(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の走行レーンのうち対象走行レーンと対応して設けられ、車両に搭載された車載器から発信される電波に基づいて、前記複数の走行レーンの中から前記対象走行レーンを走行する車両を検出する車両検出装置であって、
前記車載器から受信した電波の到来方向を検出する方向検出部で検出された電波の到来方向に基づいて、前記方向検出部で検出された電波が前記対象走行レーン上から発信されたものとして、前記対象走行レーン上の推定発信位置を求める位置演算部と、
前記位置演算部により求められた複数の前記推定発信位置に基づいて、前記推定発信位置を電波の受信した順番に結んでできる線分の方向ベクトルを検出する移動方向検出部と、
前記移動方向検出部で検出された前記方向ベクトルが前記対象走行レーンにおいて前記車両が進行すると期待される方向に沿う方向であるか否かに基づいて、電波を発信した車両が前記対象走行レーンを走行する車両であるか否かを判定する走行レーン判定部とを備えることを特徴とする車両検出装置。
複数の走行レーンのうち対象走行レーンと対応して設けられ、車両に搭載された車載器から発信される電波に基づいて、前記複数の走行レーンの中から前記対象走行レーンを走行する車両を検出する車両検出装置であって、
前記車載器から受信した電波の到来方向を検出する方向検出部で検出された電波の到来方向に基づいて、前記方向検出部で検出された電波が前記対象走行レーン上から発信されたものとして、前記対象走行レーン上の推定発信位置を求める位置演算部と、
前記位置演算部により求められた複数の前記推定発信位置に基づいて、前記推定発信位置を電波の受信した順番に結んでできる線分の方向ベクトルを検出する移動方向検出部と、を備えることを特徴とする車両検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る車両検出装置が利用可能な車線制御システムの一例について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両検出装置が利用可能な車線制御システムの一例を示す概略図である。
図1に示すように、料金所では、複数の走行レーン101,102,103…が並んで設けられている。図示の例において、走行レーン101,102,103は料金徴収の対象となる走行レーンであって、料金徴収は、走行レーンごとに行われる。つまり、各走行レーン101,102,103を走行する車両の車載器は、走行レーンごとに設けられたAOAアンテナ及び路側アンテナと通信することにより、料金が徴収される。図示の例では、走行レーン101に対応するAOAアンテナ104及び路側アンテナ105と、走行レーン102に対応するAOAアンテナ1042及び路側アンテナ1052とが、ガントリ110に設けられている。この走行レーン101を車両201が走行しており、走行レーン102を車両202が走行しており、走行レーン103を車両203が走行している。なお、各車両201,202,203には、車載器301,302,303がそれぞれ搭載されている。
【0019】
本実施形態において、路側機は、ガントリ110と、AOAアンテナ104と、路側アンテナ105と、車両検出装置106(
図2参照)と、中継装置107(
図2参照)とを含む。本実施形態において、路側機は、走行レーンに対応して設けられており、ガントリ110と、AOAアンテナ104と、路側アンテナ105と、車両検出装置106(
図2参照)と、中継装置107(
図2参照)とは、走行レーン101と対応する路側機の構成である。なお、走行レーン102にも、全ての構成の図示は省略するが、ガントリ110に搭載されたAOAアンテナ1042と路側アンテナ1052と車両検出装置と中継装置とを含む路側機が設けられている。なお、ガントリ110は、走行レーン101,102の路側機が共有する構成である。
図示の例では、ガントリ110が走行レーン101,102を跨ぐように設けられており、このガントリ110には、AOA(Angle Of Arrival)アンテナ104,1042(方向検出部)と、路側アンテナ105,1052とが取り付けられている。また、AOAアンテナ104と路側アンテナ105は、走行レーン101と対応して、当該走行レーン101の上方の幅方向中央部に設置されており、AOAアンテナ1042と路側アンテナ1052は、走行レーン102と対応して、当該走行レーン102の上方の幅方向中央部に設置されている。
また、
図1の例では、AOAアンテナ104又は路側アンテナ105がガントリ110に設けられる際に収容される設置箱の中に、車両検出装置106(
図2参照)と中継装置107(
図2参照)が搭載されている。この車両検出装置106は、AOAアンテナ104及び路側アンテナ105と電気的に接続されており、AOAアンテナ104及び路側アンテナ105が受信した電波に基づく出力信号を、AOAアンテナ104及び路側アンテナ105から入力する。この中継装置107は、車両検出装置106と接続されている。
【0020】
なお、中継装置107を介して車両検出装置106と通信を行う車線制御装置108(
図2参照)が、通信塔(図示せず)に設けられている。さらに、車線制御装置108(
図2参照)は、複数の車線制御装置と接続され、複数の車線制御装置からの情報に基づき、路側アンテナ105との通信領域を含む走行レーンを走行する車両の車載器との間で、課金処理等の情報処理が可能な中央処理装置109と接続されている。
【0021】
走行レーン101には、車両検出装置106と車載器301等との通信の確立が許可される領域(以下、通信領域という)が予め決められている。言い換えると、通信領域の外縁は、車両検出装置106と車載器301等との通信の確立を制限する境界線である。よって、車両検出装置106は、通信領域よりも外側の領域に存在する車載器から電波を受信したとしても、当該車載器との通信の確立を制限する。図示の例において、通信領域は、対応付けられた走行レーン101上であって、且つ、路側アンテナ105の真下から走行レーンの進行方向と逆方向に4mの範囲内である。
【0022】
図1の例では、通信領域に、車両201(車載器301)が位置するように示されている。よって、
図2に示す状態で、車両検出装置106は、路側アンテナ105を介して、車両201に搭載された車載器301と通信を確立することが可能であり、車線制御装置108(又は中央処理装置109)は、通信を確立した車載器301に対して課金処理を実行することができる。
【0023】
一方、車両202は、走行レーン102において車両201の後方を走行している。しかしながら、この状態において、図示の通り、車載器302から発信された電波が例えば通信領域内に位置する車両201に反射した後、AOAアンテナ104に入射したとする。この場合、車両検出装置106は、AOAアンテナ104が検出した電波の到来方向に基づき車載器の位置を求めるため、車載器302から発信された電波が、車両201で反射された電波の反射位置(つまり、車両201が走行している位置)から発信されたものとして検出する。よって、車両201が電波を反射した反射位置を、車載器302が電波を発信した位置であるとして誤検出される虞がある。この場合、走行レーン101を走行していない車両202の車載器302が、走行レーン101の路側アンテナ105との間で通信を確立してしまうという問題が生じ得る。この場合、車載器302は、走行レーン102に設けられた路側アンテナ1052との間でも通信を確立してしまうため、料金が重複して課金される虞がある。
【0024】
また、車両203は、路側アンテナ105,1052が設置されていない隣のレーンである走行レーン103を走行しており、本来、車両検出装置106との通信対象ではない車両である。しかしながら、この状態において、図示の通り、車載器303から発信された電波が車両202に反射した後、AOAアンテナ1042に入射したとする。この場合、走行レーン102に対応する車両検出装置(図示せず)は、AOAアンテナ1042が検出した電波の到来方向に基づき車載器の位置を求めるため、車載器303から発信された電波が、車両202で反射された電波の反射位置(つまり、車両202が走行している位置)から発信されたものとして検出する。よって、車両202が電波を反射した反射位置を、車載器303が電波を発信した位置であるとして誤検出される虞がある。この場合、走行レーン102を走行していない車両203の車載器303が、走行レーン102の路側アンテナ1052との間で通信を確立してしまうという問題が生じ得る。
【0025】
さらに、車載器302,303から出射された電波が走行レーン101,102,103の天井や路面又は路側壁面等に反射して、走行レーン101の通信領域内の路面で反射した後、AOAアンテナ104に入射する場合もある。このような場合、車両検出装置106は、AOAアンテナ104が検出した電波の到来方向に基づき車載器の位置を求めるため、車載器302,303から発信された電波が、走行レーン101の路面で反射された電波の反射位置(つまり、走行レーン101の通信領域内の位置)から発信されたものとして検出する。よって、走行レーン101の通信領域内の路面が電波を反射した反射位置を、車載器302,303が電波を発信した位置であるとして誤検出される虞がある。この場合、走行レーン101を走行していない車両202,203の車載器302,303が、走行レーン101の路側アンテナ105との間で通信を確立してしまうという問題が生じ得る。
【0026】
本発明に係る車両検出装置は、上記問題を解決する一の態様として、以下の構成を備える。
図2は、本実施形態に係る車線制御システムの構成例を示す概略図である。
図示の通り、本実施形態に係る車線制御システムは、AOAアンテナ104と、路側アンテナ105と、車両検出装置106と、中継装置107と、車線制御装置108と、中央処理装置109と、を備える。なお、これらの構成は、走行レーン101に対応するものであって、車線制御システムは、他の走行レーン102に対応するAOAアンテナ1042と、路側アンテナ1052と、車両検出装置と、中継装置と、車線制御装置とを備えるものであってもよい。また、車両検出装置106、中継装置107、及び車線制御装置108は、走行レーン101,102の両方に対応する兼用構成であってもよい。
【0027】
この車両検出装置106は、例えば、車両が走行する複数の走行レーンのうち対象走行レーンと対応して設けられ、車両に搭載された車載器から発信される電波に基づいて走行レーンを走行する車両を検出する。本実施形態において、車両検出装置106は、複数の走行レーンをうち路面上に路側アンテナ105との通信領域が決められている一の対象走行レーンである走行レーン101を走行する車両を検知する例について説明するが、本発明はこれに限られない。例えば、車両検出装置106が、複数の走行レーン101,102に対応付けられており、この複数の走行レーン101又は走行レーン102を走行する車両を検出するものであってもよい。
【0028】
AOAアンテナ104は、受信した電波の到来方向を検出する方向検出部である。本実施形態において、AOAアンテナ104は、車載器から受信した電波の位相差に基づき、車載器から発信された電波が受光面に入射する角度(以下、電波到来角度という)を算出する。本実施形態において、AOAアンテナ104は、水平面上の電波到来角度である水平角度θ
Hと、垂直面上の電波到来角度である垂直角度θ
Vとを、算出する。AOAアンテナ104は、受信する電波の到来方向を示す情報として算出した水平角度θ
Hと垂直角度θ
Vとを示す情報(以下、電波到来角度情報という)を、車両検出装置106に出力する。
このAOAアンテナ104は、車両に搭載された車載器との間で無線通信を行うためのものであり、且つ、車載器の推定発信位置を検出のために電波到来角度の測定を行うことができるように複数のアンテナ素子からなるものである。かかるAOAアンテナ104としては、例えばマイクロストリップアンテナ素子をアレイ状に配した構成のマイクロストリップアレイアンテナなどを用いることができる。このマイクロストリップアレイアンテナは各アレイアンテナ素子に入射される電波信号の振幅と位相を操作することにより、比較的容易に任意の指向性を形成することが可能なものである。
【0029】
路側アンテナ105は、車載器とDSRC(Dedicated Short Range Communications)通信を実施し、車載器から送信される電波信号に基づき、車載器IDや車種情報等を含む車載器データを取得し、車両検出装置106に出力する。この車載器IDとは、各車載器を識別するための識別情報である。車種情報とは、車両の種類(小型車、中型車、大型車・・・等)や、料金割引対象の有無を示す情報等を含む。
【0030】
車両検出装置106は、路側アンテナ105から料金収受のため送信データを含む電波を発信し、路側アンテナ105で受信する車載器からの電波を検波(復調)して同電波に含まれる料金収受のための車載器データ(車載器ID、車種情報等)を取得する。また、車両検出装置106は、対象走行レーン上の車両を検出する車両検出処理を実行する。この車両検出処理の詳細については、
図3を参照して後述する。
【0031】
中継装置107は、車両検出装置106と車線制御装置108との間の通信処理を実行し、例えば、光通信により車両検出装置106と車線制御装置108とを接続する。
【0032】
車線制御装置108は、中継装置107を介して、車両検出装置106からの情報を受信するとともに、通信が確立された車載器から受信した車載器データに基づき、料金徴収のための処理、例えば、通行料金の課金処理を実行する。
また、車線制御装置108は、課金処理等を実行した車載器の車載器IDに、課金処理を実行したことを示す情報や、車載器データ、車両検出装置106によって検出された推定発信位置を示す位置情報と、水平角度θ
Hと垂直角度θ
Vを示す情報と、電波の到来時刻を示す情報とを対応付けて、自身の記憶部に格納する。
さらに、車線制御装置108は、通信領域を示す電波到来角度の閾値を設定し、設定した電波到来角度の閾値情報を車両検出装置106に送信する。この車線制御装置108は、例えば、AOAアンテナ104が設置されている路面からの高さ、車載器の平均的な高さ、該当走行レーンの幅やアイランドの幅等を示す情報を入力し、通信領域を示す電波到来角度の閾値を算出し、設定することができる。なお、車載器の高さは、後述の通り、路側アンテナ105から受信する車種情報に基づき、車種ごとに予め決められた平均的な高さが用いられるものであってもよい。
なお、本実施形態において、課金処理は車線制御装置108によって実行される例について説明するが、本発明はこれに限られず、複数の車線制御装置と接続され、複数の車線制御装置を統括的に制御する中央処理装置109によって実行されるものであってもよい。
【0033】
次に、
図3を参照して、車両検出装置106の構成例について説明する。
図3は、本実施形態に係る車両検出装置106の構成例を示すブロック図である。
図3に示す通り、車両検出装置106は、紐付け部160と、位置演算部161と、位置判定部162と、移動方向検出部163と、走行レーン判定部164と、通信制御部165と、記憶部166と、受信データ解析部167と、を備え、車両検出処理を実行する。
紐付け部160は、AOAアンテナ104に電波が入射した時刻を示す時刻情報と、路側アンテナ105に電波が入射した時刻を示す時刻情報に基づき、同一電波に基づく電波到来角度情報と車載器データとを対応付けて、記憶部166に格納する。なお、電波が入射した時刻は、AOAアンテナ104や路側アンテナ105に設けられる計時部によって計時されるものであってもよい。また、紐付け部160は、電波到来角度情報と車載器データが車両検出装置106に入力する時間が誤差範囲内である場合に、同一電波に基づく電波到来角度情報及び車載器データであると判定するものであってもよい。また、車載器から送信される電波には、車載器データとして、出射された順番を示すシーケンシャル番号が含まれている。よって、紐付け部160は、シーケンシャル番号ごと、路側アンテナ105から入力する車載器データを識別することができる。
【0034】
位置演算部161は、AOAアンテナ104によって検出された電波の到来方向に基づいて、AOAアンテナ104で検出された電波が対応する走行レーン101上から発信させられたものとして、対応する走行レーン101上の推定発信位置を求める。本実施形態において、位置演算部161は、AOAアンテナ104から出力される電波到来角度情報に基づき、推定発信位置を求め、求めた推定発信位置を示す位置情報を、位置判定部162及び移動方向検出部163に出力する。
【0035】
ここで、
図4を参照して、本実施形態に係る水平角度θ
Hと垂直角度θ
Vとの一例について説明する。
図4は、水平角度θ
Hと垂直角度θ
Vと推定発信位置との関係を示す図である。
図4に示す通り、AOAアンテナ104は、基準位置に位置されており、図示の例では、AOAアンテナ104の位置が、XYZ座標系の原点(基準位置)と決められている。このXYZ座標系では、走行レーンの進行方向と平行な方向に沿い、基準位置から進行方向と逆方向を正としてX軸が設定されている。また、走行レーンの進行方向と直交する方向にY軸が設定されている。また、鉛直方向に沿い、基準位置から下向きを正としてZ軸が設定されている。本実施形態で、垂直角度θ
Vは、Z軸を基準線として鉛直面内で進行方向と逆方向に向かう向きを正とした角度に設定されている。また、本実施形態で、水平角度θ
Hは、X軸を基準線として水平面内で通信領域を含む走行レーンの幅方向の一方側に向かう向きを正とした角度に設定されている。
【0036】
そして、AOAアンテナ104は、検出した電波の垂直角度θ
Vおよび水平角度θ
Hを求めることより当該電波の到来方向を検出する。なお、電波の到来方向としてはこれに限るものではない。例えば、角度として上記垂直角度θ
Vおよび水平角度θ
Hではなく、別の角度成分によって表すものとしても良い。また、角度成分であらわすのに限らず、たとえば3つの座標(XYZ座標値)により表すものとしても良い。
位置演算部161は、これら水平角度θ
Hと垂直角度θ
Vとで表される到来方向が示す対象走行レーン上に設定された面内の点P
iを求め、推定発信位置とする。なお、車載器は、車両内に搭載されているため、
図4に示す通り、水平角度θ
Hと垂直角度θ
Vとで表される方向に存在する走行レーンの路面上の位置P0ではなく、水平角度θ
Hと垂直角度θ
Vとで表される方向に存在する車載器の高さに等しい面内の点P
iを、推定発信位置とすることが好ましい。この位置演算部161は、平均的な車載器の高さを既定値として用いるものであってもよく、路側アンテナ105が受信した車種情報に基づき車種ごとにそれぞれ決められている車載器の高さを示す情報を用いて、車種に応じた車載器の高さに等しい推定発信位置点P
iを算出するものであってもよい。
【0037】
位置判定部162は、位置演算部161によって求められた位置情報、又は、AOAアンテナ104からの水平角度θ
H及び垂直角度θ
Vに基づき、車載器の推定発信位置が通信領域の範囲内であるか否かを判定する車両位置判定を実行する。この位置判定部162は、判定結果を走行レーン判定部164に出力する。
例えば、通信領域を示す電波到来角度の閾値が、記憶部166に記憶されている。この電波到来角度の閾値は、水平角度θ
H及び垂直角度θ
Vによって定義されるものである。また、電波到来角度の閾値は、水平角度θ
H及び垂直角度θ
Vのそれぞれに対応して設定されている。位置判定部162は、水平角度θ
H及び垂直角度θ
Vが電波到来角度の閾値を超えた場合、車載器の推定発信位置が通信領域の範囲外であると判定する。具体的に説明すると、電波到来角度の閾値は、通信領域の外縁の位置を示す角度であって、水平角度θ
H及び垂直角度θ
Vで示される閾値である。つまり、電波到来角度の閾値は、AOAアンテナ104によって検出された水平角度θ
H及び垂直角度θ
Vを推定発信位置に変換した場合、この推定発信位置が通信領域の外側となるか否かを判定する閾値である。
なお、通信領域の外縁の位置に相当する位置情報であって、例えば位置演算部161によって求められる位置の閾値が、記憶部166に記憶されているものであってもよい。この場合、位置判定部162は、位置演算部161が求めた推定発信位置が閾値を超えた場合、つまり、位置演算部161が求めた推定発信位置が通信領域の外側となった場合、車載器の推定発信位置が通信領域の範囲外であると判定する。
【0038】
移動方向検出部163は、位置演算部161によって算出された位置情報であって、同一車載器の推定発信位置を示す複数の位置情報に基づき、当該車載器の推定発信位置の移動方向を算出し、算出した移動方向を示す移動方向情報を走行レーン判定部164に出力する。
この移動方向検出部163は、同一車載器の複数の推定発信位置を電波の受信した順番に結んでできる線分が示す向きを検出する。例えば、移動方向検出部163は、同一車載器の推定発信位置を電波の受信した順番に結んでできる線分の推定発信位置間の方向ベクトルを、移動方向情報として算出することができる。また、移動方向検出部163は、同一車載器の推定発信位置を電波の受信した順番に結んでできる線分の複数の推定発信位置間の方向ベクトルの平均値を、移動方向情報として算出することができる。
なお、移動方向検出部163は、同一車載器の推定発信位置を電波の受信した順番に結んでできる線分が示す向きが、通信領域を含む対象走行レーン上の進行方向に対してどの程度ずれているのを示す情報、例えば、同一車載器の推定発信位置の分散値(又は標本分散)を算出し、移動方向情報として取得するものであってもよい。具体的には、移動方向検出部163は、通信領域を含む対象走行レーン上の決められた進行方向を期待値とすると、複数の推定発信位置が期待値からどれだけ散らばっているのかを示す値を分散値(又は標本分散)として算出することができる。
【0039】
走行レーン判定部164は、移動方向検出部163が算出した移動方向に基づいて対応する対象走行レーンを走行しているか否かを判定する。例えば、走行レーン判定部164は、入力する移動方向情報に基づき、対応する通信領域を含む対象走行レーンを走行している車両に搭載された車載器の移動軌跡であるか否かを判定する車両移動方向判定を実行する。この走行レーン判定部164は、判定結果を通信制御部165に出力する。
例えば、走行レーン判定部164は、移動方向検出部163が算出した移動方向が、対応する走行レーン101上の進行方向に沿っている方向であるか否かを判定する。同一車載器の推定発信位置を電波の受信した順番に結んでできる線分が示す向きが、予め決められた範囲内でない場合、走行レーン判定部164は、移動方向が対応する走行レーン101の進行方向に沿っている方向でないと判定する。
具体的に説明すると、走行レーン判定部164は、同一車載器の2点の推定発信位置を電波の受信した順番に結んでできる線分の推定発信位置間の方向ベクトルが、対応する走行レーン101上の進行方向から予め決められた閾値(角度)以上外れている場合、移動方向が対応する走行レーン101の進行方向に沿っている方向でないと判定する。また、走行レーン判定部164は、同一車載器の3点以上の推定発信位置を電波の受信した順番に結んでできる線分の推定発信位置間の方向ベクトルの平均が、対応する走行レーン101上の進行方向から予め決められた閾値(角度)以上外れている場合、移動方向が対応する走行レーン101の進行方向に沿っている方向でないと判定する。
【0040】
また、同一車載器の3点以上の推定発信位置の分散値(標本分散)に基づき、予め決められた閾値以上の分散があったと判定した場合、走行レーン判定部164は、移動方向検出部163が算出した移動方向が対応する走行レーン101の進行方向に沿っている方向でないと判定する。なお、走行レーン判定部164は、同一車載器の3点以上の推定発信位置間の方向ベクトルの平均に基づく判定と、同一車載器の3点以上の推定発信位置の分散値(標本分散)に基づく判定とを組み合わせることにより、移動方向が進行方向に沿っているか否かの判定精度を高めることができる。つまり、前者の判定の場合、複数の推定発信位置が進行方向の左右にばらついていても平均することで、このばらつきを検出し難い場合があるが、後者の判定を組み合わせることにより、このようなばらつきを検出することができる。
なお、本実施形態において、走行レーン判定部164は、位置判定部162によって推定発信位置が通信領域の範囲内に存在していると判定された車載器についてのみ、車両移動方向判定を実行するものである。
【0041】
通信制御部165は、通信領域を含む対象走行レーンを車両(車載器)が走行していないと走行レーン判定部164が判定した場合、当該車載器との通信の確立を制限する。具体的に説明すると、通信制御部165は、通信の確立が制限されている車載器からの車載器データは、車線制御装置108に送信せず、且つ、通信の確立が制限されている車載器に対しては車線制御装置108からの情報を転送しない。すなわち、通信制御部165は、通信の確立が許可された車載器からの車載器データを中継装置107を介して車線制御装置108に送信するとともに、通信の確立が許可された車載器に対してのみ車線制御装置108からの情報を転送する。
なお、本発明はこれに限らず、通信制御部165は、路側アンテナ105から受信した車載器データを全て車線制御装置108に送信する。そして、走行レーン判定部164が、受信した電波が、通信領域を含む対象走行レーンを走行していない車両(車載器)からの電波であることを判定した場合のみ、通信制御部165は、判定結果を車線制御装置108に送信するものであってもよい。例えば、通信制御部165は、通信領域を含む対象走行レーンを走行していない車両(車載器)からの電波であることが判定された電波に対応する車載器データに含まれる車載器IDを示す情報を車線制御装置108に送信する。そして、車線制御装置108は、通信制御部165から受信した走行レーン判定部164の判定結果と車載器IDに基づき、車載器との通信の確立を制限する。
【0042】
次に、
図5を参照して、本実施形態に係る車両検出方法の一例について説明する。
図5は、本実施形態に係る車両検出方法の一例を示すフローチャートである。
例えば、車載器301が、車載器データを含む電波W1を発信したとする。なお、車載器301は、予め決められた時間間隔で複数の電波を継続して発信している。
(ステップST101)
すると、AOAアンテナ104は、この電波W1を受信し、この電波W1の到来方向を示す水平角度θ
Hと垂直角度θ
Vを示す情報を算出し、車両検出装置106に出力する。
(ステップST102)
また、路側アンテナ105は、この電波W1を受信し、この電波W1に含まれている車載器データを含む受信信号を、車両検出装置106に出力する。なお、この電波W1に含まれる車載器データには、少なくとも車載器301の車載器IDが含まれている。
【0043】
(ステップST103)
車両検出装置106の紐付け部160は、AOAアンテナ104が電波W1を受信したタイミングと、路側アンテナ105が電波W1を受信したタイミングとに基づき、同一の電波W1に基づく水平角度θ
Hと垂直角度θ
Vを示す情報と車載器IDとを紐づけて、記憶部166に書き込む。また、紐付け部160は、電波W1の到来方向を示す水平角度θ
Hと垂直角度θ
Vを示す情報と、車載器IDとを紐づけて、位置演算部161に出力する。
なお、AOAアンテナ104は、続けて、電波W1と異なる電波W2を受信した場合、この電波W2の到来方向を示す水平角度θ
Hと垂直角度θ
Vを示す情報とを算出し、車両検出装置106に出力する。また、車両検出装置106の紐付け部160は、電波W2を受信したタイミングと同じタイミング(同時又は概ね同時)で路側アンテナ105が受信した受信信号から車載器データを取得する。そして、紐付け部160は、電波W2の到来方向を示す水平角度θ
Hと垂直角度θ
Vを示す情報と車載器IDとを紐づけて、記憶部166に書き込む。なお、紐付け部160は、電波に含まれるシーケンシャル番号によって、電波W1,W2,・・・のそれぞれを識別することができる。
このようにして、紐付け部160は、複数の電波W1,W2,・・・から得られた水平角度θ
Hと垂直角度θ
Vを示す情報と車載器IDとを紐づけて、記憶部166に書き込む。
【0044】
(ステップST104)
次いで、車両検出装置106の位置演算部161は、水平角度θ
Hと垂直角度θ
Vとで表される到来方向が示す面上の点P
1を求め、推定発信位置とする。そして、位置演算部161は、求めた推定発信位置P
1を示す位置情報を、位置判定部162と移動方向検出部163に出力する。このとき、位置演算部161は、受信データ解析部167によって得られた車載器の高さを示す情報に基づき、車載器の高さに応じた推定発信位置点P
1を求めてよい。
続けて、位置演算部161は、記憶部166に記憶されている複数の情報(水平角度θ
Hと垂直角度θ
Vを示す情報と車載器ID)に基づき、各電波の到来方向により得られる推定発信位置P
2,P
3,・・・を求める。なお、位置演算部161は、電波を受信した順番を示す情報(例えばi:シーケンシャル番号)と車載器IDとを推定発信位置に対応付けておく。
【0045】
(ステップST105)
そして、車両検出装置106の位置判定部162は、記憶部166を参照して、車載器IDと紐づけられている水平角度θ
H及び垂直角度θ
Vと、電波到来角度の閾値とを比較することにより、推定発信位置P
1が通信領域の範囲内であるか否かを判定する。そして、位置判定部162は、判定結果を走行レーン判定部164に出力する。
なお、車両検出装置106の位置判定部162は、位置演算部161によって求められた位置情報に基づき、推定発信位置P
1が通信領域の範囲内であるか否かを判定するものであってもよい。そして、位置判定部162は、判定結果を走行レーン判定部164に出力する。
【0046】
(ステップST106)
ステップST105において、車載器の推定発信位置P
1が通信領域の範囲内であると判定された場合(例えば、水平角度θ
H及び垂直角度θ
Vが、それぞれに対応して決められている電波到来角度の閾値を超えなかった場合)、移動方向検出部163は、位置演算部161によって求められた複数の位置情報のうち、通信領域の範囲内であると判定された位置であって、同一の車載器IDが対応付けられた位置情報(例えば、P
1,P
2,P
3,・・・)に基づき、車載器の推定発信位置P
1,P
2,P
3,・・・が示す移動方向を演算し、移動方向を示す情報を走行レーン判定部164に出力する。
【0047】
(ステップST107)
走行レーン判定部164は、ステップST105において、推定発信位置P
1が通信領域の範囲内であると判定された場合、移動方向検出部163から入力する移動方向を示す情報に基づき、同一車載器の推定発信位置P
1,P
2,P
3,・・・が示す移動方向が走行レーン上の進行方向に沿っている方向であるか否かを判定する。同一車載器の推定発信位置P
1,P
2,P
3,・・・が示す移動方向が走行レーン上の進行方向に沿っている方向である場合、走行レーン判定部164は、算出した移動方向に基づいて走行レーン101を走行していると判定する。そして、走行レーン判定部164は、走行レーン101を走行していると判定した場合、同一車載器の推定発信位置P
1,P
2,P
3,・・・と紐付けられている車載器IDを示す情報を通信制御部165に出力する。
【0048】
(ステップST108)
そして、通信制御部165は、走行レーン101を走行していると判定した走行レーン判定部164による判定結果を、同一車載器の推定発信位置P
1,P
2,P
3,・・・と車載器IDを示す情報とともに、車線制御装置108に送信する。車線制御装置108は、受信した情報をそれぞれ対応付けて、自身の記憶部に書き込む。そして、車線制御装置108は、この車載器IDが示す車載器との間で通信を確立する。
(ステップST109)
一方、ステップST105において、推定発信位置P
1が通信領域の範囲内でないと判定された場合、又は、ステップST107において、算出した移動方向に基づいて走行レーンを走行していないと判定された場合、通信制御部165は、走行レーン101を走行していないと判定した走行レーン判定部164による判定結果を、対応する車載器IDを示す情報とともに、車線制御装置108に送信する。そして、車線制御装置108は、車両検出装置106から受信した情報に基づき、走行レーン101を走行していないと判定された車載器IDの車載器との間で通信を中止する。
【0049】
(ステップST110)
一方、受信データ解析部167は、路側アンテナ105から入力する受信データを解析して、車載器データに含まれる車載器ID及び車種情報を取得する。なお、この受信データ解析部167は、受信データからシーケンシャル番号も取得する。
この受信データ解析部167は、取得した車種情報に基づき、車種に応じて予め決められている車載器の高さを判定し、判定した車載器の高さを示す情報を紐付け部160と位置演算部161に出力する。
(ステップST111)
また、詳細な説明は省略するが、受信データ解析部167は、車載器から受信した受信データを解析し、課金処理に用いられる情報を取得する。なお、受信データ解析部167によって解析された情報は、中継装置107を介して車線制御装置108に送信される。車線制御装置108は、受信した情報に基づき、通信領域を含む走行レーンを走行していると判定された車両の車載器に対してのみ、課金処理を実行する。
【0050】
次に、
図6,7を参照して、本実施形態に係るAOAアンテナ104について説明する。
図6は、AOAアンテナ104が備えるアンテナ素子の配置の一例について説明するための図である。
図6に示す通り、AOAアンテナ104は、AOAアンテナ素子104A,104B,104C,104Dを備える。AOAアンテナ素子104Aと104Bとは、同じ高さ位置に配置され、水平方向に並んでいる。このAOAアンテナ素子104Aと104Bとの距離は、d1である。一方、AOAアンテナ素子104Cは、AOAアンテナ素子104Aと104Bよりも高い高さ位置に、AOAアンテナ素子104Dは、AOAアンテナ素子104Aと104Bよりも低い高さ位置に配置されている。これらAOAアンテナ素子104Cと104Dとは、垂直方向に並んでおり、AOAアンテナ素子104Cと104Dとの距離は、d2である。
【0051】
図7は、AOAアンテナ104の構成例を示すブロック図である。
図7に示す通り、AOAアンテナ104は、AOAアンテナ素子104A〜104Dと、AOAアンテナ104A,104Bの出力を入力する水平位相処理部141と、AOAアンテナ104C,104Dの出力を入力する垂直位相処理部142と、AOAアンテナ素子104A〜104Dのそれぞれと接続されるヘテロダイン変換部143A〜143Dと、局部発振器144,145と、を備える。
局部発振器144は、所定の周波数の局部発振信号をヘテロダイン変換部143A,143Bに出力し、局部発振器145は、所定の周波数の局部発振信号をヘテロダイン変換部143C,143Dに出力する。
ヘテロダイン変換部143A,143Bは、所定の俯角ψで傾斜し且つ所定の間隔d1を隔てて配設されているAOAアンテナ素子104A,104Bによって受信した電波の周波数と、局部発振器144から出力される局部発振信号の周波数との差を取ることにより、受信した電波を低周波数(中間周波数)の信号にそれぞれ変換して水平位相処理部141に出力する。なお、ヘテロダイン変換部143Aが出力する信号には位相φ
Aを示す情報が含まれ、ヘテロダイン変換部143Bが出力する信号には位相φ
Bを示す情報が含まれている。
ヘテロダイン変換部143C,143Dは、所定の俯角ψで傾斜し且つ所定の間隔d2を隔てて配設されているAOAアンテナ素子104C,104Dによって受信した電波の周波数と、局部発振器145から出力される局部発振信号の周波数との差を取ることにより、受信した電波を低周波数(中間周波数)の信号にそれぞれ変換して垂直位相処理部142に出力する。なお、ヘテロダイン変換部143Cが出力する信号には位相φ
Cを示す情報が含まれ、ヘテ変換部143Dが出力する信号には位相φ
Dを示す情報が含まれている。
【0052】
水平位相処理部141は、ヘテロダイン変換部143A,143Bから入力する信号の位相差(φ
A−φ
B)に基づき、AOAアンテナ104A,104Bに到来する角度(つまり、水平角度θ
H)を算出し、この水平角度θ
Hを示す情報を、車両検出装置106に出力する。この水平位相処理部141は、以下に示す式(1)に従って、水平角度θ
Hを算出する。
垂直位相処理部142は、ヘテロダイン変換部143C,143Dから入力する信号の位相差(φ
C−φ
D)に基づき、AOAアンテナ104C,104Dに到来する角度(つまり、垂直角度θ
V)を算出し、この垂直角度θ
Vを示す情報を、車両検出装置106に出力する。この垂直位相処理部142は、以下に示す式(2)に従って、垂直角度θ
Vを算出する。
【0053】
θ
H=sin
−1{(φ
A−φ
B)λ/(2π・d1)}・・・式(1)
θ
V=sin
−1{(φ
C−φ
D)λ/(2π・d2)}・・・式(2)
なお、(φ
A−φ
B)は、AOAアンテナ素子104Aへの電波の入射タイミングとAOAアンテナ素子104Bへの電波の入射タイミングのずれによる位相差であって、(φ
C−φ
D)は、AOAアンテナ素子104Cへの電波の入射タイミングとAOAアンテナ素子104Dへの電波の入射タイミングのずれによる位相差である。なお、λは、車載器からの電波の波長である。
【0054】
ここで、水平角度θ
Hと垂直角度θ
Vが式(1)と式(2)により求められる原理について、簡単に説明する。
図8に示すように、例えば、AOAアンテナ素子104C,104Dの俯角をψ
vとすると、車両201の車載器301からAOAアンテナ104へ発信された電波がAOAアンテナ素子104C,104Dに到来する水平角度θ
vは、次のようにして求めることができる。
【0055】
即ち、
図8に示すように、AOAアンテナ素子104C,104Dが俯角ψ
vで傾斜しているため、車載器301からAOAアンテナ素子104Cまでの距離L
Cよりも、車載器301からAOAアンテナ素子104Dまでの距離L
Dの方が長くなっている。このため、AOAアンテナ素子104CとAOAアンテナ素子104Dとでは電波を受信するタイミングがずれて、両者が受信する電波に位相差が生じる。この位相差を(φ
C−φ
D)とし、また、電波の波長をλとすると、車載器301からAOAアンテナ素子104Cまでの距離L
Cと、車載器301からAOAアンテナ素子104Dまでの距離L
Dとの差η2は、式(3)で表される。
【0056】
η2=(φ
C−φ
D)λ/(2π)・・・式(3)
【0057】
このため、AOAアンテナ素子104CとAOAアンテナ素子104Dとの素子間隔をd2とすると、
図7の幾何学的関係から、式(4)が得られ、この式(4)から式(5)が得られる。従って、この式(5)から、電波到来角度射θ
vは、式(2)のように表せる。なお、
図8に示すように、AOAアンテナ素子104C,104Dに対して電波は平行に到来し、AOAアンテナ素子104C,104Dへの電波到来角度は何れも同じθ
vであると仮定している。
【0058】
sinθ
v=η2/d2=(φ
C−φ
D)λ/(2π)/d2・・・式(4)
(φ
C−φ
D)=(2π・d2・sinθ
v)/λ・・・式(5)
【0059】
同様にして、走行レーン101の進行方向と平行な直線であって、AOAアンテナ104の中心点と交わる直線上に車載器301がない場合、車載器301からAOAアンテナ素子104Aまでの距離L
Aと、車載器301からAOAアンテナ素子104Bまでの距離L
Bとが異なる。このため、AOAアンテナ素子104AとAOAアンテナ素子104Bとでは電波を受信するタイミングがずれて、両者が受信する電波に位相差が生じる。この位相差を(φ
A−φ
B)とし、また、電波の波長をλとすると、車載器301からAOAアンテナ素子104Aまでの距離L
Aと、車載器301からAOAアンテナ素子104Bまでの距離L
Bとの差η1は、式(6)で表される。
【0060】
η1=(φ
A−φ
B)λ/(2π)・・・式(6)
【0061】
このため、AOAアンテナ素子104AとAOAアンテナ素子104Bとの素子間隔をd1とすると、
図8の幾何学的関係から、式(7)が得られ、この式(7)から式(8)が得られる。従って、この式(8)から、電波到来角度射θ
Hは、式(1)のように表せる。なお、AOAアンテナ素子104A,104Bに対して電波は平行に到来し、AOAアンテナ素子104A,104Bへの電波到来角度は何れも同じθ
Hであると仮定している。
【0062】
sinθ
H=η1/d1=(φ
A−φ
B)λ/(2π)/d1・・・式(7)
(φ
A−φ
B)=(2π・d1・sinθ
H)/λ・・・式(8)
【0063】
次に、
図9を参照して、対応する走行レーン101を走行する車両201に搭載された車載器301の推定発信位置の移動経路の一例について説明する。
図9に示す通り、車載器301の推定発信位置P
1は通信領域内に存在している。この場合、走行レーン判定部164は、移動方向検出部163が算出した移動方向が、対応する対象走行レーンの進行方向に沿っているか否かを判定する。図示の通り、方向ベクトルに対応する閾値(角度)として、対応する走行レーン101の進行方向を基準として+αから−αまでの角度が決められているとする。この場合、走行レーン判定部164は、車載器301の推定発信位置P
1,P
2,P
3,・・・が示す移動方向に基づき、推定発信位置P
1からP
2に向かう方向ベクトル、推定発信位置P
2からP
3に向かう方向ベクトル、・・・が、それぞれ閾値(角度)の範囲内であるか否かを判定する。また、走行レーン判定部164は、車載器301の推定発信位置P
1,P
2,P
3,P
4,P
5が示す方向ベクトルの平均が、閾値(角度)の範囲内であるか否かを判定するものであってもよい。図示の例では、推定発信位置P
1からP
2に向かう方向ベクトル、推定発信位置P
2からP
3に向かう方向ベクトル、・・・が、全て閾値(角度)の範囲内であって、車載器301の推定発信位置P
1,P
2,P
3,P
4,P
5が示す方向ベクトルの平均が、閾値(角度)の範囲内であると、走行レーン判定部164は判定するものであってもよい。
よって、走行レーン判定部164は、車載器301の推定発信位置P
1,P
2,P
3,・・・が示す移動方向は、進行方向に沿っている方向であると判定する。このため、走行レーン判定部164は、車両201(車載器301)が走行レーン101を走行していると判定し、車線制御装置108が、車載器301との通信を確立する。
【0064】
次に、
図10を参照して、路側アンテナ105の通信領域を含む対象走行レーン以外の走行レーン102を走行する車両202に搭載された車載器302の推定発信位置の移動経路の一例について説明する。
図10に示す通り、車両202は、走行レーン102上の点R
101を走行している際に発信した電波が、例えば天井に反射して、走行レーン101の通信領域内を走行する車両201でさらに反射し、走行レーン101に取り付けられているAOAアンテナ104に入射したとする。この場合、位置演算部161は、車両201が電波を反射した位置(つまり、車両201が走行している位置)を、車載器302の推定発信位置P
101として検出する。
この場合、位置判定部162は、車載器302の推定発信位置P
101が通信領域の範囲内であるという判定結果を、走行レーン判定部164に出力する。
【0065】
また、走行レーン102上の点R
102を走行している際に発信した電波も、例えば天井に反射して、走行レーン101の通信領域内を走行する車両201でさらに反射し、走行レーン101に取り付けらえているAOAアンテナ104に入射したとする。この場合、位置演算部161は、車両201が電波を反射した位置(つまり、車両201が走行している位置)を、車載器302の推定発信位置P
102として検出する。その後、車載器302から発信した電波は、天井を反射せずに、AOAアンテナ104に入射しなかったとする。そして、車載器302は、走行レーン102上の位置R
103,R
104,R
105を移動したとする。
この場合、走行レーン判定部164は、移動方向検出部163が算出した移動方向が、対応する走行レーンの進行方向に沿っているか否かを判定する。図示の例では、車載器302の推定発信位置P
101からP
102に向かう方向ベクトルが、対応する走行レーン101の進行方向を基準として+αから−αまでの角度の範囲を超えている。
よって、走行レーン判定部164は、車載器302の推定発信位置P
101,P
102が示す移動方向は、進行方向に沿っている方向でないと判定する。このため、走行レーン判定部164は、車両202(車載器302)は走行レーン101を走行していないと判定し、車線制御装置108は、車載器302との通信を中止する。
【0066】
このように、本実施形態に係る車両検出装置106は、
図10に示すような推定発信位置P
101,P
102が示す移動方向が進行方向に沿っていないと判定し、車両202(車載器302)が走行レーン101を走行していないと判定することができる。このように、推定発信位置P
101,P
102は通信領域の範囲内であるため、車両検出装置106は、対象となる走行レーン101を走行している可能性のある車両として検出し得る。しかし、本実施形態に係る車両検出装置106は、推定発信位置P
101,P
102が示す移動方向が進行方向に沿っていないと判定し、車両202(車載器302)は走行レーン101を走行していないと判定することにより、走行レーン101を走行していない車両の検出を抑制することができる。
なお、本実施形態に係る車両検出装置106は、少なくとも3つ以上の推定発信位置P
1〜P
5に基づき、移動方向を検出する。これにより、検出される移動方向の検出精度を高めることができる。
また、本実施形態に係る車両検出装置106の走行レーン判定部164は、少なくとも3つ以上の推定発信位置P
1〜P
5に基づく移動方向を移動方向検出部163によって検出できなかった場合、対応する対象走行レーンを走行していないと判定するものであってもよい。
【0067】
また、本実施形態に係る車両検出装置106は、推定発信位置が通信領域に含まれていない場合、移動方向に基づいて走行レーン101を走行しているか否かの判定を実行しない。これにより、対象となる走行レーン101を走行している可能性の低い車両についての移動方向判定処理を実行しなくてすむため、処理負荷が軽減される。
さらに、本実施形態に係る車両検出装置106は、推定発信位置が通信領域に含まれている場合、移動方向に基づいて走行レーン101を走行しているか否かの判定を実行する。これにより、対象となる走行レーン101を走行している可能性のある車両の中に、走行レーン101を走行していない可能性の高い車両が含まれているか否かを判定し、走行レーン101を走行していない可能性の高い車両の検出を防止することができる。
【0068】
また、本実施形態に係る車両検出装置106は、走行レーン101を走行していると判定された車載器に対してのみ通信の確立を許可する。つまり、反射等の影響により通信範囲内に存在していると誤判定された場合であっても、移動方向判定によって走行レーン101を走行していないと判定される。よって、走行レーン101を走行していない車載器と通信が確立されることが防止され、誤って課金処理がなされる事態を回避することができる。
また、本実施形態に係る車両検出装置106は、
図3に示した位置判定部162を備えない構成であってもよい。
さらに、本実施形態に係る車両検出装置106は、少なくとも位置演算部161と移動方向検出部163を備える構成であってもよい。この構成により、車両検出装置106は、走行レーンを走行する車両の移動方向を検出することができる。
【0069】
なお、有料道路等では、複数の走行レーンが並んで設けられている場合が多い。また、場所的に走行レーン同士の間を十分に確保できない場合や、上りの走行レーンと下りの走行レーンとの間が十分に確保できない場合もある。さらに、有料道路の出口付近が非常に狭く、走行レーンの幅、つまり、通信領域の幅が狭い場所などもある。このような場所では、電波吸収パネルを設置スペースも十分に確保できない場合が多々ある。よって、本発明に係る車両検出装置が利用される環境では、本発明は特に有効である。
また、上記実施形態では、車両検出装置106が料金所に設置される例について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、通常の走行レーン上において、通信領域が設定される走行レーンに適用可能である。また、走行レーンは有料道路に限られない。
【0070】
なお、本発明における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより工程を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0071】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。