【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第1 刊行物による発表(学会予稿集) (1)発行者名 The International Nuclear Track Society and Kobe University (2)刊行物名 26th International Conference on Nuclear Tracks in Solids BOOK OF ABSTRACTS and program (3)頁数 p.88 (4)発行年月日 平成26年8月 第2 上記第1に伴う学会における発表 (1)学会名 26th International Conference on Nuclear Tracks in Solids (2)主催者名 The International Nuclear Track Society and Kobe University (3)開催日 平成26年9月15日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート(PEDC)を主成分とする材料に対し、UV吸収剤を、600ppm以上4000ppm以下で分散させて形成されている
ことを特徴とするエックス線検出具。
ポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート(PEDC)を主成分とする材料に対し、蛍光色素、シリカナノ粒子、蛍光色素内包シリカナノ粒子、又はシリカナノカプセルの少なくとも何れかを分散させて形成されている
ことを特徴とするエックス線検出具。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施の形態の例につき説明する。なお、本発明の形態は、これらの例に限定されない。
【0010】
本発明では、合成樹脂であるポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート(PEDC)を用い、好適にはその一例であるアリルジグリコールカーボネート(ADC,慣用名CR−39)を用いる。
この材料を用いて例えば板状のX線検出具を形成し、当該検出具を、X線が到達し得る箇所(X線を検出したい箇所,X線の到達の有無や線量を調べたい箇所)に置く。又、この材料を用いて眼鏡を作製し、X線が到達し得る箇所で装用して、眼鏡に対するX線の到達の有無や線量を調べることができる。
【0011】
当該検出具は、X線を受けると、微視的な変化を生ずる。
この微視的な変化は、X線照射により、照射を受けた部分において電子やホールが生成することで生ずるものと考えられる。又、電子やホールの生成状況(個数や分布等)は、照射されたX線の強度や線量により変わるものと考えられ、(検出具の肉厚や重合態様や添加物の有無ないし種類等の特性に合わせ)所定線量以上のX線を受けると、自然光や室内照明光等の通常の環境下において肉眼でも目視することが可能となる。
【0012】
又、X線を受けた上記検出具に対し、所定の波長(例えば488nm(ナノメートル),555nm,又は647nm)の光を照射すると、上記検出具は、X線を(所定線量以上)受けた部分のみにおいて蛍光を発せず、あるいはX線を(所定線量未満しか)受けなかった部分において生じた蛍光の態様と異なる態様で、X線を(所定線量以上)受けた部分において蛍光を生じる。この場合の光は、コヒーレント光であり、例えばレーザー光である。
加えて、受けたX線の線量(域)により、蛍光の態様が更に変わることもある。例えば、受けた線量が多い程、蛍光の明度が低くなる(蛍光が暗くなる)。線量と明度(蛍光態様)の関係は、比例関係、二次関数の関係、指数関数の関係等、種々の関数の関係が有り得、検出具(の素材)毎に様々な線量における明度(蛍光態様)変化を予め取得しておくことで把握できる。
従って、上記検出具に所定波長の光を照射した場合の、検出具における蛍光の態様を見れば、X線を受けたか否かが分かり、X線を検出することができる。又、X線の線量(域)により蛍光の態様が変わる場合、X線の線量(域)を検出することができる。
【0013】
上記検出具には、蛍光によるX線照射の検出をより行い易くする等の目的で、各種の染料を始めとする添加物を混入することができる。
添加物の例として、ローダミンBを始めとするローダミン類並びにフルオレセイン類等の蛍光色素、二酸化シリコン(シリカ,SiO
2)、ヨウ素、紫外線(UV)吸収剤が挙げられる。UV吸収剤の例として、ハリマ化成株式会社製U101が挙げられる。シリカは、好適には、溶媒に分散した状態で適用され、より好適には、粒径の平均が1000ナノメートル未満である粉状のもの(シリカナノ粒子)である。
又、添加物を分散させる目的で、上記検出具の成形時等に分散剤を加えることができる。分散剤の例として、エタノールを始めとするアルコールや水分散が挙げられる。
【0014】
更に、上記検出具に対し、コヒーレント光に代えて、偏光(された所定色の光)を当てても、X線を(所定線量以上)受けた部分のみにおいて偏光を透過せず、あるいはX線を(所定線量未満しか)受けなかった部分において生じた透過の態様と異なる態様で、X線を(所定線量以上)受けた部分において偏光を透過することとなる。
線量と偏光透過状態との関係についても、コヒーレント光の場合と同様である。
【実施例1】
【0015】
次に、本発明に係る各種の実施例を適宜図面に基づいて示す。但し、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【0016】
実施例1において、次に示すADC樹脂(ADC,慣用名CR−39)を主成分とする材料(ADC基材)からX線検出具(検出具)を2つ形成した。ADCを主成分とするとは、例えば材料全体におけるADCの割合(体積及び/又は重量)が最も大きいこと(ADCのみを材料とする場合を適宜含む)を指す。尚、検出具は、何れも厚さ1ミリメートル(mm)の扇形状の平板とした。
1つは、材料としてシリカナノ粒子分散液(SiO
2,1グラム(g))を含有するADC(シリカを含めない重量9g)を用いたものであり(実施例1−1)、もう1つは、材料としてローダミンB(約1ミリモル(mmol)のローダミン溶液で1g,溶媒はアルコール)と等モルのヨウ素溶液(1g,両者併せて2g)を含有するADC(11g)を用いたものである(実施例1−2)。
実施例1−1におけるシリカや、実施例1−2におけるローダミンは、ADC中において分散している。
【0017】
実施例1−1,1−2のそれぞれに対し、管電圧30キロボルト(kV),管電流15ミリアンペア(mA)のX線を照射した。X線は、スリットから射出され、実施例1−1,1−2の各中央部分に当たるようにした。X線の照射時間は、実施例1−1で1時間、実施例1−2で2時間とした。実施例1−1が受けるX線の線量は、約48〜96グレイ(Gy)である。
その後、室内において目視で実施例1−1,1−2を観察したところ、何れもX線の照射前と変わらず一様に透明であることが見て取れた。又、
図1に示すように、可視光を検知するスキャナで実施例1−1,1−2をスキャンしても、一様に透明であった。尚、
図1につき実施例1−1,1−2の扇形の中心角を上にして見た場合の、左の検出具が実施例1−1であり、右の検出具が実施例1−2である。
そして、実施例1−1,1−2を、488,555,647nmの各レーザー光で順に照射して、発生した蛍光の様子を観察した。
より具体的には、フルオロアナライザーに実施例1−1,1−2を並べてセットし、特定波長のレーザー光で実施例1−1,1−2を励起しながら画像を記録した。
【0018】
図2はその画像を示すものであって、
図2(a)は555nmでレーザー励起した場合であり、
図2(b)は488nmでレーザー励起した場合であり、
図2(c)は647nmでレーザー励起した場合である。何れにおいても、実施例1−1が左で、実施例1−2が右である。
555nmの場合、実施例1−1では、中央部分に横長の長方形状の蛍光発光部分(白色)が生じている。この発光部分の周りは、透明になっている。一方、実施例1−2では、全体が一様に濃い赤色で発光している。この発光は、ローダミンヨウ素が励起されて蛍光を生じていることによるものである。よって、実施例1−1に対し555nmでレーザー励起させて白色の蛍光を発生するか否かを見れば、X線の有無が分かり、X線の検出が可能となる。
488nmの場合、実施例1−1では、中央部分に横長の長方形状の蛍光発光部分(濃淡のある白色)が生じている。この発光部分の周りは、透明になっている。又、発光部分中の中央部は濃い白色となっており、両側部は(中央部に比べ)薄い白色となっていて、脇に行くほど(中央部から離れるほど)濃度が薄くなるような状態(端へ行くほど薄くなるグラデーションの状態)となっている。よって、実施例1−1に対し488nmでレーザー励起させて白色の蛍光を発生するか否かを見れば、X線の有無が分かり、X線の検出が可能となるし、白色蛍光発光の濃淡を見れば、X線の強弱の検出が可能となる。一方、実施例1−2では、ローダミンヨウ素の励起により全体が一様に濃い赤色で発光している。
647nmの場合、実施例1−1では、X線照射部分か非照射部分かにかかわらず、画像が全体として透明となった。一方、実施例1−2では、中央部分以外が白色に発光する中で中央部分に透明な(殆ど発光していない)横長長方形部分を生じている。よって、実施例1−2に対し647nmでレーザー励起させて白色の蛍光中に透明部分が発生するか否かを見れば、X線の有無が分かり、X線の検出が可能となる。
【実施例2】
【0019】
実施例2において、厚さを2mmとし又エタノールを1g加えシリカを1g加えたことを除き、実施例1−1と同様に形成した検出具(総重量9g)に対し、実施例1と同様のX線を4時間照射した(実施例2−1)。又、シリカを1gとしたことを除き、実施例1−1と同様に形成した検出具(1.5g)に対し、実施例1と同様のX線を4時間照射した(実施例2−2)。
そして、実施例1と同様に、488nmのレーザー光により励起しつつフルオロアナライザーで画像を取得した。
【0020】
図3はその画像を示すものである。
実施例2−1(図中左)では、検出具の厚さの増加によりシリカが比較的に不均一に分散しており、結果波長488nmの光がシリカにより散乱されて、全体に亘り黒色のスポットが散らばっている。そして、中央部分に、実施例1−1と同様、濃淡のある黒色蛍光発光部分が生じている。
一方、実施例2−2(図中右)では、スポット群は発生しておらず、中央部分に、実施例1−1と同様、濃淡のある黒色蛍光発光部分が生じている。
そして、実施例2−2の画像における蛍光発光部分の濃度について、画像処理ソフトウェアを用い、相対的な濃淡の度合を解析した。
その結果を
図4に示す。
図4は、横長長方形状の蛍光発光部分の横長中心線上の位置(横軸)と相対的な濃さ(縦軸,上に行くほど濃く下に行くほど薄い)の関係を示すグラフである。
図4によれば、蛍光発光部分の中央に行くほど濃い蛍光発光が起こっていることが分かる。これは、X線の照射強度、即ちスリットを直線的に通過して検出具に当たる箇所に強く当たり、スリットと検出具を結ぶ直線から横方向に外れるに従い徐々に強度が低下する状態で回折したX線が検出具に当たる状況によく対応している。
従って、特に実施例2−1では、X線の照射状況、即ち照射履歴を記録することができると言える。
【0021】
又、実施例2において、上述と同様のローダミン溶液(0.5g)とヨウ素溶液(0.5g,両者併せて1g)を投入し、脱気・薄色のもとで形成したADC(11g)に対し、実施例2−1と同様にX線を照射した後、各種の照射波長(励起波長)における光をそれぞれ照射して、実施例1と同様に画像を得た(実施例2−3)。
更に、ローダミン溶液とヨウ素溶液の代わりにフルオレセイン溶液(1g,溶媒や濃度はローダミン溶液と同様)としたことを除き実施例2−3と同様に成る実施例2−4を用意した(11g)。
加えて、ローダミン溶液とヨウ素溶液に代えてローダミン溶液のみ(1g)としたことを除き実施例2−3と同様に成る実施例2−5を用意した(11g)。
【0022】
図5は、実施例2−3〜2−5に係る検出具のフルオロアナライザー画像を4行3列に並べたものである。
上から1行目は、画像取得時に波長488nmのレーザー光を照射したものであり、2行目は、波長555nmの光を照射したものであり、3行目は、波長647nmの光を照射したものであり、4行目は、フルオレセイン励起光を照射したものである。
又、左の列は、実施例2−3に係る画像であり、中の列は、実施例2−4に係る画像であり、右の列は、実施例2−5に係る画像である。
【0023】
波長647nmの光(3行目)では、実施例2−3〜2−5の何れも検出具が蛍光発光していない。
波長555nmの光(2行目)では、実施例2−4がさほど蛍光発光していないが、実施例2−3,2−5においては全体的に蛍光発光しており、更に中央部分において横長の蛍光発光強度低下部が発生している。波長555nmの光は、ローダミンが発光する波長に近いので、ローダミン入りの実施例2−3,2−5の検出具が全体的に発光し、更に中央部分に対するX線の照射により、ローダミンの蛍光発光が妨げられて強度低下部を生じたと考えられる。
波長488nmの光(1行目)やフルオレセイン励起光(4行目)では、実施例2−3において同様に蛍光発光強度低下部が発生し、X線の照射を把握することができる。又、実施例2−5において、全体的な発光強度が弱く、更に強度が弱いものの強度低下部を生じており、実施例2−3と比較すると濃淡差が小さい(感度が低い)ものの、X線の照射を検知することができる。更に、実施例2−4においても、実施例2−3と同様にX線の照射を検知することができる。
【0024】
更に、実施例2において、シリカ粒子分散液(1g,濃度や溶媒は上述と同様)を投入したADC(総重量11g)に対し、照射時間を様々(4種)として異なる部位にそれぞれ照射したことを除き実施例2−1と同様にX線を照射した後、4種の照射波長における光を照射して、実施例1と同様に4種の画像を得た(照射波長別に実施例2−6〜2−9)。
【0025】
図6は、実施例2−6〜2−9に係る検出具のフルオロアナライザー画像を並べたものである。
図における左上が、画像取得時に波長488nmのレーザー光を照射したものであり(実施例2−6)、右上が、波長532nmの光を照射したものであり(実施例2−7)、左下が、波長555nmの光を照射したものであり(実施例2−8)、右下が、波長647nmの光を照射したものである(実施例2−9)。励起光照射時(画像取得時)の検出具は、実施例2−6〜2−9において共通である。
【0026】
実施例2−6(波長488nm)の場合、検出具において全体的に蛍光発光する中で4個の横長黒色部分(蛍光により全く発光しないか又は僅かにしか発光しない部分)が出ている。各黒色部分は、X線の照射部位と対応する。
又、4個の黒色部分は、図における上から下へ並んでおり、上の黒色部分ほど濃くなっている。最も上の黒色部分は照射時間が60分であるX線照射部位と対応し、そのすぐ下の黒色部分は照射時間が30分であるX線照射部位と対応し、更にそのすぐ下の黒色部分は照射時間が20分であるX線照射部位と対応し、最も下の黒色部分は照射時間が10分であるX線照射部位と対応する。
実施例2−7(波長532nm)の場合も、波長488nmの場合と同様、X線の照射時間の長時間化に応じ下から上に行くほど濃くなる4個の黒色部分がある。但し、同じ照射時間同士で黒色部分の濃さを比べると、波長488nmの場合よりも波長532nmの場合の方が薄くなっている。
実施例2−8(波長555nm)の場合も、X線の照射時間の長時間化に応じ下から上に行くほど濃くなる4個の黒色部分がある。但し、同じ照射時間同士で黒色部分の濃さを比べると、波長532nmの場合よりも波長555nmの場合の方が更に薄くなっている。
実施例2−9(波長647nm)の場合、X線照射に対応する黒色部分は見られない。
【0027】
図7は、実施例2−6(波長488nm)の場合において、検出具の図における上下の線(全ての黒色部分のほぼ中央を通る1本の直線)における黒色の濃さを示すグラフである。横軸が当該直線上の位置(図の上のある点からの距離,インチ)であり、縦軸が相対的な濃さ(最も濃い濃度を0とし最も薄い濃度を128として正比例的に128段階で区切った濃度)である。
検出具の図における上には、最も濃い黒色部分に相当する箇所が有り、濃度0の箇所が比較的に長く続いている(横軸約0.05〜0.1の部分)。そして、濃度90程度の箇所を経て、上から2番目の黒色部分に応じた箇所に至る。この黒色部分に応じた箇所では、濃度0の箇所が僅かに存在する程度である。更に、濃度90〜128の箇所を経て、上から3番目の黒色部分に応じた箇所に至る。この黒色部分に応じた箇所では、濃度48程度となっている。そして、濃度90〜128の箇所を経て、最も下の黒色部分に応じた箇所に至る。この黒色部分に応じた箇所では、濃度75〜90程度となっている。
それぞれの黒色部分に相当する各箇所の最も濃い点を結ぶと、図において点線で示すように、比例的な関係となる。
又、照射時間10分でも明確に黒色部分が現れ、X線照射(約8Gy)の検出が充分に可能となっている。
【実施例3】
【0028】
実施例3において、ADCのみとしたことを除き実施例1−1と同様に形成した検出具(1.5g)を作成した(実施例3−1)。又、同様に、シリカナノ粒子分散液(1g)を分散させた検出具(ADC11g)を作成した(実施例3−2)。更に、同様に、ローダミンを内包したシリカナノ粒子分散液(1g)を分散させた検出具(ADC1.5g)を作成した(実施例3−3)。加えて、同様に、フルオレセインを内包したシリカナノ粒子分散液(1g)を分散させた検出具(ADC1.5g)を作成した(実施例3−4)。
そして、それぞれに対して実施例1と同様に、X線を30分間照射し、各種波長のレーザー光により励起しつつフルオロアナライザーで画像を取得した。
又、各検出具に生成した横長黒色部分における全体的な蛍光発光の相対的な強度を、当該画像から得た。
【0029】
図8は、実施例3−1〜3−4に係る画像を順に左から右へ並べたものである。
尚、図における最上行は、波長488nmの光で励起したものであり、上から2行目は、波長494nmの光で励起したものであり、上から3行目は、波長532nmの光で励起したものであり、最下行は、波長555nmの光で励起したものである。
図に現れているように、488nmでは、実施例3−1〜3−3でX線照射状況に対応する横長黒色部分が発生している。又、494nmでも同様に、実施例3−1〜3−3でX線照射状況に対応する横長黒色部分が発生している。一方、532nm,555nmでは、実施例3−1,3−2,3−4でX線照射状況に対応する横長黒色部分が発生している。
【0030】
図9は、蛍光発光の相対的な強度を示すグラフである。横軸は励起光の波長であり、縦軸は555nmに係る実施例3−1での蛍光発光強度を100とした場合の相対的な蛍光発光強度である。尚、実施例2−9の結果に鑑み、647nmでの蛍光発光強度を0としている。
図に現れているように、488nmを除くどの励起光の波長においても、実施例3−1〜3−4にかけて順に蛍光発光強度が減少している。従って、ADCに対する添加物の有無や種類により、蛍光強度を制御することが可能となる。
尚、X線照射による黒色部分の蛍光強度の差は、添加物(特にローダミンやフルオレセイン)への電子又はイオンの移動が優先して起こった結果であると考えられる。
【実施例4】
【0031】
実施例4において、実施例3−1と同じ検出具(同様のX線照射状況)の横長黒色部分における蛍光のスペクトル(分光相対発光強度)を測定した。
その結果を
図10に示す。
図10のグラフの横軸が波長であり、縦軸が相対発光強度である。又、左側が励起側(Ex)であり、右側が蛍光側(Em)である。更に、励起側の折線の実線が励起スペクトルを、蛍光側の折線の実線が蛍光スペクトルを示す。加えて、励起側の破線(NoXray)は、X線を照射していない試料の励起側の励起スペクトルを示し、蛍光側の破線(NoXray)は、X線を照射していない試料の蛍光側の蛍光スペクトルを示す。
この図によれば、578nm付近に蛍光発光強度のピークが来ることが分かる。
【実施例5】
【0032】
実施例5において、次の各種の検出具を用意し、実施例1と同じX線を20〜24分間照射した後、550nmの励起光を照射してフルオロアナライザー画像を得た。
即ち、実施例5−1(A Tokudai PVA +Ag 0.1g CR 10g)として、ADC(10g)にポリビニルアルコール溶液(1g)と銀溶液(0.1g,溶媒:水,銀の濃度0.1M)を加えたもの(厚み1mmの扇形状)を用意し、実施例5−2(B Tokudai SiO
2 +Ag 0.1g CR 10g)として、PVAの代わりにシリカナノ粒子分散液(1g)としたことを除き実施例5−1と同様に形成したものを用意した。
又、実施例5−3(CR−39 10g Fluo 0.1g RF 1mm)として、PVAと銀の代わりにフルオレセイン溶液(0.1g)及びIPP27%希釈液(パルミチン酸イソプロピル,総重量1.1g)を分散させたもの(厚み1mmの円盤状)を用意し、実施例5−4(CR−39 10g Fluo 0.1g RFK 1mm)として、実施例5−3と同様のもの(但しIPP27%希釈液1.1g)を用意し、実施例5−5(CR−39 10g Fluo 0.1g G 1mm)として、実施例5−3と同様のもの(但しIPP27%希釈液1.1g)を用意した。ここで、IPP27%希釈液とは、ADCのモノマーに対して27重量%の濃度でIPPを希釈したものである。
更に、実施例5−6(CR−39 10g Fluo 0.1g P 1mm)として、実施例5−3と同様のもの(但しIPP27%希釈液1.1g)を用意し、実施例5−7(CR−39 10g Fluo 0.1g RF−1 1mm)として、実施例5−3と同様のもの(但しIPP27%希釈液1.1g)を用意し、実施例5−8(CR−39 10g Fluo 0.1g PS 1mm)として、実施例5−3と同様のもの(但しIPP27%希釈液1.1g)を用意した。
加えて、実施例5−9(Line−yo Jyuugoro CR−39 1mm)として、ライン用重合炉で重合したADC単独のもの(厚さ1mmの矩形板状,1.5g)を用意した。又、実施例5−10(Test−yo Koushuuha CR−39 1mm)として、ライン用重合炉ではなく高周波の電磁波を照射することにより重合する高周波重合炉で重合したことを除き実施例5−9と同様に形成したものを用意した。
【0033】
図11は、実施例5−1〜5−10に係る画像を並べたものである。
図中、左下の2個の扇形の上が実施例5−1であり、下が実施例5−2である。又、左上が実施例5−9であり、右上が実施例5−10であり、これらの下の6個の円盤が、左上から時計回りで順に実施例5−3,5−4,5−5,5−6,5−7,5−8である。
何れの検出具においても、中央部分に横長(縦長)黒色部分が生じている。
【0034】
図12は、
図11を画像解析ソフトウェアに取り込んで、黒色部分の中央を直交する線分上の画素値(画素毎の輝度の値)の変化を互いに比較したグラフである。縦軸が相対的な輝度(蛍光発光している黒色部分の外部に対する黒色部分の暗くなる度合の差)を表し、横軸が上記線分上の位置である。なお、横軸に関し、比較のため、実施例5−1〜5−10で順に輝度変化を表す線を横に並べている。又、縦軸に関し、黒色部分の外部(蛍光発光している部分)の強度は互いに若干異なるものの、グラフでは0に揃えてある。
本図より、実施例5−9(ライン用重合炉で形成したADC)が最も明暗差(濃さの変化の度合,蛍光発光強度の差)が大きく、実施例5−10の明暗差の5倍程度の差があることが分かった。
又、蛍光剤入りの実施例では、G(実施例5−5)とRF(実施例5−3)とPS(実施例5−8)における蛍光発光強度変化がほぼ等しく、実施例5−9の約半分の強度変化であった。更に、RFK(実施例5−4)とP(実施例5−6)とRF−1(実施例5−7)の明暗差がほぼ等しく、実施例5−10の約3分の1の明暗差であった。
【0035】
更に、実施例5において、厚みや混入するIPP27%希釈液の量を互いに異ならせた次の各種の検出具(何れも円盤状)を用意し、実施例1と同じX線を5分間照射(約4Gy)した後、555nmの励起光を照射してフルオロアナライザー画像を得た。
即ち、実施例5−11として、ADC18.22g(厚さ0.86mm)にIPP27%希釈液を1.3g入れたものを用意し、実施例5−12として、ADC18.22g(厚さ0.86mm)にIPP27%希釈液を1.5gだけ入れたものを用意し、実施例5−13として、ADC18.22g(厚さ0.89mm)にIPPを1.7gだけ入れたものを用意し、実施例5−14として、ADC18.22g(厚さ0.90mm)にIPP27%希釈液を1.9g入れたものを用意した。又、実施例5−15として、ADC18.22g(厚さ0.88mm)にIPP27%希釈液を2.6g入れたものを用意し、実施例5−16として、ADC18.22g(厚さ1.08mm)にIPPを3.0g入れたものを用意し、実施例5−17として、ADC18.22g(厚さ1.18mm)にIPP27%希釈液を3.4g入れたものを用意し、実施例5−18として、ADC18.22g(厚さ1.10mm)にIPP27%希釈液を3.8gだけ入れたものを用意した。
【0036】
図13は、実施例5−11〜5−18に係る画像であり、
図14は、
図13についてコントラストを調整したものである。何れにおいても、左上から右へ順に実施例5−10〜5−14が並び、左下から右へ順に実施例5−15〜5−18が並んでいる。
図13に比べ、
図14において明確に横長黒色部分を目視できた。
図14に対し、実施例5−1〜5−10と同様に蛍光発光の強度変化量を解析した結果を示すグラフを、
図15に示す。本図において、左から順に、実施例5−11〜5−18を並べている。尚、縦軸は、画像における輝度の値(0〜255の256段階中の約40〜170の領域,数字が小さいほど輝度が低く色が黒い)を示す。
本図より、実施例5−16,5−17において黒色部分をはっきりと生じており、IPP27%希釈液を減らした実施例5−12,5−13,5−18において強度変化が低下した。
実施例5−16,5−17にあっては、それぞれ差が110程有ったことから、実施例5−11〜5−18において照射したX線の線量より更に低い線量でも検出可能であると予測される。
【0037】
加えて、実施例5において、IPP27%希釈液の量を互いに異ならせた次の各種の検出具(円盤状)を用意し、実施例1と同じX線を5分間照射(約4Gy)した後、555nmの励起光を照射してフルオロアナライザー画像を得た。尚、実施例5−19,5−20は分かり易くするために欠番とする。
即ち、実施例5−21として、IPP27%希釈液を1.3g(1.75重量%)入れたものを用意し、実施例5−22として、IPP27%希釈液を1.5g(2.00重量%)入れたものを用意し、実施例5−23として、IPP27%希釈液を1.7g(2.30重量%)入れたものを用意し、実施例5−24として、IPP27%希釈液を1.9g(2.56重量%)入れたものを用意した。又、実施例5−25として、IPP27%希釈液を2.6g(3.5重量%)入れたものを用意し、実施例5−26として、IPP27%希釈液を3.0g(4.00重量%)入れたものを用意し、実施例5−27として、IPP27%希釈液を3.4g(4.50重量%)入れたものを用意し、実施例5−28として、IPP27%希釈液を3.8g(5.10重量%)入れたものを用意した。
【0038】
図16は、実施例5−21〜5−28に係る画像である。色の比較的に濃い4枚を上とした場合の本図において、左上から右へ順に実施例5−25〜5−28が並び、左下から右へ順に実施例5−21〜5−24が並んでいる。
図16において、実施例5−23〜5−28で横長黒色部分を目視で確認でき、X線の検出ができた。実施例5−21,5−22では、今回の線量や手法では、目視で確認し難かった。尚、実施例同士で比較すると、他の実施例の方が黒色がより一層濃い。
図16に対し、実施例5−11〜5−18と同様に蛍光発光の強度変化量を解析した結果を示すグラフを、
図17に示す。本図において、左から順に、実施例5−23〜5−28を並べている。尚、本図において、実施例5−21,5−22は省略している。
本図より、実施例5−27が最大の強度変化を呈していることが分かる。
図18に、IPP27%希釈液の重量%と強度変化の関係を示す。
IPP27%希釈液が3.5重量%以上となると(実施例5−25〜28)、強度変化量が30以上となり、より良好にX線を検知することができる。
【0039】
更に、実施例5において、厚みやIPPの濃度やUV吸収剤(上述のU101)の濃度を次の表1の通り互いに異ならせた各種の検出具(円盤状,ADC75g)を用意し、実施例1と同じX線を3分間照射した後、555nmの励起光を照射してフルオロアナライザー画像を得た。尚、実施例5−29,5−30,5−39,5−40,5−47〜5−50は欠番とする。
【0040】
【表1】
【0041】
図19は、実施例5−31〜5−38,5−41〜5−46,5−51〜5−58に係る画像を5行に亘り並べたものである。本図において、最も上の1行目の左から右へ順に実施例5−57,5−58が並び、すぐ下の2行目の左から順に実施例5−51〜5−54,5−56が並び、更に3行目の左から順に実施例5−41〜5−44,5−55が並び、次いで4行目の左から順に実施例5−35〜5−38,5−45が並び、最も下の5行目の左から順に実施例5−31〜5−34,5−46が並んでいる。
図19において、それぞれ横長黒色部分を目視することができ、3分間(約2.4Gy)であってもX線の照射を検出することが可能である。
図20は、
図19に対し、実施例5−11〜5−18と同様に蛍光発光の強度変化量を解析した結果を示すグラフである。
本図より、実施例5−41〜5−46が比較的に強度変化が大きく、検出具における黒色部分と他の部分とのコントラストがより大きくて黒色部分を一層認識し易いことが分かる。従って、UV吸収剤が600ppm以上4000ppm以下であると、発光強度差をより一層高くすることができ、X線検出感度がより一層良好になると言える。
又、IPPに関し、特に実施例5−31〜5−38,5−51〜5−58によれば、4重量%から5.7重量%において発光強度変化に顕著な差は見受けられない。このことに、実施例5−21〜5−28(特に実施例5−25〜5−28)の結果を合わせて考えると、IPPの濃度が3.5重量%以上5.7重量%以下であると、発光強度差をより一層高くすることができ、X線検出感度がより一層良好になると言える。
【実施例6】
【0042】
実施例6において、実施例4と同じ検出具(同様のX線照射状況)について偏光フィルタを通じて観察するため、
図21に示す装置(ADC基材を用いた検出具に対するX線の照射を検出するためのX線検出具観測装置)を作成した。
即ち、X線検出具観測装置Dは、ADCのみから成りあるいはADCを主成分(最も重量又は体積の割合の大きい成分)とする検出具Aを観察するための装置であって、LEDランプLを搭載した基板Bと、LEDランプL側において間隔を置いて重ねられた2枚の偏光フィルタP1,P2を備えている。
LEDランプLは、緑色であり、点灯により緑色光を照射可能である。基板Bは、図示しない電源を有するか若しくは電源と接続されており、図示しないスイッチによりLEDランプLの点消灯を切替可能である。尚、LEDランプLの明るさを段階的に切替可能としても良い。又、LEDランプLは、基板Bに搭載されていなくても良い。更に、LEDランプLの色を緑以外の様々な色に変えることができるし、LEDランプL以外のランプ(蛍光管や有機エレクトロルミネッセンス等)を用いることができる。
偏光フィルタP1,P2は、LEDランプLの光を偏光して透過する。偏光フィルタP1,P2は、何れも水平であり、互いに平行に配置されている。
LEDランプLに近い(下の)偏光フィルタP1の上に、検出具Aが載せられる。尚、少なくとも検出具Aを載せる部分(の一部)において光を透過可能である台を別途設けても良く、当該台につき、検出具Aを回転可能に載置するものとしても良い。
LEDランプLからより離れている(上の)偏光フィルタP2は、円盤状であり、その円の中心を中心とし水平を維持した状態で回転可能に設置されている。尚、偏光フィルタP1,P2が相対的に回転できれば良く、偏光フィルタP1のみ回転可能としたり、双方を回転可能としたりすることができる。又、偏光フィルタP1を円盤状として良いし、偏光フィルタP1,P2を円盤状以外の他の形状とすることができる。更に、偏光フィルタP1,P2と検出具AをLEDランプLの光で観察できれば良く、偏光フィルタP1,P2は水平でなくて良いし、互いに平行でなくても良い。LEDランプL、偏光フィルタP1、検出具A、偏光フィルタP2が直線上に並べば、これらの配置は如何様にもできる。
尚、偏光フィルタP2を通過した光に係る画像を取得可能なカメラを設置すると共に、当該カメラにより取得した画像において最も広い範囲における画像の様子(輝度が所定範囲内に収まり均一になっている等)とは異なる部分が存在しているか否かを判定可能な処理装置を設置して、当該処理装置が当該異なる部分が存在していると判定すると、X線照射可能性が有る旨のメッセージをランプやディスプレイ等に表示する(表示装置を設ける)ようにすることができる。
又、LEDランプL、偏光フィルタP1,P2、検出具Aを覆う機枠を設けることができ、当該機枠に沿うように(当該機枠の窓として)偏光フィルタP2を設けることができる。当該機枠には、検出具Aを出し入れするための扉を設けることができる。
【0043】
X線検出具観測装置Dに対し、実施例4と同じ材料やX線照射状況である検出具Aをセットし、LEDランプLを点灯して、偏光フィルタP2を適宜回転しつつ偏光フィルタP2の上(LEDランプLと反対側)から観察すると、偏光フィルタP2が特定の回転状態(回転開始から所定範囲内の角度で回転した状態)となった場合に、検出具Aにおいて緑色光の透過状態が他の部分(ベース部分)と異なる横長の変化部分(他の部分に比べて光を透過せず曇っている部分)が明瞭に観察できた。この横長変化部分は、実施例4における横長黒色部分と対応し、よってX線検出具観測装置Dにより、ADC基材を用いたX線検出具Aにおいて、X線照射痕をより明瞭に検出することができる。X線検出具観測装置Dでは、レーザー光ではなく、偏光フィルタP1,P2により偏光したLEDランプLの光により検出具Aを観測してX線の照射を検出するので、レーザー光を用意する必要がないし、検出具Aにレーザー光を当てて発生した蛍光を観察する必要もない。
偏光フィルタP1,P2により、方向の揃った光で検出具Aを観測することができ、方向の揃った光がX線照射痕のみにより充分に妨げられ、ベース部分を良く通る方向の揃った光の中で、透過の妨害によりX線照射痕が浮き上がって見えるものと考えられる。
又、実施例4と同程度の線量(8Gy程度)のX線を照射したADCのみを材料とする検出具Aを、X線検出具観測装置Dで観察すると、目視では殆ど認識できないX線照射痕を観測することができた。尚、1.6Gyの線量でも、X線照射痕を観測することができた。
【実施例7】
【0044】
実施例7において、次の各種の検出具を用意し、実施例1と同じX線を10分間照射した後、555nmの励起光を照射してフルオロアナライザー画像を得た。フルオロアナライザー画像は、照射直後及びおよそ20分間ずつの間隔で照射後約100分まで各5個の画像を得た。そして、当該画像から、蛍光強度等を得た。
即ち、実施例7−1として、ADC(8.5g)に、IPP27%希釈液5.5重量%と、上記UV吸収剤0.4重量%と、金微粒子を内包したシリカナノカプセル(Au@SiO
2)10重量%を加えたもの(厚み1.03mm)を用意し、実施例7−2として、厚みを0.85mmとしたことを除き実施例7−1と同様に形成したものを用意した。尚、実施例7−3として、Au@SiO
2を加えないことを除き実施例7−1と同様に形成したものを用意した。
【0045】
図22(a)は、照射直後の蛍光強度を100%とした場合の規格化した蛍光強度に係る時間変化を示すグラフであり、
図22(b)は、蛍光強度の相対的な度合に係る時間変化を示すグラフである。
図22(a)によれば、1.03mm厚の検出具において、Au@SiO
2を加えることにより、加えない場合に比べ、どの経過時間にあっても蛍光強度が約1〜3割増しとなっており、例えば110分後では、実施例7−3(Au@SiO
2なし)が28%となっているのに対し、実施例7−1(Au@SiO
2あり)が44%となっていることが分かる。
又、
図22(b)によれば、実施例7−1(Au@SiO
2あり,1.03mm厚)が最も蛍光強度が高くなっており、実施例7−3(Au@SiO
2なし)に比べ約3倍の強度を有することが分かる。
よって、Au@SiO
2を加えることにより、どのようなX線の検出線照射後の経過時間であっても蛍光強度が比較的大幅に増し、もってX線の検出をより容易に行うことができる。
【0046】
又、実施例7において、次の各種の検出具を更に用意し、同様にフルオロアナライザー画像ないし蛍光強度を得た。
即ち、実施例7−4として、ADC(8.5g)に、上記UV吸収剤(4000ppm)5.6重量%と、内径15nmのシリカナノカプセル(@SiO
2)10重量%を加えたもの(厚み1.03mm)を用意し、実施例7−5〜7−9として、実施例7−4と同様に形成したものを用意した。
実施例7−4にあっては、X線照射後30分間暗室に据え置いて光を当てないようにし、その後室内光下でX線照射30分後,X線照射50分後,X線照射80分後の蛍光画像を取得した。
実施例7−5にあっては、X線照射直後の蛍光画像を取得した。
実施例7−6にあっては、X線照射後30分間光を当てないようにし、その後蛍光画像を取得した。
実施例7−7にあっては、X線照射後60分間光を当てないようにし、その後蛍光画像を取得した。
実施例7−8にあっては、X線照射後90分間光を当てないようにし、その後蛍光画像を取得した。
実施例7−9にあっては、X線照射後120分間光を当てないようにし、その後蛍光画像を取得した。
【0047】
図23(a)は、実施例7−1〜7−9に係る
図22(a)と同様のグラフであり、
図23(b)は、実施例7−1〜7−9に係る
図22(b)と同様のグラフである。尚、
図23(a)において、実施例7−4ではX線照射終了30分後の蛍光強度を100%(基準)としており、実施例7−6〜7−9では実施例7−5の蛍光強度を100%としている。
図23(a),(b)によれば、@SiO
2を加えることにより、加えない場合やAu@SiO
2を加えた場合に比べ、更に蛍光強度が強くなっていることが分かる。
又、照射後30分間暗所に保存した実施例7−6では、照射直後の実施例7−5の蛍光強度に比べ蛍光強度が増しており(規格化強度約136%)、シリカナノカプセルに照射履歴保存効果があったことが分かる。これは、シリカナノカプセルがX線照射により動いた電子を取り込んで電子やホールの移動を保存した(X線照射部分に0いて電子やホールを有効に分離した)ことによるものと考えられる。
更に、照射後60分間暗所に保存した実施例7−7では、実施例7−5に対する規格化強度が約100%となっており、シリカナノカプセルを加えるとおよそ1時間は極めて安定することが分かる。
【0048】
更に、実施例7において、次の各種の検出具(実施例7−10〜7−14)を別途用意し、同様にフルオロアナライザー画像ないし蛍光強度を得た。実施例7−10〜7−14では、フルオロアナライザー画像は、照射直後及びおよそ20分間ずつの間隔で照射後約120分まで各6個の画像を得て、当該画像からそれぞれ蛍光強度を得た。
即ち、実施例7−10として、ADC(8.5g)に、上記UV吸収剤(4000ppm)5.6重量%と、メチルビオロゲン内包シリカナノカプセル(MV@SiO
2)2重量%(0.2g)を加えたものを用意した。MV@SiO
2は、内径15nmのシリカナノカプセルに、電子受容体であるメチルビオロゲン分子を入れたものである。又、実施例7−10の厚みは0.85mmである。
又、実施例7−11として、実施例7−10におけるMV@SiO
2の量と検出具の厚みのみを変えたものを用意した。実施例7−11のMV@SiO
2の分量は、3重量%(0.3g)であり、検出具の厚みは1mmである。
更に、実施例7−12として、実施例7−11におけるMV@SiO
2の量のみを変えたものを用意した。実施例7−12のMV@SiO
2の分量は、5重量%(0.5g)である。
又更に、実施例7−13として、実施例7−11におけるMV@SiO
2の量のみを変えたものを用意した。実施例7−13のMV@SiO
2の分量は、10重量%(1g)である。
加えて、実施例7−14として、実施例7−11におけるMV@SiO
2の量のみを変えたものを用意した。実施例7−14のMV@SiO
2の分量は、20重量%(2g)である。
【0049】
図24(a)は、実施例7−10〜7−14に係る
図22(a)と同様のグラフであり、
図24(b)は、実施例7−10〜7−14に係る
図22(b)と同様のグラフである。
図24(a),(b)において、□は実施例7−10であり、△は実施例7−11であり、○は実施例7−12であり、◇は実施例7−13であり、▽は実施例7−14である。尚、
図24(a)において、実施例7−10〜7−14のそれぞれの照射直後の蛍光強度を100%としており、
図24(b)において、実施例7−11における照射終了から40分後の蛍光強度を100としている。
図24(a),(b)によれば、MV@SiO
2を加えることにより、加えない場合や@SiO
2を加えた場合に比べ、更に蛍光強度が強くなっていることが分かる。
MV@SiO
2を加えれば、蛍光強度が増すのであるが、特に蛍光強度の大小やその持続時間の観点から、MV@SiO
2を基板全体に対して5重量%以上加えることが好ましく(実施例7−12〜実施例7−14)、又10重量%以下加えることが好ましく(実施例7−10〜実施例7−13)、これらを合わせた範囲として5重量%以上10重量%以下とすることが更に好ましい(実施例7−12〜実施例7−13)。
MV@SiO
2の添加により、実施例7−12,実施例7−13では120分(2時間)後でもX線照射直後と同等の照射強度を呈しており(
図24(a)で何れも約100%)、実施例7−11でも120分後で約70%、実施例7−10,実施例7−14でも120分後で約70%と、更に充分に安定したX線検出性(照射痕保持性)を具備させることができる。これは、電子受容体であるメチルビオロゲン分子をシリカナノカプセルに内包することにより、電子やホールの移動の保存をより一層有効に行うことができたことによるものと考えるのが合理的である。尚、電子やホールの移動を保存する作用は共通であるから、MV@SiO
2,Au@SiO
2,@SiO
2の少なくとも何れか二つを混在させたり、他のマイクロカプセルや他の添加物と混在させても、検出性の向上を図れる。
【実施例8】
【0050】
実施例1〜7と同様にして、ADCの代わりにPEDCに属する他の樹脂を基材としてX線の検出具を作成し、X線を照射した場合においても、実施例1〜7と同様の結果となり、レーザー光や偏光によりX線照射痕を検出することができた。