(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6369764
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】メタンハイドレートからメタンを生産するための仕上げ方法
(51)【国際特許分類】
E21B 43/00 20060101AFI20180730BHJP
【FI】
E21B43/00 Z
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-541973(P2016-541973)
(86)(22)【出願日】2014年8月5日
(65)【公表番号】特表2016-530418(P2016-530418A)
(43)【公表日】2016年9月29日
(86)【国際出願番号】US2014049778
(87)【国際公開番号】WO2015038258
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2017年7月21日
(31)【優先権主張番号】14/023,982
(32)【優先日】2013年9月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】301008534
【氏名又は名称】ベイカー ヒューズ インコーポレイテッド
(74)【復代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100087594
【弁理士】
【氏名又は名称】福村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,マイケル エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】アダム,マーク ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】リチャード,ベネット エム.
【審査官】
亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0206406(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0128129(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0177961(US,A1)
【文献】
特表2009−520138(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0073296(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0232901(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0144741(US,A1)
【文献】
特開2006−052395(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0010496(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0223678(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0078419(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 43/00、43/08
E21B 43/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトムホール・アセンブリーを、掘削孔を通って隔離された生産領域に挿入する行程と、
少なくとも一つの内側層と、外側層とを含む前記複数の濾過槽を前記ボトムホール・アセンブリーに供給する行程であって、前記外側層が自己接着性を有する成分であって、前記少なくとも一つの内側層に接着可能な成分を含むものであり、前記少なくとも一つの内側層が設けられた前記ボトムホール・アセンブリーが前記隔離された生産領域にあるときに、前記外側層を隔離された生産領域に搬送する行程を含む前記供給する行程と、
メタンが生産されて前記掘削孔が大きくなって前記外側層から離れた場合に、前記内側層と前記外側層とが繋がっている状態を保つように、前記隔離された生産領域において該外側層の成分を相互に付着させる、又は該成分を前記少なくとも1つの内側層に付着させる行程と、
を含むことを特徴とする、メタンハイドレートからメタンを生産するための仕上げ方法。
【請求項2】
前記外側層を搬送する行程が、プロダクションパッカーの上にある環上方部を通って地上に戻るように循環するキャリア流体の循環によって、前記外側層を搬送する行程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の仕上げ方法。
【請求項3】
前記外側層を搬送する行程が、前記少なくとも一つの内側層に隣接する地層と前記少なくとも一つの内側層との間隙にキャリア流体を圧入しながらクロスオーバーツールを介して前記外側層を搬送する行程を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の仕上げ方法。
【請求項4】
前記ボトムホール・アセンブリーを挿入する前に、前記掘削孔を拡掘する行程を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の仕上げ方法。
【請求項5】
前記ボトムホール・アセンブリーを通してメタンを導出するための多数の開口部を有するベースパイプを設ける行程を含み、
前記ベースパイプが前記少なくとも一つの内側層の内側に位置し、
該ベースパイプが、地層と前記掘削孔との間の差圧の均衡を保つための流れの均衡を保つ機構として、該ベースパイプの周りに設けられた多孔質部材と、該ベースパイプの周りに設けられ、開口位置によって網目の大きさが異なるスクリーン部材と、前記ベースパイプに挿入される、曲がりくねった通路を有する挿入プラグと、の少なくとも一つを有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の仕上げ方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの内側層として形状記憶材料を設ける行程を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の仕上げ方法。
【請求項7】
前記形状記憶材料が拡張した後に前記外側層を搬送することができるように、該形状記憶材料を取り囲む環状の空隙を残しておきながら、前記形状記憶材料の温度を該形状記憶材料の臨界温度を超えて上昇させて該形状記憶材料を拡張させる、前記形状記憶材料の温度を該形状記憶材料の臨界温度を超えて上昇させる行程を含むことを特徴とする、請求項6に記載の仕上げ方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの内側層として形状記憶ポリマーフォームを設ける行程を含むことを特徴とする、請求項6又は7に記載の仕上げ方法。
【請求項9】
メタンの生産に伴い前記掘削孔が大きくなったときに、前記外側層の成分が相互に付着して形状を保持する行程を含むことを特徴とする、請求項8に記載の仕上げ方法。
【請求項10】
前記外側層の成分を前記形状記憶ポリマーフォームに付着させておく行程を含むことを特徴とする、請求項8又は9に記載の仕上げ方法。
【請求項11】
前記形状記憶材料の温度を該形状記憶材料の臨界温度を超えて上昇させる行程の後に、前記外側層が前記形状記憶材料を取り囲む前記環状の空隙に搬送されるように、前記外側層を搬送する行程が実行されることを特徴とする、請求項7から10のいずれか1項記載の仕上げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野はコンプリーション
(仕上げ)であり、より詳しくは、坑井を安定化している間にスクリーンを保護するために出砂対策と流れの分配とを必要とする、メタンハイドレートを産する未固結層におけるコンプリーションに係る。
【背景技術】
【0002】
メタンハイドレートは、砂とその他の堆積物とを含有する層中に固体物質として存在している。メタンガスを生産するためには、ハイドレートをメタンガスと水とにしなければならない。メタンハイドレートの生産とは、前記層中のメタンハイドレートを分離して結果として得られるメタンガスを坑井と生産システムとを介して収集することである。
【0003】
形状記憶フォームをサンドコントロールに用いることを記載している文献のいくつかを以下に挙げる。
WO2011/162895A
US8353346
US2011/0252781
WO2011/133319A2
US2013/0062067
WO2013/036446A1
US2013/0126170
US8048348
US2010/0089565
US2011/0162780
US7926565
WO2010/045077A2
US2011/0067872
WO2011/037950A2
US7832490
US2008/0296023
US2008/0296020
US7743835
WO2008/151311A3
【0004】
流れの均衡を保つ装置については、以下の文献に一般的な記載がある。
US7954546
US7578343
US8225863
US7413022
US792191
5
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2011/162895A
【特許文献2】US8353346
【特許文献3】US2011/0252781
【特許文献4】WO2011/133319A2
【特許文献5】US2013/0062067
【特許文献6】WO2013/036446A1
【特許文献7】US2013/0126170
【特許文献8】US8048348
【特許文献9】US2010/0089565
【特許文献10】US2011/0162780
【特許文献11】US7926565
【特許文献12】WO2010/045077A2
【特許文献13】US2011/0067872
【特許文献14】WO2011/037950A2
【特許文献15】US7832490
【特許文献16】US2008/0296023
【特許文献17】US2008/0296020
【特許文献18】US7743835
【特許文献19】WO2008/151311A3
【特許文献20】US7954546
【特許文献21】US7578343
【特許文献22】US8225863
【特許文献23】US7413022
【特許文献24】US7921915
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
低温高圧下で安定なメタンハイドレートを分離するためには、(1)温度を上げる、(2)圧力を下げる、又は(3)その両方を行わなくてはならない。最適なメタンハイドレート生産方法は「減圧化法」に基づくものである。しかしながら、メタンハイドレート層は未固結堆積物層であるので、メタンガス及び水と共に砂が生産される。また、メタン、水、及び砂を除去するので、坑井の安定性が問題となり、この問題は従来技術による出砂対策(サンドコントロール)方法では解決することができない。砂の生産を防ぐと共に坑井の安定性の問題を解決する経済的で効果的な方策はコンプリーションの方法への新しい取り組みを必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
砂の生産を抑制し、掘削孔の安定性をより良くするために提案される方法は、掘削孔に依存した砂の封じ込めを行わず、サンドマネージメントための形状記憶ポリマーフォームフィルタを提供することを含む。流路が露出していると掘削孔からの砂が入ってきてしまうので、流路が露出しないように形状記憶ポリマーが使用される。メタンハイドレート生産の「減圧化法」に関連するもう1つの課題は、貯留層の界面に亘って差圧を均一に掛けることである。
【0008】
提案される方法は、生産されている貯留層に掛かる差圧のバランスを取るために、使用枚数と透過性とを変えることのできる多孔質の媒体を形状記憶ポリマーフォームフィルタの下に配置することを含む。このようにすると、均一なドロー・ダウンと、露出した貯留層からの流れとによって、掘削孔の安定性を向上させることができる。
【0009】
これらの技術は従来技術による裸孔仕上げのコンプリーション又はケースドホール仕上げのコンプリーションでも使用することはできるが、掘削孔にアンダーリーマーによる処理を行うか、掘削孔の大きさを拡張して、貯留層の露出を増加させると共にサンドマネージメント領域と貯留層との界面での流速を低下させるのが好ましい。
【0010】
さらに、その臨界的な温度を超えた後には形状記憶ポリマーフォームが掘削孔を完全に塞ぐのが目的ではないので、固結したプロパント又は砂を形状記憶ポリマーの近傍に堆積させる。逆に、掘削孔は流速を低下させるための最初のリーマー処理
(拡掘)で大きくなっている可能性があり、或いは、追加的なメタンの生産が地層を不安定化して掘削孔を大きくしている可能性があることを考慮すると、固結したプロパント又は砂は形状記憶ポリマーフォームに対して外側保護層となる可能性がある。固結したプロパント又は砂の相互の付着能力によって形状記憶ポリマーフォームを取り囲み、該形状記憶ポリマーフォームを生産されるメタンの流速による浸食効果から保護する。
【0011】
メタンを生産するためのコンプリーションにおいて、ボトムホール・アセンブリーは多孔質の媒体を内部に備えたベースパイプを有しており、多孔質の媒体によってベースパイプに沿った流れを均一にする。形状記憶ポリマーフォームは多孔質の媒体を備えたベースパイプを取り囲む。掘削孔は、生産されるメタンの流速を低下させるためにリーマーで広げることができる。自己付着及び/又はポリマーフォームに付着することのできる固結したプロパント又は砂の外側の層が、形状記憶ポリマーを取り囲んでいる。プロパント又は砂は循環させることもできるし、所定の位置に圧入することもできるが、循環させることが好ましい。メタンが生産されるにつれて未固結の地層で砂が移動することにより、掘削孔が大きくなる場合がある。ボトムホール・アセンブリーは流体の流れの均一化を促進し、メタン生産の間、下流にある形状記憶ポリマーフォームと前記外側の層とを高い流速から保護する。
【0012】
当業者であれば、本発明の完全な範囲は添付の請求の範囲によって定められることを承知しつつも、好適な態様の詳細な記載と関連する図面とを検討することにより、本発明の追加的な面もより良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ボトムホール・アセンブリーの所定位置において、形状記憶ポリマーフォームが拡張していない時点の状態を示している。
【
図2】
図1において、形状記憶ポリマーフォームが拡張した状態を示す図である。
【
図3】
図2において、固結したプロパント又はグラベルが適切な位置にある状態を示す図である。
【
図4】
図3において、メタンの生産中に未固結の掘削孔壁が変位した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照すると、ワークストリング1はウェルヘッド2を通って延びている。ボトムホール・アセンブリーは、複数の開口部を有する単なる管であるベースパイプ5を有している。プロダクションパッカー6はメタンハイドレート貯留層4を隔離している。概略的に示されたクロスオーバーツール11によって、形状記憶ポリマーフォーム3の周囲に固結したプロパント又は砂(グラベル)9を配することが可能になる。ベースパイプ5は流れの均衡を保つ
機構7を有しており、この
機構としては、流体の流れに対して様々に異なる抵抗を与える曲がりくねった通路、又は厚さ若しくは気孔率の異なる環状多孔質部材を用いることができる。
【0015】
図1では、形状記憶ポリマーフォームの大きさが変化している最中であり、形状記憶ポリマーフォームはそのガラス転移温度より高い温度にまで加温されていない。
【0016】
図2においては、形状記憶ポリマーフォームがガラス転移温度に達して、掘削孔壁12には到達しない、環状の間隙14が残る位置まで拡張している。
【0017】
クロスオーバーツール11を用いて、
図3に示されているように、この環状の間隙にプロパント又は砂9を堆積させる。これは、好ましくは、クロスオーバーツール11による循環と、図示されていないウォッシュパイプを用いて、プロパント又は砂9と形状記憶ポリマーフォーム3とを通り抜けて戻って来たものを、前記プロダクションパッカー6の上にある環上方部8に送ることとによってなされるのが好ましい。
【0018】
最後に、
図4は、地層4の圧力が低下した後に見られるメタン製造の影響を示している。メタンを除去に伴い、大きな空隙10ができることがある。これによって、メタンの流速が低下するという望ましい効果がもたらされる。
【0019】
形状記憶ポリマーフォーム3の周囲に残っている環状の空隙の容積が埋められたことを示す圧力抵抗が地上で感知されるまでプロパント又は砂9を追加することによって、プロパント又は砂9の初期の堆積が環状の空間を充填し得るであろうことを当業者であれば理解する。
【0020】
形状記憶ポリマーフォーム3が臨界温度に達してサイズが大きくなる前、サイズが大きくなっている間、又はサイズが大きくなった後に、プロパント又は砂9の環状空間への運搬を開始することができる。
【0021】
いずれの場合であっても、
図4に示されているように、メタンの生産によって貯留層が空洞化する可能性があるので、プロパント又は砂9がそれ同士で相互に付着し、また、形状記憶ポリマーフォームに付着することによって、形状記憶ポリマーフォーム3の内側の部品を浸食性のある高いガス速度から保護するのに役立つ。流れの均衡を保つ
機構7があることと共に掘削孔が大きくなることによっても、高速のガス流による浸食を抑制して、改修が必要となるまでのボトムホール・アセンブリーの稼働期間をより長くするのに役立つ。
【0022】
流れの均衡を保つことと、プロパント又は砂9がそれ同士で相互に付着すると共にある程度形状記憶ポリマーフォーム3に付着して形状記憶ポリマーフォームを覆うこととの組み合わせによって、流れの不均衡が誘発する高速のガス流に少なくとも部分的に起因する浸食の可能性があることや掘削孔の崩壊等の逆境下でも濾過層がより長い期間機能するので、耐用年数が長くなる。
【0023】
プロパント/砂9は、Sandtrol(R)等の市販の製品であればよい。形状記憶ポリマーフォームはGeoFORM(R)として入手することができる。ポリマーフォームの代替物としては、記憶合金フォーム、又は熱的な刺激によっては大きさを変えない様々な設計によるスクリーンを挙げることができる。スクリーンは、掘削孔による支持のために、又はプロパント/砂9の充填量を減少させるために、半径方向に広げることができるように構築することができる。流れの均衡を保つ機構としては、ベースパイプに設けた多孔質環若しくは挿入プラグ、又は開口位置によって網目の大きさが異なるスクリーン材料を挙げることができる。
【0024】
前記記載は好ましい態様の説明であって、以下の請求の範囲に記載の字義通りの範囲、
及び同等な範囲から決定される範囲を有する本発明から離れることなく、当業者によって数多くの変更を加えることができる。