【実施例】
【0014】
実施例に係るカートにつき、
図1から
図7を参照して説明する。以下、
図1の画面左側をカートの前方側とし、
図1の画面右側をカートの後方側として説明する。尚、カートと自転車との進行方向を向いて(カートの後方側から見て)左右側をカートの左右として説明する。
【0015】
図1に示されるように、カート1は、荷物を載置できるとともに、自転車2の後方に連結されて牽引されるものである。このカート1は、車体を構成するフレーム3と、自転車2と連結するためのカート側の連結手段16と、フレーム3の上部に固定され荷物を収容載置できるカゴ5と、から主に構成されている。尚、このカート1は、自転車2から取外した際には、手押し用のカート1として利用できるようになっている。さらに尚、このカート1は、フレーム3の上部にカゴ5が取付けられていたが、これに限られず、同乗者を載せるための椅子等がフレーム3の上部に取付けられていてもよい。
【0016】
図1及び
図2に示されるように、フレーム3は、上面視略矩形状の枠体である基部3aと、基部3aの前端部3gにおける左右両端から下方に延びる前脚3b,3bと、基部3aの後部における左右両端から下方に延びる後脚3c,3cと、を備えている。基部3aの中央には、幅方向に延びる連結杆3hが設けられて強度が補強されているとともに、この基部3aの上部には、カゴ5が固定されている。また、隣接する前脚3b,3bと後脚3c,3cとは、連結杆3d,3dにより連結され、フレーム3の強度が高くなっている。また、基部3aの後端部3fには、カート1を手押し用として利用する際のハンドル15が設けられている。
【0017】
前脚3b,3bの外面には、内部が上下に貫通する筒状体6,6がそれぞれ固定されており(片側のみ図示)、筒状体6,6内には、棒状部材7,7がそれぞれ遊挿されている。この棒状部材7,7の下端部には、地面上を転動可能な前輪8,8が取付けられているとともに、棒状部材7,7の上端部同士は、架設部材11により連結されている。また、後脚3c,3cの下端部にも、棒状部材10,10を介して地面上を転動可能な後輪9,9が取付けられている。
【0018】
これら前輪8,8及び後輪9,9は、使用状況に応じて棒状部材7,7及び棒状部材10,10の軸周りに回動可能にそれぞれ取付けることができるようになっているとともに、図示しない固定手段により棒状部材7,7及び棒状部材10,10の軸周りに対する位置を固定することもできるようになっている。
【0019】
また、前輪8,8は、架設部材11を上下することにより、地面に接地した接地状態と、地面から離間した非接地状態と、に切り換えることが可能となっている。詳しくは、基部3aを構成する前端部3gには、前端部3gの前後面に2つずつ設けられるプレート部材12,12,…と、プレート部材12,12,…の上端部同士を繋ぐハンドル部材13と、を備えた位置決め手段14が設けられている。このプレート部材12,12,…の下端部は、前端部3gに対して揺動可能に取付けられており、プレート部材12,12,…の上端部は、ハンドル部材13に対して揺動可能に取付けられている。また、プレート部材12,12,…のうち前端部3gの前面側に取付けられたプレート部材12,12は、上下方向に離間する切欠き12a,12aをそれぞれ備えている。
【0020】
前輪8,8を接地状態とする際には、架設部材11の前面に設けられた突起11a,11aを各プレート部材12,12の下側の切欠き12a,12a内に係止させるとともに、前輪8,8を非接地状態とする際には、突起11a,11aを各プレート部材12,12の上側の切欠き12a,12a内に係止させる。架設部材11の突起11a,11aの係止位置を変更する際には、ハンドル部材13を横方向に揺動させると突起11a,11aに係合していた切欠き12a,12aを開放できる。そして、架設部材11を上下に移動させ、突起11a,11aを上下いずれかの切欠き12a,12aと適合する位置に配置し、ハンドル部材13を元に戻すことにより、突起11a,11aを上下いずれかの切欠き12a,12a内に係止できる。
【0021】
カート1と自転車2とが連結状態時には、前輪8,8を非接地状態として地面との接触点を減らすとともに、後輪9,9が進行方向(前後方向)に向けてのみ転動するように棒状部材10,10の軸周りに対する後輪9,9の位置を固定して、カート1の直進性を高めることができる。また、カート1と自転車2とが非連結状態時には、前輪8,8を接地状態とするとともに、後輪9,9が棒状部材10,10の軸周りに対して回動自在となるようにし、手押し用のカート1としての機動性を向上させることができる。尚、前輪8,8が非接地状態の際には、前輪8,8と自転車2の後輪との干渉を防止するために、棒状部材7,7の軸周りに対する前輪8,8の位置を固定することが好ましい。
【0022】
次いで、連結装置4について説明する。
図1ないし
図4に示されるように、連結装置4は、カート側の連結手段16と、圧縮バネ17,17(弾性手段)と、自転車側の連結手段18と、から主に構成されている。
【0023】
自転車側の連結手段18は、自転車2の後輪の上方に固定される荷台2aの上方に固定される板状部材20と、板状部材20の前端側上部に固定される取付部材21と、取付部材21の上方を被覆可能な蓋部材22と、を備えている。板状部材20は、その中央部に水平に延びる水平面20bと、水平面20bの後端から下方に向けて漸次傾斜するテーパ面20aを有している。
【0024】
また、
図3に示されるように、取付部材21は、上方に開口する断面視略U字形状をなし、後方側の左右中央部に設けられる第1切欠部21aと、第1切欠部21aの左右両側に設けられる第2切欠部21b,21bと、を備えており、後述するカート側の係合部材23(
図4参照)を係合できるようになっている。蓋部材22は、図示しない軸により立設片21bの上端に対して前後に回動可能に取付けられているとともに、図示しないバネにより自然状態時に取付部材21の上方を被覆するようになっている。
【0025】
図4に示されるように、カート側の連結手段16は、左右方向に延び前記取付部材21内に係合可能な係合部材23と、係合部材23の左右中央部から後方に延び後述するコ字状部材25を備えた軸部材24と、(前後2つの部材)を備えている。この係合部材23と軸部材24とは、上下に延びる支軸27を介して接続されており、この支軸27を中心とした揺動が可能となっている。
【0026】
また、軸部材24は、支軸27側の平板部24aと、平板部24aの後方に配され該平板部24aが内部に遊挿される筒状部24bと、から成り、平板部24aと筒状部24bとは、前後方向の相対的な移動と、軸周りの相対的な回動と、が許容されている。この軸部材24は、第1切欠部21a内に遊嵌されるようになっている(
図7参照)。尚、筒状部24bの前端には、平板部24aの後端部が係止される係止部(図示せず)を備えており、平板部24aが筒状部24bから離脱することが防止されている。さらに尚、筒状部24b内には、図示しないバネが設けられており、平板部24aを前方側に付勢している。
【0027】
また、軸部材24の所定位置には、左右方向に延びるコ字状部材25が固定されており、この係合部材23とコ字状部材25との間は、その左右両側に前後方向を向く圧縮バネ26,26(弾性手段)が取付けられている。圧縮バネ26,26は、係合部材23が取付部材21内に係合された状態において、第2切欠部21b,21b内に遊嵌されるようになっている(
図7参照)。
【0028】
また、コ字状部材25の左右両側には、平板部材28,28が後方に延設されており、平板部材28,28の後端には、その後端同士を繋ぐようにヒンジ部材29が取付けられている。
図2に示されるように、ヒンジ部材29の一方の板部材29a(
図4参照)は、基部3aの前端部3gの下面に設けられた断面矩形状の固定部30の前面に固定されており、これにより、カート側の連結手段16が基部3aの前端部3gの前方に上下に揺動可能に取付けられている。
【0029】
図2に示されるように、圧縮バネ17,17は、基部3aの前端部3gの下面における固定部30よりも前方側に、左右に離間して上下方向を向くように取付けられている。この圧縮バネ17,17の下端部には、球体部材31,31(先端部材)が設けられている。尚、圧縮バネ17,17の下端部に設けられる先端部材は、球体部材31,31に限られず、例えば、下面側に曲面形状を有するものであれば、半月状の部材や先端が尖った部材等であってもよい。さらに尚、先端部材は、低摩擦の樹脂等で構成されることが好ましい。
【0030】
次いで、カート1と自転車2との連結について説明する。
図5(a)に示されるように、カート1と自転車2との連結前の自然状態において、圧縮バネ17,17の下端(球体部材31,31の下端)は、板状部材20の水平面20bの高さ位置αよりも低い位置に位置するようになっている。
【0031】
図5(b)に示されるように、先ず、カート側の連結手段16を揺動させ基部3aの前端部3gの前方側に向いた状態とするとともに、蓋部材22を上方に回動させ、カート1と自転車2とを相対的に近付ける。これにより、圧縮バネ17,17の球体部材31,31がテーパ面20aに摺動され、カート1の前端側の一部が自転車2の後輪の上方に案内される。
【0032】
尚、カート側の連結手段16を揺動させ基部3aの前端部3gの前方側に向いた状態とした際には、圧縮バネ17,17が、コ字状部材25と平板部材28,28とヒンジ部材29とにより囲われた空間内を挿通できるようになっている(
図2参照)。
【0033】
そして、係合部材23を取付部材21に係合させ、蓋部材22を下方に回動させて、カート側の連結手段16と自転車側の連結手段18とを連結する。このとき、球体部材31,31が板状部材20のテーパ面20aから水平面20b上を摺動するため、カート1を持ち上げたりすることなく、圧縮バネ17,17を円滑に水平面20b上に配置することができる。
【0034】
また、カート側の連結手段16と圧縮バネ17,17とは、近い位置に設けられているため、カート側の連結手段16と自転車側の連結手段18との連結作業と、圧縮バネ17,17を板状部材20上に配置する作業とを近い位置で行えるため、カート1と自転車2との連結作業が簡便である。
【0035】
また、カート側の連結手段16と自転車側の連結手段18とが連結された状態において前輪8,8を非接地状態とした際には、
図1に示されるように、圧縮バネ17,17を介して自転車2側にカート1の重量の一部を預けることができる。また、カート1の前端側の一部を自転車2の荷台2a上に重ねて連結するため、連結されたカート1と自転車2との車長を短くできるため、走行性を高めることができる。
【0036】
さらに、圧縮バネ17,17が上下方向に伸縮するため、連結走行時に地面の凹凸から受ける上下の振動を圧縮バネ17,17が吸収して、走行時におけるカート1のガタつきを防止できる。そのため、後輪にサスペンションが無い自転車を利用しても安定して走行できる。
【0037】
次いで、カート1と自転車2との連結走行におけるコーナリング動作を
図6を用いて説明する。尚、
図6では、わかりやすく説明するために、基部3aの前端部3g、圧縮バネ17,17、球体部材31,31、板状部材20のみを記載し、カート側の連結手段16等の構成の記載を省略する。さらに尚、ここでは、カート1と自転車2とが左側にコーナリングする態様について説明する。
【0038】
図6(a)に示されるように、カート1と自転車2とがコーナリングする際には、先ず、自転車2が左側に傾動しながら左側に曲がる。このときには、図示しないが、前述のように軸部材24により自転車2とカート1との相対的な回動が許容されているため、カート1は慣性により直進しようとするが、このカート1に自転車2の牽引力が斜め左前方にかかるようになるため、カート1の重心に対して遠心力が働くようになっている。これにより、カート1が右側(外輪側)に傾動するようになり、カート1の右側(外輪側)の後輪9に該カート1の荷重が偏るため、カート1の左側(内輪側)の後輪9と地面との摩擦力を減らし、コーナリング動作をスムーズに行えるようになっている。
【0039】
このように、自転車2が左側に傾動し、カート1が右側に傾動するため、板状部材20と基部3aの前端部3gとの各右側が相対的に上下方向に近接するようになる。前述のように、板状部材20と基部3aの前端部3gとの間には、圧縮バネ17,17が配置されているため、右側の圧縮バネ17が板状部材20と基部3aの前端部3gとの各右側を離間させる方向に押し戻すように作用する。そのため、カート1が自転車2に対して過度に傾動することを抑制して、カート1がバランスを崩して転倒することを防止できる。
【0040】
また、
図6(b)に示されるように、カート1と自転車2とがコーナリングを完了すると、圧縮バネ17,17の弾性復帰力により自転車2とカート1と基準となる傾動角度、すなわち板状部材20と基部3aの前端部3gとが平行となる角度に復帰される。
【0041】
また、圧縮バネ17,17は、上下方向を向いているため、板状部材20と基部3aの前端部3gとの片側(本実施例では右側)が相対的に上下方向に近接する動きに対して弾性復帰力を効果的に作用させることができる。
【0042】
また、球体部材31,31により圧縮バネ17,17と板状部材20との接触面積が小さくなるので、自転車2とカート1とが相対的に傾動しても球体部材31,31が滑り、圧縮バネ17,17が捻じれることなく、まっすぐな状態を保つことができる。すなわち、常に板状部材20と基部3aの前端部3gとの間で圧縮バネ17,17の弾性復帰力が効果的に作用する状態を保つことができる。
【0043】
次いで、カート1と自転車2との連結走行におけるカート側の連結手段16の各種動作について
図7を用いて説明する。
【0044】
図7(a)に示されるように、自転車2とカート1とが、軸部材24により異なる方向に回動して相対的に傾動した際には、係合部材23とコ字状部材25との間に配設された圧縮バネ26,26に対して捻じれる方向に力が働く。これにより、係合部材23とコ字状部材25とに対して捻じれる方向に圧縮バネ26,26の弾性復帰力が働き、係合部材23とコ字状部材25とが平行となる角度(基準となる角度)に復帰される。
【0045】
また、
図7(b)に示されるように、自転車2とカート1とが、軸部材24により前後方向に相対的に近接するように移動した際(例えば、カート1と自転車2との連結走行から停車した際)には、圧縮バネ26,26が係合部材23とコ字状部材25との相対的な近接移動を吸収して、カート1の慣性によって行われる進行移動による自転車2への衝撃を和らげることができる。
【0046】
また、
図7(c)に示されるように、自転車2が左側にコーナリングした際には、係合部材23とコ字状部材25との左端部(内輪側)同士が互いに近接し合うとともに、係合部材23とコ字状部材25との右端部(外輪側)同士が互いに離間し合うようになる。このときには、左側の圧縮バネ26の弾性復帰力により、係合部材23と軸部材24との左端部同士が通常時(直進走行時)の状態に押し戻されるようになるとともに、右側の圧縮バネ26の弾性復帰力により、係合部材23と軸部材24との右端部同士が通常時の状態に引き戻されるようになる。そのため、支軸27を中心とした係合部材23と軸部材24との揺動を緩衝することができるとともに、係合部材23と軸部材24との過度な揺動が抑制される。
【0047】
また、自転車2とカート1とが相対的に傾動した際には、自転車2とカート1との相対的な傾動に対して前述した圧縮バネ17,17と圧縮バネ26,26との弾性復帰力が両方かかるため、自転車2とカート1との過度な傾動を確実に防止できる。また、自転車2とカート1とが相対的な前後の移動、及び支軸27を中心として揺動した際には、前述した圧縮バネ17,17が板状部材20上を滑るため、圧縮バネ17,17の弾性復帰力が自転車2とカート1との相対的な前後の移動、及び支軸27を中心とした揺動を阻害しないようになっている。
【0048】
尚、前記実施例では、圧縮バネ17,17の下端に球体部材31,31を設け、板状部材20上を摺動するようにした態様について説明したが、例えば、自転車2の荷台2a上にベアリング等により水平方向に回動可能な板状体を設け、その板状体に圧縮バネ17,17の下端部を固定してもよい。これによれば、コーナリング時において前記板状体が水平方向に回動して、自転車2とカートとのスムーズなコーナリング動作を促すとともに、圧縮バネ17,17の弾性復帰力により支軸27を中心とした自転車2とカートとの過度な揺動を抑制できる。
【0049】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0050】
例えば、前記実施例では、2種類の弾性手段(圧縮バネ17,17及び圧縮バネ26,26)が設けられる態様について説明したが、これに限られず、例えば、いずれか一方の弾性手段のみを用いて他方側の弾性手段の構成を省略してもよい。尚、弾性手段として圧縮バネを用いる態様について説明したが、これに限られず、例えば、圧縮バネ26,26 を引張バネにしてもよく、弾性手段とは、引張バネであってもよいし、ゴム等の弾性手段であってもよい。
【0051】
また、圧縮バネ17,17は、基部3aの前端部3gと板状部材20との間における左右両側に2つ設けられる態様について説明したが、例えば、上下方向に弾性復帰力を有するとともに、前端部3gと板状部材20との間の左右方向に亘って延びるゴム部材が1つ設けられていてもよいし、3つ以上の弾性手段が設けられていてもよい。また、圧縮バネ26,26も同様に、前後方向に弾性復帰力を有するとともに、係合部材23とコ字状部材25との間の左右方向に亘って延びるゴム部材が1つ設けられていてもよいし、3つ以上の弾性手段が設けられていてもよい。尚、基部3aの前端部3gと板状部材20との間における左右両側(係合部材23とコ字状部材25との間の左右両側)にかかる弾性復帰力が均等になることが好ましい。
【0052】
また、カート1と自転車2とは、カート側の連結手段16と自転車側の連結手段18とにより連結される態様について説明したが、両連結手段をカート側と自転車側とで入れ替えても構わない。