(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の電源用スイッチング回路30の最小構成を示す図である。
この図で示すように、電源用スイッチング回路30は、少なくとも、スイッチング素子T1と、抵抗R1と、コンデンサC1と、ツェナーダイオードZ1と、スイッチSW2とを備える。
【0014】
スイッチング素子T1は、例えばpチャネルMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)をトランスミッションゲートとして使用する半導体スイッチである。
抵抗R1は、スイッチング素子T1のソースSとゲートGとの間を接続するCR回路を構成する。抵抗R1は、コンデンサC1と共に、CR回路の時定数を設定する。
コンデンサC1は、スイッチング素子のソースとゲートとの間を接続するCR回路を構成する。コンデンサC1は、抵抗R1と共にCR回路の時定数を設定する。
【0015】
ツェナーダイオードZ1は、CR回路と並列にスイッチング素子のソースとゲートとの間を接続する。ツェナーダイオードZ1は、CR回路を構成するコンデンサC1が蓄える電荷を放電させる。
スイッチSW2は、スイッチング素子T1に入力される電源の電圧に係る信号に基づいて、スイッチング素子T1のゲートGをオープンノードにする(制御手段)。ここでスイッチング素子T1に入力される電源の電圧に係る信号とは、電源用スイッチング回路30に入力される電圧と1対1の対応関係がある電圧、またはシステムが所定の状態であると電源用スイッチング回路30を備えるシステムの有するCPUが判定したときに出力する指令信号のことである。
【0016】
<第一の実施形態>
図2は、本発明の第一の実施形態による電源用スイッチング回路30を備えるシステム1の一例を示す図である。
本発明の第一の実施形態によるシステム1は、
図2で示すように、電源装置10と、制御部20と、電源用スイッチング回路30と、電流計40と、負荷50と、負荷60とを備える。なお、電流計40はシステム1の動作を説明するためのものであり、実際のシステム1が電流計40を備える必要はない。
【0017】
第一の実施形態による電源装置10は、直流電圧源V1と、スイッチSW1とを備える。
直流電圧源V1は、基準点(グラウンド)の基準電位(グラウンド電位)に対して所定の直流電圧を出力する電圧源である。例えば、直流電圧源V1は、電池である。また、例えば、直流電圧源V1は、交流電圧を直流電圧に変換するAC−DCコンバータである。
スイッチSW1は、直流電圧源V1の直流電圧の出力をオン状態(出力する状態)またはオフ状態(出力しない状態)にする。スイッチSW1は、直流電圧源V1の出力端子と負荷60との間に接続される。
負荷60は、コンデンサC2を備える。コンデンサC2は、直流電圧源V1の出力電圧を平滑化するコンデンサである。コンデンサC2は、スイッチSW1の一端子とグラウンドとの間に接続される。コンデンサC2とスイッチSW1との接続点が、電源装置10の出力端子である。
電源装置10の出力端子は、制御部20と電源用スイッチング回路30とに接続されている。電源装置10は、この出力端子を介して制御部20と電源用スイッチング回路30とに直流電圧を出力する。
【0018】
第一の実施形態による制御部20は、電圧検出回路21を備える。電圧検出回路21は、スイッチング素子T1に入力される電源の電圧に係る信号を検出する。そして、電圧検出回路21は、検出した信号に応じて制御信号を電源用スイッチング回路30に出力する。例えば、電圧検出回路21は、電源装置10の出力端子における電圧VF1を検出する。そして、電圧検出回路21は、検出した電圧VF1が所定の電圧よりも高くなると制御信号(
図2で示すシステム1では、スイッチ2をオープン状態からショート状態にする制御信号)を電源用スイッチング回路30に出力する。
【0019】
第一の実施形態による電源用スイッチング回路30は、
図1で示した最小構成の電源用スイッチング回路30におけるスイッチング素子T1のゲートGとスイッチSW2との間に抵抗R2を接続した構成である。抵抗R2を追加することで、抵抗R1とR2との比でスイッチング素子T1のゲート電圧を任意に設定することができる。抵抗R1とR2との比を調整することで、スイッチング素子T1のゲート・ソース間耐圧は直流電圧源V1よりも低いものが使用できる。例えば、抵抗R1とR2との比を調整することで、20ボルトの直流電圧源V1に対して、ゲート・ソース間耐圧Vgssが12ボルトのスイッチング素子T1を使用することができる。
また、スイッチング素子T1がオンとなるゲート・ソース間電圧を比較的小さくすることで、電流変化に対して所定以上の電圧変化する特性を有するツェナーダイオードを選択することができる。
スイッチング素子T1のドレインDが電源用スイッチング回路30の出力端子である。
【0020】
電流計40は、電源用スイッチング回路30の出力端子と負荷50との間に直列に接続される。電流計40は、例えば直流電流計である。
スイッチング素子T1がオン状態のとき、ソース・ドレイン間は導通状態となる。そのため、電源装置10の出力端子は、電源用スイッチング回路30と電流計40とを介して負荷50に接続される。従って、スイッチング素子T1がオン状態のとき、電流計40は電流を検出する。
また、スイッチング素子T1がオフ状態のとき、ソース・ドレイン間は絶縁状態となる。そのため、スイッチング素子T1がオフ状態のとき、電流計40は電流を検出しない。
【0021】
負荷50は、電流計40の出力端子(実際のシステム1では、電源用スイッチング回路30の出力端子)に接続する装置を電流計40とグラウンドとの間に接続される等価的な抵抗RLと、コンデンサCLとで表したものである。抵抗RLは、抵抗性負荷を表している。また、コンデンサCLは、容量性負荷を表している。
【0022】
図3は、ツェナーダイオードZ1の電流−電圧特性の例を示す図である。
図3において、横軸はツェナー電圧を示している。また、縦軸はツェナー電流を示している。
本発明におけるツェナーダイオードZ1は、
図2で示した電源装置10が負荷50への電力供給を遮断した際に、コンデンサC1が蓄えている電荷を放電させるためのものである。そのため、本発明におけるツェナーダイオードZ1は、ツェナー電流の変化に対するツェナー電圧の変化が大きい領域で使用することが望ましい。すなわち、ツェナーダイオードZ1は、ツェナー降伏となだれ降伏のうちツェナー降伏が支配的な領域で定まる電流−電圧特性の領域で使用することが望ましい。
【0023】
一般的に、ツェナーダイオードZ1において、ツェナー降伏はなだれ降伏よりも低い電圧で発生する。例えば、シリコンのツェナーダイオードZ1の場合、純粋なツェナー降伏は、およそ5ボルト以下の降伏電圧のダイオードで見られる。それよりも高い電圧の降伏電圧のダイオードでは、なだれ降伏が支配的となる。
また、一般的に、半導体の不純物濃度が高い場合、空乏層の幅が狭くなるため、ツェナー降伏が発生し易くなる。また、半導体の不純物濃度が低い場合、空乏層の幅が広くなるため、ツェナー降伏が発生し難くなりなだれ降伏が支配的となる。
また、一般的に、温度が高くなると、空乏層の幅は小さくなり、ツェナー降伏が発生し易くなる。また、格子振動が激しくなりキャリアの移動度が小さくなるため、なだれ降伏が発生し難くなる。つまり、温度が高くなると、ツェナー降伏が支配的となる。また、温度が低くなると、空乏層の幅は広くなり、ツェナー降伏が発生し難くなる。また、格子振動が穏やかになりキャリアの移動度が大きくなるため、なだれ降伏が発生し易くなる。つまり、温度が低くなると、なだれ降伏が支配的となる。
【0024】
図4は、本発明の第一の実施形態によるシステム1における突入電流増大の抑制の例を示す図である。
図5は、本発明の第一の実施形態によるシステム1における定常状態での電圧・電流波形の例を示す図である。
図6は、本発明の第一の実施形態による直流電圧源V1から電源装置10の外部への電力供給遮断時における電圧・電流波形の例を示す図である。
次に、
図4〜
図6を用いて、第一の実施形態によるシステム1の動作を説明する。
なお、初期状態において、スイッチSW1とスイッチSW2は共にオープン状態である。また、初期状態において、負荷60が備えるコンデンサC2は電荷が蓄積されていない状態であり、電源装置10の出力端子の電圧VF1はグラウンド電位である。
【0025】
まず、
図4を用いて、第一の実施形態によるシステム1の突入電流の増大を抑制するまでの動作を説明する。
システム1において、電源装置10の備えるスイッチSW1がショート状態になる。すると、直流電圧源V1の出力電圧がコンデンサC2に印加され、コンデンサC2が充電される。電圧VF1は、コンデンサC2が充電されるにつれ、上昇する。
電圧検出回路21は、電圧VF1と電圧検出回路21で予め設定したしきい値とを比較し、電圧VF1がしきい値を超えないと判定した場合、所定の電源の電圧に係る電圧を検出していないと判定する。この場合、電圧検出回路21は、スイッチSW2に対してオープン状態のままにする指令を出力する。例えば、スイッチSW2が半導体スイッチである場合、電圧検出回路21は、半導体スイッチがオフ状態になるゲート電圧を出力する。
スイッチSW2は、電圧VF1が電圧検出回路21で予め設定されているしきい値を超えたと電圧検出回路21が判定するまで、オープン状態である。この間、スイッチング素子T1のゲート・ソース間電圧はゼロボルト(電圧VF1=電圧VF2)であり、スイッチング素子T1はオフ状態である。
【0026】
電圧VF1が電圧検出回路21で予め設定したしきい値を超えたと電圧検出回路21が判定すると、電圧検出回路21は所定の電源の電圧に係る電圧を検出したと判定する(
図4において、電圧検出と記載)。電圧検出回路21は、電源の電圧に係る電圧を検出したと判定すると、スイッチSW2に対して電源の電圧に係る指令であるショート状態にする指令を出力する。例えば、スイッチSW2が半導体スイッチである場合、電圧検出回路21は、半導体スイッチがオン状態になるゲート電圧を出力する。
【0027】
スイッチSW2がショート状態になると、電流が電源装置10の出力端子から抵抗R1と抵抗R2を経由してグラウンドへと流れる。このとき、コンデンサC1には、コンデンサC1の端子間電圧が抵抗R1の端子間電圧となるように、電荷が蓄積される。そのため、スイッチング素子T1のゲートGの電圧VF2は、抵抗R1とコンデンサC1とで構成されるCR回路と抵抗R2とで定まる時定数に従い電圧VF1から緩やかに低下する。
【0028】
電圧VF2が電圧VF1から緩やかに低下することは、スイッチング素子T1のゲート・ソース間電圧が緩やかに上昇することである。そのため、電圧VF2が電圧VF1から緩やかに低下することで、スイッチング素子T1のオン抵抗が緩やかに小さくなり、突入電流の増大が抑制される(
図4において、突入電流抑制と記載)。
なお、この間、ツェナーダイオードZ1のツェナー電流は微小である。そのため、突入電流の抑制は、抵抗R1とコンデンサC1とで構成されるCR回路と抵抗R2とで定まる時定数が支配的となる。
以上が、第一の実施形態によるシステム1の突入電流の増大を抑制するまでの動作説明である。
【0029】
次に、
図5を用いて、第一の実施形態によるシステム1の定常状態における動作を説明する。
スイッチング素子T1のオン抵抗が緩やかに小さくなり、突入電流の増大が抑制された後、更に電圧VF2が低下すると、ツェナーダイオードZ1の端子間電圧が緩やかに大きくなり、ツェナー電流が緩やかに大きくなる。そして、電圧VF2は定常状態となる(
図5において、定常状態と記載)。
電圧VF2は、定常状態において、次の条件1〜条件3を満足するときの電圧となる。電圧VF2は、抵抗R1を流れる電流とツェナーダイオードZ1を流れる電流との総和に、抵抗R2の抵抗値を乗算した電圧である(条件1)。抵抗R1の端子間電圧は、ツェナーダイオードZ1の端子間電圧に等しい(条件2)。電圧VF2は、電圧VF1から抵抗R1の端子間電圧を減算した電圧である(条件3)。
なお、抵抗R1とR2の抵抗比は、定常状態における電圧VF2で、スイッチング素子T1が完全なオン状態となる抵抗比である。
以上が、第一の実施形態によるシステム1の定常状態における動作説明である。
【0030】
次に、
図6を用いて、第一の実施形態による直流電圧源V1から電源装置10の外部への電力供給遮断時におけるシステム1の動作を説明する。
定常状態において、スイッチSW1は、電源装置10から負荷50への電力供給を遮断するために、ショート状態からオープン状態になる(
図6において、オープン状態と記載)。スイッチSW1がオープン状態になると、直流電圧源V1から電源装置10の外部への電力供給が遮断される。
【0031】
直流電圧源V1から電源装置10の外部への電力供給が遮断されると、コンデンサC2は、蓄えている電荷を電源装置10の外部へ放電する。すると、電圧VF1は低下する。
電圧検出回路21は、電圧VF1が予め設定したしきい値よりも低いと判定すると(
図6において、電圧検出と記載)、スイッチSW2に対してオープン状態にする指令を出力する。例えば、スイッチSW2が半導体スイッチである場合、電圧検出回路21は、半導体スイッチがオフ状態になるゲート電圧を出力する。
【0032】
スイッチSW2がオープン状態になると、ツェナーダイオードZ1には、電圧VF1と電圧VF2との差電圧が逆バイアスで印加される。そのため、コンデンサC1は、ツェナーダイオードZ1を介して蓄えている電荷を急速に放電する。また、このとき、ツェナーダイオードZ1は、ツェナー電圧が小さくなる方向に動作する。そのため、電圧VF2は急速に上昇し(
図6において、Z1による電圧上昇と記載)、スイッチング素子T1のゲート・ソース間電圧は急速に低くなる。そして、スイッチング素子T1は、急速にオフ状態となる(
図6において、スイッチング素子オフと記載)。
その結果、負荷60が備えるコンデンサC2に対する負荷は、素早く切り離される。そのため、コンデンサC2が蓄えている電荷は放電されず、電圧VF1の低下が緩和される。
以上が、第一の実施形態による直流電圧源V1から電源装置10の外部への電力供給遮断時における動作説明である。
【0033】
なお、ツェナーダイオードZ1、スイッチング素子T1、抵抗R1、R2、コンデンサC1のそれぞれは、例えば次のように選択すればよい。
ツェナーダイオードZ1として、ツェナー降伏が支配的となるおよそ5ボルト以下の降伏電圧のものを選択する。
スイッチング素子T1として、ツェナーダイオードZ1の降伏電圧でオン状態となる特性の半導体スイッチ(例えば、一般品のpチャネルMOSFET)を選択する。
抵抗R2として、選択したツェナーダイオードZ1のツェナー電圧が変化しやすい範囲の電流となる抵抗値の抵抗を選択する。
抵抗R1として、自身の端子間電圧が選択したツェナーダイオードZ1の降伏電圧程度となる抵抗値の抵抗を選択する。
コンデンサC1として、抵抗R1との時定数で突入電流の増大を十分に抑制できる容量値のコンデンサを選択する。
【0034】
以上、本発明の第一の実施形態による電源用スイッチング回路30を備えるシステム1の処理について説明した。上述の電源用スイッチング回路30は、スイッチング素子T1と、抵抗R1と、抵抗R2と、コンデンサC1と、ツェナーダイオードZ1と、スイッチSW2と、を備える。
抵抗R1とコンデンサC1とで構成されるCR回路と抵抗R2とで定まる時定数に従い、電圧VF2が電圧VF1から緩やかに低下する。そのため、スイッチング素子T1のオン抵抗が緩やかに小さくなり、突入電流の増大が抑制される。また、スイッチSW2によりスイッチング素子T1のゲートをオープンノードにし、ツェナーダイオードZ1がコンデンサC1の電荷を放電させることで、負荷50を素早く切り離すことができ、電源装置10からの電力の供給が遮断された場合であっても、コンデンサC2からの放電を緩和し、電圧VF1の低下を緩和することができる。その結果、このような電圧VF1を用いることで、電気機器が電力を遮断される際のバックアップ作業を行う時間を延長できる。
【0035】
<第二の実施形態>
図7は、本発明の第二の実施形態による電源用スイッチング回路30を備えるシステム1の一例を示す図である。
本発明の第二の実施形態によるシステム1は、
図7で示すように、電源装置10と、制御部20と、電源用スイッチング回路30a、30bと、電流計40a、40bと、負荷50a、50bと、負荷60とを備える。
第二の実施形態による負荷60は、第一の実施形態による負荷C2に加え、DC/DC変換回路61と、リセット回路62と、CPU63と、バックアップ回路64と、記憶部65と、コンデンサC3とを備える。
【0036】
なお、電源用スイッチング回路30a、30bを総称して電源用スイッチング回路30と言うことがある。また、電流計40a、40bを総称して電流計40と言うことがある。また、負荷50a、50bを総称して負荷50と言うことがある。
また、第一の実施形態による電流計40と同様に、第二の実施形態による電流計40は、システム1の動作を説明するためのものであり、実際のシステム1が電流計40を備える必要はない。
【0037】
第二の実施形態による電源用スイッチング回路30a、30bのそれぞれは、第一の実施形態による電源用スイッチング回路30と同様である。
第二の実施形態による電流計40a、40bのそれぞれは、第一の実施形態による電流計40と同様である。
第二の実施形態による負荷50a、負荷50bのそれぞれは、第一の実施形態による負荷50と同様である。
従って、第二の実施形態によるシステム1は、第一の実施形態によるシステム1に加え、電源用スイッチング回路30bと、電流計40bと、負荷50bと、DC/DC変換回路61と、リセット回路62と、CPU63と、バックアップ回路64と、記憶部65と、コンデンサC3とを備える。
【0038】
DC/DC変換回路61の入力端子は、電源装置10の出力端子とコンデンサC2の一端とに接続されている。また、DC/DC変換回路61の出力端子は、コンデンサC3の一端と、リセット回路62の入力端子と、バックアップ回路64の入力端子と、電源用スイッチング回路30bの入力端子とに接続されている。
DC/DC変換回路61は、電源装置10から供給された電圧VF1を電圧VF3に降圧する回路である。DC/DC変換回路61は、例えば、12ボルトの電圧VF1を、3.3ボルトの電圧VF3に変換する。
このように、
図7で示すシステム1において、負荷50aには、電源用スイッチング回路30aを介して電圧VF1が供給される。また、リセット回路62と、CPU63と、バックアップ回路64とには、電圧VF3が供給される。また、負荷50bには、電源用スイッチング回路30bを介して電圧VF3が供給される。
【0039】
コンデンサC2の他端、及びコンデンサC3の他端は、それぞれグラウンドに接続されている。
リセット回路62の出力端子は、CPU63の入力端に接続されている。リセット回路62は、電圧VF3を監視し、電圧VF3が予め定められているしきい値よりも低くなった場合、リセット信号(例えば、ハイレベルからローレベルに変化する信号)を生成する。リセット回路62は、生成したリセット信号をCPU63に出力する。
【0040】
CPU63は、例えば負荷50a及び負荷50bを制御する。CPU63は、バックアップ回路64から入力されるバックアップ作業開始を示す指令(以下、バックアップ開始指令)に応じて、電源装置10からの電力供給が遮断される前のシステム1の設定状態や使用していたデータ、負荷50aの設定状態、負荷50bの設定状態などを記憶部65に記録する。CPU63は、記憶部65にアクセス可能である。
【0041】
バックアップ回路64は、電圧検出回路21から入力された制御信号に基づいて、CPU63にバックアップ開始指令を出力する(バックアップ記録制御する)。なお、バックアップ回路64は、DC/DC変換回路61から供給された電圧VF3を電力源として動作する。
記憶部65は、電源装置10からの電力供給が遮断される前のシステム1の設定状態や使用していたデータ、負荷50aの設定状態、負荷50bの設定状態などのシステム1の処理に必要な種々の情報を記憶する記憶部である。
【0042】
図8は、本発明の第二の実施形態による直流電圧源V1から電源装置10の外部への電力供給遮断時における電圧・電流波形の例を示す図である。
次に、
図8を用いて、第二の実施形態による直流電圧源V1から電源装置10の外部への電力供給遮断時におけるシステム1の動作を説明する。
【0043】
定常状態において、スイッチSW1は、電源装置10から負荷50への電力供給を遮断するために、ショート状態からオープン状態になる。スイッチSW1がオープン状態になると、直流電圧源V1から電源装置10の外部への電力供給が遮断される。
【0044】
直流電圧源V1から電源装置10の外部への電力供給が遮断されると、コンデンサC2は、蓄えている電荷を電源装置10の外部へ放電する。すると、電圧VF1は低下する(
図8において、電圧VF1低下と記載)。
電圧検出回路21は、電圧VF1が予め設定したしきい値よりも低いと判定すると(
図8において、電圧検出と記載)、電源用スイッチング回路30のそれぞれが備えるスイッチSW2に対してオープン状態にする指令を出力する。例えば、スイッチSW2が半導体スイッチである場合、電圧検出回路21は、半導体スイッチがオフ状態になるゲート電圧を出力する。
【0045】
各スイッチSW2がオープン状態になると、ツェナーダイオードZ1には、電圧VF1と電圧VF2との差電圧が逆バイアスで印加される。そのため、コンデンサC1は、ツェナーダイオードZ1を介して蓄えている電荷を急速に放電する。また、このとき、ツェナーダイオードZ1は、ツェナー電圧が小さくなる方向に動作する。そのため、電圧VF2は急速に上昇し、スイッチング素子T1のゲート・ソース間電圧は急速に低くなる。そして、スイッチング素子T1は、急速にオフ状態となる(
図8において、スイッチング素子オフと記載)。
その結果、負荷60が備えるコンデンサC2に対する負荷は、素早く切り離される。そのため、コンデンサC2が蓄えている電荷は放電されず、電圧VF1の低下が緩和される。
また、このとき、負荷60が備えるコンデンサC3に対する負荷は、素早く切り離される。そのため、コンデンサC3が蓄えている電荷は放電されず、電圧VF3の低下が緩和される。
DC/DC変換回路61は、電源装置10から供給された電圧VF1を電圧VF3に降圧する回路である。従って、本発明の第二の実施形態によるシステム1におけるDC/DC変換回路61は、ここで示す実測値の例では、リセット回路62、CPU63、バックアップ回路64にコンデンサC3が蓄えている電荷をおよそ48ミリ秒の間電圧VF3を維持したまま供給することができる(
図8において、システム電源維持と記載)。
【0046】
リセット回路62は、電圧VF3を監視し、電圧VF3が予め定められているしきい値よりも低くなった場合、リセット信号を生成する。リセット回路62は、生成したリセット信号をCPU63に出力する。
また、バックアップ回路64は、電圧検出回路21から入力された制御信号に基づいて、CPU63にバックアップ開始指令を出力する。
CPU63は、バックアップ回路64から入力されるバックアップ開始指令に応じて、電源装置10からの電力供給が遮断される前のシステム1の設定状態や使用していたデータ、負荷50aの設定状態、負荷50bの設定状態などを記憶部65に記録する。
【0047】
なお、
図9は、電源用スイッチング回路30においてツェナーダイオードZ1を備えない場合のシステム1における実測の例を示す図である。
ツェナーダイオードZ1を備えない場合のシステム1におけるDC/DC変換回路61は、ここで示す実測値の例では、リセット回路62、CPU63、バックアップ回路64にコンデンサC3が蓄えている電荷をおよそ18ミリ秒の間しか電圧VF3を維持したまま供給することができない(
図9において、システム電源維持と記載)。つまり、本発明のツェナーダイオードZ1を追加することで、ツェナーダイオードZ1を備えない場合のおよそ2.5倍のバックアップ時間を確保することができる。
【0048】
以上、本発明の第二の実施形態による電源用スイッチング回路30を備えるシステム1の処理について説明した。上述の電源用スイッチング回路30は、スイッチング素子T1と、抵抗R1と、抵抗R2と、コンデンサC1と、ツェナーダイオードZ1と、スイッチSW2と、を備える。
抵抗R1とコンデンサC1とで構成されるCR回路と抵抗R2とで定まる時定数に従い、電圧VF2が電圧VF1から緩やかに低下する。そのため、スイッチング素子T1のオン抵抗が緩やかに小さくなり、突入電流の増大が抑制される。また、スイッチSW2によりスイッチング素子T1のゲートをオープンノードにし、ツェナーダイオードZ1がコンデンサC1の電荷を放電させることで、負荷50を素早く切り離すことができ、電源装置10からの電力の供給が遮断された場合であっても、コンデンサC2からの放電を緩和し、電圧VF1の低下を緩和することができる。その結果、DC/DC変換回路61が電圧VF1から変換した電圧VF3の低下も緩和され、電気機器が電力を遮断される際のバックアップ作業を行う時間を延長できる。
【0049】
なお、本発明の実施形態による抵抗R2は、必ずしも必要ではない。スイッチング素子T1のゲート・ソース間容量やコンデンサC1に蓄えられる電荷が少なく、ツェナーダイオードZ1がコンデンサC1の電荷を必要な速度で放電させることができれば、抵抗R2はなくてもよい。また、抵抗R2の代わりに例えばダイオードなどの電流を流した際に電圧降下を生じる素子を用いても良い。
【0050】
なお、本発明における記憶部は、適切な情報の送受信が行われる範囲においてどこに備えられていてもよい。また、記憶部は、適切な情報の送受信が行われる範囲において複数存在しデータを分散して記憶していてもよい。
【0051】
なお本発明の実施形態について説明したが、上述の電源用スイッチング回路30は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体70に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体70とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0052】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができるものである。