(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1つ以上の作業監視装置の各々から送信されるエレベーターの保守作業の状態を表す作業信号に基づいて、保守員によって行われている前記保守作業の動作を推定する推定部と、
前記推定部が推定した動作を表すデータを記憶する第1記憶部と、
を備え、
前記推定部は、前記作業信号として、音声を表す信号を用いるエレベーターの保守作業の支援装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化または省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1を用いて、本実施の形態に係るエレベーターの保守作業の支援システムの構成を説明する。
図1は、本実施の形態に係るエレベーターの保守作業の支援システムを備えるエレベーターの構成図である。
【0012】
図1において、建築物1は、複数の階を備える。建築物1は、エレベーターを備える。
【0013】
エレベーターにおいて、昇降路2は、建築物1の各階を貫く。複数の乗場3の各々は、建築物1の各階に設けられる。複数の乗場3の各々は、昇降路2に対向する。複数の乗場3の各々は、乗場扉4を備える。
【0014】
乗場扉4は、図示しないインターロックと、乗場扉スイッチと、を備える。乗場扉4は、インターロックが解除されない場合に、開かないように構成される。乗場扉4は、乗場扉スイッチによって開状態または閉状態を検出される。
【0015】
巻上機5は、昇降路2の内部の上部に設けられる。巻上機5は、エンコーダー6と、図示しないシーブと、図示しないモーターと、を備える。巻上機5のシーブは、巻上機5のモーターの回転軸に取り付けられる。エンコーダー6は、巻上機5のモーターの回転量を検出しうるように設けられる。
【0016】
返し車7は、昇降路2の内部の上部に設けられる。
【0017】
かご8は、昇降路2の内部に設けられる。かご8は、かご扉9と、スピーカー10と、マイク11と、加速度センサー12と、安全スイッチ13と、を備える。かご8は、保守作業の際に、保守員14が上部に搭乗しうるように構成される。
【0018】
スピーカー10は、受信した信号が表す内容を、かご8の上部に搭乗している保守員14に報知しうるように構成される。スピーカー10は、受信した信号が表す内容を例えば人工音声によって報知する。
【0019】
マイク11は、かご8における音声を検出しうるように構成される。加速度センサー12は、かご8の加速度を検出しうるように構成される。安全スイッチ13は、かご8の上部に搭乗している保守員14によってON状態とOFF状態とが切り替えられるように構成される。
【0020】
釣合オモリ15は、昇降路2の内部に設けられる。
【0021】
主ロープ16は、巻上機5のシーブと返し車7とに巻き掛けられる。主ロープ16は、両端部がかご8および釣合オモリ15にそれぞれ保持される。
【0022】
制御装置17は、昇降路2の内部に設けられる。制御装置17は、かご8と通信しうるように、制御ケーブル18でかご8と接続される。制御装置17は、巻上機5の運転を制御する信号を送信しうるように、巻上機5と接続される。
【0023】
ビーコン19は、建築物1の各階に配置される。ビーコン19は、配置された建築物1の階を識別する識別情報を、予め定められた時間間隔で近距離無線通信によって発信する。
【0024】
エレベーターの保守作業において、保守員14は、例えばかご8の上部に搭乗して保守作業の動作を行う。保守員14は、スマートフォン20を所持して保守作業の動作を行う。保守員14は、ウェアラブル端末21を、例えば手首に装着して保守作業の動作を行う。スマートフォン20またはウェアラブル端末21は、携帯端末の例である。
【0025】
保守員14が行う保守作業の動作は、例えば、スイッチを切り替える動作、かご8の上に搭乗する動作および安全ロープを手すりに掛ける動作を含む。
【0026】
スマートフォン20は、マイクと、加速度センサーと、屋内位置検出装置と、を備える。ウェアラブル端末21は、加速度センサーを備える。
【0027】
スマートフォン20が備えるマイクは、スマートフォン20を所持する保守員14がいる位置における音声を検出しうるように構成される。スマートフォン20が備える加速度センサーは、スマートフォン20を所持する保守員14の加速度を検出しうるように構成される。スマートフォン20の加速度は、スマートフォン20を所持する保守員14の加速度である。ウェアラブル端末21が備える加速度センサーは、保守員14のウェアラブル端末21を装着した箇所の加速度を検出しうるように構成される。スマートフォン20が備える屋内位置検出装置は、ビーコン19からの識別情報を受信することでスマートフォン20を所持する保守員14の位置を検出しうるように構成される。
【0028】
エレベーターの保守作業の支援システム22は、エレベーターの保守作業の支援装置23を備える。エレベーターの保守作業の支援装置23は、昇降路2の内部に設けられる。エレベーターの保守作業の支援装置23は、ネットワーク24を通じて、監視センター25と接続される。
【0029】
監視センター25は、保守作業の手順データを送信する。保守作業の手順データは、保守作業において保守員14が行う動作の順序を表す。保守作業の手順データは、例えばエレベーターの機種等に応じて予め作成される。
【0030】
保守作業の手順データは、例えば、1つの動作に対して、対応する先行動作を指定する。1つの動作に対応する先行動作は、当該動作が行われる前に行われる保守作業の動作である。
【0031】
エレベーターは、運転モードとして自動モードと手動モードとを有する。エレベーターの運転モードは、図示しないスイッチを用いて、保守員14によって切り替えられる。エレベーターは、運転モードが自動モードのとき、主に利用者によって操作される通常運転を行う。エレベーターは、運転モードが手動モードのとき、主に保守員14によって操作される点検運転を行う。
【0032】
エレベーターの運転において、制御装置17は、巻上機5のモーターを駆動させる。巻上機5のシーブは、モーターの駆動に追従して回転する。主ロープ16は、シーブの回転に追従して移動する。かご8と釣合オモリ15とは、図示しないガイドレールに沿って主ロープ16の移動に追従して昇降する。
【0033】
エンコーダー6が検出する巻上機5のモーターの回転量は、かご8の位置に対応する。
【0034】
かご8は、乗場3が設けられる階に停止する。乗場扉4は、かご8が乗場3に対して予め定められた範囲の停止位置にある場合に、インターロックが解除される。乗場扉4は、かご扉9に追従して開く。
【0035】
続いて、
図2を用いてエレベーターの保守作業の支援システム22の構成を説明する。
図2は、本実施の形態に係るエレベーターの保守作業の支援システムの構成を示すブロック図である。
【0036】
エレベーターの保守作業の支援システム22は、1つ以上の作業監視装置26と、報知装置27と、を備える。
【0037】
作業監視装置26は、例えば、スマートフォン20が備えるマイク、加速度センサーおよび屋内位置検出装置である。作業監視装置26は、例えば、ウェアラブル端末21が備える加速度センサーである。作業監視装置26は、例えば、巻上機5に設けられるエンコーダー6である。作業監視装置26は、例えば、かご8が備えるマイク11、加速度センサー12および安全スイッチ13である。作業監視装置26は、例えば、乗場扉4が備える乗場扉スイッチである。作業監視装置26は、例えば、エレベーターの運転モードを切り替えるスイッチである。
【0038】
作業監視装置26は、作業信号を送信する。作業信号は、エレベーターの保守作業の状態を表す信号である。保守作業の状態は、保守作業を行う保守員14の状態、保守作業の対象であるエレベーターの状態およびエレベーターが設置されている環境の状態を含む。エレベーターが設置されている環境の状態は、例えば建築物1の状態である。作業信号は、保守員信号と、機器信号と、を含む。
【0039】
保守員信号は、エレベーターの保守作業を行っている保守員14の状態を表す信号である。保守員信号は、保守員14の保守作業の動作を表す信号を含む。保守員信号は、例えば、保守員14の動作により発生する音を表す信号である。保守員信号は、例えば、保守員14の動作の加速度を表す信号である。保守員信号は、例えば、保守員14の位置を表す信号である。
【0040】
機器信号は、エレベーターの状態を表す信号である。機器信号は、例えば、保守作業が行われているエレベーターに設けられるセンサーの信号およびスイッチの状態を表す信号である。機器信号は、例えば、かご8の位置を表す信号である。機器信号は、例えば、かご8の加速度を表す信号である。機器信号は、例えば、かご8のマイクによって測定される音声を表す信号である。
【0041】
報知装置27は、受信した信号が表す内容を、保守員14に報知する。報知装置27は、例えば、スピーカー10である。
【0042】
エレベーターの保守作業の支援装置23は、作業信号を受信しうるように、作業監視装置26に接続される。エレベーターの保守作業の支援装置23は、報知する内容を表す信号を送信しうるように、報知装置27に接続される。
【0043】
エレベーターの保守作業の支援装置23は、通信部231と、第2記憶部232と、推定部233と、第1記憶部234と、判定部235と、を備える。
【0044】
通信部231は、保守員14によってエレベーターの保守作業が開始される前に、監視センター25から手順データを受信する。通信部231は、受信した手順データを第2記憶部232に送信する。
【0045】
第2記憶部232は、通信部231から受信した手順データを記憶する。
【0046】
通信部231は、1つ以上の作業監視装置26の各々から作業信号を受信する。通信部231は、受信した作業信号を推定部233に送信する。
【0047】
推定部233は、受信した作業信号に基づいて、保守員14によって行われている保守作業の動作を推定する。推定部233は、推定した動作を表すデータを、推定した順に第1記憶部234に送信する。推定部233は、推定した動作を表すデータを、推定した順に判定部235に送信する。
【0048】
第1記憶部234は、推定部233が推定した順に、保守作業の動作を表すデータを受信する。第1記憶部234は、動作を表すデータを受信した時に、当該データを記憶する。
【0049】
判定部235は、推定部233が推定した順に、保守作業の動作を表すデータを受信する。判定部235は、第2記憶部232に記憶される手順データが表す動作の順序に、推定部233が推定した動作の順序が適合するかを判定する。判定部235は、適合していないと判定した場合に、当該判定結果を表す信号を通信部231に送信する。
【0050】
通信部231は、判定結果を表す信号を判定部235から受信した場合に、報知装置27に当該信号を送信する。
【0051】
報知装置27は、受信した信号が表す内容を、保守員14に報知する。
【0052】
保守作業が終了した場合に、通信部231は、例えば保守員14によってスマートフォン20を介して送信される保守作業の終了を表す信号を受信する。通信部231は、保守作業の終了を表す信号を受信した場合に、第1記憶部234が記憶している保守作業の動作を表すデータを、監視センター25に実施記録として送信する。
【0053】
エレベーターの保守作業の間に、通信部231は、例えば次のように作業信号を受信する。
【0054】
この例において、保守員14は、各階の乗場扉4に設けられたインターロックの点検を行う。保守員14は、エレベーターの運転モードを、スイッチによって自動モードから手動モードへと切り替える。通信部231は、エレベーターの運転モードを切り替えるスイッチが手動モードの状態であることを表す信号を作業信号として受信する。
【0055】
保守員14は、乗場3からかご8の上に搭乗できる位置にかご8を移動させる。エンコーダー6は、巻上機5のモーターの回転量に基づいて、かご8の位置を検出する。通信部231は、かご8の位置を表す信号をエンコーダー6から作業信号として受信する。
【0056】
保守員14は、乗場扉4を手動で開く。乗場扉スイッチは、乗場扉4が開状態であることを検出する。通信部231は、乗場扉4が開状態であることを表す信号を乗場扉スイッチから作業信号として受信する。
【0057】
保守員14は、乗場3からかご8の上に搭乗する。スマートフォン20が備える加速度センサーおよびウェアラブル端末21が備える加速度センサーは、かご8に保守員14が搭乗する際の動作による加速度を検出する。
【0058】
かご8は、保守員14が搭乗することによって振動する。加速度センサー12は、かご8に保守員14が搭乗する際の振動による加速度を検出する。
【0059】
保守員14は、搭乗しているかご8とともに振動する。スマートフォン20が備える加速度センサーは、かご8に保守員14が搭乗する際の振動による加速度を検出する。
【0060】
通信部231は、かご8に保守員14が搭乗する際に検出された信号を、加速度センサー12、スマートフォン20が備える加速度センサーおよびウェアラブル端末21が備える加速度センサーから作業信号として受信する。
【0061】
保守員14は、かご8の上に設けられる安全スイッチ13をONからOFFに切り替える。安全スイッチ13は、OFF状態であることを検出する。通信部231は、OFF状態であることを表す信号を安全スイッチ13から受信する。
【0062】
保守員14は、装着している安全ロープのフックを、かご8の上の手すり等に掛ける。マイク11およびスマートフォン20が備えるマイクは、安全ロープのフックを掛ける音を検出する。通信部231は、安全ロープのフックを掛ける音を表す信号を、マイク11およびスマートフォン20が備えるマイクから作業信号として受信する。
【0063】
保守員14は、かご8の上において、かご8に設けられる機器の点検を行う。保守員14は、当該点検の際に、触診、調整、清掃および点検後の指差し確認等の動作を行う。ウェアラブル端末21が備える加速度センサーは、保守員14の動作による腕の加速度を検出する。通信部231は、保守員14の動作による腕の加速度を表す信号をウェアラブル端末21が備える加速度センサーから作業信号として受信する。
【0064】
保守員14は、かご8の位置をかご扉9のインターロック点検位置に移動する。エンコーダー6は、かご8の位置を検出する。通信部231は、かご8の位置を表す信号をエンコーダー6から受信する。スマートフォン20が備える屋内位置検出装置は、保守員14の位置を検出する。通信部231は、保守員14の位置を表す信号をスマートフォン20が備える屋内位置検出装置から作業信号として受信する。
【0065】
保守員14は、乗場扉4の開閉に関して、インターロックが正しく機能するかを確認する。マイク11およびスマートフォン20が備えるマイクは、乗場扉4が開閉する音を検出する。通信部231は、乗場扉4が開閉する音をマイク11およびスマートフォン20が備えるマイクから作業信号として受信する。
【0066】
乗場扉スイッチは、乗場扉4の開状態または閉状態を検出する。通信部231は、乗場扉4の開状態または閉状態を表す信号を、乗場扉スイッチから作業信号として受信する。
【0067】
保守員14は、かご8の位置を調整する。保守員14は、かご8の上から乗場3に戻る。加速度センサー12は、かご8から保守員14が降りる際の振動による加速度を検出する。スマートフォン20が備える加速度センサーおよびウェアラブル端末21が備える加速度センサーは、かご8から保守員14が降りる際の動作による加速度を検出する。
【0068】
通信部231は、かご8から保守員14が降りる際に検出された信号を、加速度センサー12、スマートフォン20が備える加速度センサーおよびウェアラブル端末21が備える加速度センサーから作業信号として受信する。
【0069】
推定部233は、例えば次のように保守員14の動作を推定する。
【0070】
推定部233は、加速度センサーによって検出された振動の振幅、振動の周期および振動の持続時間等を、振動を特徴付ける特徴データとして抽出する。推定部233は、加速度センサー12が検出する振動の特徴データがかご8の上に搭乗する動作に対して予め定められた範囲内にあるかを判定する。推定部233は、スマートフォン20が備える加速度センサーが検出する振動の特徴データがかご8の上に搭乗する動作に対して予め定められた範囲内にあるかを判定する。推定部233は、加速度センサー12が検出する振動の特徴データとスマートフォン20が備える加速度センサーが検出する振動の特徴データとが一致するかを判定する。推定部233は、当該3つの判定結果がいずれもYesである場合に、保守員14によるかご8の上に搭乗する動作が行われていると推定する。
【0071】
推定部233は、マイクによって検出された音の持続時間および音の周波数分布等を、音を特徴付ける特徴データとして抽出する。推定部233は、マイク11が検出した音の特徴データが、安全ロープをかける動作に対して予め定めた範囲内にある場合に、安全ロープを掛ける動作が行われていると判定する。
【0072】
推定部233は、マイク11が検出した音の特徴データが、乗場扉4の開閉に対して予め定めた範囲内にある場合に、その際にかご8が位置する階の乗場扉4のインターロック点検の動作が行われていると判定する。
【0073】
推定部233は、乗場扉スイッチからの信号によって、乗場扉4が開状態になったかを判定する。推定部233は、スマートフォン20が備える屋内位置検出装置からの信号によって、保守員14の位置がN階であるかを判定する。推定部233は、当該2つの判定結果がいずれもYesである場合に、保守員14によるN階の乗場扉4を手動で開く動作が行われていると推定する。
【0074】
続いて、
図3を用いて第2記憶部232が記憶する手順データの例を説明する。
図3は、本実施の形態に係る第2記憶部が記憶する手順データの例を示す図である。
【0075】
手順データは、各動作に対して、0個以上の先行動作を対応付ける。
【0076】
動作Aは、対応する先行動作がない。すなわち、動作Aは、保守作業においてはじめに行うことができる動作である。
【0077】
動作Bは、先行動作として動作Aが対応している。すなわち、動作Bは、動作Aが行われた後に行われる動作である。
【0078】
動作Cは、先行動作として動作Aまたは動作Bが対応している。すなわち、動作Cは、動作Aまたは動作Bのいずれかが行われた後に行われる動作である。
【0079】
動作Dは、先行動作として動作Bが対応している。すなわち、動作Dは、動作Bが行われた後に行われる動作である。
【0080】
動作Eは、先行動作として動作Cおよび動作Dが対応している。すなわち、動作Eは、動作Cおよび動作Dの両方が行われた後に行われる動作である。
【0081】
より具体的には、例えば、乗場扉4を手動で開ける動作は、エレベーターの運転モードを手動モードに切り替える動作が先行動作として対応している。例えば、かご8の上に搭乗する動作は、エレベーターの運転モードを手動モードに切り替える動作が先行動作として対応している。例えば、かご8の上での機器を点検する動作の各々は、安全ロープをかける動作が先行動作として対応している。例えば、かご8の上から降りる動作は、かご8の上での機器を点検する動作のいずれもが先行動作として対応している。例えば、N階で行う保守点検の最初の動作は、N−1階で行う保守点検の最後の動作が先行動作として対応している。
【0082】
続いて、
図4を用いて第1記憶部234が記憶する保守作業の動作を表すデータの例を説明する。
図4は、本実施の形態に係る第1記憶部が記憶する保守作業の動作を表すデータの例を示す図である。
【0083】
この例において、推定部233は、保守員14に行われている保守作業の動作を、動作A、動作C、動作Bそして動作Eの順に推定する。第1記憶部234は、推定部233が推定した順に動作を記憶する。
【0084】
判定部235は、例えば次のように、推定された動作の順序の手順データが表す動作への適合性を判定する。
【0085】
まず、判定部235は、動作Aを表すデータを受信する。動作Aは、対応する先行動作がない。判定部235は、手順データが表す動作の順序に動作Aの順序が適合すると判定する。
【0086】
次に、判定部235は、動作Cを表すデータを受信する。動作Cは、対応する先行動作が動作Aまたは動作Bである。動作Aが先に行われたと推定されているので、判定部235は、手順データが表す動作の順序に動作Cの順序が適合すると判定する。
【0087】
次に、判定部235は、動作Bを表すデータを受信する。動作Bは、対応する先行動作が動作Aである。動作Aが先に行われたと推定されているので、判定部235は、手順データが表す動作の順序に動作Bの順序が適合すると判定する。
【0088】
次に、判定部235は、動作Eを表すデータを受信する。動作Eは、対応する先行動作が動作Cおよび動作Dである。動作Dが先に行われたと推定されていないので、判定部235は、手順データが表す動作の順序に動作Eの順序が適合しないと判定する。
【0089】
判定部235は、判定結果を表すデータを通信部231に送信する。通信部231は、当該データを報知装置27に送信する。
【0090】
報知装置27がスピーカー10である場合に、スピーカー10は、例えば人工音声で「動作Eの前に動作Dが行われていません。」と保守員14に報知する。
【0091】
より具体的には、例えば、運転モードを手動モードに切り替える動作の前に乗場扉4を手動で開ける動作が保守員14によって行われている場合に、スピーカー10は、「運転モードが手動モードになっていません」と保守員14に報知する。例えば、運転モードを手動モードに切り替える動作の前にかご8の上に搭乗する動作が保守員14によって行われている場合に、スピーカー10は、「運転モードが手動モードになっていません」と保守員14に報知する。例えば、安全ロープをかける動作の前にかご8の上での機器を点検する動作のいずれかが保守員14によって行われている場合に、スピーカー10は、「安全ロープがかけられていません」と保守員14に報知する。例えば、かご8の上での機器Xを点検する動作の前にかご8の上から降りる動作が保守員14によって行われている場合に、スピーカー10は「機器Xの点検を忘れていませんか?」と保守員14に報知する。例えば、N−1階で行う点検の最後の動作の前にN階で行う点検の最初の動作が保守員14によって行われている場合に、スピーカー10は「N−1階の点検を忘れていませんか?」と保守員14に報知する。
【0092】
続いて、
図5を用いてエレベーターの保守作業の支援装置23の動作を説明する。
図5は、本実施の形態にかかるエレベーターの保守作業の支援装置の動作の例を示すフローチャートである。
【0093】
ステップS1において、通信部231は、監視センター25から手順データを受信する。その後、通信部231は、受信した手順データを第2記憶部232に送信する。その後、第2記憶部232は、受信した手順データを記憶する。その後、エレベーターの保守作業の支援装置23の動作は、ステップS2に進む。
【0094】
ステップS2において、通信部231は、作業監視装置26から作業信号を受信する。その後、通信部231は、受信した作業信号を推定部233に送信する。その後、エレベーターの保守作業の支援装置23の動作は、ステップS3に進む。
【0095】
ステップS3において、推定部233は、受信した作業信号に基づいて、保守員14によって行われている保守作業の動作を推定する。その後、推定部233は、推定した動作を表すデータを第1記憶部234および判定部235に送信する。その後、エレベーターの保守作業の支援装置23の動作は、ステップS4に進む。
【0096】
ステップS4において、第1記憶部234は、推定部233から受信した動作を表すデータを記憶する。その後、エレベーターの保守作業の支援装置23の動作は、ステップS5に進む。
【0097】
ステップS5において、判定部235は、第2記憶部232が記憶している手順データを参照して、手順データが表す動作の順序に推定部233に推定された動作の順序が適合するかを判定する。判定結果がNoの場合に、エレベーターの保守作業の支援装置23の動作は、ステップS6に進む。判定結果がYesの場合に、エレベーターの保守作業の支援装置23の動作は、ステップS7に進む。
【0098】
ステップS6において、判定部235は、判定結果を表すデータを通信部231に送信する。その後、通信部231は、報知装置27に判定結果を表すデータを送信する。その後、エレベーターの保守作業の支援装置23の動作は、ステップS7に進む。
【0099】
ステップS7において、エレベーターの保守作業の支援装置23は、保守作業が終了したかを判定する。判定結果がNoの場合に、エレベーターの保守作業の支援装置23の動作は、ステップS2に進む。判定結果がYesの場合に、エレベーターの保守作業の支援装置23の動作は、ステップS8に進む。
【0100】
ステップS8において、通信部231は、第1記憶部234が記憶している動作を表すデータを、監視センター25に送信する。その後、エレベーターの保守作業の支援装置23の動作は終了する。
【0101】
以上に説明したように、本実施の形態に係るエレベーターの保守作業の支援装置23は、推定部233と、第1記憶部234とを備える。推定部233は、1つ以上の作業監視装置26の各々から送信されるエレベーターの保守作業の状態を表す作業信号に基づいて、保守員14によって行われている保守作業の動作を推定する。第1記憶部234は、推定部233が推定した動作を表すデータを記憶する。すなわち、推定部233は、保守員14による保守作業と並行して、保守員14によって現在行われている保守作業の動作を具体的に推定する。これにより、エレベーターの保守作業の支援装置は、保守作業が状況に応じて臨機応変に行われる場合においても、保守作業の動作の実施記録を作成できる。
【0102】
エレベーターの保守作業の支援装置23は、保守員14による保守作業と並行して推定した動作に基づいて実施記録を作成する。これによって、エレベーターの保守作業の支援装置23は、保守員14の記録漏れおよび勘違いによる実施記録の誤りを防止できる。エレベーターの保守作業の支援装置23は、例えば、階の数が多い建築物1において、保守作業が日をまたぐ場合に、保守作業を行う階の抜けが発生することを防止できる。エレベーターの保守作業の支援装置23は、現場の状況に応じた臨機応変な判断を実施記録として残すことができる。実施記録は、保守作業の作業手順の効率改善および保守作業の訓練に用いることができる。
【0103】
推定部233は、複数の作業監視装置26の各々から送信される作業信号の各々に基づく推定を組み合わせる。これによって、推定部233は、推定速度を優先した簡易な推定方法によっても推定の精度を高められる。推定部233は、複数の作業信号の各々に基づく推定を独立して並列に行う。これによって、推定部233は、推定の速度を高められる。推定部233は、高速に精度よく保守作業の動作の推定を行う。したがって、推定部233は、保守員14による保守作業と並行して推定を行うことができる。
【0104】
保守作業を実施している保守員14は、例えばスマートフォン20を通じてエレベーターの保守作業の支援装置23と通信できる。保守員14は、すでに行われた動作を保守作業の現場で確認できる。保守員14は、保守作業の動作の抜け等を現場で発見した場合に、速やかに対応できる。
【0105】
また、エレベーターの保守作業の支援装置23は、第2記憶部232と、判定部235と、通信部231と、を備える。第2記憶部232は、保守作業の動作の順序を表す手順データを記憶する。判定部235は、第2記憶部232が記憶している手順データが表す動作の順序に、推定部233に推定された動作の順序が適合するか否かを判定する。通信部231は、手順データが表す動作の順序に適合しないと判定部235が判定した場合に、判定部235による判定結果を表す信号を報知装置27に送信する。報知装置27は、受信した信号が表す内容を保守員14に報知する。これにより、保守員14は、保守作業の動作の抜けまたは不安全行動があった場合に、現場でその旨を報知される。したがって、保守員14は、保守作業の品質および安全性を高められる。
【0106】
また、推定部233は、作業信号として、音声を表す信号を用いる。作業監視装置26がマイクである場合に、マイクは、複数の機器から発生する音を非接触で検出できる。これによって、エレベーターの保守作業の支援システム22は、作業監視装置26の数を減らすことができる。
【0107】
また、推定部233は、作業信号として、保守員14に所持される携帯端末が備える作業監視装置26から送信される保守員14の状態を表す保守員信号を用いる。保守作業の動作を行う保守員14の状態を直接的に収集できるので、推定精度が高まる。
【0108】
また、推定部233は、作業信号として、エレベーターに設けられる作業監視装置26から送信されるエレベーターの状態を表す機器信号を用いる。保守作業の対象であるエレベーターの状態を直接的に収集できるので、推定精度が高まる。
【0109】
また、推定部233は、作業信号として、保守員信号および機器信号の両方を用いる。保守員14が行った動作によってエレベーターが動作し、エレベーターの動作を受けて保守員14が動作を行うので、保守員信号および機器信号は、相互に因果関係がある。推定部233は、相互に因果関係がある信号を組み合わせて用いることで、推定の精度をより高めることができる。
【0110】
なお、スピーカー10は、受信した信号が表す内容をブザー音によって報知してもよい。スピーカー10は、受信した信号が表す内容を、例えば長いブザー音と短いブザー音との組み合わせによって報知する。
【0111】
報知装置27は、スマートフォン20が備えるスピーカーであってもよい。スマートフォン20が備えるスピーカーは、受信した信号が表す内容を例えば人工音声またはブザー音によって報知する。
【0112】
報知装置27は、スマートフォン20またはウェアラブル端末21が備えるバイブレーション装置であってもよい。バイブレーション装置は、受信した信号が表す内容を、例えば長い振動と短い振動との組み合わせによって報知する。
【0113】
報知装置27は、スマートフォン20が備えるタッチパネルであってもよい。報知装置27は、保守員14に装着されるメガネ型ウェアラブル端末が備えるヘッドマウントディスプレイであってもよい。報知装置27は、保守員14が所持する保守作業用のコンピューターが備えるディスプレイであってもよい。報知装置27は、受信した信号が表す内容を、例えば文字表示によって報知する。
【0114】
報知装置27は、エレベーターに設けられたランプであってもよい。ランプは、受信した信号が表す内容を、例えば点滅パターンによって報知する。
【0115】
携帯端末は、複数の保守員14に所持されてもよい。携帯端末が備える作業監視装置26は、携帯端末を識別する信号を作業信号とともに通信部231に送信してもよい。エレベーターの保守作業の支援装置23は、動作を行った保守員14の情報を含めた実施記録を作成できる。保守員14は、同時に作業している他の保守員14が行った動作を現場で確認できる。保守員14は、互いの作業の進捗を把握できるので、効率的に連携して作業を行える。
【0116】
手順データは、保守作業の動作の順序を直列的に表したデータであってもよい。
【0117】
推定部233は、作業信号を入力として、事前に学習を行った機械学習の方法によって保守員14に行われている保守作業の動作の推定をおこなってもよい。機械学習の方法には、人工ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、ランダムフォレスト、サポートベクターマシンまたはディープラーニング等を用いてもよい。
【0118】
本実施の形態における装置または部分等の間の通信は、有線または無線のいずれによるものであってもよい。無線による通信は、近距離無線通信、無線PAN(Personal Area Network)および無線LAN(Local Area Network)等を含む。本実施の形態における装置または部分等の間の通信は、直接的または間接的のいずれであってもよい。
【0119】
エレベーターの保守作業の支援装置23は、制御装置17を兼ねてもよい。エレベーターの保守作業の支援装置23は、昇降路2の外部に配置されてもよい。エレベーターの保守作業の支援装置23は、保守点検の際に1つ以上の作業監視装置26の各々に接続される保守作業用のコンピューターであってもよい。
【0120】
続いて、
図6を用いてエレベーターの保守作業の支援装置23のハードウェア構成の例について説明する。
図6は、本実施の形態に係るエレベーターの保守作業の支援装置の主要部のハードウェア構成を示す図である。
【0121】
エレベーターの保守作業の支援装置23の各機能は、処理回路により実現し得る。処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ23bと少なくとも1つのメモリ23cとを備える。処理回路は、プロセッサ23bおよびメモリ23cと共に、或いはそれらの代用として、少なくとも1つの専用のハードウェア23aを備えてもよい。
【0122】
処理回路がプロセッサ23bとメモリ23cとを備える場合、エレベーターの保守作業の支援装置23の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。そのプログラムはメモリ23cに格納される。プロセッサ23bは、メモリ23cに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、エレベーターの保守作業の支援装置23の各機能を実現する。
【0123】
プロセッサ23bは、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。メモリ23cは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等により構成される。
【0124】
処理回路が専用のハードウェア23aを備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。
【0125】
エレベーターの保守作業の支援装置23の各機能は、それぞれ処理回路で実現することができる。あるいは、エレベーターの保守作業の支援装置23の各機能は、まとめて処理回路で実現することもできる。エレベーターの保守作業の支援装置23の各機能について、一部を専用のハードウェア23aで実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。このように、処理回路は、ハードウェア23a、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせでエレベーターの保守作業の支援装置23の各機能を実現する。
この発明は、保守作業が現場の状況に応じて臨機応変に行われる場合においても、保守作業の動作の実施記録を作成できるエレベーターの保守作業の支援システムを提供することを目的とするエレベーターの保守作業の支援装置(23)は、推定部(233)と、第1記憶部(234)と、を備える。推定部(233)は、1つ以上の作業監視装置(26)の各々から送信されるエレベーターの保守作業の状態を表す作業信号に基づいて保守員(14)によって行われている保守作業の動作を推定する。第1記憶部(234)は、推定部(233)が推定した動作を表すデータを記憶する。