特許第6369834号(P6369834)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6369834
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】有価金属回収方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20180730BHJP
   C22B 3/04 20060101ALI20180730BHJP
   C22B 3/46 20060101ALI20180730BHJP
   C22B 11/00 20060101ALI20180730BHJP
   C22B 15/00 20060101ALI20180730BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20180730BHJP
   C22B 25/00 20060101ALN20180730BHJP
   C22B 21/00 20060101ALN20180730BHJP
   C22B 34/32 20060101ALN20180730BHJP
   C22B 58/00 20060101ALN20180730BHJP
【FI】
   C22B7/00 G
   C22B3/04
   C22B3/46
   C22B11/00 101
   C22B15/00 107
   C22B23/00 102
   !C22B25/00 101
   !C22B21/00
   !C22B34/32
   !C22B58/00
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-206606(P2014-206606)
(22)【出願日】2014年10月7日
(65)【公開番号】特開2016-74952(P2016-74952A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233734
【氏名又は名称】株式会社アステック入江
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100115107
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151194
【弁理士】
【氏名又は名称】尾澤 俊之
(72)【発明者】
【氏名】井上 英二
(72)【発明者】
【氏名】井上 信宏
(72)【発明者】
【氏名】小森 裕司
(72)【発明者】
【氏名】古西 政和
(72)【発明者】
【氏名】服部 司
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−031760(JP,A)
【文献】 特開2010−059539(JP,A)
【文献】 特開2013−230437(JP,A)
【文献】 特開2014−069137(JP,A)
【文献】 特開昭52−133830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00−61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材の表面に下地金属と貴金属とがめっきされた貴金属めっき品より有価金属を回収する有価金属回収方法において、
前記貴金属めっき品を、塩化第二鉄を含む処理溶液に浸漬させる浸漬工程と、
前記浸漬工程により、下地金属及び部材を溶解して、又は前記下地金属を溶解して、前記部材から剥離した貴金属を、前記処理溶液より分離回収する有価金属分離回収工程とを含む
有価金属回収方法であって、
前記処理溶液中の塩化第二鉄の濃度が40質量%〜52質量%であり、処理溶液の温度が10℃〜30℃である有価金属回収方法。
【請求項2】
部材の表面に下地金属と貴金属とがめっきされた貴金属めっき品より有価金属を回収する有価金属回収方法において、
前記貴金属めっき品を、塩化第二鉄を含む処理溶液に浸漬させる浸漬工程と、
前記浸漬工程により、下地金属及び部材を溶解して、又は前記下地金属を溶解して、前記部材から剥離した貴金属を、前記処理溶液より分離回収する有価金属分離回収工程とを含む
有価金属回収方法であって、
前記処理溶液中の塩化第二鉄の濃度が10質量%〜30質量%であり、処理溶液の温度が50℃〜70℃である有価金属回収方法。
【請求項3】
前記有価金属分離回収工程で貴金属と前記部材とを分離させた後の前記処理溶液を再生処理溶液として、前記浸漬工程で再利用する請求項1又は2に記載の有価金属回収方法。
【請求項4】
更に、前記有価金属分離回収工程で貴金属と前記部材とを分離させた後の前記処理溶液より前記下地金属を回収する下地金属回収工程を含む請求項1〜のいずれか1項に記載の有価金属回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に電子機器や情報通信機器等の廃材等より貴金属を回収する、有価金属回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家電製品を始め、パーソナルコンピュータや携帯電話等の電子機器製品や自動車関連製品等には、多くの貴金属やレアメタル等の有価金属が使用されている。昨今、貴金属やレアメタルの埋蔵量には限りがあることから、これらの使用済製品を大きな金属資源いわゆる都市鉱山と称して、鉱床からの採掘だけではなく、都市鉱山からの種々の有価金属回収が積極的に行われている。
【0003】
有価金属の回収方法としては、例えば、特許文献1では、金めっきされた電子部品を硝酸に浸漬し、下地金属を硝酸に溶解させて、金を剥離させて収集する金の収集方法が開示されている。特許文献2には、金めっきされた樹脂を40℃、20%塩化第二鉄液に35分浸漬させることで金めっきを剥離させ、濾別回収する方法が記載されている。また、特許文献3には、ヨウ素およびヨウ素イオンを含む金剥離用の水溶液で金めっき廃材を処理して金を剥離(溶解)させ、剥離(溶解)した金を含むヨウ素溶液を亜鉛で還元処理した後、王水、次いで水酸化ナトリウムで処理し、還元して金を精製回収する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−13051号公報
【特許文献2】特開2007−31760号公報
【特許文献3】特開2007−16259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で用いられる硝酸は劇物であり、特に銅との反応時には窒素酸化物が発生し、大気汚染や呼吸器系の健康被害の要因となり、大掛かりな排ガス処理が必要となる。
特許文献2の方法では、母材が樹脂であり且つ数μm程度の厚みである下地金属には有効であるが、母材が樹脂以外の金属材料への金めっき品に対しては、母材の金属材料を十分に溶解することが出来ず、回収される金メッキに未溶解金属分が混入するため、金の高純度回収が出来ない。
特許文献3の方法は、ヨウ素により一度金を溶解させて還元回収する必要があり、薬液コストも他に比べ非常に高価である。
また、一般的に用いられる王水やシアンを使った貴金属回収方法は、貴金属のみの溶解に留まらず、大量の溶液を使用するため薬液コストが高く、極めて毒性が強く安全上の懸念が大きい。また、多大なる廃液処理コストがかかってしまう。
本発明は、貴金属めっき品から金等の貴金属を回収する方法において、従来の回収方法における上記問題を解決したものであり、貴金属を溶解させることなく、めっきの部材及び下地金属、又は下地金属を溶解させて、貴金属を固体で剥離回収することで高純度・低コストで貴金属を回収し得る有価金属回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、部材の表面に下地金属と貴金属とがめっきされた貴金属めっき品を塩化第二鉄を含む処理溶液に浸漬させることにより、下地金属及び部材を溶解して、又は下地金属を溶解させて、部材から剥離した貴金属を、処理溶液より分離回収することで貴金属を固体で回収し得ることを見出した。そして、高純度・低コストで貴金属を回収し得るという予想外の効果が得られることを見出した。
即ち、本発明は以下に記載した事項に関する。
【0007】
<1>
部材の表面に下地金属と貴金属とがめっきされた貴金属めっき品より有価金属を回収する有価金属回収方法において、
前記貴金属めっき品を、塩化第二鉄を含む処理溶液に浸漬させる浸漬工程と、
前記浸漬工程により、下地金属及び部材を溶解して、又は前記下地金属を溶解して、前記部材から剥離した貴金属を、前記処理溶液より分離回収する有価金属分離回収工程とを含む
有価金属回収方法であって、
前記処理溶液中の塩化第二鉄の濃度が40質量%〜52質量%であり、処理溶液の温度が10℃〜30℃である有価金属回収方法。
<2>
部材の表面に下地金属と貴金属とがめっきされた貴金属めっき品より有価金属を回収する有価金属回収方法において、
前記貴金属めっき品を、塩化第二鉄を含む処理溶液に浸漬させる浸漬工程と、
前記浸漬工程により、下地金属及び部材を溶解して、又は前記下地金属を溶解して、前記部材から剥離した貴金属を、前記処理溶液より分離回収する有価金属分離回収工程とを含む
有価金属回収方法であって、
前記処理溶液中の塩化第二鉄の濃度が10質量%〜30質量%であり、処理溶液の温度が50℃〜70℃である有価金属回収方法。
<3>
前記有価金属分離回収工程で貴金属と前記部材とを分離させた後の前記処理溶液を再生処理溶液として、前記浸漬工程で再利用する<1>又は<2>に記載の有価金属回収方法。
<4>
更に、前記有価金属分離回収工程で貴金属と前記部材とを分離させた後の前記処理溶液より前記下地金属を回収する下地金属回収工程を含む<1>〜<3>のいずれか1項に記載の有価金属回収方法。
なお、本発明は上記<1>〜<4>に係る発明であるが、以下、参考のためそれ以外の事項(例えば、下記〔1〕〜〔5〕)についても記載している。
〔1〕
部材の表面に下地金属と貴金属とがめっきされた貴金属めっき品より有価金属を回収する有価金属回収方法において、
前記貴金属めっき品を、塩化第二鉄を含む処理溶液に浸漬させる浸漬工程と、
前記浸漬工程により、下地金属及び部材を溶解して、又は前記下地金属を溶解して、前記部材から剥離した貴金属を、前記処理溶液より分離回収する有価金属分離回収工程とを含む
有価金属回収方法。
〔2〕
前記処理溶液中の塩化第二鉄の濃度が40質量%〜52質量%であり、処理溶液の温度が10℃〜30℃である〔1〕に記載の有価金属回収方法。
〔3〕
前記処理溶液中の塩化第二鉄の濃度が10質量%〜30質量%であり、処理溶液の温度が50℃〜70℃である〔1〕に記載の有価金属回収方法。
〔4〕
前記有価金属分離回収工程で貴金属と前記部材とを分離させた後の前記処理溶液を再生処理溶液として、前記浸漬工程で再利用する〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の有価金属回収方法。
〔5〕
更に、前記有価金属分離回収工程で貴金属と前記部材とを分離させた後の前記処理溶液より前記下地金属を回収する下地金属回収工程を含む〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の有価金属回収方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る貴金属めっき品からの有価金属回収方法は、下地金属及び部材、又は貴金属直下の下地金属を塩化第二鉄を含む処理溶液で溶解し、貴金属を部材より剥離するので、貴金属めっき品より貴金属を溶解することなく固体で下地金属と部材から分離できる。従って、回収した貴金属への部材、又は下地金属の混入を防ぐことができ、回収した貴金属の純度を100%に近づけることができる。更に、部材、又は下地金属の金属成分の回収率も、従来よりも向上でき、しかも部材、又は下地金属への貴金属の混入も少ないため、その純度を100%に近づけることができる。
以上のことから、高純度の貴金属めっき品を高回収率で得ることができ、更には高純度の金属成分も得ることができるため、再利用がしやすく、資源の有効利用が図れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の有価金属回収方法は、部材の表面に下地金属と貴金属とがめっきされた貴金属めっき品より貴金属を回収する有価金属回収方法において、貴金属めっき品を塩化第二鉄を含む処理溶液に浸漬させる浸漬工程と、浸漬工程により下地金属及び部材、又は下地金属を溶解して部材から剥離した貴金属を、処理溶液より分離回収する貴金属分離回収工程とを含むものである。
以下、詳しく説明する。
【0010】
浸漬処理する貴金属めっき品は、例えば、電子機器や通信機器等の部品であり、プリント基板やコネクタ端子の差込部、フレキシブル基板の接点部及び装飾品として使用された使用済みの部品や製品であるが、部品や製品の製造過程で発生する不良品(例えば、検査不合格品等)や残材でもよい。
部材(以下母材と称する場合がある)としては、例えば、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂系の樹脂部材、鉄・ステンレス・アルミニウム・銅・銅合金などの金属部材がある。
部材が熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂系の樹脂部材の場合、浸積工程により下地金属のみを溶解させて、貴金属を部材から剥離させることができる。また、部材が金属部材である場合、部材及び下地金属を共に溶解させて、貴金属を部材から剥離させることができる。
熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂としては、具体的には、(1)エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチック、(2)ポリオレフィン樹脂(類)、(3)これらのプラスチックのポリマーアロイ物又はポリマーブレンド物、等が挙げられる。なお、これら(1)〜(3)のいずれか1又は2以上で構成されたものでもよい。
【0011】
上記した(1)エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックには、(a)ナイロン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、(b)ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、(c)ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、エポキシ樹脂、液晶ポリマー、等が挙げられる。
また、(2)ポリオレフィン樹脂(類)には、(a)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、(b)アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、(c)アクリロニトリルスチレン共重合樹脂、メチルメタクリレートブタジエンスチレン共重合樹脂(MBS樹脂)、等が挙げられる。
【0012】
この貴金属めっき品の貴金属めっきの直下には、単一金属、二種以上の金属で構成される下地金属が、例えば、1μm〜5μm程度の厚みで施されている。
ここで、単一又は二種以上の金属には、例えば、銅、ニッケルが挙げられる。なお、二種以上の金属とは、例えば、銅の無電解めっきを行った上に、更にニッケルを電気めっきする場合のように、二種以上の金属を複数層に積層してめっきした場合の金属が含まれる。
これら下地金属は、従来公知の電気めっきと無電解めっきのいずれの方法を用いて形成されたものでもよく、まためっき浴を使用しないCVD(化学蒸着)やPVD(物理蒸着)等を用いて形成されたものでもよい。
【0013】
この下地金属の表面には、貴金属が、例えば、0.03μm〜300μm程度の厚みで形成されている。ここで、貴金属には、Au、Ag、Pt、Pd、Rh、Ruの少なくとも1種等が挙げられる。
【0014】
〔浸漬工程〕
以上に示した貴金属めっき品から、貴金属を剥離する浸漬工程について説明する。
貴金属めっき品は、そのままの状態で処理することが好ましいが、例えば、従来公知の破砕機を使用して、一辺が3〜10cm程度の大きさとなるように破砕処理(粗破砕)してもよい。
次に、上記した貴金属めっき品を、塩化第二鉄を含む処理溶液に浸漬する。
この塩化第二鉄を含む処理溶液は、塩化第二鉄水溶液であることが好ましく、塩化第二鉄水溶液中の塩化第二鉄(FeCl3)の濃度は、概ね10質量%以上(好ましくは30質量%以上)でよいが、経済性を考慮すれば、60質量%以下(好ましくは55質量%以下、より好ましくは52質量%以下)である。
また、塩化第二鉄水溶液中に、更に塩酸(HCl)を添加することも可能であるが、この場合、塩化水素35質量%水溶液の塩酸と塩化第二鉄50質量%水溶液を20:80〜50:50の体積比率で混合するのがよい。
【0015】
上記した浸漬処理は、貴金属めっき品を処理溶液に浸漬させて行う。
浸漬時間は1〜24時間であることが好ましく、1〜2時間であることがより好ましい。
この処理溶液の温度は、10℃〜30℃又は50℃〜70℃であることが好ましく、20℃〜30℃又は60℃〜70℃であることがより好ましい。なお、加熱する場合は、上記した濃度よりも低濃度の塩化第二鉄水溶液を使用することもできる。
【0016】
すなわち、浸積処理は下記(1)又は(2)の条件で行うことが好ましい。
(1)処理溶液中の塩化第二鉄(FeCl3)の濃度を40質量%〜52質量%とし、処理溶液の温度が10℃〜30℃。
(2)処理溶液中の塩化第二鉄(FeCl3)の濃度を10質量%〜30質量%とし、処理溶液の温度が50℃〜70℃。
上記(1)及び(2)における浸漬時間は1〜2時間であることが好ましい。
【0017】
浸積処理を(1)又は(2)の条件で行うことにより、下地金属だけでなく金属部材もより溶解させ易くすることができ、回収される貴金属に未溶解金属分が混入するのを防ぐことができるため、貴金属の高純度回収が可能となる。
(1)の条件では浸漬時に加熱することなく、下地金属及び金属部材を全て溶解することが出来る。また、(2)の条件における塩化第二鉄の濃度の場合でも、処理溶液を撹拌又は上記の温度範囲とすることで(1)の条件と同様な溶解能力を発揮させることが出来る。さらに、(2)の条件は、金属腐食加工(エッチング)で使用済となった塩化第二鉄廃液中の塩化第二鉄(FeCl3)の濃度域でもあり、廃液の有効活用が可能である。
また、有価金属分離回収工程で貴金属と部材とを分離させた後の処理溶液を、再生処理溶液として、浸漬工程で再利用することもできる。
【0018】
塩化第二鉄水溶液中の塩化第二鉄濃度が上記の範囲であれば、新しく調整した塩化第二鉄水溶液、再生処理後の塩化第二鉄水溶液、金属腐食加工(エッチング)で使用済となった塩化第二鉄を含む廃液のいずれでもよく、新しく調整した塩化第二鉄水溶液又は再生処理溶液と、金属腐食加工(エッチング)で使用済となった塩化第二鉄を含む廃液とを混合して用いてもよい。
【0019】
新しく調整した塩化第二鉄水溶液又は再生処理溶液と、金属腐食加工(エッチング)で使用済となった塩化第二鉄を含む廃液とを混合して用いる場合、新しく調整した塩化第二鉄水溶液又は再生処理溶液と金属腐食加工(エッチング)で使用済となった塩化第二鉄を含む廃液との混合割合は体積比で1:10であることが好ましく、3:8であることがより好ましい。また、新しく調整した塩化第二鉄水溶液中又は再生処理溶液の塩化第二鉄(FeCl3)の濃度は40質量%〜52質量%であり、金属腐食加工(エッチング)で使用済となった塩化第二鉄を含む廃液中の塩化第二鉄(FeCl3)の濃度は10質量%〜35質量%であることが好ましく、23質量%〜35質量%であることがより好ましい。
【0020】
貴金属めっき品を処理溶液に浸漬させることにより、下地金属成分中の各種金属は塩化物を形成し、塩化第二鉄水溶液に溶解する。
【0021】
具体的には、銅は塩化銅(CuCl2)、ニッケルは塩化ニッケル(NiCl2)、クロムは塩化クロム(CrCl3)、錫は塩化錫(SnCl2)、鉛は塩化鉛(PbCl2)、アルミニウムは塩化アルミニウム(AlCl3)、インジウムは塩化インジウム(InCl3)となる。
【0022】
下地金属成分は、部材を浸漬処理した後の塩化第二鉄水溶液を溶解処理し原料として再利用できる。なお、下地金属の種類(例えば、鉄系金属)によっては、塩化第二鉄水溶液による処理をした後、そのまま液切り処理を行った後、溶解処理を行ってもよい。
【0023】
〔有価金属分離回収工程〕
浸漬工程により下地金属及び金属部材、又は下地金属を溶解して部材から剥離した貴金属を、処理溶液より分離回収する有価金属分離回収工程について説明する。樹脂やプリント基板に貴金属めっきされたものは、浸漬工程に供しても溶解せずに残る。下地金属及び金属部材、又は下地金属を溶解させた処理溶液は、例えば、濾過操作を行うことで貴金属めっき成分を固体として分離回収することが出来る。
【0024】
浸漬後一定時間が経過した後の処理溶液を浸漬容器から抜出し、その液を濾過し、濾物として貴金属めっき成分を回収することができる。処理溶液の抜出し方法は、浸漬容器にバルブを取付けての抜出しでもポンプによる抜出しでも構わない(好ましくは、下部抜出し)。濾過方法は、自然濾過、減圧濾過、加圧濾過、遠心濾過のいずれを用いることもできる。好ましくは、減圧濾過である。濾過時のフィルターは、貴金属めっきがフィルター上に回収される孔径であればよい。
【0025】
濾過操作後も、溶解液にて剥離した貴金属めっき成分や溶解液が樹脂やプリント基板等の部材表面に付着しているため、部材表面や浸漬容器に残った部材は洗浄により、表面等に残存する貴金属を回収することが好ましい。洗浄は、水による洗浄が好ましく、水張りによる浸漬洗浄でも、圧力水による掛け流し方式での洗浄でもどちらでもよい。好ましくは、掛け流し方式である。洗浄後の水を濾過することで、樹脂やプリント基板等の部材表面に付着していた貴金属めっき成分を濾物として回収することができる。濾過操作にて回収された濾液は、塩化鉄成分を含むため、塩化第二鉄液の再生処理を行うことができる。濾過方法及び濾過時のフィルターは上述したものと同様のものを用いることができる。
【0026】
貴金属は、塩化第二鉄水溶液に溶解しないため、例えば、ろ過等の固液分離により固体の状態で分離回収することができる。そして、さらに比重分離、山元還元によりそれぞれ高い純度で分離回収することができる。
ここで、比重分離とは各物質の比重差を利用して分離回収行うものであり、風力分別、水力分別、重液分別、流動層を利用した比重分別がある。
ここで、山元還元とは、溶融飛灰からの非鉄金属回収方法として、一般的に、非鉄精錬所で使用されている。
【0027】
〔下地金属回収工程〕
一方、本発明の有価金属回収方法は、更に、前記貴金属分離回収工程で貴金属と部材とを分離させた後の前記処理溶液より下地金属を回収する下地金属回収工程を含むことが好ましい。
塩化第二鉄水溶液に溶解させた下地金属成分は、貴金属を分離回収した後の処理溶液から析出させて回収することができる。この方法としては、従来公知の方法を使用でき、例えば、処理溶液に銅とニッケルを含んでいる場合には、例えば、特開平6−127946号公報に記載の方法を使用できる。また、錫や銀、インジウム等も、同様の方法を使用できる。なお、クロムとアルミニウムは、水酸化物として回収される。
この具体的な方法は、特許第4018832号公報に記載されているため、以下簡単に説明する。
【0028】
上記した金属成分を含有する塩化第二鉄水溶液中に鉄粉を添加し、塩化第二鉄水溶液中に溶存する塩化銅(塩化物)を置換させ、銅を析出させて分離回収する。なお、塩化第二鉄水溶液中に塩化第二鉄が残存している場合は、鉄粉を添加して先に塩化第一鉄に還元しておく方が、銅の回収効率が向上し、望ましい。
次に、銅が除去された脱銅水溶液中に鉄粉を添加し、かつ鉄イオン濃度を制御してニッケルを析出させ分離回収する。これにより、塩化第二鉄水溶液中から銅とニッケルを回収できる。部材が金属の場合、下地金属と共に溶解した金属部材は、下地金属の回収と同様の方法により回収することができる。
以上の方法により、貴金属めっき品に含まれる金属成分を回収することで、これらを再利用できるので、資源の有効利用が図れる。
【0029】
このように、下地金属を塩化第二鉄液水溶液に溶解させることで、下地金属及び貴金属の付着がない部材が得られる。なお、得られた部材は、その後、再利用することができる。再利用の際には弱酸にて洗浄を行い、水洗いも行うことが好ましい。
また、貴金属めっき品の一部が酸化される等して、表面に金属化合物が形成されている場合には、上記した塩化第二鉄液での処理を行う前に塩酸で処理して、貴金属の表面の金属化合物を除去する。なお、この金属化合物の除去処理は、前記した浸積処理の時間や濃度を調整することで、省略することもできる。
【0030】
金属化合物の除去処理で使用する塩酸液には、10〜35質量%(更に好ましくは、15〜35質量%)の塩酸を含む液を使用するのがよいが、更に濃度が高い場合であっても本発明は適用できる。なお、塩酸の代わりに硫酸や硝酸を使用することもできるが、塩酸の方が後処理が容易である。
この場合の塩酸による酸洗時間は、常温で4〜10分程度が好ましいが、濃度によって異なる。
そして、金属化合物の除去処理、即ち洗浄(酸洗)処理した貴金属めっき品を、塩化第二鉄液、又は塩酸が添加された塩化第二鉄液に、例えば、8〜30分程度浸漬し、この塩化第二鉄液に金属めっきを溶解させる。
【0031】
以上の方法により、貴金属めっき品を粉砕することなく、下地金属の表面から貴金属を剥離して、貴金属めっき品から貴金属を分離することができる。このため、貴金属の純度と歩留りを向上でき、更には下地金属の金属成分の純度と歩留りを向上でき、資源の有効利用が図れる。
得られた貴金属及び下地金属が剥離された部材は、例えば、1〜10mmの適当な大きさに粉砕して分別し、そのまま原料として使用したり、粉砕、更に加熱し溶融して新材料と混合する等して再利用することができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例に本発明の有価金属回収方法を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
なお、「実施例1」は「参考例」と読み替えるものとする。
【0033】
〔実施例1〕
黄銅を母材とし下地金属としてニッケルがめっきされた、金めっきピンが挿入された樹脂製コネクター(5.0kg、金濃度120mg/kg、金含有量600mg)を10mm目開きの網に入れ、90Lの塩化ビニル製容器内に投入した。その後、コネクターが十分に浸るまで、処理溶液として塩化第二鉄液水溶液を充填した。
使用した塩化第二鉄液水溶液は、濃度は22.5%、ORP718mV(vs S.H.E)、液温常温(20℃)、液量90Lであった。
【0034】
浸漬時間は、1時間であった。浸漬後、塩化ビニル製容器下部より処理溶液を抜出すとともに、その処理溶液を濾過操作に供した。濾過条件は、アルバック機工株式会社製のアスピレーター(到達圧力6.6kPa、排気速度12L/min)にて減圧濾過し、アドバンテック株式会社製のNo.462粘稠液用濾紙(保留粒子径8μm)を使用した。
濾過操作にて濾液、濾物の金属を分析し、金回収のマテリアルバランスを調査した。金分析は、バリアン(Varian Inc.)社製ICP−OES(VARIAN730−ES)を使用した。金分析を行ったところ、濾物に558mgと93.0%の金を回収することが出来た(濾液中の金は、0mg)。しかし濾物に、母材である黄銅成分が31.6%残存していることが判明し、母材を全て溶解させることが出来ていないことを確認した。
【0035】
〔実施例2〕
銅を母材とし下地金属としてニッケルがめっきされた、金めっきピンが挿入された樹脂製コネクター(3.3kg、金濃度850mg/kg、金含有量2805mg)を10mm目開きの網に入れ、90Lの塩化ビニル製容器内に投入した。その後、コネクターが十分に浸るまで、処理溶液として塩化第二鉄液水溶液を充填した。
使用した塩化第二鉄液水溶液は、濃度は44.5%、ORP925mV(vs S.H.E)、液温(30℃)、液量90Lであった。
【0036】
浸漬時間は、1時間であった。浸漬後、塩化ビニル製容器下部より処理溶液を抜出すとともに、その処理溶液を濾過操作に供した。濾過条件は、アルバック機工株式会社製のアスピレーター(到達圧力6.6kPa、排気速度12L/min)にて減圧濾過し、アドバンテック株式会社製のNo.462粘稠液用濾紙(保留粒子径8μm)を使用した。
濾過操作にて濾液、濾物の金属を分析し、金回収のマテリアルバランスを調査した。金分析は、バリアン(Varian Inc.)社製ICP−OES(VARIAN730−ES)を使用した。金分析を行ったところ、濾物に2600mgと92.7%の金を回収することが出来た(濾液中の金は、0mg)。また濾物には、めっき下地金属及び母材であるニッケル及び銅は検出されず、全て濾液として溶解していることを確認した。
【0037】
濾過操作後のコネクター樹脂に金めっき成分が付着しているのを目視で確認した。このコネクター樹脂を水洗浄した。水洗浄条件は、株式会社いけうち製の1流体標準扇形ノズル(1/2MVVP115400S303)を用いて0.3Mpaの洗浄水(30L/min)で、水を循環使用しながら、洗浄を実施した。水洗浄後、洗浄水を濾過操作し、濾物及び濾液の金分析を行った。金分析を行ったところ、濾物に205mgと7.3%の金を回収することが出来た(濾液中の金は、0mg)。以上より、コネクターの金めっきを全量濾物として回収することが出来た。一方、濾液については、塩化第二鉄再生処理に供し、下地金属の回収並びに塩化第二鉄液の再生を行うことが出来た。
【0038】
〔実施例3〕
エポキシ樹脂を母材とし下地金属としてニッケルがめっきされ、金めっきされたプリント基板(12.2kg、金濃度580mg/kg、金含有量7076mg)を10mm目開きの網に入れ、90Lの塩ビ製容器内に投入した。その後、プリント基板が十分に浸るまで、処理溶液として塩化第二鉄液を含む廃液を充填した。
使用した廃液の塩化第二鉄濃度は23.0%、ORP730mV(vs S.H.E)、液温(65℃)、液量90Lであった。
【0039】
浸漬時間は、1時間であった。浸漬後、塩ビ製容器下部より溶解液を抜出すとともに、その処理溶液を濾過操作に供した。濾過条件は、アルバック機工株式会社製のアスピレーター(到達圧力6.6kPa、排気速度12L/min)にて減圧濾過し、アドバンテック株式会社製のNo.No.462粘稠液用濾紙(保留粒子径8μm)を使用した。濾過操作にて濾液、濾物の金を分析し、金回収のマテリアルバランスを調査した。金分析は、バリアン(Varian Inc.)社製ICP−OES(VARIAN730−ES)を使用した。金分析を行ったところ、濾物に6900mgと97.5%の金を回収することが出来た(濾液中の金は、0mg)。また濾物には、めっき下地金属であるニッケルは検出されず、全て濾液として溶解していることを確認した。
【0040】
濾過操作後のコネクター樹脂に金めっき成分が付着しているのを目視で確認した。水洗浄条件は、株式会社いけうち製の1流体標準扇形ノズル(1/2MVVP115400S303)を用いて0.3Mpaの洗浄水(30L/min)で、水を循環使用しながら、洗浄を実施した。水洗浄後、洗浄水を濾過操作し、濾物及び濾液の金分析を行った。金分析を行ったところ、濾物に176mgと2.5%の金を回収することが出来た(濾液中の金は、0mg)。以上より、コネクターの金めっきを全量濾物として回収することが出来た。一方、濾液については、塩化第二鉄再生処理に供し、下地金属の回収並びに塩化第二鉄液の再生を行うことが出来た。
【0041】
以上のことから、貴金属直下の下地金属を、塩化第二鉄を含む処理溶液で溶解することで、貴金属めっき品を粉砕することなく、貴金属めっき品と貴金属とを分離可能であり、有価金属を高純度で回収し、資源の有効利用が図れることを確認できた。
【0042】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の貴金属めっき品からの有価金属回収方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、本発明の貴金属めっき品からの有価金属回収方法で処理する貴金属めっき品は、前記した実施の形態で示した具体的な貴金属めっき品や下地金属の種類に限定されるものではない。
そして、貴金属の剥離に使用する塩化第二鉄を含む処理溶液の種類や浸漬時間、また処理溶液の温度等は、前記実施の形態に限定されるものではなく、処理する貴金属めっき品(部材の材料、下地金属の金属成分、貴金属)の種類に応じて適宜変更できる。