(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6369865
(24)【登録日】2018年7月20日
(45)【発行日】2018年8月8日
(54)【発明の名称】創傷療法ドレッシングに流体を送達するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 27/00 20060101AFI20180730BHJP
【FI】
A61M27/00
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-555608(P2014-555608)
(86)(22)【出願日】2013年1月28日
(65)【公表番号】特表2015-505508(P2015-505508A)
(43)【公表日】2015年2月23日
(86)【国際出願番号】US2013023482
(87)【国際公開番号】WO2013116158
(87)【国際公開日】20130808
【審査請求日】2016年1月28日
(31)【優先権主張番号】61/594,033
(32)【優先日】2012年2月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508268713
【氏名又は名称】ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】プラット,ベンジャミン,エイ.
(72)【発明者】
【氏名】フラワー,キングスレー,ロバート ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】クルサード,リチャード ダニエル ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ビーズリー,マイク
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンズ,ダニエル
【審査官】
和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−520072(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0306941(US,A1)
【文献】
特表2003−518963(JP,A)
【文献】
特表2003−519509(JP,A)
【文献】
特表2007−534407(JP,A)
【文献】
特表2010−504816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷療法ドレッシングに流体を送達するように適合されたシステムにおいて、
前記創傷療法ドレッシングと流体連通し、前記創傷療法ドレッシングに負圧をもたらすように適合された負圧源と;
液溜めを収容するように適合されたハウジングであって、前記液溜めは、前記創傷療法ドレッシングと流体連通して前記液溜めから前記創傷療法ドレッシングに流体をもたらすように適合されている、ハウジングと;
前記液溜めを前記ハウジングに固定しかつ前記液溜めの前記流体に正圧を加えるように適合された付勢機構と;
前記創傷療法ドレッシングにおける負圧の低下が、前記創傷療法ドレッシングからの負圧の漏出に起因する負圧の低下ではなく、前記液溜めから前記創傷療法ドレッシングへの流体の流れに起因する負圧の低下と実質的に対応するように、前記創傷療法ドレッシングにおける負圧を制御するとともに、前記液溜めから前記創傷療法ドレッシングへ流体を供給する前に前記創傷療法ドレッシングからの負圧の漏出速度を測定するように適合された制御回路とを含むことを特徴とする、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記負圧源が前記ハウジング内に配置されていることを特徴とする、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記付勢機構が、前記液溜めを圧縮して前記ハウジング内の前記液溜めを固定し、かつ前記液溜めの前記流体に前記正圧を加えるように構成されていることを特徴とする、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記付勢機構がバネであることを特徴とする、システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムにおいて、前記バネが定荷重バネであることを特徴とする、システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記液溜めの前記流体に加えられた前記正圧が、少なくとも約75mm Hgであることを特徴とする、システム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記液溜めはポリエチレンバッグであることを特徴とする、システム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記制御回路が、前記液溜めから前記創傷療法ドレッシングへの前記流体の流速を検出するように構成されていることを特徴とする、システム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムにおいて、前記制御回路が、前記液溜めからの前記流体の前記流速を検出しかつ前記制御回路に流体流速信号を提供するように構成された流れセンサーに結合されていることを特徴とする、システム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記制御回路が、前記液溜めと前記創傷療法ドレッシングとの間で流体連通するように位置決めされるように適合された流れ調整器に結合されていることを特徴とする、システム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムにおいて、前記流れ調整器が制御弁であることを特徴とする、システム。
【請求項12】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記流れセンサーが、前記液溜めと前記創傷療法ドレッシングとの間で流体連通するように位置決めされるように適合されていることを特徴とする、システム。
【請求項13】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記負圧源が、真空ポンプおよび負圧制御装置を含み、前記制御回路が、前記創傷療法ドレッシングから受信した負圧信号に従って、前記真空ポンプおよび前記負圧制御装置を制御するように適合されていることを特徴とする、システム。
【請求項14】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記付勢機構が容器内に配置され、前記容器が、前記ハウジング内に摺動可能に収容され、かつ前記ハウジングから延出するように構成されていることを特徴とする、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年2月2日出願の米国仮特許出願第61/594,033号明細書(SYSTEMS AND METHODS FOR DELIVERING FLUID TO A WOUND THERAPY DRESSING)の優先権を主張し、その開示全体を、参照することにより本明細書に援用する。
【0002】
本明細書の主題は、概して、創傷の治癒、および創傷の治療に関する。より詳細には、限定するものではないが、主題は、流体滴下を改善するシステムおよび方法、ならびに陰圧閉鎖療法(NPWT)の装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
臨床試験および実習から、組織部位に近接して減圧をもたらすことによって、組織部位における新しい組織の成長を増強および加速することが示されている。この現象の適用は多数あるが、減圧を行うことは、創傷の治療においてかなり成功している。この治療(医学界では「陰圧閉鎖療法」、「減圧療法」、または「真空療法」と呼ばれることが多い)はいくつもの利点を提供し、それら利点には、迅速な治癒や肉芽組織の形成加速化が含まれる。一般に、減圧は、多孔質パッドまたは他のマニホールド装置を通して組織に行われる。多孔質パッドは、減圧を組織に分配しかつ組織から引き出された流体を運ぶことができる気泡または細孔を含む。多孔質パッドは、治療を促す他の構成要素を有するドレッシングに組み込まれ得る。
【0004】
典型的な滴下療法では、低い正圧下で創傷に流体を滴下する。治療効果を最大にするために、滴下された流体は、露出した組織面全体に到達する必要がある。多孔質の創傷充填材と負圧とを適用して流体の分配を支援することを組み合わせて、滴下流体によって創傷を完全に満たすようにすることは、良好な滴下療法を試してそれを達成するために使用される技術である。そのような技術は、システムを過剰充填して漏れを生じさせずに、所望の容積の流体を送達することの難しさを含め、多数の欠点を含む。
【0005】
いくつかのシステムには大量の流体が含まれる可能性があり、キャニスターを頻繁に交換する必要性が発生し、これが、使用者の不満につながり得る。低い正圧を一般に使用して創腔を満たすが、流体の液圧の(本質的に非圧縮性の)性質は、過剰充填が即、漏れを生じ得ることを意味する。創腔内の表面のねじれ曲り(Tortuous contours)によって、ガスポケットが形成されるかもしれないので、発泡体ドレッシングと液体充填技術との両者で到達するのは困難であり得る。(シールを維持して漏れを減少させるのを助け、患者の不快感を最小限にし、および流体の分配を支援するために)液体滴下中に低真空を適用することは、滴下された流体が、ドレッシングを通して完全に分配される前に除去され得るため、問題があり得る。さらに、別個のポンピング機構が創傷治療システムに組み込まれると、システムの複雑さが増す。
【0006】
上述の欠点は包括的なものではなく、創傷ドレッシングへの流体送達における既知の技術の有効性を損なう傾向を有するものの例である;しかしながら、それら本明細書で述べたものは、当業界に見られる方法論が満足のいくものではないこと、および本開示で説明しかつ特許請求する技術に対し、かなりのニーズが存在することを実証するには十分である。それゆえ、少なくとも上述の理由により、改良型の創傷治療システムおよび方法が望まれている。
【発明の概要】
【0007】
上述の説明から、創傷療法ドレッシングへの流体の送達を改良したシステムおよび方法に対するニーズが存在することは明白である。開示の実施形態の方法は、実質的に、説明のシステムの動作に関し上記で示した機能を実施するために必要なステップを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、陰圧閉鎖療法ドレッシングに流体を送達するように構成されたシステムであって、液溜めを圧縮するように構成された付勢機構を含むシステムを含む。特定の実施形態では、システムは、液溜めを収容するように構成されたハウジングを含む。具体的な実施形態では、付勢機構は、ハウジング内の液溜めを固定するように構成されている。いくつかの実施形態では、付勢機構はバネとして構成される。特定の実施形態では、バネは定荷重バネである。いくつかの実施形態では、溜め部の流体に加えられた正圧は、約75mm Hg以上である。
【0009】
特定の実施形態では、液溜めはポリエチレンバッグである。具体的な実施形態は、液溜めからの流体の流れを制御するように構成された制御回路を含む。いくつかの実施形態では、制御回路は、液溜めからの流体の流速を検出しかつ制御回路に流体流速信号を提供するように構成された流れセンサーに結合される。特定の実施形態では、制御回路は、流れ調整器に結合されている。流れ調整器は、液溜めと創傷療法ドレッシングとの間で流体連通するように位置決めされるように適合し得る。具体的な実施形態では、流れ調整器は制御弁として構成される。いくつかの実施形態はまた、創傷ドレッシングと流体連通する導管を含む。特定の実施形態はまた、創傷ドレッシングと流体連通する負圧源を含む。具体的な実施形態では、付勢機構は、ハウジングから延出するように構成される容器内に配置される。
【0010】
いくつかの実施形態ではまた、創傷ドレッシングに流体を送達する方法を含む。方法は、付勢機構から力を液溜めに加え、かつ液溜めを圧縮することを含み、流体は、液溜めから導管を経由して創傷ドレッシングへと向けられる。具体的な実施形態では、さらに、液溜めから流れ調整器を経由する流体の流れを制御することを含む。特定の実施形態では、流れ調整器は制御回路によって制御される。いくつかの実施形態では、付勢機構はバネである。特定の実施形態はまた、付勢機構によってハウジング内の液溜めを固定することを含む。付勢機構からの力を加えることによって、溜め部の流体に、例えば、約75mm Hg以上の正圧を生じさせ得る。いくつかの実施形態はまた、創傷ドレッシングに負圧をもたらすことを含む。
【0011】
特定の実施形態ではまた、創傷ドレッシングに滴下流体および負圧をもたらす方法を含む。方法は:創傷ドレッシングに負圧を適用する一方で、創傷ドレッシングへの滴下流体の流れを抑制するステップと;創傷ドレッシングへの負圧の適用を中止するステップと、創傷ドレッシングからの容積漏出速度(volumetric leak rate)を測定するステップと;創傷ドレッシングへの滴下流体の流れを可能にするステップと;滴下流体の流速および創傷ドレッシングの圧力を測定するステップと;創傷ドレッシングの圧力がほぼ大気圧であることを検証するステップと;創傷ドレッシングへの滴下流体の流れを中止するステップと;滴下流体を創傷ドレッシングに留まらせるステップと;創傷ドレッシングから滴下流体を除去するステップとを含む。
【0012】
特定の実施形態では、創傷ドレッシングへの滴下流体の流れを可能にするステップは、付勢機構からの力を加えることによって液溜めに圧力を生じることを含む。いくつかの実施形態では、付勢機構はバネである。
【0013】
具体的な実施形態ではまた、創傷ドレッシングによって創傷を治療するシステムを含む。システムは:液溜めを収容するように構成された容器を備えるハウジングと;容器内に配置されて液溜めを圧縮する付勢機構と;ハウジング内に配置された負圧源と;溜め部、負圧源、および創傷ドレッシングを流体的に接続する導管とを含む。特定の実施形態では、付勢機構はバネである。いくつかの実施形態では、負圧源は、真空ポンプおよび負圧制御装置を含む。真空ポンプおよび負圧制御装置は、創傷療法ドレッシングから受信した負圧入力信号に従って制御回路によって制御されるように適合し得る。特定の実施形態では、容器は、ハウジング内に摺動可能に収容され、かつハウジングから延出するように構成される。いくつかの実施形態はまた、導管に結合された流れセンサーおよび流れ調整器を含む。流れセンサーおよび流れ調整器は、液溜めと創傷療法ドレッシングとの間で流体連通するように位置決めされるように適合され得る。
【0014】
さらに別の実施形態では、負圧源、ハウジング、付勢機構、および制御回路を含む、創傷療法ドレッシングに流体を送達するように適合されたシステムが提供される。負圧源は、創傷療法ドレッシングと流体連通して創傷療法ドレッシングに負圧をもたらすように適合される。ハウジングは、液溜めを収容するように適合され、液溜めは、創傷療法ドレッシングと流体連通して流体を液溜めから創傷療法ドレッシングにもたらすように適合されている。付勢機構は、ハウジングに液溜めを固定しかつ液溜めの流体に正圧を加えるように適合し得る。制御回路は、創傷療法ドレッシングの負圧を制御するように適合される。
【0015】
さらに別の実施形態では、負圧源、ハウジング、流れセンサー、流れ調整器、および制御回路を含む、創傷療法ドレッシングに流体を送達するように適合されたシステムが提供される。負圧源は、創傷療法ドレッシングと流体連通して創傷療法ドレッシングに負圧を適用するように適合される。ハウジングは、液溜めを収容するように適合され、液溜めは、創傷療法ドレッシングと流体連通して流体を液溜めから創傷療法ドレッシングにもたらすように適合されている。流れセンサーは、液溜めと創傷療法ドレッシングとの間で流体連通するように位置決めされかつ液溜めから創傷療法ドレッシングへの流体の流速を検出するように適合される。流れ調整器は、液溜めと創傷療法ドレッシングとの間で流体連通するように位置決めされかつ液溜めから創傷療法ドレッシングへの流体の流れを制御するように適合される。制御回路は、負圧源を制御するように適合される。さらに、制御回路は、流れセンサーから、液溜めからの流体の流速に対応する流体流速信号と、創傷療法ドレッシングの負圧に対応する負圧信号とを受信するように適合される。
【0016】
さらに別の実施形態では、滴下流体および負圧を創傷ドレッシングにもたらす方法が開示され、この方法は:創傷ドレッシングに負圧を適用するステップと;創傷ドレッシングの負圧が目標負圧に達すると、創傷ドレッシングへの負圧の適用を中止するステップと;創傷ドレッシングからの負圧の容積漏出速度を測定するステップと;創傷ドレッシングが目標負圧に達した後、創傷ドレッシングへの滴下流体の流れを可能にするステップであって、創傷ドレッシングの負圧が目標負圧に達しかつ容積漏出速度が測定される前に、創傷ドレッシングへの滴下流体の流れが、実質的に抑制されるステップと;創傷ドレッシングへの滴下流体の流速を測定するステップと;創傷ドレッシングへ滴下流体が流れるときに、創傷ドレッシングの負圧を監視するステップと;創傷ドレッシングの負圧がほぼ大気圧であるときに、創傷ドレッシングへの滴下流体の流れを中止するステップと;滴下流体を、予め決められた期間、創傷ドレッシングに留まらせるステップと;予め決められた期間後に、創傷ドレッシングから滴下流体を除去するステップとを含む。
【0017】
さらに別の実施形態では、滴下流体および負圧を創傷ドレッシングにもたらす方法が開示され、この方法は、創傷ドレッシングの負圧が目標負圧に達するまで、創傷ドレッシングに負圧を適用するステップと;創傷ドレッシングの負圧を実質的に目標負圧に維持するために必要な、創傷ドレッシングへの負圧の容積流速を決定するステップであって、必要な負圧の容積流速が、創傷ドレッシングからの負圧の容積漏出速度に実質的に対応するステップと;創傷ドレッシングが目標負圧に達した後、創傷ドレッシングへの滴下流体の流れを可能にするステップと;創傷ドレッシングへ滴下流体が流れるときに創傷ドレッシングの負圧を監視するステップと;創傷ドレッシングへ滴下流体が流れる間、創傷ドレッシングに負圧を適用するステップであって、滴下流体が流れる間に適用される負圧の流速が、創傷ドレッシングからの負圧の容積漏出速度に実質的に対応するステップと;創傷ドレッシングの負圧がほぼ大気圧であるときに、創傷ドレッシングへの滴下流体の流れを中止するステップとを含む。
【0018】
他の特徴、および関連する利点は、以下の、添付の図面に関連する特定の実施形態の詳細な説明を参照することから明らかとなる。
【0019】
用語「結合された」は、必ずしも直接にでも、必ずしも機械的にでもないが、接続されたと定義される。
【0020】
用語「1つの(a、an)」は、本開示が明白に他の意味に解釈する場合を除いて、1つ以上と定義される。
【0021】
用語「実質的に」およびその変形は、当業者に理解されるように明記される、大部分であるが、必ずしも全体的である必要はないと定義され、および非限定的な一実施形態では、「実質的に」は、明記される10%以内、好ましくは5%以内、一層好ましくは1%以内、および最も好ましくは0.5%以内の範囲を指す。
【0022】
用語「含む(comprise)」(および含むのいずれかの形態、例えば「含む(comprises、comprising)」)、「有する(have)」(および有するのいずれかの形態、例えば「有する(has、having)」)、「含む(include)」(および含むのいずれかの形態、例えば「含む(includes、including)」)、および「含む(contain)」(および含むのいずれかの形態、例えば「含む(contains、containing)」)は、オープンエンドの連結動詞である。その結果、1つ以上のステップまたは要素を「含む(comprises)」、「有する」、「含む(includes)」、または「含む(contains)」方法または装置は、それら1つ以上のステップまたは要素を保有するが、それら1つ以上の要素のみを保有することに限定されない。同様に、1つ以上の特徴を「含む(comprises)」、「有する」、「含む(includes)」、または「含む(contains)」方法のステップまたは装置の要素は、それら1つ以上の特徴を保有するが、それら1つ以上の特徴のみを保有することに限定されない。さらに、特定の方法で構成された装置または構造は、少なくともその方法で構成されるだけでなく、リストしていない方法で構成されてもよい。
【0023】
用語「負圧」は、装置の使用場所における絶対大気圧を下回る絶対圧を指す。それゆえ、ある領域において述べた負圧のレベルは、絶対大気圧とその領域における絶対圧との間の相対的測定値である。負圧の低下という記述は、その領域の圧力が大気圧の方に動いている(すなわち、絶対圧が上昇している)ことを意味する。数値を使用する場合、圧力数値の前に負号を置いて、値が、大気圧に対して負圧であることを示す。
【0024】
以下の図面は、本明細書の一部をなし、かつ本明細書で説明する主題の例示的な実施形態の特定の態様をさらに明示するために含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、創傷療法ドレッシングに流体を送達するためのシステムの一実施形態を示す概略図である。
【
図3】
図3は、液溜めを挿入する最中の
図1の実施形態を示す概略図である。
【
図4】
図4は、創傷療法ドレッシングに流体を送達するための方法の一実施形態を示す概略的なフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
添付の図面に示されかつ以下の説明で詳述する非限定的な実施形態を参照して、様々な特徴および利点の詳細をさらに十分に説明する。簡潔にするために、周知の出発原料、加工技術、構成要素、および機器の説明を省略する。しかしながら、詳細な説明、具体例、および実施形態は、説明のためのものにすぎず、限定するものではないことを理解されたい。当業者には、本明細書の範囲内にある様々な代用、修正、追加、および/または再構成が、明らかとなる。
【0027】
図1〜3は、創傷療法ドレッシングに流体を送達するシステム100の例示的な実施形態を示す。図示の通り、システム100は、溜め部110を収容するように構成された容器130を備えるハウジング105を含む。この実施形態では、システム100は、さらに、導管125および創傷ドレッシング120を含む。導管125は、例えば、導管125内に2つ以上の個別のルーメンまたはチューブ(図示せず)が収容されたマルチルーメン導管とし得る。導管125内の個別のルーメンまたはチューブは、創傷ドレッシング120と流体連通し得る。各ルーメンまたはチューブを、下記で説明するような、例えば、創傷ドレッシング120への流体の滴下、創傷ドレッシング120への負圧の伝達、および創傷ドレッシング120からの負圧フィードバックの受け取りなどの異なる目的で使用してもよい。溜め部110は、例えば、静脈内流体送達に使用するためのものと同様のポリエチレンバッグとして構成し得る。溜め部110を圧縮することにより、下記でより詳細に説明するように、溜め部110の流体に正圧を加え、かつ溜め部110から流体を強制的に引き出させ得る。
【0028】
図2に示すように、容器130は、溜め部110をしっかりと位置決めするように構成された付勢機構136を含む。さらに、付勢機構136は、溜め部110に外力を加えることによって、溜め部110を圧縮するように構成される。引き続き
図2を参照して説明すると、システム100のハウジング105は、負圧源112、負圧制御装置113、制御回路114、流れ調整器116および流れセンサー118を含み得る。負圧源112は、例えば真空ポンプとし得る。負圧制御装置113は、例えば、制御弁や手動操作弁を含む弁とし得る。いくつかの実施形態では、流れ調整器116はまた、制御弁を含む弁として構成し得る。
【0029】
ここで
図3を参照して説明すると、ハウジング105は、溜め部110を収容するように構成し得る。
図3に示すように、容器130は、矢印111で示す方向で溜め部110を容器130に挿入するために、ハウジング105から離れるように、矢印131で示す方向に動かされ得る。その後、容器130をハウジング105の方へ動かすため(例えば、矢印131と反対の方向)、溜め部110はハウジング105に収容され、かつ
図1〜2に示すように導管125と流体連通することができる。
図3の例示的な実施形態は、ハウジング105内に摺動可能に収容された容器130であって、容器130に溜め部110を挿入するために、ハウジング105から横方向に延出するように構成されている容器130を示す。別の実施形態では、容器130は、溜め部110を挿入するために、ハウジング105から任意の好適な方向に延出するように構成し得る。さらに別の実施形態では、容器130は、ハウジング105に結合され、かつハウジング105に対して動かないようにされる。
【0030】
溜め部110を、
図1および
図2に示す位置にすると、システム100は、動作準備が整う。付勢機構136は、溜め部110をハウジング105の方へ付勢させ、それにより、溜め部110を固定するように構成されている。上述のようにハウジング105から容器130を延出させることにより、溜め部110への付勢機構136からの付勢を減らすため、使用者は、より簡単に溜め部110を容器130に挿入できる。さらに、付勢機構136は、溜め部110を圧縮し、それにより、溜め部110の中にある流体に正圧を加えるように構成されている。付勢機構136から溜め部110を圧縮することにより、溜め部110の中にある流体に正圧を加え、外部ポンピング機構(例えば蠕動ポンプ)を必要とせずに、溜め部110からの、導管125を通る流体の流れをもたらす。別個のポンピング機構を用いずに溜め部110から創傷ドレッシング120へ流体の流れをもたらす能力は、陰圧治療および流体滴下の双方を提供する創傷治療システムの複雑さをかなり軽減させることができる。そのような構成はまた、流体送達に関連する所要電力を削減できる。
【0031】
付勢機構136は、バネの全移動距離にわたって実質的に一定の機械的負荷を送達するように適合された定荷重タイプのバネとして構成し得る。付勢機構136によって溜め部110に生じた圧力は、例えば、創傷ドレッシング120と溜め部110との高低差に起因してシステム100の流体の流れに一貫性がなくなる可能性を低減させ得る。例示的な実施形態では、付勢機構136は、溜め部110に、実質的に一定の圧力を加えてもよく、この付勢圧力は、使用中に、滴下静止流体柱(static column of instillation fluid)を、溜め部110を創傷ドレッシング120の下流に位置決めし得る典型的な距離に近似する高さに保持するのに必要な圧力を上回る。例えば、付勢機構136は、1メートルの高さに滴下静止流体柱を保持するために必要な圧力に対応して、溜め部110に、約75mm Hgの実質的に一定の圧力を加える。他の例示的な実施形態では、付勢機構136は、75mm Hgを上回るまたはそれを下回る圧力を加えるように構成し得る。
【0032】
図2を参照して説明すると、動作時、導管125の流体は、流れセンサー118および流れ調整器116を通るように向けられる。流れセンサー118および流れ調整器116は、制御回路114に電気的に結合され、かつ液溜め110と創傷ドレッシング120との間で導管125と流体連通している。流れセンサー118は、溜め部110から導管125を通って流れる流体の速度および/または容積を検出でき、かつ対応する測定信号、例えば流体流速信号を、制御回路114に提供できる。流れセンサー118からの測定信号に基づいて、制御回路114は流れ調整器116に制御信号を送信して、導管125を通って創傷ドレッシング120に至る流体の流れを制御できる。例えば、流速が、所望値を上回っていると検出される場合、制御回路114は、流れ調整器116に信号を送信して、創傷ドレッシング120へ流れる流体の量を低減できる。一実施形態では、流れ調整器116は、制御弁を部分的にまたは完全に閉鎖することによって、流体の流量を削減するように適合された制御弁とし得る。別の実施形態では、流れ調整器116は、特定の容積の流体が創傷ドレッシング120に送達された後、創傷ドレッシング120への流体の流れを停止させてもよい。流体の容積は、例えば、流体の流速、および流体が流れる時間の長さに基づいて、計算され得る。
【0033】
ここで
図4を参照すると、システム100を動作させる例示的な方法を示すためのフロー図が提供されている。
図4に示す方法の順序、および符号を付したステップは、非限定的な一実施形態を示す。用いられるフォーマットおよび記号は、方法の範囲、または方法に示すステップの実行順序を限定するものではないことを理解されたい。
【0034】
図4に示すように、本明細書に示す方法400は、本開示による、
図1〜3のシステム100を含む例示的なシステムの動作を実行し得るステップを含む。いくつかの実施形態は、コンピュータによって実行されると、本明細書で説明しかつ
図4に示すステップを含むオペレーションおよび計算をコンピュータに実行させるコンピュータ可読コードを含む、有形コンピュータ可読媒体を含み得る。
【0035】
引き続き
図4を参照して説明すると、ステップ401は、治療サイクルの開始を表す。ステップ402は、システム100を目標負圧にする(負圧源112および負圧制御装置113によって)一方で、滴下流体の流れを抑制する(例えば、流れ調整器116を閉鎖位置に維持することによって)ことを含む。ステップ403は、創傷ドレッシング120において目標負圧を達成したら、システム100の負圧源112の電源を切るおよび/または負圧制御装置113を閉鎖することを含む。
【0036】
制御回路114は、創傷ドレッシング120を目標負圧にするように負圧源112を制御するように、または他の方法で創傷ドレッシング120の負圧を調整するように、適合し得る。例えば、制御回路114は、創傷療法ドレッシング120の負圧に対応する負圧信号を受信するように適合し得る。制御回路114は、例えば、負圧制御装置113および/または負圧源112に信号を送信し、負圧信号に従って、創傷ドレッシング120に適用される負圧を高めるまたは低下させることによって、負圧源112から創傷療法ドレッシング120への負圧の適用を制御し得る。制御回路114は、例えば、制御回路114に関連付けられた圧力センサー(図示せず)と流体連通する負圧フィードバックルーメン(図示せず)から負圧信号を受信し得る。負圧フィードバックルーメンは、導管125内に収容され、導管125にマルチルーメン構成を提供し得る。他の実施形態では、負圧フィードバックルーメンは、導管125とは別個に創傷ドレッシング120に結合し得る。
【0037】
システム100および創傷ドレッシング120の容積漏出速度がステップ404において特徴づけられ、それに続いて、ステップ405において、容積漏出速度を容認できるかどうかの評価がなされ得る。容積漏出速度が容認できない場合、使用者は、ステップ406において漏出速度の原因に対処して、方法のステップ402に戻ることができる。
【0038】
創傷ドレッシング120からの負圧の容積漏出速度は、創傷ドレッシング120の負圧を実質的に目標負圧に維持するために必要な、創傷ドレッシング120への負圧の容積流速に実質的に等しいとし得る。それゆえ、創傷ドレッシング120の負圧を実質的に目標負圧に維持するために必要な、創傷ドレッシング120への負圧の容積流速を決定することによって、容積漏出速度を測定し得るまたは特徴づけ得る。例えば、創傷ドレッシング120が目標負圧に到達するにつれて、創傷ドレッシング120への負圧の容積流速を連続的に減らすことによって、必要な負圧の容積流速を決定し得る。容積流速を、負圧の変動がない状態で、すなわち定常状態条件で、創傷ドレッシング120を目標負圧に維持する値まで低下させるときの、創傷ドレッシング120への必要な負圧の容積流速を測定する。制御回路114に関連するソフトウェアを含むプロセッサは、創傷ドレッシング120が目標負圧において定常状態条件に到達するときに、創傷ドレッシング120の負圧、および負圧源112からの負圧の容積流速を監視するために用いられ得る。
【0039】
容積漏出速度が容認できると判断されると、使用者は、ステップ402に関して上述したように、再び、ステップ407においてシステムを目標負圧にすることができる。その後、ステップ408において、負圧源112の電源が切られおよび/または負圧制御装置113が閉鎖され、それに続いて、ステップ409において、例えば、流れ調整器116などの、システム100の弁を開放することによって、滴下流体の流れを可能にする。付勢機構136は、液溜め110の流体に十分な正圧をもたらすことができ、前述したように別個のポンピング機構を使用せずに、ステップ409において滴下流体の流れを可能にできる。さらに、滴下流体の流れは、液溜め110から創傷ドレッシング120へ流体を引き入れる創傷ドレッシング120の負圧の作用によって可能にし得る。溜め部110からの流体が創傷ドレッシング120に入るにつれて、創傷ドレッシング120の負圧は、次第に大気圧に到達するか、または大気圧に戻る、すなわち、負圧が低下する。一実施形態では、付勢機構136を省略してもよい。
【0040】
ステップ410では、システム100は、滴下流体の容積流速、ならびに創傷ドレッシング120における負圧を監視できる。ステップ411において、システム100の監視されたパラメータを評価できる、例えば、先に測定された容積漏出速度に基づいた予想よりも早く創傷ドレッシング120における負圧が大気圧に戻るかなど、圧力に予想外の変化が存在するかどうかを判断できる。圧力変化が容認できない場合、滴下流体の流れは、ステップ412において中断でき、かつシステム100の動作はステップ413で終了され得る。
【0041】
圧力が容認可能な速度で変化している場合(例えば、溜め部110から創傷ドレッシング120への滴下流体の流れに起因して)、ステップ414において、システム100は、圧力が大気圧に到達したことを検証できる。その後、システム100は、ステップ415において滴下流体の流れを停止でき(例えば、滴下流体流路の流れ調整器116を閉鎖することによって)、かつ予め決められた期間、創傷を浸すことができる。予め決められた期間は、臨床医によって状況に適切だと判断された任意の好適な期間とし得る。ステップ416では、システム100は、臨床基準値用の滴下容積を貯蔵し、かつ創傷の軽減を監視できる。創傷の軽減、または創傷の治癒は、上述の方法によって、創傷ドレッシング120に滴下される流体の総容積を削減し得る。
【0042】
一実施形態では(図示せず)、方法は、溜め部110からの流体が創傷ドレッシング120に流れる間に、創傷ドレッシング120に負圧を適用するステップを含み得る。創傷ドレッシング120に流体が流れる間に適用される負圧の流速は、実質的に、創傷ドレッシング120からの負圧の、先に測定された容積漏出速度に対応し得る。このように、システム100は、創傷ドレッシング120における負圧の動作によって、溜め部110から創傷ドレッシング120へ引き込まれる流体の容積の精度を高めることができる、すなわち、創傷ドレッシング120における負圧の低下は、実質的に、創傷ドレッシング120からの負圧の漏れではなく、溜め部120から創傷ドレッシング120に滴下される流体に対応する。
【0043】
その後、システム100は、ステップ417において浸漬時間が完了したかどうかを判断できる。浸漬時間が完了していない場合、システム100は、ステップ415に示すように、創傷を浸し続けることができる。浸漬時間が完了したと判断される場合、システム100は、ステップ418において流体を回収できる(例えば、負圧源112を動作させ、かつ負圧制御装置113を開放して、創傷ドレッシング120に負圧を適用することによって)。その後、サイクルは、ステップ419において完了し、およびシステム100の電源が切られる。
【0044】
一実施形態では(図示せず)、方法は、溜め部110から創傷ドレッシング120へ流れる流体の総容積を判断することを含み得る。流体が流れる総容積は、創傷ドレッシング120への流体の流速、および創傷ドレッシング120への流体の流れを可能にした後に創傷ドレッシング120がほぼ大気圧に到達するのに必要とされる期間に実質的に対応し得る。特定の創傷の治癒の様々な段階の最中に上述の方法を用いるとき、創傷ドレッシング120に滴下される流体の総容積の変化は記録されかつ互いに比較され、治癒または特定の創傷の軽減の速度を示し得る。
【0045】
本明細書の装置および方法を、好ましい実施形態に関し説明したが、当業者には、添付の特許請求の範囲に定義されるような本明細書の範囲から逸脱することなく、変形例を適用し得ることが明らかである。