特許第6369620号(P6369620)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6369620-はんだ合金 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6369620
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】はんだ合金
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/26 20060101AFI20180730BHJP
   C22C 13/00 20060101ALI20180730BHJP
   C22C 13/02 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   B23K35/26 310A
   C22C13/00
   C22C13/02
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-255303(P2017-255303)
(22)【出願日】2017年12月31日
【審査請求日】2017年12月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180426
【弁理士】
【氏名又は名称】剱物 英貴
(72)【発明者】
【氏名】横山 貴大
(72)【発明者】
【氏名】吉川 俊策
【審査官】 静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−001482(JP,A)
【文献】 特開2011−041979(JP,A)
【文献】 特開2013−013916(JP,A)
【文献】 特開平09−122967(JP,A)
【文献】 特開2004−181485(JP,A)
【文献】 特開2005−046882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/00−35/40
C22C 13/00−13/02
B22D 11/00−11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、Cu:0.8〜10%、残部Snからなる合金組成を有するとともに金属間化合物を有するはんだ合金であって、前記はんだ合金の表面からの厚さが50μm以上の領域において、前記金属間化合物の最大結晶粒径が100μm以下であることを特徴とするはんだ合金。
【請求項2】
前記合金組成は、更に、質量%で、Ni:0.4%以下を含有する、請求項1に記載のはんだ合金。
【請求項3】
前記金属間化合物は、主として(Cu、Ni)Snである、請求項2に記載のはんだ合金。
【請求項4】
前記合金組成は、更に、質量%で、P:0.3%以下、Ge:0.3%以下、およびGa:0.3%以下の少なくとも1種を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のはんだ合金。
【請求項5】
前記合金組成は、更に、Bi、In、Sb、Zn、およびAgの少なくとも1種を合計で5%以下からなる群、ならびにMn、Cr、Co、Fe、Si、Al、Ti、および希土類元素の少なくとも1種を合計で1%以下からなる群、の少なくとも1群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のはんだ合金。
【請求項6】
下記(1)式を満たす、請求項1〜5のいずれか1項に記載のはんだ合金。
前記最大結晶粒径(μm)×前記はんだ合金に占める前記金属間化合物の面積率(%)≦3000(μm・%) ・・・(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造性に優れるはんだ合金、およびそのはんだ合金を有するはんだ継手に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板には電子部品が実装されている。電子部品の実装工程としては、フローソルダリング、ディップソルダリングなどがある。フローソルダリングは、はんだ槽の噴流面をプリント基板の接続面側に当てることによりはんだ付けを行う方法である。ディップソルダリングは、コイル部品などの端子をはんだ槽に浸漬して絶縁膜を除去するとともにはんだ予備めっきを施す方法である。
【0003】
フローソルダリングやディップソルダリングでははんだ槽が必要になる。はんだ槽は長時間大気中に曝されるため、はんだ槽に発生するドロスを一定時間毎に除去しなければならない。また、はんだ付けによりはんだ槽内の溶融はんだは消費されていく。このため、はんだ槽には定期的にはんだ合金が供給される。はんだ合金の供給には、一般に、棒はんだが用いられている。
【0004】
棒はんだの製造方法には固定鋳型に溶融はんだを流し込む方法や回転鋳型に溶融はんだを流し込む連続鋳造法がある。連続鋳造法は、原材料を溶融炉に投入して溶融させ、溶融炉中の溶融はんだを回転鋳型の溝に鋳込む方法である。連続鋳造法で用いる鋳型としては、例えば環状板の幅方向中央部に溝が設けられた形状が挙げられる。溶融はんだは、回転鋳型の溝に鋳込まれた後に凝固し、150℃程度の温度で鋳型から切断工程に誘導される。誘導された連続鋳造物は所定の長さに切断されて棒はんだとなる。
【0005】
はんだ合金の連続鋳造技術は、例えば特許文献1に記載されている。同文献には、Au−Sn系はんだ合金において、内部に冷却水が通水されている冷やし金を鋳型の外側に密着させ、280℃までの冷却速度を3℃/s以上、好ましくは20℃/s以上、より好ましくは50℃/s以上として、共晶部の組織を微細化することが記載されている。しかし、Auは高温Pbフリーはんだ合金として使用される場合があるものの、高価であるとともに加工し難い。
【0006】
そこで、棒はんだには、主にSn−Cu系はんだ合金が用いられている。Sn−Cuはんだ合金は、はんだ合金中に金属間化合物を形成することが知られている。この合金を連続鋳造法で製造すると、溶融はんだの凝固時に粗大な脆い金属間化合物が生成されることがある。粗大な金属間化合物が生成されると、その生成箇所ではんだ合金が割れてしまい、連続鋳造物が形成できない不具合が発生することがある。また、連続鋳造物を形成することができたとしても、運搬時に破損するおそれがある。はんだ合金で形成された接合部の破損を抑制する観点から、特許文献2には、Sn−Cu−Ni合金を低温ろう材として用い、配管の接合箇所にフラックスを塗布しておき、溶融状態のろう材に浸漬して引き上げた後、徐冷して、凝固することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017−196647号公報
【特許文献2】国際公開第2014−084242号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】橋本康孝ら、鉛フリーはんだの粘度測定の現状および今後の課題、日本金属学会誌、J−STAGE 早期公開 レビュー、2017年3月27日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に記載の発明では、低融点で使いやすい合金を提供することを目的とし、Cu含有量が0.3〜41.4%の範囲を許容するものである。しかし、同文献に記載のように、Cu含有量が41.4%での液相線温度は640℃であり、しかも徐冷して凝固させるため、合金層中に粗大な金属間化合物が析出してしまう。このため、特許文献2に記載の発明では連続鋳造物の製造に適さない。
【0010】
特許文献2に記載の発明を用いて連続鋳造物を製造すると、連続鋳造物に割れや破損が発生することがある。連続鋳造物に割れや破損が発生すると、連続鋳造工程を中断し、破損した鋳造物を鋳型から取り出した後に鋳造工程が再開することになるため、作業工程が煩雑になる。
【0011】
さらに、工程の手間や工程時間の短縮による低コスト化は常に追求されなければならないことから、近年ではより長い連続鋳造物の製造が望まれている。このため、連続鋳造時における連続鋳造物の破損は、従来よりも大きな問題になりつつある。
【0012】
これに加えて、溶融はんだの粘性は合金組成により大きく異なり、組成によっては溶融はんだが鋳型に鋳込まれてから回転鋳型の溝内で流れ難いものがある。このため、連続鋳造物が厚くなるために鋳型をいくら冷却しても粗大な金属間化合物が生成され、連続鋳造物の破損を招くことがある。したがって、特許文献2に記載のSn−Cu系はんだ合金を特許文献1に適用したとしても、連続鋳造物の破損が生じうる。
【0013】
本発明の課題は、連続鋳造性に優れるはんだ合金、およびそのはんだ合金を有するはんだ継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者らは、特許文献2に記載の合金を連続鋳造物として製造する場合の課題について再検討を行った。特許文献2では、接合時に、ろう材を徐冷することで、はんだ合金が破損しないようにしている。例えば特許文献2に記載のように徐冷を行うと、はんだ合金の内部に粗大な金属間化合物が生成する。この粗大な金属間化合物が生成する箇所では、凝固時において割れが発生したり、はんだ合金の切断時に破損する。これは、特に、Cu含有量が0.8%以上である過共晶において顕著である。
【0015】
そこで、本発明者は、特許文献2に記載のように接合時の冷却に着目するのではなく、連続鋳造物の製造時における冷却に着目した。具体的には、Cuが0.8%以上のSn−Cuはんだ合金を用いた連続鋳造において、特許文献1に記載のように鋳型を冷却しながら鋳造したところ、はんだ合金の内部に生成した金属間化合物が粗大になることを確認した。また、非特許文献1では、Cu含有量が多いほど溶融はんだの粘度が増加する報告がなされている。この文献には、Cu含有量が0.7%から7.6%に増加した場合、同じ温度での粘度は1.5倍程度上昇していることが報告されている。そこで、種々のCu含有量にて鋳造を行ったところ、Cu含有量が多いほど鋳型内での溶融はんだの流動性が低下し、板厚が厚くなるとともに凝固時に割れが発生する頻度が上がる知見が得られた。
【0016】
ここで、Cu含有量の増加に伴う溶融はんだの流動性の低下を補うため、回転鋳型を傾け、鋳込まれた溶融はんだが上流から下流に流れ下るようにすることが挙げられる。ただ、回転鋳型を傾けると連続鋳造物の断面形状が鋳型の溝の形状から大きく異なる形状になるため、所望の連続鋳造物を得ることができない。また、回転鋳型の傾斜角度が大きすぎると、溶融はんだが回転鋳型の曲部に差しかかる時に溝からはみ出すおそれがある。このため、連続鋳造法を用いる場合には、回転鋳型は水平状態を維持しなければならない。
【0017】
本発明者らは、粘度が高い合金組成を有する溶融はんだを、回転鋳型が水平状態を維持した状態で鋳型に鋳込んでも、十分に鋳型内で流動させて凝固時の割れや破損を防ぐために更なる検討を重ねた。従来では、連続鋳造物の割れや破損は回転鋳型の振動により誘発されると考えられていたが、敢えて、鋳型に鋳込まれた溶融はんだに超音波等の微振動を印加してみたところ、予想外にも、鋳型内での溶融はんだの流動性が向上するとともに金属間化合物の最大結晶粒径が小さくなる知見を得た。これにより、凝固時の割れや破損がほとんどなく、良好な品質を有する連続鋳造物を製造することができ、本発明が完成した。
【0018】
これらの知見により完成された本発明は次の通りである。
(1)質量%で、Cu:0.8〜10%、残部Snからなる合金組成を有するとともに金属間化合物を有するはんだ合金であって、前記はんだ合金の表面からの厚さが50μm以上の領域において、金属間化合物の最大結晶粒径が100μm以下であることを特徴とするはんだ合金。
【0019】
(2)合金組成は、更に、質量%で、Ni:0.4%以下を含有する、上記(1)に記載のはんだ合金。
(3)金属間化合物は、主として(Cu、Ni)Snである、上記(2)に記載のはんだ合金。
(4)合金組成は、更に、質量%で、P:0.3%以下、Ge:0.3%以下、およびGa:0.3%以下の少なくとも1種を含有する、上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のはんだ合金。
(5)合金組成は、更に、Bi、In、Sb、Zn、およびAgの少なくとも1種を合計で5%以下からなる群、ならびにMn、Cr、Co、Fe、Si、Al、Ti、および希土類元素の少なくとも1種を合計で1%以下からなる群、の少なくとも1群から選択される少なくとも1種を含有する、上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のはんだ合金。
【0020】
(6)下記(1)式を満たす、上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のはんだ合金。
最大結晶粒径(μm)×はんだ合金に占める金属間化合物の面積率(%)≦3000(μm・%) ・・・(1
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施例7のはんだ合金の断面画像である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を以下により詳しく説明する。本明細書において、はんだ合金組成に関する「%」は、特に指定しない限り「質量%」である。
1.はんだ合金の合金組成
(1)Cu:0.8〜10%
本発明のはんだ合金は、粗大なCuSn金属間化合物が生成されやすい過共晶合金の場合における課題を解決することができる。Cu含有量が0.7%未満の場合には亜共晶となるために凝固時の初晶はSnであるが、Cu含有量が0.7%を超える場合には過共晶なるため凝固時の初晶はSnCu化合物となる。初晶がSnCu化合物の場合に、溶融はんだの鋳型内での流動性が劣化する。ただ、Cu含有量が0.7%をわずかに上回る程度では製造条件によらず鋳造時での金属間化合物の影響はほとんどない。Cu含有量が多いほど本発明の効果が発揮され易くなるため、Cu含有量の下限は0.8%以上であり、好ましくは1.0%以上であり、より好ましくは4.0%以上である。
【0023】
一方、Cu含有量が10%を超えると液相線温度が高くなるために作業性が悪化する。また、Cu含有量が10%を超えると金属間化合物の面積率が大きくなり過ぎる。さらに、溶融はんだの粘度が増加して鋳型内での流動性が悪化するため、粗大な金属間化合物が生成される。これらにより、凝固時に割れ等が発生する。Cu含有量の上限は10%以下であり、好ましくは8%以下であり、より好ましくは7%以下である。
【0024】
(2)Ni:0.4%以下
Niは、SnCu金属間化合物の結晶粒径を制御することができる任意元素である。Sn−Cuはんだ合金がNiを含有すると、NiがCuSn中に均一に分散して金属間化合物の粒径を微細にし、連続鋳造物の破損を抑制することができる。Ni含有量が0.4%以下であると、液相線温度の上昇が許容範囲内となるために良好な作業性を保つことができる。Ni含有量の上限は、好ましくは0.2%以下であり、より好ましくは0.15%である。一方、Niを含有する効果を発揮させるため、Ni含有量の下限は好ましくは0.03%以上であり、より好ましくは0.1%以上である。
【0025】
また、Niを含有する場合の本発明における金属間化合物は、好ましくは、主として(Cu、Ni)Snである。「主として(Cu、Ni)Snである」とは、はんだ合金の断面を観察した時に、金属間化合物の総面積に対する(Cu、Ni)Snの面積の比が0.5以上であることを表す。
【0026】
(3)P:0.3%以下、Ge:0.3%以下、およびGa:0.3%以下の少なくとも1種
これらの元素は、はんだ合金の酸化を抑制するとともに溶融はんだの流動性を向上させることができる任意元素である。含有量の上限が0.3%以下であると、液相線温度の上昇を抑えることができるため、凝固までの時間が短縮して合金組織の粗大化を抑制することができる。P含有量の上限は、好ましくは0.3%以下であり、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.025%以下である。Ge含有量およびGa含有量の上限は、各々、好ましくは0.3%以下であり、より好ましくは0.15%以下である。一方、これらの元素を含有する効果を発揮させるため、各元素の含有量の下限は好ましくは0.005%以上であり、より好ましくは0.01%以上である。
【0027】
(4)Bi、In、Sb、Zn、およびAgの少なくとも1種を合計で5%以下からなる群、ならびにMn、Cr、Co、Fe、Si、Al、Ti、および希土類元素の少なくとも1種を合計で1%以下からなる群、の少なくとも1群から選択される少なくとも1種
これらの元素は、Bi、In、Sb、Zn、およびAgの少なくとも1種では合計で5%以下、Mn、Cr、Co、Fe、Si、Al、Ti、および希土類元素の少なくとも1種では合計で1%以下、であれば、本発明に係るはんだ合金の連続鋳造性に影響を及ぼすことがない。本発明において希土類元素とは、周期律表において第3族に属するSc、Yと原子番号57〜71に該当するランタン族の15個の元素を合わせた17種の元素のことである。
【0028】
本発明では、Bi、In、Sb、Zn、Ag、Mn、Cr、Co、Fe、Si、Al、Ti、および希土類元素の少なくとも1種を含有してもよい。各々の元素の含有量は、好ましくは、Bi、In、Sb、Zn、およびAgの少なくとも1種では合計で5%以下、Mn、Cr、Co、Fe、Si、Al、Ti、および希土類元素の少なくとも1種では合計で1%以下である。より好ましくは、Bi、In、Sb、Zn、およびAgの少なくとも1種では合計で1%以下、Mn、Cr、Co、Fe、Si、Al、Ti、および希土類元素の少なくとも1種では合計で0.5%以下である。
【0029】
(5)残部:Sn
本発明に係るはんだ合金の残部はSnである。前述の元素の他に不可避的不純物を含有してもよい。不可避的不純物を含有する場合であっても、前述の効果に影響することはない。また、後述するように、本発明では含有しない元素が不可避的不純物として含有されても前述の効果に影響することはない。
【0030】
(6)合金組織
本発明に係るはんだ合金は、はんだ合金の表面からの厚さが50μm以上の領域において、金属間化合物の最大結晶粒径が100μm以下である。
【0031】
Sn−Cuはんだ合金に関して、従来では、はんだ合金と電極との接合界面の結晶粒径にのみ着目していたので、接合前の鋳造物自体の結晶粒径に関する報告はなかった。また、従来の接合界面での検討では接合対象である基板や電子部品等への影響を考慮した製造条件にしなければならなかったため、冷却速度を上げることができなかった。
これに対し、本発明では、Sn−Cuはんだ合金に関して、はんだ接合前の連続鋳造により製造した連続鋳造物であるはんだ合金の合金組織に敢えて着目することによって、初めて連続鋳造時の課題を解決できたのである。
【0032】
連続鋳造時の破損は、はんだ合金の表面近傍のみが微細な組織になったとしても抑制できない。また、脆くて粗大な金属間化合物が凝固時に多く生成すると、はんだ合金のバルクを形成することができない。このような金属間化合物が内部に存在すると、内部で大きなクラックが発生するため、表面近傍の微細組織により表面にクラックが現れずに外観上破損が認識できない場合であっても、連続鋳造の後工程で連続鋳造物が破損してしまうおそれがある。さらに、仮にはんだ合金内部の平均結晶粒径が規定されていたとしても、粗大な金属間化合物が1つでも存在すれば、はんだ合金の破損に繋がる。そこで、本発明に係るはんだ合金は、はんだ合金内部での最大結晶粒径を規定し、その最大結晶粒径が小さいため、連続鋳造時において破損を抑制することができるのである。
【0033】
本発明の最大結晶粒径は以下のように規定される。鋳造物の断面画像を観察して金属間化合物を同定し、目視にて最大の結晶粒を選択する。その結晶粒について、間隔が最大となるように平行な2本の接線を引き、その間隔を最大結晶粒径とする。
最大結晶粒径が小さいほど連続鋳造性に優れることから、最大結晶粒径の上限は100μm以下であり、好ましくは80μm以下であり、特に好ましくは50μm以下である。
【0034】
金属間化合物は構成元素に応じて生成される。本発明において、Sn、Cu、およびNiを含有する合金組成での金属間化合物は、前述のように、主として(Cu、Ni)Snである。
また、本発明では、脆い金属間化合物の存在量を低減して破損を抑制する観点から、はんだ合金に占める金属間化合物の面積率は40%以下であることが好ましい。
【0035】
さらに、Sn−Cuはんだ合金では、脆い金属化合物の面積率が少なくても粗大な金属間化合物が存在すれば破損のおそれがある。また、結晶粒径が小さい場合であっても、脆い金属間化合物の存在量が多すぎることも好ましくない。そこで、本発明に係るはんだ合金では、両者のバランスを考慮した下記(1)式を満たすことが好ましい。
最大結晶粒径(μm)×はんだ合金に占める金属間化合物の面積率(%)≦3000(μm・%) ・・・(1)
「はんだ合金に占める金属間化合物の面積率」とは、はんだ合金を切断した切断面の面積と、その切断面に存在する金属間化合物の面積との比率(%)を表す。上記(1)式の右辺は、より好ましくは2500μm・%であり、さらに好ましくは1500μm・%である。
【0036】
2.はんだ継手
んだ継手は、例えば、半導体パッケージにおけるICチップとその基板(インターポーザ)との接続、或いは半導体パッケージとプリント配線板との接続に使用される。ここで、「はんだ継手」とは電極の接続部をいう。
【0037】
3.はんだ合金の製造方法
本発明に係るはんだ合金の製造方法は、例えば、連続鋳造法にて製造される。連続鋳造法は、まず、所定の合金組成となるように原材料を溶融炉に投入し350〜500℃程度に加熱して原材料を溶融する。
【0038】
原材料がすべて溶融した後、溶融炉中の溶融はんだを回転鋳型に連続的に鋳込む。
回転鋳型は、例えば環状板の幅方向中央部に溝が設けられた形状である。溶融はんだを鋳込む際には、回転鋳型を回転させながら溶融はんだが鋳型の溝に鋳込まれる。鋳型への溶融はんだの供給量は、鋳型の回転数および鋳型内の溶融はんだに印加される超音波等の微振動の周波数に応じて適宜調整する。例えば、超音波を印加する場合には、超音波振動装置を回転鋳型の側面に付設して行う。本発明において、溶融はんだに印加される超音波の周波数は特に限定されないが、例えば10kHz以上であればよい。
【0039】
本発明では、回転鋳型に超音波装置を付設し、溶融はんだに超音波を印加することによって、上述のように、微細組織が得られる。また本発明のはんだ合金の組成では、金属間化合物の面積率が高すぎることもなく、最大結晶粒径とのバランスがとれている。この詳細は不明だが、以下のように推察される。Sn−Cuはんだ合金は、凝固時に初晶としてSnCu化合物が生成し、偏析によりCu量が高くなりすぎる箇所が発生し、粗大なSnCu化合物が形成されることがある。そこで、超音波等の微振動の印加によりSnCu化合物の偏析が抑制され、粗大なSnCu化合物の生成を抑制することができる。
【0040】
鋳型に鋳込まれた溶融はんだは150℃程度まで10〜50℃/s程度の冷却速度で冷却される。この冷却速度を得るためには、回転鋳型の底を冷却水に浸漬させたり、チラーなどを用いて鋳型内に冷却水を循環させる。
【0041】
冷却後のはんだ合金は、ガイドを介して鋳型の外部に誘導され、所定の長さに切断される。ガイドに到達したはんだ合金は80〜200℃程度に冷却されている。本発明のはんだ合金は、内部まで金属間化合物が微細であるため、従来発生しうるガイド接触時等の破損を抑制することができる。
【0042】
切断後のはんだ合金は棒はんだなどの形態で出荷される。本発明のはんだ合金では、輸送時での衝撃で破損することがない。
【実施例】
【0043】
(1)評価試料の作製
本発明の効果を立証するため、下記により棒はんだを作製して評価した。溶融炉に原材料を秤量し、溶融炉の設定温度を450℃として溶融した後、水を循環させた回転鋳型の溝に溶融はんだを鋳込んだ。冷却速度は概ね30℃/sであった。そして、回転鋳型に超音波発振器を付設し、溶融はんだを鋳込む際に60kHzの超音波を印加した。
その後、回転鋳型からガイドにより連続鋳造物を回転鋳型の外部に誘導した。そして、適当な長さに切断し、幅:10mm、長さ:300mmの棒はんだを含めて計10m分の棒はんだを作製した。以下に評価方法を説明する。
【0044】
(2)評価方法
(2−1)金属間化合物(IMC)の面積率
作製した棒はんだの長手方向の中心部を切断し、走査型電子顕微鏡SEM(倍率:250倍)を用いて組成像の画像を撮影した。得られた画像を解析して金属間化合物を同定した。金属間化合物は濃い灰色を呈するため、その色調から金属間化合物を判断した。濃い灰色を呈する金属間化合物の面積の画像領域に占める割合を面積率として導出した。面積率が20%以下を「◎」とし、20%超え40%以下を「○」として、40%超えを「×」とした。「◎」および「○」であれば実用上問題ない。本評価では、250倍で撮影した画像領域の面積をはんだ合金の断面積であると想定し、濃い灰色部分の総面積を断面における全金属間化合物の面積であると想定することができる。
【0045】
(2−2)最大結晶粒径
得られた画像から同定された金属間化合物の中で、目視にて最大の結晶粒を選択する。その結晶粒について、間隔が最大となるように平行な2本の接線を引き、その間隔を最大結晶粒径とした。最大結晶粒径が100μm以下を「○」とし、100μm超えを「×」とした。
【0046】
(2−3)(1)式
上記(2−1)および(2−2)から得られた結果を乗じた値が3000(μm・%)以下を「○」とし、3000(μm・%)超えを「×」とした。
【0047】
(2−4)棒はんだの破損
棒はんだの破損は、凝固後から切断までの棒はんだを目視にて確認した。棒はんだに欠け、破損、崩れ等が発生していなければ「○」とし、少しでも欠け、破損、崩れ等が発生していれば「×」とした。
【0048】
室温での棒はんだの破損は、輸送時を想定し、幅:10mm、長さ:300mmの棒はんだの6面を評価面とし、棒はんだを1mの高さから各評価面を下に向けてコンクリート面に手動で自由落下させ(計6回)、目視にて確認した。上記の「1mの高さ」とは、棒はんだの評価面の、コンクリート面からの高さを表す。本落下試験により、棒はんだに新たな欠け、割れ等が発生していなければ「○」とし、新たな欠け、割れ等が発生していれば「×」とした。
以下に評価結果を示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1の結果から明らかなように、本発明に即した実施例はいずれも連続鋳造時にはんだ合金が破損等することなく、鋳造物を連続して鋳造することができることがわかった。また、室温まで冷却した後の落下試験においても、棒はんだの破損が見られなかった。
【0051】
一方、比較例1および比較例2では、Cu含有量が多すぎるため、金属間化合物が粗大になり、凝固後から切断まで破損を確認した。また、室温での落下試験において、さらに欠けや割れが発生した。
【0052】
比較例3および6では、鋳型に鋳込まれた溶融はんだに超音波を印加しなかったため、凝固後から切断までで破損が見られ、室温での落下試験において新たな欠けや割れが見られた。
【0053】
比較例4,5および7では、鋳型に鋳込まれた溶融はんだに超音波を印加しなかったため、凝固後から切断までで破損が見られたが、Cu含有量が比較的少ないため室温での落下試験において新たな欠けや割れは見られなかった。
【0054】
さらに、比較例1〜7では破損等に加えて、一本の棒はんだにおいて、バリの発生や厚さのばらつが見られ、実施例のようにバリがなく厚さが一定である安定した棒はんだを製造することができなかった。
【0055】
表1に示す実施例と比較例について、断面のSEM画像を観察した結果を示す。図1は、実施例7のはんだ合金の断面画像である。この画像から明らかなように、超音波を印加した実施例7は最大結晶粒径が100μm以下であることが明らかになった。また、実施例7の面積率は15%であることが確認できており、(1)式を満たすことも明らかになった。
【要約】
【課題】連続鋳造性に優れるはんだ合金、およびそのはんだ合金を有するはんだ継手を提供する
【解決手段】本発明に係るはんだ合金は、質量%で、Cu:0.8〜10%、残部Snからなる合金組成を有するとともに金属間化合物を有するはんだ合金であって、はんだ合金の表面からの厚さが50μm以上の領域において、金属間化合物の最大結晶粒径が100μm以下である。
【選択図】図1
図1