(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コア型及びキャビティ型からなる一対の金型により形成される成形空間に熱可塑性樹脂の発泡ビーズを充填し、前記発泡ビーズを蒸気で加熱して融着させ、冷却及び乾燥して所要形状の発泡合成樹脂の成形品を得るビーズ法発泡合成樹脂成形に用いる前記金型であって、
削り出し及び/又は鋳造により形成された立体形状の前記金型の所要箇所に、前記金型の内外に連通して前記蒸気を通すための、前記金型自体に直接形成したスリット状の蒸気孔を有し、
前記スリット状の蒸気孔が、ツールとしてメタルソーを取り付けたマシニングセンターによる切削加工、又はレーザ加工機又はワイヤ放電加工機による除去加工で形成されたものであり、
前記スリット状の蒸気孔位置において、前記金型の前記成形空間と反対側の面に、前記冷却を行う冷却水が滞留する窪みが無いことを特徴とするビーズ法発泡合成樹脂成形用金型。
前記金型の蒸気孔開口率に関し、前記金型の原料充填口から遠い、前記成形品の先端部を形成する部位の蒸気孔開口率を大きくし、かつ、前記成形品の先端部を形成する部位以外の蒸気孔開口率を小さくしてなる請求項1〜5の何れか1項に記載のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型。
【背景技術】
【0002】
ビーズ法発泡合成樹脂成形は、コア型(凸型)及びキャビティ型(凹型)からなる一対の金型により形成される成形空間(キャビティ)に熱可塑性樹脂の発泡ビーズを充填し、前記発泡ビーズを蒸気で加熱して融着させ、冷却及び乾燥して所要形状の成形品を得るものである。
前記一対の金型であるビーズ法発泡合成樹脂成形用金型は、外部から成形空間内への蒸気の供給、及び成形空間内からの外部への蒸気の排出をするために、金型の内外に連通する蒸気孔が必要であるので、金型表面に直交する方向へ多数のベントホール(コアベント取付孔)を形成して、これらのベントホールに、例えば外径が10mmで全長(高さ)が6mmのキャップ状で、多数のスリット又は小穴が形成されたコアベント(ベント金具)を、金型表面(成形面)側が面一となるように取り付けたものが一般的に使用される。
【0003】
このようなビーズ法発泡合成樹脂成形用金型の構造は、例えば直径10mmの多数のベントホールを形成することにより強度低下が生じやすく、ベントホールにコアベントをハンマ等で打ち込むことにより金型が変形したり、金型が傷付くことがあるとともに、金型に多数のベントホールを形成する孔あけ作業、多数のベントホールにコアベントをハンマ等で打ち込む打込み作業、及び金型表面(成形面)を平滑にするための研磨作業に手間が掛かるため、製造コストが嵩むとともに、特に前記打込み作業の際に騒音を伴うため、作業環境の悪化を招いている。
その上、特に平面的な形状ではなく、肉厚が比較的厚く容量が大きい断熱容器等の成形品を成形する場合には、前記成形品の形状の成形空間を形成する一対の金型内に充填された容量が大きい発泡ビーズを加熱して融着させるために、成形空間内へ多量の蒸気を効率的に供給できるように蒸気孔開口率を高める必要があるので、ベントホール及びコアベントの数が増大するため、上記の問題が顕著になる。
その上さらに、成形品の角部(隅部)形状が曲面状である場合、曲面状部分である角R部(隅R部)を成形品に形成するように、金型表面(成形面)に曲面状部分である隅R部(角R部)を形成する必要がある。しかしながら、金型の曲面状部分である隅R部(角R部)にベントホールを形成してコアベントを打ち込んだ場合、コアベントの端面が平面状であることから、金型の隅R部(角R部)が面一にならないため、金型の曲面状部分である隅R部(角R部)にはコアベントを配置できない。
【0004】
また、特許文献1のように、ビーズ法発泡合成樹脂成形用金型に形成するベントホール2,2,…の内径を、ベント金具3,3,…の外径よりも僅かに大きくするとともに、接着剤を収容する周溝4,4,…をベント金具3に形成することにより、ベント金具3,3,…を、ハンマ等で打ち込むことなく、ベントホール2,2,…に手作業で挿入し、ベント金具3,3,…外周に塗布した耐熱性接着剤により固定するものがある。
さらに、特許文献2のように、通常のパンチング加工によって円形の蒸気穴22,22,…及び23,23,…が穿設された一対の金型(凹部5及び凸部6)のキャビティ側の面に、適当な厚さの金属板33,33を接合し、これらの金属板33,33に、切削加工又はエッチング処理を用いて、蒸気穴22,22,…及び23,23,…に連通する細溝状の、格子状、放射状、同心円状、千鳥状、又はスパイラル状等の蒸気スリット30,30,…及び31,31,…を形成するものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のようなビーズ法発泡合成樹脂成形用金型の構造によれば、ベント金具3,3,…を打ち込むことなくベントホール2,2,…に取り付けるので、金型の変形防止による精度向上が図れるとともに、ハンマ等による打込み作業が無いので、肉体労働の負荷の軽減、及び騒音抑制による作業環境の改善が図れる。
しかしながら、周溝4,4,…を形成した特殊形状のベント金具3,3,…を多数使用する必要があるため、その分の製造コストが増大する。
その上、前記打込み作業が無い反面、多数のベント金具3,3,…の周溝に接着剤を塗布する作業を行う必要があるので、その分の手間が掛かるとともに、接着剤が硬化するまでに時間が掛かる。
その上さらに、接着強度の確保及びベント金具3,3,…の挿入作業の作業性を考慮して、ベントホール2とベント金具3とのクリアランスが0.05mm〜0.1mmの範囲になるようにベントホール2,2,…を形成する孔あけ加工を行う必要があるので、前記孔あけ加工のコストが増大する。
仮にこれらの課題が解決されたとしても、多数のベントホールを形成することによる強度低下という課題は避けられない。
【0007】
また、特許文献2のようなビーズ法発泡合成樹脂成形用金型の構造によれば、多数のスリット又は小穴が形成されたコアベントを用いず、格子状等の0.2〜0.4mmの細溝状の蒸気スリット30,30,…及び31,31,…から蒸気を供給・排出するので、成形品の表面に形成される蒸気スリット痕が目立たないため、高級な印象を与える意匠面を有する成形品を成形できる。
しかしながら、金属板33,33に形成する蒸気スリット30,30,…及び31,31,…は格子状等に形成されるので、蒸気スリット30,30,…及び31,31,…を形成した後の金属板33,33は一体ではなくなることから、蒸気スリット30,30,…及び31,31,…を形成した後の金属板33,33を凹部5及び凸部6により保持するため、金属板33,33を凹部5及び凸部6に接合した後に、金属板33,33に蒸気スリット30,30,…及び31,31,…を形成する必要がある。
その上、凹部5及び凸部6から金属板33,33の蒸気スリット30,30,…及び31,31,…へ蒸気を通すために、凹部5及び凸部6には、多数の円形の蒸気孔22,22,…及び23,23,…を形成する必要がある。
よって、金型の凹部5及び凸部6への円形の蒸気孔22,22,…及び23,23,…の孔あけ加工、凹部5への金属板33の接合及び凸部6への金属板33の接合、並びに凹部5及び凸部6に接合された金属板33,33に格子状等の蒸気スリット30,30,…及び31,31,…を形成する加工を行う必要があるため、金型の製造コストが増大する。
【0008】
さらに、金型のベントホールにコアベントを打ち込んで形成される従来の一般的なビーズ法発泡合成樹脂成形用金型、及び特許文献1のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型においては、例えば全長(高さ)が6mmのコアベントを装着する都合上、金型の肉厚を比較的厚くする必要があるので、金型の熱容量が大きくなるため加熱冷却に時間が掛かるとともに、金型の重量が大きくなる。
さらにまた、前記従来の一般的なビーズ法発泡合成樹脂成形用金型、並びに特許文献1及び2のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型の何れにおいても、金型表面(成形面)と反対側の面に多数の窪みがある形状であるので(例えば、特許文献1の図面、特許文献2の
図2(b)参照)、これらの窪み(例えば、特許文献2では蒸気穴22,22,…及び23,23,…)に冷却工程で散水された冷却水が滞留する。
ここで、冷却工程では、製品を乾燥する乾燥工程も同時に行われるため、前記窪みに冷却水が滞留していると、乾燥工程に多くの時間が掛かることになり、このような冷却水の滞留は、金型の過冷却の問題も含めて、成形サイクルの長時間化の主因となっている。なお、現在の発泡成形においては、冷却・乾燥工程の時間短縮を目的として、真空冷却乾燥あるいは減圧冷却乾燥を行っているが、これらの方法を採用してもなお、前記冷却水の滞留が前記時間短縮実現の障害となっている。
【0009】
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、金型の製造コストの低減、金型の加熱冷却時間の短縮及び軽量化、成形品の表面性状の美麗化、並びに冷却・乾燥工程の時間短縮が可能なビーズ法発泡合成樹脂成形用金型を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
〔1〕コア型及びキャビティ型からなる一対の金型により形成される成形空間に熱可塑性樹脂の発泡ビーズを充填し、前記発泡ビーズを蒸気で加熱して融着させ、冷却及び乾燥して所要形状の発泡合成樹脂の成形品を得るビーズ法発泡合成樹脂成形に用いる前記金型であって、
削り出し及び/又は鋳造により形成された立体形状の前記金型の所要箇所に、前記金型の内外に連通して前記蒸気を通すための、前記金型自体に直接形成したスリット状の蒸気孔を有
し、
前記スリット状の蒸気孔が、ツールとしてメタルソーを取り付けたマシニングセンターによる切削加工、又はレーザ加工機又はワイヤ放電加工機による除去加工で形成されたものであり、
前記スリット状の蒸気孔位置において、前記金型の前記成形空間と反対側の面に、前記冷却を行う冷却水が滞留する窪みが無いことを特徴とするビーズ法発泡合成樹脂成形用金型。
〔
2〕前記スリット状の蒸気孔のうち、前記金型の取付けフランジ部に設けられたものが、外部に対して開放されている前記〔1〕
に記載のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型。
〔
3〕前記スリット状の蒸気孔が、少なくとも前記金型の曲面状部分に設けられている前記〔1〕
に記載のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型。
〔
4〕前記スリット状の蒸気孔が、前記金型の表面形状変化部分に沿って設けられている前記〔1〕
に記載のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型。
〔
5〕前記金型の側面に配置される前記スリット状の蒸気孔が、前記金型の開閉方向に沿って設けられている前記〔1〕記載のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型。
〔
6〕前記金型の蒸気孔開口率に関し、前記金型の原料充填口から遠い、前記成形品の先端部を形成する部位の蒸気孔開口率を大きくし、かつ、前記成形品の先端部を形成する部位以外の蒸気孔開口率を小さくしてなる前記〔1〕〜〔
5〕の何れかに記載のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型。
〔
7〕前記成形品の先端部を形成する部位の蒸気孔開口率と前記先端部を形成する部位以外の蒸気孔開口率との比が、3:1〜10:1の範囲である前記〔
6〕記載のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型。
〔
8〕前記金型が、削り出し及び/又は鋳造で部品を作った後にそれらを組み立てて形成されたものである前記〔1〕〜〔
7〕の何れかに記載のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型。
〔
9〕前記スリット状の蒸気孔の幅が、0.1mm〜0.7mmの範囲、より好ましくは0.3mm〜0.5mmの範囲である前記〔1〕〜〔
8〕の何れかに記載のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型。
〔1
0〕前記スリット状の蒸気孔一つ当たりの長さが20mm〜100mmの範囲である前記〔1〕〜〔
9〕の何れかに記載のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型。
〔1
1〕前記発泡合成樹脂が発泡ポリオレフィン系樹脂である前記〔1〕〜〔1
0〕の何れかに記載のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型。
〔1
2〕前記発泡合成樹脂が発泡ポリスチレン系樹脂である前記〔1〕〜〔1
0〕の何れかに記載のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型。
〔1
3〕前記〔1〕〜〔1
2〕の何れかに記載のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型により形成される成形空間に熱可塑性樹脂の発泡ビーズを充填し、前記発泡ビーズを蒸気で加熱して融着させ、冷却及び乾燥することにより所要形状の発泡合成樹脂の成形品を製造するビーズ法発泡合成樹脂成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るビーズ法発泡合成樹脂成形用金型、及びビーズ法発泡合成樹脂成形品の製造方法によれば、主に以下のような顕著な作用効果を奏する。
(1)金型の蒸気孔が切削加工等によりスリット状に形成されているので、多数のベントホールにコアベントを打ち込む打込み作業が不要になるため、前記打込み作業に基づく金型の変形や損傷がなくなるとともに、前記打込み作業に伴う金型の変形や騒音がなくなる。
(2)金型の蒸気孔が切削加工等によりスリット状に形成されているので、金型に多数のベントホールを形成する孔あけ作業が不要であるため強度の低下が生じ難い。また、前記コアベントの打込み作業、及び金型表面(成形面)を平滑にするための研磨作業が不要になるため、金型の製造コストを低減できる。
(3)蒸気孔がスリット状であるので、成形品表面の蒸気孔の痕が目立たないため、表面性状が美麗な成形品を成形できるとともに、金型の肉厚を薄くできることから、金型の熱容量が小さくなるため加熱冷却時間を短縮できるともに、金型の重量を小さくできる。
(4)前記スリット状の蒸気孔位置において、金型の成形空間と反対側の面に、冷却工程で散水された冷却水が滞留する窪みが無
いので、乾燥工程に掛かる時間を短縮できる。
(5)蒸気孔を金型の所要箇所に切削加工等によりスリット状に形成するので、成形空間内へ多量の蒸気を効率的に供給できるように蒸気孔開口率を高める必要がある場合においても、スリット状蒸気孔の長さ及び幅並びに隣接する前記蒸気孔の間隔の少なくとも一つを変更することにより、蒸気孔開口率を容易に高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。
【0015】
本発明の実施の形態に係るビーズ法発泡合成樹脂成形用金型1は、
図1(a)の斜視図に示すコア型(凸型)2、及び
図1(b)の斜視図に示すキャビティ型(凹型)3からなり、図示しない一般的な成形装置に取り付けて使用される。
ビーズ法発泡合成樹脂成形は、前記成形装置を用いて、コア型2及びキャビティ型3により形成される成形空間に、原料充填口5から熱可塑性樹脂の発泡ビーズを充填し、前記発泡ビーズを蒸気で加熱して融着させ、冷却及び乾燥した後に離型ピン用開口6から離型ピンを挿入して押し出すことにより、所要形状の発泡合成樹脂の成形品を得るものである。
なお、ここで金型に充填する発泡ビーズとは、発泡性ビーズを予備発泡して得られる予備発泡ビーズをも包含する概念である。
【0016】
ビーズ法発泡合成樹脂成形に用いる発泡合成樹脂としては、例えば発泡ポリオレフィン系樹脂又は発泡ポリスチレン系樹脂を用いる。
前記発泡合成樹脂が発泡ポリオレフィン系樹脂であると、ビーズ法発泡合成樹脂成形用金型1を用いて、強度や耐熱性に優れるとともに耐油性及び耐薬品性も有している成形品を成形できる。
また、前記発泡合成樹脂が発泡ポリスチレン系樹脂であると、ビーズ法発泡合成樹脂成形用金型1を用いて、断熱性や衝撃吸収性に優れるともに軽量で低コストな成形品を成形できる。
【0017】
図1に示すビーズ法発泡合成樹脂成形用金型1(コア型2及びキャビティ型3)は、例えばアルミニウム合金製であり、削り出し及び/又は鋳造により立体形状に形成されたものである。
本発明において、立体形状の金型を形成するについて、削り出し及び/又は鋳造というのは、削り出し単体の金型、部分的な削り出し部分を組み立ててなる金型、鋳造単体の金型、部分的な鋳造部分を組み立ててなる金型、削り出し部分と鋳造部分を組み立ててなる金型などを含んだ広い概念を意味している。
図1の例において、
図1(b)のキャビティ型3は、寸法精度を出すために、別体として形成した側面型3A及び底面型3Bをボルトにより締結して一体化したものであり、
図1(a)のコア型2は最初から一体に形成したものである。なお、コア型2を別体として形成した側面型及び底面型などを組み付けて一体化してもよいし、キャビティ型3を最初から一体のものとして形成してもよい。
また、コア型2及びキャビティ型3には、それらの所要箇所に、内外に連通して蒸気を通すための蒸気孔4,4,…がスリット状に形成される。
なお、スリット状蒸気孔4,4,…は、コア型2及びキャビティ型3の所要箇所の外面側及び/又は内面側に形成される。
ここで、コア型2及びキャビティ型3の側面に配置されるスリット状蒸気孔4,4,…は、金型の開閉方向に沿って設けられているので、成形品に引っ掛かり傷が出来にくい。
【0018】
次に、
図2の縦断面図を参照して、ビーズ法発泡合成樹脂成形用金型1(コア型2及びキャビティ型3)にスリット状蒸気孔4,4,…を形成する方法について説明する。
なお、本発明で言うスリット状蒸気孔は、金型自体に直接形成されるものであり、金型に形成したベントホールに打ち込まれるコアベント等において、その成形空間側表面等に予め形成されたスリット状蒸気孔等は含まない。
横型マシニングセンターの主軸にメタルソー7を取り付け、テーブルにコア型2又はキャビティ型3を固定した状態で、
図2(a)のようにメタルソー7により切削加工を行い、加工終了後に
図2(b)のようにメタルソー7をコア型2又はキャビティ型3から離間させ、このような作業を繰り返すことにより、コア型2又はキャビティ型3の所要箇所に、スリット状蒸気孔4,4,…が形成される。
【0019】
なお、蒸気孔4,4,…がスリット状であるので、ビーズ法発泡合成樹脂成形用金型1(コア型2及びキャビティ型3)の曲面状部分である角R部(隅R部)に蒸気孔4,4,…を形成しても前記角R部(隅R部)が面一になるため、
図1に示すように曲面状部分Cである角R部(隅R部)にも蒸気孔4,4,…を形成できる。
このように、立体的な工作物の加工に適した横型マシニングセンターを用いて、コア型2又はキャビティ型3に対し、水平の主軸に取り付けたメタルソー7を回転させながら、メタルソー7の外周面の切れ刃によりスリット状蒸気孔4,4,…を効率的に加工できる。
このようなスリット状蒸気孔4,4,…の形成は、ツールとしてメタルソーを取り付けたマシニングセンターによる切削加工、特に水平の主軸にメタルソーを取り付けた横型マシニングセンターにより行うのが好ましいものであるが、レーザ加工機又はワイヤ放電加工機による除去加工により行うこともできる。
【0020】
ここで、スリット状蒸気孔4の長さはメタルソー7の外径により定まり、スリット状蒸気孔4の幅はメタルソー7の刃厚により定まる。メタルソー7の最小刃厚は0.02mm程度であり、刃厚が薄いメタルソー7を選定すると、スリット状蒸気孔4の幅B(
図3参照)が微小になることから、成形品におけるスリット状蒸気孔4,4,…の痕が殆ど目立たなくなるので、より表面性状が美麗な成形品を成形できる。
しかしながら、刃厚が薄いメタルソー7を選定すると、成形品の表面性状の美麗性は高くなるが、開口率を確保するために多数の蒸気孔4,4,…を形成する必要が生じて生産性が低下する。
よって、メタルソー7の刃幅は、0.1mm〜0.7mmの範囲、より好ましくは0.3mm〜0.5mmの範囲にするのが好適である。
【0021】
また、
図1及び
図2のように、スリット状蒸気孔4,4,…が形成されたコア型2又はキャビティ型3において、スリット状蒸気孔4,4,…の周りには窪みが無い。よって、従来の金型(例えば、特許文献1〜3参照)のように金型表面(成形面)と反対側の面に多数の窪みがある形状ではなく、コア型2及びキャビティ型3により形成される成形空間と反対側の面に冷却水が滞留する窪みが無い。
なお、
図1及び
図2のようなスリット状蒸気孔4,4,…が形成されたコア型2又はキャビティ型3において、取付けフランジ部F及び/又は水が貯まっても自然に抜ける部位を除いて、スリット状蒸気孔位置においては、コア型2及びキャビティ型3により形成される成形空間と反対側の面に冷却水が滞留する窪みが無い構造が形成できる。
【0022】
次に、
図3及び
図4の要部拡大正面図を参照して、本発明におけるスリット状蒸気孔4,4,…の蒸気孔開口率等について説明する。
図4に示す100mm四方の範囲に直径10mmのベントホール8,8,…が25個形成され、これらのベントホール8,8,…にコアベント9,9,…が打ち込まれている従来のコア型2’又はキャビティ型3’と同等の蒸気孔開口率を、本発明におけるコア型2又はキャビティ型3に持たせる場合について検討する。
図3に示すように21個のスリット状蒸気孔4,4,…を形成する場合、蒸気孔4の長さAを22mm、蒸気孔4の幅Bを0.3mm、隣接する蒸気孔4,4の間隔Dを15mmにすると、
図4のコアベント9,9,…による蒸気孔開口率と同等になる。
すなわち、蒸気孔4の長さA、蒸気孔4の幅B、及び隣接する蒸気孔4,4の間隔Dの少なくとも一つを変更することにより蒸気孔開口率を容易に変更できるので、成形空間内へ多量の蒸気を効率的に供給できるように蒸気孔開口率を高める必要がある場合においても、蒸気孔開口率を容易に高めることができる。
【0023】
ここで、蒸気孔4,4の間隔Dは、10mm〜50mmの範囲であるのが好ましく、さらに好ましくは15mm〜30mmの範囲である。蒸気孔4,4の間隔Dは、等間隔であっても良く、不等間隔であっても良い。
また、前記メタルソー7の刃幅についての検討のとおり、成形品の表面性状の美麗性及び生産性を考慮すると、スリット状蒸気孔4の幅Bの範囲は、0.1mm〜0.7mm、より好ましくは0.3mm〜0.5mmである。
さらに、スリット状蒸気孔4の長さAは、20mm〜100mmの範囲にすることが好ましく、さらに好ましくは30mm〜70mmの範囲である。
スリット状蒸気孔4の長さAを20mm〜100mmの範囲、さらに好ましくは30mm〜70mmの範囲にすることにより、長さAが長過ぎることによる金型の強度低下を抑制しながら、スリット状蒸気孔4,4,…の痕を目立ちにくくして表面性状が美麗な成形品を成形できるとともに、所要蒸気孔開口率に対するスリット状蒸気孔4,4,…の数を少なくできる。
よって、スリット状蒸気孔4,4,…を形成する加工時間を短縮できるため、金型の製造コストを低減できる。
ここで、スリット状蒸気孔4,4,…は、例えば同一長さの蒸気孔4,4,…を多数形成する場合、蒸気孔4の長手方向に直交する面内方向(
図3の幅Dの方向)に沿って、
図3のように蒸気孔4,4,…の端部を揃えるように平行に配置してもよいし、蒸気孔4,4,…の端部を一つおきにずらして千鳥状に配置してもよい。同じ蒸気孔開口率で金型の強度を高めるためには、スリット状蒸気孔4,4,…を千鳥状に配置する方が好ましい。
【0024】
なお、前記のとおり、スリット状蒸気孔4の幅Bが小さければ小さいほど、スリット状蒸気孔の痕を目立ちにくくして表面性状が美麗な成形品を成形できるが、蒸気孔4の幅Bが小さいと、所要蒸気孔開口率にするために、蒸気孔4の長さAを長くしたり、間隔Dを狭めて蒸気孔4の数を増やす必要があるため、蒸気孔4の長さA、蒸気孔4の幅B、及び隣接する蒸気孔4,4の間隔Dは、成形品の表面性状とともに、蒸気孔4,4,…を形成するための加工時間を考慮して決定される。
本発明のスリット状蒸気孔について重要なことは、設計の自由度が高いので、成形品の形状や、金型の形状に応じて良好な加熱や融着が得られるように適宜設計できることである。
【0025】
図4のようにベントホール8,8,…にコアベント9,9,…を打ち込む構造のコア型2’及びキャビティ型3’において、コアベント9の高さは通常6mm以上であり、これよりも高さの低いコアベントは特注品となるので高価となる。したがって、このような高さの低い特注品のコアベントを使用することは、コストが重視される金型の製作には極めて不利となってしまう。
よって、通常の金型の厚みは、高さが6mm以上あるコアベントを打ち込む際の負荷に耐えるとともに、金型に不定形な曲がり変形等が生じないように、9mm〜13mmである。
それに対して、本発明のスリット状蒸気孔4,4,…を採用すれば、前記ベントホール8,8,…にコアベント9,9,…を打ち込む構造の金型のような前記厚みの制約が無くなるので、コア型2及びキャビティ型3の厚みを、発泡ポリスチレン系樹脂の場合は、3mm〜8mm、より好ましくは5mm〜7mm程度にすることができる。
よって、薄肉化により大幅な軽量化を図ることができるとともに、成形時における金型の加熱・冷却により過剰に消費される蒸気の使用量を削減できることから、省エネ効果が大きくなるので、成形費用の大幅な削減が可能となる。また、発泡ポリオレフィン系樹脂の場合の金型の厚みは、成形圧が高いので、発泡ポリスチレン系樹脂の場合の1.2倍〜1.3倍程度に厚くするのが好ましい。
【0026】
また、
図5の要部拡大正面図に示すように、コア型2及びキャビティ型3の対向面において、スリット状蒸気孔4,4,…の位置をずらすようにこれらのスリット状蒸気孔4,4,…を形成するのがより好ましい実施態様である。
このようにコア型2及びキャビティ型3のスリット状蒸気孔4,4,…をずらして形成することにより、蒸気が成形空間を通過する際の通過距離が長くなることから成形空間内の発泡ビーズを加熱溶融しやすくなるので、質の良い成形品が得られる。
図5のようにコア型2及びキャビティ型3双方のスリット状蒸気孔4,4,…が同じピッチである場合には、例えば、1/2ピッチずらしてスリット状蒸気孔4,4,…を形成すればよい。
【0027】
スリット状蒸気孔4,4,…の間隔は、原料充填口(例えば、
図1(b)の符号5参照)から遠いほど密(蒸気孔開口率を大)に、原料充填口に近いほど疎(蒸気孔開口率を小)にすることにより、原料の充填が良好となるので好ましい。すなわち、ビーズ法発泡合成樹脂成形用金型の蒸気孔開口率に関し、前記金型の原料充填口から遠い、発泡合成樹脂の成形品の先端部を形成する部位、特に薄肉先端部を形成する部位の蒸気孔開口率を大きくし、かつ、前記成形品の先端部を形成する部位以外の蒸気孔開口率を小さくしてなるのが好ましい。
ここで、前記成形品の先端部を形成する部位の蒸気孔開口率と前記先端部以外を形成する部位の蒸気孔開口率との比を、3:1〜10:1、好ましくは5:1〜7:1の範囲にするのがよい。
このようにすることにより、発泡合成樹脂の成形品における、ビーズ法発泡合成樹脂成形用金型の原料充填口から遠い、発泡合成樹脂の成形品の先端部、特に薄肉先端部であっても、発泡ビーズを均一に充填できるとともに、良好な品質の成形品を短い成形サイクルで得ることができる。
【0028】
本発明のスリット状蒸気孔は、従来のコアベントとは異なり、金型の平面部分だけでなく、曲面状部分(例えば角R部や隅R部)にも形成させることが容易である。よって、成形品の表面状態をより美麗化するためには、成形品の曲面状部分にスリット状の蒸気孔を密に集中させるのが好ましい。それにより、平面部のスリット状の蒸気孔痕が目立たなくなり、人の目に目立ちにくい曲面状部分にスリット状の蒸気孔痕を配置することで成形時の加熱蒸気の供給を確保しながら、成形品の美麗化が良好に達成される。特に、キャビティ型の隅R部にスリット状の蒸気孔痕を配置するのが最も好ましい。
また、本発明のスリット状蒸気孔は、R部以外の凹凸部あるいはリブ部などの先端、及び/又は根元等の様々な形状部分に設けることができる。
【0029】
次に、スリット状蒸気孔4,4,…を形成する箇所の変形例について説明する。
図6(a)の斜視図、及び
図6(b)の部分断面斜視図は、金型のフランジ部Fに形成したスリット状蒸気孔4,4,…が、外部に対して開放されている例を示している。
ここで、
図4の要部拡大正面図のようにベントホール8,8,…にコアベント9,9,…を打ち込む構造のコア型2’及びキャビティ型3’においては、ベントホール8内の個々の蒸気孔の両端は、コアベント9の壁面、あるいはベントホール8が形成された金型の壁面により囲まれているため、必ず閉じた形状になる。
それに対して、
図6のように金型のフランジ部Fに形成されたスリット状蒸気孔4,4,…は、閉じた形状ではなく、外部に開放した形状(外周縁までスリットが入った形状)であるので、蒸気孔の設計の自由度が高まるとともに、蒸気孔開口率を大きくすることができる。
【0030】
図7の端面図は、球面状の金型の曲面状部分Cである球面にスリット状蒸気孔4,4,…を設けた例を示している。
ここで、
図8の端面図のようにベントホール8,8,…にコアベント9,9,…を打ち込む構造の球面状の金型においては、ベントホール8,8,…へのコアベント9,9,…の適正な打ち込みが困難である。その上、コアベント9,9,…の端面が平面状であることから、成形空間側の球面におけるコアベント9,9,…の箇所には円形の平面部が形成されてしまうので、成形品に滑らかな球面が形成されない。
それに対して、
図7に示す曲面状部分Cである球面へのスリット状蒸気孔4,4,…の形成は、ツールとしてメタルソーを取り付けたマシニングセンターによる切削加工等により比較的簡単に行うことができる。
また、
図7のように球面に形成されたスリット状蒸気孔4,4,…は、幅が狭いので(例えば0.1mm〜0.7mm)、成形品に比較的滑らかな球面が形成されるとともに、成形品における蒸気孔4,4,…の痕が目立たない。
【0031】
図9(a)の斜視図、及び
図9(b)の要部拡大部分断面斜視図、
図10(a)の斜視図、及び
図10(b)の要部拡大部分断面斜視図、並びに
図11(a)の斜視図、及び
図11(b)の要部拡大部分断面斜視図は、金型の表面形状変化部分Eに沿ってスリット状蒸気孔4,4,…を設けた例を示している。
ここで、
図9の例は、コア型2の表面形状変化部分Eである底面凸条部Gの側縁部に沿って、
図10の例は、コア型2の表面形状変化部分Eである側面凸条部Hの側縁部に沿って、
図11の例は、コア型2の表面形状変化部分Eである底面溝部Iの側縁部に沿ってスリット状蒸気孔4,4,…形成している。
これらに例示されるような凹凸部やリブ部の側縁部等である金型の表面形状変化部分にスリット状蒸気孔4,4,…を形成することにより、成形品のスリット状蒸気孔4,4,…の痕が目立たないので、凹凸部やリブ部により形成される成形品に付された模様による意匠性を損ねることがない。
【0032】
以上のとおり、本発明のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型1では、ベントホールにコアベントを打ち込む構造の金型では形成することができなかった箇所に、スリット状蒸気孔を形成できる。
【0033】
また、本発明のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型1(コア型2及びキャビティ型3)の構成によれば、金型1の蒸気孔4,4,…が切削加工等によりスリット状に形成されているので、金型のベントホールにコアベントを打ち込んで形成される従来の一般的なビーズ法発泡合成樹脂成形用金型のように、多数のベントホールにコアベントを打ち込む打込み作業が不要になるため、前記打込み作業に基づく金型の変形や損傷がなくなるとともに、前記打込み作業に伴う騒音がなくなる。
その上、金型に多数のベントホールを形成する孔あけ作業、前記打込み作業、及び金型表面(成形面)を平滑にするための研磨作業が不要になるため、金型の製造コストを低減できる。
【0034】
さらに、特許文献1のように、ベントホールの内径をベント金具の外径よりも僅かに大きくするとともに、ベント金具に接着剤を収容する周溝を形成し、ベント金具をベントホールに手作業で挿入して接着するものに対して、金型1の蒸気孔4,4,…が切削加工等によりスリット状に形成されているので、周溝を形成した特殊形状のベント金具の使用は不必要であり、前記ベント金具とのクリアランスが0.05mm〜0.1mmの範囲になるようにベントホールを形成する孔あけ加工も不要になるとともに、前記ベント金具の周溝への接着剤の塗布作業が不要であるため、金型の製造コストを低減できる。
さらにまた、特許文献2のように、通常のパンチング加工によって蒸気穴が穿設された一対の金型のキャビティ側の面に金属板を接合し、金属板に蒸気穴に連通する細溝状の蒸気スリットを形成するものに対して、金型1の蒸気孔4,4,…が切削加工等によりスリット状に形成されているので、多数の円形の蒸気孔が形成された金型に金属板を接合する必要がなく、金型に金属板を接合した後に金属板に蒸気スリットを形成する必要も無いことから、金型への円形の蒸気孔の孔あけ加工、金型への金属板の接合、並びに金型に接合された金属板への蒸気スリットの加工を行う必要が無いため、金型の製造コストを低減できる。
【0035】
また、前記従来の一般的なビーズ法発泡合成樹脂成形用金型、及び特許文献1のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型に対して、蒸気孔がスリット状であるので、成形品の表面に形成される蒸気孔の痕が目立たないため、成形品の表面性状の美麗化が図れる。
さらに、蒸気孔をスリット状にすることで、コアベントを必要としないので、金型へのベントホ−ルの穴明け作業が不要で、かつコアベントの打ち込みのために金型をたたくことがなく、金型を変形させる負荷がかからないことから、金型の肉厚を非常に薄くできる。よって、金型の熱容量が小さくなるため加熱冷却時間を短縮できるともに、金型の重量を小さくできる。
さらにまた、蒸気孔4,4,…がスリット状であるので、金型の曲面状部分に蒸気孔を形成しても金型の曲面状部分が面一になるため、金型の曲面状部分にも蒸気孔を形成できる。
【0036】
また、前記従来の一般的なビーズ法発泡合成樹脂成形用金型、特許文献1及び2のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型に対して、金型の成形空間と反対側の面に、冷却工程で散水された冷却水が滞留する窪みが無いか、あるいは、金型の取付けフランジ部及び/又は水が貯まっても自然に抜ける部位を除いて、金型の成形空間と反対側の面に、冷却工程で散水された冷却水が滞留する窪みが無いので、乾燥工程に掛かる時間を短縮できる。
さらに、前記従来の一般的なビーズ法発泡合成樹脂成形用金型、特許文献1及び2のビーズ法発泡合成樹脂成形用金型に対して、蒸気孔を金型の所要箇所に切削加工等によりスリット状に形成するので、成形空間内へ多量の蒸気を効率的に供給できるように蒸気孔開口率を高める必要がある場合においても、スリット状蒸気孔の長さ及び幅並びに隣接する前記蒸気孔の間隔の少なくとも一つを変更することにより、蒸気孔開口率を容易に高めることができる。