(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の蓄電素子においては、集電体上に合剤層等を積層した後に圧縮(プレス)によって電極板を作製するときに、一部の二次粒子が解砕する。従って、上記の蓄電素子においては、この解砕後に、粒子間の界面が増加するため(解砕後に、粒子間の集電性が不良となるため)、抵抗が上昇するという問題があった。このように、上記二次粒子を含有する従来の電極板を備えた蓄電素子においては、抵抗の上昇が必ずしも十分に抑制されていない。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、抵抗の上昇が十分に抑制された蓄電素子及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る蓄電素子は、
第1電極板と、該第1電極板とは反対の極性を有する第2電極板と、第1及び第2電極板間に配されたセパレータとを備え、
第1電極板は、集電体と、該集電体上に積層された合剤層とを含み、
合剤層は、結着剤及び導電助剤の少なくともいずれか一方と、活物質の一次粒子
が複数集合して内側に中空領域を有するように形成された二次粒子と
、該二次粒子とは独立して存在し且つ二次粒子の間に配置された活物質の一次粒子とを含有し、結着剤及び導電助剤の少なくともいずれか一方の一部が中空領域に配されている。
【0008】
ここで、「内側に中空領域を有する」ことには、集合した一次粒子によって覆われている中空領域を内側に有することの他、該一次粒子によって部分的に覆われていない中空領域を内側に有することも含まれる。
【0009】
斯かる構成によれば、第1電極板において結着剤及び導電助剤の少なくともいずれか一方が中空領域に配されていることによって、中空領域に起因する抵抗の上昇が抑制される。
従って、抵抗の上昇が十分に抑制された蓄電素子が得られる。
【0010】
また、本発明に係る蓄電素子の1つの態様としては、合剤層が細孔を有しており、該細孔の平均孔径が、0.01〜0.1μmである態様が採用される。
【0011】
斯かる構成によれば、細孔の平均細孔粒子径が0.01〜0.1μmであることによって、合剤層中での活物質粒子同士の接触状態がより密なものとなる。これにより、抵抗の上昇がより十分に抑制された蓄電素子が得られる。
【0012】
本発明に係る蓄電素子の他の態様としては、合剤層が含有する活物質が、リン酸鉄リチウムである態様が採用される。
【0013】
本発明に係る蓄電素子の他の態様としては、一次粒子の平均粒子径が、100〜500nmである態様が採用される。
【0014】
本発明に係る蓄電素子の他の態様としては、積層された集電体と合剤層とは、厚み方向に50〜500kgf/cmの圧縮力で圧縮されることによって形成されている態様が採用される。
【0015】
本発明に係る蓄電素子の他の態様としては、結着剤がポリフッ化ビニリデンである態様が採用される。
本発明に係る蓄電素子の他の態様としては、導電助剤がアセチレンブラックである態様が採用される。
【0016】
本発明に係る蓄電素子の他の態様としては、第1電極板が、集電体と合剤層との間に、導電層をさらに含み、合剤層に構成材料として配合された一次粒子の一部が導電層内に存在している態様が採用される。
【0017】
斯かる構成によれば、第1電極板において、合剤層に構成材料として配合された一次粒子の一部が導電層内に存在していることによって、合剤層と導電層との接触状態が、比較的密なものとなる。これにより、二次粒子の経時的な形状変化や、充放電の繰り返しに伴う該二次粒子の膨張及び収縮が生じても、合剤層と導電層との接触状態が疎なものとなることが抑制される。しかも、導電層と集電層との接触によって、導電層と集電層との間の導電性は十分に維持されている。
従って、抵抗の上昇をより十分に抑制することができる。
【0018】
また、本発明に係る蓄電素子の製造方法は、
電極板を作製する電極板作製工程と、
該電極板作製工程で作製された第1電極板と、該第1電極板とは反対の極性を有する第2電極板とを、セパレータを介して重ね合わせる重ね合わせ工程とを備え、
電極板作製工程は、
結着剤及び導電助剤の少なくともいずれか一方と、活物質の一次粒子が複数集合して内側に中空領域を有するように形成された二次粒子と、有機溶媒とを、せん断力を加えながら混合して、結着剤及び導電助剤の少なくともいずれか一方、並びに、有機溶媒の各一部が中空領域に配されてなる合剤ペーストを調製する工程と、
該合剤ペーストを集電体上に塗布し、有機溶媒を除去して、集電体上に合剤層を積層する工程と、
合剤層を積層する工程で得られた積層体を、厚み方向に圧縮
して前記二次粒子の一部を解砕する圧縮工程とを含む。
【0019】
斯かる構成によれば、結着剤及び導電助剤の少なくともいずれか一方、並びに、有機溶媒がそれぞれ中空領域に入り込んでなる合剤ペーストを集電体上に塗布し、有機溶媒を除去して合剤層が形成されることによって、中空領域に結着剤及び導電助剤の少なくともいずれか一方が配された合剤層を有する電極板が作製される。
これにより、上記のように、抵抗の上昇が十分に抑制された蓄電素子が得られる。
【0020】
また、本発明に係る蓄電素子の製造方法の1つの態様としては、
電極板作製工程が、集電体上に導電層を積層する工程をさらに含み、
該導電層を積層する工程を行った後、該導電層上に合剤層を積層する工程を行う態様が採用される。
【0021】
斯かる構成の製造方法によれば、合剤層に構成材料として配合された一次粒子の一部が導電層内に存在していることによって、合剤層と導電層との接触状態が、比較的密なものである第1電極板が作製される。これにより、二次粒子の経時的な形状変化や、充放電の繰り返しに伴う該二次粒子の膨張及び収縮が生じても、合剤層と導電層との接触状態が疎なものとなることが、抑制される。しかも、導電層と集電体との接触によって、導電層と集電体との間の導電性は、十分に維持されている。従って、抵抗の上昇が一層十分に抑制された蓄電素子が得られる。
【発明の効果】
【0022】
以上の通り、本発明によれば、抵抗の上昇が十分に抑制された蓄電素子及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る蓄電素子について、該蓄電素子が非水電解液二次電池である場合を例に挙げて、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
(第1実施形態)
図1、
図2に示すように、本発明に係る第1実施形態の蓄電素子としての非水電解液二次電池1は、容器2と、容器2内に収容された、電極群としての発電要素10と、容器2内に収容された電解質としての電解液20とを備えている。
発電要素10は、第1電極板としての正極板11、及び、該正極板11とは反対の極性を有する第2電極板としての負極板13と、これら電極板の間に配されたセパレータ15とを備え、これらが積層されて構成されている。
【0026】
容器2は、開口が形成され発電要素10を収容する箱状の容器本体3と、容器本体3の開口を覆う長方形状の蓋部材4とを備えている。容器本体3及び蓋部材4は、例えばステンレス鋼板で形成され、互いに溶接されている。
【0027】
蓋部材4の外面には、絶縁材料から形成された2つの外部ガスケット5が取り付けられている。蓋部材4には、2つの開口が形成されている。外部ガスケット5には、1つの開口が形成されている。蓋部材4の一方の開口と一の外部ガスケット5の開口とは、連なっている。同様に、蓋部材4の他方の開口と他の外部ガスケット5の開口とは、連なっている。外部ガスケット5のそれぞれの内部には、外部端子21が収容されている。
【0028】
外部端子21は、外部ガスケット5の開口と、蓋部材4の開口とを貫通して容器本体3の内部に突出している。外部端子21の突出部分は、発電要素10の正極板11又は負極板13にそれぞれ接続された集電部(不図示)と、接続されている。
なお、集電部の形状は、特に限定されないが、例えば板状である。集電部は、接続される電極部材と同じ種類の金属部材から形成されている。外部端子21は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金等のアルミニウム系合金材料で形成されている。
【0029】
外部ガスケット5及び外部端子21としては、正極用と負極用とが設けられている。正極用の外部ガスケット5及び外部端子21は、蓋部材4の長手方向における一端側に配され、負極用の外部ガスケット5及び外部端子21は、該長手方向における他端側に配されている。
【0030】
蓋部材4は、電解液20を容器本体3内に注入するための注入口6を有しており、この注入口6は、電解液20の注入後に封止されるようになっている。
【0031】
容器本体3内には、発電要素10が収容されていている。容器本体3内には、1つの発電要素10が収容されていてもよく、複数の発電要素10が収容されていてもよい。後者の場合には、複数の発電要素10は、電気的に並列に接続されている。
【0032】
正極板11は、正極集電体11aと、該正極集電体11a上に積層された正極合剤層11bとを備えている。
なお、斯かる正極板11の詳細については、後述する。
【0033】
負極板13は、銅箔等の負極集電体13a上に負極合剤層13bが配されて形成されている。具体的には、負極板13は、負極集電体13aと、負極活物質を含有する層状の負極合剤層13bとを備えており、負極集電体13a上に、負極合剤層13bが積層されて形成されている。
【0034】
斯かる負極合剤層13bに含有されている負極活物質としては、例えば、非晶質炭素、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、黒鉛等の炭素系物質等が挙げられる。
なお、負極合剤層13bは、上記負極活物質の他に、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の結着剤を含み、アセチレンブラック等の導電助剤等を有していてもよい。
【0035】
負極合剤層11bの厚みは、特に限定されるものではないが、通常、20μm〜200μm程度である。
【0036】
セパレータ15は、正極板11と負極板13の電気的な接続を遮断しつつ、電解液20の通過を許容するものである。斯かるセパレータ15としては、例えばポリエチレン等のポリオレフィン樹脂から形成された多孔質膜等が挙げられる。斯かる多孔質膜には、可塑剤、酸化防止剤、難燃剤等の添加剤が含有されていてもよい。
【0037】
電解液20は、有機溶媒に電解質塩が溶解されることにより調製されている。
電解液20に用いられる有機溶媒としては、特に制限はなく、例えばエーテル類、ケトン類、ラクトン類、ニトリル類、アミン類、アミド類、硫黄化合物、ハロゲン化炭化水素類、エステル類、カーボネート類、ニトロ化合物、リン酸エステル系化合物、スルホラン系炭化水素類等が挙げられる。
これらのうちでも、エーテル類、ケトン類、エステル類、ラクトン類、ハロゲン化炭化水素類、カーボネート類、スルホラン系化合物が好ましい。
これらの例としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アニソール、モノグライム、4−メチル−2−ペンタノン、酢酸エチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、1,2−ジクロロエタン、γ−ブチロラクトン、ジメトキシエタン、メチルフォルメイト、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルチオホルムアミド、スルホラン、3−メチル−スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルおよびこれらの混合溶媒等が挙げられる。
有機溶媒は、好ましくは、環状カーボネート類および環状エステル類である。有機溶媒は、もっとも好ましくは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、およびジエチルカーボネートのうち、1種または2種以上した混合物である。
また、電解液20に用いられる電解質塩としては、特に制限はないが、LiClO
4、LiBF
4、LiAsF
6、CF
3SO
3Li、LiPF
6、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2、LiI、LiAlCl
4等およびそれらの混合物が挙げられる。
電解質塩は、好ましくは、LiBF
4及びLiPF
6の1種または2種以上を混合したリチウム塩である。
なお、電解液20は、上記の有機溶媒及び電解質塩を含有する電解液に特に限定されるものではない。
また、上記の他、電解質として、補助的に固体のイオン導伝性材料から形成された膜(固体電解質膜)がさらに用いられ得る。膜が用いられる場合、非水電解液二次電池1が、正極板11と負極板13とこれらの間に配されたセパレータ15及び固体電解質膜と、電解液20とで形成され得る。また、非水電解液二次電池1が、正極板11と負極板13とこれらの間に配された固体電解質膜と、電解液20とで形成され得る。
また、固体電解質膜が、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルまたはポリエチレングリコール、およびこれらの変成体等から形成されている有機固体電解質であることは、有機固体電解質が軽量で柔軟性があるため、固体電解質膜を巻回する場合に有利である。固体電解質膜は、上記の他、無機固体電解質、または、有機固体電解質と無機固体電解質との混合材料等を用いて形成され得る。
【0038】
そして、本実施形態の正極板11は、正極集電体11aと、該正極集電体11a上に積層された正極合剤層11bとを備えている。また、正極合剤層11bは、結着剤22と、導電助剤27と、活物質の一次粒子24と、該一次粒子24が複数集合して内側に中空領域Rを有するように形成された二次粒子25(二次粒子球)とを含有している。また、結着剤22及び導電助剤27の一部が中空領域Rに配されている。
【0039】
正極集電体11aとしては、例えば、アルミ箔等が挙げられる。斯かる正極集電体11aの厚みは、通常、10〜30μm程度である。
【0040】
図3に示すように、正極合剤層11bは、結着剤22と、正極活物質の一次粒子24と、該一次粒子24が複数集合して内側に中空領域Rを有するように形成された二次粒子25(
図4参照)とを含有している。換言すると、正極合剤層11bは、結着剤22と、正極活物質の一次粒子24とを含有し、正極合剤層11b中では、一次粒子24が複数集合して内側に中空領域Rを有するように二次粒子球を形成している。
【0041】
結着剤22としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)が挙げられる。
【0042】
導電助剤27としては、例えば、上記と同様、カーボンブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。
【0043】
正極活物質としては、例えば、化学式LiFePO
4で表されるリン酸鉄リチウム、LiMnPO
4、Li
3V
2(PO
4)
3等が挙げられる。
【0044】
正極活物質の一次粒子24の平均粒子径は、例えば、100〜500nmである。斯かる平均粒子径は、SEM観察によって測定される。
【0045】
また、斯かる一次粒子24が集合して、内側に中空領域Rを有するように形成された二次粒子25は、例えば、スプレードライ法を用いて製造される。
具体的には、例えば、リチウム源としての水酸化リチウム一水和物(LiOH・H
2O)と、鉄源としての硫酸鉄七水和物(FeSO
4・7H
2O)と、リン酸源としてのリン酸(H
3PO
4)との混合溶液が調製される。調製された混合溶液が、噴霧乾燥機(スプレードライヤー)を用いて噴霧乾燥される。該噴霧乾燥装置としては、例えば、スプレードライヤー(大川原化工機社製)が用いられる。該噴霧乾燥においては、例えば噴霧乾燥機の入口の乾燥温度が140℃、出口の乾燥温度が110℃に設定され、二流体ノズルで混合溶液と空気との混合物が噴霧乾燥機内に噴霧されて乾燥された後、700℃で5時間、窒素気流中で焼成される。これにより、リン酸鉄リチウムが合成されて該リン酸リチウムの一次粒子24が形成されると共に、該リン酸鉄リチウムの一次粒子24が集合し、内部に中空領域Rを有するように形成された二次粒子25が作製される。
【0046】
なお、二次粒子25の形状は、内側に電解液20が浸透され得る中空領域Rを有していれば、特に限定されるものではない。また、二次粒子25が内側に有する中空領域Rは、集合した一次粒子24によって覆われていても、部分的に覆われていなくてもよい。
【0047】
上記の二次粒子25(二次粒子球25)の平均粒子径は、例えば、5〜20μmである。斯かる平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製)によって測定される。
【0048】
結着剤22及び導電助剤27の少なくとも一方が中空領域R内に配されていることは、電極中の活物質断面の走査型二次電子顕微鏡観察や、同断面の電子線マクロアナライザー分析によって、確認され得る。
また、結着剤22及び導電助剤27の少なくとも一方が中空領域Rに配されている程度は、上記断面の電子線マイクロアナライザー分析やエネルギー分散型X線分光法によって測定され得る。
【0049】
正極合剤層11bは、後述するように、正極集電体11a及び正極合剤層11bが積層されてなる積層体が、厚み方向に圧縮されることによって形成されていることが好ましい。即ち、正極合剤層11bは、
図3に示すように、正極合剤層11b中における二次粒子25の一部が解砕されて形成されていることが好ましい。
このように、二次粒子25の一部が解砕されて正極合剤層11bが形成されていることによって、正極活物質粒子23同士の接触状態が、より密なものとなる。また、上記解砕で得られた正極活物質粒子23同士間に導電助剤が介在され得る。従って、抵抗の上昇が、より抑制された電極板が得られる。
【0050】
このように、正極合剤層11bは、正極集電体11aと積層された状態で圧縮される。これにより、正極合剤層11bは、二次粒子25の一部が解砕されて中空領域Rを有しなくなった二次粒子を含有し得る。正極合剤層11bは、このような中空領域Rを有しなくなった二次粒子を含有していてもよい。
【0051】
また、正極合剤層11bは細孔を有しており、該細孔の平均孔径は、0.01〜0.1μmであることが好ましく、0.05〜0.1μmであることがより好ましい。該細孔の平均孔径が、0.01〜0.1μmであることによって、正極合剤層11b中での二次粒子の接触状態がより密なものとなる。これにより、抵抗の上昇がより十分に抑制された正極電極板11が得られる。
斯かる細孔の平均孔径は、自動細孔分布測定装置(トライスターII 3020、島津製作所製)によって測定される。
また、斯かる細孔の平均孔径は、後述するように、正極集電体11a及び正極合剤層11bとを積層された状態で厚み方向に圧縮するときの圧縮力を変更することによって、適宜調整され得る。
【0052】
正極合剤層11bの厚みは、特に限定されるものではないが、通常、20μm〜200μm程度である。また、正極活物質粒子23に占める一次粒子24と二次粒子25の量比は、特に限定されるものではなく、抵抗上昇の抑制の程度等に応じて適宜設定されればよい。
【0053】
上記の通り、本実施形態の正極板11は、正極集電体11aと、該正極集電体11a上に積層された正極合剤層11bとを備え、正極合剤層11bは、結着剤22と、導電助剤27と、活物質の一次粒子24と、該一次粒子24が複数集合して内側に中空領域Rを有するように形成された二次粒子25とを含有している。また、例えば、結着剤22及び導電助剤27の両方の各一部が中空領域Rに配されてなる。
【0054】
斯かる構成によれば、正極合剤層11bが、中空領域Rを有するように形成された二次粒子25を含有しており、結着剤22及び導電助剤27がそれぞれ中空領域Rに配されていることによって、中空領域Rに起因する抵抗の上昇が抑制される。従って、抵抗の上昇が十分に抑制された正極板11が得られる。
【0055】
また、本実施形態の非水電解液二次電池1は、上述した正極板11と、負極板13と、両電極板間に配されたセパレータ15とを備えている。斯かる構成によれば、上述した正極板11を備えているため、抵抗の上昇が十分に抑制された非水電解液二次電池1が得られる。
【0056】
続いて、本実施形態の非水電解液二次電池1の製造方法について説明する。
本実施形態の製造方法は、
電極板を作製する電極板作製工程と、
該電極板作製工程で作製された第1電極板と、該第1電極板とは反対の極性を有する第2電極板とを、セパレータを介して重ね合わせる重ね合わせ工程とを備え、
電極板作製工程は、
結着剤及び導電助剤の少なくともいずれか一方と、活物質の一次粒子が複数集合して内側に中空領域を有するように形成された二次粒子と、有機溶媒とを、せん断力を加えながら混合して、結着剤及び導電助剤の少なくともいずれか一方、並びに、有機溶媒の各一部が中空領域に配されてなる合剤ペーストを調製する工程と、
該合剤ペーストを集電体に沿って塗布し、有機溶媒を除去して、集電体に沿って合剤層を積層する工程と、
合剤層を積層する工程で得られた積層体を、厚み方向に圧縮する圧縮工程とを含む。
【0057】
ここで、「せん断力を加えながら混合する」とは、物質を混合するプロセスにおいて、微視的に発生するせん断力(シアーフォースとも呼ばれ、変形に抵抗する力)を物質に加え、それによりひずみ空間を生じやすくさせて、物質の混合を促進させる操作を意味する。
この操作においては、例えば、ミクロな分子レベルの混合では、化学ポテンシャル的に不利な状況であっても、外力を加えることによって混合現象を促進させる。この操作においては、例えば、本発明のようなマクロな粒子レベルの混合では、化学ポテンシャル的に有利な状況であっても、混合後の目的物を得るためのエネルギーバリアが高いため、外力としてせん断力を加えて混合を促進させる。
【0058】
本実施形態の非水電解液二次電池1の製造方法は、
正極板11を作製する正極板作製工程と、負極板13を作製する負極板作製工程とを電極板作製工程として備え、さらに、
正極板作製工程で作製された正極板11と、負極板13とを、セパレータ15を介して重ね合わせる重ね合わせ工程を備えている。
【0059】
まず、正極板作製工程について説明する。
【0060】
具体的には、正極板作製工程は、例えば、合剤ペーストを調製する工程として、正極合剤ペーストを調製する工程(正極合剤ペースト調製工程)を備える。
また、正極板作製工程は、例えば、合剤層を積層する工程として、正極合剤層11bを積層する工程(正極合剤層積層工程)を備える。
また、正極板作製工程は、正極合剤層積層工程で得られた積層体を厚み方向に圧縮する工程を備える。
【0061】
正極合剤ペースト調製工程では、結着剤22と、導電助剤27と、活物質の一次粒子24と、該一次粒子24が複数集合して内側に中空領域Rを有するように形成された二次粒子25と、有機溶媒とを、せん断力を加えながら混合する。そして、結着剤及び導電助剤の少なくとも一方並びに有機溶媒の各一部が中空領域に配されてなる正極合剤ペーストを調製する。
例えば、正極合剤ペースト調製工程においては、まず、二次粒子25と、結着剤22と、導電助剤27と、N−メチルピロリドン等の有機溶媒とを、せん断力を加えながら混合する。次に、混合物を真空脱気する。そして、結着剤22、導電助剤27及び有機溶媒の各一部が中空領域Rに配されてなる正極合剤ペーストを調製する。
【0062】
正極合剤層積層工程では、正極合剤ペーストを正極集電体11a上に塗布し、有機溶媒を除去して正極合剤層11bを積層する。
例えば、正極合剤層積層工程においては、正極合剤ペーストを、正極集電体11a上に塗布し、乾燥により有機溶媒を除去する。これにより、該正極集電体11a上に正極合剤層11bを積層する。
【0063】
そして、圧縮工程では、得られた積層体をロールプレス等で圧縮する。
このようにして、正極板11が作製される。
【0064】
正極合剤ペースト調製工程に用いられる混合装置は、結着剤22、導電助剤27、二次粒子25及び有機溶媒を、せん断力を加えながら混合して、二次粒子25の中空領域Rに結着剤22、導電助剤27及び有機溶媒の各一部を配し得るものであれば、特に限定されない。
斯かる混合装置としては、例えば、ビーズミル等が挙げられる。該ビーズミルは、ビーズと、該ビーズ及び被混合物を収容して回転することが可能な収容容器とを備えており、ビーズ及び被収容物が収容容器に収容された状態で収容容器が回転することによって、被収容物にせん断力を加えながら該被収容物を混合するように構成されている。
【0065】
また、中空領域Rに入り込む結着剤22や導電助剤27の量は、せん断を伴う混合前とせん断を伴う混合後とにおいて、正極合剤ペーストの密度の差によって表される。すなわち、せん断を伴う混合前よりも、せん断を伴う混合後の正極合剤ペーストの密度の方が大きければ、結着剤22や導電助剤27などが中空領域Rに入り込んだことになる。
また、せん断を伴う混合後の密度は、中空領域R中に結着剤22等が入り込む量だけでなく、二次粒子25の解砕の程度にも影響される。すなわち、二次粒子25が解砕されて細かくなる程、正極合剤層11b中に含まれる正極活物質粒子23同士の接触状態、及び、正極活物質粒子と結着剤22や導電助剤27との接触状態がより密になり、密度が増大する傾向にある。
一方、せん断を伴う混合後における正極合剤ペーストの密度が大きくなり過ぎると、二次粒子25の解砕が飽和に近づき、密度の大きさが飽和に近づくことになる。
このように、せん断を伴う混合後の正極合剤ペーストの密度が大きい程、すなわち、せん断を伴う混合前とせん断を伴う混合後との密度の差が大きい程、上述した接触状態が密になって、抵抗の上昇がより抑制される。
一方、密度の差が大きくなり過ぎると、二次粒子25が解砕され過ぎて、正極合剤層11b中の中空領域Rの量が少なくなり過ぎる。これにより、該中空領域Rによる電解液の吸収機能が減少することになる。
【0066】
これら観点を考慮して、せん断を伴う混合前と混合後との間の密度の差[(混合後の密度)−(混合前の密度)]が適宜設定され得る。密度の差は、0.1〜0.3g/cm
3であることが好ましい。
また、せん断を伴う混合前の密度は、1.3〜1.4g/cm
3が好ましい。
一方、せん断を伴う混合後の密度は、1.5〜1.6g/cm
3が好ましい。
上記のように、中空領域Rに、結着剤22、導電助剤27、有機溶媒などが入り込む量、及び、二次粒子25が解砕される程度は、混合装置において、せん断を伴う混合の条件を変えることによって、調整され得る。
【0067】
具体的には、混合装置においては、せん断及び混合の程度が大きくなるほど、中空領域Rに入り込む導電助剤27等の量が多くなる。しかしながら、せん断及び混合の程度が大き過ぎると、二次粒子25の解砕が進行し過ぎることにより、正極合剤層11bにおける中空領域Rの量が少なくなり過ぎるおそれがある。
例えば、混合装置がビーズミルである場合には、収容容器内に収容されたビーズの数量が多いほど、中空領域Rに導電助剤27等が入り込む量が多くなる。しかしながら、ビーズの数量が多過ぎると、二次粒子25の解砕が進行し過ぎて、正極合剤層11b中の中空領域Rの量が少なくなり過ぎるおそれがある。
また、収容容器の回転速度が大きいほど、中空領域Rに導電助剤27等が入り込む量が多くなる。しかしながら、収容容器の回転速度が大き過ぎると、二次粒子25の解砕が進行し過ぎて、正極合剤層11b中の中空領域Rの量が少なくなり過ぎるおそれがある。
例えば上記のような点を考慮して、ビーズミルの混合条件は、適宜設定できる。
【0068】
合剤ペーストを調製する工程における真空脱気は、従来公知の真空脱気装置によって行われる。
【0069】
正極合剤層積層工程においては、正極集電体11a上に正極合剤ペーストを塗布する従来公知の塗布装置と、塗布された正極合剤ペーストを乾燥させる従来公知の乾燥装置とが用いられる。
【0070】
圧縮工程においては、従来公知の圧縮装置を用いることにより、積層体の圧縮を行うことができる。
圧縮装置としては、ローラープレス装置等が挙げられる。
圧縮工程における圧縮力は、圧縮後においても二次粒子25の中空領域Rが存在しているような圧縮力であれば、特に限定されず、適宜設定される。
圧縮工程においては、例えば、圧縮力が大きい程、二次粒子25が解砕されて、正極合剤層11bに含まれる正極活物質粒子23同士の接触状態が密になる。しかしながら、圧縮力が大き過ぎると、二次粒子25が解砕され過ぎて、正極合剤層11b中の中空領域Rの量が少なくなり過ぎるおそれがある。
圧縮力は、例えば上記の点を考慮して、適宜設定され得る。例えば、圧縮力は、50〜500kgf/cmに設定されることが好ましい。
【0071】
上記の正極板作製工程においては、結着剤22、導電助剤27及び有機溶媒の各一部が中空領域R中に配されてなる正極合剤ペーストを正極集電体11a上に塗布する。そして、有機溶媒を除去する。そして、正極集電体11a上に正極合剤層11bを積層する。これにより、正極板11が作製され、正極合剤層11bにおいては、中空領域Rに結着剤22及び導電助剤27の各一部が入り込んでいる。このようにして正極板11を作製することにより、上述したように、抵抗の上昇が十分に抑制された正極板11が得られる。
【0072】
一方、負極板作製工程では、負極13を作製する。
例えば、負極板作製工程では、負極活物質と、結着剤と、導電助剤等と、有機溶媒とを混合して、ペースト状の混合物(負極合剤ペースト)を得る。この混合物を、負極集電体13aの上に塗布して乾燥する。その後、得られた積層体を、ロールプレス等で圧縮することにより、負極板13を作製する。
【0073】
次に、正極板11と、負極板13とを、セパレータ15を介して重ね合わせる工程について説明する。
【0074】
具体的には、まず、上記のようにして作製された正極板11と負極板13とを用意する。
【0075】
次に、正極板11、セパレータ15、負極板13及びセパレータ15を、この順で重ね合わせた後、さらに、巻回して発電要素10を形成する。続いて、容器本体3に発電要素10を挿入する。その後、正極板11及び負極板13に集電部を接続する。さらに、外部ガスケット5及び外部端子21が装着された蓋部材4で容器本体3を覆うとともに、集電部と外部端子21とを接続する。この状態で容器本体3と蓋部材4とを溶接する。注入口6を通して電解液20を注入する。最後に、注入口6を塞ぐことによって、非水電解液二次電池を作製する。
【0076】
上記の非水電解液二次電池1の製造方法によれば、正極板作製工程で作製された正極板11を備えた非水電解液二次電池1が製造されるため、抵抗が十分に抑制された非水電解液二次電池1が得られる。
【0077】
(第2実施形態)
本発明に係る第2実施形態の蓄電素子としての非水電解液二次電池1について説明する。
第2実施形態の非水電解液二次電池1は、
図5に示すように、正極集電体11aと正極合剤層11bとの間に、導電層11cをさらに備えている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様であるため、説明を繰り返さない。
【0078】
導電層11cは、正極集電体11aよりも柔らかい。
導電層11cが正極集電体11aよりも柔らかいことは、導電層11cと正極集電体11aとのビッカース硬度の比較によって表される。
ビッカース硬さ(Hv)は、対面角が136°の四角錘からなるダイヤモンド圧子を用いて、試験片の一面にピラミッド形状の窪みをつけたときの荷重を、窪みの対角線の長さで割った値である(測定方法はJIS Z2244に準拠)。
【0079】
導電層11cのビッカース硬さが、正極集電体11aのビッカース硬さよりも小さいことによって、正極集電体11aよりも導電層11cの方が柔らかいことが示される。
導電層11cのビッカース硬さは、特に限定されず、正極集電体11aのビッカース硬さよりも小さくなるように適宜設定され得る。
例えば、導電層11cと正極集電体11aとのビッカース硬さの差[(正極集電体11aのビッカース硬さ)−(導電層11cのビッカース硬さ)]が大きくなるほど、導電層11cに対して、正極合剤層11b中の二次粒子25が、よりめり込み易く(食い込み易く)なる。これにより、導電層11cと正極合剤層11bとの接触状態がより密になり得る。
しかしながら、上記ビッカース硬さの差が大きくなり過ぎると、導電層11cのビッカース硬さが小さくなり過ぎて、該導電層11cが脆くなるおそれがある。また、正極集電体11aのビッカース硬さが大きくなり過ぎると、正極集電体11aが巻回され難くなるおそれがある。
上記の点を考慮して、ビッカース硬さの差が適宜設定され得る。ビッカース硬さの差は、5以上35以下であることが好ましい。
また、導電層11cのビッカース硬さは、5以上15以下であることが好ましい。
また、正極集電体11aのビッカース硬さは、20以上40以下であることが好ましい。
【0080】
導電層11cの厚みは、0.1〜3.0μmであることが好ましく、0.1〜1.0μmであることがより好ましい。
【0081】
導電層11cは、例えば、導電剤と、結着剤とを含有している。
導電剤としては、この導電剤を用いて形成された導電層11cが正極集電体11aよりも柔らかくなるような導電性の材料であれば、特に限定されるものではない。斯かる導電剤としては、例えば、カーボンブラックやアセチレンブラック等が挙げられる。
結着剤としては、導電剤同士を接着させること、導電剤と正極集電体11aとを接着させること、及び、導電剤と正極合剤層11bとを接着させることが可能であり、且つ、正極集電体11aよりも柔らかい材料であれば、特に限定されない。斯かる結着剤としては、例えば、前述したようなポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
【0082】
上記の通り、第2実施形態における正極板11は、正極集電体11aと正極合剤層11bとの間に、導電層11cをさらに備える。正極板11においては、正極合剤層11bに構成材料として配合された一次粒子24の一部が導電層11cにめり込んでいる。導電層11cにめり込んだ一次粒子24は、アンカー機能を有している。
このように、正極合剤層11bに配合された一次粒子24の一部が、導電層11c内に存在していることによって、正極合剤層11bと導電層11cとの接触状態が、比較的密なものとなる。また、二次粒子25の経時変化や、充放電の繰り返しに伴う該二次粒子25の膨張及び収縮が生じても、正極合剤層11bと導電層11cとの接触状態が疎なものとなることが抑制される。しかも、前述のアンカー機能よって、正極合剤層11bと導電層11cと間の導電性は、十分に維持されている。また、導電層11cと正極集電体11aとの間の導電性も、十分に維持されている。
よって、抵抗の上昇がより十分に抑制された正極板11が得られる。
【0083】
また、第2実施形態における正極板11においては、導電層11cは、正極集電体11aよりも柔らかく形成されている。
これにより、正極集電体11aと導電層11cと正極合剤層11bとが積層され、厚み方向に圧縮されて正極板11が形成されたとき、正極合剤層11bに配合された一次粒子24の一部が、導電層11cにめり込み易くなる。従って、正極合剤層11bと導電層11cとの接触状態が、導電層11cと正極集電体11aとの接触状態よりも、密なものとなる。これにより、抵抗の上昇がより十分に抑制された正極板11が得られる。
【0084】
また、第2実施形態における正極板11は、正極集電体11a、導電層11b及び正極合剤層11bの積層体が厚み方向に圧縮されることによって、正極合剤層11c中における二次粒子25の一部が、上記のように解砕されつつ、他の一部が、導電層11cにめり込んで形成されている。このように、正極合剤層11bが、導電層11cにめり込んでいることによって、正極合剤層11bと導電層11cとの接触状態が、より密なものとなる。従って、抵抗の上昇が一層十分に抑制された正極板11が得られる。
【0085】
また、第2実施形態の非水電解液二次電池1は、上記のように作製した正極板11を備えているため、抵抗の上昇が、一層十分に抑制されたものとなる。
【0086】
続いて、第2実施形態の非水電解液二次電池1の製造方法について説明する。
なお、第2実施形態の非水電解液二次電池1の製造方法は、正極集電体11a上に、該正極集電体11aよりも柔らかい導電層11cを積層する導電層積層工程をさらに備える点以外は、第1実施形態の非水電解液二次電池1の製造方法と同様である。
第2実施形態の非水電解液二次電池1の製造方法においては、導電層積層工程の後に、正極合剤層積層工程が行われて、導電層11c上に正極合剤層11bが積層される。即ち、第2実施形態の非水電解液二次電池1の製造方法は、上記導電層11cを有する正極板11を用いる点以外は、第1実施形態の非水電解液二次電池1の製造方法と同様である。従って、第1実施形態の製造方法と同様の説明は、繰り返さない。
【0087】
第2実施形態の非水電解液二次電池1の製造方法においては、例えば、下記のようにして正極板作製工程を行う。
【0088】
具体的には、正極板作製工程においては、まず、導電剤と、結着剤と、N−メチルピロリドン等の有機溶媒とを混合して、ペースト状の混合物(導電層用合剤ペースト)を調製する(導電層合剤ペースト調製工程)。
この混合物を、正極集電体11aの上に塗布して乾燥することによって、正極集電体11a上に導電層11cを積層する(導電層積層工程)。
次に、上記した正極合剤ペースト調製工程で調製された正極合剤ペーストを導電層11c上に塗布して乾燥することにより、導電層11c上に正極合剤層11bを積層する(正極合剤層積層工程)。
そして、得られた積層体を、ロールプレス等で圧縮する(圧縮工程)。
このようにして、正極板11を作製する。
【0089】
導電層積層工程においては、正極集電体11a上に導電層合剤ペーストを塗布する従来公知の塗布装置と、塗布された導電層合剤ペーストを乾燥させる従来公知の乾燥装置とが用いられる。
【0090】
圧縮工程においては、上記第1実施形態と同様の圧縮装置が用いられる。圧縮工程では、積層体を圧縮する圧縮力が大きい程、上記第1実施形態のように正極活物質粒子23同士の接触状態が密になる。さらには、一次粒子24が導電層11cに、より十分にめり込むことになる。しかしながら、積層体を圧縮する圧縮力が大き過ぎると、上記第1実施形態と同様、二次粒子25が解砕され過ぎるおそれがある。
斯かる観点を考慮して、圧縮力は、適宜設定される。圧縮力は、例えば、50〜500kgf/cmに設定されることが好ましい。
【0091】
次に、作製された正極板11と、負極板13とを、セパレータ15を介して重ね合わせる。そして、上記と同様の工程を行うことによって、非水電解液二次電池1を作製する。
斯かる非水電解液二次電池1の製造方法によれば、導電層11cを有する正極板11を備えた非水電解液二次電池1が製造されるため、抵抗の上昇がより十分に抑制された非水電解液二次電池1が得られる。
【0092】
なお、非水電解液二次電池1の製造方法は、上記製造方法に特に限定されるものではない。正極板作製工程も、上記の工程に特に限定されるものではない。
【0093】
本発明の蓄電素子及びその製造方法は、上記の通りであるが、本発明は上記例示の実施形態に限定されず、本発明の意図する範囲内において適宜設計変更可能である。
例えば、負極板13の負極合剤層13bは、結着剤と、導電助剤と、負極活物質の一次粒子が複数集合して内側に中空領域を有するように形成された二次粒子とを有し、且つ、結着剤及び導電助剤の各一部が中空領域に配されてなるように構成されていてもよい。
また、負極板13は、負極集電体13aと負極合剤層11bとの間に導電層を備えているような構成であってもよい。
また、本発明の電池は、非水電解液二次電池であることが好適であり、特に、リチウムイオン二次電池であることが好適であり、また、大型用の電池であることが好適である。しかしながら、本発明の電池は、これらに特に限定されるものではない。また、本発明は、上記実施形態の作用効果を有するものに限定されるものでもない。
【実施例】
【0094】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0095】
<中空領域を有するリン酸鉄リチウム(LiFePO
4)二次粒子の作製>
リチウム源としての水酸化リチウム一水和物(LiOH・H
2O)と、鉄源としての硫酸鉄七水和物(FeSO
4・7H
2O)と、リン酸源としてのリン酸(H
3PO
4)とのモル比が1:1:1となるように、混合溶液を調製した。
調製された混合溶液を、噴霧乾燥機(スプレードライヤー、スプレードライヤー(大川原化工機社製))によって噴霧乾燥した。該噴霧乾燥においては、入口の乾燥温度が140℃、出口の乾燥温度が110℃とされ、二流体ノズルで混合溶液と空気との混合物が噴霧乾燥機内に噴霧されて乾燥される。このように乾燥し後、乾燥物を700℃で5時間、窒素気流中で焼成した。これにより、正極活物質としてのリン酸鉄リチウムが合成されると共に、該リン酸鉄リチウムの一次粒子が集合し、内部に中空領域を有するように形成された二次粒子を作製した。作製された二次粒子の平均粒子径を、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製)によって測定した結果、該平均粒子径は、10μmであった(平均粒子径の測定方法は以下全て同じ)。
【0096】
<導電層を有する正極板の作製>
まず、導電剤としてのカーボンブラック50質量%と、PVDF50質量%とを混合し、この混合物に溶剤としてのN−メチルピロリドンを加えて導電剤用合剤ペーストを調製した。導電層が1.4g/m
2となるように導電層用合剤ペーストを、正極集電体としての20μmの厚さのアルミニウム箔の両面に塗布した。さらに乾燥して、導電層を形成した。
次に、上記のように作製された中空領域を有する正極活物質の二次粒子を用いて、各二次粒子を有する正極活物質粒子80質量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック10質量%と、PVDF10質量%とを混合した。この混合物に、溶剤としてのN−メチルピロリドンを加え、正極合剤ペーストを調製した。正極合剤層が1.5g/100cm
2となるように正極合剤ペーストを、正極集電体としての10μmの厚さのアルミニウム箔の両面に塗布した。さらに乾燥して、導電層上に、正極合剤層を形成した。
その後、それぞれの積層体を、ロールプレスで100kgf/cmの負荷を印加することにより圧縮成型した。これにより、帯状の正極板をそれぞれ作製した。各正極電極部材の大きさについては、長さが500cm、幅が10cm、正極集電体と両面の導電層及び正極合剤層との合計の厚みが180μmであった。
各正極板11における正極集電体及び導電層のビッカース硬さを、ビッカース硬さ計としての機能を有するダイナミック超微小硬度計(DUH−211S、島津製作所製)によって、JIS Z2244に従った所定条件で測定したところ、該硬さは、それぞれ、硬度30、硬度10であった。
【0097】
<負極板の作製>
負極活物質90質量%と、導電助剤としてのアセチレンブラック2質量%と、PVDF8質量%とを混合した。この混合物に溶剤としてのN−メチルピロリドンを加えて負極合剤ペーストを調製した。負極合剤層が0.8g/100cm
2となるように負極合剤ペーストを、負極集電体としての10μmの厚さの銅箔の両面に塗布した。さらに乾燥して、負極合剤層を形成した。その後、ロールプレスで100kgf/cmの負荷を印加することにより、圧縮成型を行った。これにより、帯状の負極板を作製した。各負極電極部材の大きさについては、長さが500cm、幅が10cm、負極集電体と両面の負極合剤層との合計の厚みが120μmであった。
【0098】
<試験電池の作製>
上記のように作製した各正極板及び負極板の各々に、正極タブ及び負極タブを取り付けた。
また、セパレータとして幅12cm、厚み25μmのポリオレフィン製微多孔膜を準備した。
次に、各正極板、セパレータ、負極板、及びセパレータをこの順に配置して重ね合わせ、さらに長円筒状に巻回した。これにより、発電要素を作製した。斯かる発電要素を容器本体に収容し、該容器に蓋部材を取り付けた。さらに、電解液を容器に注入することによって、各試験電池を作製した。
【0099】
図6〜
図8のそれぞれに、正極板の断面をSEM観察した観察写真を示す。倍率は、
図6において1,000倍、
図7において2,000倍、
図8において10,000倍である。
図8(矢印)から把握されるように、合剤層に構成材料として配合された一次粒子の一部が導電層内に存在している。即ち、正極合剤層に配合された一次粒子の一部が導電層にめり込んでいる。
【0100】
また、正極板に対して、日本電子社製のFE−EPMA(電界放出型電子線マイクロアナライザ)「JXA−8500F」を用いて、元素分析を行った。結果を
図9〜
図14に示す。
図9は、元素分析箇所を示すSEM観察写真であり、
図10は、
図9に対応する箇所の元素分析結果である。なお、
図10の左上の写真は、SEM観察像である。
図10における、特にF(左側 上から2番目)、C(上側 中央)の分析結果から把握されるように、二次粒子の中空領域にF元素、C元素を含む物質が入り込んでいる。即ち、二次粒子の中空領域にポリフッ化ビニリデン又はアセチレンブラックが入り込んでいる。
同様に、
図11は、元素分析箇所を示すSEM観察写真であり、
図12は、
図11に対応する箇所の元素分析結果である。なお、
図12の右下の写真は、SEM観察像である。
図11の矢印で示すように、中空領域には、ポリフッ化ビニリデン又はアセチレンブラックが入り込んでいる。
同様に、
図13は、元素分析箇所を示すSEM観察写真であり、
図14は、
図13に対応する箇所のF元素分析結果である。