【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構造の場合、信号配線上層の上層シールドCOM電極5は、対向電極7と同層かつ対向電極7の形成と同一工程にて透明導電膜を使って形成されており、また、上記上層シールドCOM電極5と対向電極7は連結して形成あるいは一体的に形成されている。
【0006】
上記対向電極7は、液晶分子を駆動させる電界を発生させるための電極であるため、他の配線電位の電位変動による影響を受けにくくする必要がある。上記上層シールドCOM電極5は、信号配線1との間に膜厚が厚く比誘電率の小さい有機絶縁膜24等を介しているため、信号配線1との静電容量が小さく、信号配線1の電位が変動してもその影響が小さいので、電位変動が起こりにくい。よって微小な電位変動により画質に大きな影響を及ぼす対向電極7と上層シールドCOM電極5を電気的に直接連結させることが可能である。
【0007】
一方、従来構造の下層シールドCOM電極104は、走査配線2と同層に形成されるため、信号配線1と下層シールドCOM電極104の基板垂直方向間に介在する絶縁膜は、スイッチング素子13を形成するためのゲート絶縁膜22のみとなる。
【0008】
上記ゲート絶縁膜22は、スイッチング素子13の特性を確保する必要があり、比較的絶縁膜の厚さが薄く、信号配線1と下層シールドCOM電極104の間の静電容量が大きくなりやすいので、信号配線1と下層シールドCOM電極104を重畳または基板平行方向に近接させると、信号配線1の電圧変動の影響を受けて、下層シールドCOM電極104の電位が変動しやすい。
【0009】
下層シールドCOM電極104の電位が変動すると、下層シールドCOM電極104から発生する電界が画素内の液晶に作用し、画素の透過率を変化させてしまうため、表示品位を劣化させていた。また、上述したように、信号配線1と下層シールドCOM電極104の間の静電容量が大きいため、信号配線1の配線負荷も大きくなり、信号遅延等の不具合を起こしていた。
【0010】
また、上述した不具合の影響を小さくするには、信号配線1と下層シールドCOM電極104の間の静電容量を減少させるために、信号配線1と下層シールドCOM電極104間の基板水平方向の距離を離す必要があるので、信号配線1と下層シールドCOM電極104の間に基板水平方向の無駄なスペースが作られ、画素の開口面積を減少させていた。
【0011】
また、従来の下層シールドCOM配線(
図7(a)に示す下層シールドCOM電極104)は、走査配線2と同層に形成されるため、走査配線2と交差することができない。よって走査配線2の延在方向と平行に伸び、走査配線2と同一工程で形成される主COM配線3から電圧を供給する構造にせざるを得ない。
【0012】
ここで、従来構造の主COM配線3は、表示領域内にて上記下層シールドCOM電極104、対向電極7、上層シールドCOM電極5およびストレージ容量形成用COM電極108に電圧を供給する必要があるが、主COM配線3の配線抵抗が高い場合、信号遅延等により電圧供給能力が不足し、信号配線1の電位変動に連動して下層シールドCOM電極104の電位が変動しやすくなり、信号配線方向のクロストークが生じやすいという欠点があった。
【0013】
また、上記で説明したように、従来構造では、主COM配線3は各種電極に電圧を供給する必要があり、電圧供給能力を確保するため、配線幅の太い配線が必要となるので、開口面積を低下させると共に、信号配線1との交差部面積が増大する。このため、信号配線1と主COM配線3間に大きな静電容量が発生し、信号配線1の負荷も増加させることになり、データ信号の遅延を引き起こす原因となっていた。
【0014】
また、下層シールドCOM電極104と主COM配線3が表示領域内で接続されているため、信号配線1の電位変動により信号配線1と容量結合している下層シールドCOM電極104の電位が変動した場合、それに接続された主COM配線3の電位も変動してしまう。そのため、主COM配線3に同じく表示領域内で接続された電位変動に敏感なストレージ容量形成用COM電極108(
図7(a)参照)および対向電極7の電位も電位変動してしまい、走査配線方向のクロストークや特殊画面での色付きが生じやすくなっていた。
【0015】
また、従来技術において、主COM配線3を信号配線1の上層に設けて主COM配線3と走査配線2とを層分離した構造とした場合でも、下層シールドCOM電極104は信号配線1より下層に配置する必要があることから、下層シールドCOM電極104が主COM配線3から表示領域内で電圧の供給を受けるためには、表示領域内すなわち画素領域でコンタクトホール9を介して導通を取る必要があり、コンタクトホールスペースのための開口面積減少や導通不良、ショート不良の原因となっていた。
【0016】
次に、従来の構成における課題の一例についての具体的な作用・効果を
図7〜
図11を用いて説明する。
図7(a)は従来の画素構成を、
図7(b)は本発明の画素構造を簡略化して表した説明図である。
【0017】
従来の画素構成では、主COM配線3は走査配線2の延在方向に沿うように配置され、下層シールドCOM電極104は信号配線1の延在方向に信号配線1の両脇に近接して配置されており、下層シールドCOM電極104と主COM配線3は画素内で電気的に接続されている。
【0018】
本図では省略されているが、信号配線1と走査配線2の交差部近傍にはスイッチング素子が配置されており、信号配線1に印加された映像信号電圧がスイッチング素子を介して画素電極6に供給され、上記画素電極6と主COM配線3に接続された対向電極7との電位差で発生する電界により液晶を駆動させている。
【0019】
図8(a)は前記従来の画素構成の電気回路を、
図8(b)は本発明の画素構成の電気回路を簡略化した説明図である。
【0020】
従来の画素構成における主COM配線3、ストレージ容量形成用COM電極108、対向電極7、下層シールドCOM電極104は、表示領域内にて低抵抗で接続もしくは一体的に形成されているため、電気回路図で表す場合、これらは主COM配線3と等価である。一方、本発明の画素構造における下層シールドCOM配線4は、主COM配線3とは電気回路として別の配線である。
【0021】
下層シールドCOM電極104と信号配線1との間には強い容量結合があるので、信号配線1の電位の電位変動の影響で下層シールドCOM電極104も電位変動を起こす。上記のように下層シールドCOM電極104の電位変動が起こった場合、従来構造の下層シールドCOM電極104は、主COM配線3から電圧供給を受けられるように、主COM配線3と低抵抗で接続されており、そのため主COM配線3の電位も変動してしまう。
【0022】
下層シールドCOM電極104は、信号配線1から生じる電界をシールドすることが目的であるため、瞬間的な電位変動に関しては画質にさほど大きな影響を与えないが、主COM配線3に接続される他の電極、特にストレージ容量形成用COM電極108は、画素に画素電圧を書き込む短い期間の電位変動がそのまま電圧保持期間中ずっと液晶に影響を与え続けるため、わずかな電位変動でも画質に対する影響が大きくなる。
【0023】
例えば、
図9で示すようなストライプ配列のドット反転駆動カラーLCD(Liquid Crystal Display)において、白/黒の縦ストライプパターンを画面全体に表示した場合、明表示状態の赤画素と青画素にCOM電位に対して正極性電位が印加されるタイミングに、緑画素にはCOM電位に対して負極性電位が印加される。
【0024】
上記において、下層シールドCOM電極104は複数の信号配線1の電位変動に追従して電位変動を起こすが、正極性に変動する信号配線1が赤画素と青画素に接続される2本の信号配線1であるのに対し、負極性に変動する信号配線1は緑画素に接続される1本だけなので、下層シールドCOM電極104は、平均的には正極性方向に電位変動する。よって、下層シールドCOM電極104と同じ電位を持つ主COM配線3およびそれに接続されている対向電極7、ストレージ容量形成用COM電極108の電位も正極性方向に電位変動する。
【0025】
図10は、COM電位が変動しない場合の各画素の画素電圧とCOM電圧を表している。この場合、各画素の画素電極に書き込まれる画素電圧とCOM電圧の電位差、すなわち液晶に印加される電圧は、白ストライプ部である明表示画素では5vが印加され、黒ストライプ部である暗表示画素では0vが印加されており、赤画素、緑画素、青画素に差分が発生しない。しかしながら、実際には上述したように、縦ストライプ画面のような特殊な画面においては、信号配線1に印加される電圧の極性が偏るため、その影響でCOM電圧も変動する。
【0026】
図11は、COM電位が変動した場合の各画素の画素電圧とCOM電圧を表している。この場合、主COM配線3が正極性方向にシフトしたタイミングで、主COM配線3の電位変動方向と同じ正極性側の電位を画素電圧として印加される赤画素および青画素は、画素電極とストレージ容量形成用COM電極間の電位差が減少するので、ストレージ容量8に蓄積される電圧が低電圧側にシフトする。一方、同タイミングで負極性側の電位を印加される緑画素は、ストレージ容量8に蓄積される電圧が高電圧側にシフトする。
【0027】
その結果、ノーマリーブラックタイプの表示方式の場合は、緑画素の輝度が赤画素、青画素に対して高くなり、表示された画面の色度がやや緑に色味付く。逆にノーマリーホワイトタイプの表示方式の場合は、緑画素の輝度が低くなるので、画面の色度がややマゼンタに色味付くという課題が生じる。
【0028】
本発明の目的は、上述の課題を解決することであり、具体的には高開口率で各配線の信号遅延が少なく、クロストークや色付き現象を抑制できる液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、互いに交差する複数の信号配線および複数の走査配線と、前記信号配線と前記走査配線との交差部の近傍領域もしくは前記走査配線上に設けられたスイッチング素子と、前記スイッチング素子に接続された画素電極と、共通電位が供給された対向電極と、により構成される画素がマトリクス状に配置された第一の基板と、前記第一の基板に対向して設けられた第二の基板と、前記第一の基板と前記第二の基板との間に挟持された液晶と、を備え、前記画素電極と前記共通電極との間に前記第一の基板と略平行な電界を印加する横電界方式の液晶表示装置において、前記信号配線の下層に、前記共通電位に設定された下層電界シールド電極が設けられ、かつ、前記下層電界シールド電極が、前記画素がマトリクス状に配置された表示領域内で他の共通電位に設定された配線および電極と電気的に接続されていないことを特徴とする。
【0030】
このように、信号配線の電圧変動の影響を受けやすい下層電界シールド電極(下層シールドCOM配線)と主COM配線を表示領域内で接続せずに電気的に分離することにより、下層シールドCOM配線の電圧が変動した場合でも主COM配線の電圧変動を起こりにくくすることができる。
【0031】
また、主COM配線に表示領域内で直接接続されている対向電極、ストレージ形成用COM電極の電圧変動も抑制することができ、クロストークや上述の特殊画面での色付き現象を軽減することができる。
【0032】
また、本発明は、前記信号配線の上層に上層絶縁膜を介して前記信号配線に重畳するように、前記共通電位に設定された上層電界シールド電極が設けられたことを特徴とする。
【0033】
上層電界シールド電極(上層シールドCOM電極)と下層シールドCOM電極は共にCOM電位を供給する必要があるため、両者を共に主COM配線からの電圧供給とした場合、どちらかもしくは両方の電極に電圧を供給するためのコンタクトホールを画素内で絶縁膜に設けて導通を取る必要があった。
【0034】
本発明では、下層シールドCOM配線への電圧供給経路を、主COM配線に直接接続されている上層シールドCOM電極の電圧供給経路と電気的に分離できるため、上層シールドCOM電極と主COM配線を同層に、また下層シールドCOM電極と下層シールドCOM配線を同層に形成することで、画素内にCOM電位を供給するためのコンタクトホールを省略することができる。
【0035】
このため、コンタクトホール形成のためのスペースを低減することができ、画素開口面積を広く取ることができるとともに、コンタクトホールの形状異常、コンタクトホールの段差による配線段切れやコンタクト抵抗増加などによる品質の劣化や歩留りの低下を抑制できる効果がある。
【0036】
また、本発明は、前記スイッチング素子が逆スタガ型TFT(Thin Film Transistor)素子であり、前記下層電界シールド電極が前記走査配線より下層に下層絶縁膜を介して設けられたことを特徴とする。
【0037】
下層シールドCOM電極を、走査配線よりさらに下層に任意の膜厚、材質の下層絶縁膜(好ましくは少なくとも酸化ケイ素膜を含む下層絶縁膜)を介して配置することにより、信号配線と下層シールドCOM電極の間の静電容量を小さくすることができ、信号配線の電位が変動した場合でも、下層シールドCOM電極の電位変動を小さくすることができる。
【0038】
このため、下層シールドCOM電極自体からの電界発生が抑制され、液晶にかかる電界への影響が小さくなり、画質品位を向上させることができる。また、信号配線の静電容量負荷が軽減されるため、信号配線の時定数が小さくなり、映像データ信号遅延を減少させることができる。
【0039】
また、信号配線と下層シールドCOM電極を基板平面方向に近接または重畳させても、静電容量による配線負荷の増加が起こりにくいため、信号配線と下層シールドCOM電極間に基板平面方向の空間を設ける必要がなくなり、その分画素の開口面積を広く取ることができる。
【0040】
また、下層シールドCOM配線を主COM配線と異層に配置し、電気的に分離できるため、主COM配線の配線負荷、下層シールドCOM配線の配線負荷をそれぞれ低減することができ、配線遅延によるクロストークの発生を抑制することができる。
【0041】
前記主COM配線の配線負荷が低減できることにより、主COM配線の細線化が可能となり、画素開口面積を広く取れるとともに、信号配線と主COM配線の交差部面積が縮小されることで、両配線間の静電容量が減少し、信号配線の配線負荷も低減できる効果が得られる。
【0042】
また、本発明は、前記下層電界シールド電極に電圧供給する配線が、前記信号配線の延在する方向に沿って設けられている、若しくは、前記信号配線の延在する方向と前記走査配線の延在する方向の両方向に設けられていることを特徴とする。また、前記下層電界シールド電極が、前記第一の基板の法線方向から見て、前記信号配線を覆っていることを特徴とする。
【0043】
本発明の信号配線、下層シールドCOM配線、走査配線は絶縁膜を介してそれぞれ異なる層に分離されている。そのため、本発明の上記下層シールドCOM電極は、走査配線と交差して信号配線の延在する方向に配線を延在させることができるので、COM電圧を信号配線用圧接端子側辺からも供給でき、COM電圧供給能力を向上させることができる。
【0044】
また、下層シールドCOM配線を信号配線の延在する方向に配置する場合において、本発明では、各画素の下層シールドCOM電極の両端を直列に接続することで、下層シールドCOM電極自体が下層シールドCOM配線の一部を兼ねた構造とすることができる。よって、下層シールドCOM電極への電圧供給配線経路を追加したことによる配線配置領域の増加は小さく、画素開口面積をほとんど減少させることがない。