(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6369712
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】投薬管理システム及び投薬管理装置
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20180730BHJP
A61J 7/00 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
G06Q50/24ZJP
A61J7/00
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-16249(P2014-16249)
(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公開番号】特開2015-143891(P2015-143891A)
(43)【公開日】2015年8月6日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】593027473
【氏名又は名称】リードエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106895
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 洋一
(72)【発明者】
【氏名】中山 健一
【審査官】
牧 裕子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−245255(JP,A)
【文献】
特開2012−130537(JP,A)
【文献】
特開2009−000485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
G16H 10/00 − 80/00
A61J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面の板状部材の表面に縦及び横の列に計28個以上配設され、薬を入れるため上方が開口するとともに上方へ向かって前方に突出傾斜しているプラスチック又はビニールで形成されたポケットと、当該ポケットに内包されるそれぞれの位置に穿設される孔と、前記各孔に対応する位置に設けられ、前記ポケット内に収納される薬の包装の種類に応じて感度の調整を行い、当該包装の種類にかかわらず薬の有無を感知し、前記ポケット内に薬が有るときは未投薬、薬が無いときは投薬とする信号を所定の周期で送信する赤外線センサーと、前記赤外線センサーの電源として機能するとともに、当該赤外線センサーを設定に基づいて制御し、当該赤外線センサーが送信した前記信号を受信して情報処理を行い、アナログデータに変換する制御装置と、を備えた複数の投薬管理装置と、
前記制御装置に対して前記センサーの設定についての必要な指令を与えるとともに、前記制御装置から前記アナログデータ情報を受取って記録し、必要なデータ情報を精査して、公衆又は専用回線を介して受信用コンピュータに送信する送信用コンピュータと、
前記データ情報を受信して前記ポケット内に収納される薬の有無についての情報を表示装置に表示する受信用コンピュータと、から構成されていて、
前記受信用コンピュータは、前記各投薬管理装置の個々のデータを表示可能であるとともに、所定の条件に基づいて前記ポケット内に薬が収納されている前記各投薬管理装置のデータを一括して抽出表示可能であること、
を特徴とする投薬管理システム。
【請求項2】
公衆回線又は専用回線を通して遠隔地にいる患者の投薬の状況を管理する投薬管理システムにおいて利用する、薬の有無を感知してそのデータを送信する投薬管理装置であって、
正面の板状部材の表面に縦及び横の列に計28個以上配設され、薬を入れるため上方が開口するとともに上方へ向かって前方に突出傾斜しているプラスチック又はビニールで形成されたポケットと、当該ポケットに内包されるそれぞれの位置に穿設される孔と、前記各孔に対応する位置に設けられ、前記ポケット内に収納される薬の包装の種類に応じて感度の調整を行い、当該包装の種類にかかわらず薬の有無を感知し、前記ポケット内に薬が有るときは未投薬、薬が無いときは投薬とする信号を所定の周期で送信する赤外線センサーと、前記赤外線センサーの電源として機能するとともに、当該赤外線センサーを設定に基づいて制御し、当該赤外線センサーが送信した前記信号を受信して情報処理を行い、アナログデータに変換する制御装置と、
から構成されていていることを特徴とする投薬管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護施設に入所している患者への投薬を管理するのに使用する投薬管理システム及び投薬管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
介護施設においては、投薬を受けている患者が多く、薬剤師が医師の指示のもと当該介護施設を訪問して、薬の正しい飲み方の説明、服用状況の確認、副作用のチェックなどをしながら、薬物療法が適正に実施されているかどうかを確かめる薬剤師によるサービスが行われている。
【0003】
薬剤師が施設を訪問すること(以下、訪問薬局という)により、患者の薬剤の服用状況、残薬の有無及び薬の飲み合わせなどを把握することができ、それをもとに介護施設の職員に情報提供を行うことで、患者ごとに適した一番服用しやすい状態(服用カレンダーの利用・一包化等)の提供が可能となる。
【0004】
しかしながら、訪問薬局は数日に1回施設を訪問するのが一般的であり、毎日の投薬管理は介護施設の職員に委ねられているが、患者数や薬の種類、飲む回数は千差万別であることから、患者の飲み忘れや勘違いによる「複飲」などについて、施設の職員が管理を行うのは限界があり、またそれにかかる負担も大きい。また、薬の中にはかなり高価なものもあり、そのような薬が他人により盗まれるといった事例も報告されている。
【0005】
そこで、介護施設における薬の管理は、基本的には訪問薬局が行いつつも、人員やコストの制限等から訪問薬局が毎日施設の訪問しなくとも、投薬の管理を行える環境を整える必要がある。
【0006】
投薬が医師の指示どおりに行われたかどうかを管理するものとして、例えば特許文献1にあるような在宅診療用投薬システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−201827
【0008】
上記投薬システムでは、患者の自宅に薬ボックスを設置して医師より処方された薬剤を当該ボックスに投薬毎に分割して保管し、病院側システムにより受信記憶した投薬管理データにより、指定の投薬時間になると表示部を用いて指定された薬を患者に知らせ、当該ボックスから薬が取り出されたかを検出し、未検出の場合には患者に警告を出すとともに病院側にその情報を送り、病院側がその情報と前記投薬管理データを照合し不適正と判断した場合には患者や家族、ヘルパー等に警告指示を送り、薬の飲み忘れ等を防止しようとするものである。
【0009】
しかしながら、上記投薬システムは装置の構成が複雑であり、コストが高くなり、設置場所等のスペースも確保する必要がある。特に介護施設においては、患者の数に対応して設置する必要があり、コストやスペースの問題は重要である。
【0010】
また、薬は粉や錠剤のように形態やそれを包装する材料(例えば透明の袋やシートなど)が異なり、保管場所も部屋の明るさなどの環境が様々であるが、それらが相違しても確実に投薬の有無が感知できるようにする必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、投薬システムを構成する主装置の構造を簡素化してコストを安価にするとともに、装置ごとに薬の有無の感知の設定を調整することにより異なる条件下においても常に感知の精度が高く、壁掛け可能で省スペース化を図り、訪問薬局、介護施設職員及び患者が一見して患者が薬を服用したか否かを判別することができるようにした投薬管理システム及びそれに使用する投薬管理装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る投薬管理システムの第1の特徴は、正面の板状部材の表面に縦
及び横の列に計28個以上配設され、薬を入れるため上方が開口するとともに上方へ向かって前方に突出傾斜しているプラスチック又はビニールで形成されたポケットと、当該ポケットに内包されるそれぞれの位置に穿設される孔と、前記各孔に対応する位置に設けられ、前記ポケット内に収納される薬の包装の種類に応じて感度の調整を行い、当該包装の種類にかかわらず薬の有無を感知し
、前記ポケット内に薬が有るときは未投薬、薬が無いときは投薬とする信号を所定の周期で送信する赤外線センサーと、前記赤外線センサーの電源として機能するとともに、当該赤外線センサーを設定に基づいて制御し、当該赤外線センサーが送信した前記信号を受信して情報処理を行い、アナログデータに変換する制御装置と、を備えた複数の投薬管理装置と、前記制御装置に対して前記センサーの設定についての必要な指令を与えるとともに、前記制御装置から前記アナログデータ情報を受取って記録し、必要なデータ情報を精査して、公衆又は専用回線を介して受信用コンピュータに送信する送信用コンピュータと、前記データ情報を受信して前記ポケット内に収納される薬の有無についての情報を表示装置に表示する受信用コンピュータと、から構成されていて、前記受信用コンピュータは、前記各投薬管理装置の個々のデータを表示可能であるとともに、所定の条件に基づいて前記ポケット内に薬が収納されている前記各投薬管理装置のデータを一括して抽出表示可能であることにある。
【0013】
さらに、本発明に係る投薬管理装置の第1の特徴は、公衆回線又は専用回線を通して遠隔地にいる患者の投薬の状況を管理する投薬管理システムにおいて利用する、薬の有無を感知してそのデータを送信する投薬管理装置であって、正面の板状部材の表面に縦
及び横の列に計28個以上配設され、薬を入れるため上方が開口するとともに上方へ向かって前方に突出傾斜しているプラスチック又はビニールで形成されたポケットと、当該ポケットに内包されるそれぞれの位置に穿設される孔と、前記各孔に対応する位置に設けられ、前記ポケット内に収納される薬の包装の種類に応じて感度の調整を行い、当該包装の種類にかかわらず薬の有無を感知し
、前記ポケット内に薬が有るときは未投薬、薬が無いときは投薬とする信号を所定の周期で送信する赤外線センサーと、前記赤外線センサーの電源として機能するとともに、当該赤外線センサーを設定に基づいて制御し、当該赤外線センサーが送信した前記信号を受信して情報処理を行い、アナログデータに変換する制御装置とから構成されていていることにある。
【0014】
本発明によれば、介護施設職員や患者が投薬時間に服用を見逃してしまっても、患者が薬を服用したか否かを訪問薬局はリアルタイムで把握することができるので、施設に出向くことなく患者や施設職員に対して即座に投薬を促すことができ、薬の服用の管理の徹底化を図ることが可能である。
【0015】
また、投薬管理装置ごとにセンサーの感度の調整が可能なので、設置場所における環境や薬の種類などが異なっていても、薬の有無について常に正確な感知が可能である。
【0016】
さらに、患者の服用に関するデータを施設ごとに一括管理できるので、訪問薬局の訪問回数を減らすことができ、訪問薬局及び介護施設の負担やコストを軽減することができる。
【0017】
また、装置の表面にカレンダーと透明のポケットを備えることにより、装置における薬の有無が一目瞭然となり、患者及び施設職員も服用の有無をすぐに把握可能である。
【0018】
さらにまた、本発明は構成部品を簡素化しているため、コストが安価である一方で、壁掛け型として構成できるので、省スペース化を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本願発明に係る投薬管理装置の実施例における正面図であり、薬がない状態を示したものである。
【
図2】上記正面図において薬の一部がポケットに残っている状態を示したものである。
【
図5】本発明に係る投薬管理システムの概略図である。
【
図6】投薬管理装置の
図2の状態におけるコンピュータの画面を示した状態図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1から4は本発明の実施例を示したものである。図中1は、投薬管理装置であり、表板2が裏板3に所定の間隔をあけて複数の支柱4を介して支えられ、筐体を形成している。当該筐体の四方であって、表板2と裏板3との間には、壁板(図示せず)を設置するのが埃等の防止や美観等の観点から望ましい。
【0022】
表板2及び裏板3は、長方形の板状の部材で、同じ大きさに形成されている。軽量の部材が好適であり、例えばアクリル等が考えられる。
【0023】
表板2の正面上部にはX軸方向に「朝」、「昼」、「夜」、「寝る前」の1日の投薬時刻が記載されている。また、表板2の正面左側にはY軸方向に「月」、「火」、「水」、「木」、「金」、「土」、「日」の1週間の曜日の文字が記載されている。
【0024】
表板2の正面の前記各投薬時刻と各曜日とにそれぞれ対応する位置には、ポケット5がそれぞれ配設されている。すなわち、図示の例では、ポケット5は表板の表面に28個取り付けられている。ポケット5は、訪問薬局で調剤された薬を入れる部位であり、図示の例ではプラスチックで形成されているが、例えばビニールのようなものであってもよい。なお、ポケット5は、収納されている薬が判別できるよう透明であることが望ましい。
【0025】
ポケット5に内包される表板2のそれぞれの位置には、円孔6がそれぞれ穿設されている。表板2の背面であって各円孔6に対応する位置には、赤外線センサー7がそれぞれ設けられている。赤外線センサー7は、表板2の背面に設置された各配線基盤9にそれぞれ取り付けられている。本実施例では、1つの基盤9にセンサー7が8個または6個取り付けられている。
【0026】
センサー7は対応するポケット5内に収納される薬8の有無を感知するためのもので、ポケット5内に薬8がない場合には「投薬」、ポケット5内に薬8がある場合には「未投薬」と判断して、その情報を表板2の背面に設置された制御装置10に送信する。
【0027】
制御装置10は、センサー7の電源であるとともに、センサー7の感度等の制御を行う。また、センサー7からの信号を受信して、信号の情報処理を行い、アナログデータ化して送信用コンピュータ12に送信する。基板9と制御装置10とがケーブル11で接続されていて、基板9を介して制御装置10からセンサー7への電気の供給、制御信号の送信及びセンサー7から制御装置10への感知信号の送信が行われる。
【0028】
制御装置10は、送信用コンピュータ12とケーブル13を介して接続されていて、送信用コンピュータ12は制御装置10から受け取ったデータを蓄積して精査し、必要なデータをインターネット等のネットワークまたは専用回線を介して受信用コンピュータ14に送信する。
【0029】
ポケット5に収納される薬は、粉又は錠剤、カプセルなど様々な形態があり、また、それを包装する材料も袋状のものやシート状のもの、透明や色つきのものなど多種多様である。また、投薬管理装置1が設置される場所によっても明るさ等が異なる。よって、設置状況に応じたセンサー7の感度等の調整を行えるようにし、その設定は送信用コンピュータ12または/及び受信用コンピュータ14において行う。さらに、センサー7から送信される信号の周期を送信用コンピュータ12または/及び受信用コンピュータ14において制御装置10に対して設定する。
【0030】
さらにまた、送信用コンピュータ12または/及び受信用コンピュータ14において、施設ごと及び患者個人ごとにデータ管理ができるように初期設定を行い、患者個人に対応した投薬管理装置1からのデータの蓄積により、当該施設の患者全員に対して一括して投薬管理ができるようになっている。例えば、施設ごとに、服用時間内に薬を取り出していない患者を一括して検索することができる。また、施設を横断して、ある一定時間内に薬を装置1から取り出していない患者を一括して検索することも可能である。
【0031】
図6は、送信用コンピュータ12及び受信用コンピュータ14が、
図2における個人の投薬に関するデータを受信して表示している状態を示している。図中15は、表板2を画面上に表したものの一例であり、16は薬がポケット5に収納されているときの状態を、17は薬がポケット5に収納されていないときの状態を示している。17は、目立つ色や状態で表示することが望ましく、服用時間を過ぎても薬をポケット5から取り出していない場合には、点滅させたり、警告音を出すなどさせて際立たせるようにしてもよい。当該画面は、患者ごとに切り替えて表示することが可能である。
【0032】
次に、本発明に係る投薬管理装置1の動作について説明する。ポケット5に薬8が入っている(投薬されていない)状態では、円孔6を通してセンサー7が感知しており、そのデータが制御装置10及び送信用コンピュータ12を通して受信用コンピュータ14にデータが送信される。この場合、
図6における16の状態に表示されている。センサー7は、光を通さない袋のほか、透明な袋に入っている薬も感知できるように設定する。なお、データ送信の間隔は、数秒、数十秒、数分間隔と自由に設定可能である。
【0033】
投薬の時間にポケット5から薬8を取り出すと、円孔6を通してセンサー7が反応し、制御装置10及び送信用コンピュータ12を通して受信用コンピュータ14にデータが送信される。この場合、送信用コンピュータ12及び受信用コンピュータ14において、
図5における17の状態に表示される。
【0034】
本発明によれば、介護施設外においても患者の投薬管理が可能となるので、訪問薬局による介護施設の訪問を、2から3日に1回程度から1から2週間程度に1回と大幅に省略でき、訪問薬局の負担が飛躍的に軽減できるほか、介護施設における患者に対する訪問薬局のケアもより一層向上させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る投薬管理システム及び投薬管理装置は、介護施設だけでなく、病院や自宅での介護などにも応用でき、特に自宅介護の場合には、薬の服用の確認が安否の確認にもなることから、一人暮らしの高齢者が安全・安心して生活することに貢献することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 投薬管理装置
2 表板
5 ポケット
6 円孔
7 センサー
10 制御装置
12 送信用コンピュータ
14 受信用コンピュータ