特許第6369843号(P6369843)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6369843板材分離装置、その板材分離装置を備えた板材搬送装置、及び板材の分離方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6369843
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】板材分離装置、その板材分離装置を備えた板材搬送装置、及び板材の分離方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/08 20060101AFI20180730BHJP
   B65H 3/46 20060101ALI20180730BHJP
【FI】
   B65H3/08 342A
   B65H3/46 Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-223437(P2017-223437)
(22)【出願日】2017年11月21日
(65)【公開番号】特開2018-87085(P2018-87085A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2017年11月21日
(31)【優先権主張番号】特願2016-227649(P2016-227649)
(32)【優先日】2016年11月24日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】717006896
【氏名又は名称】BIデザイン合同会社
(72)【発明者】
【氏名】福添 和▲徳▼
【審査官】 佐々木 一浩
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−012347(JP,U)
【文献】 特開2010−195535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 3/08−3/14
B65H 3/46−3/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板材が積層状に積み重ねられた積層板材から最上部の板材の上面を保持して前記板材を分離する方向に昇降させる板材リフト手段と
記板材リフト手段で持ち上げられた前記板材の下面を保持する保持具を有する板材剥離手段と
昇降可能な昇降フレームとを備えるとともに、前記板材リフト手段及び前記板材剥離手段は前記昇降フレームに取り付け、
前記板材剥離手段が有する前記保持具は、前記積層板材の側方から、前記板材リフト手段で持ち上げられた前記板材と前記板材が持ち上げられた後の前記積層板材との間に直線運動又は揺動して進入した後、前記板材リフト手段で保持し持ち上げた前記板材の下面を、前記板材剥離手段が有する前記保持具で保持できるように前記板材リフト手段で前記板材を下降させ、前記板材の下面を前記板材剥離手段が有する前記保持具で保持した後、前記板材リフト手段で前記板材を上昇させ、前記板材を分離することを特徴とする板材分離装置。
【請求項2】
前記板材リフト手段は、前記板材を持ち上げる可動範囲の中間で停止可能に構成することを特徴とする請求項1に記載の板材分離装置。
【請求項3】
前記板材リフト手段で持ち上げた前記板材の下方に前記板材剥離手段が進入した後、
前記板材リフト手段で持ち上げた前記板材を下降させ、
前記板材剥離手段が有する前記保持具で前記板材に密着した密着板材の下面を保持した後、
前記板材リフト手段で前記板材を上昇させ前記密着板材を剥離することを特徴とする請求項1又は2に記載の板材分離装置。
【請求項4】
前記板材リフト手段は、持ち上げる前記板材の厚さによって前記板材を持ち上げる高さを変えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の板材分離装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の板材分離装置と、分離した前記板材を搬送する搬送手段とを備える板材搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の板材が積層状に積み重ねられた積層板材から最上部の板材を一枚だけ分離する板材分離装置、その板材分離装置と分離された板材を搬送する搬送手段とを備えた板材搬送装置、及び板材の分離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のシート材が積層状に積み重ねられた積層シートから最上部のシート材を一枚だけ分離する装置が考案されている。上記のような装置は、例えば、特許文献1に開示されている積層シート材の取出し装置や特許文献2に開示されている板材の搬送装置がある。
【0003】
積層シート材の取出し装置は、最上段のシート材の上面の角部端部等を吸着して持ち上げ所定の高さで待機させたり吸着して持ち上げた後、吸着を解除する補助吸着装置と、これらのシート材を吸着して取り上げることにより最上段のシート材を直下のシート材から分離して取り出す主吸着装置とを具備する構成になっている。
【0004】
また、板材の搬送装置は、昇降可能で積層状態の板材の上部に設置し板材の表面に吸着可能な主吸引器と、積層板材の側部に設置され、前記板材の裏面側に出没可能で、且つ昇降可能な副吸引器を設置する構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−233479号
【特許文献2】実開平07−012347号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の発明は、積層状に積まれた最上段のシート材の上面の角部端部等を吸着して所定の高さまで持ち上げて板材を分離する。このとき、最上段のシート材と2枚目のシート材が静電気(プラスチックの場合)やシート材に塗布された防錆油(金属の場合)やシート材の隙間に発生する真空によって密着していても、2枚目のシートが反った際の反力が最上段のシート材と2枚目のシート材どうしの密着力より大きいので分離することができる。しかし、さらに薄いシート材を同様の高さまで持ち上げると、シート材の厚さが薄いのでシート材が反ったときの反力は小さくなる。そのため、薄いシート材を分離しようとすると、2枚目のシートが反った際の反力が最上段のシート材と2枚目のシート材どうしの密着力より小さくなり、分離できないことが生ずる、という問題がある。
【0007】
特許文献2の発明は、副吸引器は、積層状に積まれた最上段の板材の上面を吸着して持ち上げられた板材の裏面側に出没可能で、且つ昇降可能に構成されて、積層状に積まれた板材の側部に設置される。副吸引器を板材の裏面側に出没させるアクチェータと、副吸引器を昇降させるアクチェータとの2つのアクチェータが必要になる。積層状に積まれた板材の側部に、2つのアクチェータを設置できる十分なスペースがなければ副吸引器を設置できない、という問題がある。
【0008】
本発明は上記のような従来技術の問題点を解決することを課題とする。具体的には、積層状に積まれた板材の側部にコンパクトに配置でき、積層状に積まれた板材を確実に1枚分離することができる板材分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、複数の板材が積層状に積み重ねられた積層板材から最上部の板材の上面を保持して前記板材を分離する方向に昇降させる板材リフト手段と、前記板材リフト手段で持ち上げられた前記板材の下面を保持する保持具を有する板材剥離手段と、昇降可能な昇降フレームとを備えるとともに、前記板材リフト手段及び前記板材剥離手段は前記昇降フレームに取り付け、前記板材剥離手段が有する前記保持具は、前記積層板材の側方から、前記板材リフト手段で持ち上げられた前記板材と前記板材が持ち上げられた後の前記積層板材との間に直線運動又は揺動して進入した後、前記板材リフト手段で保持し持ち上げた前記板材の下面を、前記板材剥離手段が有する前記保持具で保持できるように前記板材リフト手段で前記板材を下降させ、前記板材の下面を前記板材剥離手段が有する前記保持具で保持した後、前記板材リフト手段で前記板材を上昇させ、前記板材を分離することを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記板材リフト手段は、前記板材を持ち上げる可動範囲の中間で停止可能に構成することを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記板材リフト手段で持ち上げた前記板材の下方に前記板材剥離手段が進入した後、前記板材リフト手段で持ち上げた前記板材を下降させ、前記板材剥離手段が有する前記保持具で前記板材に密着した密着板材の下面を保持した後、前記板材リフト手段で前記板材を上昇させ前記密着板材を剥離することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、前記板材リフト手段は、持ち上げる前記板材の厚さによって前記板材を持ち上げる高さを変えることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、板材分離装置と、分離した前記板材を搬送する搬送手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、板材リフト手段で持ち上げられた板材に別の板材が密着していても、密着した板材を剥離することができる。そのため省力化を図ることができる。また、積層板材の側部に配置するアクチェータは、持ち上げた板材と積層状に積み重ねられた積層板材との間に保持具を進入するアクチェータのみなので設置スペースを確保するのが容易である。
【0016】
請求項2の発明によれば、板材リフト手段で持ち上げられた板材に別の板材が密着していても、密着した板材を剥離することができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、板材リフト手段で持ち上げられた板材に別の板材が密着していても、密着した板材を剥離することができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、板材リフト手段は板材を持ち上げる高さを、板材の厚さ毎に最適な高さに変えることができるので、さらに確実な板材の分離ができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、分離された板材を1枚ずつ次の工程に搬送できるので省力化、自動化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の板材分離装置を概念的、概略的に示した正面図である。
図2】同上を概念的、概略的に示した平面図である。
図3】同上を概念的、概略的に示した側面図である。
図4】本発明の板材剥離手段を概念的、概略的に示した側面図である。
図5】板材の分離方法を示した図である。
図6】板材の分離方法を示した図である。
図7】板材の分離方法を示した図である。
図8】他の板材分離装置を概念的、概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づき、本発明を実施するための形態を説明する。本発明の実施の形態に係わる板材Wは金属の板材やプラスチックのシート材が用いられる。
【0023】
本発明の板材分離装置について図1図3を参照して説明する。板材Wはパレット14に積層状に積まれている。本実施例では複数の板材が積層状に積み重ねられた積層板材を板材Wと呼称する。また、積層状に積まれた板材Wの最上部の板材を板材W1(1枚目)、2枚目の板材を板材W2と呼称して説明する。
【0024】
パレット14に板材Wを囲むように設けられたガイド棒15によって板材Wは位置決めされてパレット14上に載置されている。
【0025】
板材分離装置は、主に積層状に積まれた板材Wの最上部の板材W1の角部端部を保持して持ち上げる板材リフト手段20と、板材リフト手段20によって持ち上げられた板材W1又は板材W1に密着した状態の板材W2(密着板材)と、板材W1が持ち上げられた後の積層状に積まれた板材Wとの間に挿入する板材剥離手段30とで構成されている。板材リフト手段20と板材剥離手段30とは板材W1を搬送する板材搬送装置10の昇降フレーム11にそれぞれ取り付けられている。
【0026】
板材搬送装置10は装置フレーム(図示省略)と昇降する昇降フレーム11とで構成される。装置フレームには搬送手段(図示省略)が備えられている。搬送手段は板材搬送装置10を走行させるための回転自在な複数の車輪と駆動源(モータ)と接続された車軸の両端に固定された車輪とを有する。そして、板材搬送装置10は駆動源を駆動させると車輪が回転し、走行レール上を走行可能に構成されている。
【0027】
装置フレームには昇降フレーム11を昇降するための昇降シリンダ(図示省略)と、昇降シリンダの両側に一対のガイド(図示省略)とが垂直に配設されている。昇降フレーム11には、一対のガイド棒(図示省略)が垂直に設置される。昇降シリンダをシリンダロッドが下向きになるように取り付け、シリンダロッドの先端は昇降フレーム11に取り付ける。昇降シリンダを作動すると、昇降シリンダに対して平行に取り付けられた一対のガイドにより一対のガイド棒が案内され、昇降フレーム11は移動する。
【0028】
昇降フレーム11には、複数個の真空パッド12が、吸着面を下向きに取り付けられている。真空パッド12の数量は、板材W1のサイズや重量により適宜変更可能である。昇降シリンダを作動して、昇降フレーム11を昇降させ、パレット14に積層状に積まれた最上部の板材W1を真空パッド12で吸着保持して持ち上げることができる。昇降シリンダは空圧により作動するために、図示を省略した空圧配管や弁類を備えている。また、真空パッド12は真空により板材W1を保持するために、図示を省略した真空配管や弁類を備えている。
【0029】
昇降フレーム11には、板材リフト手段20が設けられている。板材リフト手段20は、主に上下シリンダ21と連結具22と吸着具いわゆる上下パッド23で構成されている。上下シリンダ21がシリンダロッドを下向きに昇降フレーム11に取り付けられている。上下シリンダ21のシリンダロッドの先端には連結具22が固定されている。連結具22の他端には上下パッド23が吸着面を下向きに取り付けられている。上下シリンダ21は空圧により作動するために、図示を省略した空圧配管や弁類を備えている。また上下パッド23は真空により板材W1を保持するために、図示を省略した真空配管や弁類を備えている。
【0030】
上下シリンダ21のシリンダロッドが押し出されたときの上下パッド23の吸着面の高さは、昇降フレーム11に設けた真空パッド12の吸着面と同じ高さにしてある。上下シリンダ21のシリンダロッドが押し出された状態で、昇降フレーム11を昇降させ、真空パッド12と上下パッド23とで板材W1を吸着して持ち上げることができる。
【0031】
板材リフト手段20は、昇降フレーム11が真空パッド12で板材W1を吸着可能な位置まで下降し、上下シリンダ21のシリンダロッドが押し出されたときに上下パッド23の吸着面が積層状に積み重ねられた最上部の板材W1の角部端部を吸着できる位置に設けられる。昇降フレーム11が下降した状態で、上下シリンダ21のシリンダロッドは引き込まれ上下パッド23で積層状に積み重ねられた最上部の板材W1の上面の角部端部を吸着保持して持ち上げ分離する。上下パッド23は積層状に積み重ねられた板材W1を吸着保持して真下の板材W2から離間する方向に移動して分離するようにしてもよい。
【0032】
昇降フレーム11には、板材剥離手段30も設けられている。板材剥離手段30について図4を参照して説明する。板材剥離手段30は、主にロータリアクチュエータ31を取り付けるプレート32と、吸着して保持するいわゆる剥離パッド38と、剥離パッド38を取り付ける旋回プレート36と、旋回プレート36の旋回軸36aを支持するベアリング35と、ベアリング35を固定するブラケット34とで構成される。
【0033】
剥離パッド38は吸着面を上向きに旋回プレート36に取り付けられている。旋回プレート36には真空引きするための通路39が設けられる。通路39の一端は剥離パッド38に接続され、他端には継手40が接続されている。
【0034】
旋回プレート36の旋回軸36aは、ブラケット34内に組み込まれた複数のベアリング35により回転自在に固定されている。
【0035】
ロータリアクチュエータ31はプレート32に取り付けられる。ロータリアクチュエータ31の回転軸31aは旋回プレート36の旋回軸36aに取り付けられている。プレート32はブラケット34に取り付けられている。そして、ブラケット34は昇降フレーム11に取り付けられている。
【0036】
ロータリアクチュエータ31を作動させると、旋回プレート36が積層状に積まれた板材Wの側方から板材W1の角部端部側へ90度回転する。剥離パッド38は、板材リフト手段20で持ち上げられた板材W1又は板材W1に密着した状態の板材W2と、積層状に積まれた板材Wとの間に進入する。言い換えると、旋回プレート36が90度回転したとき、剥離パッド38は上下パッド23の下方に略水平向に移動して前進する。また、ロータリアクチュエータ31を逆に作動させると、旋回プレート36が元の位置、つまり積層状に積まれた板材Wの側方側に90度逆回転する。
【0037】
板材リフト手段20で持ち上げられた板材W1又は板材W1に密着した状態の板材W2の下方に進入する剥離パッド38は、板材W1に密着した板材W2を剥離する位置まで上下シリンダ21のシリンダロッドが下降したとき剥離パッド38の吸着面が板材W2の下面と対向するように剥離パッド38を傾けて設けても良い。ロータリアクチュエータ31は空圧により作動するために、図示を省略した空圧配管や弁類を備えている。また剥離パッド38は真空により板材W2を保持するために、図示を省略した真空配管や弁類を備えている。
【0038】
剥離パッド38のパッド径は密着した板材W1と板材W2とから、板材W2を剥離できるサイズにする。そして、板材W1に密着した板材W2を剥離する際に誤って上下パッド23で吸着した板材W1の下面を剥離パッド38で吸着しても板材W1が上下パッド23から剥がされないように上下パッド23のパッド径は剥離パッド38のパッド径よりも大きいサイズにする。
【0039】
板材W1を分離する方法について図5図7を参照して説明する。図5(A)のように板材搬送装置10が積層状に積まれた板材Wから板材W1を分離する位置に移動する。
【0040】
次いで、図5(B)のように、昇降フレーム11が板材W1を真空パッド12で吸着する位置まで下降する。このとき、板材リフト手段20の上下シリンダ21はシリンダロッドが押し出された状態である。
【0041】
次いで、図5(C)のように、板材リフト手段20の上下パッド23に真空エアーが供給され、上下パッド23で板材W1を吸着保持する。次いで、上下シリンダ21のシリンダロッドが引き込まれ、積層状に積み重ねられた最上部の板材W1の角部端部が持ち上げられる(板材リフト工程)。次いで、真空パッド12に真空エアーが供給され、真空パッド12で板材W1を吸着保持した後、昇降フレーム11が上昇する。昇降フレーム11が上昇する際に、持ち上げた板材W1と、板材W1が持ち上げられた後の積層板材Wとの間に、エアーを噴射する。
【0042】
次いで、図5(D)のように、上下シリンダ21のシリンダロッドを押し出し、分離された板材W1の反りをなくした状態で板厚を測定する。この際、測定した板厚が1枚分の厚みであったときは、板材搬送装置10で板材W1を次工程へ搬送する。しかし、図5(D)のように測定した板厚が2枚以上のときは、板材W2の剥離を行う。板厚を測定する機器を設けない場合は、図5(C)の工程後、後述する図6(C)以降の工程を行ってもよい。
【0043】
次いで、図6(A)のように、上下シリンダ21のシリンダロッドが引き込まれる。
【0044】
次いで、図6(B)のように、昇降フレーム11が下降する。このとき、上下パッド23には板材W1と板材W2とが互いに密着した状態で吸着されている。
【0045】
次いで、図6(C)のように、上下パッド23で持ち上げられた板材W1と板材W2とが密着した状態の2枚の板材と、積層状に積まれた板材Wとの間の空間41に、ロータリアクチュエータ31により板材剥離手段30の剥離パッド38が進入する(保持具進入工程)。
【0046】
次いで、図6(D)のように、上下シリンダ21のシリンダロッドが押し出され、板材W2が剥離パッド38に密着する位置まで、上下パッド23に保持された板材W1と板材W2とが下降する(板材下降工程)。剥離パッド38に真空エアーが供給され、剥離パッド38で板材W2の下面を吸着保持する(板材保持工程)。板材W2が剥離パッド38に密着する位置での上下シリンダ21のシリンダロッドの中間停止は、シリンダストロークの途中でシリンダロッドをロック可能なファインロックシリンダを使用する。この場合、シリンダストロークの下降端、上昇端とは別にシリンダストローク、つまり可動範囲の中間で停止させるためにオートスイッチを設ける。別の方法として、ファインロックシリンダの替わりにエアーシリンダに複数の電磁弁とレギュレータとを使用したエアー回路を設け、中間停止するようにしてもよい。このように上下シリンダ21は、シリンダストロークの可動範囲の中間で停止可能に構成する。
【0047】
次いで、図7(A)のように、板材W1に密着した板材W2が剥離パッド38に吸着保持された状態から、上下シリンダ21のシリンダロッドが引き込まれ、板材W1が板材W2から剥がされる(板材剥離工程)。仮に、剥離する際に板材W1のみが上下パッド23に吸着保持されていた場合、上下パッド23のパッド径が剥離パッド38のパッド径より大きいので板材W1は剥離パッド38から剥がされる。
【0048】
次いで、図7(B)のように、ロータリアクチュエータ31により板材剥離手段30の剥離パッド38を元の位置まで待避させる。剥離パッド38には板材W2を吸着を解除するための真空破壊エアーを供給しながら、剥離パッド38を待避させる。そして、板材W2は積層状に積まれた板材Wの上に載置される。
【0049】
剥離パッド38が待避する際、剥離パッド38の先端のゴム部分が板材W2と擦れて磨耗しないように、真空破壊エアーのエアー圧を高圧にして板材W2が剥離パッド38の先端と擦れないようにするとよい。
【0050】
次いで、図7(C)のように、板材W1を吸着保持した状態で昇降フレーム11は上昇する。昇降フレーム11が上昇する際に、持ち上げた板材W1と、板材W1が持ち上げられた後の積層板材Wとの間に、エアーを噴射する。その後、上下シリンダ21のシリンダロッドが押し出される。分離された板材W1の反りをなくした状態で板厚を測定する。測定した板厚が1枚分の厚みであったときは、板材搬送装置10で板材W1を次工程へ搬送する。測定した板厚が2枚分以上の厚みであったときは、図6(A)以降の工程を行う。板厚を測定する機器を設けない場合に板厚が1枚か分かる方法は、図7(A)で板材W1を剥離したときの剥離パッド38内の内圧を検知すれば分かる。即ち、剥離する前に上下パッド23に吸着保持されていた板材が板材W1のみのときは剥離パッド38内の内圧が大気圧になる。
【0051】
次に、板材W1の角部端部を吸着して持ち上げる際の、上下シリンダ21のシリンダストロークについて説明する。昇降フレーム11が下降し、複数の真空パッド12で板材W1が押さえられた状態から積層状に積み重ねられた最上部の板材W1の角部端部を上下パッド23で吸着保持して上下シリンダ21のシリンダロッドが引き込まれると、板材W1の角部端部が持ち上げられ、真空パッド12から上下パッド23の間の板材W1は分離方向に所定の角度だけ反る。このとき板材W1は弾性変形している。
【0052】
板材W1が分離方向に反ったとき、仮に板材W1に板材W2が密着していた場合、板材W2が反った際の反力(板材W2がフラットな状態に戻ろうとする力)の方が、最上段の板材W1と2枚目の板材W2どうしの密着力より大きいと、板材W2は板材W1より分離される。
【0053】
上下シリンダ21のシリンダストロークは板材W1と板材W2とが密着したときの密着力よりも、板材W2の反ったときの反力が大きくなる高さまで板材W1を持ち上げるように設定する。
【0054】
しかし、設定した板厚よりもさらに薄い板厚の板材W1を同じシリンダ径及び同じシリンダストロークのシリンダを使用して分離しようとすると、板材W2が反った際の反力が板材どうしの密着力よりも小さくなり板材W2を板材W1から分離できなくなる。また、板厚の厚い板材W1を薄い板材と同じ高さまで持ち上げると、板材W1が塑性変形をおこす懸念がある。
【0055】
このように、板厚に差があっても板材リフト手段20で板材W1の分離をより確実に行うためには、板厚毎に上下パッド23の昇降する高さを変えて板材W1を分離するようにしたほうがよい。例えば、薄い板厚の板材W1を分離する際はシリンダの可動範囲を大きくし、比較的厚い板厚の板材W1を分離する際はシリンダの可動範囲を小さくするように板材W1の板厚によってシリンダの可動範囲を可変できるようにする。但し、シリンダの可動範囲を小さくした場合でも剥離パッド38が進入できるようにする。
【0056】
そして、板材Wの厚さによって上下パッド23の上昇する高さを変え、板材W1の反る角度を変えるようにする。板材W1に密着した板材W2が反ったときの反力を厚さ毎に最適になるように上下パッド23の昇降する高さを変え、厚さが大幅に異なる薄い板材W1をも分離することができるようにする。つまり、板厚の薄い板材の場合はストローク(可動範囲)を大きく設定し、板厚の厚い板材の場合はストローク(可動範囲)を小さく設定できるように、上下シリンダ21の上昇端のオートスイッチを複数設け、板厚ごとに上昇端を変えるようにする。
【0057】
上下シリンダ21はエアーシリンダを使用したが、サーボモータとボールネジとリニアガイドとで構成された電動シリンダを使用して、上下パッド23を昇降させるようにしてもよい。
【0058】
シリンダやモータを用いて上下パッド23が支点を中心に回動しながら上下するようにし、上下パッド23で吸着した板材W1が板材Wから離間する方向に移動するようにしてもよい。
【0059】
本発明の板材剥離手段30はロータリアクチュエータ31を使用して剥離パッド38を旋回させて上下パッド23で持ち上げられた板材W1と板材W2とが密着した状態の2枚の板材と、積層状に積まれた板材Wとの間の空間41に、進入するようにしたが、シリンダを用いて剥離パッド38が回動するようにしてもよい。
【0060】
また、板材剥離手段30を図8のように、シリンダロッドが水平に可動して剥離パッド38を略水平方向に前進(直進)させて上下パッド23で持ち上げられた板材W1と板材W2とが密着した状態の2枚の板材と、積層状に積まれた板材Wとの間の空間41に進入するようにしてもよい。
【0061】
図8の板材剥離手段30は、主に水平シリンダ55と、2山ナックルジョイント56と,スライドプレート52と、プレート53と,ガイド54と、吸着して保持するいわゆる剥離パッド38とで構成される。
【0062】
剥離パッド38は吸着面を上向きにスライドプレート52に取り付けられている。剥離パッド38は上下シリンダ21の近傍でかつ長方形の形状をしたスライドプレート52の一側に取り付けられている。スライドプレート52には真空引きするための通路39が設けられる。通路39の一端は剥離パッド38に接続され、他端には継手40が接続されている。スライドプレート52の他側には、スライドプレート52の平面に対し鉛直に取り付けたプレート53が取り付けられている。
【0063】
スライドプレート52の上面の中央には、ガイド54が設けられている。ガイド54はレールと可動部で構成されている。ガイド54のレールはスライドプレート52に固定されている。レール上を移動可能な可動部は、角パイプ状の断面形状したシリンダ取付ブラケット51の下部に取り付けられている。シリンダ取付ブラケット51の左右の側板には穴が明けられ、その穴にはロッド側トラニオン型の水平シリンダ55が回転可能に取り付けられている。シリンダ取付ブラケット51の上部は昇降フレーム11に取り付けられている。
【0064】
水平シリンダ55のロッドの先端には2山ナックルジョイント56が取り付けられ、2山ナックルジョイント56の他方はプレート53に取り付けられている。
【0065】
水平シリンダ55を作動させると、スライドプレート52が水平方向に移動する。水平シリンダ55のロッドが引く方向に作動させると、剥離パッド38は、前進して板材リフト手段20で持ち上げられた板材W1又は板材W1に密着した状態の板材W2と、積層状に積まれた板材Wとの間に進入する。水平シリンダ55は空圧により作動するために、図示を省略した空圧配管や弁類を備えている。また剥離パッド38は真空により板材W2を保持するために、図示を省略した真空配管や弁類を備えている。
【0066】
本発明の上下パッド23及び剥離パッド38は首振りパッドやベロウパッドを使用してもよい。また、上下パッド23及び剥離パッド38の真空エアーは真空エジェクタを用いて発生させてもよい。
【0067】
本発明の剥離パッド38は略水平に移動するように構成したが、ロータリアクチュエータ31及び水平シリンダ55を斜めに配設し、剥離パッド38が斜めに移動するように、つまり剥離パッド38が前方に移動するほど下がるようにしてもよい。この場合、板材リフト手段20で持ち上げられた板材W1を下降させ、板材剥離手段30が有する剥離パッド38で板材W2の下面を吸着保持する際に、板材W2の下面に剥離パッド38の吸着面が均一に接するように傾ける。
【0068】
板材分離の方法は、同じ効果を得られるならば本発明で説明した手順に限定されるものではなく別の手順を用いてもよい。
【0069】
以上、本発明の板材分離装置について、好ましい実施例を示して説明したが、本発明は、上述した実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の組合せの実施及び/又は種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。板材分離装置は適宜な位置及び/又は適宜な数量に変更可能である。例えば、本発明の板材分離装置を板材Wの端に複数個追加して並べて備えてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 板材搬送装置
12 真空パッド
20 板材リフト手段
21 上下シリンダ
23 上下パッド
30 板材剥離手段
31 ロータリアクチュエータ
38 剥離パッド
55 水平シリンダ
W 板材(積層板材)
W1 最上部の板材
W2 最上部から2枚目の板材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8