(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の物体と、前記第1の物体上に配された第2の物体とが、接触又は近接している部位に、超短パルスレーザ光を第1の焦点距離で前記第2の物体の上方から照射する第1のステップと、
前記第1のステップにおいて前記超短パルスレーザ光が照射された箇所に、前記超短パルスレーザ光を前記第1の焦点距離と異なる第2の焦点距離で前記第2の物体の上方から更に照射する第2のステップとを有し、
前記第1の物体のうちの前記第2の物体が配される領域の一部には、凹部が形成されており、
前記凹部内には、はんだが充填されており、
前記第1のステップ及び前記第2のステップでは、前記第2の物体のうちの前記凹部と重なり合っている部分を除く部分に前記超短パルスレーザ光を照射するレーザ接合方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下で説明する図面において、同じ機能を有するものは同一の符号を付し、その説明を省略又は簡潔にすることもある。
【0015】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態によるレーザ接合方法及びレーザ接合装置について図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態によるレーザ接合装置を示す概略図である。
図1において、各構成要素間の接続は実線で示されており、レーザ光の光路は破線で示されている。
【0016】
本実施形態によるレーザ接合装置2は、レーザ光Aを発するレーザ光源12と、本実施形態によるレーザ接合装置全体の制御を司る制御部14とを有している。また、本実施形態によるレーザ接合装置2は、接合の対象となる物体(被処理物、部材、物品)16、17が載置されるステージ18を更に有している。レーザ接合装置2は、物品(レーザ接合品としての製品)を製造する製造装置に備えられている。
【0017】
本実施形態によるレーザ接合装置は、物体16と物体17とが互いに接触又は近接している部位内にレーザビームを照射することにより、物体16と物体17との接合を行うものである。より具体的には、本実施形態によるレーザ接合装置は、焦点距離を異ならせて、レーザビームの走査を複数回行うものである。第1回目(第1段階)の走査では、第1の焦点距離でレーザビームを走査する。第1回目の走査が完了した後に行われる第2回目(第2段階)の走査では、第1の焦点距離とは異なる第2の焦点距離でレーザビームを走査する。レーザビームを用いて接合を行う手法は、レーザ接合とも称される。物体16と物体17とを接合する際には、物体16と物体17とが確実に接触している状態、即ち、物体16と物体17とが密着していることが好ましいが、物体16と物体17とが必ずしも密着していなくてもよい。物体16と物体17とが互いに十分に近接していれば、物体16と物体17とが互いに近接している部位にレーザビームの照射することにより、物体16と物体17とを接合することが可能である。物体16と物体17とが近接している状態で接合を行う場合、物体16と物体17との間隙の寸法は例えば2μm以下とすることが好ましい。
【0018】
制御部14は、種々の演算、制御、判別等の処理を実行するCPU(図示せず)を有している。また、制御部14は、CPUによって実行される様々な制御プログラム等を格納するROM(図示せず)等を有している。また、制御部14は、CPUが処理中のデータや入力データ等を一時的に格納するRAM(図示せず)等を有している。
【0019】
制御部14には、所定の指令やデータなどをユーザが入力するための入力操作部46が接続されている。かかる入力操作部46としては、例えばキーボードや各種スイッチ等が用いられる。
【0020】
制御部14には、種々の表示を行うための表示部48が接続されている。表示部48には、例えば、本実施形態によるレーザ接合装置2の動作状態、ステージ18の状態、CCDカメラ50により取得された画像等が表示される。表示部48としては、例えば液晶ディスプレイ等が用いられる。
【0021】
レーザ光源12は、レーザ光(レーザビーム)Aを発するものである。ここでは、レーザ光Aとして、例えば、超短パルスレーザを用いる。超短パルスレーザ光としては、例えばフェムト秒レーザ光が用いられている。フェムト秒レーザ光とは、一般的には、パルス幅がフェムト秒(fs:10
−15秒)オーダーのパルスレーザ光、即ち、パルス幅が1fs以上、1ps未満のパルスレーザ光のことである。レーザ光源12からは、例えば、パルス幅がフェムト秒のオーダーのパルスレーザビームが出射される。本実施形態では、レーザ光源12として、例えば、中心波長1045nm程度、パルス幅700fs程度のレーザ発振器が用いられている。レーザ光Aを発するレーザ光源12の出力パワーは、例えば5W程度とする。
【0022】
なお、レーザ光Aを発するレーザ光源12の出力パワーは、5W程度に限定されるものではなく、適宜設定し得る。但し、高出力の超短パルスレーザ光源は、極めて高価である。レーザ接合装置2の価格を低減する観点からは、必要以上に高出力ではない超短パルスレーザ光源12を用いることが好ましい。後述するように、本実施形態によるレーザ接合方法によれば、比較的小さいパワーのレーザビームを用いた場合であっても、高い接合強度を得ることが可能である。このため、本実施形態では、比較的小さい出力パワーのレーザ光源12を用いることが可能であり、レーザ接合装置2の価格の低減に寄与し得る。
【0023】
また、ここでは、レーザ光Aのパルス幅を700fs程度とする場合を例に説明したが、レーザ光Aのパルス幅は700fs程度に限定されるものではない。また、レーザ光Aのパルス幅は、フェムト秒のオーダーに限定されるものではなく、ピコ秒のオーダーであってもよい。本願の明細書及び特許請求の範囲において、超短パルスレーザ光とは、パルス幅がフェムト秒であるレーザ光に限定されるものではなく、パルス幅が数十ピコ秒以下であるピコ秒レーザ光をも含むものとする。また、本願の明細書及び特許請求の範囲において、フェムト秒レーザ光とは、パルス幅がフェムト秒であるレーザ光に限定されるものではなく、パルス幅が数十ピコ秒以下であるピコ秒レーザ光をも含むものとする。また、レーザ光源12から発せられるレーザ光Aの中心波長も、1045nm程度に限定されるものではなく、適宜設定し得る。
【0024】
レーザ光源12は、制御部14により制御される。レーザ光源12から出射されるレーザ光Aのパルス幅は、ユーザが入力操作部46を介して適宜設定し得る。なお、ユーザにより入力された各種の設定情報等は、制御部14に設けられた記憶部(図示せず)内に適宜記憶される。第1段階の走査においては、制御部14は、物体16と物体17とが接触又は近接している部位内にレーザ光Aが照射されるように、レーザ光源12を制御する。また、制御部14は、第1段階の走査においては、第1の焦点距離でレーザ光Aが照射されるように後述するステージ駆動部44を制御する。また、制御部14は、第2段階の走査においては、第1の焦点距離と異なる第2の焦点距離でレーザ光Aが照射されるようにステージ駆動部44を制御する。
図2は、レーザ光の波形を概念的に示すタイムチャートである。制御部14は、予め設定された繰り返し周波数、換言すれば、予め設定された繰り返し周期Tで、レーザ光源12からレーザ光Aのパルスを出射させる。レーザ光Aのパルスの繰り返し周波数は、例えば1MHzとする。レーザ光Aのパルスの繰り返し周波数は、ユーザが入力操作部46を介して適宜設定し得る。
【0025】
レーザ光Aを発するレーザ光源12の後段には、レーザ光Aのビーム径を調整するためのビームエキスパンダ13が設けられている。ビームエキスパンダ13の後段には、レーザ光Aの偏光方向を制御する1/2波長板26が設けられている。1/2波長板26の後段には、レーザ光Aの出力を調整する偏向ビームスプリッタ28が設けられている。1/2波長板26は、回転させることによりレーザ光の偏向方向を変更することができる光学素子である。偏光ビームスプリッタ28は、入射光の偏向成分を分岐することができる光学素子である。1/2波長板26を回転することによりレーザ光の偏光方向を変更すると、偏光ビームスプリッタ28において分岐される偏向成分の割合が変化する。1/2波長板26の回転角を適宜調整することにより、偏向ビームスプリッタ28から出射されるレーザ光Aのパワーを適宜調整することができる。1/2波長板26と偏向ビームスプリッタ28とが相俟って出力減衰器30が構成されている。このように、レーザ光源12から出射されるレーザ光Aのレーザ強度は、出力減衰器30により調整し得るようになっている。超短パルスレーザ光Aのレーザ強度は、ユーザが入力操作部46を介して適宜設定し得る。出力減衰器30により調整されたレーザ光Aのレーザ強度(パルスエネルギー)は、例えば1μJ/pulse〜3μJ/pulse程度とする。
【0026】
なお、ここでは、1/2波長板26と偏光ビームスプリッタ28とにより構成される出力減衰器30を用いてレーザ光Aのレーザ強度を調整する場合を例に説明したが、レーザ光Aのレーザ強度を調整する手段はこれに限定されるものではない。任意の調整手段を用いてレーザ光Aのレーザ強度を適宜調整し得る。
【0027】
偏向ビームスプリッタ28の後段には、レーザ光のビーム径を調整するためのビームエキスパンダ35が設けられている。ビームエキスパンダ35の後段には、ガルバノスキャナ36が配されている。ガルバノスキャナ36は、ミラーの角度を適宜変化させることによりレーザ光を高速で走査することができる光学機器である。ガルバノスキャナ36に導入されるレーザ光Aは、ガルバノスキャナ36のミラー38により反射されて、Fθ(F−Theta)レンズ40に導入されるようになっている。Fθレンズは、レーザ走査に用いられるレンズであり、回転ミラーで等角度走査されたレーザビームを結像面上で等速走査させる機能を有するレンズである。ガルバノスキャナ36とFθレンズ40とが相俟って、レーザ光Aを2次元走査する走査光学系42が構成されている。走査光学系42は、制御部14により適宜制御される。
【0028】
Fθレンズ40の下方には、ステージ18が位置している。ステージ18上には、接合の対象となる物体16、17が載置される。物体16、17の周囲の雰囲気は、例えば大気(空気)とする。ステージ18には、ステージ18を駆動するためのステージ駆動部44が接続されている。制御部14は、ステージ駆動部44を介してステージ18を駆動する。ステージ18は、XY軸ステージであってもよいし、XYZ軸ステージであってもよいし、XYZθ軸ステージであってもよい。ステージ18の上面の法線方向にステージ18を上下させることにより、物体16,17の所望の部位にレーザ光Aの集光点を設定することが可能である。
【0029】
このように、本実施形態では、物体16,17に所望の焦点距離でレーザ光Aを走査し得るようになっている。
【0030】
接合の対象となる物体16、17の材料は、特に限定されるものではない。ただし、物体16上に物体17を配した状態で、物体17の上方からレーザ光Aを照射することによりレーザ接合が行われるため、レーザ光Aが物体17を透過し、物体16と物体17とが接触又は近接している部位にレーザ光Aが達することを要する。このため、物体17の材量は、レーザ光Aに対して透明な材料であることを要する。物体17の材料としては、例えば半導体等が挙げられる。かかる半導体としては、例えば、Si(シリコン)、SiN(窒化ケイ素)、SiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)、GaO(酸化ガリウム)等が挙げられる。ここでは、物体17の材料として、例えばSiC等を用いる。
【0031】
なお、物体17の材料は、半導体に限定されるものではない。レーザ光Aに対して透明な材料であり、且つ、レーザ接合が可能な材料を、物体17の材料として広く用いることができる。レーザ光Aに対して透明な材料としては、ガラスや半導体等が挙げられる。従って、物体17の材料としてガラスを用いてもよい。かかるガラスとしては、例えば無アルカリガラス、青板ガラス、白板ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等が挙げられる。
【0032】
物体16の材料は、例えば金属等が挙げられる。かかる金属としては、例えばAl(アルミニウム),Cu(銅),Ti(チタン),Mo(モリブデン),V(バナジウム),Cr(クロム),Ni(ニッケル),Fe(鉄),Ag(銀),Sn(スズ),Au(金)又はこれらの合金が挙げられる。かかる合金としては、例えばCuW(銅タングステン)、SUS(ステンレス鋼)、インバー(Fe−36Ni)、コバール(Fe−29Ni−17Co)等が挙げられる。物体16の熱膨張率は、物体17の熱膨張率と大きく異ならないことが好ましい。物体16の熱膨張率と物体17の熱膨張率とが大きく異なる場合には、温度変化に伴って物体16との物体17との間に大きなストレスが生じ、物体16と物体17との接合が損なわれる虞があるためである。
【0033】
なお、物体16の材料は、金属に限定されるものではない。物体16の材料は、レーザ光Aに対して透明な材料であってもよいし、レーザ光Aに対して透明でない材料であってもよい。レーザ接合が可能な材料を、物体16の材料として広く用いることができる。例えば、物体16の材料が、半導体、セラミック、ガラス等であってもよい。かかる半導体としては、例えば、Si(シリコン)、SiN、SiC、GaN、GaO等が挙げられる。かかるセラミックとしては、例えば、AlN(窒化アルミニウム)、Al
2O
3(酸化アルミニウム)、Si
3N
4(窒化ケイ素)等が挙げられる。かかるガラスとしては、例えば無アルカリガラス、青板ガラス、白板ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等が挙げられる。
【0034】
ステージ18の上方には、CCDカメラ50が設けられている。CCDカメラ50により取得される画像は、制御部14に入力されるようになっている。制御部14は、CCDカメラ50により取得される画像を用いて、接合の対象となる物体16、17の位置決め等を行う。
【0035】
本実施形態では、接合の対象となる物体16、17に第1の焦点距離でレーザ光Aの照射を行った後、既にレーザ光Aを照射した箇所に、第1の焦点距離と異なる第2の焦点距離でレーザ光Aの更なる照射を行う。より具体的には、第1の焦点距離で第1回目(第1段階)のレーザ光Aの走査が完了した後、第1の焦点距離と異なる第2の焦点距離で第2回目(第2段階)のレーザ光の走査が行われる。焦点距離とは、レンズからレーザ光の焦点(集光点)までの距離のことである。
【0036】
第1回目の照射におけるレーザ光Aの焦点(集光点)は、例えば、物体16と物体17とが接触又は近接している部位の近傍における物体16の内部とする。物体16の上面とレーザ光Aの焦点との間の距離は、例えば30μm程度とする。即ち、物体16の上面から例えば30μm程度の深さの位置に、レーザ光Aの焦点が設定される。
【0037】
なお、第1回目の照射におけるレーザ光Aの焦点は、物体16と物体17とが接触又は近接している部位の近傍における物体16の内部に限定されるものではない。物体16と物体17とが接触又は近接している部位の近傍における物体17の内部に、レーザ光Aの焦点が位置するようにしてもよい。物体17の下面とレーザ光Aの焦点との間の距離は、例えば30μm程度とする。
【0038】
第2回目の照射におけるレーザ光Aの焦点は、例えば、物体16と物体17との境界(界面、中間位置)とする。
【0039】
本実施形態において、焦点距離を異ならせてレーザ光の照射を複数回行うのは、焦点距離を異ならせたレーザ光の照射を複数回行うと、高い接合強度が得られるためである。
【0040】
本実施形態において高い接合強度が得られるメカニズムは、必ずしも明確ではないが、以下のようなことが考えられる。即ち、物体16と物体17とが近接又は接触している部位の近傍における物体16又は物体17の内部に焦点を位置させてレーザ光Aの1回目の走査を行うと、物体16と物体17とが近接又は接触している部位の近傍において、物体16,17の内部に膨張が生ずると考えられる。物体16と物体17とが近接又は接触している部位の近傍において、物体16又は物体17の内部が膨張すると、物体16と物体17との密着性が向上すると考えられる。また、レーザ光Aの1回目の走査により、物体16と物体17とが近接又は接触している部位の近傍において、物体16の表層部や物体17の表層部に改質が生じると考えられる。このような状態で第2回目のレーザ光Aの照射を行うと、物体16と物体17との間において高い接合強度が得られると考えられる。
【0041】
高い接合強度が得られるメカニズムについては必ずしも明確ではないが、高い接合強度が得られること自体は事実である。このため、本実施形態では、焦点距離を異ならせて複数回のレーザ走査を行うようにしている。
【0042】
なお、焦点距離を異ならせた複数回のレーザ走査を行うと高い接合強度が得られることは、本願発明者らが初めて見いだしたものである。
【0043】
第2回目の照射におけるレーザ光Aの焦点(集光点)は、物体16と物体17との境界(界面、中間位置)に一致していなくてもよい。例えば、物体16と物体17との境界に対して若干上方又は若干下方にレーザ光Aの焦点が位置していてもよい。物体16と物体17との境界に対してレーザ光Aの集光点が若干ずれていたとしても、良好な接合を得ることは可能である。
【0044】
なお、ここでは、ガルバノスキャナ36を含む走査光学系42を用いてレーザ光Aを走査する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ミラー(図示せず)と集光レンズ(図示せず)とを用いて、物体16と物体17とが接触又は近接している部位にレーザ光Aを照射するようにしてもよい。
【0045】
物体16、17に対するレーザ光Aの走査を開始する前には、物体16、17の位置が所定の位置に設定される。制御部14は、ステージ制御部44を介してステージ18を適宜制御し、走査光学系42によるレーザ光の走査が可能な範囲内に物体16、17を位置させる。
【0046】
物体16、17に対するレーザ光Aの走査は、走査光学系42を制御することにより行われる。走査光学系42に対する制御は、例えば制御部14により行われる。走査光学系42は、ガルバノスキャナ36のミラー38を適宜回転させることにより、レーザ光の走査を行う。
【0047】
レーザ光の走査速度は、ユーザが入力操作部46を介して適宜設定し得る。レーザ光の走査速度は、例えば10mm/s程度とする。レーザ光Aの照射スポットの径は、例えば5〜30μm程度とする。
【0048】
レーザ光Aの走査を行う箇所、即ち、レーザ照射予定箇所は、予め制御部14にプログラムされていてもよいし、レーザ光の走査を開始する際にユーザが入力操作部46を介して設定するようにしてもよい。
【0049】
物体16、17に対するレーザ光Aの走査を開始する際には、例えば、ユーザが入力操作部46を介してレーザ光Aの走査の開始の指示を行う。
【0050】
図3は、本実施形態によるレーザ接合方法を示すフローチャートである。
【0051】
レーザ光Aの走査の開始の指示が入力されると、
図3に示すように、まず、第1の焦点距離で第1回目のレーザ光Aの走査が行われる(ステップS1)。
図4は、第1回目のレーザ光の走査の例を示す図である。
図4(a)は平面図であり、
図4(b)は断面図である。
図4(c)は、レーザ光の走査を示す概念図であり、レーザ照射範囲19の一部に対応するものである。第1回目の走査におけるレーザ光Aの焦点は、例えば、物体16と物体17とが接触又は近接している部位の近傍における物体16又は物体17の内部とする。制御部14は、レーザ光源12からレーザ光Aを繰り返し出射させつつ、走査光学系42を用いてレーザ光Aを走査する。レーザ光Aは、ステージ18上において例えば直線状の軌跡を描くように走査される。直線状の軌跡を描くレーザ光Aの走査を、平行に複数回行うことにより、レーザ照射予定範囲19(
図4(a)参照)の全体にレーザ光Aが照射される。
【0052】
レーザ照射範囲(レーザ照射予定範囲、接合領域、接合部)19は、例えば、物体16,17の四隅に設定される。各々のレーザ照射予定範囲19のサイズは、例えば1mm×1mm〜5mm×5mm程度とする。レーザ照射予定範囲19内において、直線状の軌跡を描くレーザ光の走査を、平行に複数回行うことにより、当該レーザ照射予定範囲19内全体にレーザ光が照射される。より具体的には、
図4(c)に示すように、所定の軌道を描くようにレーザ光Aの走査が行われる。まず、第1の方向にレーザ光Aを走査し、次に、所定の走査ピッチだけ走査軌道をずらして、第1の方向の反対の方向である第2の方向にレーザ光Aを走査する。次に、所定の走査ピッチだけ走査軌道をずらして、第1の方向にレーザ光Aを走査する。この後も同様にして、所定の走査ピッチずつ走査軌道をずらしてレーザ光Aの走査が繰り返し行われ、各々のレーザ照射範囲19全体に対してのレーザ光Aの走査が行われる。レーザ光Aの走査ピッチは、例えば50μm程度とする。
【0053】
レーザ光Aの照射スポットの中心領域は照射強度が比較的強い一方、レーザ光Aの照射スポットの中心領域を除く領域においては照射強度が比較的弱い。このため、レーザ光Aにより描かれる直線状の軌跡が互いにオーバーラップしないようにレーザ光Aを走査した場合には、照射ムラが生じ得る。レーザ照射予定範囲19に対してムラなくレーザ光Aを照射するためには、レーザ光Aにより描かれる直線状の軌跡が互いに部分的にオーバーラップするように、レーザ光Aを走査することが好ましい。
【0054】
なお、レーザ照射予定範囲19に対して必ずしもムラなくレーザ光Aを照射しなくてもよい。ある程度の照射ムラがあっても、所望の接合強度が得られればよい。また、レーザ光Aの軌跡は直線状に限定されるものではなく、例えば円形状であってもよい。
【0055】
また、ここでは、直線状の軌跡を描くレーザ光Aの走査を、平行に複数回行うことにより、レーザ照射予定範囲19内全体にレーザ光を照射する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。照射スポットの径が比較的大きいレーザ光Aを用い、走査を行うことなく、レーザ接合を行うようにしてもよい。
【0056】
第1回目のレーザ光Aの走査が完了した後には、制御部14は、第2回目のレーザ光Aの走査を行う(ステップS2)。
図5は、第2回目のレーザ光の走査の例を示す断面図である。第2回目のレーザ光Aの走査においては、第1の焦点距離と異なる第2の焦点距離にレーザ光Aの焦点距離が設定される。第2回目の走査におけるレーザ光Aの焦点は、例えば、物体16と物体17との境界(界面、中間位置)とする。レーザ光Aは、第1回目の走査と同様に、ステージ18上において例えば直線状の軌跡を描くように走査される。直線状の軌跡を描くレーザ光の走査を、平行に複数回行うことにより、第1回目の走査と同様に、各々のレーザ照射予定範囲19の全体にレーザ光Aが照射される。
【0057】
すべてのレーザ照射予定範囲19内へのレーザ光Aの照射が完了すると、制御部14は、レーザ光源10からのレーザ光Aの出射、及び、走査光学系42によるレーザ光の走査を終了させる。
【0058】
なお、ユーザが入力操作部46を介してレーザ光の走査の終了の指示を行うことにより、レーザ光の走査を終了させるようにしてもよい。
【0059】
次に、本実施形態によるレーザ接合方法の評価結果について説明する。評価は、以下のような条件で行った。実施例1,比較例1,比較例2のいずれにおいても、対物レンズの倍率は、10倍とした。また、実施例1,比較例1,比較例2のいずれにおいても、開口数NAは、0.26とした。また、実施例1,比較例1,比較例2のいずれにおいても、レーザビームのスポット径は、7.7μmとした。また、実施例1,比較例1,比較例2のいずれにおいても、レーザ光Aの繰り返し周波数は、2MHzとした。また、実施例1,比較例1,比較例2のいずれにおいても、レーザ光Aの走査長は、3mmとした。また、実施例1,比較例1,比較例2のいずれにおいても、スキャン本数は、20本とした。また、実施例1,比較例1,比較例2のいずれにおいても、レーザ光Aの走査ピッチは、50μmとした。また、実施例1,比較例1,比較例2のいずれにおいても、波長1045nm、パルス幅700fsのフェムト秒レーザを用いた。また、実施例1,比較例1,比較例2のいずれにおいても、走査速度は10mm/sとした。また、実施例1,比較例1,比較例2のいずれにおいても、物体16の材料としてアルミニウムを用いた。また、また、実施例1,比較例1,比較例2のいずれにおいても、物体17の材料としてSiCを用いた。
【0060】
実施例1では、焦点距離を異ならせてレーザ光Aの走査を2回行った。第1回目のレーザ光Aの走査における焦点は、物体16と物体17とが近接又は接触している部位の近傍における物体16の内部とした。物体16の表面から焦点までの距離を30μmとした。第2回目のレーザ光Aの走査における焦点は、物体16と物体17との界面(界面、中間位置)とした。レーザ光Aのパルスエネルギーは、0.7μJ/pulseとした。物体16,17に照射するレーザ光Aのパワーは、1.4Wとした。
【0061】
比較例1では、レーザ光Aの走査を1回行った。レーザ光Aの焦点は、物体16と物体17との界面(界面、中間位置)とした。レーザ光Aのパルスエネルギーは、1.4μJ/pulseとした。物体16,17に照射するレーザ光Aのパワーは、2.8Wとした。
【0062】
比較例2では、レーザ光Aの走査を1回行った。レーザ光Aの焦点は、物体16と物体17との界面(界面、中間位置)とした。レーザ光Aのパルスエネルギーは、0.7μJ/pulseとした。物体16,17に照射するレーザ光Aのパワーは、1.4Wとした。
【0063】
比較例1では、剪断加重は31.4Nであった。比較例2では、剪断加重は46.7Nであった。これに対し、実施例1では、剪断加重は65.7Nであった。
【0064】
実施例1におけるレーザ光Aのパルスエネルギーは、比較例2におけるレーザ光Aのパルスエネルギーの1/2である。一方、実施例1におけるレーザ光Aの走査回数は、比較例2におけるレーザ光Aの走査回数の2倍である。実施例1における単位面積当たりの照射エネルギーは、比較例2における単位面積当たりの照射エネルギーと同じである。それにもかかわらず、実施例1の剪断加重は、比較例2の剪断加重に対して十分に高くなっている。このことから、実施例1、即ち、本実施形態によるレーザ接合方法によれば、より効果的なレーザ接合を実現し得ることが分かる。
【0065】
また、比較例1では、接合幅は13μmであった。比較例2では、接合幅は13μmであった。これに対し、実施例1では、接合幅は20μmであった。
【0066】
また、比較例1では、剪断応力は53MPaであった。比較例2では、剪断応力は60MPaであった。これに対し、実施例1では、剪断応力は55MPaであった。なお、はんだ接合の場合には、剪断応力は50MPaであった。
【0067】
図6は、走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)像を示す図である。
図6(a)は、比較例1の場合におけるレーザ接合後の断面のSEM像を示しており、
図6(b)は、実施例1の場合におけるレーザ接合後の断面のSEM像を示している。
【0068】
図6(a)から分かるように、比較例1の場合には、アルミニウムより成る第1の物体16とSiCより成る第2の物体17との境界(界面)が明瞭である。
【0069】
これに対し、
図6(b)から分かるように、実施例1の場合には、アルミニウムより成る第1の物体16とSiCより成る第2の物体17との境界(界面)が不明瞭になっている。このことは、実施例1においては、第1の物体16と第2の物体17との界面において溶解が十分に生じ、接合が十分に行われていることを意味している。
【0070】
このように、本実施形態によれば、第1の焦点距離でレーザ光Aの走査を行った後、第1の焦点距離と異なる第2の焦点距離でレーザ光Aの更なる走査を行う。本実施形態によれば、接合強度を向上し得るため、信頼性の向上に寄与することができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、良好な接合が得られるため、第1の物体16と第2の物体17との間の電気抵抗を低減することもできる。また、本実施形態によれば、良好な接合が得られるため、第1の物体16と第2の物体17との間の熱伝導性も向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態では、レーザ光源12として、出力パワーが比較的小さいレーザ光源を用いることができる。このため、本実施形態によれば、低コスト化の要請に応えることもできる。
【0073】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による半導体装置及びその製造方法について図面を用いて説明する。
図7乃至
図13は、本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図7乃至
図9,
図11乃至
図13における(a)は平面図である。
図7乃至
図9、及び、
図11乃至
図13における(b)は断面図である。
図10は断面図である。
図7乃至
図9、及び、
図11乃至
図13における(b)は、
図7乃至
図9、及び、
図11乃至
図13における(a)のX−X′断面にそれぞれ対応している。
図1乃至
図6に示す第1実施形態によるレーザ接合方法及びレーザ接合装置と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔にする。
【0074】
ここでは、SiC(炭化ケイ素)材料を用いたパワー半導体を例に説明するが、これに限定されるものではなく、本発明は様々な半導体装置を製造する際に適用し得る。
【0075】
まず、
図7に示すように、外部接続端子(リードフレーム、リード端子)16a〜16cを用意する。外部接続端子16a〜16cのうちの中央の外部接続端子16aは、外部ドレイン電極である。外部ドレイン電極16aの両側には、外部ゲート電極16bと外部ソース電極16cとが配されている。外部接続端子16a〜16cは、図示しない部材により相対的な位置関係が固定されている。
【0076】
外部接続端子16a〜16cの材料は、例えば、金属とする。外部接続端子16a〜16cの材料の熱膨張率と半導体チップ17aの材料の熱膨張率とは、大きく異ならないことが好ましい。半導体チップ17aと同様に熱膨張率が小さい材料としては、例えばインバーやコバール等が挙げられる。但し、インバーやコバールは、必ずしも十分に電気抵抗が低いとはいえない。このため、インバーやコバールを外部接続端子16a〜16cの材料として用いる場合には、導電性が十分に低い材料により外部接続端子16a〜16cを被覆する。外部接続端子16a〜16cを被覆する被覆層(図示せず)の材料としては、例えば銅(Cu)等が挙げられる。銅の被覆層は、例えばめっき法等により形成し得る。
【0077】
次に、
図8に示すように、外部ドレイン端子16a上に半導体チップ(パワー半導体)17aを配する。半導体チップ17aの基板の材料としては、例えばSiCが用いられている。半導体チップ17aの裏面側は、ドレイン(図示せず)となっている。半導体チップ17aの表面側には、ソース(図示せず)とドレイン(図示せず)とが形成されている。
【0078】
次に、
図4を用いて上述した第1実施形態によるレーザ光Aの走査と同様にして、第1の焦点距離でレーザ照射予定領域19内にレーザ光Aを走査する(
図9参照)。レーザ照射予定領域19は、半導体チップ17aのうちの回路や電極が形成されていない領域とする。
【0079】
次に、
図5を用いて上述した第1実施形態によるレーザ光Aの走査と同様にして、第1の焦点距離と異なる第2の焦点距離でレーザ照射予定領域19内にレーザ光Aを走査する(
図10参照)。こうして、外部接続電極16aと半導体チップ17aとが接合される。
【0080】
次に、
図11に示すように、半導体チップ17a上に、ゲート電極52aとソース電極52bとを形成する。例えば、ゲート電極52aとソース電極52bの平面形状の開口部が形成された金属マスク等をマスクとして、スパッタリング法等により金属膜を成膜することにより、ゲート電極52a及びソース電極52bを半導体チップ17a上に形成することができる。
【0081】
次に、
図12に示すように、ボンディングワイヤ54aを用いて、ゲート電極52aと外部ゲート電極16bとを電気的に接続する。また、ボンディングワイヤ54bを用いて、ソース電極52bと外部ソース電極16cとを電気的に接続する。ボンディングワイヤ54aをゲート電極52aや外部ゲート電極16bに接合する際や、ボンディングワイヤ54bをソース電極52bや外部ソース電極16cに接合する際には、例えば超音波溶着等が用いられる。
【0082】
次に、
図13に示すように、モールド材60を用いて封止を行う。半導体チップ17aやボンディングワイヤ54a等は、モールド材60により封止される。外部接続端子16a〜16cの一部がモールド材60から突出した状態となる。モールド材60の材料としては、耐熱温度が十分に高い材料を用いる。例えば、融点が500℃程度の多成分ガラス等をモールド材60の材料として用いることができる。例えば、多成分ガラス材料を加熱・溶融し、外部接続端子16a〜16cの一部を多成分ガラス材料から突出させた状態で、多成分ガラス材料を徐々に冷却・硬化させることにより、封止を行う。
【0083】
こうして、本実施形態による半導体装置62が製造される。
【0084】
このように、外部接続端子16aと半導体チップ17aとを接合する際に、上述した第1実施形態によるレーザ接合方法を適用するようにしてもよい。本実施形態によれば、融点が比較的低いはんだ等を用いることなく、外部接続端子16aと半導体チップ17aとを接合し得るため、半導体チップ17aが高温になったとしても、外部接続端子16aと半導体チップ17aとの接合状態が損なわれることはない。従って、本実施形態によれば、信頼性の高い半導体装置を簡便な工程で製造することができる。
【0085】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態による半導体装置の製造方法について図面を用いて説明する。
図14乃至
図19は、本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
図14乃至
図17、及び、
図19における(a)は平面図であり、
図14乃至
図17,及び、
図19における(b)は断面図である。
図18は、断面図である。
図14乃至
図17,
図19における(b)は、
図14乃至
図17,
図19における(a)のX−X′断面にそれぞれ対応している。
図1乃至
図13に示す第1又は第2実施形態によるレーザ接合方法及びレーザ接合装置等と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔にする。
【0086】
本実施形態による半導体装置は、外部接続端子16aに形成した凹部56内にはんだ58を充填し、半導体チップ17aの裏面(底面)の一部がはんだ58と接続されるようにするものである。
【0087】
まず、
図14に示すように、外部接続端子(リードフレーム、リード端子)16a〜16cを用意する。外部接続端子16a〜16cのうちの中央の外部接続端子16aは、外部ドレイン電極である。外部ドレイン電極16aには、凹部56が形成されている。かかる凹部56は、半導体チップ17aが配される箇所の中央部に位置するように形成されている。かかる凹部56は、後述するように、はんだ58を充填するためのものである。外部ドレイン電極16aの両側には、外部ゲート電極16bと外部ソース電極16cとが配されている。外部接続端子16a〜16cは、図示しない部材により相対的な位置関係が固定されている。
【0088】
次に、
図15に示すように、外部接続端子16aの凹部56内にはんだ58を充填する。はんだ58は凹部56内において固化される。凹部56内に充填されたはんだ58と外部接続端子16aとの間のコンタクト抵抗は、十分に小さくなる。
【0089】
次に、
図16に示すように、外部接続端子16a上に半導体チップ(パワー半導体)17aを配する。凹部56内に充填されたはんだ58は、半導体チップ17aの裏面の中央部と接する。
【0090】
次に、
図4を用いて上述した第1実施形態によるレーザ光Aの走査と同様にして、第1の焦点距離でレーザ照射予定領域19内にレーザ光Aを走査する(
図17参照)。レーザ照射予定領域19は、半導体チップ17aのうちの回路や電極が形成されていない領域とする。
【0091】
次に、
図5を用いて上述した第1実施形態によるレーザ光Aの走査と同様にして、第1の焦点距離と異なる第2の焦点距離でレーザ照射予定領域19内にレーザ光Aを走査する(
図18参照)。こうして、外部接続電極16aと半導体チップ17aとが接合される。
【0092】
次に、
図11を用いて上述した第2実施形態による半導体装置の製造方法と同様にして、半導体チップ17a上に、ゲート電極52aとソース電極52bとを形成する。
【0093】
次に、
図12を用いて上述した第2実施形態による半導体装置の製造方法と同様にして、ボンディングワイヤ54aを用いて、ゲート電極52aと外部ゲート電極16bとを電気的に接続する。また、ボンディングワイヤ54bを用いて、ソース電極52bと外部ソース電極16cとを電気的に接続する。
【0094】
次に、
図13を用いて上述した第2実施形態による半導体装置の製造方法と同様にして、モールド材60により封止を行う。第2実施形態による半導体装置の製造方法と同様に、モールド材60の材料としては、耐熱温度が十分に高い材料を用いる。例えば、融点が500℃程度の多成分ガラス等をモールド材60の材料として用いる。例えば、多成分ガラス材料を加熱・溶融し、外部接続端子16a〜16cの一部を多成分ガラス材料から突出させた状態で、多成分ガラス材料を徐々に冷却・硬化させることにより、封止を行う。はんだ58の融点は、モールド材60の融点より低い。このため、モールド材60による封止を行う際に、はんだ58が溶融し、モールド材60を冷却・硬化させる際に、はんだ58も固化する。はんだ58と半導体チップ17aの裏面との間のコンタクト抵抗は、十分に小さくなる。
【0095】
こうして、本実施形態による半導体装置62aが製造される(
図19参照)。
【0096】
こうして得られた半導体装置62aを実際に使用すると、半導体チップ17aが高温になることもある。半導体チップ17aの裏面の温度がはんだ58の融点を超えた場合には、はんだ58が溶融する。はんだ58が溶融したとしても、はんだ58は凹部56内に留まっており、特段の問題は生じない。はんだ58が溶融していない状態で半導体装置62aを使用しても、はんだ58が溶融した状態で半導体装置62aを使用しても、はんだ58と半導体チップ17aの裏面との間におけるコンタクト抵抗は十分に小さく維持される。
【0097】
このように、外部接続端子16aに形成した凹部56内にはんだ58を充填し、凹部56内に充填されたはんだ58が半導体チップ17aの裏面に接するようにしてもよい。本実施形態によれば、半導体チップ17aと外部接続端子16aとの間において十分に小さいコンタクト抵抗が得られるため、電気的特性及び信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0098】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態による電子装置の製造方法について図面を用いて説明する。
図20は、本実施形態による電子装置の製造方法を示す工程断面図である。
図1乃至
図19に示す第1乃至第3実施形態によるレーザ接合方法及びレーザ接合装置等と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔にする。
【0099】
まず、
図20(a)に示すように、導電膜16d、16eが形成された基板64を用意する。基板64は、例えばセラミック基板とする。導電膜16d、16eの材料は、例えば銅やアルミニウムとする。導電膜16d、16eは、所望の形状にパターニングされている。ここでは、導電膜16dをパターニングすることにより形成された電極と半導体チップ17bとをレーザ接合する場合を例に説明する。
【0100】
次に、
図20(b)に示すように、基板64上に形成された電極16d上に、半導体チップ(パワー半導体)17bを配する。
【0101】
次に、
図4を用いて上述した第1実施形態によるレーザ光Aの走査と同様にして、第1の焦点距離でレーザ照射予定領域19内にレーザ光Aを走査する(
図20(c)参照)。レーザ照射予定領域19は、半導体チップ17aのうちの回路や電極が形成されていない領域とする。
【0102】
次に、
図5を用いて上述した第1実施形態によるレーザ光Aの走査と同様にして、第1の焦点距離と異なる第2の焦点距離でレーザ照射予定領域19内にレーザ光Aを走査する(
図20(d)参照)。こうして、外部接続電極16aと半導体チップ17aとが接合される。
【0103】
こうして、本実施形態による電子装置66が製造される(
図20(e)参照)。
【0104】
このように、基板64上に形成された電極16dと半導体チップ17bとをレーザ接合する際にも、本発明を適用することができる。
【0105】
[変形実施形態]
上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0106】
例えば、第2及び第3実施形態では、半導体装置を製造する場合を例に説明し、第4実施形態では、電子部品を製造する場合を例に説明したが、本発明は、様々な製品(物品)を製造する際に適用することができる。例えば、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等をガラスキャップにより封止する際に、本発明を適用するようにしてもよい。また、有機EL素子やMEMS素子をパッケージングする際に、本発明を適用するようにしてもよい。
【0107】
また、第1乃至第4実施形態では、物体17、17a、17bの四隅にレーザ照射範囲19を設定する場合を例に説明したが、レーザ照射範囲19は物体17、17a、17bの四隅に限定されるものではない。例えば、
図21及び
図22に示すように、物体17、17a、17bの周縁に沿うようにレーザ照射範囲19aを設定してもよい。
図21及び
図22は、レーザ光の走査の他の例を示す図である。
図21は、第1回目のレーザ光Aの走査の例を示しており、
図22は、第2回目のレーザ光Aの走査の例を示している。
図21(a)は平面図であり、
図21(b)及び
図22は断面図である。
図21(c)は、レーザ光の走査を示す概念図であり、レーザ照射範囲19aの角部に対応するものである。このように、物体17、17a、17bの周縁に沿うようにレーザ照射範囲19aを設定してもよい。