Ar点以上に復熱したことがわかる。
一方、図1に示したように、復熱時間を3分より長くしても、Ar点以上に復熱するという効果は飽和する。このため、復熱時間は、たとえば、2〜3分とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、鋳片の角部での割れを抑制しつつ、鋳片表面のほぼ全域にわたって高温延性が高い組織が形成された、鋳片を製造することができる。これにより、二次冷却から分塊圧延に至る工程(たとえば、二次冷却工程、復熱工程、分塊再加熱工程、および分塊圧延工程)で、鋳片の表面に割れが生じることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】水冷した鋳片について、経過時間と鋳片の表面および内部の温度との関係の一例を示す図である。
図2】本発明の鋳片の連続鋳造方法を説明する図である。
図3】鋳片断面で、組織を観察した位置を含む領域を示す図である。
図4】比較例1の連続鋳造方法を実施した鋳片の角部の断面を説明する図である。
図5】比較例6の連続鋳造方法を実施した鋳片の中央部の断面を説明する図である。
図6】比較例6の連続鋳造方法を実施した鋳片の角部の断面を説明する図である。
図7】実施例1の連続鋳造方法を実施した鋳片の角部の断面を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に示す形態は本発明の例であり、本発明は以下に示す形態に限定されない。本発明では、鋳型の下方に引き抜かれた鋳片を冷却する二次冷却帯における、冷却形態および復熱形態を具体的に特定している。
【0025】
図2は、本発明の鋳片の連続鋳造方法を説明する図である。図2に示したように、本発明は、第1水冷工程(S1)と、第1復熱工程(S2)と、第2水冷工程(S3)と、第2復熱工程(S4)と、を有している。S1乃至S4は、二次冷却帯に含まれる工程である。
【0026】
<第1水冷工程(S1)>
第1水冷工程(以下において、「S1」と称することがある。)は、表面温度が1000℃以上である鋳片の広幅面に冷却水を供給することにより、鋳片の角部のみ、その表面温度がAr点未満になり、且つ、角部以外の鋳片の部位の表面温度がAr点以上に留まるように、鋳片を冷却する工程である。
【0027】
上述のように、本発明では、鋳片の角部の組織改質と、鋳片の角部以外の部位の組織改質とを別々に行い、鋳片の角部の組織改質を行った後に、鋳片の角部以外の部位の組織改質を行う。S1は、鋳片の角部のみの組織改質を行うために必要な冷却を行う工程である。ここで、本発明における組織改質を行うためには、組織改質を行いたい部位を、Ar点未満の温度にまで、一旦冷却する必要がある。S1は、鋳片の角部の組織改質を行うために必要な冷却を行う工程なので、S1で、Ar点未満の温度にまで冷却する部位は、鋳片の角部のみとし、鋳片の角部以外の部位の表面温度は、Ar点以上の温度に留める。すなわち、S1では、鋳片の角部以外の部位の表面温度がAr点以上に留まるように、且つ、鋳片の角部の表面温度がAr点未満になるように、冷却水を鋳片へと供給することにより、鋳片を冷却する。
【0028】
鋳片の角部以外の部位は表面が1つのみであるのに対し、鋳片の角部は表面が2以上である。そのため、鋳片の角部は、鋳片の角部以外の部位よりも冷却されやすく、復熱し難い。鋳片の角部は鋳片の角部以外の部位よりも冷却されやすいので、従来よりも少量の冷却水を用いて鋳片を冷却することにより、鋳片の角部のみ、その表面温度がAr点未満になり、且つ、角部以外の鋳片の部位の表面温度がAr点以上に留まるように、鋳片を冷却することができる。
【0029】
本発明において、S1は、鋳片の角部のみ、その表面温度がAr点未満になり、且つ、角部以外の鋳片の部位の表面温度がAr点以上に留まるように、鋳片を冷却することができれば、その形態は特に限定されない。このような冷却は、例えば、水量密度が170〜290L/分/mである冷却水を、鋳片へ向けて0.95〜4.0分に亘って供給する形態にすることにより、容易に行うことができる。したがって、S1で鋳片へと供給される冷却水の水量密度が170〜290L/分/mであり、且つ、S1で鋳片へ冷却水を供給する時間が0.95〜4.0分であることが好ましい。
【0030】
<第1復熱工程(S2)>
第1復熱工程(以下において、「S2」と称することがある。)は、S1に続いて行われる工程であり、鋳片の角部のみの組織改質を行うために必要な復熱を行う工程である。S2は、具体的には、角部を含む鋳片の全体の表面温度がAr点以上になるように、鋳片を復熱させる工程である。上述のように、S1で、鋳片の角部はその表面温度がAr点未満になるように冷却されている。そのため、鋳片の角部を含む全体の表面温度がAr点以上になるように、S2で鋳片を復熱させることにより、鋳片の角部の表層にγ粒界が不明瞭な組織を形成することができる。この組織は、高温延性を有する。なお、S2では、鋳片の角部以外の部位の表面温度も、Ar点以上になる。しかしながら、鋳片の角部以外の部位は、S1においても、表面温度がAr点以上であった。そのため、S2を行っても、鋳片の角部以外の部位には、γ粒界が不明瞭な組織が形成されない。
【0031】
本発明において、S2は、角部を含む鋳片の全体の表面温度がAr点以上になるように、鋳片を復熱させることができれば、その形態は特に限定されない。このような復熱は、例えば、鋳片を復熱させる時間を少なくとも2分以上、好ましくは2〜3分にすることにより、容易に行うことができる。なお、図1に示した例では、水冷を停止した時から2分経過時と3分経過時との間に、鋳片の表面温度がAr点以上に復熱したが、本発明者らは、鋳片を2分以上に亘って復熱させることにより、鋳片をAr点以上の温度へと復熱させることが可能であることを確認している。
【0032】
<第2水冷工程(S3)>
第2水冷工程(以下において、「S3」と称することがある。)は、表面温度がAr点〜900℃である鋳片の広幅面に冷却水を供給することにより、角部を含む鋳片の全体の表面温度がAr点未満になるように、鋳片を冷却する工程である。
【0033】
S3は、鋳片の角部以外の部位の組織改質を行うために必要な冷却を行う工程である。上述のように、本発明における組織改質を行うためには、組織改質を行いたい部位を、Ar点未満の温度にまで、一旦冷却する必要があるので、S3では、鋳片の角部以外の部位の表面温度がAr点未満になるように、鋳片を冷却する。ここで、上述のように、鋳片の角部は、鋳片の角部以外の部位よりも冷却されやすいので、鋳片の角部の表面温度は、鋳片の角部以外の部位の表面温度よりも低くなる。そのため、鋳片の角部以外の部位の表面温度がAr点未満になるように鋳片を冷却すると、鋳片の角部の表面温度もAr点未満になる。それゆえ、S3は、角部を含む鋳片の全体の表面温度がAr点未満になるように、鋳片を冷却する工程、と表現することができる。
【0034】
本発明において、S3は、角部を含む鋳片の全体の表面温度がAr点未満になるように、鋳片を冷却することができれば、その形態は特に限定されない。このような冷却は、例えば、水量密度が170〜290L/分/mである冷却水を、鋳片へ向けて0.95〜4.0分に亘って供給する形態にすることにより、容易に行うことができる。したがって、S3で鋳片へと供給される冷却水の水量密度が170〜290L/分/mであり、且つ、S3で鋳片へ冷却水を供給する時間が0.95〜4.0分であることが好ましい。なお、S3で冷却される鋳片の表面温度は、S1で冷却される鋳片の表面温度よりも低い。そのため、冷却水の水量密度および冷却水の供給時間をS1と同様にしても、鋳片の角部以外の部位および鋳片の角部を、S1よりも低い温度に冷却することが可能である。
【0035】
<第2復熱工程(S4)>
第2復熱工程(以下において、「S4」と称することがある。)は、S3に続いて行われる工程であり、鋳片の角部以外の部位の組織改質を行うために必要な復熱を行う工程である。S4は、具体的には、角部の表面温度をAr点未満の温度に留めつつ、角部以外の鋳片の部位の表面温度がAr点以上になるように、鋳片を復熱させる工程である。上述のように、S3で、鋳片の角部以外の部位(および角部)は、その表面温度がAr点未満になるように冷却されている。そのため、鋳片の角部以外の部位の表面温度がAr点以上になるように、S4で鋳片を復熱させることにより、鋳片の角部以外の部位の表層にγ粒界が不明瞭な組織を形成することができる。この組織は、高温延性を有する。S1乃至S4を経た鋳片は、鋳片の角部を含む長辺面全面の表層が、γ粒界が不明瞭な組織に改質されている。
なお、S4において、鋳片の角部の表面温度は、Ar点未満に留める。これは、鋳片の角部の組織改質はS1およびS2で完了しているため、S4で角部の表面温度をAr点以上にする必要がない等の理由による。S3で冷却された後の鋳片の角部の表面温度はS1で冷却された後の鋳片の角部の表面温度よりも低く、且つ、鋳片の角部は復熱し難いため、S4では、容易に、角部の表面温度をAr点未満に留めることができる。
【0036】
本発明において、S4は、角部の表面温度をAr点未満の温度に留めつつ、角部以外の部位の表面温度がAr点以上になるように、鋳片を復熱させることができれば、その形態は特に限定されない。このような復熱は、例えば、鋳片を復熱させる時間を少なくとも2分以上、好ましくは2〜3分にすることにより、容易に行うことができる。
【0037】
S1乃至S4を有する本発明によれば、鋳片の角部と他の部分とを、別個に改質することができ、角部を含む鋳片の表層全域の割れを防止することができる。また、S4終了後には、鋳片の表層のほぼ全域に、高温延性が高い組織が形成されている。これにより、鋳片の表層と内部との間に生じ得る熱応力を低減することができる。その結果、第1および第2水冷工程での冷却時のみならず、第1および第2復熱工程での復熱、二次冷却後の復熱、分塊再加熱、ならびに分解圧延の際にも、鋳片の表面割れが抑制される。すなわち、本発明によれば、二次冷却から分塊圧延に至る工程で、鋳片の表面割れを生じ難くすることができる。
【0038】
なお、本発明を用いることなく、角部の組織を、他の部分とは別に改質するための方法としては、鋳片の端部のみを冷却すること、および当該端部を除く部分のみを冷却することが考えられる。しかし、実際にそのような冷却をすることは、困難である。例えば、鋳片の端部に冷却水が直接には当たらないように、スプレー配置等を工夫することが考えられる。しかしながら、鋳型直下では、鋳片を支持するロールが設けられているために、鋳片に噴射された冷却水は、このロールを伝って角部へ供給される。角部は冷却水が供給される広幅面およびその側面から冷却されるため、過冷されやすく、且つ、復熱させ難い。
【実施例】
【0039】
実施例を参照しつつ、本発明についてさらに説明を続ける。
【0040】
本発明の効果を確認するために、実生産規模の鋳造機を用いて、鋳片の冷却試験を行い、冷却条件(水量密度、および冷却時間)と鋳片表層の組織との関係を調査した。実施例(本発明例)として、第1水冷工程での水冷、第1復熱工程での復熱、第2水冷工程での水冷、および第2復熱工程での復熱を実施した。加えて、従来技術による比較例として、冷却を2つに分けることなく連続した1つの冷却工程での冷却を実施し、その後に復熱工程を実施した。いずれの冷却工程においても、鋳片の長辺面および短辺面に対して、スプレーノズルにより冷却水を噴射して冷却した。
【0041】
具体的には、0.6〜0.8m/分の鋳造速度で、C含有量が0.15〜0.23wt%である、幅435mm×厚さ315mmの鋳片を連続鋳造する際に、冷却試験を行った。実施例において、第1水冷工程および第2水冷工程におけるスプレー水量密度は170〜290L/分/mとし、第1水冷工程および第2水冷工程で鋳片へ冷却水を供給する時間(冷却時間)は0.95〜3.7分とした。なお、一部の比較例では、鋳片のサイズを、幅が650mmで、厚さが300mmとした。実施例の試験条件および割れの存在有無の結果を表1に、比較例の試験条件および割れの存在有無の結果を表2に、それぞれ示す。それぞれの試験において、割れの存在有無は、当該鋳片サンプルを切り出し、スケールを酸洗除去しその後目視で、割れの有無を判断した。具体的には、目視で割れが見られた場合に「割れ有」と判断し、目視で割れが見られない場合に「割れ無」と判断した。なお、表2における「−」は、その工程を実施していないことを意味する。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
すべての実施例において、鋳片表面の冷却速度が1.0〜3.0℃/秒であることを、伝熱解析と鋳片表面の温度測定とにより確認した。
【0045】
得られた鋳片を、長手方向を法線方向とする平面で切断し、断面の組織を光学顕微鏡で観察した。図3に、断面での組織の観察位置を含む領域を示す。観察は、角部Fcorner、および鋳片1の広幅面に隣接する領域であって鋳片1の幅方向中央部(以下において、単に、「中央部」と称する。)Fcenterで行った。
【0046】
図4乃至図7に、鋳片の断面写真を示す。図4は、比較例1の連続鋳造方法を実施した鋳片の角部の写真である。図5は、比較例6の連続鋳造方法を実施した際、第1水冷工程および第1復熱工程を実施した後の鋳片について、断面の中央部を撮影した写真である。図6は、比較例6の連続鋳造方法を実施した際、第1水冷工程および第1復熱工程を実施した鋳片について、断面の角部を撮影した写真である。図7は、実施例1の連続鋳造方法を実施した際、第2復熱工程後の鋳片について、断面の中央部を撮影した写真である。
【0047】
図4に示したように、比較例1の鋳片では、角部に、γ粒界が明瞭な組織が形成されていた。これは、冷却時の水量密度が大きい比較例1では、過冷却された角部が、その後の復熱工程でAr点以上の温度に達することができず、γ粒界が不明瞭な組織に改質することができなかったためであると考えられる。これに対して、図5に示したように、比較例6の鋳片では、中央部に、γ粒界が明瞭な組織が形成されていた。これは、冷却時の水量密度が小さい比較例6では、中央部の冷却が不十分であり、鋳片中央部表層の温度がAr点未満にまで下がらなかったためであると考えられる。
【0048】
一方、図6に示したように、比較例6の鋳片では、角部に、γ粒界が不明瞭な組織が形成されていた。これは、角部が他の部分に比して強く冷却されたため、角部の温度がAr点未満に下がり、その後の復熱で組織改質されたことにより、γ粒界が不明瞭な組織が形成されたためであると考えられる。角部が他の部分に比して強く冷却される理由は、例えば、鋳片の長辺面に供給された冷却水の大部分が、ロールを伝って、角部へと移動して角部を冷却するとともに、鋳片の短辺面に噴射された冷却水によっても冷却されるためであると考えられる。他方、図7に示したように、第2復熱工程後の実施例1の鋳片の中央部には、γ粒界が不明瞭な組織が形成されていた。図示は省略するが、第2復熱工程後の実施例1の鋳片の角部にも、同様の組織が形成されていた。
【0049】
また、比較例1の鋳片は、第1水冷工程で冷却した際に、角部で割れが生じたのに対して、実施例1の鋳片では、第1水冷工程の開始時から第2復熱工程の終了時までにおいて、表面の全面に亘って、割れが生じなかった。
【0050】
このほか、表1に示したように、実施例1を含むすべての実施例では、鋳片の角部および中央部(すなわち、表面の全面。以下において同じ。)において、割れが生じなかった。これは、鋳片の角部の組織改質、および、鋳片の角部以外の組織改質を別々に行うことにより、鋳片の角部および中央部の表層に、γ粒界が不明瞭な組織を形成することができ、この組織を形成することによって、割れの発生を防止することができたためであると考えられる。
【0051】
これに対し、表2に示したように、本発明を適用しなかった比較例では、そのすべてにおいて、鋳片の角部や鋳片の中央部で、割れが生じた。具体的には、冷却工程を2つに分けず、1回のみ実施した比較例1〜6および比較例15〜16は、角部や中央部に割れが生じた。
より具体的には、比較例1〜5および比較例15では、中央部の割れを防止できる冷却条件(実施例よりも水量密度が高い条件)で冷却した。従来技術のように、中央部の割れを防止する冷却条件で冷却すると、角部が過冷却されるため、復熱工程を行っても、角部の表面温度をAr点以上にすることはできない。そのため、比較例1〜5および比較例15では、角部の表層に、γ粒界が不明瞭な組織を形成することができず、結果として角部に割れが発生した。
また、比較例6および比較例16では、第1水冷工程で角部のみ、その表面温度がAr点未満になるように冷却することができ、その後の第1復熱工程で、角部を含む鋳片の全体の表面温度がAr点以上になるように鋳片を復熱させることができる。その結果、これらの比較例では、γ粒界が不明瞭な組織を角部の表層に形成することができたので、角部には割れが発生しなかった。しかしながら、比較例6および比較例16では、第2水冷工程および第2復熱工程を行わなかったため、中央部にγ粒界が不明瞭な組織を形成することができず、結果として中央部に割れが発生した。
【0052】
また、比較例7〜10は、第1水冷工程で、角部のみ、その表面温度がAr点未満になるように、鋳片を冷却することができ、その後の第1復熱工程で、角部を含む鋳片の全体の表面温度がAr点以上になるように、鋳片を復熱させることができた。その結果、比較例7〜10では、γ粒界が不明瞭な組織を角部の表層に形成することができたので、角部には割れが発生しなかった。
しかしながら、比較例7では、第2水冷工程で、中央部の表面温度がAr点未満になるように鋳片を冷却することができなかった。その結果、比較例7では、γ粒界が不明瞭な組織を中央部に形成することができなかったので、中央部に割れが発生した。
また、比較例8では、第2水冷工程で中央部を冷却し過ぎたため、第2復熱工程で、中央部の表面温度がAr点以上になるように鋳片を復熱させることができなかった。その結果、比較例8では、γ粒界が不明瞭な組織を中央部に形成することができなかったので、中央部に割れが発生した。
また、比較例9では、第2水冷工程で、中央部の表面温度がAr点未満になるように鋳片を冷却することができなかった。その結果、比較例9では、γ粒界が不明瞭な組織を中央部に形成することができなかったので、中央部に割れが発生した。
また、比較例10では、第2水冷工程で中央部を冷却し過ぎたため、第2復熱工程で、中央部の表面温度がAr点以上になるように鋳片を復熱させることができなかった。その結果、比較例10では、γ粒界が不明瞭な組織を中央部に形成することができなかったので、中央部に割れが発生した。
【0053】
また、比較例11〜14は、第2水冷工程で、角部を含む鋳片の全体の表面温度がAr点未満になるように、鋳片を冷却することができ、その後の第2復熱工程で、角部の表面温度をAr点未満の温度に留めつつ、中央部の表面温度がAr点以上になるように、鋳片を復熱させることができた。その結果、比較例11〜14では、γ粒界が不明瞭な組織を中央部の表層に形成することができたので、中央部には割れが発生しなかった。
しかしながら、比較例11では、第1水冷工程で、角部の表面温度がAr点未満になるように鋳片を冷却することができなかった。その結果、比較例11では、γ粒界が不明瞭な組織を角部に形成することができなかったので、角部に割れが発生した。
また、比較例12では、第1水冷工程で角部を冷却し過ぎたため、第1復熱工程で、角部の表面温度がAr点以上になるように鋳片を復熱させることができなかった。その結果、比較例12では、γ粒界が不明瞭な組織を角部に形成することができなかったので、角部に割れが発生した。
また、比較例13では、第1水冷工程で、角部の表面温度がAr点未満になるように鋳片を冷却することができなかった。その結果、比較例13では、γ粒界が不明瞭な組織を角部に形成することができなかったので、角部に割れが発生した。
また、比較例14では、第1水冷工程で中央部を冷却し過ぎたため、第1復熱工程で、角部の表面温度がAr点以上になるように鋳片を復熱させることができなかった。その結果、比較例14では、γ粒界が不明瞭な組織を角部に形成することができなかったので、角部に割れが発生した。
【0054】
また、比較例17〜20は、第1水冷工程で、角部を含む鋳片の全体の表面温度がAr点未満になるように、鋳片を冷却することができた。しかしながら、比較例17〜20では、第1水冷工程で角部を冷却し過ぎたため、第1復熱工程で、角部の表面温度がAr点以上になるように鋳片を復熱させることができなかった。その結果、比較例17〜20では、γ粒界が不明瞭な組織を角部に形成することができなかったので、角部に割れが発生した。
【符号の説明】
【0055】
1…鋳片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7