特許第6369621号(P6369621)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6369621
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】遠心圧縮機および過給機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/44 20060101AFI20180730BHJP
   F04D 17/10 20060101ALI20180730BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20180730BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   F04D29/44 Y
   F04D17/10
   F04D29/44 P
   F04D29/66 N
   F02B39/00 G
   F04D29/66 H
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-500301(P2017-500301)
(86)(22)【出願日】2015年12月18日
(86)【国際出願番号】JP2015085451
(87)【国際公開番号】WO2016132644
(87)【国際公開日】20160825
【審査請求日】2017年3月15日
(31)【優先権主張番号】特願2015-29784(P2015-29784)
(32)【優先日】2015年2月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】別所 保孝
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−128298(JP,U)
【文献】 実開平04−017198(JP,U)
【文献】 特公昭46−042817(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/44
F02B 39/00
F04D 17/10
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に吸気路を有するハウジングと、
前記吸気路内に収容されたインペラと、
前記吸気路の内壁に形成され、前記インペラの回転方向に延在する偏流溝と
を備え、
前記偏流溝を形成する溝壁と前記吸気路の内壁とが連続的に接続する境界部は、吸気の流通方向の上流側に位置する上流側境界部と、前記流通方向の下流側に位置する下流側境界部とを含み、
前記上流側境界部は、前記下流側境界部よりも、前記インペラの径方向において内側に位置し、
前記偏流溝の前記下流側境界部は、前記流通方向において前記インペラよりも上流側に位置する遠心圧縮機。
【請求項2】
前記上流側境界部における、前記偏流溝の前記溝壁及び前記溝壁の接線方向のうちの何れかと、前記吸気路の内壁及び前記内壁の接線方向のうちの何れかとの成す角は、90度以下である請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記下流側境界部における、前記偏流溝の前記溝壁及び前記溝壁の接線方向のうちの何れかと、前記吸気路の内壁及び前記内壁の接線方向のうちの何れかとの成す角は、90度以上である請求項1または2に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
前記偏流溝は、前記上流側境界部から前記インペラの径方向と平行に延在する上流溝壁部と、前記上流溝壁部から前記下流側境界部まで延在するとともに、前記上流溝壁部に鋭角に接続する下流溝壁部と、を備える請求項1から3のうちの何れか1項に記載の遠心圧縮機。
【請求項5】
前記請求項1から4のうちの何れか1項に記載の遠心圧縮機を備える過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インペラの回転によって吸気を圧縮する遠心圧縮機および過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一端にタービンインペラが設けられ他端にコンプレッサインペラが設けられたシャフトが、ベアリングハウジングに回転自在に支持された過給機が知られている。こうした過給機をエンジンに接続し、エンジンから排出される排気ガスによってタービンインペラを回転させるとともに、このタービンインペラの回転によって、シャフトを介してコンプレッサインペラを回転させる。こうして、過給機は、コンプレッサインペラの回転に伴い空気を圧縮してエンジンに送出する。
【0003】
過給機のコンプレッサインペラ側は、所謂遠心圧縮機として機能している。一般的に、遠心圧縮機では、吸気流量が小さい領域でサージングが生じる。サージングは、コンプレッサインペラで圧縮された高圧の吸気(気体)が、低圧側であるコンプレッサインペラの上流側に逆流することによって生じる現象であり、この現象は遠心圧縮機の運転を不安定にする。そこで、特許文献1に記載の遠心圧縮機は、インペラを収容するハウジングの内壁に形成される溝(特許文献1では「環状凹溝」)を有している。この溝は、コンプレッサインペラの周方向に延伸する環状に形成され、当該コンプレッサインペラにおける翼の前縁をまたぐように位置している。吸気流量が小さい領域で逆流した吸気は、環状凹溝に到達すると、環状凹溝に沿って流れることで、逆流から順流に流れの向きを変える。これにより、吸気の逆流による影響が小さくなり、サージングの発生が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−18600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1のように、ハウジングの内壁に溝を形成することで吸気の逆流の影響を抑制することができる。しかし、溝内の気体の流れは損失となるため、この損失の抑制が可能となる技術の開発が希求されている。
【0006】
本願の目的は、吸気の逆流による圧力損失を低減することが可能な遠心圧縮機および過給機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は遠心圧縮機であって、内部に吸気路を有するハウジングと、吸気路内に収容されたインペラと、吸気路の内壁に形成され、インペラの回転方向に延在する偏流溝とを備え、偏流溝を形成する溝壁と吸気路の内壁とが連続的に接続する境界部は、吸気の流通方向の上流側に位置する上流側境界部と、流通方向の下流側に位置する下流側境界部とを含み、上流側境界部は、下流側境界部よりも、インペラの径方向において内側に位置し、前記偏流溝は、流通方向においてインペラよりも上流側に位置することを要旨とする。
【0008】
上流側境界部における、偏流溝の溝壁及び溝壁の接線方向のうちの何れかと、吸気路の内壁及び内壁の接線方向のうちの何れかとの成す角は、90度以下であってもよい。
【0009】
下流側境界部における、偏流溝の溝壁及び溝壁の接線方向のうちの何れかと、吸気路の内壁及び内壁の接線方向のうちの何れかとの成す角は、90度以上であってもよい。
【0010】
偏流溝は、上流側境界部からインペラの径方向と平行に延在する上流溝壁部と、上流溝壁部から下流側境界部まで延在するとともに、上流溝壁部に鋭角に接続する下流溝壁部と、を備えてもよい。
【0011】
上記課題を解決するために、本開示の過給機は、上記遠心圧縮機を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、吸気の逆流による圧力損失を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の実施形態に係る過給機の概略断面図である。
図2図2は、図1の破線部分の抽出図である。
図3図3は、図2の二点鎖線部分の抽出図である。
図4図4(a)〜図4(c)は、本実施形態の第1〜第3変形例を説明するための図である。
図5図5(a)〜図5(c)は、本実施形態の第4〜第6変形例を説明するための図である。
図6図6は、本実施形態の第7変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、本開示内容の理解を容易とするための例示にすぎない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本実施形態に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、過給機Cの概略断面図である。以下では、図に示す矢印Lを過給機Cの左側を示す方向とし、矢印Rを過給機Cの右側を示す方向として説明する。図1に示すように、過給機Cは、過給機本体1を備えている。過給機本体1は、ベアリングハウジング2(ハウジング)と、ベアリングハウジング2の左側に締結ボルト3によって連結されるタービンハウジング4と、ベアリングハウジング2の右側に締結ボルト5によって連結されるコンプレッサハウジング6(ハウジング)と、を有する。これらは一体化されている。
【0016】
ベアリングハウジング2には、過給機Cの左右方向に貫通する軸受孔2aが形成されている。この軸受孔2aには軸受7が収容される。軸受7は、シャフト8を回転自在に支持する。シャフト8の左端部にはタービンインペラ9が一体的に固定されており、このタービンインペラ9がタービンハウジング4内に回転自在に収容されている。また、シャフト8の右端部にはコンプレッサインペラ(インペラ)10が一体的に固定されており、このコンプレッサインペラ10がコンプレッサハウジング6内に回転自在に収容されている。
【0017】
コンプレッサハウジング6には吸気口11が形成されている。吸気口11は、過給機Cの右側に開口し、エアクリーナ(図示せず)に接続する。また、締結ボルト5によってベアリングハウジング2とコンプレッサハウジング6とが連結された状態では、これら両ハウジング2、6の、互いの対向面が、気体(例えば空気)を昇圧するディフューザ流路12を形成する。ディフューザ流路12は、シャフト8の径方向内側から外側に向けて環状に形成されている。ディフューザ流路12は、上記の径方向内側において、コンプレッサインペラ10を介して吸気口11に連通している。
【0018】
また、コンプレッサハウジング6にはコンプレッサスクロール流路13が設けられている。コンプレッサスクロール流路13は環状に形成され、ディフューザ流路12よりもシャフト8の径方向外側に位置する。コンプレッサスクロール流路13は、エンジンの吸気口(図示せず)に連通している。また、コンプレッサスクロール流路13は、ディフューザ流路12にも連通している。したがって、コンプレッサインペラ10が回転すると、気体が吸気口11からコンプレッサハウジング6内に吸い込まれ、コンプレッサインペラ10の翼間を流通する過程において増速増圧され、ディフューザ流路12およびコンプレッサスクロール流路13で昇圧(圧力回復)されてエンジンに導かれる。
【0019】
タービンハウジング4には吐出口14が形成されている。吐出口14は、過給機Cの左側に開口し、排気ガス浄化装置(図示せず)に接続する。また、タービンハウジング4には、流路15と、この流路15よりもシャフト8の径方向外側に位置する環状のタービンスクロール流路16とが設けられている。タービンスクロール流路16は、エンジンの排気マニホールド(図示せず)から排出される排気ガスが導かれるガス流入口(図示せず)に連通する。また、タービンスクロール流路16は、流路15にも連通している。したがって、排気ガスは、ガス流入口からタービンスクロール流路16に導かれ、流路15およびタービンインペラ9を介して吐出口14に導かれる。この流通過程において、排気ガスはタービンインペラ9を回転させる。タービンインペラ9の回転力は、シャフト8を介してコンプレッサインペラ10に伝達され、これによりコンプレッサインペラ10は回転する。気体は、コンプレッサインペラ10の回転力によって昇圧され、エンジンに導かれる。
【0020】
このように、過給機Cのうち、コンプレッサハウジング6側の構成要素は、コンプレッサインペラ10の回転によって、吸気口11からディフューザ流路12に導かれる吸気(気体)を圧縮する遠心圧縮機CCとして機能する。
【0021】
図2は、図1の破線部分の抽出図である。図2に示すように、吸気路17は、吸気口11からディフューザ流路12まで連通する気体の流路である。吸気路17は、吸気口11から流入した吸気をディフューザ流路12まで導く。コンプレッサインペラ10は、吸気路17内に収容されている。
【0022】
吸気路17の内壁17aには、偏流溝18が形成されている。偏流溝18は、コンプレッサインペラ10の回転方向に延在する環状の溝である。偏流溝18は、コンプレッサインペラ10の軸方向において、コンプレッサインペラ10よりも吸気口11側に配される。換言すれば、偏流溝18は、吸気の流通方向(吸気口11からコンプレッサインペラ10に向かう方向)においてコンプレッサインペラ10よりも上流側に位置する。詳細には、偏流溝18における端部18a(図2における左側の端部)は、コンプレッサインペラ10の吸気口11側の端部10aよりも吸気口11側に位置している。
【0023】
図3は、図2の二点鎖線部分の抽出図である。図3に示すように、偏流溝18を形成する溝壁18bと吸気路17の内壁17aとが連続的に接続する境界部は、吸気の流通方向の上流側(図3中、右側)に位置する上流側境界部19と、吸気の流通方向の下流側(図3中、左側)に位置する下流側境界部20とを含んでいる。換言すれば、境界部は、溝壁18bと吸気路17の内壁17aとが互いに接続によって形成される。また、上流側境界部19は、下流側境界部20よりも、コンプレッサインペラ10の径方向において内側(図3中、下側)に位置する。
【0024】
図3は、例えば、コンプレッサインペラ10の回転軸を含む平断面を示している。この図に示すように、上流側境界部19および下流側境界部20は、曲面形状を有する。
【0025】
上流側境界部19において、溝壁18bの接線方向と吸気路17の内壁17aの接線方向との成す角αは、90度以下となっている。
【0026】
下流側境界部20において、溝壁18bの接線方向と、吸気路17の内壁17aの接線方向との成す角βは、90度以上となっている。
【0027】
偏流溝18の溝壁18bは、上流溝壁部18cと、下流溝壁部18dとを含んでいる。上流溝壁部18cは、上流側境界部19からコンプレッサインペラ10の径方向と平行に延在する部位である。下流溝壁部18dは、下流側境界部20から上流溝壁部18cまで延在する部位である。図3に示すように、上流溝壁部18cおよび下流溝壁部18dの境界部21は、曲面形状を有する。境界部21において、上流溝壁部18cおよび下流溝壁部18dそれぞれの接線方向の成す角γが、鋭角となっている。
【0028】
気体は、吸気口11から吸気路17に流入し、ディフューザ流路12に向かって流れる。う即ち、図3中の白抜き矢印で示すように、気体は左側に向かって流れる。このとき、過給機Cの吸気流量が小さい領域では、一点鎖線の矢印で示すように、吸気路17の内壁17a近傍において、コンプレッサインペラ10で圧縮された高圧の吸気の一部が、低圧側であるコンプレッサインペラ10の上流側に逆流する。
【0029】
このように逆流した吸気は、遠心力により吸気路17の内壁17aから偏流溝18の溝壁18bに沿って流れる。具体的には、偏流溝18の内部で、下流溝壁部18dから上流溝壁部18cに向かって逆流した吸気が流れることで、流れの向きが変化(偏向)し、吸気の主流に合流する。
【0030】
本実施形態の偏流溝18では、径方向内側に突出した上流溝壁部18cが、逆流の「返し(リフレクタ)」として機能し、吸気の主流との合流による干渉(混合損失)を低減する。そのため、吸気の逆流による損失を低減することができる。
【0031】
また、コンプレッサインペラ10側(吸気の逆流方向における上流側)では、インペラの遠心力による影響が大きいため、逆流する吸気の流れは複雑で安定していない。一方、コンプレッサインペラ10よりも下流側まで吸気が逆流すると、吸気の流れが安定する。偏流溝18は、コンプレッサインペラ10の軸方向において、コンプレッサインペラ10よりも吸気口11側に配されているので、偏流溝18に流入した流れによる壁面との摩擦抵抗が抑えられる。その結果、圧力損失の低減効果が向上する。
【0032】
図4(a)〜図4(c)は、第1〜第3変形例を説明するための図である。図4(a)に示すように、第1変形例に係る偏流溝28では、上述した実施形態と同様、角αが鋭角となっている。一方、角βは、鋭角となっている。
【0033】
図4(b)に示すように、第2変形例に係る偏流溝38では、角αが90度以下であって、角βが直角となっている。
【0034】
図4(c)に示すように、第3変形例に係る偏流溝48では、上述した実施形態と同様に、角αが90度以下であり、角βが90度以上である。しかしながら、偏流溝48の溝壁48bは、図4に示すように曲面形状を有している。
【0035】
図5(a)〜図5(c)は、第4〜第6変形例を説明するための図である。図5(a)に示すように、第4変形例に係る偏流溝58では、角αが90度以下であり、角βは直角であり、角γは鋭角となっている。また、上流溝壁部58cは、コンプレッサインペラ10の径方向に対して傾斜し、下流溝壁部58dが、コンプレッサインペラ10の径方向と平行である。
【0036】
図5(b)に示すように、第5変形例に係る偏流溝68では、上述した実施形態と同様に、角αが90度以下であり、角βが90度以上である。しかしながら、上述した実施形態と異なり、上流溝壁部68cと下流溝壁部68dの間に、コンプレッサインペラ10の回転軸方向に延在する底面68eが形成されている。
【0037】
図5(c)に示すように、第6変形例に係る偏流溝78では、角αが90度以下であり、角βが90度以上である。そして、上流溝壁部78cが、コンプレッサインペラ10の径方向と平行である。
【0038】
このように、上流側境界部19が下流側境界部20よりも、コンプレッサインペラ10の径方向の内側に位置している限り、本開示に係る偏流溝の形状は様々な変形が可能である。つまり、上述した条件を満たすかぎり、偏流溝の形状は図示したものに限られない。
【0039】
例えば、上述した実施形態では、上流側境界部19、下流側境界部20、および、上流溝壁部18cおよび下流溝壁部18dの境界部21は、図3に示すように曲面形状を有している。しかし、上流側境界部19における、上流溝壁部18cおよび吸気路17の内壁17aのいずれか一方が、図3に示す断面において曲線で示される形状を有し、いずれか他方が直線で示される形状を有していてもよい。あるいは、双方が、図3に示す断面において直線で示される形状を有していてもよい。
【0040】
同様に、下流側境界部20における、下流溝壁部18dおよび吸気路17の内壁17aのいずれか一方が、図3に示す断面において曲線で示される形状を有し、いずれか他方が直線で示される形状を有していてもよい。また、双方が、図3に示す断面において直線で示される形状を有していてもよい。
【0041】
同様に、上流溝壁部18cおよび下流溝壁部18dの境界部21における、上流溝壁部18cおよび下流溝壁部18dのいずれか一方が、図3に示す断面において曲線で示される形状を有し、いずれか他方が直線で示される形状を有していてもよい。また、双方が、図3に示す断面において直線で示される形状を有していてもよい。
【0042】
いずれにしても、角αは、上流側境界部19における、上流溝壁部18c及び上流溝壁部18cの接線方向のうちの何れかと、吸気路17の内壁17a及び内壁17aの接線方向のうちの何れかとの成す角となる。
【0043】
また、角βは、下流側境界部20における、下流溝壁部18d及び下流溝壁部18dの接線方向のうちの何れかと、吸気路17の内壁17a及び内壁17aの接線方向のうちの何れかとの成す角となる。
【0044】
また、角γは、上流溝壁部18cおよび下流溝壁部18dの境界部21における、上流溝壁部18c及び上流溝壁部18cの接線方向のうちの何れかと、下流溝壁部18d及び下流溝壁部18dの接線方向のうちの何れかとの成す角となる。
【0045】
また、上述した実施形態および変形例では、角αが90度以下である場合について説明したが、角αが鈍角であってもよい。ただし、上述した実施形態および変形例のように、角αを90度以下とすることで、鈍角の場合よりも、偏流溝18、28、38、48、58、68、78内から合流する吸気の主流の向きを、偏流溝18、28、38、48、58、68、78からの流れ方向に沿わせて混合損失を低減できる。即ち、と、偏流溝18、28、38、48、58、68、78によって、安定した偏向効果(ディフレクタとしての機能)が得られる。
【0046】
また、上述した実施形態および第2〜第6変形例では、角βが90度以上である場合について説明したが、角βが鋭角であってもよい。ただし、上述した実施形態および第2〜第6変形例のように、角βを90度以上とすることで、角βが鋭角である場合に比べて、偏流溝18、38、48、58、68、78内に逆流した吸気を導き易い形状とすることができる。
【0047】
また、上述した実施形態では、上流溝壁部18cは、コンプレッサインペラ10の径方向と平行に延在し、角γが鋭角である場合について説明した。しかし、第4変形例のように、上流溝壁部58cは、コンプレッサインペラ10の径方向に対し傾斜していてもよい。ただし、上流溝壁部58cを、コンプレッサインペラ10の径方向と平行に延在させ、角γを鋭角とすることで、偏流溝18から主流に合流する吸気の向きを、主流の流れ方向に沿わせて混合損失を低減できる。
【0048】
また、上述した実施形態および第4変形例のように、V字型の切り込みによって偏流溝18、58を形成することで、偏流溝18の濡れ縁(表面積)を小さく抑えられ、偏流溝18内を流れる吸気との摩擦損失を低減できる。
【0049】
また、上述した第3変形例のように、偏流溝48を曲面形状に形成することで、偏流溝48内においては、吸気の淀み(滞留)が生じ難く、圧力損失の低減も可能となる。
【0050】
図6は、第7変形例を説明するための図であり、第7変形例における図2に対応する部位の抽出図である。図6に示すように、第7変形例に係るコンプレッサハウジング6は、本体部6aと環状部材6bからなる。本体部6aのうち、吸気路17の内壁17aには、吸気口11側から順に大径部17bおよび小径部17cが形成されている。大径部17bは、小径部17cよりも内径が大きく、大径部17bと小径部17cとの境界には、吸気口11側ほど内径が大きくなる向きに傾斜するテーパ部17dが形成されている。
【0051】
環状部材6bは、大径部17bに嵌め込まれて固定される。環状部材6bが、大径部17bに嵌め込まれたとき、環状部材6bの内周側の端部6cは、テーパ部17dよりも、コンプレッサインペラ10の径方向の位置が内側に位置する。このとき、テーパ部17dと環状部材6bで形成される溝が偏流溝88となる。
【0052】
このように、コンプレッサハウジング6が、本体部6aと環状部材6bからなる場合であっても、上述した実施形態と同様、吸気の逆流による損失を低減することができる。また、環状部材6bを組み付ける前にテーパ部17dを加工すれば、偏流溝88を形成できることから、加工性を向上することが可能となる。さらに、環状部材6bを換装するのみで、環状部材6bの端部6cの径方向位置を容易に変更できる。
【0053】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6